JP4001246B2 - 新規ヒトcc型ケモカインlarc - Google Patents

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技術分野
本発明は新規なCC型ケモカインタンパク質、その構造遺伝子、該タンパク質の製造方法、該製造方法に使用される該タンパク質をコードするDNAを含有するベクターおよび該ベクターを含有する形質転換体、ならびに該タンパク質またはその構造遺伝子を含有する医薬組成物、炎症および/または免疫に関連する病気の診断薬、さらには該タンパク質の単クローン抗体および該抗体を産生し得るハイブリドーマに関する。
背景技術
物理的、化学的あるいは生物学的な機序により起こる外来性あるいは内因性のさまざまな組織障害、侵襲、抗原暴露、などは強い炎症反応や免疫反応を誘導する。これらの反応は重要な生体防御反応であるが、ときには急性あるいは慢性の疾患の原因ともなりうる。炎症反応や免疫反応を誘発する原因が組織に加えられると、まず好中球、顆粒球、リンパ球、あるいはマクロファージなどのような炎症性細胞あるいは免疫担当細胞の血管内皮細胞への吸着、血管外への移動、そして侵襲あるいは障害された組織や抗原の存在する組織での集積が起こる。このような一連の細胞遊走反応を誘導する物質として一群のケモタクティック・サイトカイン、いわゆるケモカイン、が存在する。ケモカインは遊走反応(ケモタクティック反応)を誘導する一群のサイトカインであり、アミノ酸配列の類似性から構造的にも相互に密接に関係する。これまでにヒトでは少なくとも21種のケモカインが報告されている。ケモカインは、共通に保存された4個のシステイン残基のうちの最初の2個の並び方から、大きくαあるいはCXC型(2個のシステインが1個のアミノ酸で隔てられている)とβあるいはCC型(2個のシステインが隣り合っている)に分けられる。CXC型ケモカインとして、ヒトでは、IL-8、β-TG、PF-4、MGSA/GRO、ENA-78、NAP-2、GCP-1、GCP-2、IP-10、SDF-1/PBSF、Mig、などが知られている。CXC型ケモカインは主に好中球の活性化と遊走を誘導する。CC型ケモカインとして、ヒトでは、MIP-1α、MIP-1β、RANTES、MCP-1、MCP-2、MCP-3、I-309、エオタキシンなどが知られている。CC型ケモカインは、主にモノサイト/マクロファージの活性化と遊走を誘導する。さらにCC型ケモカインには、T細胞、好塩基球、好酸球、などに対して活性化と遊走誘導を示すものが知られている(J. J. Oppenheimら、Annu. Rev. Immunol. 9: 617-648, 1991; M. Baggiolini & C. A. Dahinden、Immunol. Todey 15: 127-133, 1994)。
発明の開示
本発明者らは、新たなCC型ケモカインを見出すべく、種々のヒトCC型ケモカインアミノ酸配列をもとに、アメリカNCBIが公開している核酸配列データベースGenBankの一部で、cDNA部分配列から構成されるExpressed Sequence Tag (EST)データベースをTBLASTN検索ソフトを用いて検索した。その検索により、新たなCC型ケモカインタンパク質をコードするDNA配列の存在を見出し、そのcDNAを実際にヒト細胞からクローニングし、全長cDNAの塩基配列を決定するとともに、そのタンパク質を発現させた。この遺伝子はおもに肝臓で構成的に発現しており、そのタンパク質はリンパ球に対して細胞遊走活性を示すという結果から、この新規CC型ケモカインをLARC (Liver and Activation Regulated Chemokine)と命名した。本発明者らは、遺伝子工学技術を用いてLARCを大量生産し、精製したLARCを用いてリンパ球に対する遊走活性を示し、またリンパ球に存在するLARCに対する高親和性の特異的レセプターを同定することによって、本発明を完成するに至った。
LARCは遺伝子の塩基配列から予想されるオープンリーディングフレームでは96個のアミノ酸残基からなるタンパク質であるが、成熟タンパク質では26番目と27番目のアラニンの間でシグナル配列が切断されて、70個のアミノ酸残基からなる分子量約8kDaの塩基性タンパク質である。成熟型のLARCは既知のCC型ケモカインと有意の相同性を示し、特にCC型ケモカインで保存されている4個のシステインはすべて保存されていた。しかし、既存のケモカインとの相同性は最も高いMIP-1βに対しても28%程度である。また単球様細胞株U937を刺激するとその産生が誘導されるほか、肝臓や肺などで構成的に発現しているという特徴も従来のCC型ケモカインについては知られていない。
発明の概要
本発明は、新規なCC型ケモカインLARCについて、該タンパク質の構造遺伝子、該タンパク質の製造方法、該製造方法に使用するベクターおよび形質転換体、該タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチド分子の全長もしくは一部を含有する医薬組成物、該タンパク質に対する単クローン抗体、該抗体を産生するハイブリドーマ、およびアゴニスト/アンタゴニストを検索、測定または評価する方法に関する。
本発明の1つの発明は、配列番号1のアミノ酸残基27〜96のアミノ酸配列を有するヒトCC型ケモカイン(LARC)、またはその断片もしくは変異体タンパク質、好ましくはこの配列に1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および付加の中から選ばれる1またはそれ以上の変異を含み、かつ該ヒトCC型ケモカインの搬能または活性と実質的に同じ程度である機能または活性、または該ヒトCC型ケモカインの機能または活性を抑える機能または活性を有する該ヒトCC型ケモカインの変異体タンパク質に関する。
また、本発明は、配列番号1のアミノ酸残基1〜96のアミノ酸配列を有するヒトCC型ケモカイン(LARC前駆体)、またはその断片もしくは変異体タンパク質、好ましくはこの配列に1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および付加の中から選ばれる1またはそれ以上の変異を含み、かつ該ヒトCC型ケモカインの機能または活性と実質的に同じ程度である機能または活性、または該ヒトCC型ケモカインの機能または活性を抑える機能または活性を有する該ヒトCC型ケモカインの変異体に関する。
本明細書中、「CC型ケモカインの断片タンパク質」とは本発明のヒトCC型ケモカインのアミノ酸配列の一部からなる適当な断片を意味する。
本明細書中、「CC型ケモカインの変異体タンパク質」とは該変異体の機能または活性が実質的に該CC型ケモカインと同じ、あるいは該ヒトCC型ケモカインの機能または活性を選択的に抑えるものであれば、化学的または生化学的な改変または天然もしくは非天然のアミノ酸を含むことのできる改変タンパク質を意味する。
別の態様として、本発明は、本発明のCC型ケモカインおよび該タンパク質の変異体をコードする単離されたポリヌクレオチド分子に関する。詳細には、配列番号1に記載の配列の137位のGから346位のGからなる配列を有するポリヌクレオチド分子、あるいは配列番号1に記載の配列の59位のAから346位のGからなる配列を有するポリヌクレオチド分子、あるいは配列番号1に記載のDNA配列の1位のCから799位のTからなる配列を有するポリヌクレオチド分子に関する。
本発明のポリヌクレオチド分子はRNAまたはDNAの形態をとることができ、DNAにはcDNA、ゲノムDNAおよび合成DNAが包含される。またDNAおよびRNAは二本鎖または一本鎖であってよく、一本鎖の場合はセンス鎖またはアンチセンス鎖のいずれでもよい。
本発明のポリヌクレオチド分子は本発明タンパク質、例えばLARCの発現誘導あるいは抑制(アンチセンスなど)に利用でき、ex vivoあるいはin vivoにおいてベクターにより、あるいは遺伝子銃により打ち込むことができる。このような用途に利用できる限り、本発明のポリヌクレオチド分子には上記本発明ポリヌクレオチド分子の一部の配列からなるポリヌクレオチド分子も包含される。
