JP4003369B2 - 抗癌剤 - Google Patents
抗癌剤 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4003369B2 JP4003369B2 JP2000057008A JP2000057008A JP4003369B2 JP 4003369 B2 JP4003369 B2 JP 4003369B2 JP 2000057008 A JP2000057008 A JP 2000057008A JP 2000057008 A JP2000057008 A JP 2000057008A JP 4003369 B2 JP4003369 B2 JP 4003369B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- group
- compound
- fraction
- acid
- microtubule
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Saccharide Compounds (AREA)
- Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
- Acyclic And Carbocyclic Compounds In Medicinal Compositions (AREA)
- Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は微小管重合促進作用または微小管解重合阻害作用を有する化合物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
微小管は真核生物に存在する管状蛋白繊維である。この微小管を構成する主蛋白質がチューブリンであり、α−チューブリンとβ−チューブリン各1分子が結合したヘテロ2量体を基本単位として重合し、通常13本のプロトフィラメントからなる管状構造の微小管を形成する。
【0003】
微小管は紡錘体の主成分として知られ、細胞周期M期における有糸分裂の制御に強く関与している〔サイエンス(Science)、246、622(1989);セル(Cell)、71、547(1992)〕。
【0004】
微小管の形成を制御し、その結果、細胞分裂阻害などの様々な生物活性を有する化合物が発見されており、抗癌剤、抗カビ剤、駆虫薬、除草剤など幅広く用いられている。
【0005】
これらの薬剤は微小管に対する作用機序から、重合阻害剤と重合促進剤(解重合阻害剤を含む)に分類することができる。微小管重合阻害作用を示す化合物は今までに多数が見つかり臨床応用されている。一方、重合促進作用または解重合阻害作用を示す化合物として臨床応用されている化合物としては、タキサン骨格を有するタキソール(Taxol、一般名Paclitaxel)とタキソテール(Taxotere、一般名 Docetaxel)があり、乳癌、卵巣癌、子宮癌などの治療薬として高い評価を得ている(E.K.Rowinskyら,J.Natl.Cancer.Inst.,82:1247−1259(1990))。
【0006】
しかしながら、これらの化合物には原料を安定供給するという観点から問題がある。タキソールは西洋イチイの樹皮から抽出されるが、その含有量は極めて少ない。タキソテールは、イチイ類の葉から得られる10−デアセチルバッカチンIIIなどを原料として半合成により供給している。したがって、いずれもイチイを原料としているため、大量に安定供給することが難しい。また、イチイをその原料とし大量に伐採することは、最終的には深刻な環境破壊を引き起こすといった欠点も有している。
【0007】
これらの問題を解決するために、細胞培養を利用して生産する方法や全化学合成する方法が検討されている。全化学合成法は、タキサン骨格の複雑な化学構造から予想できるように、高価な試薬と複雑な反応経路を要し、収率も低いことから、本分野では使用されていない。一方、細胞培養を利用する方法についても検討されているが、数mg〜数百mg/Lのタキソールを生産するのに40〜50日を必要とし(E.R.M.Wickremesine等,World Congress on Cell and Tissue Culture(1992)、特開平10−504726)、産業上利用できる生産性を有していると言い難い。また、細胞培養による生産方法は不安定であり、高生産性の一次細胞が得られたとしても、その生産性を確保するのは難しいといった欠点も有している。
【0008】
