JP4000196B2 - ポリスルホン系血液浄化膜 - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は、血液透析膜、血液フィルターなどの血液浄化用膜に関するものであり、より具体的には血液適合性の優れたポリスルホン系血液浄化膜並びに洗浄性、製膜用溶媒の回収性などの製膜特性が改善された血液適合性の優れたポリスルホン系血液浄化膜に関するものである。
背景技術
ポリスルホン樹脂は、その耐熱性、耐薬品性及び耐γ線性が優れているため、医用材料としての応用展開が盛んになされている樹脂の1つであり、高透過性の人工透析膜素材としても用いられている。ところが、ポリスルホン自体は疎水性であるのでそのもの自体の血液適合性はあまり良くない。血液適合性を改善するために様々な方法が開発されている。例えば、特開昭61-93801号公報は、ポリビニルピロリドンを添加することによる膜の血液適合性改善方法を開示しており、また、特開平6−165926号公報は、ビニルピロリドン系ポリマーと共にポリグリコール類を含有した血液処理用ポリスルホン中空糸膜を開示している。
これらのように、親水性ポリマーをブレンドすることにより血液適合性の改善は可能であるが、ポリスルホン樹脂に添加される親水性ポリマーが水溶性であるが故に、製膜後の充分な洗浄が必須であり、製膜プロセスは一般に洗浄工程が長くなるため効率的ではない。さらに、水溶性の親水性ポリマーを添加した場合には、前述のように得られた膜の洗浄の煩雑さの問題に加え、製膜時に添加した水溶性ポリマーが多量に凝固液中に溶出するといった問題も製造上の大きな問題となっている。すなわち、凝固液から膜の溶剤を回収するにあたり、親水性ポリマーの存在により凝固液の粘度が大幅に高くなるため、溶剤の回収率を上げることが困難となる。
一方、添加した親水性ポリマーの溶出性を抑制するために、例えば特開昭63-97205号公報、特開平4−300636号公報の発明は、ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーを添加したポリスルホン系膜に熱処理や放射線処理を施す技術を開示している。しかし、熱処理はかなりの高温(170℃以上)が必要となるため膜性能を維持することが困難である。また、γ線照射等により高度に架橋を行う方法は、その血液適合性を低下させる可能性も無視することはできない。また、これらの方法においては親水性ポリマーの凝固液中への溶出による問題を解決することもできない。
さらに、ポリスルホン膜の透水性能の改善を目的として、水への溶解性の低い親水性ポリマーを添加した例として、ポリスルホンセグメントと親水性ポリマーセグメントからなるグラフトコポリマーやブロックコポリマーを添加する製膜方法が特開昭62−168503号公報、特開昭62−199621号公報、特開昭62−201603号公報、特開昭63-88003号公報、特開昭63-84603号公報、特開平2−140234号公報等に開示されている。
発明の開示
本発明は、優れた血液適合性を有するポリスルホン系血液浄化膜の提供を目的とするものである。
本発明の他の目的は、優れた血液適合性を有するポリスルホン系血液浄化膜を洗浄工程が簡素で製膜ドープに用いられる溶剤の回収率が高められたプロセスで製造できる方法を提供することである。
本発明は、親水性セグメントと疎水性セグメントからなるグラフトコポリマーまたは/及びブロックコポリマーを含むポリスルホン膜が優れた血液適合性を示し、これらのグラフトコポリマーまたは/及びブロックコポリマーが製膜時凝固液に容易に溶出しないことに着目したものである。
すなわち本発明の目的は、本発明による親水性セグメント(A)及び疎水性セグメント(B)(但しポリスルホンは除く)からなるグラフトコポリマーまたは/及びブロックコポリマーを含むポリスルホン膜であり、AとBとのモノマーユニット比(A/B)が0.5以上5以下の範囲であり、かつ、AとBの合計がポリスルホン100重量部に対して0.5重量部以上30重量部以下である、ポリスルホン系血液浄化膜によって達成される。
なお、ここでいうA,Bのモノマーユニットとは親水性セグメント及び疎水性セグメントを構成する重合体中の反復単位であって、ポリビニルピロリドンセグメントとポリスチレンセグメントからなるグラフトコポリマーまたはブロックコポリマーの例で示すと、それぞれ下記〔I〕及び下記〔II〕に示す如き反復単位である。
Figure 0004000196
本発明のポリスルホン系血液浄化用膜の上記溶出性の向上と優れた血液適合性は、疎水性セグメントと親水性セグメントをグラフトコポリマーまたは/及びブロックコポリマーとすることにより、疎水性セグメントがポリスルホン膜にとりこまれ、あるいは親和性をもって結合し、その結果膜表面の親水性セグメントに対する疎水性セグメントの比率が膜全体の親水性セグメントに対する疎水性セグメントの比率に比べ小さくなることにより、達成されることを膜表面の解析により見いだした。
すなわち、本発明は、さらに親水性セグメント(A)及び疎水性セグメント(B)(但しポリスルホンは除く)からなるグラフトコポリマーまたは/及びブロックコポリマーを含むポリスルホン膜であり、AとBとのモノマーユニット比(A/B)が0.5以上5以下の範囲であり、AとBの合計がポリスルホン100重量部に対して0.5重量部以上30重量部以下であり、かつ膜表面に存在する疎水性セグメント(B’)及び親水性セグメント(A’)のモノマーユニット比(U=B’/A’)が膜全体に存在する疎水性セグメント(B)及び親水性セグメント(A)のモノマーユニット比(V=B/A)より小さいことを特徴とする、ポリスルホン系血液浄化膜を提供するものである。
