つぎにこの発明を図面に基づいてより具体的に説明する。図1は、この発明が適用される車両の全体的な制御系統を示すブロック図であり、駆動力源としてのエンジン1の出力側には自動変速機2が連結されている。エンジン1は、その出力を電気的に制御するように構成されており、エンジン1の吸気管3には、サーボモータ4によって駆動される電子スロットルバルブ5が設けられている。また、エンジン1は、燃焼室1Aの燃料噴射量を制御するインジェクタ6Aを含む燃料噴射制御装置6と、スパークプラグ7Aおよびディストリビュータ7Bおよびイグニッションコイル7Cを含む点火時期制御装置7とを備えている。
一方、エンジン1の出力を制御するためのアクセルペダル8の踏み込み量すなわちアクセル開度は、アクセルペダルスイッチ9によって検出され、その検出信号がエンジン用電子制御装置(E−ECU)10に入力されている。このエンジン用電子制御装置10は、中央演算処理装置(CPU)11、記憶装置(RAM、ROM)12、入力インターフェース13、出力インターフェース14を主体とするマイクロコンピュータにより構成されている。
このエンジン用電子制御装置10には、制御のためのデータとして、エンジン(E/G)回転数Ne を検出するエンジン回転数センサ15の信号、吸入空気量Qを検出する吸入空気量センサ16の信号、吸入空気温度を検出する吸入空気温度センサ17の信号、電子スロットルバルブ5の開度を検出するスロットルセンサ18の信号などが入力されている。
さらにエンジン用電子制御装置10には、自動変速機2の出力軸の回転数を検出する車速センサ19の信号、エンジン水温を検出するエンジン水温センサ20の信号、ブレーキペダル21の踏み込み量を検出するブレーキスイッチ22からの信号などが入力されている。
そしてエンジン用電子制御装置10により、各種のセンサやスイッチにより検出されるデータを演算処理することで車両の走行状態が判断され、この判断結果に基づいて、電子スロットルバルブ5の開度、燃料噴射制御装置6の燃料噴射量、点火時期制御装置7の点火時期のうちの少なくとも1つが制御される。
また、エンジン用電子制御装置10は、後述するナビゲーションシステムに対して相互にデータ通信可能に接続されており、ナビゲーションシステムにより検出される走行経路情報に基づいて、電子スロットルバルブ5の開度、燃料噴射制御装置6の燃料噴射量、点火時期制御装置7の点火時期のうちの少なくとも1つを制御することも可能である。
図2は上記の自動変速機2のギアトレーンの一例を示すスケルトン図であり、図2においては、前進5段・後進1段の変速段を設定する有段式の自動変速機2が構成されている。すなわち、自動変速機2は、トルクコンバータ23と、副変速部24と、主変速部25とを備えている。トルクコンバータ23は、ポンプインペラ26に一体化させたフロントカバー27と、タービンランナ28を一体に取付けた部材、言い換えればハブ29と、ロックアップクラッチ30とを有している。
フロントカバー27はエンジン1のクランクシャフト31に連結され、またタービンランナ28に連結された入力軸32は、副変速部24を構成するオーバドライブ用の遊星歯車機構33のキャリヤ34に連結されている。
この遊星歯車機構33を構成するキャリヤ34とサンギヤ35との間には、多板クラッチC0と一方向クラッチF0とが設けられている。この一方向クラッチF0は、サンギヤ35がキャリヤ34に対して相対的に正回転、つまり、入力軸32の回転方向に回転した場合に係合するようになっている。そして、副変速部24の出力要素であるリングギヤ36が、主変速部25の入力要素である中間軸37に接続されている。また、サンギヤ35の回転を選択的に止める多板ブレーキB0が設けられている。
したがって副変速部24は、多板クラッチC0もしくは一方向クラッチF0が係合した状態で遊星歯車機構33の全体が一体となって回転するため、中間軸37が入力軸32と同速度で回転し、低速段となる。またブレーキB0を係合させてサンギヤ35の回転を止めた状態では、リングギヤ36が入力軸32に対して増速されて正回転し、高速段となる。
他方、主変速部25は三組の遊星歯車機構38,39,40を備えており、それらの回転要素が以下のように連結されている。すなわち第1遊星歯車機構38のサンギヤ41と第2遊星歯車機構39のサンギヤ42とが互いに一体的に連結されている。また、第1遊星歯車機構38のリングギヤ43と、第2遊星歯車機構39のキャリヤ44と、第3遊星歯車機構40のキャリヤ45とが連結され、かつそのキャリヤ45に出力軸46が連結されている。さらに第2遊星歯車機構39のリングギヤ47が、第3遊星歯車機構40のサンギヤ48に連結されている。
この主変速部25の歯車列では後進段と前進側の四つの変速段とを設定することができ、そのためのクラッチおよびブレーキが以下のように設けられている。先ずクラッチについて述べると、互いに連結されているリングギヤ47およびサンギヤ48と、中間軸37との間に第1クラッチC1が設けられている。また、互いに連結された第1遊星歯車機構38のサンギヤ49および第2遊星歯車機構39のサンギヤ42と、中間軸37との間に第2クラッチC2が設けられている。
つぎにブレーキについて述べると、第1ブレーキB1はバンドブレーキであって、第1遊星歯車機構38および第2遊星歯車機構39のサンギヤ49,42の回転を止めるように配置されている。またこれらのサンギヤ49,42とケーシング50との間には、第1一方向クラッチF1と多板ブレーキである第2ブレーキB2とが直列に配列されている。第1一方向クラッチF1はサンギヤ49,42が逆回転、つまり入力軸32の回転方向とは反対方向に回転しようとする際に係合するようになっている。