さらに、本発明はこれらのポリヌクレオチド分子の塩基置換、塩基付加もしくはアレル変異による変異体分子(以下、変異体と称することもある)に関する。
「塩基置換、塩基付加による変異体」とは、配列番号1に記載された塩基配列とは異なる遺伝子コードを用いて、結果的には、配列番号1に記載されたアミノ酸1から96のタンパク質と同じタンパク質、あるいは配列番号1に記載されたアミノ酸配列27から96のタンパク質と同じタンパク質、をコードしうる変異体を意味する。
「アレル変異による変異体」とは自然に存在する個人差や人種差に基づく塩基変異を意味し、コードするアミノ酸配列が変化する場合もある。
本発明はさらに、配列番号1に記載の塩基配列の1位のCから799位のTからなる配列の一部と相補的な配列を有するオリゴヌクレオチド分子、またはその塩基置換、塩基付加、塩基修飾、アレル変異による変異体であって、本発明タンパク質の活性または機能を阻害する分子に関する。
特に、5’ノンコーディング部分の相補的な配列が好ましいが、より好ましくは転写開始部位、翻訳開始部位、5’非翻訳領域、エクソンとイントロンとの境界領域もしくは5'CAP領域に相補的配列であることが望ましい。
好ましい長さは、約10塩基対(bp)〜約40bpである。
また、別の態様として、本発明は本発明のポリヌクレオチド分子を含有するベクターに関する。本発明ベクターには発現ベクター、クローニングベクター、治療用ベクターなどの種々の用途を持つベクターが包含される。
発現ベクターは本発明タンパク質の大量生産に利用できる。発現ベクターについての詳細は以下の発明の実施形態の項に示す。
治療用ベクターは本発明ポリヌクレオチド分子を投与し細胞内に導入する手法に用い、ウイルスベクターによる方法およびその他の方法(日経サイエンス、1994年4月号、20-45頁、月刊薬事、36(1)23-48(1994)、実験医学増刊、12(15)、(1994)、およびこれらの引用文献(等)のいずれの手法も適用することができる。
ウイルスベクターによる方法としては、例えばレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルス等のRNAウイルス等に本発明のDNAを組み込んで導入する方法が挙げられる。この中で、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルス等を用いた方法が特に好ましい。
その他の方法としては、プラスミドを直接筋肉内に投与する方法(DNAワクチン法)リポソーム法、リポフェクチン法、マイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法等が挙げられ、特にDNAワクチン法、リポソーム法が好ましい。
また、別の態様として、本発明は、本発明の上記種々のベクターを含有する形質転換体に関する。また、本発明は本発明の発現ベクターを宿主細胞に導入して得られる形質転換体;該形質転換体を培養し、産生されたタンパク質を回収することを特徴とする本発明のタンパク質またはその変異体を製造する方法に関する。
さらなる態様として、本発明は本発明のタンパク質もしくはその変実体またはそれらをコードするポリヌクレオチド分子の全長もしくはその一部またはその変異体分子を含有する医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物には例えば、抗炎症剤、免疫応答調節剤、抗感染症剤、抗癌剤、炎症および/または免疫に関連する病気の予防薬または診断薬が包含される。
本発明医薬組成物の投与量および投与経路は通常の方法によって、使用目的、投与される対象の病状等から適時決定することができる。なお、本発明のタンパク質は生体内活性物質であることから、該タンパク質の活性が生じる量、すなわち本発明の医薬組成物の使用量においてはその急性毒性は問題とならないことが容易に推定される。
さらに、本発明は本発明のタンパク質またはその変異体に対する抗体、特に単クローン抗体、および該単クローン抗体を産生するハイブリドーマ細胞に関する。
別の態様として、本発明は、本発明のタンパク質のアゴニスト、インバースアゴニストまたはアンタゴニストをスクリーニングする方法であって、該アゴニスト、インバースアゴニストまたはアンタゴニストを含むと推定される試料と該タンパク質に特異的なレセプターGPR-CY4とを反応させ、その結合性および/または反応性を測定する工程を包含する方法に関する。また、別の態様として、本発明は、本発明スクリーニング方法によって見出されるアゴニスト、インバースアゴニストまたはアンタゴニストを包含する。
本発明のタンパク質に特異的なレセプターGPR-CY4は、Biochem. Biophys. Res. Commun. 227 (3), 846-853 (1996)にCKR-L3としてそのアミノ酸配列が記載されている。
【図面の簡単な説明】
図1は、ヒトLARCのcDNAの塩基配列とその推定アミノ酸配列を示す。
図2は、LARCタンパク質と既知の12種のヒトCC型ケモカインとのアミノ酸配列の比較を示す。
図3は、無刺激および刺激下における各種ヒト細胞株でのLARC mRNAの発現結果を示す図面に代わる写真(A)、および各種ヒト組織におけるLARC mRNAの発現結果を示す図面に代わる写真(B)である。
図4は、組換えベクターpVL-LARCの遺伝子地図である。
図5は、昆虫細胞から生産したヒトLARCの精製の最終ステップからの溶出パターンを示すグラフ(A)、および精製ヒトLARCのSDS-PAGEによる電気泳動と銀染色の結果を示す図面に代わる写真(B)である。
図6は、LARCと陽性対照MCP-3のヒト単球様細胞株THP-1細胞に対するケモタキシス誘導を示すグラフ(A)、LARCと陽性対照MCP-3のヒト末梢血単球に対するケモタキシス誘導を示すグラフ(B)、LARCとMCP-3のヒト末梢血リンパ球に対するケモタキシス誘導を示すグラフ(C)、そしてLARCと陽性対照IL-8のヒト末梢血顆粒球に対するケモタキシス誘導を示すグラフ(D)である。
図7は、組換えベクターpDREF-SEAP(His)6の遺伝子地図(A)、および精製ヒトLARC-SEAP融合タンパク質のSDS-PAGEによる電気泳動結果を示す図面に代わる写真(B)である。
図8において、(A)はヒト末梢血リンパ球に対するLARC-SEAP特異的結合を示すグラフ、(B)はそのScatchard解析の結果を示すグラフ、(C)は一定濃度(1nM)のLARC-SEAPに対し非標識LARCの濃度を変化させたときのLARC-SEAPのヒトリンパ球への結合量の変化を示すグラフ、および(D)は1nMのLARC-SEAPのヒト末梢血リンパ球への結合に対するLARCを含む各種の非標識ヒトケモカイン200nMによる阻害結果を示すグラフである。
図9において、(A)はLARC-SEAP融合タンパクの濃度を変化させた場合のCPR-CY4発現Raji細胞に対する特異的結合を示すグラフ、(B)はそのScatchard解析の結果を示す図、(C)は一定濃度(1nM)のLARC-SEAPに対し非標識LARCの濃度を変化させたときのLARC-SEAPのヒトリンパ球への結合量の変化を示すグラフ、および(D)は1nMのLARC-SEAPのGPR-CY4発現Raji細胞への結合に対するLARCを含む各種の非標識ヒトケモカイン200nMによる阻害を検討した結果を示すグラフである。
図10は、GPR-CY4を発現させた293/EBNA-1細胞およびVectotのみを発現させた293/EBNA-1細胞の遊走活性に対するLARC濃度の影響を示すグラフである。
図11は、GPR-CY4を発現させた293/EBNA-1細胞に対して、LARCは特昇的に細胞内カルシウム濃度を上昇させる活性を有することを示すグラフである。
発明を実施するための最良の形態
本発明は主として、単球様細胞株、黒色腫細胞、正常人由来の単球またはマクロファージ、ある種の癌細胞を刺激することによりその産生が誘導され、主として肝臓と肺にて構成的に発現しているヒトCC型ケモカインに関する。
