JP3998440B2 - 1,4−ブタンジオールの製造方法 - Google Patents

1,4−ブタンジオールの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブタジエン、酢酸及び酸素を反応させて1,4−ジアセトキシブテンを生成させ、これを水素添加して1,4−ジアセトキシブタンとしたのち加水分解して1,4−ブタンジオールを製造する方法の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
1,4−ブタンジオールの製造法はいくつか知られているが、その代表的なものの一つに、触媒の存在下にブタジエン、酢酸及び酸素を反応させて1,4−ジアセトキシブテンを生成させ、これを水素添加して1,4−ジアセトキシブタンとしたのち加水分解して、1,4−ブタンジオールを生成させる方法があり、工業的に実施されている。この方法では、1,4−ジアセトキシブテンを生成させる工程及び加水分解工程で、種々の副生物が生成する。従って加水分解反応生成液には、1,4−ブタンジオール以外に種々の成分が含まれている。その主なものは、水、酢酸、1,4−及び1,2−ジアセトキシブタン、1−ヒドロキシー4−アセトキシブタン、1,2−ブタンジオールモノアセテート及び1,2−ブタンジオールなどであり、更に1,4−ブタンジオールよりも高沸点の成分も若干含まれている。
【0003】
1,4−ブタンジオールは種々の用途を有しているが、主要な用途の一つはポリブチレンテレフタレートの製造である。そしてこの用途には高純度の1,4−ブタンジオールが要求される。前述の加水分解反応生成液から高純度の1,4−ブタンジオールを取得する方法はいくつも提案されているが、その代表的な方法では、加水分解反応生成液を蒸留して、軽沸点成分及び高沸点成分を除去して粗1,4−ブタンジオールを取得し、これを水素添加して、含有されている主要な不純物である2−(4′−ヒドロキシブトキシ)テトラヒドロフラン、2−(4′−オキソブトキシ)テトラヒドロフラン、及び1,4−ビス(2′−テトラヒドロフロキシ)ブタン等を、テトラヒドロフランや1,4−ブタンジオールに転換したのち、再び蒸留して高純度の1,4−ブタンジオールを取得する(特開昭61−197534号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
加水分解反応生成液には前述のように種々の成分が含まれているので、これから水素添加及び蒸留により高純度の1,4−ブタンジオールを与える粗1,4−ブタンジオールを取得するには、加水分解反応生成液からこれらの成分を十分に除去しなければならない。その代表的な方法では、加水分解反応液を先ず第1蒸留塔で蒸留して、酢酸及び水を塔頂から留出させ、塔底から1,2−及び1,4−ブタンジオールから成るブタンジオール類、1,2−及び1,4−ジアセトキシブタンから成るジアセトキシブタン類、並びに1,2−及び1,4−ブタンジオールモノアセテートから成るヒドロキシアセトキシブタン類、更には重質成分などを含む塔底液を取得する。次いでこの塔底液を第2蒸留塔で蒸留して、塔頂から1,2−ブタンジオールを留出させ、ジアセトキシブタン類及びヒドロキシアセトキシブタン類を塔上部から側流(上部側流)として抜出し、塔下部から粗1,4−ブタンジオールを側流(下部側流)として抜出し、重質成分を塔底から抜出す。粗1,4−ブタンジオールを側流として抜出すには、液相で抜出す方法と気相で抜出す方法とが考えられるが、液相で抜出すと後続する水素添加工程における触媒の被毒が大きいので、気相で抜出すのが好ましいとされている(特開平6−172235号公報参照)。しかしながら気相抜出し方式は、1,4−ブタンジオールを蒸発潜熱を保有した高エネルギー状態で抜出すので、蒸留塔のエネルギー消費量が大きいという欠点がある。