JP3999319B2 - 通信装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、通信装置に関し、特に自動車などの車両のエアバッグ装置に関連して実施することができる通信装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
或る提案された技術は、図5に示されている。車両のエアバッグ装置1は、車両の前方または側方の方向の加速度を検出し、衝突検出信号を発生する第1通信手段2と、衝突検出信号を受信する第2通信手段3とを含み、これらの通信手段2,3は、衝突検出信号と直流電力とを重畳するライン4によって接続される。通信手段3には直流電源5が備えられ、第1通信手段2に電力が供給される。
【0003】
第1通信手段2には、車両の加速度を検出する加速度センサ6と、加速度センサ6の出力に応答して車両が衝突したかどうかを判断して衝突したときには衝突検出信号を導出するサブマイクロコンピュータ7と、このマイクロコンピュータ7からの出力によってオン/オフ制御されるトランジスタ8と、このトランジスタ8に直列に接続される抵抗9とを有する。トランジスタ8がオン/オフ制御されることによって、ライン4に流れる電流が変化する。この電流は、第2通信手段3に設けられている抵抗10によって電圧に変換される。
【0004】
抵抗10の両端子間の電圧は、差動増幅器11に与えられ、これによって抵抗10の両端子間の電圧に対応した電圧が、メインマイクロコンピュータ12に与えられる。マイクロコンピュータ12は、差動増幅器11の出力を予め定める一定値でレベル弁別し、衝突検知信号を検出したとき、駆動手段13によってエアバッグ14を展開する。これによって、自動車の乗員の室内でのフロントガラスおよびドアなどへの衝突を防いで安全を確保する。
【0005】
図5の技術では、ライン4には、第1通信手段2の加速度センサ6およびマイクロコンピュータ7を駆動するための直流電力が供給されるとともに、車両の衝突検出時に、トランジスタ8がオン/オフ制御されることによって、ライン4に衝突検出信号が重畳される。この衝突検出信号を第2通信手段3で受信するために、マイクロコンピュータ12は、差動増幅器11からの抵抗10の両端子間の電圧を、予め定める一定の弁別レベルでレベル弁別する。この弁別レベルは、上述のように、予め定める一定値であるので、ライン4に流れる負荷電流が変化すると、正確なレベル弁別ができなくなり、衝突検出信号を受信することができなくなってしまう。
【0006】
ライン4に流れる負荷電流が異なる理由(1),(2),(3)を述べる。(1)加速度センサ6は歪みセンサを有し、その歪みセンサの電気抵抗値のばらつきは、比較的大きな特性のばらつきを有する。またマイクロコンピュータ7は半導体素子から成り、その特性のばらつきが大きい。これらのことから、加速度センサ6およびマイクロコンピュータ7の消費電力のばらつきが生じる。(2)加速度センサ6およびマイクロコンピュータ7の消費電力は、その室温および動作中の温度に依存して、変動する。(3)さらにマイクロコンピュータ7に関して、熱的に耐えることができる上限値である定格電力が定められているけれども、動作中における消費電力は規定されておらず、その消費電力は、マイクロコンピュータ7の各チップ毎に相互に異なる。
【0007】
これらの理由によって、ライン4に流れる直流電力のばらつきが比較的大きい。したがって第2通信装置3においてマイクロコンピュータ12によって予め定める一定の弁別レベルで抵抗10の両端子間の電圧をレベル弁別することによって、衝突検出信号を正確に検出することは不可能である。そこで第2通信装置3では、前記弁別レベルを、ライン4に流れる負荷電流に対応して変化調整する必要がある。そうすると、第2通信装置3の構成が複雑になり、あるいはまたマイクロコンピュータ12の演算処理量が増大し、演算処理に時間がかかる結果になる。マイクロコンピュータ12は、前記レベル弁別動作、衝突検出信号の検出だけでなく、車両のその他の制御動作、たとえば内燃機関の燃料噴射制御、アンチスキッドブレーキ動作などを行う。したがってマイクロコンピュータ12の演算処理量が増大して衝突検出信号の受信を行って判別するための演算処理に長い時間が必要になると、エアバッグ14を、車両の衝突時に確実に展開することができなくなり、安全性が低下する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、直流電力と電気信号とを重畳して、ラインを介して伝送し、その直流電力のばらつきが存在しても、電気信号を確実に受信することができるようにした通信装置を提供し、しかも受信側における演算処理量の負担を軽減することができるようにした通信装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、2本のラインの一方の端部間に、