次に本発明タンパク質の調製工程を説明する。本明細書において、特に指示のない限り、当該分野で公知である遺伝子組換え技術、動物細胞、昆虫細胞、酵母および大腸菌での組換えタンパク質の生産技術、発現したタンパク質の分離精製法、分析法および免疫学的手法が採用され得る。
本発明タンパク質の調製
本発明のLARCタンパク質をコードするDNAを含むDNA断片の配列決定方法を例示する。このDNA断片の配列は、例えばPMA、PHA、LPSで刺激したヒト単球様細胞株U937、黒色腫細胞株Bowes由来のcDNAライブラリーから得ることができるが、そのためには、まず、cDNAライブラリーからLARCタンパク質をコードする遺伝子のクローニングを行うためのプライマーが必要である。
(1)ESTライブラリーからのLARC cDNA部分配列の検索
アメリカNCBIが公開している核酸配列データベースGenBankの一部でありcDNA部分記列から構成されるExpressed Sequence Tag (EST)データベースを、種々のヒトCC型ケモカインアミノ酸配列をもとにTBLASTN検索ソフトを用いて検索し、CC型ケモカインと有意の相同性をもつが、既知のケモカインとは異なるタンパク質をコードすると考えられるcDNA部分配列を得る。得られたcDNA部分配列をもとにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)用プライマー1対を合成する。
(2)LARC cDNAの単離
つぎに、PMAなどで刺激したU937細胞のmRMからcDNA末端迅速増幅法(rapid amplification of cDNA ends、RACE法)(Frohman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:8998-9002, 1988)により5'側と3'側へcDNA断片を増幅し、全長をコードするcDNAの塩基配列を決定する。5'側RACEと3'側RACEは、Quickprep Micro mRNA精製キット(Pharmacia社製)を用いてpoly(A)+RNAを抽出し、このpoly(A)+RNAからマラソンcDNA増幅キット(Marathon cDNA Amplification Kit)(Clontech社製)を用いて行う。得られたLARC cDNAを例えばpGEM-Tベクター(Promega社製)、pBluescript(Stratagene社製)に挿入することにより組換えプラスミドを得る。
(3)塩基配列決定
得られた組換えプラスミドの挿入cDNAの塩基配列の決定には、例えば、まず、挿入断片を該断片の内部に存在する制限酵素部位を用いて切断し、それぞれのcDNA断片をそれぞれ適当なシークエンスベクター、例えばpGEM-Tベクター(Promega社製)、pBluescript(Stratagene社製)にサブクローニングする。次に、常法に従ってプラスミドDNAを抽出し、クローニングした断片の塩基配列を、例えばSanger法(Sanger et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 74: 5463-5467, 1977)によって決定する。これにより、全長LARC cDNAの塩基配列が決定される。
(4)組換えLARCの発現
得られたLARCタンパク質遺伝子を適当な発現ベクターに組み込み、LARCタンパク質を発現するための発現ベクターとする。適切な発現ベクターとしては例えば、細菌についてはpRSET, pGEMEX, pKK233-2、酵母についてはpYES2、昆虫細胞についてはpVL1393、動物細胞についてはpEF-BOS, pSRα, pDR2、などが各々挙げられる。この発現ベクターを適当な宿主細胞、例えば、細菌、酵母、昆虫細胞、または動物細胞に導入して、形質転換体を作製する。大腸菌などの原核微生物では、原核微生物の分泌タンパク質に由来するシグナル配列(例えばシグナルペプチドOMPa)と成熟型LARCタンパク質とが融合した前駆タンパク質として、強力なプロモーター(例えばT7プロモーター)の支配下に発現し得る。酵母では、酵母の分泌タンパク質の天然前駆物質に由来するシグナル配列(例えばフェロモンαのプレプロ配列)と成熟型LARCタンパク質とが融合した前駆タンパク質として、発現し得る。動物細胞では、すでに存在するシグナル配列を含むLARCタンパク質前駆体の遺伝子を強力なプロモーター(例えばEF-1αプロモーター)の下流に挿入し、効果的な選択マーカー(例えばジヒドロ葉酸レダクターゼ)と共に動物細胞(例えばCHO dhfr-細胞)に導入し、薬剤(この場合はメトトレキセート)に対する耐性により細胞を選択し、高発現の細胞株を樹立し得る。またシグナル配列を含むLARCタンパク質前駆体の遺伝子をウイルスまたはレトロウイルスに組込み、この組換えウイルスを動物細胞、ヒト細胞等に感染させることにより、発現し得る。これら形質転換体を培養することにより、LARCタンパク質が産生分泌され得る。
あるいは、成熟型LARCタンパク質は、例えば固相法を用いて2個のジスルフィド結合の存在に必要な注意を払って、公知の方法(Clark-Lewis et al., Biochemistry 30:3128-3135, 1991)を用いて全合成され得る。
得られたタンパク質の精製は当業者に周知の硫安沈殿、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィーを単独であるいは組合わせ行うことができる(Imai et al., J.Biol.Chem. 271:21514-21521, 1996)。
本発明のLARCタンパク質の変異体は、当業者に周知の遺伝子組換え技術(Sambrook et al., Molecular Cloning: A laboratory manual, 2nd edn. New York, Cold Spring Harbor Laboratory)によって調製することができる。
本発明タンパク質に対する抗体の調製
本発明のLARCタンパク質に対する抗体を得るには、例えば、推定されるLARCのアミノ酸配列の一部に基づいて通常のペプチド合成機で合成した合成ペプチドや、LARCを発現するベクターで形質転換した細菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞、などにより産生されたLARCタンパク質を通常のタンパク化学的方法で精製し、これらを免疫原として、マウス、ラット、ハムスター、ウサギなどの動物を免疫し、その血清由来の抗体(ポリクローナル抗体)を作製すればよい。
あるいは、免疫したマウスやラットの脾臓またはリンパ節からリンパ球を取りだし、ミエローマ細胞と融合させてKohlerとMilsteinの方法[Nature, 256, 495-497(1975)]またはその改良法であるUedaらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 79:4386-4390, 1982)]に従ってハイブリドーマを作製した後、該ハイブリドーマから単クローン抗体を産生させ得る。例えば以下の工程によりLARCタンパク質の単クローン抗体を得ることができる:
(a) LARCタンパク質によるマウスの免疫、
(b) 免疫マウスの脾臓の除去および脾臓細胞の分離、
(c) 分離された脾臓細胞とマウスミエローマ細胞との融合促進剤(例えばポリエチレングリコール)の存在下での上記のKohlorらに記載の方法による融合、
(d) 未融合ミエローマ細胞が成長しない選択培地での得られたハイブリドーマ細胞の培養、
(e) 酵素結合免疫吸着検定(ELISA)、ウェスターンブロットなどの方法による所望の抗体を生産するハイブリドーマ細胞の選択および限定希釈法等によるクローニング、
(f) LARC単クローン抗体を生産するハイブリドーマ細胞を培養し、単クローン抗体を収穫する。
LARCタンパク質のmRMとタンパク質の検出
本発明のLARCのmRNAとタンパク質の存在は、通常の特異的mRNAおよびタンパク質に対する検出法を用いて検出できる。例えば、mRNAはアンチセンスRNAやcDNAをプローブに用いたノーザンブロット解析やインサイツ・ハイブリダイゼーション法により検出できる。また、mRMを逆転写酵素でcDNAに変換したのち、適当なプライマーの組み合わせによるPCR法によっても検出することができる。タンパク質については、LARC特異的な抗体を用いた免疫沈降やウエスタンブロットなどにより検出することができる。