さらに、タキサン骨格を持つ化合物を利用する場合の別の欠点として、水溶性の低さがある。そのため、可溶化剤であるポリオキシエチレンヒマシ油(商品名クレモフォアEL)とエタノールの50/50(V/V)の混合液にタキソールを溶解し、これを生理食塩水にて10倍に希釈して調製した注射剤を点滴静脈内投与するなどの対応が行われている(特開平08−113589)。しかしながら、ポリオキシエチレンヒマシ油に由来する副作用が知られており、該副作用を回避するために、タキソールの水溶性誘導体および水溶性製剤についての検討が数多く報告されている。例えば、WO90/10443号(V.J.Stella等)、アメリカ合衆国特許第5,157,049号(R.D.Haugwitz等)、欧州特許第0537905号(D.G.I.Kingston等)、アメリカ合衆国特許第5,411,984号(D.G.I.Kingston等)、アメリカ合衆国特許第5,422,364号(K.C.Nicolaou等)、WO95/18804号(K.C.Nicolaou等)、欧州特許第0558959号(ブリストル マイヤーズ スクイブ社)および欧州特許第0639577号(ブリストル マイヤーズ スクイブ社)などに開示されている。しかしながら、これらの方法は安定供給の問題を何ら解決していない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
微小管重合促進作用または解重合阻害作用を有し、かつタキサン骨格を有する化合物に比べ、安定供給を可能とする簡単な化学構造を持ち、さらに水溶性が高い、タキソール、タキソレートに換わる化合物を見いだすことが求められている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このような状況において、本発明者らは、微小管重合促進作用または微小管解重合阻害作用を示す化合物を海洋生物の中に求め、探索した結果、カイメンより単離した化合物群に微小管重合促進作用または解重合阻害作用を有することを見出した。
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
前記一般式[ III ]において、R1、R2、R3、R4で表される水酸基に変換し得る基としては、炭素数1ないし6のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基など)、炭素数6ないし10のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフトキシ基など)、炭素数7ないし12のアラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、ナフチルエチルオキシ基など)、炭素数1ないし6のアルキルカルボニルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基など)、炭素数6ないし10のアリールカルボニルオキシ基(例えば、ベンゾイルオキシ基、ナフチルカルボニルオキシ基など)、炭素数7ないし12のアラルキルカルボニルオキシ基(例えば、ベンジルカルボニルオキシ基、フェネチルカルボニルオキシ基など)、糖類などが挙げられる。R1、R2、R3、R4で表される水酸基に変換し得る基は、置換基を有していてもよく、これら置換基としては、例えば、ハロゲン、糖類、アルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R1、R2、R3、R4としては水酸基が好ましい。
【0015】
一般式[ III ]において、R5、R6で表されるアルキル基、アルケニル基は炭素数11から23である。不飽和炭化水素における2重結合の数としては、好ましくは1から6である。
【0017】
一般式[ III ]で表される化合物の塩としては、薬学的に許容される塩が好ましく、例えば、無機塩基、有機塩基、塩基性アミノ酸などの塩基との塩、無機塩、有機酸、酸性アミノ酸などの酸との塩が挙げられる。
【0018】
無機塩基の塩としては、例えば、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩など)、アルミニウム塩、アンモニウム塩などが挙げられ、有機塩基との塩としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N′−ジベンジルエチレンジアミンなどとの塩が挙げられ、無機酸との塩としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などとの塩が挙げられ、有機酸との塩としては、例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フマール酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などとの塩が挙げられ、塩基性アミノ酸との塩としては、例えば、アルギニン、リジン、オルニチン塩との塩が挙げられ、塩基性または酸性アミノ酸との塩としては、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸との塩などが挙げられる。このような塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、塩酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩などが好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩、塩酸塩などがより好ましい。