第1抗とスイッチング素子とを有する直列回路が接続されるとともに、
ラインを介する電力が供給される負荷が接続され、
各ラインの他方の端部は、第2抵抗またはインダクタンスを有するインピーダンス素子を介して、直流電源の各出力端子にそれぞれ接続され、
各ラインの前記他方の端部間には、分圧素子を有する分圧回路が接続され、
一方のインピーダンス素子と一方のラインとの接続点と、直流電源の前記一方のライン側の出力端子との間に、コンデンサを接続し、
分圧回路の分圧出力を、予め定める弁別レベルでレベル弁別するレベル弁別手段が設けられることを特徴とする通信装置である。
【0010】
本発明に従えば、直流電源の両出力端子からは、インピーダンス素子R2,R3および2本のラインを介して、負荷に直流電力が供給される。スイッチング素子Tr1がオン/オフされることによって、ラインに流れる電流が脈動して変化する。この脈流である一方のライン上の変動成分は、コンデンサCによって除去される。したがって2本のラインの間の分圧回路による出力電圧を、予め定める一定の弁別レベルでレベル弁別手段においてレベル弁別することによって、他方のライン上のスイッチング素子Tr1のオン/オフによるライン上の脈動する変動成分を検出することができる。
【0011】
2本の各ラインに接続される2つのインピーダンス素子R2,R3は、(1)後述の実施の形態に示されるように抵抗であってもよく、このときそれらの2つの抵抗R2,R3の抵抗値は等しいことが好ましく、または(2)インダクタンス素子、たとえばチョークまたはコイルなどであってもよく、そのインダクタンスは等しいことが好ましい。2つの抵抗R2,R3の抵抗値が等しく、または2つののインダクタンス素子のインダクタンスが等しいことによって、ラインに流れる負荷の直流電流が変動しても、それらのインピーダンス素子R2,R3とラインとの接続点間、すなわち各ラインの前記他方の端部間の電圧を分圧する分圧回路による分圧電圧が変動することが防がれる。
【0012】
コンデンサCに代えて、スイッチング素子Tr1のオン/オフによる脈動の変動成分を除去することができるローパスフィルタであってもよく、このような脈動の変動成分を除去する構成を用いることができる。
【0013】
コンデンサCは、接続点32と直流電源28の接地電位の出力端子30との間に接続されてもよい。さらにコンデンサCはまた、後述の実施の形態では、ライン18の前記他方(図1の右方)の端部側に設けられているけれども、本発明の実施の他の形態では、直列回路23が設けられているライン18の前記一方(図1の左方)の端部側に設けられてもよい。たとえばスイッチング素子Tr1と一方のライン18bとの接続点27と、直流電源28の前記一方のライン側の出力端子30、たとえば接地電位との間に接続してもよく、または抵抗R1と他方のライン18aとの接続点26と、直流電源28の前記他方のライン側の出力端子29、たとえば+VBとの間に、接続されてもよい。
【0014】
また本発明は、(a)2本のラインと、
(b)各ラインの一方の端部に設けられる第1通信手段であって、この第1通信手段は、
(b1)一方のラインに一端子が接続される第1抵抗と
(b2)第1抵抗の他端子と、他方のラインとの間に接続されるスイッチング素子と
(b3)各ラインを介する電力によって動作する負荷とを含む第1通信手段と、
(c)各ラインの他方の端部に設けられる第2通信手段であって、この第2通信手段は、
(c1)直流電源と、
(c2)一方のラインと直流電源の一方の出力端子との間に介在される第2抵抗と
(c3)他方のラインと直流電源の他方の出力端子との間に介在される第3抵抗と
(c4)第2および第3抵抗よりも前記各ライン側に接続され、各ラインの前記他方の端部間の電圧を分圧する分圧抵抗を有する分圧回路と、