LARCタンパク質の免疫学的定量法
例えば、放射性アイソトープ、ペルオキシダーゼやアルカリフォスファターゼのような酵素あるいは蛍光色素などで標識した一定量のLARCに、濃度既知の非標識LARCおよび血清由来の抗LARCポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を加え、抗原抗体競合反応を行わせる。非標識抗原の濃度を適当に変化させた後、抗体と結合した標識抗原と抗体に結合していない標識抗原とを適当な方法で分離し、抗体と結合した標識抗原の放射能量、酵素活性または蛍光強度を測定する。非標識抗原量が増すにつれ、抗体と結合する標識抗原の量は減少する。この関係をグラフにして標準曲線を得る。またLARCタンパク質上の異なるエピトープを認識する2種類の単クローン抗体の一方を固相化し、他方を上記のいずれかの方法でラベルし、固相化抗体に結合したLARCの量をラベル抗体で検出定量する、いわゆるサンドイッチ法も可能である。
次に、上記の反応系に濃度既知の非標識抗原の代わりに未知量の抗原を含む試料を加え、これを反応させた後に得られる、放射能量、酵素活性、または蛍光強度、を標準曲線にあてはめれば、試料中の抗原、すなわちLARCタンパク質の量を知ることができる。LARCタンパク質を定量することにより、炎症反応や免疫反応をモニターする方法が提供され得る。
LARCタンパク質のケモカイン活性の確認
本発明のLARCタンパク質のケモカイン活性は例えば、試験管内では、一定の口径のポアを有するフィルターを介在させて仕切った培養容器の一方の側にLARCを入れ、他方の側に標的細胞を入れて、一定時間後にフィルターのポアを通過してLARCの存在する側へ移動した細胞数をランダムな移動数と比較して示し得る。また、生体内では、精製したLARCタンパク質を動物に投与して細胞の浸潤と集合を組織学的方法で検出することによっても示し得る。
実施例
本発明を以下の実施例によりさらに詳しく説明する。
実施例1
LARCのcDNAの単離およびその構造決定
(1)ESTライブラリーからのLARC cDNA部分配列の検索
アメリカNCBlが公開している核酸配列データベースGenBankの一部である、cCNA部分配列から構成されるExpressed Sequence Tag(EST)データベースを、種々のヒトCC型ケモカインアミノ酸配列をもとにTBLASTN検索ソフトを用いて検索し、CC型ケモカインと有意の相同性をもつが、既知のケモカインとは異なるタンパク質をコードすると考えられる5個のESTデータ(GenBankアクセッション・ナンバー:D17181、D31065、D82589、T27336、T27433)を見出した。これらのデータはそれぞれヒト肝細胞株HepG2、ヒト胎児肺組織、ヒト膵島細胞、ヒト膵島細胞、ヒト膵島細胞のcDNAライブラリー由来のcDNAで、長さはそれぞれ226bp、360bp、342bp、292bp、342bpであり、1994年12月1日、1995年2月8日、1996年1月11日、1994年12月6日、1994年12月6日にそれぞれGenBankに登録されている。
(2)LARC mRNA発現ヒト細胞の確認
LARC mRNAの検出はmRNAを逆転写酵素でcDNAに変換したのち、LARCに特異的なプライマーの組み合わせによるPCR法を用いて行った。まず、GenBank ESTデータD31065の配列をもとにPCR用プライマー1対、NCC-5FプライマーおよびNCC-5Rプライマーを合成した。NCC-5FプライマーおよびNCC-5Rプライマーの配列はそれぞれ次の通りである:
Figure 0004001246
次に、50ng/mlのPMAで6時間刺激したヒト単球様細胞株U937から、QuickPrep Micro mRNA purification Kit(Pharmacia社製)を用いてmRNAを抽出した。精製したmRNAを鋳型として、一本鎖cDNAをPreamplification System(GIBCO-BRL社製)を用いて合成した。得られた一本鎖cDNAを鋳型として反応緩衝液(10mM Tris-HCl、pH8.3、50mM KCl、1.5mM MgCl2、0.1%ゼラチン、200μM dNTP(dATP、dGTP、dCTP、dTTP)、400nM NCC-5Fプライマー、400nM NCC-5Rプライマー、および100U/ml AmpliTaq DNAポリメラーゼl)中で、ポリメレースチェインリアクション(PCR)反応を行った。PCRには宝酒造から購入したAmpliTaq Kitを用い、DNA Thermal Cycler(Perkin-Elmer社製)で行った。反応は、94℃で3分間前処理した後、94℃で45秒間、60℃で45秒間、72℃で1分間の反応サイクルを40回繰り返し、最後に72℃で3分間処理して行った。cDNAが予想されるcDNA断片100bpのシグナルを与えることから、U937細胞がPMA刺激によりLARC mRNAを発現することを見出した。
(3)LARC cDNAの単離
50ng/mlのPMAを培地に加え6時間培養したヒト単球様細胞株U937から抽出したmRNAからMarathon cDMA Amplification Kit(Clontech社製)を用いてLARC cDNAを単離する。まずU937 mRNA 1μgとMarathon cDNA合成プライマー10 pmoleとを含む溶液5μlを70℃で2分間加熱し、水冷後、これにdATP、dCTP、dGTP、dTTP(各1mM)およびMMLV逆転写酵素(100ユニット)を加え、50mM Tris-HCl(pH8.3)、6mM MgCl2、75mM KClの反応液10μl中、42℃で1時間一本鎖cDNA合成反応を行った。反応後、反応液を氷冷し、これにdATP、dCTP、dGTP、dTTP(各0.2mM)、E.coli DNAポリメラーゼl(24ユニット)、E.coli DNAリガーゼ(4.8ユニット)およびE.coli RNase H(1ユニット)を加え、100mM KCl、10mM硫酸アンモニウム、5mM MgCl2、0.15mM β-NAD、20mM Tris-HCl(pH7.5)および0.05mg/mlウシ血清アルブミンの反応液80μl中、16℃で1時間半、二本鎖cDNA合成反応を行った。
次いで、この反応液中にT4 DNAポリメラーゼ(10ユニット)を加え、16℃で45分間反応し、cDNAを平滑末端化した。反応後、フェノール抽出・エタノール沈殿の操作を行った後、DNAを10μlの蒸留水に溶解した。その内の5μlの溶液にMarathon cDNAアダプター20pmoleおよびT4 DNAリガーゼ(1ユニット)を加え、50mM Tris-HCl(pH7.8)、10mM MgCl2、1mM DTT、1mM ATP、5%(w/v)ポリエチレングリコール(MW 8,000)の反応液10μl中、16℃で約20時間反応させ、二本鎖cDNAの両端にアダプターを結合させた。反応後、70℃で2分間加熱してリガーゼを失活させ、さらに10mM Tricine-KOH(pH9.2)、0.1mM EDTAで250倍に希釈後、94℃で2分間加熱し、アダプターを結合させた二本鎖cDNAを変性させた。5' RACE反応はこの変性させたcDNA 5μlにdATP、dCTP、dGTP、dTTP(各0.2mM)、TAKARA LA Taq(2.5ユニット)、TaqStart抗体(0.55μg)、アダプター部に結合するAP1プライマー10pmole、およびNCC0-5Rプライマー(配列番号3)10pmoleを加え、1x TAKARA LA Taq緩衝液の反応液50μl中、94℃で1分の前処理後、直ちに94℃、30秒;60℃、30秒;68℃、4分の条件で30サイクルのPCRを行った。3'RACE反応は上記の反応条件でNCC-5Rプライマーの代わりにNCC-5Fプライマー(配列番号2)を用いた。反応後、PCR産物を2%低融点アガロースゲル電気泳動で分離し、約120bpの5' RACE断片および約780bpの3' RACE断片をフェノール抽出法で回収し、エタノール沈殿の操作を行った後、DNAを10μlの蒸留水に溶解した。その内の5μlをベクターpGEM-T(Promega社製)1.0μlと混合し、T4 DNAリガーゼを用いて16℃で約20時間反応させて両者を連結させ、組換えDNAを作製した。これを大腸菌(E.coli)XL1-Blue MRF'(Stratagene社製)に形質転換し、コロニーを得た。