【0019】
本発明の化合物を得るには、天然物から目的の化合物を抽出精製する方法、天然物から抽出精製された化合物を修飾することにより化学合成する方法、目的とする化合物を全化学合成する方法などが考えられるが、本発明はこれら製造方法により限定されるものではない。
【0020】
本発明の化合物を得る方法の一つとして、天然物から抽出精製する方法が挙げられるが、天然物としては、本発明の化合物もしくはその前駆体を含有していればよく、特に限定されるものではない。本発明の化合物を含有している一つの例として海洋から採取されたカイメンが挙げられる。目的化合物のカイメンからの抽出精製は、公知の方法の組み合わせにより達成可能である。即ち、カイメンをホモジナイズした後、抽出目的とする化合物を有機溶剤で抽出し、さらに抽出物を有機溶剤/水系により数回抽出操作を繰り返す。抽出された化合物をさらに精製するためには、イオン交換カラム、ゲル濾過カラム、逆相系カラム、順相系カラムなどの各種カラムを利用して分離精製することが可能である。単離された化合物の精製度の確認は、例えば、薄相クロマトグラフィーや元素分析などを行うことにより可能である。あるいは、単離された化合物の質量分析、1H−NMR、13C−NMRの結果を基準品と比較することにより可能である。
【0021】
本発明の化合物を抗癌剤として使用する場合、本発明の化合物は単独で投与しても良いし、あるいは医薬的に許容される担体に含有させても良い。担体としては固形、半固形、又は液状の希釈剤、充填剤、及びその他の処用の助剤などが用いられる。本発明の化合物を含有する医薬組成物は、経口投与、組織内投与、局所投与(経皮投与等)又は経直腸的に投与することができ、これらの投与方法に適した剤型で投与される。
【0022】
経口投与は固形または液状の用量単位、例えば、末剤、散剤、錠剤、糖衣剤、カプセル剤、顆粒剤、懸濁剤、液剤、シロップ剤、ドロップ剤、舌下錠、坐剤、その他の剤型によって行うことができる。固形の医薬組成物は、適切な結合剤、滑剤、分散剤、希釈剤、崩壊剤、風味剤、着色料、香料、流動化剤、および溶解剤などを含んでもよい。液状の医薬組成物は、水溶液または水懸濁液、医薬に許容可能な脂肪または油、アルコール類またはその他の有機溶剤、例えば乳濁液、エステル、エリキシル、シロップ、非発泡性顆粒から作った溶液、または懸濁液、発泡性顆粒から作った発泡性製剤などを含んでもよい。また、適した溶剤、保存料、乳化剤、沈殿防止剤、希釈剤、甘味料、増粘剤および溶解剤を含有してもよい。さらに、風味剤、香料、着色料を含有してもよい。
【0023】
組織内投与は液状の用量単位、例えば溶液や懸濁剤の形態として、皮下・筋肉又は静脈内注射などにより行うことができる。これらのものは、本発明の化合物を、注射の目的に適合する非毒性の液状担体に溶解し利用することができる。さらに、非毒性の塩や塩溶液を添加してもよい。また安定剤、保存剤、乳化剤のようなものを併用することもできる。
【0024】
直腸投与は、化合物を低融点の水に可溶又は不溶の固体、例えばポリエチレングリコール、カカオ脂、高級エステル類、及びそれらの混合物を混じた坐剤を用いることによって行うことができる。
【0025】
抗癌剤としての用量は、年齢、体重、病気の性質、程度等の患者の状態、投与経路を考慮した上で調製することが望ましい。
【0026】
【実施例】
以下により、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0027】
実施例1
[精製ブタ脳微小管を用いる生物検定法]
(1)微小管の調製
東京食肉センターより購入したブタ脳をMES buffer(100mM MES,1mM EGTA,0.5mM MgCl2・6H2O,1mM GTP,1mM 2−ME)存在下で、1分間ホモジナイズした後、超遠心分離を行った(4℃、50000G、30分、日立himac 60E)。上清の微小管懸濁液にグリセロールbufferを加え(8M Glycerol,100mMMES,1mM EGTA,0.5mM MgCl2・6H2O,1mM 2−ME)、37℃で30分インキュベートすることで微小管を重合させた。得られた微小管懸濁液を30℃、100,000Gで45分間超遠心することで微小管のペレットを得た。得た微小管のペレットを氷冷下で解重合させた。重合・解重合の操作を2度繰り返すことで、高純度の微小管蛋白質を得た。蛋白質の定量をピアス社のクーマシーブルータンパク測定キットにて行い、1.3mg/mlに調製した。
【0028】
(2)微小管重合促進活性の測定
この方法[ジャーナル・オブ・アンチバイオティクス(Journal ofAntibiotics)、40,66,(1987)]は、以前より精製された微小管機能阻害物質の活性測定に利用されていたが、本研究ではこれをスクリーニング法として応用するための改良を行った。スクリーニング法として応用するために一番障害となるのは、抽出物や培養液の色である。また、海洋生物を対象物とした場合、塩の混入の問題を克服する必要があった。