従って本発明は粗1,4−ブタンジオールを下部側流として液相で抜出し、なおかつ後続する水素添加工程の触媒被毒が激しくなるのを回避する方法を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、触媒の存在下にブタジエン、酢酸及び酸素を反応させて1,4−ジアセトキシブテンを含む反応物を生成させ、この反応物を水素添加して炭素−炭素二重結合を飽和させたのち加水分解する1,4−ブタンジオールの製造方法において、1,4−ジアセトキシブテンを含む反応物の水素添加を、活性炭担持貴金属触媒を用いる前段反応と、シリカ担持貴金属触媒を用いる後段反応との2段階で行い、加水分解反応生成液を蒸留して軽沸点成分及び高沸点成分を除去して粗1,4−ブタンジオールを取得し、これを触媒の存在下に水素添加して不純物を低減させるに際し、ヒドロキシルアミン消費量に基いて式(1)で算出される2−(4′−ヒドロキシブトキシ)テトラヒドロフランの濃度が1,4−ブタンジオールに対して0.5重量%以下である粗1,4−ブタンジオールを蒸留塔下部から側流として液相で抜出して水素添加反応に供することにより、水素添加反応を長期間に亘り安定して行い、かつエネルギー効率よく1,4−ブタンジオールを製造することができる。
【0006】
【数2】
Figure 0003998440
【0007】
式中、W:分析に用いた粗1,4−ブタンジオール試料中の1,4−ブタンジオール量(g)
S:試料に5%塩酸ヒドロキシルアミン−塩酸エタノール溶液を反応させたのち、0.1規定アルコール性苛性カリ溶液で滴定したときの、アルコール性苛性カリ溶液の消費量(ml)
B:ブランクテストでのアルコール性苛性カリ溶液の消費量(ml)
f:アルコール性苛性カリ溶液のファクター
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明では、ブタジエン、酢酸及び酸素からの1,4−ジアセトキシブテンを含む反応物の製造、得られた反応物を水素添加して炭素−炭素二重結合を飽和させる反応、及びこの水素添加反応生成物の加水分解反応は、基本的にいずれも公知の方法に従って行うことができる。1,4−ジアセトキシブテンを含む反応物の製造は、触媒充填床が収容されている反応器に、ブタジエン及び酢酸を液相で、通常は酢酸中にブタジエンを溶解させて連続的に供給し、同時に反応器に空気のような酸素含有ガスを連続的に供給することにより行うことができる。酢酸は反応溶媒を兼ねて用いられるので、反応器に供給するブタジエンに対する酢酸の比率は、通常は化学量論量の5〜60倍、好ましくは10〜40倍である。酸素も、反応器内の気相が爆発組成にならない限度で、大過剰に用いるのが好ましい。
【0009】
また、反応温度は40〜120℃、好ましくは50〜80℃であり、圧力は通常は常圧ないしは若干減圧である。触媒としては貴金属ならびにテルル、アンチモン、砒素及びセレンより成る群から選ばれたものを担体に担持させた担体付触媒を用いる。担体としてはシリカや活性炭などを用いるのが好ましい。最も好ましいのはシリカにパラジウム及びテルルを担持させた触媒であり、この触媒を用いると、後続する加水分解反応生成液の蒸留により、ヒドロキシルアミン消費量から算出される2−(4′−ヒドロキシブトキシ)テトラヒドロフランの濃度が1,4−ブタンジオールに対して0.5重量%以下の粗1,4−ブタンジオールを取得するのが容易である。すなわち触媒を構成する担体及び貴金属などにより、生成する副生物が少しづつ異なり、シリカを担体とする触媒はヒドロキシルアミン消費量から算出される2−(4′−ヒドロキシブトキシ)テトラヒドロフランの副生が比較的少ない。シリカ担持パラジウム−テルル触媒のパラジウム含有量は0.1〜20重量%、特に0.5〜10重量%が好ましく、またテルルはパラジウムに対して原子比で0.05〜5倍、特に0.15〜0.35倍であるのが好ましい。