ここで、モノマーユニット比“U”は、膜の表面におけるコポリマーの親水性ユニット、コポリマーの疎水性ユニット及びポリスルホンの存在比率を、ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)により、両ユニット及びポリスルホンの特徴的な元素の定量、特徴的な化学結合状態の元素の定量(必要ならばピーク分割処理による定量)や構成元素の定量をすることにより求められるものと定義される。1例として、ポリビニルピロリドンセグメントとポリスチレンセグメントからなるコポリマーを含む式(IV)に示される繰り返しユニットからなるポリスルホン樹脂の膜の場合のモノマーユニット比“U”の測定方法を説明する。ESCAにより膜表面のビニルピロリドンユニット由来の窒素及びポリスルホン由来の硫黄の存在比率を測定し、同様にESCAにより測定し求めたポリビニルピロリドンフィルムの窒素の存在比率及び添加剤無添加のポリスルホン膜の硫黄の存在比率からビニルピロリドンユニットの被覆率及びポリスルホンの露出率を求める。次いで、ビニルピロリドンユニットの被覆率及びポリスルホンの露出率からスチレンユニットの被覆率を求める。このビニルピロリドンユニットの被覆率及びスチレンユニットの被覆率から膜のモノマーユニット比“U”が求められる。
本発明でいうポリスルホンとは、下記式〔III〕で表わされる繰り返しユニットを含む構造によって特徴づけられるポリアリールエーテルスルホンポリマーである。例えば、下記式〔IV〕で表わされる繰り返しユニットからなるポリマー、下記式〔III〕で表わされる繰り返しユニットからなるポリマーが挙げられる。
Figure 0004000196
本発明でいう親水性セグメント(A)及び疎水性セグメント(B)(但し、ポリスルホンは除く)からなるグラフトコポリマーまたは/及びブロックコポリマーは、A−B,A−B−A,B−A−B,(A−B)X−A,B−(A−B)Xといった形で示されるブロックコポリマー、前記親水性セグメント(A)を幹とし前記疎水性セグメント(B)を枝とするかあるいはこれと逆のグラフトコポリマーである。
コポリマーの分子量は、3×104〜2×106ダルトンの範囲でのものが好適に用いられる。
本発明における親水性セグメントとしては、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、グリセロールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、N,N′−ジメチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、ビニルアルコール等のモノマーの重合体または共重合体からなるセグメント、ポリエチレングリコールセグメントやポリプロピレングリコールセグメント等を挙げることができる。
本発明における疎水性セグメントとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸エステル及びアクリル酸エステルやスチレン、メチルスチレン、エチルスチレン等のスチレン系モノマー、酢酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル、アクリロニトリル等のモノマーの重合体または共重合体からなるセグメントを挙げることができる。
上記コポリマーは、一般に知られている方法によって重合することが可能である。例えば、アニオンリビング重合、カチオンリビング重合や光イニファーター重合(日本ゴム協会誌、第59巻 第12号 P.658,1986)により、親水性モノマーと疎水性モノマーからブロックコポリマーを合成することができる。また、グラフトコポリマーの合成法については、例えば、特開昭50-77526号公報やAngew.Makromol.Chem.,vol.132,81(1985)に示されている。以下に、幾つかの合成例についてより詳しく説明する。まず、光イニファーター重合によるブロック型コポリマーの合成方法の例を以下に示す。親水性モノマー又は疎水性モノマーとジチオカルバメート基を有する光リビング重合開始剤(例としてはベンジルN,N−ジエチルジチオカルバメートやp−キシレンビス(N,N−ジエチルジチオカルバメート)などがある)を溶媒に溶解し、UVランプの光を当て重合し、成長性末端を有するポリマーを合成する。この反応液より成長性末端を有するポリマーを精製分離し、このポリマーと共に、親水性モノマーから得られたポリマーでは疎水性モノマーを、また、疎水性モノマーから得られたポリマーでは親水性モノマーを溶媒に溶解し、再度UVランプ光を当て成長性末端より重合を行いブロックコポリマーが得られる。また、(A−B)X−A,(B−A)X−Bの繰り返しを有するブロックコポリマーは、成長性末端を有するポリマーの精製分離、モノマーとのUV光による重合を縛り返すことにより得られる。
アニオンリビング重合によるブロック型コポリマーの合成方法の例を以下に示す。脱水した親水性モノマー又は疎水性モノマーを脱水した溶媒中で重合開始剤(ナフタリンナトリウムなど)により重合し、成長性末端を有するポリマーが合成される。モノマーの反応が終了した後、親水性モノマーから得られたポリマーでは脱水した疎水性モノマーを、また、疎水性モノマーから得られたポリマーでは脱水した親水性モノマーを上記反応液に加え、成長性末端より重合を行いブロックポリマーが得られる。また、(A−B)X−A,(B−A)X−Bの繰り返しを有するブロックコポリマーは、加えられたモノマーが反応し終わった後、モノマーを添加する操作を繰り返すことにより得られる。