多板ブレーキである第3ブレーキB3が、第1遊星歯車機構38のキャリヤ51とケーシング50との間に設けられている。そして第3遊星歯車機構40のリングギヤ52の回転を止めるブレーキとして、多板ブレーキである第4ブレーキB4と第2一方向クラッチF2とが設けられている。第4ブレーキB4および第2一方向クラッチF2は、ケーシング50とリングギヤ52との間に相互に並列に配置されている。なお、この第2一方向クラッチF2はリングギヤ52が逆回転しようとする際に係合するように構成されている。
上記のように構成された自動変速機2においては、各クラッチやブレーキを図3の動作図表に示すように係合・解放することにより、前進5段・後進1段の変速段を設定することができる。なお、図3において○印は係合状態、●印はエンジンブレーキ時に係合状態、△印は係合・解放のいずれでもよいこと、空欄は解放状態をそれぞれ示す。
そして、この実施例では、シフトレバー53のマニュアル操作により、P(パーキング)レンジ、R(リバース)レンジ、N(ニュートラル)レンジ、D(ドライブ)レンジ、3レンジ、2レンジ、Lレンジの各レンジを設定可能になっている。
そして、図1に示された油圧制御装置54により、自動変速機2における変速段の設定または切り換え制御、ロックアップクラッチ30の係合・解放やライン圧の制御、摩擦係合装置の係合圧の制御などが行われる。油圧制御装置54は電気的に制御されるもので、自動変速機2の変速を実行するための第1ないし第3のシフトソレノイドバルブS1,〜S3と、エンジンブレーキ状態を制御するための第4ソレノイドバルブS4とを備えている。
また、油圧制御装置54は、油圧回路のライン圧を制御するためのリニアソレノイドバルブSLTと、自動変速機2の変速過渡時におけるアキュームレータ背圧を制御するためのリニアソレノイドバルブSLNと、ロックアップクラッチ30や所定の摩擦係合装置の係合圧を制御するためのリニアソレノイドバルブSLUとを備えている。
そして、油圧制御装置54には自動変速機用電子制御装置(T−ECU)55が接続されており、自動変速機用電子制御装置55から上記ソレノイドバルブに対して制御信号が入力され、自動変速機2の変速制御、ライン圧の制御、アキュームレータ背圧の制御などが行われる。この自動変速機用電子制御装置55は、中央演算処理装置(CPU)56、記憶装置(RAM、ROM)57、入力インターフェース58、出力インターフェイス59を主体とするマイクロコンピュータにより構成されている。
この自動変速機用電子制御装置55には、制御のためのデータとしてスロットルセンサ18の信号、車速センサ19の信号、エンジン水温センサ20の信号、ブレーキスイッチ22の信号、シフトレバー53のマニュアル操作を検出するシフトポジションセンサ60の信号、自動変速機2の制御に適用される制御パターンを切り換えるパターンセレクトスイッチ61の信号、オーバドライブスイッチ62の信号、多板クラッチC0の回転速度を検出する入力軸回転センサ63の信号、自動変速機2の作動油温を検出する油温センサ64の信号などが入力されている。
自動変速機用電子制御装置55とエンジン用電子制御装置10とは、相互にデータ通信可能に接続されており、エンジン用電子制御装置10から自動変速機用電子制御装置55に対しては、1回転当たりの吸入空気量(Q/Ne)などの信号が送信され、また自動変速機用電子制御装置55からエンジン用電子制御装置10に対しては、各ソレノイドバルブに対する指示信号と同等の信号および変速段を指示する信号などが送信されている。
すなわち自動変速機用電子制御装置55により、各種のセンサ及びスイッチから入力される信号に基づいて車両の走行状態が判断され、この判断結果と予め記憶している制御パターン、言い換えれば変速線図とに基づいて、自動変速機2の変速段やロックアップクラッチ30のON/OFF制御、ライン圧制御、摩擦係合装置の係合圧の調圧レベルを判断する制御などが行われる。
また、自動変速機用電子制御装置55は、後述するナビゲーションシステムに対して相互にデータ通信可能に接続されており、ナビゲーションシステムにより検出される走行経路情報に基づいて、自動変速機2の構成要素を制御する機能を備えている。
さらに、自動変速機用電子制御装置55は、上記各種のセンサやスイッチから入力される信号の判断結果に基づいて、所定のソレノイドバルブに指示信号を出力する機能と、各種のソレノイドバルブのフェールの判断を実行し、フェールの判断結果に基づいて車両の走行に支障が生じないように構成要素の状態を制御するフェールセーフ機能とを備えている。
図4には、自動変速機2の制御に適用される変速線図の一例が示されている。この変速線図はスロットル開度と車速とを基準にして設定されており、図4の例では第1速から第2速にアップシフトする際の変速線を、エコノミーパターン、ノーマルパターン、パワーパターンについて表している。エコノミーパターンの変速線H1はノーマルパターンの変速線H2よりも低車速側に設定され、パワーパターンの変速線H3はノーマルパターンの変速線H2よりも高車速側に設定されている。また、車両の発進時に第2速が設定されるスノーパターン用の変速線図を設定することも可能である。