【0010】
ブタジエン、酢酸及び酸素の反応により得られた反応生成液は、気液分離したのち蒸留して、酢酸及び高沸点成分を除去し、主としてジアセトキシブテンから成る留分を取得し、これを水素添加して炭素−炭素二重結合を飽和させ、ジアセトキシブテンをジアセトキシブタンに転換する。この水素添加反応は、通常は担体付貴金属触媒、例えば活性炭に貴金属、好ましくはパラジウムを担持した触媒の充填床が収容されている反応器に、ジアセトキシブテン留分と水素とを連続的に供給することにより行われる。反応温度は20〜180℃、特に30〜150℃が好ましく、圧力は常圧ないしは加圧が好ましい。
【0011】
本発明では、上述の活性炭担持貴金属触媒を用いて水素添加を行ったのち、更にシリカに貴金属、好ましくはルテニウムを担持した触媒を用いて水素添加を行う。このシリカ担持触媒を用いる水素添加反応も、前述の活性炭担持触媒を用いる水素添加反応と同様の反応条件で行えばよいが、反応温度は若干高く、例えば30〜100℃高くするのが好ましい。このように活性炭担持触媒及びシリカ担持触媒を用いて水素添加反応を2段階で行うと、後続する加水分解反応生成液の蒸留により、ヒドロキシルアミン消費量に基いて算出される2−(4′−ヒドロキシブトキシ)テトラヒドロフランの濃度が0.5重量%以下の粗1,4−ブタンジオールを取得するのが容易である。これは後段のシリカ担持触媒を用いる水素添加反応により、水添反応に供したジアセトキシブテン留分中の、ヒドロキシルアミンと反応する不純物ないしはその前駆体が減少するものと考えられる。
【0012】
水素添加反応により得られたジアセトキシブタンは、次いで加水分解してジアセトキシブタンをブタンジオールに転換する。この加水分解反応は、通常は強酸性陽イオン交換樹脂の充填床が収容されている反応器に、ジアセトキシブタンと水の混合液を連続的に供給することにより行う。混合液中の水の含有量は、加水分解を完全に行わせるのに必要な理論量の2〜100倍、特に4〜50倍が好ましい。また加水分解温度は30〜110℃、特に40〜90℃が好ましい。加水分解ではブタンジオール類の外に、中間体であるヒドロキアセトキシブタン類も生成する。ブタンジオール類とヒドロキシアセトキシブタン類の生成比率は、加水分解反応の条件に大きく依存する。なお、1−ヒドロキシ−4−アセトキシブタンは脱酢酸環化させてテトラヒドロフランに誘導できるので、1,4−ブタンジオールとテトラヒドロフランを併産させる場合には、併産比率に適合するように加水分解条件を設定する。
【0013】
加水分解反応生成液は蒸留し、軽沸点成分及び高沸点成分を除去して、粗1,4−ブタンジオールを取得し、これを後続する水素添加反応に供する。本発明では式(1)に基いて算出される2−(4′−ヒドロキシブトキシ)テトラヒドロフラン濃度が0.5重量%以下の粗1,4−ブタンジオールを、蒸留塔下部から側流として液相で抜出して、水素添加反応に供する。通常は加水分解反応液を先ず第1蒸留塔で蒸留して、酢酸及び水を塔頂から留出させ、塔底から1,2−及び1,4−ブタンジオールから成るブタンジオール類、1,2−及び1,4−ジアセトキシブタンから成るジアセトキシブタン類、並びに1,2−及び1,4−ブタンジオールモノアセテートから成るヒドロキシアセトキシブタン類から成る塔底液を取得する。この塔底液中には1,4−ブタンジオールよりも高沸点の重質成分も含まれている。第1蒸留塔は理論段数2〜10段程度のものを用いて、塔頂圧力5〜100kPa、特に7〜30kPa、塔底温度100〜200℃、特に120〜180℃で操作するのが好ましい。
【0014】