(4)陽性クローンの同定と塩基配列決定
上記工程で得られたコロニーの内の数個からプラスミドDNAを抽出し、SP6プロモーター・プライマーあるいはT7プロモーター・プライマーを用いてcDNAの5'および3'端側の塩基配列を調べたところ、すべてEST D31065とほぼ同一の塩基配列であった。そこで5' RACEおよび3' RACEから1個づつのクローンDNAを無作為に選択し(以下、5'-RACE cDNAと3'-RACE cDNAと称す)、それらについて全塩基配列をSangerらの方法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74: 5463-5467, 1977]に従って決定した。その結果、最初に現れる翻訳開始コドンATGの規定するメチオニンを含む96個のアミノ酸残基からなるタンパク質をコードするcDNAの全塩基配列を決定した。このタンパク質のアミノ酸配列は既知のケモカインとは完全に一致はしないが、有意の相同性を有し、またCC型ケモカインの構造的特徴である保存された4個のシステイン残基を含むこと、およびN端側に分泌タンパク質に特徴的なシグナル配列様の配列が存在すること、などから新規のCC型ケモカインと推定された。
(5)LARCの推定アミノ酸配列解析
調製したcDNAクローンの塩基配列および内部に翻訳終了コドンを持たないopen reading frame(ORF)のアミノ酸配列を図1に示す。この遺伝子は96個のアミノ酸よりなるORFを有し、N末端にシグナルペプチドに特徴的な、疎水性の強いアミノ酸配列を有する遺伝子であることが明らかとなった。この96個のアミノ酸からなるタンパク質の分子量は、計算によると10,794であった。推定上のシグナルペプチドの切断部位は、計算によるとAla-26とAla-27の間であった。シグナルペプチド切断後の70個のアミノ酸からなる推定上の成熟型タンパク質は、分泌タンパク質であると推定された。この70個のアミノ酸からなる推定上の成熟型分泌タンパク質の分子量は、計算によると8,020であった。この70個のアミノ酸からなる推定上の成熟型分泌タンパク質の等電点は、計算によると10.3であった。
アミノ酸配列の類似性解析はFASTAおよびClustalVプログラムを用いて行った。その結果を図2に示す。得られたcDNAのORFから推定されるCC型ケモカインを含めてすべてのCC型ケモカインで保存されているアミノ酸は四角で囲み、一方殆どのケモカインで保存されているアミノ酸は黒丸で示した。また得られたcDNAのORFから推定されるCC型ケモカインと他のCC型ケモカインとの相同性の程度をシグナルペプチドが切断されたあとの成熟型のタンパク質について%表示で右側に示している。すなわち成熟型分泌タンパク質のアミノ酸配列はCC型ケモカインに属する例えばLD78α/MIP-1αとは27%、MIP-1βとは28%、RANTESとは25%、MCP-1とは25%、MCP-3とは24%、MCP-2とは24%、I-309とは20%の相同性があることが明らかとなった。また、全てのCC型ケモカインで保存されている4つのシステインはLARCでも保存されていることが明らかとなった。従って、得られたアミノ酸配列は新規のヒトCCケモカインのものであると考えられる。
実施例2
ノーザンブロット解析によるLARC mRNAの発現解析
未刺激および50ng/mlのPMAで6時間刺激したヒトT細胞株Jurkat、ヒト血芽球系白血病株K562、ヒト単球様細胞株U937、およびヒトメラノーマ細胞株Bowesから、Quickprep Mioro mRNA精製キット(Pharmacia社製)を用いて、poly(A)+RNAを抽出した。単離したpoly(A)+RNA2μgを、0.66Mホルムアルデヒドを含む1%アガロースゲル中で電気泳動にかけ、ナイロン膜(Hybond-N、Amersham社製)に転写した。また各種のヒト組織より単離したpoly(A)+RNA 2μgを、アガロースゲル電気泳動にかけ、ナイロン膜に転写したもの(マルチプルティッシュブロット)はClonetech社より購入した。これらの膜を、マルチプライムDNA標識システム(Amersham社製)により32Pで標識したLARCの3'-RACE cDNAをプローブとして、ハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーショ溶液は5x SSPE(1x SSPEは、0.18M NaCl、0.01Mリン酸ナトリウム、pH7.5、1mM EDTA)、50%ホルムアミド、2%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、10x Denhardt's溶液、100μg/mlサケ精子DNAを用い、42℃で一晩ハイブリダイゼーションを行った。0.1x SSC、0.1% SDSの緩衝液、50℃の条件で膜の洗浄を行った後、その膜をX線フィルム(Kodak社製)に感光させ、それらを現像して解析した。各種のヒト細胞株の未刺激およびPMAで刺激した後のLARC mRNAの発現をノーザンブロットにより解析した結果を図3Aに示す。図3Aでは、(−)は無刺激、(+)はPMA(50ng/ml)で6時間刺激した場合を示す。
各種のヒト組織でのLARC mRNAの発現をノーザンブロツトにより解析した結果を図3Bに示す。図3A、図3Bともに内部対照として同じフィルターでのGAPDH(グリセルアルデヒト-3-リン酸デヒドロゲナーゼ)のmRNAのノーザンブロットの結果も示している。図3Aは、U937およびBowesでPMA刺激によりLARC mRNAが誘導されてくることを表わしている。図3Bは、LARCのmRNAは主に肝臓で構成的に、また肺でもやや弱く構成的に発現していることを表わしている。
実施例3
組換えLARCタンパク質の発現および精製
組換えLARCタンパク質のカイコ細胞での発現と精製は以下のように行った。
LARCの翻訳開始コドンから翻訳終了コドンまでを含むDNA断片をBgIIIとNotlで切り出し、pVL1393バキュロウイルス転移ベクター(baculovirus transfer vector、Invitrogen社製)のBamHIとNotl部位に組み込み、pVL-LARCを作製した。この組換えベクターpVL-LARCの遺伝子地図を図4に示す。次に、組換えベクターpVL-LARCと致死的な欠失を持つ直線状のAutographa calfornica nuclear polyhedrosis virus(AcNPV)のDNA(Clontech社製)とをSf9昆虫細胞(Invitrogen社製)に同時にリポフェクチン(GIBCO-BRL社製)を用いて導入し、組換えバキュロウイルスを得た。得られた組換えバキュロウイルスは限界希釈法により純化し、さらに、Sf9昆虫細胞にM.O.I.=0.1で感染させて、種ウイルスを得た。この種ウイルスを、Tn5B-4昆虫細胞(Invitrogen社製)(150cm2のフラスコあたり1.2x107個)にM.O.I.=10から20で感染させ、EX-CELL 400無血清培地(JRH Biosciences社製)(150cm2のフラスコあたり30ml)で、27℃で2日間培養した。その後、培養上清を回収し、0.22μmのフィルターメンブランでろ過した。このろ液に1/10容の500mM 2-モルホリノエタンスルホン酸(MES)(pH6.5)を加え、A緩衝液(50mM MES(pH6.5)/100mM NaCl)で平衡化した1mlの陽イオン交換HiTrap-S column(Pharmacia社製)に適用した。このLARCタンパク質の結合したカラムをA緩衝液で洗浄後、45mlのNaClの塩濃度の勾配(0.1-1.0M)により溶出した。LARCタンパク質を含む分画はSDS-PAGEと銀染色を用いて同定した。