これらの変速線図の変更は、パターンセレクトスイッチ61の操作により実行される。また、後述するナビゲーションシステムにより検出される走行経路情報に基づいて変速線図を変更することも可能である。変速線図を変更する手段には、自動変速機用電子制御装置55に予め複数の変速線図を記憶しておき、その変速線図を読み替える機能と、基準になる変速線図を演算処理により補正する機能とが含まれる。
一方、この発明の車両制御装置は図1に示すように、ブレーキ装置65、自動速度制御装置66、懸架装置67、操舵装置68、照明装置69、ナビゲーションシステム70などのシステムを備えている。ブレーキ装置65には図5に示されるように、運転者により操作されるブレーキペダル21、ブレーキペダル21の踏み込み量を検出するブレーキペダルスイッチ22、ブレーキペダル21の踏み込み力を油圧に変換するマスターシリンダ71が含まれる。また、ブレーキ装置65には、マスターシリンダ71から油圧が供給されるホイールシリンダ72、ホイールシリンダ72に作用する油圧を電気的に制御するソレノイドバルブ73、各車輪の回転速度を別個に検出する車輪速度センサ74などの構成要素のほか、これらの構成要素をブレーキペダル21の操作や車両の走行状態に基づいて制御する電子制御装置75が含まれる。
このブレーキ装置65は、ブレーキペダル21の操作によりホイールシリンダ72に油圧が供給されて制動力を生じる制動機能と、車輪速度センサ74により検出される信号に基づいて各ホイールシリンダ72の油圧を制御して車輪のロックを抑制するアンチロックブレーキシステム機能とを備えている。
また、車両の走行状態に基づいてブレーキ装置65のホイールシリンダ72に作用する油圧を制御し、かつ、エンジン1の出力トルクを制御することにより、車両の発進時に過剰な駆動力で車輪がスピンすることを抑制するトラクションコントロール機能を達成することも可能である。
なお、ブレーキ装置65はナビゲーションシステム70に対してデータ通信可能に接続されており、ナビゲーションシステム70により検出される走行経路情報に基づいてホイールシリンダ72に作用する油圧を制御し、ブレーキ装置65の制動力を走行経路の状況に適合させることも可能である。
前記自動速度制御装置66は、エンジン1および自動変速機2を制御して車両の速度を自動的に制御するためのものである。自動速度制御装置66には、車速を設定するためのコントロールスイッチ76、自動速度制御を解除するための解除スイッチ77、車速を検出する車速センサ19、吸気管3に設けられた電子スロットルバルブ5、電子スロットルバルブ5の開閉を制御するサーボモータ4などの構成要素と、各構成要素を設定車速や車両の走行状態に基づいて制御する電子制御装置78とが含まれる。
そして、自動速度制御装置66のコントロールスイッチ76の操作信号がエンジン用電子制御装置10および自動変速機用電子制御装置55に入力され、アクセルペダル8を踏み込まなくても電子スロットルバルブ5の開度が所定の状態に維持され、車速を自動的に一定に制御することが可能である。また、定速走行制御の実行中にアクセルペダル8、ブレーキペダル21、自動変速機2のシフトレバー53などが操作された場合は、定速走行制御が解除されるように構成されている。
なお、自動速度制御装置66はナビゲーションシステム70に対してデータ通信可能に接続されており、ナビゲーションシステム70により検出される走行経路情報に基づいて、定速走行制御の設定または解除を行うことも可能である。
前記懸架装置67は車体を支持し、かつ、車体の振動や操縦安定性などの挙動を制御するためのものである。懸架装置67には、衝撃を吸収するショックアブソーバ79、衝撃を吸収するエアスプリング80、ショクアブソーバ79やエアスプリング80の減衰力を制御するアクチュエータ81などの構成要素と、これらの構成要素を制御する電子制御装置82とが含まれる。
この懸架装置67は、車両の走行状態に応じてショックアブソーバ79の減衰力またはエアスプリング80の減衰力が電子制御装置82で制御され、操縦安定性、乗り心地の向上が図られる。また、懸架装置67はナビゲーションシステム70に対してデータ通信可能に接続されており、ナビゲーションシステム70により検出される走行経路情報に基づいて、ショックアブソーバ79またはエアスプリング80の減衰力を制御することも可能である。
車両の走行方向を制御する操舵装置68には、運転者により操作されるステアリングホイール83、ステアリングホイール83の回転をステアリングリンク84に伝達するギヤボックス85、ギヤボックス85に油圧を供給するベーンポンプ86、ギヤボックス85に作用する油圧を電気的に制御するソレノイドバルブ87などの構成要素のほか、各構成要素を制御する電子制御装置88が含まれる。そして、車速センサ19により検出される車速に応じてギヤボックス85の油圧が制御され、ステアリングホイール83の操作性が向上される。
なお、操舵装置68はナビゲーションシステム70に対してデータ通信可能に接続されており、ナビゲーションシステム70により検出される走行経路情報に基づいてギヤボックス85の油圧を制御し、ステアリングホイール83の操作性を向上させることも可能である。
さらに、照明装置69には、車両の前部に取り付けられたヘッドランプ89、車両の後部に取り付けられたテールランプ90、ヘッドランプ89またはテールランプ90を手動により点灯・消灯させるライトスイッチ91、車両の周囲の照度を検出してヘッドランプ89またはテールランプ90を自動的に点灯・消灯させる照度センサ92、ヘッドランプ89またはテールランプ90に接続された電気回路を開閉させるリレー93などの構成要素のほか、各構成要素を制御する制御回路94が含まれる。