(c5)第3抵抗よりも前記他方のライン側と直流電源の前記他方の出力端子との間に接続されるコンデンサと
(c6)弁別レベルを設定する弁別レベル設定手段と、
(c7)分圧回路からの分圧電圧を、弁別レベル設定手段からの弁別レベルでレベル弁別するレベル弁別手段とを含み、
(c8)スイッチング素子のオン状態とオフ状態とにおける分圧電圧が弁別レベルの両側にそれぞれ定められる第2通信手段とを含むことを特徴とする通信装置である。
【0015】
本発明に従えば、第1および第2通信手段が2本のラインを介して接続され、第2通信手段に設けられている直流電源からの直流電力が、ラインを介して第1通信手段の負荷に供給される。スイッチング素子Tr1がオン/オフされてラインに流れる電流が変動して脈流が生じ、信号が第1通信手段から第2通信手段に伝送される。
【0016】
第2通信手段では、コンデンサCの働きによって前記他方のライン18bの脈流である変動成分の信号が除去される。したがって分圧回路からの分圧電圧は、ラインに流れる直流電流の大きさにかかわらず、信号によって変動することになる。こうして分圧電圧を、レベル弁別することによって、スイッチング素子Tr1のオン/オフによって得られる電気信号を、第2通信手段で得ることができる。
【0017】
また本発明は、第2および第3抵抗の抵抗値は等しいことを特徴とする。
【0018】
本発明に従えば、2つのラインと直流電源の2つの出力端子との間にそれぞれ介在される第2および第3抵抗R2,R3の抵抗値を等しく選ぶことによって、2つの各ラインと第2および第3抵抗R2,R3との接続点の電圧が第1通信手段の負荷電流に対応して等しい値だけ電圧降下を生じる。したがって分圧回路の出力電圧を、一定の弁別レベルでレベル弁別して、スイッチング素子Tr1のオン/オフによる電気信号を受信して判別することが確実に可能になる。
【0019】
また本発明は、(a)2本のラインと、
(b)各ラインの一方の端部に設けられる第1通信手段であって、この第1通信手段は、
(b1)一方のラインに一端子が接続される抵抗と
(b2)抵抗の他端子と、他方のラインとの間に接続されるスイッチング素子と
(b3)各ラインを介する電力によって動作する負荷とを含む第1通信手段と、
(c)各ラインの他方の端部に設けられる第2通信手段であって、この第2通信手段は、
(c1)直流電源と、
(c2)一方のラインと直流電源の一方の出力端子との間に介在される第1インダクタンス素子と、
(c3)他方のラインと直流電源の他方の出力端子との間に介在される第2インダクタンス素子と、
(c4)第1および第2インダクタンス素子よりも前記各ライン側に接続され、各ラインの前記他方の端部間の電圧を分圧する分圧抵抗を有する分圧回路と、
(c5)第2インダクタンス素子よりも前記他方のライン側と直流電源の前記他方の出力端子との間に接続されるコンデンサと
(c6)弁別レベルを設定する弁別レベル設定手段と、
(c7)分圧回路からの分圧電圧を、弁別レベル設定手段からの弁別レベルでレベル弁別するレベル弁別手段とを含み、
(c8)スイッチング素子のオン状態とオフ状態とにおける分圧電圧が弁別レベルの両側にそれぞれ定められる第2通信手段とを含むことを特徴とする通信装置である。
【0020】
本発明に従えば、前述の請求項2における第2および第3抵抗R2,R3に代えて、チョークまたはコイルなどのインダクタンス素子を用いる。これによって直流電源の直流電力を、無駄な消費電力なしで、ラインを介して第1通信手段の負荷に供給することができるとともに、分圧回路において、スイッチング素子Tr1のオン/オフによる脈流である変動成分の信号を、直流電流のばらつきにかかわらず、正確にレベル弁別することができる。
【0021】
また本発明は、第1および第2インダクタンス素子のインダクタンスは等しいことを特徴とする。
【0022】
本発明に従えば、前述の請求項3と同様に、分圧回路の出力電圧のレベル弁別を正確に行うことができ、スイッチング素子Tr1のオン/オフによる信号を正確に受信して判別することができる。
【0023】
また本発明は、弁別レベル設定手段は、直流電源の出力電圧VBの1/2を弁別レベルとして設定し、
分圧回路は、ライン間の電圧の1/2を分圧して導出することを特徴とする。
【0024】