【0029】
まず、重合促進および解重合阻害物質としてタキソールを標品として、微小管の重合促進及び解重合阻害を検出する条件設定を行った。塩の混入はエタノール抽出により脱塩する方法を採用した。その結果、重合及び解重合の阻害活性を連続的に検出するスクリーニングは、以下の手順により達成できる事が明かとなった。
【0030】
1.脱塩した試料を微小管懸濁液に0℃で加え、直ぐに400nmで濁度を測定する(日立U−3000スペクトロフォトメーター)。(DMSO 20μlに溶解した試料を微小管懸濁液1mlに入れて測定する。海洋生物を試料として用いる場合、最終濃度を0.1μg/mlとする。)
2.10℃で15〜20分インキュベートし、400nmで濁度を測定する。
【0031】
3.これを37℃に温め、15〜20分その温度でインキュベートし、400nmで濁度を測定する。
【0032】
4.次に、37℃のままCaCl2を4mMになる様に加え、400nmで濁度を測定する。
【0033】
着色した試料は、手順1の値を0点とすれば濁度の変化を検出でき、コントロール(試料の代わりに水を加えたものをコントロールとする)と直接比較する事ができた。
【0034】
重合促進活性(%)は、以下の式により算出する。
重合促進活性(%)=S[手順2(10℃)の濁度−手順1(0℃)の濁度]/C[手順3(37℃)の濁度−手順1(0℃)の濁度]×100
ここで、Sは試料、Cはコントロールを表す。
【0035】
数値が大きい程、強い重合促進活性を示す(コントロールは0%)。
解重合阻害活性(%)は、
C[手順3(37℃)の濁度−手順1(0℃)の濁度]をC(重合)、
C[手順3(37℃)の濁度−手順4(Ca添加)の濁度]をC(解重合)、
S[手順3(37℃)の濁度−手順1(0℃)の濁度]をS(重合)、
S[手順3(37℃)の濁度−手順4(Ca添加)の濁度]をS(解重合)として、以下の式で算出した値を使い、
解重合阻害活性(%)=〔S(解重合)×C(重合)〕/〔S(重合)×C(解重合)〕×100
で判定する。
【0036】
数値が小さい程、強い解重合阻害活性を示す(コントロールは100%)。
(3)海洋生物抽出物のスクリーニング結果
採取した数百種類の海洋生物についてジクロロメタン/メタノール(1:1)により抽出を行い、濃縮、乾固して抽出物を得た。抽出物の最終濃度を100μgとなるように調製した後、上記の活性測定を行った。その結果、西表島で採取したPseudoceratina属のカイメン(MN003)に微小管重合促進作用および解重合阻害作用が確認された。その結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
実施例2
[カイメンMN003からの活性物資の単離]
西表島で採集したPseudoceratina属のカイメンMN003(355.0g湿質量)をジクロロメタン/メタノール(1:1)500mlで3回抽出した。抽出液を濃縮・乾固した後、蒸留水/酢酸エチル(1:3)400mlで3回抽出した。酢酸エチル抽出層に活性が確認され、1.57gの抽出物を得た。該抽出物をシリカゲルカラム(メルク社製、シリカゲル60、230−400mesh、直径2cm×52cm、80g)を用いて、クロロホルム/メタノールの混合溶剤にて分離した(5%メタノール200ml、10%メタノール150ml、15%メタノール385ml、100%メタノール200ml)。
【0039】
10%メタノールで溶出されたフラクションに活性が認められ、66.8mgの分離物を得た。さらにこの分離物をLH−20カラム(セファデックス、1cm×35cm、27.5ml)を用いクロロホルム/メタノール(1:1)300mlを溶離液として5つのフラクションに分離した。2番目のフラクションに活性が認められ、9mgの分離物を得た。さらに分離物をシリカゲルカラム(丸石化学薬品商店、特製シリカゲル、NAM−300HF254、1cm×30cm、18g)を用いてベンゼン/アセトン混合溶剤にて10個のフラクションに分離した(100%ベンゼン30ml、10%アセトン24ml、20%アセトン130ml、100%アセトン30ml)。20%アセトンにて溶出されたフラクション7、フラクション8、フラクション9に活性が認められた。それぞれ、3mg、0.6mg、0.6mgの分離物を得た。それぞれのフラクションの純度を薄層クロマトグラフィー(展開溶剤にクロロホルム/メタノールの9:1を使用)を用いて精製度を確認した後、後述する方法にて各フラクションの化合物の構造決定をした。
【0040】
実施例3
[単離化合物の構造決定]
フラクション7の化合物の構造解析を行った。
【0041】
図1はフラクション7のESIMSスペクトルを、図2はフラクション7の1H−NMRを、図3はフラクション7の13C−NMRを表す。