第1蒸留塔の塔底液は第2蒸留塔に供給して更に蒸留し、式(1)に基いて算出される2−(4′−ヒドロキシブトキシ)テトラヒドロフラン濃度が0.5重量%以下の粗1,4−ブタンジオールを塔下部から側流として液相で抜出す。1,4−ブタンジオールよりも沸点の低い1,2−ブタンジオール、ジアセトキシブタン類及びヒドロキシアセトキシブタン類は塔頂から留出させることもできるが、通常は1,2−ブタンジオールは塔頂から留出させ、ジアセトキシブタン類及びヒドロキシアセトキシブタン類は塔上部から側流として抜出して、それぞれの用途に供する。この第2蒸留塔は理論段数60〜120段、特に80〜100段のものを用いて、塔頂圧力5〜100kPa、特に7〜60kPa、塔底温度130〜270℃、特に150〜250℃で操作するのが好ましい。第2蒸留塔の塔下部から側流として液相で抜出される粗1,4−ブタンジオールは、式(1)に基いて算出される2−(4′−ヒドロキシブトキシ)テトラヒドロフラン濃度が1,4−ブタンジオールに対して0.5重量%以下のものでなければならない。そのためには、前述したように、ブタジエン、酢酸及び酸素からジアセトキシブテンを含む反応物を製造する際の触媒の選択、及びジアセトキシブテンを水素添加して炭素−炭素二重結合が飽和したジアセトキシブタンに転換する際の水素添加触媒の選択により、ヒドロキシルアミンを反応する不純物ないしはその前駆体の量を低減させておくのが好ましい。また第2蒸留塔の下部側流の抜出位置や蒸留塔の操作条件を調節することにより、側流として液相で抜出される粗1,4−ブタンジオール中のこれらの量を減少させることもできる。
【0015】
側流として抜出された粗1,4−ブタンジオールは触媒の存在下に水素添加する。この水素添加反応では、粗1,4−ブタンジオール中の主要な不純物である2−(4′−ヒドロキシブトキシ)テトラヒドロフラン、2−(4′−オキソブトキシ)テトラヒドロフラン、及び1,4−ビス(2′−テトラヒドロフロキシ)ブタン等が水添分解されて、テトラヒドロフランや1,4−ブタンジオールに転換される。触媒としては常用のものを用いればよいが、通常は活性炭担持パラジウム触媒のような担体付パラジウム触媒を用いるのが好ましい。水素添加の反応条件は温度は40〜250℃、特に80〜180℃が好ましく、圧力は常圧ないしは加圧、特に0.4〜2MPa(ゲージ圧)が好ましい。なお、水添反応は純水素以外に不活性ガスで稀釈された水素を用いて行うこともできる。
【0016】
水素添加反応生成液からは、常法により蒸留して軽沸点成分及び高沸点を除去することにより、高純度に精製された1,4−ブタンジオールを取得することができる。
【0017】
【実施例】
以下に実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、ヒドロキシルアミンの消費量の測定は下記により行う。
ヒドロキシルアミン消費量の測定
試薬の調製:塩酸ヒドロキシルアミン(試薬特級)50gを水100gに溶解させる。これに塩酸(試薬特級)8.5mlを加えたのち、エチルアルコール(試薬特級)で全量を1リットルとする。
【0018】
分析操作;式(1)で算出される2−(4′−ヒドロキシブトキシ)テトラヒドロフランの概算濃度に応じて、下記重量の試料を100ml三角フラスコに採取する。
2−(4′−ヒドロキシブトキシ) 試料量
テトラヒドロフラン濃度
0.1重量%以下 約10g
0.1〜1重量% 約 5g
1〜5重量% 約 2g
5〜10重量% 約 1g
三角フラスコに上記で調製した試薬10mlをホールピペットで正確に加える。
【0019】
三角フラスコを60±2℃の湯浴に2時間浸漬したのち、内容液をメタノールでよく洗浄しながら100mlビーカーに移し、メタノールで全量を約50mlとする。
ビーカーの溶液を0.1規定メチルアルコール性苛性カリ(試薬特級)で滴定する。
実施例1