本発明に従えば、弁別レベルを直流電源の出力電圧+VBの1/2とし、分圧回路の分圧比を1/2とすることによって、レベル弁別回路によるスイッチング素子Tr1のオン/オフによる信号成分である信号のレベル弁別を確実に行うことができ、誤検出を防ぐことができる。
【0025】
また本発明は、弁別レベル設定手段は、直流電源の両出力端子間に接続され、分圧抵抗を有することを特徴とする。
【0026】
本発明に従えば、分圧抵抗R6,R7によって直流電源の出力電圧を分圧して弁別レベルを設定するようにしたので、直流電源の出力電圧+VBが変動しても、それに応じて弁別レベルが変動し、したがって信号の正確なレベル弁別を行って誤検出を防ぐことができる。
【0027】
また本発明は、前記負荷は、
車両の加速度を検出する加速度センサと、
この加速度センサの出力に応答して車両の衝突を検出し、車両の衝突が検出されたとき、スイッチング素子をオン/オフ制御する衝突検出信号を導出する処理回路とを含み、さらに
レベル弁別手段の出力に応答し、衝突検出信号を受信したとき、エアバッグを展開するエアバッグ手段とを含むことを特徴とする。
【0028】
本発明に従えば、自動車などの車両の衝突時に、加速度センサ21によって大きな加速度が検出され、処理回路24は、スイッチング素子Tr1をオン/オフ制御してたとえば約100kHzの衝突検出信号を導出する。分圧回路31の抵抗またはインピーダンス素子から成る分圧素子R4,R5による分圧出力を、レベル弁別手段35によってレベル弁別し、衝突検出信号を受信して判別することができる。衝突検出信号が受信されたとき、エアバッグ手段22,41のエアバッグ22を展開する。こうして車両の乗員の安全を確保する。エアバッグ手段22,41は、衝突検出信号の受信時に、スクイブを点火し、これによってエアバッグ22を、瞬時に展開する構成を有する。
【0029】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の一形態の全体の構成を示す電気回路図である。自動車に搭載された通信装置であるエアバッグ装置17は基本的には、2本のライン18と、第1通信手段19と、第2通信手段20とを含む。第1通信手段19に設けられる加速度センサ21は、自動車の車両に取付けられ、衝突時の加速度を検出し、衝突時には、第2通信手段20に設けられているエアバッグ22が展開される。車両の乗員がフロントガラスおよびドアなどに衝突することを防ぎ、安全を確保する。
【0030】
第1通信手段19において、抵抗R1の一端子は、一方のライン18aに接続される。抵抗R1の他端子と他方のライン18bとの間には、スイッチング素子であるスイッチングトランジスタTr1が接続される。参照符18a,18bを総括的に参照符18で示すことがある。抵抗R1とトランジスタTr1とは、直列回路23を構成する。
【0031】
加速度センサ21からの加速度を表す電気信号は、サブコンピュータである処理回路24に与えられる。処理回路24は、加速度センサ21の出力をレベル弁別し、検出された加速度が、予め定める値を超えるとき、車両が衝突したものと判断し、ライン25を介してトランジスタTr1の制御端子であるベースにたとえば100kHzの矩形波である衝突検出信号を導出する。加速度センサ21および処理回路24には、ライン18から、直列回路23の接続点26,27よりもライン18とは反対側(図1の左方)で接続されて直流電力が供給される。こうして第1通信手段19は、ライン18の一方の端部に、接続される。
【0032】
ライン18の他方の端部には、第2通信手段20が接続される。この第2通信手段20は、出力電圧+VB(たとえば10〜20V)を有する直流電源28が設けられる。この直流電源28の一方の出力端子29と、接地電位とされる他方の端子30とを有する。抵抗R2は、ライン18aと直流電源28の前記一方の出力端子29との間に介在される。抵抗R3は、他方のライン18bと直流電源28の他方の出力端子30との間に介在される。
【0033】
分圧回路31は、直列接続された分圧素子である分圧抵抗R4,R5を有する。この分圧回路31は、抵抗R2,R3よりもライン18側に、接続点32,33において接続され、各ライン18の前記他方の端部間の電圧を分圧する。
【0034】
コンデンサCは、抵抗R3よりもライン18b側の接続点33と、直流電源28の出力端子30との間に接続される。このコンデンサCは、衝突検出信号の周波数帯域、たとえば100kHzで導通するローパスフィルタなどのフィルタの働きをする。