一方、前記ナビゲーションシステム70は車両の走行経路情報を検出するためのもので、ナビゲーションシステム70の具体的な構成例が図6に示されている。すなわち、ナビゲーションシステム70には、電子制御装置95、第1情報検出装置96、第2情報検出装置97、プレーヤ98、マルチAVステーション99、スピーカ100が含まれる。
電子制御装置95は、中央演算処理装置(CPU)101、記憶装置(RAM、ROM)102、入力インターフェース103、出力インターフェース104を主体とするマイクロコンピュータにより構成されている。プレーヤ98は、情報記録媒体105に記憶されている情報を読み取るためのもので、情報記録媒体105には、光ディスクや磁気ディスクなどが含まれる。
前記情報記録媒体105には車両の走行に必要な情報、例えば地図、地名、道路、道路周辺の主要建築物などが記憶されているとともに、具体的な道路状況、例えば、直線路、カーブ、登坂、降坂、砂利路、砂浜、河川敷、市街地、山間地、普通道路、高速道路、川、海、未舗装路、凸凹路、各道路における道路標識、交通法規などが記憶されている。
前記第1情報検出装置96は、自立航法により自車両の現在位置、走行経路の道路状況、他車両と自車両との車間距離などを検出するためのものである。第1情報検出装置96には、車両の走行する方位を検出する地磁気センサ106、ジャイロコンパス107、ステアリングホイール83の舵角を検出するステアリングセンサ108、道路勾配を検出する勾配センサ109などが含まれる。
また、第1情報検出装置96には、先行車両の認識や車間距離を検出するビデオカメラ110、レーザークルーズ装置111、距離センサ112、各車輪の回転速度を別個に検出する車輪速度センサ74、車両の前後加速度または横加速度を検出する加速度センサ113、自動変速機2の出力軸46の回転速度を検出する車速センサ19、車両の周囲の照度を検出する照度センサ92などが含まれる。
そして、第1情報検出装置96と電子制御装置95とがデータ通信可能に接続されており、第1情報検出装置96により検出されたデータが電子制御装置95に送られる。
また、第2情報検出装置97は電波航法により自車両の現在位置、走行経路の道路状況、走行経路の他車両、走行経路の障害物、走行経路の天候などを検出するためのもので、第2情報検出装置97には、人工衛星114からの電波を受信するGPSアンテナ115、GPSアンテナ115に接続されたアンプ116、アンプ116に接続されたGPS受信機117が含まれる。
さらに第2情報検出装置97には、他車両に搭載されている発信機、路側に設置されているビーコンやサインポスト、VICS(ビークル・インフォメーション&コミュニケーション・システム)、SSVS(スーパー・スマート・ビークル・システム)などの地上情報伝達システム118からの電波や光を受信するアンテナ119、アンテナ119に接続されたアンプ120、アンプ120に接続された地上情報受信機121などが含まれる。
そして、GPS受信機117および地上情報受信機121が電子制御装置95にデータ通信可能に接続されており、第2情報検出装置97により検出されたデータが電子制御装置95に送られる。
また、マルチAVステーション99は、液晶または陰極線管(CRT)により構成されたディスプレイ122と、各種のスイッチ123とを備えている。マルチAVステーション99は、目的地までの走行予定経路、走行予定経路の道路状況、自車両の現在位置、他車両の存在およびその位置、障害物の有無やその位置などの情報を画像表示する機能を備えている。なお、各種の情報がディスプレイ122に表示される動作に並行して、スピーカ100により情報を音声で出力することも可能である。
そして、スイッチ123を操作することにより、第1情報検出装置96または第2情報検出装置97の制御、目的地や走行予定経路の設定、走行予定経路における現在位置の修正、地図の拡大や縮小、走行経路の変更などを行うことが可能である。
上記構成のナビゲーションシステム70においては、第1情報検出装置96により検出される走行経路情報のデータと、第2情報検出装置97により検出される走行経路情報のデータと、情報記録媒体105に記憶されている地図データとが総合的に比較または評価され、車両の走行経路における車両の現在位置や周囲の道路状況が判断される。そして、この判断結果がマルチAVステーション99やスピーカ100により出力される。
ここで、第1情報検出装置96により検出されるデータに基づいて現在位置を判断する場合、各センサなどに検出誤差が生じている可能性がある。そこで、マップマッチングにより誤差を吸収する制御が行われている。マップマッチングとは、各種のセンサの信号から検出される車両の走行軌跡と、情報記録媒体105に記憶されている地図データとを比較して、車両の現在位置を補正する制御である。
ここで、上記実施例に係る車両の制御装置のハード構成と請求項1との対応関係を説明すれば、エンジン1、自動変速機2、サーボモータ4、電子スロットルバルブ5、燃料噴射制御装置6、点火時期制御装置7、油圧制御装置54、ブレーキ装置65、自動速度制御装置66、懸架装置67、操舵装置68などのシステムが請求項1の挙動制御装置に相当し、ナビゲーションシステム70が請求項1の走行経路情報検出装置に相当する。