シリカにパラジウム及びテルルを担持させた触媒の存在下に、ブタジエン、酢酸及び窒素で希釈した空気を、8MPa(ゲージ圧)、70〜85℃で反応させて、ジアセトキシブテンを含む溶液を得た。この溶液を蒸留して、酢酸及び高沸点物を除去し、主としてジアセトキシブテンから成る留分を取得した。活性炭にパラジウムを担持した触媒の存在下に、上記で取得した留分を、5MPa(ゲージ圧)、40〜70℃で水素添加し、炭素−炭素二重結合の水素化を行った。シリカにルテニウムを担持させた触媒の存在下に、上記で得た水素添加反応生成液を、5MPa(ゲージ圧)、70〜100℃で更に水素添加した。
【0020】
水素添加反応生成液は、次いでスルホン酸型強酸性陽イオン交換樹脂であるダイヤイオンSKIB(三菱化学社製品、ダイヤイオンは同社の登録商標)の存在下に40〜60℃で加水分解した。加水分解反応生成液は蒸留して、塔頂から水及び酢酸を留出させ、塔底から下記の組成の塔底液を取得した。
塔底液の組成(重量%)
1,4−ブタンジオール 42.1
1,2−ブタンジオール 7.1
1,4−ジアセトキシブタン 9.2
1,2−ジアセトキシブタン 0.3
1,4−ブタンジオールモノアセテート 39.0
1,2−ブタンジオールモノアセテート 1.9
また、この塔底液中のヒドロキシルアミン消費量に基いて算出された2−(4′−ヒドロキシブトキシ)テトラヒドロフラン濃度は0.2重量%であった。
【0021】
理論段数96段の充填塔を用いて、21KPa、塔底温度195℃、還流比30で上記で得た塔底液を蒸留した。塔頂から25段目の位置から上部側流を、塔頂から98段目の位置から下部側流を、それぞれ液相で抜出した。蒸留塔から得られた各留分の重量組成は次の通りであった。
塔頂留出液:1,2−ブタンジオール74%、1,2−ブタンジオールモノアセテート20%、1,2−ジアセトキシブタン4%
上部側流 :1,4−ブタンジオールモノアセテート64%、1,4−ブタンジオール19%、1,4−ジアセトキシブタン15%
下部側流 :1,4−ブタンジオール99.4%、2−(4′−ヒドロキシブトキシ)テトラヒドロフラン0.4%、高沸点物0.1%
塔底液 :1,4−ブタンジオール95%、高沸点物
活性炭にパラジウムを1重量%となるように担持させた触媒が充填されている反応器に、上記で得た下部側流を水素と共に通液し、水素添加反応を行わせた。反応は、0.9MPa(ゲージ圧)、100℃、水素/側流=0.00027(重量比)、側流の液空間速度1.5hr-1で行った。
【0022】
反応生成液は気液分離したのち、理論段数40段の充填塔を用い、圧力6.7KPa、塔底温度163℃、還流比50で蒸留した。塔頂から29段目に反応生成液を供給し、塔頂から20段目の位置から高純度に精製された1,4−ブタンジオールを側流として抜出した。1,4−ブタンジオールの純度は99.8%であり、1,4−ブタンジオール中のヒドロキシルアミン消費量に基いて算出した2−(4′−ヒドロキシブトキシ)テトラヒドロフラン濃度は、運転開始後100時間目で0.09重量%、1000時間目で0.11重量%であった。
比較例1
実施例1において、ブタジエン、酢酸及び酸素を反応させてジアセトキシブテンを生成させる際の触媒として、活性炭にパラジウム及びテルルを担持させた触媒を用い、またジアセトキシブテン留分の炭素−炭素二重結合を水素化した後の後段の水素化触媒として活性炭にルテニウムを担持させた触媒を用いた以外は、実施例1と同様にして1,4−ブタンジオールの製造を行った。
【0023】
加水分解反応生成液の蒸留塔の塔底液中のヒドロキシルアミン消費量に基いて算出された2−(4′−ヒドロキシブトキシ)テトラヒドロフラン濃度は1.0重量%であった。また、この塔底液の蒸留塔の下部側流中の2−(4′−ヒドロキシブトキシ)テトラヒドロフラン濃度は1.9重量%であった。この側流を水素添加したのち蒸留して得られた1,4−ブタンジオールの純度は、運転開始100時間後で99.4重量%、1000時間後で98.5重量%であり、1,4−ブタンジオール中の2−(4′−ヒドロキシブトキシ)テトラヒドロフラン濃度は、運転開始100時間後で0.21重量%、1000時間後で1.07重量%であり、側流を水素添加する際の触媒の経時劣化が大きかった。