【0035】
分圧回路31を構成する抵抗R4,R5の接続点34は、演算増幅器35の非反転入力端子36に接続される。演算増幅器35の反転入力端子37は、弁別レベル設定回路38を構成する直列接続された抵抗R6,R7の接続点39に接続される。この弁別レベル設定回路38は、直流電源28の出力端子29,30間に接続される。抵抗R1〜R7の抵抗値は、同一参照符で示すと、たとえばR1=1kΩ、R2=R3=100Ω、R4=10kΩ、R5=11kΩ、R6=R7=10kΩである。こうして抵抗R2,R3の抵抗値は等しく選ばれる。また弁別レベル設定手段38による接続点39の弁別レベルの電圧は、直流電源28の出力電圧+VBの1/2に設定される。さらに分圧回路31において接続点34の分圧電圧は、ライン18間の電圧のほぼ1/2となるように、前述のように抵抗R4,R5が定められる。本発明の実施の他の形態では、これらの抵抗R1〜R7の各抵抗値は、その他の値であってもよい。
【0036】
演算増幅器35は、各入力端子36,37に与えられる電圧に応答し、分圧回路31からの入力端子36に与えられる分圧電圧が、弁別レベル設定回路38から入力端子37に与えられる弁別レベルVL以上であるとき、出力ライン39に、Hレベルの信号を導出し、分圧電圧が弁別レベルVL未満であるときライン39にLレベルの信号を導出する。メインコンピュータである処理回路40は、出力ライン39を介する信号に応答し、衝突検出信号を受信して検出したとき、駆動手段41によってスクイブを点火させてエアバッグ22を展開する。処理回路40はまた、衝突検出信号の検出だけでなく、車両のその他の制御動作、たとえば内燃機関の燃料噴射制御、アンチスキッドブレーキ動作などを行う。
【0037】
図2は、図1に示されるエアバッグ装置の動作中における電圧を示す図である。図3は、車両の衝突時に処理回路24からライン25を介してトランジスタTr1のベースに与えられる衝突検出信号の波形を示す図である。弁別レベル設定回路38において抵抗R6,R7によって分圧されて設定される弁別レベルVLは、直流電源28の出力電圧VBのちょうど1/2であって、一定である。第1通信手段19において加速度センサ21および処理回路24に供給される負荷電流は、参照符I0で示される。またトランジスタTr1が図3のオン状態であるときにおける直列回路23に流れる電流I1で示す。図1の接続点32,33の各電圧は、図2において同一の参照符32,33でそれぞれ示す。図2では、負荷電流I0が小さい場合と大きい場合とにおける接続点32,33の電圧がそれぞれ示されている。電圧V01は、負荷電流I0による抵抗R2の電圧降下を示す。
【0038】
V01 = R2・I0 …(1)
トランジスタTr1がオン状態になることによって、電圧V11が発生する。
V11 = R2・i1 …(2)
同様にして抵抗R3による負荷電流I0の電圧降下V02は、
V02 = R3・I0 …(3)
コンデンサCが接続されていないと想定したときにおける接続点33の電圧V12は、
V12 = R3・i1 …(4)
コンデンサCの働きによって、接続点33では、図2の破線42で示される矩形波である衝突検出信号が除去される。これによって接続点33の電圧は、トランジスタTr1のオン/オフにかかわらず負荷電流I0に依存してほぼ一定のままである。
【0039】
これに対して接続点32には、トランジスタTr1のオン/オフに対応した衝突検出信号である矩形波が現れる。したがってトランジスタTr1がオン状態であるときにおける接続点32,33間の電圧V3は、分圧回路31によって分圧され、接続点34からは、演算増幅器35の非反転入力端子36に、参照符V43で示される電圧が与えられることになる。トランジスタTr1のオフ状態では、分圧回路31の接続点34から導出される分圧電圧は、図2において参照符V44で示される。こうしてトランジスタTr1のオン/オフ状態にそれぞれ対応して、接続点34における分圧電圧V43,V44は、弁別レベルVLの下および上になるように、前述の抵抗R4,R5;R6,R7がそれぞれ設定される。
【0040】
V43 < VL < V44 …(5)
この実施の形態では、R2,R3は等しいので、V01=V02,V11=V12である。たとえばI0=Iiとし、衝突検出信号のSN比を向上することができる。
【0041】