上記ハード構成を有する車両の制御装置は、ナビゲーションシステム70により検出される走行経路情報に基づいて、各挙動制御装置のうちの少なくとも一つのシステムの制御を行うことが可能である。走行経路情報に対応して行われる各種の挙動制御装置の制御パターンには、以下の内容が含まれる。
まず、自動変速機2においては、車両がカーブ路やワインディング路を走行することが検出された場合に自動変速機2をダウンシフトさせてエンジンブレーキ力により車速を減少させる制御、車両が低摩擦係数路から発進することが検出された場合に第2速を設定して駆動力を抑制し、車輪のスリップを抑制する制御などを行うことが可能である。
また、自動変速機2では上記制御のほか、車両が低摩擦係数路を走行することが検出された場合に特定の変速段以下にダウンシフトされることを禁止し、車輪のスリップを抑制する制御、車両がカーブ路を旋回することが検出された場合に変速を禁止する制御、車両が渋滞に進入することが検出された場合に、エンジンブレーキ力が強められる変速段を設定する制御などを行うことが可能である。
さらに、自動変速機2では上記制御のほか、車両が渋滞路で停車中であることが検出された場合にニュートラル制御を実行する制御、車両が未舗装路や山間地を走行することが検出された場合にパワーパターンを設定する制御、車両が高速道路や郊外を走行することが検出された場合にエコノミーパターンを設定する制御、車両が登坂路や降坂路を走行することが検出された場合に特定変速段にアップシフトされることを禁止する制御などを行うことが可能である。
前記ブレーキ装置65においては、車両が低摩擦係数路を走行することが検出された場合にホイールシリンダ72に作用する油圧を抑制して、ブレーキペダル21が踏み込まれた際に車輪がスリップすることを抑制する制御、車両が急勾配の降坂路を走行することが検出された場合にホイールシリンダ72に作用する油圧を増大させて制動力を可及的に高める制御などを行うことが可能である。
また、自動速度制御装置66においては、車両が高速道路を走行することが検出された場合に自動的に車速を設定する制御、車両の前方に渋滞などが検出された場合に事前に定速走行状態を解除する制御などを行うことが可能である。
さらに、懸架装置67においては、車両が未舗装路や砂利路などを走行することが検出された場合にショックアブソーバ79またはエアスプリング80の減衰力を高めて車両の振動を抑制する制御、車両が直線路からカーブ路に移る過渡状態であることが検出された場合に、後輪側の減衰力を高めて車両の回頭性を向上させる制御、車両が旋回途中であることが検出された場合に、前輪側の減衰力を高めてアンダーステア傾向を強める制御などを行い、車両の操縦安定性や乗り心地を向上させることが可能である。
さらに、操舵装置68においては、車両が未舗装路や凸凹路などを走行することが検出された場合に、ギヤボックス85に作用する油圧を増大させる制御を行い、ステアリングホイール83の操作力を軽減して車両の方向安定性を向上させることができる。
さらにまた、エンジン1においては、車両が渋滞路に進入したことが検出された場合には、アクセルペダル8の踏み込み量に関わらず電子スロットルバルブ5を全閉にし、かつ、燃料噴射制御装置6により燃料噴射料を減少させて燃費の向上および触媒の過熱防止を図ることができる。
ところで、ナビゲーションシステム70で検出される走行経路情報と、走行経路の実態とが一致しない状態、言い換えればナビゲーションシステム70による検出精度の低下や、異常、誤差が生じる場合がある。その理由は、人工衛星114からの電波が障害物で遮られ、ナビゲーションシステム70により電波を受信することが不可能になることがあるうえ、第1情報検出装置96の構成要素が各々検出誤差を含むとともに、車輪のスリップなどが生じた場合には各種のセンサーに検出誤差が生じるからである。
ナビゲーションシステム70により検出される走行経路情報と、道路の実態とに相違が生じる道路状況には、車両がY字路を走行する場合、車両がヘアピンカーブを走行する場合、車両がビルなどの谷間を走行する場合、車両がターンテーブル上で旋回する場合、車両がトンネル内を走行する場合、車両が高架の下を走行する場合、規格外のタイヤを使用した場合、車両が地図データに存在しない道路を走行した場合、車両をフェリーなどで運搬する場合などが含まれる。
また、各種の道路工事や埋め立て地の拡張、あるいはトンネルの開通などにより、道路の実態と情報記録媒体105に記憶されている地図データとの整合性が損なわれる場合もある。
このため、走行経路情報の検出精度が低いにもかかわらず、走行経路情報に応じて設定された制御パターンにより挙動制御装置が制御されると、車両の挙動と道路状況との適合性が損なわれる可能性がある。その結果、車両の動力性能、操縦安定性、乗り心地、ドライバビリティなどが低下する。そこで、この発明の車両の制御装置は、ナビゲーションシステム70により検出される走行経路情報の検出精度に対応して、挙動制御装置の制御に適用される制御パターンを変更する制御パターン変更手段を備えている。
以下、この発明の車両制御装置において、ナビゲーションシステム70により検出される走行経路情報の検出精度を判断する制御例と、検出される走行経路情報の精度に対応して、挙動制御装置の制御に適用される制御パターンを変更する制御例とを説明する。
