JP3998953B2 - 電動駆動装置の放熱構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電動モータによる電動駆動装置に関し、特にそのケーシング内に収容した発熱素子の放熱構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば電動補助自転車において、ペダルからの踏力を補助するためにペダルクランク軸に連結して踏力補助用の電動駆動装置が設けられる。この電動駆動装置は、ペダルクランク軸とこれと同軸の駆動スリーブ(融合スリーブ)により駆動軸を構成し、駆動スリーブ上にスプロケットを固定し、これをチェーンを介して駆動車輪(例えば後輪)に連結する。補助動力となる電動モータの出力軸をこの駆動スリーブに連結して、電動モータの出力を駆動スリーブを介して後輪に伝達し回転駆動力を付与する。一方、ペダルに連結されたペダルクランク軸は、遊星ギヤ機構等を介して同じく上記駆動スリーブに連結され、ペダル踏力により駆動スリーブを介して後輪を回転駆動させる。これにより、ペダル踏力と電動モータの駆動力が駆動スリーブ上で融合してその合力により後輪が駆動される。
【0003】
ペダルクランク軸に加わる踏力は、トルク検出手段で検出される。この検出された踏力に応じて、制御回路が、補助すべき動力を算出して所定のアシスト比で電動モータを駆動する。
【0004】
このような電動駆動装置は、電動モータとともにトルク検出手段や遊星ギヤ機構及び制御回路を一体的に組立ててケーシング内に収められる。ケーシングで一体ユニット化した電動駆動装置は、車体中央部のペダルクランク軸付近に取付けられる。
【0005】
このケーシングは、組立て製造上中央と左右に3分割され、中央ハウジングを左右ケースで挟んでボルトで結合することにより一体的なケーシングが形成される。
【0006】
このようなケーシングの軽量化を図るために、3分割されたケーシングの中央ハウジングを樹脂材料で形成し、これを挟む左右のケースを金属材料で形成することにより、ケーシング強度を左右ケースで維持しつつ軽量樹脂材料を用いてケーシング全体の重量を軽減することが本発明者等により考えられている。
【0007】
このケーシング内に、駆動制御回路(ECU)やFET等の発熱量の大きい駆動素子(発熱素子)を搭載したプリント基板が収容される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、軽量化を図るために3分割したケーシングの中央ハウジングを樹脂材料で形成した場合、樹脂材料の放熱性が低いため、内部に収容したFET等の発熱素子からの放熱が充分にできず、これにより機能に影響を与えるおそれが生じる。
【0009】
この点に対処して、FETに金属製のヒートシンクを固定し、このビートシンクをケーシング外部の放熱材に接合してFETの熱を逃すことが考えられる。しかしながら、このようなヒートシンクを用いると構造が複雑になり、組立て作業も面倒になる。
【0010】
本発明は上記従来技術を考慮したものであって、簡単な構造で小型軽量化を図りつつ、ケーシング内の発熱素子からの熱を有効に外部に放熱させる電動駆動装置の放熱構造の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明では、中央ハウジングと該中央ハウジングを両側から挟む左ケース及び右ケースとによりケーシングを構成し、該ケーシング内にプリント基板を収容し、このプリント基板上に発熱素子を搭載した電動駆動装置の放熱構造において、前記中央ハウジングを樹脂材料で形成し、前記左ケース及び右ケースを金属材料で形成し、前記プリント基板を前記中央ハウジングに取付けるとともに、該プリント基板上の発熱素子を直接前記左ケース又は右ケースに接触させて該左ケース又は右ケースを介して放熱させることを特徴とする電動駆動装置の放熱構造を提供する。
【0012】