上述の式5は、図2の左側に示される負荷電流I0が小さい場合だけでなく、負荷電流のばらつきによってその負荷電流I0が大きい図2の右側に示される状態においても同様に、達成される。図2において負荷電流I0が大きい場合における接続点34の電圧V43a,V44aを、負荷電流I0が小さい場合に対応して添え字aを付して示す。こうして負荷電流I0のばらつきにかかわらず、演算増幅器35は、ライン18を介して直流電流に重畳されて伝送される衝突検出信号を、接続点39における一定の弁別レベルVLでレベル弁別し、ライン39から処理回路40に衝突検出信号を与えることが確実になる。
【0042】
弁別レベル設定手段は、分圧抵抗R5,R6を用いる代わりにたとえば直列接続された2つのコンデンサによって実現してもよく、あるいはまたコンデンサと抵抗とを直列に接続した構成によって実現してもよく、その他の構成であってもよい。こうして本発明によれば、SN比を大きくすることができる。また負荷の消費電力を小さくしても、電気信号をレベル弁別によって確実に受信することができる。
【0043】
図4を参照して、加速度センサ21の構成を述べる。この加速度センサ21は、歪みセンサを有し、その特性のばらつきが大きく、また温度変化によって特性が変化し、したがって前述のように負荷電流I0が変化する。本発明の上述の構成によれば、このような負荷電流I0の変化にかかわらず、第2通信手段20では、衝突検出信号を正確にレベル弁別して受信することができる。
【0044】
図4は、加速度センサ21の全体の電気的構成を示す電気回路図である。歪みセンサP11〜P42は、ブリッジ回路51を構成する。このブリッジ回路51の対向する接続点52,53は、直流電源の両出力端子にそれぞれ接続される。ブリッジ回路51の他方の対を成す接続点54,55からの出力は、差動増幅器56に与えられ、微分コンデンサ57を介して増幅回路58で増幅される。こうして加速度に対応した電圧振幅を有する信号が、ライン59から導出されて、処理回路24に与えられる。
【0045】
本発明では、このようなおよびその他の原因による負荷電流I0、ばらつき、変動にかかわらず、衝突検出信号を第2通信手段20において正確にレベル弁別することができる。
【0046】
本発明は、エアバッグ装置に関連して実施されるだけでなく、その他の通信のために、広範囲に実施することができる。
【0047】
【発明の効果】
請求項1の本発明によれば、直流電源からインピーダンス素子R2,R3を介して2本のラインを経て負荷に直流電力が供給され、スイッチング素子Tr1のオン/オフによって生じる脈流は、一方のライン側でコンデンサCによって除去される。こうして分圧回路からは、スイッチング素子Tr1のオン/オフによる電気信号が、ラインに流れる直流電流のばらつきにかかわらず、正確に得られる。したがって予め定める一定の弁別レベルで、分圧回路の出力電圧をレベル弁別することによって、スイッチング素子Tr1のオン/オフによる電気信号を正確に受信して判別することができる。
【0048】
スイッチング素子Tr1には直列に抵抗R1が接続されているので、スイッチング素子Tr1のオン状態においても、負荷には直流電力を供給し続けることができ、したがって負荷への電力供給が遮断されることはない。
【0049】
さらにコンデンサCの働きによって、上述のように直流電源から負荷に供給される直流電力のばらつきが存在しても、レベル弁別手段の弁別レベルを、負荷の直流電力のばらつきにかかわらず一定に定めておけばよい。したがって弁別レベルを、直流電力の変動に応じて変化する必要はなく、構成の簡略化を図ることができ、またその弁別レベルをたとえばマイクロコンピュータなどによって直流電力の大きさに応じて変化する演算処理が不要となり、演算処理量を少なくしてその演算処理の負担の軽減を図ることができる。
【0050】
請求項2の本発明によれば、第1通信手段には、第2通信手段に備えられている直流電源から第2および第3抵抗R2,R3および2本のラインを介して負荷に直流電力が供給される。第1通信手段のスイッチング素子Tr1のオン/オフによる脈流である変動する電気信号は、ラインを介して第2通信手段に伝送される。前記他方のライン側にはコンデンサCが接続され、これによってスイッチング素子Tr1のオン/オフによる脈流である変動成分が遮断される。したがって分圧回路から得られる分圧電圧は、スイッチング素子Tr1のオン/オフに依存する電気信号であって、レベル弁別手段によってレベル弁別し、電気信号を受信して判別することができる。この分圧回路からの分圧電圧は、負荷に供給される直流電力のばらつきにかかわらず、スイッチング素子Tr1のオン/オフによって変動する。こうして負荷の直流電力のばらつきにかかわらず、スイッチング素子Tr1のオン/オフによる電気信号だけを、レベル弁別して受信することができる。