【0042】
ESIMSスペクトル(図1)から、本化合物は少なくとも3種類(m/z 695,709,723)の混合物であることが確認された。また、1H−NMR(図2、表2)および13C−NMR(図3、表2)から、これらの化合物は長鎖アルキル基を持ち、構造の非常に類似した同族体から構成されていることがわかった。
【0043】
【表2】
【0044】
構造は、1Hおよび13C−NMR、1H−1H COSY、HMQCおよびHMBCスペクトル(表2)を詳細に解析して決定した。dH5.18(H−2)とdC174.1(C−1″′)のシグナルがHMBCコレレーションを示すことから、エステル(長鎖脂肪酸エステル)の存在が推定された。酸素の付け根(炭素1〜3および1′〜5′)の1H−1H COSYおよびHMBCスペクトルから、1位と3位がエーテル結合し、2位がエステル結合したグリセロールとシクロペンタンペンタアルコールの部分構造を持つことがわかった。よって化合物A群は、1位に環状糖アルコールがエーテル結合し、2位に長鎖脂肪酸エステル、3位に長鎖アルキル基がエーテル結合したグリセロール誘導体であると考えられた。フラクション7から分離された化合物の構造を下記に示す。
【0045】
【化5】
【0046】
次に、フラクション9の化合物の構造解析を行った。
図4はフラクション9のESIMSスペクトルを、図5はフラクション9の1H−NMRを表す。
【0047】
フラクション9のESIMSスペクトル(図4)および1H−NMR(図5、表3)から、本化合物も同族体の混合物であると考えられる。また、1H−NMRから、こちらは糖を含む長鎖脂肪酸エステルと思われる。
【0048】
【表3】
【0049】
dC104.1(dH4.28)のシグナルはアセタールの存在を示し、1H−1H COSYスペクトルを解析すると表3に示した炭素番号1′から6′の六炭糖の存在が明らかとなった。糖由来のシグナルのほかに、酸素が結合した炭素のシグナルが3つあるが(表3の1〜3)、ケミカルシフトと1H−1H COSYスペクトルの解析から、2,3位にエステル結合をもつグリセロールの存在が推定された。dH5.34にはシス二重結合に特徴的な2プロトン分のシグナルが検出された。またエステルカルボニルのα位(dC34.3,dH2.31)とβ位(dC25.0,dH1.62)および二重結合のα位(dC27.3,dH2.01)のメチレンシグナルがそれぞれ2つ分観察されることから、化合物B群の主成分[ESIMS,m/z 751(M+Na)+(図4)]は脂肪酸と1つのシス二重結合を持つ脂肪酸が1つずつエステル結合し、1位に六炭糖が結合したグリセロール誘導体(脂質)であると考えられた。フラクション9から分離された化合物の構造を下記に示す。
【0050】
【化6】
【0051】
フラクション8は構造解析の結果、フラクション7とフラクション9の混合物であることが推定された。
【0052】
実施例4
[活性測定]
実施例1の測定法に従い、フラクション7の化合物群とフラクション9の化合物群について微小管重合促進活性、微小管解重合阻害活性を測定した。その結果を表4および表5に示す。表4はOD値(吸光度)、表5は活性%を表す。
【0053】
【表4】
【0054】
【表5】
【0055】
以上の結果より前記「化5」で示されるフラクション7の化合物群、「化6」で示されるフラクション9の化合物群には、微小管重合促進活性および微小管解重合阻害活性が認められることが確認された。
【0056】
実施例5
[溶解性の比較]
タキソール、フラクション7の化合物群、フラクション9の化合物群の溶解性を比較検討した。既知量の化合物を1mlのダルベコPBS(−)に添加後、超音波分散を行い、その溶解性を目視により判定した。その結果を表6に示す。
【0057】
【表6】
【0058】
以上より、フラクション7の化合物群、フラクション9の化合物群はタキソールに比べて水溶性が高いことが確認された。
【0059】
実施例6
[細胞増殖阻害効果の確認]
フラクション7の化合物群、及びフラクション9の化合物群をマウスリンパ腫由来細胞株(L1210)に感作させることで、フラクション7の化合物群、及びフラクション9の化合物群時の細胞増殖阻害効果を確認した。
マウスリンパ腫由来細胞株L1210を1×104cell/mlの濃度で培地に懸濁し、96穴マイクロタイタープレートの各ウエルに90μlずつ分注した。L1210細胞の培養は、常法に従いMEM(ギブコ社製、米国)に牛胎児血清(フロー ラボラトリーズ社製、米国)を10%添加した培地を使用した。37℃、5%CO2に設定した炭酸ガスインキュベーターで半日間前培養を行った。次いで、リン酸生理食塩水に溶解したフラクション7の化合物群またはフラクション9の化合物群(それぞれ100μg/ml 、30μg/ml、10μg/ml)を細胞懸濁液が分注してある各ウエルに10μlずつ添加した。ブランクにはリン酸生理食塩水のみを10μl添加した。添加後さらに3日間培養を行った。
【0060】