この構成によれば、3分割したケーシングの左右両側を金属材料の左ケース及び右ケースで構成して充分な強度を得るとともに中央ハウジングを樹脂材料で形成して小型軽量化を図りながら、この金属材料の左ケース又は右ケースを放熱手段として利用し、FET等の発熱素子をこの左ケース又は右ケースに直接接触させて放熱させる。これにより、簡単な構成で効率よく発熱素子から放熱させることができる。
【0013】
好ましい構成例では、前記左ケース又は右ケースの内面に発熱素子が接触する当接部を突出して形成したことを特徴としている。
【0014】
この構成によれば、プリント基板上の発熱素子の表面がプリント基板の縁より内側に位置して左ケース又は右ケースの内面から離れている場合であっても、左ケース又は右ケースの内面に突出する当接部を設け、この当接部に発熱素子の表面を接触させることにより、有効な放熱作用を得ることができる。
【0015】
さらに好ましい構成例では、前記プリント基板上に複数の発熱素子を並列して搭載し、これらの発熱素子を共通の押え板で前記左ケース又は右ケースの内面側に圧接させたことを特徴としている。
【0016】
この構成によれば、複数の発熱素子を共通の押え板により左ケース又は右ケースの内面に押圧して接触させることにより、簡単な構成で効率よく複数の発熱素子から放熱させることができる。
【0017】
さらに好ましい構成例では、前記電動駆動装置は、電動補助自転車のペダル踏力補助用の電動駆動装置であることを特徴としている。
【0018】
この構成によれば、電動補助自転車の踏力補助用の電動モータに対し本発明構造を適用することにより、特に小型軽量化が要求される自転車構造において、軽量化を実現してこれによる負荷軽減及びコスト低減が達成されるとともに、簡単な構造で効率よく発熱素子から放熱させることができ、信頼性の高い機能が維持される。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電動駆動装置を搭載した電動補助自転車の側面図である。
【0020】
この電動補助自転車1は、車体フレーム2のほぼ中央のハンガー部3に本発明に係る電動駆動装置4を搭載し、ペダル5を踏込むことによりペダルクランク軸6を回転させようとする踏力と、電動駆動装置4内の後述の電動モータの動力とを組合せて融合し、この合力により後輪7を駆動する構造である。電動駆動装置4は後述のように駆動軸にスプロケットを有し、このスプロケットの回転をチェーン8によって、公知のフリーホイルを介して後輪7に伝達する。
【0021】
電動駆動装置4は、車体フレーム2に固定された(又は一体成形された)ブラケット9に対し、後述のように懸架ボルトにより懸架支持される。10は電動駆動装置4内の電動モータを駆動するためのバッテリである。
【0022】
図2は、本発明に係る電動駆動装置の水平断面構成図である。
この電動駆動装置4は、ケーシング11内に電動モータ12及び駆動軸13を収容して構成される。ケーシング11は、後述のように3分割され、中央ハウジング14と、これをその両側から挟む左ケース15及び右ケース16とにより構成される。電動モータ12は、モータ出力軸17と、このモータ出力軸17に固定されたロータ18と、このロータ18の外周に対向してケーシング11内に固定されたステータ19とにより構成される。駆動軸13は、ペダル5(図1)に連結されたペダルクランク軸6(人力入力軸)とこのペダルクランク軸6の外周に回転可能に嵌め込まれた融合スリーブ20とにより構成される。融合スリーブ20上にスプロケット21が固定され、チェーン8を介して後輪7(図1)に連結される。
【0023】
モータ出力軸17の端部にギヤ22が形成される。このギヤ22に中間軸23の第1ギヤ24が噛合う。中間軸23には、第1ギヤ24及びこれと一体でこれより小径の第2ギヤ25が装着される。この第2ギヤ25は、ラチェット26を介して融合スリーブ20に固定された大径ギヤ27と噛合う。このような中間軸23及びこれに装着された2段一体の第1、第2ギヤ24,25により、減速ギヤ機構72(第1の減速機構)が形成される。これにより、電動モータ12の回転駆動力が、減速ギヤ機構72で減速され、大径ギヤ27を介して融合スリーブ20に伝達され、後輪を駆動する。