【0051】
請求項3の本発明によれば、負荷に供給される直流電流が流れる第2および第3抵抗R2,R3の抵抗値を等しく選び、これによって分圧回路の分圧電圧が、負荷に供給される直流電力のばらつきによって変動することを防ぎ、SN比を向上する。
【0052】
請求項4の本発明によれば、前述の請求項2の第2および第3抵抗R2,R3に代えて、チョークまたはコイルなどのインダクタンス素子を用い、これによって直流電源の電力消費を低減するとともに、前記他方のライン側におけるスイッチング素子Tr1のオン/オフによる脈流である電気信号をコンデンサCによって除去させることを可能にするとともに、前記一方のラインを介する電気信号を、分圧回路によって分圧してレベル弁別することが確実である。
【0053】
請求項5の本発明によれば、第1および第2インダクタンス素子のインダクタンスを等しく選び、これによって分圧回路の分圧電圧が、負荷の直流電力のばらつきによって変化することを防ぎ、SN比を向上することができる。
【0054】
請求項6の本発明によれば、弁別レベルを、直流電源の出力電圧VBの1/2に設定し、分圧回路は2つのライン間の電圧の1/2に分圧するように分圧比を選ぶことによって、スイッチング素子Tr1のオン/オフによるレベル弁別を確実に行い、誤検出を防ぐことができる。
【0055】
請求項7の本発明によれば、弁別レベルを設定するために直流電源の出力電圧を分圧抵抗R6,R7によって分圧し、したがって直流電源の出力電圧+VBが変化すると、それに応じて弁別レベルが変化する。したがって電気信号のレベル弁別を、確実に行うことができ、誤検出を防ぐことができる。
【0056】
請求項8の本発明によれば、車両の衝突時に、大きな加速度が加速度センサによって検出されると、スイッチング素子がオン/オフ制御されて衝突検出信号が導出され、ライン上の脈動する衝突検出信号が、分圧回路で分圧され、レベル弁別回路でレベル弁別される。こうして衝突検出信号が受信されることによって、エアバッグが展開され、車両の乗員の安全が、確実に確保される。このエアバッグの展開は、負荷である電気回路に供給される直流電力のばらつきにかかわらず、確実に行うことができる。またレベル弁別手段における弁別レベルを、その電気回路の直流電力に応じて変化させる必要はなく、補正が簡略化されるとともに、そのような弁別レベルの変化をたとえばマイクロコンピュータなどによって実現する場合における演算処理量の負担の増大を防いで、演算処理負担の軽減を図ることができ、このことによって、衝突時におけるエアバッグの展開を迅速に確実に行うことができ、安全性がさらに確保される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態の全体の構成を示す電気回路図である。
【図2】図1に示されるエアバッグ装置の動作中における電圧を示す図である。
【図3】車両の衝突時に処理回路24からライン25を介してトランジスタTr1のベースに与えられる衝突検出信号の波形を示す図である。
【図4】加速度センサ21の全体の電気的構成を示す電気回路図である。
【図5】或る提案された技術の電気回路図である。
【符号の説明】
17 エアバッグ装置
19 第1通信手段
20 第2通信手段
18,18a,18b ライン
28 直流電源
21 加速度センサ
22 エアバッグ
23 直列回路
24 処理回路
31 分圧回路
35 演算増幅器
38 弁別レベル設定回路
40 処理回路
C コンデンサ

Claims (8)

  1. 2本のラインの一方の端部間に、
    第1抗とスイッチング素子とを有する直列回路が接続されるとともに、
    ラインを介する電力が供給される負荷が接続され、
    各ラインの他方の端部は、第2抵抗またはインダクタンスを有するインピーダンス素子を介して、直流電源の各出力端子にそれぞれ接続され、
    各ラインの前記他方の端部間には、分圧素子を有する分圧回路が接続され、