このLARCタンパク質を含む分画に最終濃度が0.05%となるようにトリフルオロ酢酸(TFA)を加えた後、A緩衝液+0.05% TFAで平衡化したコスモシル5C4-AR-300カラム(Cosmo Bio社製)にかけ、100mlのアセトニトリル濃度勾配(20-40%)を用いて溶出した。LARCタンパク質の溶出パターンを図5Aに示す。LARCタンパク質を含む分画を集め、真空乾燥でアセトニトリルを揮発させ、PBSに対して透析して最終的な精製品を得た。タンパク質の濃度はBCA kit(Pierce社製)を用い、BSAを対照として決定した。培養上清1.5リットルから500μgの精製LARCタンパク質が得られ、発現量は良好であった。混入しているエンドトキシン量はLimulus amoebocyte lysate assay(QCL-1000、Bio Whitaker社製)を用いて定量すると、4pg/μg以下であった。精製LARCタンパク質のSDS-PAGEによる電気泳動と銀染色の結果を図5Bに示す。精製LARCタンパク質のN末端アミノ酸配列は、アミノ酸シーケンサー(島津社製)を用いて決定し、Ala-Ser-Asn-Phe-Aspであった。このアミノ酸配列は、図1に示した塩基配列から予測されるアミノ酸配列において26位のAlaと27位のAlaの間でシグナルペプチドが切断されたのち、70個のアミノ酸からなる成熟型分泌タンパク質の推定されるN末端アミノ酸配列と一致した。
実施例4
アルカリフォスファターゼ標識LARCの調製
(1)融合タンパク質の調製
リンパ球上のレセプターとの結合を検討するため、アルカリホスファターゼ-(ヒスチジン)6(SEAP(HIS)6)とLARCとの分泌型融合タンパク質を調製する。
Clontech社製のプラスミッドpSEAP-Enhancerを鋳型として、SEAPをコードする領域をヒスチジンが6個つながった配列である(His)6部分をカルボキシル端に付加した形でコードする領域を5'-Xbal-APプライマー(配列番号4)と3'-AP(HIS)6-Notlプライマー(配列番号5)を用いたPCRにより増幅した:
Figure 0004001246
得られたPCR産物を制限酵素XbalとNotlで分解後、pDREF-Hyg(Imai et al., J. Biol. Chem. 271:21514-21521,1996)のXbalとNotl部位の間に導入し、組換えタンパク質をSEAP(HIS)6との融合タンパク質として発現するためのベクターpDREF-SEAP(HlS)6をまず作製した。このベクターの制限断片地図を図7Aに示す。
次に、図7Aに示しているように、pDREF-SEAP(His)6ベクターのSallとXbal部位の間にLARC cDNAのORFを挿入し、LARCが5個のアミノ酸からなるリンカー(Ser-Arg-Scr-Ser-Gly)を介してSEAP-(HIS)6と融合しているタンパク質をコードするベクターpDREF-LARC-SEAP(HIS)6を作製する。このベクターを作製するため、まずLARCをコードする塩基配列をLARCの3'-RACE cDNA(上記)を鋳型として、5'-Sall-LARCプライマー(配列番号6)と3'-LARC-Xbalプライマー(配列番号7)を用いたPCRで増幅した:
Figure 0004001246
得られたPCR産物を制限酵素SallとXbalで分解後、pDREF-SEAP(HIS)6のSallとXbal部位の間に導入し、pDREF-LARC-SEAP(HIS)6を作製した。
pDREF-LARC-SEAP(HIS)6ベクターを293/EBNA-1細胞(Invitrogen社製)にリポフェクチン(Gibco-BRL社製)を用いて導入した。培養3−4日後、培養上清を回収し、0.45μmのポアサイズのフィルターに通し、20mM HEPES(pH7.4)と0.02%アジ化ナトリウム(sodium azide)を加えて4℃に保存した。
得られたヒトLARC-SEAP融合タンパク質をニッケルアガロースカラム(Qiagen社)を用いてアフィニティー精製し、生成融合タンパク質をSDS-PAGEによる電気泳動とCoomassie Brilliant Blue染色を行った。結果を図7Bに示す。
(2)LARC-SEAP(HIS)6の比活性の決定
産生された融合タンパク質(LARC-SEAP)はサンドウィッチ型の酵素結合免疫吸着検定(ELISA)によって定量した。即ち、96穴マイクロテストプレート(Maxsorb)(Nunc社製)を単クローン型抗胎盤アルカリホスファターゼ(anti-PLAP)(Medix Biotech社製)(2μg/ml, 50mM Tris-HCl, pH9.5)でコートし、ウシ血清アルブミン(BSA)(1mg/ml, リン酸緩衝化食塩水(PBS))でブロックした。検体は希釈液(0.02% Tween-20を含むPBS)で希釈し、マイクロプレートに加えて室温で1時間反応後、希釈液で洗浄後、500倍に希釈したビオチン化ウサギ抗PLAP抗体を加えて1時間反応した。さらに洗浄後、パーオキシダーゼ結合ストレプトアビジン(Vector社製)を加えて30分間反応した。洗浄後、結合したパーオキシダーゼの活性を3.3'-5,5'-テトラメチルベンジジンで検出した。反応を1N H2SO4で停止し、450nmの吸光度を測定した。アルカリホスファターゼ(AP)の活性をGreat-EscApe Detection Kit(Clontech社製)を用いたケミルミネセンス法で測定し、相対光量(Relative Light Unit)(RLU)/sとして求めた。AP標準曲線の作製は精製PLAP(Cosmo Bio社製)を用いて行った。試験したSEAPとLARC-SEAPの相対光量は1pmol当たりそれぞれ8.7x107RLU/sと1.7x108RLU/sであった。
試験例1
LARCの各種細胞に対する遊走活性
(1)リンパ球、単球および顆粒球細胞の調製
Lymphoprep(Nyegaard社製)による比重遠心法で健常人末梢血を単核球分画と沈殿分画に分離した。
単核球分画を磁気マイクロビーズ(paramagnetic miocrobeads)を結合した抗CD14(単球マーカー)と30分間4℃で反応させ、次いで細胞浮遊液を磁場においたカラム(VavioMACS)(Miltern Biotec社製)に通してCD14陽性細胞を除去することにより、リンパ球を分離した。単球は単核球分画をそのまま用いた。
顆粒球と赤血球を含む沈殿分画をヒドロキシエチルデンプン(Plasmasteril)(Fresenius AG社)に懸濁し、赤血球を30分間の沈降により除去し、さらに残留した赤血球は蒸留水処理により溶血して、顆粒球分画を得た。
(2)LARCの細胞遊走活性
LARCの細胞遊走活性は48ウェルの走化性チャンバー(Chemotaxis chamber)(Neuro Probe社製)を用いて測定した。
実施例3にて調製した精製組換えヒトLARCを緩衝液(ハンクス平衡塩溶液+0.1%ヒト血清アルブミン)で希釈し、下ウェルに加え、穴のサイズが5μmのポリカーボネートフィルター(polycarbonate filter, Nucleopore社製)で隔て、上ウェルに上記(1)にて入手した各種細胞を加えた。
各種細胞がリンパ球の場合はフィブロネクチン(Gibco-BRL社製)をコートしたボリビニルピロリドン(PVP)不含フィルターを、単球の場合はPVP処理したフィルターを、顆粒球の場合はPVPで処理されていないフィルターを用いた。反応は37℃でリンパ球が4時間、単球が2時間、顆粒球が45分で行った。ヒト単球様細胞株THP-1の場合は2時間行った。陽性対照としてはリンパ球と単球に対してはMCP-3、顆粒球に対してはIL-8を用いた。反応後、フィルターを固定し、Diff-Quick(Harleco社製)で染色し、800倍の顕微鏡下で各穴について無作為に選んだ10視野の細胞数をカウントした。遊走指数は得られた細胞数を陰性対照での細胞数で割って算出した。