【0024】
ペダルクランク軸6は、ラチェット28を介して遊星ギヤ機構29(第2の減速機構)に連結される。遊星ギヤ機構29は、融合スリーブ20に連結され、ペダルクランク軸6からのペダル踏力を融合スリーブ20に伝達して、踏力により後輪を駆動する。
【0025】
この遊星ギヤ機構29は、ラチェット28で1方向に駆動されるキャリア30と、このキャリア30に回動自在となす遊星ギヤ31と、遊星ギヤ31の外周側でケーシングに固定されたリングギヤ71と、遊星ギヤ31の内周側で融合スリーブ20に固定されたサンギヤ32とにより構成される。ペダルクランク軸6の回転力は、ラチェット28からキャリア30を介して遊星ギヤ31を公転及び自転させ、サンギヤ32を回転させて融合スリーブ20に踏力による回転力を減速して伝達し、後輪を駆動する。
【0026】
3分割されたケーシング11の中央ハウジング14は、例えばPBT(ポリブチルテレフタレート)等の樹脂材料の射出成形により形成される。この中央ハウジング11を挟む左ケース15及び右ケース16は、ADC(アルミダイキャスト合金)材料により成形される。
【0027】
ケーシング11は、複数ヵ所(例えば5ヵ所)で締結ボルト33により左ケース15及び右ケース16を結合して組立てられる。この例では、左ケース15側から締結ボルト33を挿入し、右ケース16に形成した雌ネジ部に螺合させて両ケース15,16同士を締付けて結合する。
【0028】
このケーシング11は、複数ヵ所(例えば3ヵ所)で懸架ボルト34により車体フレーム側に固定された車体ブラケット9に固定され懸架保持される。この場合、図示したように各懸架部に配設される車体ブラケット9間の幅がケーシング11の幅より狭いため、懸架ボルト34にスペーサとなるカラー35を装着して懸架ボルト34及びこれに螺合するナット36により左右のケース15,16同士を締付けて固定する。
【0029】
駆動軸13を構成するペダルクランク軸6の端部及び融合スリーブ20の端部はそれぞれベアリング37,38を介して左ケース15及び右ケース16に支持される。このように強度の大きい金属材料からなる左右のケース15,16に駆動軸13の軸受部を支持させることにより、安定して堅固に駆動軸13が保持される。
【0030】
電動モータ12のモータ出力軸17の左側端部はベアリング39を介して左ケース15に支持される。モータ出力軸17の右側端部を保持するベアリング40は、この例では、樹脂からなる中央ハウジング14に設けられている。この場合、ベアリング40の外周面に沿って複数ヵ所でこのベアリング40を保持するように、右ケース16からこれと一体で中央ハウジング側に突出する円弧状の金属の凸壁(不図示)を設け、この凸壁によりベアリング40を固定保持することにより、ベアリング40は、金属材料からなるケース内に保持した場合と同様に安定して堅固に固定保持される。また、樹脂材料の成形誤差や変形に基づく位置ずれも生じない。このような凸壁が配設される部分の中央ハウジング11の樹脂材料には切欠き(不図示)を設けて金属材料の右ケース16からの凸壁の挿入を妨げないようにする。
【0031】
このケーシング11の内部は、後述のように、電動モータ12を収容するモータ室と、減速ギヤ25や遊星ギヤ機構29等を収容する減速機室と、FET等によって通電するモータ制御回路基板(不図示)を収容する制御室とに分割されている。
【0032】
3分割されたケーシング11の中央ハウジング14と左右ケース15,16との間の分割面には、後述のように、中央ハウジング側の合わせ面周縁に沿って連続した環状突起45,55を設け、左右ケース側の合わせ面に前記環状突起45,55が嵌合する環状溝44,54を形成している。これにより、ケーシング11のシール性が確保されるとともに、ケーシング分割体である中央ハウジング14と左右ケース15,16の位置合わせができ、分割面を跨って配設される駆動軸13やモータ出力軸17の軸芯合わせができる。