    一方のインピーダンス素子と一方のラインとの接続点と、直流電源の前記一方のライン側の出力端子との間に、コンデンサを接続し、
    分圧回路の分圧出力を、予め定める弁別レベルでレベル弁別するレベル弁別手段が設けられることを特徴とする通信装置。
  2. (a)2本のラインと、
    (b)各ラインの一方の端部に設けられる第1通信手段であって、この第1通信手段は、
    (b1)一方のラインに一端子が接続される第1抵抗と
    (b2)第1抵抗の他端子と、他方のラインとの間に接続されるスイッチング素子と
    (b3)各ラインを介する電力によって動作する負荷とを含む第1通信手段と、
    (c)各ラインの他方の端部に設けられる第2通信手段であって、この第2通信手段は、
    (c1)直流電源と、
    (c2)一方のラインと直流電源の一方の出力端子との間に介在される第2抵抗と
    (c3)他方のラインと直流電源の他方の出力端子との間に介在される第3抵抗と
    (c4)第2および第3抵抗よりも前記各ライン側に接続され、各ラインの前記他方の端部間の電圧を分圧する分圧抵抗を有する分圧回路と、
    (c5)第3抵抗よりも前記他方のライン側と直流電源の前記他方の出力端子との間に接続されるコンデンサと
    (c6)弁別レベルを設定する弁別レベル設定手段と、
    (c7)分圧回路からの分圧電圧を、弁別レベル設定手段からの弁別レベルでレベル弁別するレベル弁別手段とを含み、
    (c8)スイッチング素子のオン状態とオフ状態とにおける分圧電圧が弁別レベルの両側にそれぞれ定められる第2通信手段とを含むことを特徴とする通信装置。
  3. 第2および第3抵抗の抵抗値は等しいことを特徴とする請求項2記載の通信装置。
  4. (a)2本のラインと、
    (b)各ラインの一方の端部に設けられる第1通信手段であって、この第1通信手段は、
    (b1)一方のラインに一端子が接続される抵抗と
    (b2)抵抗の他端子と、他方のラインとの間に接続されるスイッチング素子と
    (b3)各ラインを介する電力によって動作する負荷とを含む第1通信手段と、
    (c)各ラインの他方の端部に設けられる第2通信手段であって、この第2通信手段は、
    (c1)直流電源と、
    (c2)一方のラインと直流電源の一方の出力端子との間に介在される第1インダクタンス素子と、
    (c3)他方のラインと直流電源の他方の出力端子との間に介在される第2インダクタンス素子と、
    (c4)第1および第2インダクタンス素子よりも前記各ライン側に接続され、各ラインの前記他方の端部間の電圧を分圧する分圧抵抗を有する分圧回路と、
    (c5)第2インダクタンス素子よりも前記他方のライン側と直流電源の前記他方の出力端子との間に接続されるコンデンサと
    (c6)弁別レベルを設定する弁別レベル設定手段と、
    (c7)分圧回路からの分圧電圧を、弁別レベル設定手段からの弁別レベルでレベル弁別するレベル弁別手段とを含み、
    (c8)スイッチング素子のオン状態とオフ状態とにおける分圧電圧が弁別レベルの両側にそれぞれ定められる第2通信手段とを含むことを特徴とする通信装置。
  5. 第1および第2インダクタンス素子のインダクタンスは等しいことを特徴とする請求項4記載の通信装置。
  6. 弁別レベル設定手段は、直流電源の出力電圧VBの1/2を弁別レベルとして設定し、
    分圧回路は、ライン間の電圧の1/2を分圧して導出することを特徴とする請求項〜5のうちの1つに記載の通信装置。
  7. 弁別レベル設定手段は、直流電源の両出力端子間に接続され、分圧抵抗を有することを特徴とする請求項6記載の通信装置。
  8. 前記負荷は、
    車両の加速度を検出する加速度センサと、
    この加速度センサの出力に応答して車両の衝突を検出し、車両の衝突が検出されたとき、スイッチング素子をオン/オフ制御する衝突検出信号を導出する処理回路とを含み、さらに
    レベル弁別手段の出力に応答し、衝突検出信号を受信したとき、エアバッグを展開するエアバッグ手段とを含むことを特徴とする請求項1〜7のうちの1つに記載の通信装置。
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