LARCと陽性対照MCP-3のヒト単球様細胞株THP-1細胞に対するケモタキシス誘導を検討した結果を示すグラフを図6Aに、LARCと陽性対照MCP-3のヒト末梢血単球に対するケモタキシス誘導を検討した結果を示すグラフを図6Bに、LARCとMCP-3のヒト末梢血リンパ球に対するケモタキシス誘導を検討した結果を示すグラフを図6Cに、そしてLARCと陽性対照IL-8のヒト末梢血顆粒球に対するケモタキシス誘導を検討した結果を示すグラフを図6Dにそれぞれ示す。
図6Cに示されるように、リンパ球は濃度依存的にLARCに対して遊走した。また顆粒球も高濃度のLARCに対して遊走を示した(図6D)。一方、単球やTHP-1はLARCに対し有意の遊走活性を示さなかった(図6A、B)。
試験例2
アルカリフォスファターゼ標識LARCのリンパ球への結合試験
結合試験は20mM HEPES(pH7.4)、1% BSAおよび0.02%アジ化ナトリウムを含むRPM-1640、200ml中で行った。飽和型の結合実検の場合、15℃の条件で5x105個の細胞に各種濃度のLARC-SEAPを加えて1時間反応させた。非特異的結合の測定は1μMの非標識LARCを存在させて行った。洗浄後、細胞を50μlの1% Triton X-100を含む10mM Tris-HCl(pH8.0)で溶解し、細胞に由来するホスファターゼを65℃10分間の処理で不活化し、遠心後、25μlの上清中のAP活性を測定した。LARC-SEAP融合タンパクの濃度を変化させた場合のヒト末梢血リンパ球に対する特異的結合を示すグラフを図8Aに示す。このデータをもとにLIGANDプログラムによりスキャッチヤード解析(Scatchard plot)を行い、Kdを求めた(図8B)。Kdは0.4nMで細胞1個当たり2100部位であった。また排除型の結合実験として、2x105の細胞に1nMのLARC-SEAPと各種の濃度の非標識LARCを加え、室温で1時間反応させ、洗浄後、上記と同様に細胞溶解液中のAP活性を求めた。一定濃度(1nM)のLARC-SEAPに対し非標識LARCの濃度を変化させたときのLARC-SEAPのヒトリンパ球への結合量の変化を示すグラフを図8Cに示す。非特異的結合は1nMのSEAPを用いて測定した。
さらに、1nMのLARC-SEAPに対し、200nMの各種の非標識ケモカインを加え、LARC-SEAPの結合阻害実験を行った。得られた結果を図8Dに示す。LARCの結合はLARCでのみ阻害され、調べた他のCC型およびCXC型ケモカイン(TARCを除き全てPeproTech社製)では阻害されなかった。従って、リンパ球上のLARCレセプターは他のケモカインに対するレセプターとは異なる独立のレセプターであることが判明した。
試験例3
LARCとその特異的レセプターGPR-CY4との結合試験
(1) GPR-CY4を発現する293/EBNA-1細胞およびRaji細胞の調製
GPR-CY4を発現させるために、まずGPR-CY4をコードするDNAの増幅を行った。Genbank accession number U45984の塩基配列に基づいて、GPR-CY4をコードする領域を増幅させるためのプライマーとして以下のHSU45984-SallFプライマー(配列番号8)とHSU45984-NotIRプライマー(配列番号9)を作製した。
Figure 0004001246
ヒト活性化末梢血cDNAライブラリー(Imaiら、Joumal of Biological Chemistry 271: 21514-21521, 1996)を鋳型として、GPR-CY4をコードする領域をHSU45984-SallFプライマー(配列番号8)とHSU45984-NotIRプライマー(配列番号9)を用いたPCRにより増幅し、得られたPCR産物を制限酵素SallとNotlで同時に切断後、pBluescript SK+(Stratagene社製)のSallとNotlサイトの間に導入した。得られたプラスミドから、GPR-CY4をコードする領域をSallとNotlで切断後、pDREF-Hyg(Yoshidaら、FEBS Letters 360: 155-159, 1995)のSallとNotlサイトの間に導入し、pDREF-GPR-CY4を作製した。このベクターを293/EBNA-1細胞(Invitrogen社製、ヒト胎児腎臓細胞株)にIipofectamin(Gibco-BRL社製)を用いて導入した。GPR-CY4が導入された293/EBM-1細胞は、ハイグロマイシン(200μg/ml)存在下で1週間培養し、薬剤耐性を示す細胞を選択することにより得た。Raji細胞(B細胞株)にはエレクトロポレーション法を用いて導入した。エレクトロポレーションは、バイオラッド社のGene Pulserで、電圧250V、静電容量500μFで行った。GPR-CY4が導入されたRaji細胞は、ハイグロマイシン(200μg/ml)存在下で1週間培養し、薬剤耐性を示す細胞を選択することにより得た。
(2)LARC-SEAP融合蛋白質のGPR-CY4を発現させたRaji細胞への特異的結合結合実験に用いる標識LARCとして、LARCと分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP)との融合タンパク質を用いた(Lusterら、J.Exp.Med. 182,219-231,1995)。
結合実験は20mM HEPES(pH7.4), 1% BSA, 0.02% sodium azideを含むRPMI-1640、200ml中で行った。図9Aに示した飽和型の結合実験の場合、16℃の条件で2x105個の細胞に各種の濃度のLARC-SEAPを加えて1時間反応させた。非特異的結合の測定は1mMの非標識LARCを存在させて行った。洗浄後、細胞を50mlの1% Triton X-100を含む10mM Tris-HCl(pH8.0)で溶解し、細胞に由来するホスファターゼを65℃10分間の処理で不活化し、遠心後、25μlの上清中のホスファターゼ(AP)活性を測定した。このデータをもとにLIGAND programによりScatchard plot(図9B)を行い、Kdを求めた。Kdは0.9nMで細胞1個当たりのレセプター数は28,800個であった。従って、LARC-SEAPはGPR-CY4に強く結合することがわかった。また排除型の結合実験(図9C)では2x105の細胞に1nMのLARC-SEAPと各種の濃度の非標識LARCを加え、16℃で1時間反応させ、洗浄後、上記と同様に細胞溶解液中のアルカリホスファターゼ活性を求めた。結合の強さを表す50%阻害濃度は約3.4nMであった。従って、LARCはGPR-CY4に強く結合することがわかった。
次に、LARCのGPR-CY4を発現させたRaji細胞への結合が他のケモカインにより競合されるか否かを調べた。LARC-SEAPの濃度を1nMとし、非標識ケモカイン非存在下もしくは200nMのMCP-1、RANTES、MIP-1α、MIP-1β(全てペプロテック社製)、TARCあるいはLARCの存在下での2x105個のGPR-CY4を発現させたRaji細胞への結合を16℃で1時間行った。非特異的結合は1nMのSEAPを用いて測定した。特異的結合量は、各種の非標識ケモカイン存在下で結合したLARC-SEAPの値から、非特異的に結合したSEAPの値を差し引いて求め、非標識LARCの非存在下での特異的結合量を100%として計算した。その結果を、図9Dに示す。LARC-SEAPの結合は非標識LARCでのみ競合阻害され、他のケモカインでは結合阻害は認められなかった。従って、GPR-CY4は他のケモカインとは強く結合せず、LRACとのみ強く結合するレセプターであることがわかった。
(3) ヒトLARCのGPR-CY4を発現させた293/EBNA-1細胞に対する遊走活性