【0033】
図3は、ケーシング11を構成する左ケース15の内面側(右側)から見た側面図であり、図4はそのA−A部分の断面構成図である。
【0034】
左ケース15の内面側に、モータ室41及び制御室42の周縁及び両室間を仕切る仕切壁43が形成される。モータ室41及び制御室42間の仕切壁43には、信号ケーブルや電源ケーブル等を挿通させる開口51が形成される。この仕切壁43に沿って、中央ハウジング14との合わせ面に、モータ室41及び制御室42のそれぞれを囲む連続した環状溝44が形成される。この環状溝44に後述の中央ハウジング14に設けた同じく連続した環状突起45(図5)が嵌込まれる。これにより、モータ室41及び制御室42がシールされるとともに、中央ハウジング14(図2、図5)に対する位置合わせが行なわれる。
【0035】
この左ケース15の外周縁に沿って5ヵ所に締結用取付孔46が形成され、前述の締結ボルト33(図2)が挿通する。また、この左ケース15の外周縁から突出して3ヵ所に懸架ブラケット47が設けられ、それぞれ懸架用取付孔48が形成される。これらの懸架用取付孔48に前述の懸架ボルト34(図2)が挿通する。
【0036】
ペダルクランク軸挿通孔49に前述の図2のベアリング37を介してペダルクランク軸6が挿通する。また、モータ軸受部50に前述の図2のベアリング39を介してモータ出力軸17の端部が支持される。
【0037】
制御室42には、例えば6個のFET(不図示)を一列に並べて搭載したプリント基板(不図示)が収容される。これら6個のFETは、金属材料のヒートシンク(不図示)を介して左ケース15の内面に対し熱的に接触して放熱される。ヒートシンクは左ケース15の内面にケース材料と一体で形成してもよい。6個のFETは、例えば共通の押え板(不図示)によりケース内側からケース内壁面に対し押付けられる。押え板は、ケースに設けた例えば2ヵ所の貫通孔53を通してネジ(不図示)によりケース外側から締付けて各FETをケース内壁面側に圧接させる。52は、ヒートシンクにFETを固定する6個のネジのネジ頭逃げ用の凹みである。
【0038】
図5は、中央ハウジング14の断面構成図である。
中央ハウジング14の左右側面には、それぞれ、前述の左ケース15の環状溝44に嵌め込まれる環状突起45及び後述の図6、図7に示す右ケース16の環状溝54に嵌め込まれる環状突起55が形成される。この中央ハウジング14の周縁に沿って前述の締結用取付孔46(図3)に対応した5ヵ所の位置に締結ボルト挿通孔56が形成される。
【0039】
中央ハウジング14内部は、仕切壁57によりモータ室41と制御室42(図3参照)及び減速機室58に分離される。モータ室41には前述のように電動モータ12が収容され、制御室42にはFET等が接合されたプリント基板が収容される。減速機室58には、図2に示した減速ギヤ機構72や遊星ギヤ機構29が収容される。減速ギヤ機構72の中間軸23(図2)の左端部は、減速機室58に形成した軸受用凹み59内に嵌め込まれて支持される。減速機室58を形成する左側の仕切壁にはペダルクランク軸挿通孔62が形成され、ペダルクランク軸6(図2)が挿通する。
【0040】
モータ室41を形成する仕切壁57の右壁部分にモータ出力軸挿通孔60が形成され、前述のようにベアリング40(図2)を介してモータ出力軸17が挿通する。61はベアリング嵌込部を示す。
【0041】
図6は、右ケース16を内面側(左側)から見た図であり、図7は、図6のC−C部分の断面構成図である。
【0042】
右ケース16の外周縁に沿って減速機室58を形成する仕切壁63が設けられる。この仕切壁63の中央ハウジング14との合わせ面に沿って連続した環状溝54が形成される。この環状溝54に中央ハウジング14側の環状突起55が嵌め込まれて減速機室58のシール及び中央ハウジング14と右ケース16との位置合わせが行なわれる。