Claims (7)

  1. 触媒の存在下に、ブタジエン、酢酸及び酸素を反応させて1,4−ジアセトキシブテンを含む反応物を生成させ、この反応物を水素添加して炭素−炭素二重結合を飽和させたのち加水分解する1,4−ブタンジオールの製造方法において、1,4−ジアセトキシブテンを含む反応物の水素添加を、活性炭担持貴金属触媒を用いる前段反応と、シリカ担持貴金属触媒を用いる後段反応との2段階で行い、加水分解反応生成液を蒸留して軽沸点成分及び高沸点成分を除去して粗1,4−ブタンジオールを取得し、これを触媒の存在下に水素添加して不純物を低減させるに際し、ヒドロキシルアミン消費量に基いて式(1)で算出される2−(4′−ヒドロキシブトキシ)テトラヒドロフランの濃度が、1,4−ブタンジオールに対して0.5重量%以下である粗1,4−ブタンジオールを蒸留塔下部から側流として液相で抜出して水素添加反応に供することを特徴とする方法。
    Figure 0003998440
    式中、
    W:分析に用いた粗1,4−ブタンジオール試料中の1,4−ブタンジオール量(g)
    S:試料に5%塩酸ヒドロキシルアミン−塩酸・エタノール溶液を反応させたのち、0.1規定アルコール性苛性カリ溶液で滴定したときの、アルコール性苛性カリ溶液の消費量(ml)
    B:ブランクテストでのアルコール性苛性カリ溶液の消費量(ml)
    f:アルコール性苛性カリ溶液のファクター
  2. ブタジエン、酢酸及び酸素を反応させて1,4−ジアセトキシブテンを生成させる反応を、担体に貴金属並びにテルル、アンチモン、砒素及びセレンより成る群から選ばれたものを担持した触媒の存在下に行うことを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. ブタジエン、酢酸及び酸素を反応させて1,4−ジアセトキシブテンを生成させる反応を、シリカにパラジウム及びテルルを担持した触媒の存在下に行うことを特徴とする請求項1記載の方法。
  4. 1,4−ジアセトキシブテンを含む反応物の水素添加を、活性炭にパラジウムを担持させた触媒を用いる前段反応と、シリカにルテニウムを担持させた触媒を用いる後段反応との2段階で行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
  5. 粗1,4−ブタンジオールを、活性炭又はシリカに貴金属を担持した触媒の存在下に水素添加することを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の方法。
  6. 粗1,4−ブタンジオールを水素添加して得た水素添加反応生成液を蒸留して、高度に精製された1,4−ブタンジオールを取得することを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の方法。
  7. 加水分解反応生成液を第1蒸留塔で蒸留して塔頂から水及び酢酸を留出させ、塔底からブタンジオール類、ジアセトキシブタン類及びヒドロキシアセトキシブタン類を含む塔底液を取得し、これを第2蒸留塔で蒸留して塔頂から1,2−ブタンジオールを留出させ、上部側流としてジアセトキシブタン類及びヒドロキシアセトキシブタン類を抜出し、下部側流として粗1,4−ブタンジオールを液相で抜出すことを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の方法。
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