ヒトLARCのGPR-CY4を発現させた293/EBNA-1細胞に対する遊走活性を48ウェルの走化性チャンバー(chemotaxis chamber、Neuro Probe社製)を用いて測定した。試験例1の記載に従い、昆虫細胞で発現させ精製した組換えヒトLARCを緩衝液[RPMI-1640、20mM Hepos(pH7.4)、1% BSA]で希釈し、下ウェルに加え、1x105個のGPR-CY4を発現させた293/EBNA-1細胞を上ウェルに加えた。コラーゲンIV溶液(20μg/ml水溶液)で37℃、4時間コートしたポリビニルピロリドン不含ポリカーボネート膜(口径8μm、Neuro Probe社製)で上下ウェルの分離を行った。37℃で4時間培養後、膜を取り外し、PBSで上側を洗浄し、固定及び染色を行った。遊走した細胞は400倍の顕微鏡下で、1ウェルにつき無作為に選んだ5視野について数を測定した。その結果を図10に示す。図10のグラフに示される様に、GPR-CY4を発現させた293/EBNA-1細胞はLARCに対して濃度依存的に遊走した。すなわち、LARC濃度約1から1000ng/mlにおいてはLARC濃度の増加と共にGPR-CY4を発現させた293/EBNA-1細胞の遊走が増加し、1000ng/mlで最大の遊走を示し、より高い濃度では逆に遊走が減少するというケモカインに特徴的なベル型の濃度依存性が観察された。一方、発現ベクターのみでLARC cDNAが導入されていない(Vector)293/EBNA-1細胞に対し、LARCは有意の遊走活性を示さなかった。
(4) ヒトLARCのGPR-CY4を発現させた293/EBNA-1細胞に対する細胞内カルシウム濃度上昇活性
GPR-CY4を発現させた293/EBNA-1細胞をHBSS-BSA緩衝液[Hank's緩衝液に1mg/ml BSAと10mM HEPES, pH7.4を含む]で3x106個/mlになるように懸濁し、さらにfura-PE3-AM(Texas Fluoressence Labs社製)を2μMになるように加え、室温暗所で1時間培養した。HBSS-BSA緩衝液で2回洗浄した後、細胞を同緩衝液に2x106個/mlになるように懸濁した。得られた細胞2mlに100nMのLARCを加えたときの蛍光度の変化を蛍光分光光度計(LS50B, Perkin Elmer)を用いて、励起波長340nmおよび380nm、蛍光波長510nm、レスポンス0.2秒で測定した。その結果を、340nmおよび380nmで励起したときの510nmでの蛍光の蛍光強度比で図11に示す。ヒトLARCはGPR-CY4を発現させた293/EBNA-1細胞に対して蛍光強度の比の上昇を誘導した。更に、連続したヒトLARCの添加に対しては蛍光強度の比の上昇が認められない、いわいる脱感作も認められた。従って、本発明のヒトLARCは、GPR-CY4を発現させた293/EBNA-1細胞に対して、特異的に細胞内カルシウム濃度を上昇させる活性を有することがわかった。
産業上の利用の可能性
本発明は、肝臓や肺などで構成的に発現しており、PMAのような免疫学的刺激により単球様細胞等から産生が誘導されるCC型ケモカインであるLARCに関する。
白血球の遊走と組織への浸潤を誘導するケモカインは生体内での炎症反応や免疫反応にとって必須の物質である。ケモカインには現在、主にCXC型とCC型が知られており、それぞれに複数の種類が存在し、産生細胞、産生を誘導する刺激の種類、産生誘導から産生停止に到る反応時間、遊走を誘導する標的細胞の種類などに関し相互に異なる性質を示すことが知られている。LARCは構造的にはCC型ケモカインのグループに属し、おもにリンパ球に選択的に作用し、末梢血単核球を刺激すると産生が誘導されてくるほか、他のケモカインには知られていない特徴として、おもに肝臓で、そして弱く肺で構成的に発現しているという性質を示す。特に肝臓で構成的に発現していることから、肝臓でのリンパ球のホーミングや分化に関与していることが推測される。また単球様細胞株U937をPMA刺激することによって産生が誘導されてくることから、肝臓や肺、またその他の臓器や末梢組織での炎症および免疫反応で重要な働きをしていることが推測される。本発明のLARCは、その機能の解明により、特に肝臓でのリンパ球のホーミングと分化成熟、および肝臓での炎症反応や免疫反応の制御、さらに他の臓器や末梢での炎症反応や免疫反応、等を解明するのに有用であり、それにより、肝臓やその他の臓器また末梢での炎症反応または免疫反応を誘導したりあるいは抑制するための新たな手段を提供することができる。また、本発明によって提供されるLARCの遺伝子およびその抗体は、LARCの遺伝子変異およびそのmRNAおよびタンパク質の発現状態を解析するのに有用であり、血液系疾患および免疫系疾患の原因究明や診断に新たな手段を提供し、それによって血液系疾患および免疫系疾患の診断および治療方法の新たな開発が図られる。また本発明によって提供されるLARCの遺伝子は適当なベクターに挿入され、ex vivoで培養細胞に導入してから体内に戻したり、あるいは直接に体内に投与されることにより、LARC遺伝子の異常による遺伝性疾患、各種の癌、および各種の感染症(特にエイズ)、炎症性疾患、免疫性疾患等を対象にした遺伝子治療の開発に有用である。
配列表
配列番号:1
配列の長さ:799
配列の型:核酸
鎖の数:二本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:cDNA to mRNA
起源
生物名:ヒト
配列の特徴
特徴を表わす記号:CDS
存在位置:59..346
特徴を決定した方法:S
Figure 0004001246
配列番号:2
配列の長さ:22
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
Figure 0004001246
配列番号3
配列の長さ:18
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
Figure 0004001246
配列番号4
配列の長さ:42
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
Figure 0004001246
配列番号5
配列の長さ:53
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
Figure 0004001246
配列番号6
配列の長さ:30
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
Figure 0004001246
配列番号7
配列の長さ:30
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
Figure 0004001246
配列番号:8
配列の長さ:38
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
Figure 0004001246
配列番号:9
配列の長さ:34
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
Figure 0004001246

Claims (1)

  1. 配列番号1のアミノ酸残基1または27からアミノ酸残基96からなるアミノ酸配列を含有するヒトCC型ケモカインもしくはこれらの配列に1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および付加の中から選ばれる1またはそれ以上の変異を含み、かつ該ヒトCC型ケモカインと同じ機能または活性を有する該ヒトCC型ケモカインの変異体であるタンパク質のアゴニスト、インバースアゴニストまたはアンタゴニストをスクリーニングする方法であって、該アゴニスト、インバースアゴニストまたはアンタゴニストを含むと推定される試料、及び該ヒトCC型ケモカインと該タンパク質に特異的なレセプターGPR-CY4とを反応させ、その結合性および/または反応性を測定する工程を包含する方法。
JP1998519197A 1997-07-24 新規ヒトcc型ケモカインlarc Expired - Lifetime JP4001246B2 (ja)

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JP1803897 1997-01-31
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