図7に示す制御例は、請求項1に記載された精度検出手段を含むフローチャートである。図7の制御例は、情報記録媒体105に記憶されているデータに基づいて、第1情報検出装置96、第2情報検出装置97により検出されるデータに精度不良が生じる可能性があることを判断する場合を示している。
まず、運転者がマルチAVステーション99のスイッチ123を操作して、目的地の設定や走行経路の地図の表示が行われるとともに、第1情報検出装置96、第2情報検出装置97により検出されるデータに基づいて、車両の現在位置や道路状況が判断される(ステップS11)。そして、情報記録媒体105のデータにより、車両の走行経路の所定距離内に平行した道路が存在するか否かが判断される(ステップS12)。ステップS12で否定判断された場合は、第1情報検出装置96、第2情報検出装置97で検出されるデータにより走行経路を判断したとしても、車両が走行する道路自体の識別の判断を誤る可能性がないためステップS13に進む。
ステップS13では、情報記録媒体105のデータにより、車両の走行経路の所定距離内に複数の交差点が存在するか否かが判断される(ステップS13)。ステップS13で否定判断された場合は、第1情報検出装置96、第2情報検出装置97で検出されるデータにより走行経路の目標交差点を判断したとしても、車両が通過する目標交差点とほかの交差点との識別判断を誤る可能性がないため、第1情報検出装置96、第2情報検出装置97のデータの精度不良を示すフラグがオフされ(ステップS14)、リターンされる。
また、ステップS12で肯定判断された場合は、第1情報検出装置96または第2情報検出装置97により検出されるデータにより車両の走行経路を判断した場合は、複数の道路のいずれを車両が走行しているかの判断を誤る可能性があるため、第1情報検出装置96、第2情報検出装置97により検出されるデータの検出精度不良を示すフラグがオンされ(ステップS15)、リターンされる。
さらに、ステップS13で肯定判断された場合は、第1情報検出装置96、第2情報検出装置97により検出されるデータにより目標交差点を判断した場合には、複数の交差点のいずれが目標交差点であるかの判断を誤る可能性があるため、ステップS15に進む。
ここで、図7に示された機能的手段と請求項1との対応関係を説明すれば、ステップS12,S13,S14,S15が請求項1の精度検出手段に相当する。
図8ないし図15の制御例は、図7の制御例で判断された精度不良フラグに対応して、各挙動制御装置の制御パターンを変更する制御パターン変更手段を示すフローチャートである。
図8の制御例は、ナビゲーションシステム70により車両の前方にコーナーが検出された場合に、自動変速機用電子制御装置55により自動変速機2の変速段を自動的にダウンシフトさせる制御を行うことが前提になる。
まず、ナビゲーションシステム70により検出されるコーナー情報の精度不良を示すフラグがオンされているか否かが判断される(ステップS21)。ステップS21で否定判断された場合は、ナビゲーションシステム70により検出された走行経路情報の精度が所定の値に確保されており、走行経路の前方にコーナー、例えば右折または左折が予定される交差点などが存在することになるため、車両が交差点に到達する前に自動変速機2の変速段を自動的にダウンシフトする制御が行われ(ステップS22)、リターンされる。
その結果、エンジンブレーキ力により車速が減速されてコーナーを円滑に旋回することが可能になり、コーナーの旋回後にアクセルペダル8が踏み込まれることにより充分な加速性が得られ、動力性能、操縦安定性、ドライバビリティが向上する。
また、ステップS21で肯定判断された場合は、車両の前方にコーナーが存在しないことになるため、自動変速機2のダウンシフトが行われずにリターンされる。ここで、図8に示された機能的手段と請求項1との対応関係を説明すれば、ステップS21,S22が請求項1の制御パターン変更手段に相当する。
図9は、自動変速機2の制御パターンを変更する場合のほかの制御例を示すフローチャートである。図9の制御例は、ナビゲーションシステム70により車両の前方に降坂路が検出された場合に、自動変速機用電子制御装置55により自動変速機2の変速段を特定変速段にアップシフトされることを禁止する制御を行うことが前提になっている。
まず、ナビゲーションシステム70により検出される降坂路情報の精度不良を示すフラグがオンされているか否かが判断される(ステップS31)。ステップS31で否定判断された場合は、ナビゲーションシステム70により検出された走行経路情報の精度が所定の値に確保されており、走行経路の前方に降坂路が存在することになるため、自動変速機2の変速段を特定変速段、言い換えればエンジンブレーキ力の効きにくい変速段にアップシフトされることを禁止する制御が行われ(ステップS32)、リターンされる。
その結果、過不足のないエンジンブレーキ力により車速が抑制された状態で車両が降坂路を走行することが可能になり、ドライバビリティが向上する。
また、ステップS31で肯定判断された場合は、車両の前方に降坂路が存在しないことになるため、そのままリターンされる。ここで、図9に示された機能的手段と請求項1との対応関係を説明すれば、ステップS31,S32が請求項1の制御パターン変更手段に相当する。
図10は、自動変速機2の制御パターンを変更する場合のほかの制御例を示すフローチャートである。図10の制御例は、ナビゲーションシステム70により車両の前方に駆動力の増大が要求される道路、例えば登坂路が検出された場合に、自動変速機用電子制御装置55により自動変速機2の変速パターンをパワーパターンに変更する制御を行うことが前提になっている。