【0043】
右ケース16の外周縁部の3ヵ所に、左ケース15の場合と同様に、懸架ブラケット64が設けられそれぞれ懸架ボルト34(図2)が挿通する懸架用取付孔65が形成される。
【0044】
5本の締結ボルト33(図2)がそれぞれ挿通する左ケース15の締結用取付孔46(図3)及びこれらに整合する中央ハウジング14の締結ボルト挿通孔56に対応して、右ケース16の周縁部の5ヵ所に締結用ネジ孔66が形成される。この締結用ネジ孔66に締結ボルト33が螺合する。
【0045】
中間軸23(図2)の右端部は、右ケース16の内面に形成した軸受用凹み67内に嵌め込まれて支持される。
【0046】
右ケース16を貫通して駆動軸挿通孔68が開口し、図2に示したペダルクランク軸6及び融合スリーブ20からなる駆動軸13が挿通する。69はベアリング38(図2)を保持するベアリング嵌込部である。
【0047】
このような右ケース16は、前述の左ケース15と同様にアルミダイキャスト合金(ADC材)の成形体からなり、樹脂の中央ハウジング14を左右から挟んで一体のケーシング11(図2)を形成する。
【0048】
図8〜図10は上記中央ハウジング14を示し、図8は左側面図、図9は部品を装着した状態の左側面図、図10は右側面図である。
【0049】
図8に示すように、中央ハウジング14の左側面に、モータ室41及び制御室42が開口する。モータ室41内には電動モータ12(図2)が収容される。制御室42内には、図9に示すように、6個のFET76を搭載したプリント基板73が収容される。モータ室41及び制御室42同士は仕切壁57で分離されるとともにそれぞれ周縁を仕切壁57で囲まれる。
【0050】
左ケース15(図3、図4)との合わせ面となる中央ハウジング14の合わせ面の仕切壁57の上面(分割面)には、モータ室41及び制御室42の周縁に沿って環状突起45が形成される。この環状突起45のモータ出力軸挿通孔60周りの3ヵ所に斜線で示す軸芯位置合せ部Aが形成される。さらに、ペダルクランク軸挿通孔62周りの2ヵ所に位相角度位置合せ部Bが形成される。これらの位置合せ部A,Bに対応して、左ケース15(図3)の環状溝44が隙間なく嵌合し、軸の芯ずれ及び軸周りの位相角度ずれが防止される。これにより、中央ハウジング14と左ケース15が軸位置及び位相位置を高精度に位置合せして結合することができる。これらの位置合せ部A,B以外の部分はクリアランスを大きくとって、樹脂成形歪を逃し、嵌め合い部の不要な干渉を防止する。
【0051】
モータ室41と制御室42との間を仕切る部分の環状突起45には、ケーブル(不図示)を挿通させるための開口51(図3)を形成するために不連続部Cが形成される。また、制御室42の環状突起45には、さらに不連続部Dが形成される。この不連続部Dにより、受電プラグ86を介してバッテリ(不図示)に接続するケーブル(不図示)が挿通する。
【0052】
制御室42内には、電動モータ12(図2)及びプリント基板73(図9)のそれぞれに接続される接続端子74を装着する端子受け凹み75(図8)が形成される。端子受け凹み75は、電動モータ12のU,V,Wの各相に対応して3つ形成され、各々に2個の接続端子74が、ボルト挿通孔81を通る不図示のボルト及びナットにより固定される。この接続端子74を固定するためのボルト挿通孔81の反対側の端部(図10の減速機室58側の端部)にナット挿入用の角穴84が形成される(図5参照)。82は懸架ボルト挿通孔であり、83は締結ボルト挿通孔である。
【0053】
プリント基板73には、6個のFET76が各リード端子77を接合されて搭載される。6個のFET76の内面側に共通の押え板78がそれぞれFET固定ネジ79により固定される。押え板78は、2個の押え板固定ネジ80により、左ケース15(図3)の押え板取付け用貫通孔53(図3)を通して左ケース側に固定される。これにより、各FET76を直接又は金属製ヒートシンク(不図示)を介して金属の左ケース15の内面に圧接して放熱させる。