細胞増殖の観測には細胞毒性測定用試薬(Cell counting kit 8、同仁化学社製)を用いた[タランタ(Talanta)、44、1299(1997)]。各ウエルにCell counting kit 8溶液を10μl添加し、上記炭酸ガスインキュベーターにて3時間保温した後に、450nmでの吸光度をマイクロプレートリーダーMPR A4(東ソー社製)を用いて測定した。ブランクに対する吸光度から細胞増殖の阻害率を計算した。その結果を表7に示す。OD値が大きいほど細胞増殖が進行していることを示す。
【0061】
【表7】
【0062】
表7の結果から解るように、フラクション7の化合物群およびフラクション9の化合物群は、濃度の上昇に伴い細胞の増殖を抑制していることが解る。
【0063】
【発明の効果】
本発明の化合物は、微小管重合促進作用または微小管解重合阻害作用を示し、従来のタキサン骨格を有する化合物に比べ簡単な化学構造を持つため、安定供給が可能であり、さらに水溶性が高く、細胞の増殖を抑制する効果を有することから、抗癌剤、抗カビ剤、駆虫薬、除草剤などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】フラクション7のESIMSスペクトルを示す。
【図2】フラクション7の1H−NMRスペクトルを示す。
【図3】フラクション7の13C−NMRスペクトルを示す。
【図4】フラクション9のESIMSスペクトルを示す。
【図5】フラクション9の1H−NMRを示す。
Claims (1)
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000057008A JP4003369B2 (ja) | 2000-03-02 | 2000-03-02 | 抗癌剤 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000057008A JP4003369B2 (ja) | 2000-03-02 | 2000-03-02 | 抗癌剤 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2001247521A JP2001247521A (ja) | 2001-09-11 |
JP4003369B2 true JP4003369B2 (ja) | 2007-11-07 |
Family
ID=18577873
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2000057008A Expired - Fee Related JP4003369B2 (ja) | 2000-03-02 | 2000-03-02 | 抗癌剤 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4003369B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP3914519B2 (ja) * | 2003-06-06 | 2007-05-16 | 株式会社スピルリナ研究所 | グリセロ糖脂質化合物を含有してなるリパーゼ活性阻害剤 |
-
2000
- 2000-03-02 JP JP2000057008A patent/JP4003369B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2001247521A (ja) | 2001-09-11 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
CN107986951B (zh) | 新型拓扑异构酶i抑制剂及其药物组合物与其制备方法及应用 | |
Gross et al. | Two cytotoxic stereoisomers of malyngamide C, 8-epi-malyngamide C and 8-O-acetyl-8-epi-malyngamide C, from the marine cyanobacterium Lyngbya majuscula | |
US7196115B2 (en) | Pharmaceutical composition containing brevifoliol for use in chemotherapeutic treatment of human beings, method therefor | |
Dong et al. | Artemzhongdianolides A1-A21, antihepatic fibrosis guaiane-type sesquiterpenoid dimers from Artemisia zhongdianensis | |
Tabakmakher et al. | Monanchoxymycalins A and B, new hybrid pentacyclic guanidine alkaloids from the Far-Eastern marine sponge Monanchora pulchra | |