まず、ナビゲーションシステム70により検出される登坂路情報の精度不良を示すフラグがオンされているか否かが判断される(ステップS41)。ステップS41で否定判断された場合は、ナビゲーションシステム70により検出された走行経路情報の精度が所定の値に確保されており、走行経路の前方に登坂路が存在することになるため、自動変速機2の変速パターンをパワーパターンに変更する制御が行われ(ステップS42)、リターンされる。
その結果、低車速側の変速段が使用されやすくなり、車両の駆動力が勾配抵抗に応じて充分な値に維持され、ドライバビリティが向上する。
また、ステップS41で肯定判断された場合は、車両の前方に登坂路が存在しないことになるため、そのままリターンされる。ここで、図10に示された機能的手段と請求項1との対応関係を説明すれば、ステップS41,S42が請求項1の制御パターン変更手段に相当する。
なお、この車両の制御装置により自動変速機2の制御パターンを変更する例としては、車両がカーブ路を旋回することが検出された場合に変速を禁止する制御、車両が渋滞に進入することが検出された場合に、エンジンブレーキ力が強められる変速段を設定する制御などがあげられる。
さらに、この車両の制御装置により自動変速機2の制御パターンを変更する例としては、車両が渋滞路で停車中であることが検出された場合にニュートラル制御を実行する制御、車両が高速道路や郊外を走行することが検出された場合にエコノミーパターンを設定する制御、車両が登坂路や降坂路を走行することが検出された場合に特定変速段にアップシフトされることを禁止する制御などがあげられる。
図11の制御例は、ナビゲーションシステム70により検出される走行経路情報の検出精度に基づいて、ブレーキ装置65の制御パターンを変更する場合のほかの制御例を示すフローチャートである。図11の制御例は、ナビゲーションシステム70により車両の前方に降坂路が検出された場合に、勾配の程度に応じてホイールシリンダ72に作用する油圧を可及的に増大させる制御を行うことが前提になっている。
まず、ナビゲーションシステム70により検出される降坂路の勾配情報の精度不良を示すフラグがオンされているか否かが判断され(ステップS51)、ステップS51で否定判断された場合は、ナビゲーションシステム70により検出された走行経路情報の精度が所定の値に確保されており、走行経路の前方に存在する降坂路の勾配が所定値以上であることになる。
そこで、ブレーキ装置65のホイールシリンダ72の油圧を、ブレーキペダル21の踏み込み量に対応する油圧よりも高い値まで増大させる制御が行われ(ステップS52)、リターンされる。その結果、ブレーキ装置65の制動力が降坂路の勾配に適合した値に制御され、ドライバビリティが向上する。
また、ステップS51で肯定判断された場合は、車両の前方に降坂路が存在しないか、または勾配程度が所定値以下であることになるため、そのままリターンされる。ここで、図11に示された機能的手段と請求項1との対応関係を説明すれば、ステップS51,S52が請求項1の制御パターン変更手段に相当する。
図12の制御例は、ナビゲーションシステム70により検出される走行経路情報の検出精度に基づいて、自動速度制御装置66の制御パターンを変更する場合を示すフローチャートである。図12の制御例は、ナビゲーションシステム70により高速道路の渋滞が検出された場合に、定速走行制御を解除する制御を行うことが前提になっている。
図12の制御例では、高速道路などで自動速度制御装置66の定速走行制御が行われている際に、ナビゲーションシステム70により検出される渋滞情報の精度不良を示すフラグがオンされているか否かが判断される(ステップS61)。
ステップS61で否定判断された場合は、ナビゲーションシステム70により検出された走行経路情報の精度が所定の値に確保されており、走行経路の前方に渋滞が存在することになる。そこで、自動速度制御装置66による定速走行制御が解除され(ステップS62)、リターンされる。また、ステップS61で肯定判断された場合は、リターンされて定速走行制御が継続される。ここで、図12に示された機能的手段と請求項1との対応関係を説明すれば、ステップS61,S62が請求項1の制御パターン変更手段に相当する。
図13の制御例は、ナビゲーションシステム70により検出される走行経路情報の検出精度に基づいて、懸架装置67の制御パターンを変更する場合を示すフローチャートである。図13の制御例は、ナビゲーションシステム70により未舗装路または凸凹路が検出された場合に、懸架装置67のショックアブソーバ79またはエアスプリング80の減衰力を増大、言い換えればハード化させる制御を行うことが前提になっている。
図13の制御例では、ナビゲーションシステム70により検出される未舗装路または凸凹路情報の精度不良を示すフラグがオンされているか否かが判断される(ステップS71)。
ステップS71で否定判断された場合は、ナビゲーションシステム70により検出された走行経路情報の精度が所定の値に確保されており、走行経路の前方に未舗装路または凸凹路が存在することになる。そこで、懸架装置67の減衰力を高める制御が行われ(ステップS72)、リターンされる。その結果、車両が未舗装路または凸凹路を通過する際の振動が抑制されて乗り心地が向上する。