【0054】
図10に示すように、中央ハウジング14の右側面に、減速機室58が開口する。減速機室58内には、前述の図2に示したように、遊星ギヤ機構29及び減速ギヤ機構72が配設される。この減速機室58の開口面の周縁に連続した環状突起55が形成される。
【0055】
この環状突起55に、図8の左側面の環状突起45と同様に、3ヵ所の軸芯合せ部Aと2ヵ所の軸周り位相角度位置合せ部Bが形成され、これに対応した右ケース16(図6)の環状溝54と隙間なく嵌合して高精度で位置合せされる。これらの位置合せ部A,B以外の部分はクリアランスを大きくとって、樹脂成形歪を逃し、嵌め合い部の不要な干渉を防止する。85は負荷検出用センサーを嵌込むための凹みである。
【0056】
この図10に示す減速機室58の輪郭は、図8に示すモータ室41及び制御室42の輪郭と左右方向から透視的に見てオーバーラップして形成される。
【0057】
上記構成において、本発明では、中央ハウジング14と該中央ハウジング14を両側から挟む左ケース15及び右ケース16とによりケーシング11を構成し、該ケーシング11内にプリント基板73を収容し、このプリント基板73上に発熱素子(FET76)を搭載した電動駆動装置の放熱構造において、前記中央ハウジング14を樹脂材料で形成し、前記左ケース15及び右ケース16を金属材料で形成し、前記プリント基板73を前記中央ハウジング14に取付けるとともに、該プリント基板73上のFET76を直接左ケース15に接触させて該左ケース15を介して放熱させる。
【0058】
プリント基板73は、その両端部を中央ハウジング14の基板ガイド88(図8、図9参照)に挿入して装着され保持される。
【0059】
この場合、FET76の大きさやプリント基板73上の搭載位置によって、左ケース15の内面が平坦のまま(同じ肉厚のまま)、FET76を内面に接触させることができる場合と、FET76が左ケース15の内面まで達しない場合がある。FET76が左ケース15の内面まで届かない形状であれば、左ケース15の内面側を突出させてFET76が接触する当接部を形成し、この当接部を介して放熱させてもよい。
【0060】
図11は、左ケース内面にFET放熱用の当接部を突出して形成した実施形態を示し、その前側から見た断面図である。(A)は図9(a)部のFET取付け部分の断面図、(B)は図9(b)部のFETとFETの間の部分の断面図である。
【0061】
(A)に示すように、プリント基板73にFET76のリード端子77が接合されて搭載される。左ケース15の内面に当接部87が一体成形により突出して形成される。FET76は図9に示したように6個並べて搭載され、共通の押え板78をケーシング内側からあてがわれる。各FET76の外面側は、左ケース15の内面の当接部87に接触する位置となるようプリント基板に装着されている。各FET76は、左ケース15の内側で押え板78に螺合するFET固定ネジ79により締付けられ、押え板と一体的に固着される。
【0062】
(B)に示すように、押え板78は、押え板固定ネジ80により締付けられ、左ケース15の内面側に引付けれれる。これにより、各FET76を当接部87に押付けて圧接させる。
【0063】
なお、FET固定ネジ79は、押え板78に挿通孔を形成して、押え板78の内面側から当接部87に螺合させてもよい。
【0064】
また、FET固定ネジ79により各FET76が当接部87に充分強く圧接する場合には、押え板固定ネジ80は省略可能である。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、3分割したケーシングの左右両側を金属材料の左ケース及び右ケースで構成して充分な強度を得るとともに中央ハウジングを樹脂材料で形成して小型軽量化を図りながら、この金属材料の左ケース又は右ケースを放熱手段として利用し、FET等の発熱素子をこの左ケース又は右ケースに直接接触させて放熱させる。これにより、簡単な構成で効率よく発熱素子から放熱させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の電動駆動装置が適用される電動補助自転車の全体図。