マクロモノマーとモノマーの共重合によるグラフト型コポリマーの合成方法の例を以下に示す。マクロモノマーは、片末端に二重結合を有するポリエチレングリコールやポリスチレンが市販されているが、必要に応じ以下の方法で合成を行う事ができる。即ち、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を重合開始剤、3−メルカプトプロピオン酸を連鎖移動剤として親水性モノマーまたは疎水性モノマーを重合して片末端にカルボキシル基を有するプレポリマーを合成する。次に、このプレポリマーとメタクリル酸グリシジルを反応させることにより親水性マクロマーまたは疎水性マクロマーが得られる。また、他のマクロモノマーの合成方法としては、親水性モノマーまたは疎水性モノマーをアニオン重合法により重合後、メタクリル酸クロライドを加え反応させ、片末端に二重結合を有する親水性マクロマーまたは疎水性マクロマーを得る方法などが挙げられる。
親水性マクロマーと疎水性モノマーあるいは、疎水性マクロマーと親水性モノマーを溶媒中ラジカル重合開始剤存在下で重合し、疎水性セグメントと親水性セグメントからなるグラフトコポリマーが得られる。
本発明のポリスルホン系血液浄用化膜は、ポリスルホン、及びポリスルホン100重量部に対して、0.5〜30重量部の親水性セグメント(A)及び疎水性セグメント(B)(但しポリスルホンは除く)からなり前記セグメントをAとBとのモノマーユニット比(A/B)が0.5以上5以下の範囲で含むグラフトコポリマーまたは/及びブロックコポリマーを、ポリスルホンが調製すべきドープに対し12〜25重量%になるよう所定の溶剤に溶解し、しかる後この調製した製膜用ドープを平膜もしくは中空糸に形成し、所定の凝固液と接触せしめ、溶剤を除去し洗浄するいわゆる湿式製膜法によって調製することができる。
本発明のポリスルホン系血液浄化用膜は、凝固過程において前記した構造の膜が形成され、凝固液及び凝固後の洗浄液にグラフトコポリマーまたは/及びブロックコポリマーが実質的に溶出することがない。従って凝固液から膜の溶剤を蒸留等で回収する際、ポリマーの溶出による粘度の増大がないので高い回収率で溶剤回収が可能である。また、凝固後の洗浄でも溶出がないので洗浄工程が短くてすむといった利点がある。
発明を実施するための最良の形態
本発明で用いられるグラフトコポリマーまたは/及びブロックコポリマーにおいて、親水性セグメント(A)は好ましくはポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールセグメントであり、特に好ましくはポリビニルピロリドンセグメントであり、好ましい疎水性セグメント(B)はポリメチルメタクリレートセグメント、ポリスチレンセグメントであり特にポリスチレンセグメントが好まい。
グラフトコポリマーの使用が更に好ましく、この場合ポリメチルメタクリレートセグメントまたはポリスチレンセグメントを幹としてポリエチレングリコールセグメントを枝としたグラフトコポリマー、ポリビニルピロリドンセグメントを幹としポリメチルメタクリレートセグメント又はポリスチレンセグメントを枝としたグラフトコポリマーを挙げることができる。最も好ましい例は、ポリビニルピロリドンセグメントを幹としポリスチレンセグメントを枝としたグラフトコポリマーである。
上述に例示したグラフトコポリマーまたは/及びブロックコポリマーは、既に詳述した公知の合成技術を適用することによって容易に調製することができる。
コポリマーの分子量としては、3×104ダルトンから2×106ダルトンの範囲にあることが好ましく、より好ましくは5×104ダルトンから1.5×106ダルトン、さらに好ましくは1×105ダルトンから1×106ダルトンである。分子量が小さすぎると添加効果が十分得られなかったり、水洗工程の煩雑さが十分解消されないことがあり、また、分子量が高すぎた場合には、ポリスルホン樹脂との混合性が悪くなり、実用上において均一な膜が得られないことがある。ここでいう分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で求められるスチレン換算分子量のうちのピークトップ分子量であり、より具体的にはShodex<商標登録>GPC KD−800シリーズをカラムとし、溶離液として0.01モル/リットルの臭化リチウムを含むN,N−ジメチルホルムアミドを、検出器として示差屈折率計を用いた場合に得られるスチレン換算のGPCピークトップ分子量である。
本発明の親水性セグメント(A)と疎水性セグメント(B)との比率は、AとBとのモノマーユニット比(A/B)で0.5以上5以下、好ましくは、1以上4以下、より好ましくは1.2以上3以下である。親水性セグメントと疎水性セグメントの比率は、非水溶性及びポリスルホン系膜の血液適合性改善効果との兼ね合いより決定される。すなわち親水性セグメントの比率が疎水性セグメントに対し高すぎる場合には、水洗工程の煩雑さが解消されなかったり、凝固液中への溶出が十分に抑制されず、その結果として溶媒の回収率を上げることが困難となる。また、逆に親水性セグメントの比率が疎水性セグメントに対し低すぎる場合には、ポリスルホン膜の血液適合性を十分に改善することができない。