また、ステップS71で肯定判断された場合は、リターンされて懸架装置67の減衰力がそのままの値に維持される。ここで、図13に示された機能的手段と請求項1との対応関係を説明すれば、ステップS71,S72が請求項1の制御パターン変更手段に相当する。
図14の制御例は、ナビゲーションシステム70により検出される走行経路情報の検出精度に基づいて、操舵装置68の制御パターンを変更する場合を示すフローチャートである。図14の制御例は、ナビゲーションシステム70により未舗装路または凸凹路が検出された場合に、操舵装置68のギヤボックス85の油圧を増大させる制御を行うことが前提になっている。
図14の制御例では、ナビゲーションシステム70により検出される未舗装路または凸凹路情報の精度不良を示すフラグがオンされているか否かが判断される(ステップS81)。
ステップS81で否定判断された場合は、ナビゲーションシステム70により検出された走行経路情報の精度が所定の値に確保されており、走行経路の前方に未舗装路または凸凹路が存在することになる。そこで、操舵装置68のギヤボックス85の油圧を増大させる制御が行われ(ステップS82)、リターンされる。その結果、ステアリングホイール83に小さな操作力を与えるだけで車両の方向安定性が確保され、操縦安定性、ドライバビリティが向上する。
また、ステップS81で肯定判断された場合は、走行経路が比較的平坦であることになるため、リターンされる。ここで、図14に示された機能的手段と請求項1との対応関係を説明すれば、ステップS81,S82が請求項1の制御パターン変更手段に相当する。
図15の制御例は、ナビゲーションシステム70により検出される走行経路情報の検出精度に基づいて、エンジン1の出力制御パターンを変更する場合を示すフローチャートである。具体的には、ナビゲーションシステム70により走行経路の渋滞が検出された場合に、燃料噴射制御装置6により燃料噴射量の減少制御が行われることが前提になっている。
図15の制御例では、ナビゲーションシステム70により検出される渋滞情報の精度不良を示すフラグがオンされているか否かが判断される(ステップS91)。
ステップS91で否定判断された場合は、ナビゲーションシステム70により検出された渋滞情報の精度が所定の値に確保されており、車両が渋滞に進入していることになる。そこで、アクセルペダル8の踏み込み量に関わりなく電子スロットルバルブ5を全閉にし、かつ、燃焼室1Aに対する燃料供給量を減少させる制御が行われ(ステップS92)、リターンされる。その結果、触媒の過熱防止と燃料の節約が図られる。
また、ステップS91で肯定判断された場合は、車両が渋滞に進入する可能性がないことになるためリターンされる。ここで、図15に示された機能的手段と請求項1との対応関係を説明すれば、ステップS91,S92が請求項1の制御パターン変更手段に相当する。
なお、上記実施例において、図7に示された制御例と、図8ないし図15に示された制御例のうちの複数の制御例とを組み合わせて適用することも可能である。
以上のように、この発明の車両の制御装置によれば、ナビゲーションシステム70により検出される走行経路情報に基づいて車両の挙動を制御するにあたり、図7の制御例に示すように、ナビゲーションシステム70により検出される走行経路情報の検出精度を精度検出手段より判断し、かつ、精度検出手段の判断結果に基づいて、図8ないし図15の制御例に示すように各挙動制御装置の制御パターンが制御パターン変更手段により変更される。
したがって、走行経路の実態に適合しない検出精度の低い走行経路情報が検出された場合は、検出精度の低い走行経路情報に対応する挙動制御を行わないことで、実際の道路状況と車両の挙動制御との適合性をきめ細かく調整することが可能になり、車両の操縦安定性、動力性能、乗り心地、ドライバビリティなどの低下を抑制できる。
なお、この発明において、ナビゲーションシステム70の走行経路情報の検出精度に対応して、各挙動制御装置の制御パターンを変更する制御パターン変更手段には、道路状況に応じて設定されている制御パターンの適用を禁止する機能と、道路状況の検出精度の度合いに応じて制御パターンの制御の度合いを変更する機能と、制御パターンをほかの制御パターンに置き換える機能とが含まれる。
上記のように、道路状況の検出精度の度合いに応じて制御パターンの制御の度合いを変更する機能は、走行経路情報の検出精度を複数に区分し、かつ、検出精度の複数の区分に対応して複数の判断基準を設定しておき、各判断基準に対応して内容の異なる制御を設定しておくことにより実行可能である。具体例としては、ナビゲーションシステムにより検出されるデータの検出精度の度合いに応じて、自動変速機の変速制御の判断基準になるしきい値を複数用意しておくことなどがある。
また、制御パターンを変更する制御パターン変更手段には、基準になる制御パターンを演算処理により補正する機能と、予め設定された複数の制御パターンを読み替える機能とが含まれる。
なお、この発明の車両の制御装置においては、駆動力源として電動モータを適用することも可能であり、自動変速機として公知の無段変速機を適用することも可能である。また、自動変速機に代えて手動変速機を適用することも可能である。
1…エンジン、 2…自動変速機、 10…エンジン用電子制御装置、 54…油圧制御装置、 55…自動変速機用電子制御装置、 65…ブレーキ装置、 66…自動速度制御装置、 67…懸架装置、 68…操舵装置、 70…ナビゲーションシステム。