【図2】 本発明の実施形態に係る電動駆動装置の水平断面構成図。
【図3】 図2の電動駆動装置の左ケースの内面図。
【図4】 図3のB−B断面構成図。
【図5】 図2の電動駆動装置の中央ハウジングの断面構成図。
【図6】 図2の電動駆動装置の右ケースの内面図。
【図7】 図6のC−C断面構成図。
【図8】 図5の中央ハウジングの左側面図。
【図9】 図8の中央ハウジングに部品を装着した状態の説明図。
【図10】 図5の中央ハウジングの右側面図。
【図11】 本発明のFET取付け部の構成説明図。
【符号の説明】
1:電動補助自転車、2:車体フレーム3:ハンガー部、4:電動駆動装置、
5:ペダル、6:ペダルクランク軸、7:後輪、8:チェーン、
9:ブラケット、10:バッテリ、11:ケーシング、12:電動モータ、
13:駆動軸、14:中央ハウジング、15:左ケース、16:右ケース、
17:モータ出力軸、18:ロータ、19:ステータ、
20:融合スリーブ、21:スプロケット、22:ギヤ、
23:中間軸、24:第1ギヤ、25:第2ギヤ、26:ラチェット、
27:大径ギヤ、28:ラチェット、29:遊星ギヤ機構、30:キャリア、
31:遊星ギヤ、32:サンギヤ、33:締結ボルト、34:懸架ボルト、
35:カラー、36:ナット、37:ベアリング、38:ベアリング、
39:ベアリング、40:ベアリング、41:モータ室、42:制御室、
43:仕切壁、44:環状溝、45:環状突起、46:締結用取付孔、
47:懸架ブラケット、48:懸架用取付孔、49:ペダルクランク軸挿通孔、
50:モータ軸受部、51:開口、52:凹み、
53:押え板取付用貫通孔、54:環状溝、55:環状突起、
56:締結ボルト挿通孔、57:仕切壁、58:減速機室、
59:中間軸支持用の凹み、60:モータ出力軸挿通孔、
61:ベアリング嵌込部、62:ペダルクランク軸挿通孔、63:仕切壁、
64:懸架ブラケット、65:懸架用取付孔、66:締結用ネジ孔、
67:中間軸支持用の凹み、68:駆動軸挿通孔、69:ベアリング嵌込部、
71:リングギヤ、72:減速ギヤ機構、73:プリント基板、
74:接続端子、75:端子受け凹み、76:FET、77:リード端子、
78:押え板、79:FET固定ネジ、80:押え板固定ネジ、
81:ボルト挿通孔、82:懸架ボルト挿通孔、83:締結ボルト挿通孔、
84:ナット挿入用角穴、85:センサー嵌込み用凹み、86:受電プラグ、
87:当接部、88:基板ガイド。

Claims (4)

  1. 中央ハウジングと該中央ハウジングを両側から挟む左ケース及び右ケースとによりケーシングを構成し、該ケーシング内にプリント基板を収容し、このプリント基板上に発熱素子を搭載した電動駆動装置の放熱構造において、
    前記中央ハウジングを樹脂材料で形成し、前記左ケース及び右ケースを金属材料で形成し、
    前記プリント基板を前記中央ハウジングに取付けるとともに、該プリント基板上の発熱素子を直接前記左ケース又は右ケースに接触させて該左ケース又は右ケースを介して放熱させることを特徴とする電動駆動装置の放熱構造。
  2. 前記左ケース又は右ケースの内面に発熱素子が接触する当接部を突出して形成したことを特徴とする請求項1に記載の電動駆動装置の放熱構造。
  3. 前記プリント基板上に複数の発熱素子を並列して搭載し、これらの発熱素子を共通の押え板で前記左ケース又は右ケースの内面側に圧接させたことを特徴とする請求項1または2に記載の電動駆動装置の放熱構造。
  4. 前記電動駆動装置は、電動補助自転車のペダル踏力補助用の電動駆動装置であることを特徴とする請求項1,2または3に記載の電動駆動装置の放熱構造。
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