本発明のポリスルホン系膜中に含まれる親水性セグメント(A)と疎水性セグメント(B)との量は、AとBの合計がポリスルホン100重量部に対して0.5重量部以上30重量部以下であることが必要であり、より好ましくは3重量部から25重量部であり、さらに好ましくは6重量部から20重量部である。親水性セグメント及び疎水性セグメントの膜中へ含まれる量が大きくなりすぎると膜の耐熱性や機械強度において問題となることがあり、また、逆にこれらのセグメントの含有率が低すぎた場合には良好な血液適合性を示さないといった問題が起こりうる。
本発明のポリスルホン系血液浄化膜の好適な態様は、その膜表面に存在する疎水性セグメント(B’)及び親水性セグメント(A’)のモノマーユニット比(U=B’/A’)が膜全体に存在する疎水性セグメント(B)及び親水性セグメント(A)のモノマーユニット比(V=B/A)より小さい断面構造を有している。例えば、膜表面に存在する疎水性セグメント(B’)と親水性セグメント(A’)のモノマーユニット比(U=B’/A’)を膜全体に存在する疎水性セグメント(B)と親水性セグメント(A)とのモノマーユニット比(V=B/A)から差し引いた値を膜全体に存在する疎水性セグメント(B)と親水性セグメント(A)とのモノマーユニット比(V=B/A)で割った値(膜表面の疎水性セグメント減少計率・W)をその指標とすると、好ましくは0.3以上1以下の値をとり、より好ましくは0.5以上1以下であり、さらに好ましくは0.7以上1以下である。
本発明のポリスルホン系血液浄化膜は従来より一般的に知られている技術である湿式製膜法により得ることができ、中空糸形態のいわゆる中空糸膜、平膜の形状が可能である。湿式製膜を行うためのドープ(製膜原液)としては、ポリスルホン及び上述のコポリマーの両者を溶解する溶剤に溶解混和した溶液が用いられる。該溶剤としては特に規定するものではないが、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の溶剤が溶解性が高く、入手も容易であるため簡便に使用できる。中でもポリスルホンに対する溶解性や生体に対する安全性、コスト等を考えるとN,N−ジメチルアセトアミドが最も好ましい。これらの溶剤は単独で使用できることはもちろんであるが、ポリマーに対する溶解性を調整するために2種またはそれ以上の種類の溶剤を混合しても使用することができる。
ポリスルホンの濃度は、低すぎると膜形成が困難となり膜強度が低下したり、高すぎると紡糸性が悪化したり孔径が小さくなる等の現象が生じてくるので、ドープに対して12〜25重量%、好ましくは15〜20重量%、さらに好ましくは16〜18重量%であることが好ましいが、この範囲に限定される事はなく、必要とする膜の性状を得るためにこの範囲より低くすることも高くすることもできる。
ドープ中に添加するコポリマーは製膜時に凝固浴への溶出がほとんどないので、溶出分を考慮する必要がなく、膜中に存在させるべき量を添加すればよい。
平膜は、ガラス板等の支持体上にドクターブレードを使って上記ドープを流延し、しかる後に凝固浴に浸漬することにより得ることができる。また、中空糸膜はチューブインオリフィス型の紡口を用い、その鞘部からドープを押し出すと同時に芯部からは内部凝固液を押し出し、空気中を通過した後凝固浴に浸漬することにより得ることができる。製膜に用いられる内部凝固液及び凝固浴液としては、水あるいはアルコール類といったポリスルホン及び上述のコポリマーの貧溶媒を主体とした液が用いられるが、目的とする中空糸膜の性状を発現させるためにポリスルホン及びコポリマーの溶剤と水あるいはアルコール類の混合液を用いることができる。凝固浴へ浸漬された平膜あるいは中空糸は必要に応じてさらに水洗浴中で水洗を行う。得られた膜について未洗浄の残溶剤を除去するには温水等で洗浄すればよい。その後必要に応じてグリセリン等の孔径保持剤を付着させて乾燥することもできる。
ポリスルホン系膜中に含まれる親水性セグメント及び疎水性セグメントの量は、NMR(核磁気共鳴分光法)によって分析することができる。例えば、膜を溶解または十分膨潤させる溶媒を用いて得られるプロトンNMRスペクトルから分析することが可能である。1例としてポリビニルピロリドンセグメントとポリスチレンセグメントからなるコポリマーを含む式〔IV〕に示される繰り返しユニットからなるポリスルホンの膜を挙げると、重クロロホルムを溶媒として分析した場合には、ケミカルシフトが7.85付近のピーク(プロトン4個分)よりポリスルホンを、ケミカルシフトが3.2(プロトン2個分)及び/または3.7(プロトン1個分)付近のピークよりポリビニルピロリドンセグメントを、そしてケミカルシフトが6.55付近のピーク(プロトン2個分)よりポリスチレンセグメントをそれぞれ相対的に定量することができる。さらに、それぞれのユニットあたりの式量を用いて重量部に換算することができる。また、系が複雑で上記のような形での解析が困難な場合には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)や、液体クロマトグラフィー(LC)等を用いて各フラクションごとに分別した後にNMRを用いて解析することが可能である。
製膜ドープ組成の解析には、まず溶媒等の低分子物質を蒸発除去するなどして除いた後に、得られたポリマーを粉砕して粉末状とし、親水性ポリマー及び/または疎水性のホモポリマーが含まれている場合には、それらを洗浄や再沈殿等により除去を行った後に乾燥を行い、サンプルとしてのポリマー組成物を得る。最終的に得られるポリマー組成物を前述のようにNMRを用いて解析することができる。また、GPCやLC等を用いて分別した後に各フラクションをNMR分析及び定量分析することによっても組成解析を行うことが可能である。
次に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
初めに本実施例で用いられる評価法について記載する。
(1)血小板付着量評価(平膜)
3.8重量%クエン酸ナトリウム液(血液9容に対して1容の割合を予め入れておいたシリンジを用いて、健常人より全血を採取後、遠心分離により多血小板血漿を調製し、ヘパリン(最終濃度10U/ml)、及び塩化カルシウム溶液(最終濃度5mM)を加えた後に平膜と接触させ37℃にて1時間静置する。その後、リン酸緩衝生理食塩水を用いて洗浄を行った後、0.5% tritonX−100を含むリン酸緩衝生理食塩水溶液を加え付着した血小板を溶解する。得られた液中の乳酸デヒドロゲナーゼ活性をLDH測定キット(ベーリンガー・マンハイム社製)により測定しその吸光度の変化(ΔABS)を定量評価して、単位面積相当に換算した値(単位IU/m2)を付着血小板量の指標とする。
(2)血小板付着量評価(中空糸)
3.8重量%クエン酸ナトリウム液(血液9容に対して1容の割合)及び、ヘパリン(最終濃度10U/ml)を予め入れておいたシリンジを用いて、健常人より全血を採取し、塩化カルシウム溶液(最終濃度5mM)を再添加した後、37℃において中空糸内を線速1cm/秒で10分間通血させる。中空糸内をリン酸緩衝生理食塩水を用いて洗浄した後、付着した血小板を界面活性剤を含むリン酸緩衝生理食塩水溶液(0.5重量% tritonX−100)で溶解し、溶出した液中の乳酸デヒドロゲナーゼ活性をLDH測定キット(ベーリンガー・マンハイム社製)により測定しその吸光度の変化(ΔABS)を定量評価して、単位面積相当に換算した値(単位IU/m2)を付着血小板量の指標とする。
(3)溶剤回収及び溶剤回収率測定
製膜時に使用した凝固浴液と膜の洗浄に用いた熱水を合わせ、液の粘度が500mpa・s(測定温度25℃)になるまで、分留管を用いた減圧精密蒸留を行い、ドープ及び凝固液に使用した溶剤の回収を行う。回収された溶剤量と使用した溶剤(使用したドープ内の溶剤量と使用した凝固液内の溶剤の和)より溶剤回収率(%)を求める。
(4)膜中添加剤の定量
膜を十分乾燥した後に、重クロロホルムに溶解しNMRを測定する。スペクトル中のケミカルシフトが7.85付近のピーク(プロトン4個分)よりポリスルホンを、ケミカルシフトが3.2及び3.7(プロトン計3個分)付近のピークよりポリビニルピロリドンセグメントを、そしてケミカルシフトが6.55付近のピーク(プロトン2個分)よりポリスチレンセグメントをそれぞれ相対的に定量する。さらに、それぞれのユニットあたりの式量を用いて重量部に換算する。ポリビニルピロリドンセグメント(A)とポリスチレンセグメント(B)とのモノマーユニット比A/BはNMRによる相対定量値より求める。
(5)膜表面組成の定量
膜を十分乾燥した後に、ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)により膜表面のビニルピロリドンユニット由来の窒素及びポリスルホンポリマー由来の硫黄の存在比率を測定し、同様にESCAにより測定し求めたポリビニルピロリドンフィルムの窒素の存在比率及び添加剤無添加のポリスルホン膜の硫黄の存在比率から下記数式(1)及び(2)より膜表面のビニルピロリドンユニットの被覆率(X%)及びポリスルホンの露出率(Y%)を求めた。
数式(1):
ビニルピロリドンユニットの被覆率(X%)=(膜表面の窒素の存在比率/ポリビニルピロリドンフィルムの窒素の存在比率)×100(%)
数式(2):
ポリスルホンの露出率(Y%)=(膜表面の硫黄の存在比率/添加剤無添加のポリスルホン膜の硫黄の存在比率)×100(%)
(6)膜表面の疎水性セグメント減少率
評価法(5)記載の方法により求める膜表面のポリスルホンの露出率(Y%)及びビニルピロリドンユニットの被覆率(X%)から、下記数式(3)より膜表面に存在するスチレンユニット(B’)とビニルピロリドンユニット(A’)とのモノマーユニット比(U=B’/A’)を、評価法(4)記載の方法により膜全体に存在するスチレンユニット(B)とビニルピロリドンユニット(A)とのモノマーユニット比(V=B/A)を求め、下記数式(4)より膜表面に存在するスチレンユニット(B’)とビニルピロリドンユニット(A’)とのモノマーユニット比(U=B’/A’)を膜全体に存在するスチレンユニット(B)とビニルピロリドンユニット(A)とのモノマーユニット比(V=B/A)から引いた値を膜全体に存在するスチレンユニット(B)とビニルピロリドンユニット(A)とのモノマーユニット比(V=B/A)で割った値(膜表面の疎水性セグメント減少率・W)を求める。
数式(3):
U=(100−X−Y)/X
数式(4):
W=V−U/V
実施例1
スチレンマクロモノマー(東亞合成株式会社AS−6/GPCピークトップ分子量14,000ダルトン)15重量部、N−ビニルピロリドン85重量部、アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部、ジメチルアセトアミド100重量部を褐色瓶に仕込みミックスローターを用い撹拌し、溶解混合する。この混合液をガラス製アンプル瓶に移し凍結真空脱気後密封する。
該アンプルを60℃恒温水槽で8時間加熱し重合する。この溶液を加熱真空下脱溶媒し、得られる固形物を粉砕し微粉体とする。この微粉体をソックスレー抽出器を用いてシクロヘキサンで洗浄を行い、次いで乾燥後ソックスレー抽出器を用いてメタノールで洗浄を行い、未反応のスチレンマクロマー、副生成ポリビニルピロリドン等の抽出除去を行う。次いで、真空乾燥器により十分乾燥し、白色微粉状のグラフトポリマーを得る。得られるグラフトポリマーは、ポリビニルピロリドンセグメント(A)とポリスチレンセグメント(B)とのモノマーユニット比(A/B)が2.3,GPCピークトップ分子量が2.1×105ダルトンである。ついで、このグラフトコポリマー3重量部に対し、式〔IV〕で示される繰り返しユニットからなるポリスルホン(UDEL P−1700<登録商標>、テイジンアモコエンジニアリングプラスチックス株式会社製)18重量部、N,N−ジメチルアセトアミド79重量部からなるドープを調製する。ドクターブレードを用いて、得られるドープをガラス板状にキャストした後40℃に温調された水浴中へ浸漬、相分離させた後、70℃の熱水による洗浄1時間を熱水を交換して3回繰り返し、平膜Aを得る。平膜Aについて血小板付着量を評価、比較例1に示すポリスルホン膜への血小板付着量の指標である膜単位面積当たりの乳酸デヒドロゲナーゼ活性を100とした場合の相対値を表1に示す。また、NMR解析によって得られる平膜中のグラフトコポリマー含有量と、ドープへ添加されたグラフトコポリマー量より算出される、グラフトコポリマーの膜中残存量を膜中のグラフトコポリマー組成(A/B)と共に表1に示す。また、ESCAにより得られる膜表面組成(ポリスルホンポリマーの露出率とビニルピロリドンユニットの被覆率)を表6に、ESCA及びNMR解析により得られる膜表面の疎水性セグメント減少率を表7に示す。
実施例2
実施例1において、ドープ組成をグラフトコポリマー1重量部、ポリスルホン18重量部、N,N−ジメチルアセトアミド81重量部とした以外は同様にして、平膜Bを作製する。平膜Bについて、実施例1と同様に血小板付着量、グラフトコポリマー残存量、膜中グラフトコポリマー組成、膜表面組成及び膜表面の疎水性セグメント減少率を評価する。結果を表1、表6及び表7に示す。
比較例1
実施例1において、グラフトコポリマーを用いずに、ドープ組成をポリスルホン18重量部、N,N−ジメチルアセトアミド82重量部とした以外は同様にして平膜Cを作製する。平膜Cについて血小板付着量を評価し、得られる単位膜面積当たりの乳酸デヒドロゲナーゼ活性を100とする。
比較例2
実施例2において、ドープ組成をポリビニルピロリドン(アイエスピー・ジャパン株式会社K−90)1重量部、ポリスルホン18重量部、N,N−ジメチルアセトアミド81重量部とした以外は同様にして平膜Dを作製する。実施例1と同様に血小板付着量を、また、同様にNMRを用いてポリビニルピロリドンの膜中残存量を評価する。結果を表1に示す。
比較例3
実施例2において、ドープ組成をポリビニルピロリドン(K−90)5重量部、ポリスルホン18重量部、N,N−ジメチルアセトアミド77重量部とした以外は同様にして平膜Eを作製する。実施例1と同様に血小板付着量を、また、同様にNMRを用いてポリビニルピロリドンの膜中残存量を評価する。結果を表1に示す。
実施例3
スチレンマクロモノマー13重量部、N−ビニルピロリドン87重量部、アゾビスイソブチロニトリル0.15重量部とした以外は実施例1と同様にしてグラフトコポリマーを得る。得られるグラフトコポリマーはポリビニルピロリドンセグメント(A)とポリスチレンセグメント(B)とのモノマーユニット比(A/B)が2.5,GPCピークトップ分子量が3.8×105ダルトンである。ついで、このグラフトコポリマーを用いて中空糸を紡糸する。グラフトコポリマー3重量部に対し、ポリスルホン(UDEL P−1700)18重量部、N,N−ジメチルアセトアミド79重量部からなるドープを調製し、内部凝固液として40%N,N−ジメチルアセトアミド水溶液、外部凝固液として水を用いて内径200μm、外径290μmの中空糸を紡糸する。凝固浴槽より取り出された直後の中空糸Aをサンプリングし、90℃,20分間の熱水洗浄を8回繰り返し、洗浄毎に中空糸をサンプリングして中空糸中に残存するグラフトコポリマーの量を実施例1と同様にしてNMRによって求める。結果を表2に示す。
また、凝固液と中空糸洗浄に用いた熱水から溶剤の回収を行い、溶剤回収率を求める。結果を表3に示す。
比較例4
実施例3において、ポリビニルピロリドン(K−90)5重量部、ポリスルホン18重量部、N,N−ジメチルアセトアミド77重量部からなるドープを用いた以外は同様にして中空糸を紡糸する。凝固浴槽より取り出された直後の中空糸Bをサンプリングし、実施例3と同様にして、洗浄過程においての中空糸中に残存するポリビニルピロリドンの量を求める。結果を表2に示す。
また、凝固液と中空糸洗浄に用いた熱水から溶剤の回収を行い、溶剤回収率を求める。結果を表3に示す。
実施例4
実施例3で得られる中空糸Aの熱水洗浄後(90℃,20分,8回)の中空糸(中空糸A’)を用いて血小板付着量の評価を行う。比較例5に示すポリスルホン中空糸への血小板付着量の指標である単位面積当たりの乳酸デヒドロゲナーゼ活性を100とした場合の相対値を表4に示す。
比較例5
実施例3において、ポリビニルピロリドン(K−90)1重量部、ポリスルホン18重量部、N,N−ジメチルアセトアミド81重量部からなるドープを用いる以外は同様にして中空糸を紡糸する。熱水洗浄後(90℃,20分,8回)の中空糸Cを用いて血小板付着量を評価し、得られる中空糸内表面単位面積当たりの乳酸デヒドロゲナーゼ活性を100とする。
実施例5
実施例3において、グラフトコポリマー1重量部、ポリスルホン18重量部、N,N−ジメチルアセトアミド81重量部からなるドープを用いる以外は同様にして中空糸を紡糸する。熱水洗浄後(90℃,20分,8回)の中空糸Dを用いて血小板付着量を評価し、比較例5に示すポリスルホン中空糸への血小板付着量の指標である単位面積当たりの乳酸デヒドロゲナーゼ活性を100とした場合の相対値を表4に示す。
実施例6
スチレンマクロモノマー20重量部、N−ビニルピロリドン80重量部、アゾビスイソブチロニトリル0.10重量部とした以外は実施例1と同様にしてグラフトコポリマーを得る。得られるグラフトコポリマーはポリビニルピロリドンセグメント(A)とポリスチレンセグメント(B)とのモノマーユニット比(A/B)が1.8,GPCピークトップ分子量が7.9×105ダルトンである。ついで、このグラフトコポリマー3重量部に対し、ポリスルホン(UDEL P−1700)18重量部、N,N−ジメチルアセトアミド79重量部からなるドープを調製する。ドクターブレードを用いて、得られるドープをガラス板状にキャストした後、40℃に温調された水浴中へ浸漬、相分離させた後、70℃の熱水による洗浄1時間を熱水を交換して3回繰り返し、平膜Fを得る。平膜Fについて血小板付着量を評価、比較例6に示すポリスルホン膜への血小板付着量の指標である膜単位面積当たりの乳酸デヒドロゲナーゼ活性を100とした場合の相対値、及び、NMR解析によって得られる平膜中のポリスルホン100重量部に対するグラフトコポリマー含有量(重量部)を表5に示す。
実施例7
実施例6において、グラフトコポリマーの量を1重量部、ポリスルホン18重量部、N,N−ジメチルアセトアミド81重量部からなるドープを用いる以外は同様にして平膜Gを得る。実施例6と同様にして求めた乳酸デヒドロゲナーゼ活性及びグラフトコポリマー含有量を表5に示す。
実施例8
実施例6において、グラフトコポリマーの量を0.5重量部、ポリスルホン18重量部、N,N−ジメチルアセトアミド81.5重量部からなるドープを用いる以外は同様にして平膜Hを得る。実施例6と同様にして求めた乳酸デヒドロゲナーゼ活性及びグラフトコポリマー含有量を表5に示す。
実施例9
実施例6において、グラフトコポリマーの量を0.2重量部、ポリスルホン18重量部、N,N−ジメチルアセトアミド81.8重量部からなるドープを用いる以外は同様にして平膜Iを得る。実施例6と同様にして求めた乳酸デヒドロゲナーゼ活性及びグラフトコポリマー含有量を表5に示す。
実施例10
脱水したスチレン100部と脱水したテトラハイドロフラン500部をフラスコに入れ、−20℃に保ち撹拌しつつ、窒素気流下1.6mol/1・n−ブチルリチウム1.4部を加え、8時間撹拌を続ける。この反応液をドライアイスを入れたフラスコに移し撹拌する。塩酸酸性の多量のメタノールに投入し、白色沈殿物を得る。沈殿物をろ別水洗後、加熱真空乾燥し、末端にカルボキシル基を有するスチレンポリマーの白色固形物を得る。該白色固形物40重量部、ポリビニルピロリドン(アイエスピー・ジャパン株式会社K−60)を60重量部、ジメチルアミノピリジン0.2重量部、精製したクロロホルム400重量部をフラスコに入れ撹拌し、溶解混合する。次いで撹拌下、ジシクロヘキシルカルボジイミド0.25重量部を添加し6時間撹拌する。この溶液を加熱真空下脱溶媒し白色固形物を得る、この固形物を粉砕し微粉体とする。この微粉体をソックスレー抽出器を用いてトルエンで洗浄を行い、次いで乾燥後ソックスレー抽出器を用いてメタノールで洗浄を行う。次いで、真空乾燥器により十分乾燥し、白色微粉状のブロックコポリマーを得る。得られるブロックコポリマーは、ポリビニルピロリドンセグメント(A)とポリスチレンセグメント(B)とのモノマーユニット比(A/B)が2.2,GPCピークトップ分子量が27万ダルトンである。ついで、このブロックコポリマー1重量部に対し、ポリスルホン(UDEL P−1700)18重量部、N,N−ジメチルアセトアミド81重量部からなるドープを用いる以外は実施例6と同様にして平膜Jを得る。実施例6と同様にして求めた乳酸デヒドロゲナーゼ活性及びブロックコポリマー含有量を表5に示す。
比較例6
比較例1で得られる平膜Cを用いて、実施例6から9で得られる平膜と同時に血小板付着量を評価し、平膜Cについて得られる単位膜面積当たりの乳酸デヒドロゲナーゼ活性を100とする。
実施例11
スチレンマクロモノマー40重量部、N−ビニルピロリドン60重量部、アゾビスイソブチロニトリル0.25重量部とした以外は実施例1と同様にしてグラフトコポリマーを得る。得られるグラフトコポリマーはポリビニルピロリドンセグメント(A)とポリスチレンセグメント(B)とのモノマーユニット比(A/B)が0.9、GPCピークトップ分子量が2.5×105ダルトンである。ついで、このグラフトコポリマー0.5重量部に対し、ポリスルホン(UDEL P−1700)18重量部、N,N−ジメチルアセトアミド81.5重量部からなるドープを調製する。ドクターブレードを用いて、得られるドープをガラス板状にキャストした後、40℃に温調された水浴中へ浸漬、相分離させた後、70℃の熱水による洗浄1時間を熱水を交換して3回繰り返し、平膜Kを得る。平膜Kについて実施例1と同様に膜表面組成及び膜表面の疎水性セグメント減少率を評価する。結果を表6及び表7に示す。
比較例7
N−ビニルピロリドン・スチレンランダムコポリマーの乳剤(ISP社、ANTARA430)を濃縮乾固し、N−ビニルピロリドン・スチレンランダムコポリマーを得る。ついでこのランダムコポリマー1重量部に対し、ポリスルホン(UDEL P−1700)18重量部、N,N−ジメチルアセトアミド81重量部からなるドープを調製する以外は実施例2と同様にして平膜Lを作成する。実施例1と同様に膜表面組成及び膜表面の疎水性セグメント減少率を評価する。結果を表6及び表7に示す。
Figure 0004000196
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産業上の利用可能性
本発明のポリスルホン系血液浄化用膜は、優れた血液適合性を有し、血液透析膜や血液フィルター等の血液浄化用膜として有用である。
さらに本発明のポリスルホン系血液浄化用膜は、血液適合性添加剤として分子内に適度の疎水性成分を含む親水性グラフトコポリマーまたは/及びブロックコポリマーを用いているので、添加剤はポリスルホン樹脂との親和力が強く、膜が洗浄水、プライミング用水等と接触しても容易に溶出することがない。かくして、本発明の膜は、水洗浄工程が簡素で、溶剤回収効率の高いプロセスにより製造することができる。また、膜は架橋化処理等のポリマーの溶出を防ぐための加工を省いたプロセスで製造することができる。

Claims (17)

  1. 親水性セグメント(A)及び疎水性セグメント(B)(但しポリスルホンは除く)からなるグラフトコポリマーまたは/及びブロックコポリマーを含むポリスルホン膜であり、AとBとのモノマーユニット比(A/B)が0.5以上5以下の範囲であり、かつ、AとBの合計がポリスルホン100重量部に対して0.5重量部以上30重量部以下である、ポリスルホン系血液浄化用膜。
  2. 親水性セグメント(A)及び疎水性セグメント(B)(但しポリスルホンは除く)がグラフトコポリマーを形成している、請求の範囲1記載のポリスルホン系血液浄化用膜。
  3. 親水性セグメント(A)及び疎水性セグメント(B)(但しポリスルホンは除く)がブロックコポリマーを形成している、請求の範囲1記載のポリスルホン系血液浄化用膜。
  4. 親水性セグメントがポリビニルピロリドンセグメントである請求の範囲1記載のポリスルホン系血液浄化用膜。
  5. 疎水性セグメントがポリスチレンセグメントである請求の範囲1記載のポリスルホン系血液浄化用膜。
  6. 親水性セグメント(A)及び疎水性セグメント(B)のモノマーユニット(A/B)が1以上4以下の範囲である、請求の範囲1記載のポリスルホン系血液浄化用膜。
  7. 親水性セグメント(A)及び疎水性セグメント(B)のモノマーユニット比(A/B)が1.2以上3以下の範囲である、請求の範囲6記載のポリスルホン系血液浄化用膜。
  8. 親水性セグメント(A)及び疎水性セグメント(B)の合計が、ポリスルホン100重量部に対して3重量部以上25重量部以下である、請求の範囲1記載のポリスルホン系血液浄化用膜。
  9. 親水性セグメント(A)及び疎水性セグメント(B)の合計が、ポリスルホン100重量部に対して6重量部以上20重量部以下である、請求の範囲8記載のポリスルホン系血液浄化用膜。
  10. 膜表面に存在する疎水性セグメント(B’)及び親水性セグメント(A’)のモノマーユニット比(U=B’/A’)が膜全体に存在する疎水性セグメント(B)及び親水性セグメント(A)のモノマーユニット比(V=B/A)より小さいことを特徴とする請求の範囲1記載のポリスルホン系血液浄化用膜。
  11. 膜表面に存在する疎水性セグメント(B’)と親水性セグメント(A’)のモノマーユニット比(U=B’/A’)を膜全体に存在する疎水性セグメント(B)と親水性セグメント(A)とのモノマーユニット比(V=B/A)から差し引いた値を膜全体に存在する疎水性セグメント(B)と親水性セグメント(A)とのモノマーユニット比(V=B/A)で割った値(W)が0.3以上1以下である請求の範囲10記載のポリスルホン系血液浄化用膜。
  12. ポリスルホン、及びポリスルホン100重量部に対して0.5〜30重量部の親水性セグメント(A)及び疎水性セグメント(B)(但しポリスルホンは除く)からなり前記セグメントをAとBのモノマーユニット比(A/B)が0.5以上5以下の範囲で含むグラフトコポリマーまたは/及びブロックコポリマーを、ポリスルホンが調製すべきドープに対し12〜25重量%になるようN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドから選ばれる1種又は2種以上の溶剤に溶解し、しかる後この調製した製膜用ドープを平膜もしくは中空糸膜に成形し、少なくとも水またはアルコール類を含有する凝固液と接触せしめ、溶剤を除去し洗浄することを特徴とするポリスルホン系血液浄化用膜の製造方法。
  13. 親水性セグメント(A)及び疎水性セグメント(B)(但しポリスルホンは除く)がグラフトコポリマーを形成している、請求の範囲12記載のポリスルホン系血液浄化用膜の製造方法。
  14. 親水性セグメント(A)及び疎水性セグメント(B)(但しポリスルホンは除く)がブロックコポリマーを形成している、請求の範囲12記載のポリスルホン系血液浄化用膜の製造方法。
  15. 親水性セグメントがポリビニルピロリドンセグメントである請求の範囲12記載のポリスルホン系血液浄化用膜の製造方法。
  16. 疎水性セグメントがポリスチレンセグメントである請求の範囲12記載のポリスルホン系血液浄化用膜の製造方法。
  17. 親水性セグメントがポリビニルピロリドンセグメントであり、かつ疎水性セグメントがポリスチレンセグメントである請求の範囲12記載のポリスルホン系血液浄化用膜の製造方法。
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