JP5356029B2 (ja) | フタリド誘導体の使用 | |
KR980008225A (ko) | 데커시놀 안젤레이트를 유효성분으로 하는 항암제 | |
JP4003369B2 (ja) | 抗癌剤 | |
JPH10504533A (ja) | バイオアクティブ アセトゲニン及び誘導体 | |
US6387948B1 (en) | 8-Acetylarteminolide and process for preparing same | |
CN111808153B (zh) | 一种单萜苷类化合物及其在制备抗炎药物中的用途 | |
RU2492173C2 (ru) | Новые соединения со спирохиральной углеродной основой, способы их получения и фармацевтические композиции, содержащие такие соединения | |
CN109734561B (zh) | 一种法尼基酚类化合物及其药物组合物和其应用 | |
KR20090029015A (ko) | 아룸 팔래스티눔(Arum palaestinunBoiss) 유래 항암용 피페라지움 화합물 | |
CN101230015B (zh) | 含酰胺取代基的取代桂皮酸衍生物及其肿瘤细胞毒性 | |
Li et al. | Discovery and biological evaluation of dispirocyclic and polycyclic ent-clerodane dimers from Isodon scoparius as novel inhibitors of Toll-like receptor signaling | |
US7626043B2 (en) | Antiproliferative activity of the leiodermatolide class of macrolides | |
CN101092363B (zh) | 芳基四氢萘类木脂素化合物及其制备方法和用途 | |
Zhang et al. | Prunolactones AG, proangiogenic isocoumarin derivatives with an unusual 6/6/6/6/6 spiropentacyclic skeleton from the endophytic fungus Phomopsis prunorum | |
KR101002215B1 (ko) | 해면동물 포바스 구쿨렌시스로부터 추출된 신규화합물인 구쿨레닌 a와 b, 이의 분리방법 및 이를 이용한 항암제 | |
CN109748891B (zh) | 多西他赛衍生物和其药物组合物与用途 | |
Gunasekera et al. | Chemistry and biology of the discodermolides, potent mitotic spindle poisons | |
CN108129528B (zh) | 一种化合物、包含其的决明子提取物及其用途 | |
CN114591282A (zh) | 从香青兰中分离得到的一个吡喃酮化合物及其制备方法与用途 | |
El-Askary et al. | Bioactive caffeoylquinic acid derivatives from Convolvulus hystrix Vahl |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20040223 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20070517 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20070522 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20070712 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20070731 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20070813 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100831 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100831 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110831 Year of fee payment: 4 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |