図1は、本発明の実施例に係る光ディスク装置を示すブロック図である。この光ディスク装置1は、ディスク原盤2を露光してディジタルオーディオテープレコーダ3より出力されるオーディオデータD1と、このオーディオデータD1の処理に必要な副データを記録する。光ディスクの製造工程では、このディスク原盤2を現像した後、電鋳処理することにより、マザーディスクを作成し、このマザーディスクよりスタンパーを作成する。さらに光ディスクの製造工程では、このようにして作成したスタンパーよりディスク状基板を作成し、このディスク状基板に反射膜、保護膜を形成してコンパクトディスクを作成する。
すなわちこの光ディスク装置1において、スピンドルモータ4は、ディスク原盤2を回転駆動し、底部に保持したFG信号発生回路より、所定の回転角毎に信号レベルが立ち上がるFG信号FGを出力する。スピンドルサーボ回路5は、ディスク原盤2の露光位置に応じて、このFG信号FGの周波数が所定周波数になるようにスピンドルモータ4を駆動し、これによりディスク原盤2を線速度一定の条件により回転駆動する。
記録用レーザー7は、ガスレーザー等により構成され、ディスク原盤露光用のレーザービームLを射出する。光変調器8Aは、電気音響光学素子で構成され、制御信号SC1に応じてレーザービームLの光量を切り換えて出力する。これにより光変調器8Aは、制御信号SC1に応じてレーザービームLの光量を変調する。
光変調器8Bは、電気音響光学素子で構成され、このレーザービームLを変調信号S1によりオンオフ制御して射出する。ミラー10は、このレーザービームLの光路を折り曲げてディスク原盤2に向けて射出し、対物レンズ11は、このミラー10の反射光をディスク原盤2に集光する。これらミラー10及び対物レンズ11は、図示しないスレッド機構により、ディスク原盤2の回転に同期してディスク原盤2の外周方向に順次移動し、これによりレーザービームLによる露光位置を順次ディスク原盤2の外周方向に変位させる。
これによりこの光ディスク装置1では、ディスク原盤2を回転駆動した状態で、ミラー10及び対物レンズ11の移動によりらせん状にトラックを形成し、このトラックに変調信号S1に対応して順次ピットを形成する。さらにこのとき制御信号SC1に応じてピット幅を変化させる。
識別符号発生回路12は、この光ディスク装置1により作成されるコンパクトディスクを識別するための識別データを発生し、この識別データに応じて制御信号SC1の信号レベルを切り換える。これにより識別符号発生回路12は、変調器8Aより出力されるレーザービームLの光量を100〔%〕の光量から85〔%〕の光量に間欠的に立ち下げ、ディスク原盤2に形成されるピット幅を識別データに応じて変調する。
変調回路14は、ディジタルオーディオテープレコーダ3より出力されるオーディオデータD1を受け、対応するサブコードデータをこのオーディオデータD1に付加する。さらに変調回路14は、このオーディオデータD1及びサブコードデータをコンパクトディスクのフォーマットに従ってデータ処理し、変調信号S2を生成する。すなわち変調回路14は、オーディオデータD1及びサブコードデータに誤り訂正符号を付加した後、インターリーブ処理、EFM変調処理する。これにより変調回路14は、ピット形成の基本周期Tに対して、この基本周期Tの整数倍の周期(周期3T〜11T)で信号レベルが変化するEFM変調信号S2を出力する。
エッジ位置補正回路15A及び15Bは、EFM変調信号S2の変化パターンを検出し、この変化パターンに応じて再生時の符号間干渉を低減するように、EFM変調信号S2のタイミングを補正し、そのタイミング補正結果でなる変調信号S1A及びS1Bを出力する。このときエッジ位置補正回路15Aは、光変調器8Aより出力される100〔%〕光量のレーザービームLに対応する変調信号S1Aを出力するのに対し、エッジ位置補正回路15Bは、光変調器8Aより出力される85〔%〕光量のレーザービームLに対応する変調信号S1Bを出力する。
すなわちこのようにしてレーザービームLの光量を100〔%〕の光量から85〔%〕光量に切り換えてピット幅を変調すると、その分再生信号の信号レベルも変化することになる。具体的には、それぞれ100〔%〕の光量及び85〔%〕の光量による場合について、図2及び図3に再生信号RFのアイパターンを示すように、再生信号RFの振幅W1及びW2が変化する。
これを連続した波形として観察すると、図4に示すように、正しく再生信号を2値化するためのスライスレベルSL1及びSL2が、100〔%〕の光量による場合と、85〔%〕の光量による場合とで相違するようになる。すなわち100〔%〕の光量による部分と、85〔%〕の光量による部分とで、アシンメトリーが大きく変化するようになる。
これにより100〔%〕の光量による場合の一定のスライスレベルSL1により再生信号RFを2値化すると、正しいタイミング(すなわち基本周期Tに同期したタイミング)により2値化信号を生成することが困難になり、再生クロックに大きなジッタが発生することになり、これによりコンパクトディスクに記録されたオーディオデータを正しく再生することが困難になる。さらに85〔%〕の光量による再生信号を、100〔%〕の光量について設定したスライスレベルSL1によりスライスした場合、例えば周期3Tの再生信号のように、再生信号の振幅が小さな場合には、2値化信号の信号レベル自体スライスレベルSL1を横切らなくなり、これによりジッタが増大するだけでなく、この2値化信号より生成する再生データにビット誤りが多発することになる。
一般のコンパクトディスクプレイヤーにおいては、このようなアシンメトリーの変化に対応してスライスレベルを補正するスライスレベル自動調整回路を備えてはいるものの、急激な光量変化については対応することが困難で、結局レーザービームLの光量を切り換えた直後の部分で、非常に長いバーストエラーが発生する。
このため光ディスク装置1において、エッジ位置補正回路15A及び15Bは、ディスク原盤2に形成されるピット長を補正して、それぞれ100〔%〕及び85〔%〕の光量における再生信号RFにおいて、図5に示すように、同一のスライスレベルにより再生信号を2値化して正しいタイミングにより2値化信号を生成できるように、変調信号S2のタイミングを補正してなる変調信号S1A及びS1Bを出力する。
さらにこのときそれぞれEFM変調信号S2の変化パターンを検出し、この変化パターンに応じて、隣接符号からの符号間干渉を低減するように変調信号S1A及びS1Bを出力する。
すなわちレーサビームLの光量が変化すれば、ピット幅が変化することにより、各光量における符号間干渉の程度も変化する。このことからエッジ位置補正回路15A及び15Bは、各光量において、符号間干渉による再生信号RFのジッタが低減するように変調信号S2のタイミングを補正する。
データセレクタ13は、識別符号発生回路12より出力される制御信号SC1に基づいて、レーザービームLの光量の切り換えに連動して対応する変調信号S1A及びS1Bを選択出力する。
図6は、識別符号発生回路12を示すブロック図である。この識別符号発生回路12において、発振器18は、ピット形成周期に比して充分に長い周期(数百〜数千ピット周期)で信号レベルが切り換わる識別符号用クロックを生成する。N進カウンタ19は、この識別符号用クロックをカウントするリングカウンタでなり、カウント値CT1を出力し、カウント値が一巡するとリセット信号RSTを出力する。
識別データテーブル20は、ビット情報を保持するリードオンメモリ回路で構成され、カウント値CT1をアドレス入力にして保持したデータを出力する。これにより識別データテーブル20は、同期信号として使われる一定のパターン情報をビット情報、ディスク原盤2に記録するID情報、製造工場などの情報を順次循環的に出力する。
スクランブル回路21は、識別データテーブル20より出力されるビット情報をイクスクルーシブオア回路構成の加算回路23に入力し、ここでM系列発生回路22より出力されるM系列符号により暗号化して出力する。ここでM系列発生回路22は、複数のフリップフロップとイクスクルーシブオア回路により構成され、リセット信号RSTを基準にしてM系列符号をリセットする。これによりスクランブル回路21は、識別データテーブル20より順次循環的に出力されるビット情報に対応して、順次循環的にビット値の変化する制御信号SC1を出力する。なおM系列発生回路22は、リセット信号RSTが出力された後、所定期間はM系列符号の出力を停止し、これにより識別データテーブル20より出力されるビット情報のうち、同期信号の部分にはスクランブル処理しないようになされている。
かくしてこの光ディスク装置1では、この制御信号SC1に応じてレーザービームLの光量が100〔%〕の光量から85〔%〕の光量に切り換えられることにより、コンパクトディスクのピット幅により、M系列符号で暗号化されたID情報等が同期信号と共に記録されるようになされている。
図7は、エッジ位置補正回路15Aを示すブロック図である。なおエッジ位置補正回路15Bは、立ち上がりエッジ補正回路25A及び25Bに格納する補正データが異なる以外、エッジ位置補正回路15Aと同一でなることにより、重複した説明は省略する。
エッジ位置補正回路15Aにおいて、レベル変換回路26は、出力振幅が1〔V〕でなるEFM変調信号S2の信号レベルを、出力振幅が5〔V〕でなるTTLレベルに補正して出力する。PLL回路27は、図8に示すように、レベル変換回路26より出力される変調信号S3(図8(A))よりクロックCK(図8(B))を生成して出力する。かくするにつき、変調信号S2においては、基本周期Tの整数倍の周期で信号レベルが変化することにより、PLL回路27は、この変調信号S2に同期した基本周期Tにより信号レベルが変化するクロックCKを生成する。
立ち上がりエッジ補正回路25Aは、図9に示すように、クロックCKで動作する13個のラッチ回路28A〜28Mを直列に接続し、この直列回路にレベル変換回路26の出力信号S3を入力する。これにより立ち上がりエッジ補正回路25Aは、レベル変換回路26の出力信号S3をクロックCKのタイミングによりサンプリングし、連続する13点のサンプリング結果より、変調信号S2の変化パターンを検出する。すなわち、例えば「0001111000001 」のラッチ出力が得られた場合、長さ5Tのスペースに続いて長さ4Tのピットが連続する変化パターンと判断することができる。同様に「0011111000001 」のラッチ出力が得られた場合、長さ5Tのスペースに続いて長さ5Tのピットが連続する変化パターンと判断することができる。
補正値テーブル29は、複数の補正データを格納したリードオンリメモリで形成され、ラッチ回路28A〜28Mのラッチ出力をアドレスにして、変調信号S3の変化パターンに対応する補正値データDFを出力する。モノステーブルマルチバイブレータ(MM)30は、直列接続された13個の中央のラッチ回路28Gよりラッチ出力を受け、このラッチ出力の立ち上がりのタイミングを基準にして、所定期間の間(周期3Tより充分に短い期間)、信号レベルが立ち上がる立ち上がりパルス信号を出力する。
遅延回路31は、12段のタップ出力を有し、各タップ間の遅延時間差がこのエッジ位置補正回路15Aにおける変調信号のタイミング補正の分解能に設定される。遅延回路31は、モノステーブルマルチバイブレータ30より出力される立ち上がりパルス信号を順次遅延して各タップより出力する。セレクタ33は、補正値データDFに従って遅延回路31のタップ出力を選択出力し、これにより補正値データDFに応じて遅延時間の変化してなる立ち上がりパルス信号SS(図8(D))を選択出力する。
これにより立ち上がりエッジ補正回路25Aは、変調信号S2の信号レベルの立ち上がりに対応して信号レベルが立ち上がり、かつ変調信号S2に対する各立ち上がりエッジの遅延時間Δr(3,3)、Δr(4,3)、Δr(3,4)、Δr(5,3)、……が、変調信号S2の変化パターンに応じて変化する立ち上がりエッジ信号SSを生成する。
なおこの図8においては、変調信号S2の変化パターンを、クロック(すなわちチャンネルクロックでなる)CKの1周期を単位としたピット長pと、ピット間隔bとにより表し、立ち上がりエッジに対する遅延時間をΔr(p、b)により示す。従ってこの図8(D)において、2番目に記述された遅延時間Δr(4、3)は、長さ4クロックのピットの前に、3クロックのブランクがある場合の遅延時間である。これにより補正値テーブル29には、これらp及びbの全ての組合せに対応する補正値データDFが格納されていることになる。
かくするにつき光ディスクでは、変調信号S2に応じてレーザービームLが照射されてピットが形成されることにより、立ち上がりエッジ補正回路25Aは、基本周期Tを単位にした周期12Tの範囲について、光ディスクに形成されるピットのパターンを検出し、このパターンに応じて立ち上がりエッジ信号SSを生成することになる。
立ち下がりエッジ補正回路25Bは、モノステーブルマルチバイブレータ30がラッチ出力の立ち下がりエッジを基準にして動作することと、補正値テーブル29の内容が異なることを除いて、立ち上がりエッジ補正回路25Aと同一に構成される。
これにより立ち下がりエッジ補正回路25Bは、変調信号S2の信号レベルの立ち下がりに対応して信号レベルが立ち上がり、かつ変調信号S2に対する各立ち上がりエッジの遅延時間Δf(3,3)、Δf(4,4)、Δf(3,3)、Δf(5,4)、……が変調信号S2の変化パターンに応じて変化する立ち下がりエッジ信号SR(図8(C))を生成する。なおこの図8においては、立ち上がりエッジに対する遅延時間と同様に、ピット長pと、ピット間隔bとにより、立ち下がりエッジに対する遅延時間をΔf(p、b)で示す。
かくするにつき立ち下がりエッジ補正回路25Bにおいても、基本周期Tを単位にした周期12Tの範囲について、光ディスクに形成されるピットのパターンを検出し、このパターンに応じてレーザービームの照射終了のタイミングでなる変調信号S2の立ち下がりエッジのタイミングを補正して、立ち下がりエッジ信号SRを生成するようになされている。
フリップフロップ(F/F)35(図7)は、立ち上がりエッジ信号SS及び立ち下がりエッジ信号SRを合成して出力する。すなわちフリップフロップ35は、立ち上がりエッジ信号SS及び立ち下がりエッジ信号SRをそれぞれセット端子S、リセット端子Rに入力し、これにより立ち上がりエッジ信号SSの信号レベルの立ち上がりで信号レベルが立ち上がった後、立ち下がりエッジ信号SRの信号レベルの立ち上がりで信号レベルが立ち下がる変調信号S5を生成する。レベル逆変換回路36は、出力振幅がTTLレベルでなるこの変調信号S5の信号レベルを補正し、元の出力振幅により出力する。
これにより変調信号S2においては、立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジのタイミングが前後のピット及びランドの長さに応じて補正されて出力され、これに対応してディスク原盤2に対してレーザービームLを照射するタイミングも、前後のピット及びランドの長さに対応して補正される。
これにより光ディスク装置1では、再生時、符号間干渉により発生するジッタを低減するように、各ピットの前エッジ及び後エッジの位置を補正する。またそれぞれ記録用レーザービームLの光量に対応したエッジ位置補正回路15A及び15Bにより、前エッジ及び後エッジの位置を補正することにより、レーザービームLの光量を立ち上げた場合でも、再生信号を一定のしきい値により処理して、ピット長、ピット間隔により記録したデータD1を確実に再生できるように、各ピットの前エッジ及び後エッジの位置を補正する。
すなわちレーザービームLの光量が100〔%〕の場合には、エッジ位置補正回路15Aより出力される変調信号S1Aにより前エッジ及び後エッジの位置を補正し、これにより一定のスライスレベルにより正しく2値化信号を生成できるようにし、またレーザービームLの光量が85〔%〕の場合には、エッジ位置補正回路15Bより出力される変調信号S1Bにより前エッジ及び後エッジの位置を補正し、100〔%〕の場合と同一のスライスレベルにより正しく2値化信号を生成できるようにする。
図10は、このようにしてエッジのタイミング補正に使用される補正値テーブル29の生成の説明に供する工程図である。光ディスク装置1では、この補正値テーブル29を適切に設定することにより、レーザービームLの光量、ピット長、前後のブランク長が変化した場合でも、クロックCKに同期した正しいタイミングで所定のスライスレベルを再生信号が横切るようにする。
なお補正値テーブル29は、各エッジ位置補正回路15A及び15Bにおいて、それぞれ立ち上がりエッジ補正回路25A及び立ち下がりエッジ補正回路25Bに設定されるが、生成の条件が異なる以外、何れも生成方法は同一であるので、ここでは立ち上がりエッジ補正回路25Aについて説明する。
この工程においては、光ディスク装置1により評価用のディスク原盤を作成し、このディスク原盤より作成されるコンパクトディスクの再生結果に基づいて、補正値テーブルを設定する。
ここでこの評価用のディスク原盤作成時において、光ディスク装置1には、評価基準用の補正値テーブル29が設定される。この評価基準用の補正値テーブル29は、セレクタ33(図9)において、常に遅延回路31のセンタータップ出力を選択出力するように、補正値データDFが設定されて形成される。これによりこの工程では、100〔%〕のレーザー出力によりEFM変調信号S3で直接光変調器8Bを駆動した場合と同一の条件により、すなわち通常のコンパクトディスク作成工程と同一の条件によりディスク原盤2を露光する。
この工程では、このようにして露光したディスク原盤2を現像した後、電鋳処理してマザーディスクを作成し、このマザーディスクよりスタンパー40を作成する。さらにこのスタンパー40より通常のコンパクトディスク作成工程と同様に、コンパクトディスク41を作成する。
コンパクトディスクプレイヤー(CDプレイヤー)42は、このようにして作成した評価用のコンパクトディスク41を再生する。このときコンパクトディスクプレイヤー42は、コンピュータ44により制御されて動作を切り換え、コンパクトディスク41より得られる戻り光の光量に応じて信号レベルが変化する再生信号RFを内蔵の信号処理回路よりディジタルオシロスコープ45に出力する。かくするにつき、このコンパクトディスク41は、レーザービームLの光量の切り換えに伴ってピット幅が変化していることにより、ディジタルオシロスコープ45で再生信号RFを観察すると、ピットに対応する部分で再生信号の振幅が変化して観察される。
またこのピット幅の変化に伴ってピットの前エッジ、後エッジが変化していることにより、振幅の変化に伴って大きなジッタが観察され、アシンメトリーも大きく変化することになる。さらにユーザーエリア等の低レベルのレーザービームによりピットを形成した部分においても、前後のピットからの符号間干渉によるジッタが観察されことになる。
ディジタルオシロスコープ45は、コンピュータ44により制御されて動作を切り換え、チャンネルクロックの20倍のサンプリング周波数でこの再生信号RFをアナログディジタル変換処理し、その結果得られるディジタル信号をコンピュータ44に出力する。
コンピュータ44は、ディジタルオシロスコープ45の動作を制御する共に、ディジタルオシロスコープ45より出力されるディジタル信号を信号処理し、これにより補正値データDFを順次計算する。さらにコンピュータ44は、ROMライター46を駆動して、計算した補正値データDFを順次リードオンリメモリに格納し、これにより補正値テーブル29を形成する。この工程では、この補正値テーブル29により最終的に光ディスクを製造する。
図10は、このコンピュータ44における処理手順を示すフローチャートである。この処理手順において、コンピュータ44は、ステップSP1からステップSP2に移り、ジッタ検出結果Δr(p,b)、ジッタ計測回数n(p,b)を値0にセットする。ここでコンピュータ44は、ジッタ検出対象でなるエッジの前後について、ピット長p、ピット間隔bの組合せ毎に、ジッタ検出結果Δr(p,b)を算出し、またジッタ計測回数n(p,b)をカウントする。このためコンピュータ44は、ステップSP2において、これら全てのジッタ検出結果Δr(p,b)、ジッタ計測回数n(p,b)を初期値にセットする。
続いてコンピュータ44は、ステップSP3に移り、ディジタルオシロスコープ45より出力されるディジタル信号を所定のスライスレベルと比較することにより、再生信号RFを2値化してなるディジタル2値化信号を生成する。なおコンピュータ44は、この処理において、スライスレベル以上が値1、スライスレベルに満たない部分では値0となるように、ディジタル信号を2値化する。
続いてコンピュータ44は、ステップSP4に移り、このディジタル信号でなる2値化信号より再生クロックを生成する。ここでコンピュータ44は、2値化信号を基準にして演算処理によりPLL回路の動作をシミュレーションし、これにより再生クロックを生成する。
さらにコンピュータ44は、続くステップSP5において、このようにして生成した再生クロックの各立ち下がりエッジのタイミングで、2値化信号をサンプリングし、これにより変調信号を復号する(以下復号したこの変調信号を復号信号と呼ぶ)。
続いてコンピュータ44は、ステップSP6に移り、2値化信号の立ち上がりエッジの時点から、このエッジに最も近接した再生クロックの立ち下がりの時点までの時間差eを検出し、これによりこのエッジにおけるジッタを時間計測する。続いてコンピュータ44は、ステップSP7において、ステップSP6で時間計測したエッジについて、復号信号より前後のピット長p及びピット間隔bを検出する。
コンピュータ44は、続いてステップSP8において、前後のピット長p及びピット間隔bに対応するジッタ検出結果Δr(p,b)に対して、ステップSP6において検出した時間差eを加算し、また対応するジッタ計測回数n(p,b)を値1だけインクリメントする。続いてコンピュータ44は、ステップSP9に移り、全ての立ち上がりエッジについて、時間計測を完了したか否か判断し、ここで否定結果が得られると、ステップSP5に戻る。
これによりコンピュータ44は、ステップSP5−SP6−SP7−SP8−SP9−SP5の処理手順を繰り返し、再生信号RFに表れる変化パターン毎に、時間計測したジッタ検出結果を累積加算し、また加算数をカウントする。なおこの変化パターンは、立ち上がりエッジ補正回路25Aにおけるラッチ回路28A〜28Mの段数に対応するように、ジッタ検出対象のエッジより基本周期Tを基準にした前後6サンプルの期間(全体で周期12Tの期間)により分類される。
このようにして全てのエッジについて、ジッタの時間計測を完了すると、コンピュータ44は、ステップSP9において肯定結果が得られることにより、ステップSP10に移り、ここで再生信号RFに表れる変化パターン毎に、時間計測したジッタ検出結果を平均値化する。すなわちステップSP6において検出されるジッタにおいては、ノイズの影響を受けていることにより、コンピュータ44は、このようにしてジッタ検出結果を平均値化し、ジッタの測定精度を向上する。
コンピュータ44は、このようにしてジッタ検出結果を平均値化すると、続いてステップSP11に移り、この検出結果より、各変化パターン毎にそれぞれ補正値データDFを生成し、各補正値データDFをROMライター46に出力する。ここでこの補正値データDFは、遅延回路31におけるタップ間の遅延時間差をτとおいて、次式の演算処理を実行して算出される。
なおここでHr1(p,b)は、補正値データDFにより選択される遅延回路31のタップであり、値0の場合がセンタータップである。またHr0(p,b)は、初期値でなる補正値データDFにより選択される遅延回路31のタップであり、この実施例において、Hr0(p,b)は、値0に設定されていることになる。またaは定数である。ここでこの実施例において、aは1以下の値(例えば0.7など)に設定され、これによりノイズなどの影響があっても、確実に補正値データを収束させるようになされている。
コンピュータ44は、ディジタルオシロスコープ45を介して検出される再生信号RFの信号レベルを基準にして、レーザービームLの光量を立ち上げた場合と、通常の光量の場合とでそれぞれ上述した補正値データの生成処理を実行し、これによりレーザービームLの光量を立ち上げた場合でも、通常のスライスレベルにより再生信号RFを2値化して、正しいタイミングにより2値化信号を生成できるように補正値データDFを生成する。
コンピュータ44は、このようにして生成した補正値データDFをROMライター46に格納すると、ステップSP12に移ってこの処理手順を終了する。続いてコンピュータ44は、同様の処理手順をディジタル2値化信号の立ち下がりエッジについて実行し、これにより補正値テーブル29を完成する。
図12は、このようにして製造されたコンパクトディスクの再生装置を示すブロック図である。このコンパクトディスクプレイヤー50は、サーボ回路51によりスピンドルモータMをスピンドル制御すると共に、光ピックアップ9をトラッキング制御、フォーカス制御した状態で、コンパクトディスクHに光ピックアップPよりレーザービームを照射する。さらにコンパクトディスクプレイヤー50は、このレーザービームの戻り光を光ピックアップPで受光し、この戻り光の光量に応じて信号レベルが変化する再生信号RFを生成する。
2値化回路52は、この再生信号RFを波形等化した後、所定のしきい値により信号レベルを識別して2値化信号S7を出力する。PLL回路53は、この2値化信号S7を基準にして再生クロック(チャンネルクロック)CKを生成して出力する。
ここで再生信号RFは、光ディスク装置1において、各種ピット形成のパターンに応じてレーザービーム照射のタイミングが補正されて、各ピットの前エッジ及び後エッジのタイミングが補正されてなることにより、極めて小さなジッタにより再生される。さらに間欠的にレーザービームの光量を立ち上げてピット幅を変調したことにより、間欠的に振幅が増大することになる。さらにピット幅の変化に対応してレーザービーム照射のタイミングが補正されて、このようにレーザービームの光量を立ち下げた部分においても、各ピットの前エッジ及び後エッジのタイミングが補正されてなることにより、他の部分と等しいアシンメトリーにより再生される。
これにより2値化回路52においては、記録時における基本周期Tに対応した正しいタイミングにより2値化信号S7を生成することになり、またPLL回路53においては、ジッタの極めて少ない再生クロックCKを生成して出力することになる。
EFM復調回路54は、再生クロックCKを基準にして2値化信号を順次ラッチすることにより再生データを生成する。さらにEFM復調回路54は、この再生データを復調して出力する。ECC回路55は、EFM復調回路54より出力される再生データをデインターリーブ処理した後、誤り訂正処理して出力する。
識別符号検出回路56は、再生信号RFの振幅より識別データを検出してシステム制御回路77に出力する。すなわち図13に示すように、識別符号検出回路56は、ピット検出回路57において、周期6T〜周期11Tのピットを検出する。ここでピット検出回路57は、図14に示すように、直列接続した10段のラッチ回路57A〜57Jに2値化信号S7を入力し、この2値化信号S7を再生クロックCKにより順次転送する。アンド回路58A〜58Fは、所定の入力端が反転入力端に設定され、ラッチ回路57A〜57Jのラッチ出力を入力し、それぞれ周期6T、7T、8T、……のピットに対応してラッチ回路57A〜57Jのラッチ出力が値1又は値0にセットされると、出力信号の論理レベルを立ち上げる。オア回路59は、アンド回路58A〜58Fの出力信号を受け、その論理和信号を出力する。これによりピット検出回路57は、ピット形成時におけるレーザービームの光量が正確に振幅に反映されてなるピット長の長いピットを検出する。
識別符号検出回路56(図13)において、アナログディジタル変換回路(A/D)ADは、再生信号RFをアナログディジタル変換処理し、ディジタル再生信号DRFを出力する。遅延回路61は、このディジタル再生信号DRFを遅延し、ピット検出回路57におけるピット検出のタイミングに対応するタイミングにより出力する。
ラッチ回路Rは、ピット検出回路57の検出結果に基づいてディジタル再生信号DRFをラッチし、これにより周期6T以上ピットについて、各ピットのほぼ中央より戻り光が得られるタイミングで、再生信号RFの振幅を検出する。ディジタルアナログ変換回路DAは、このラッチ回路Rのラッチ結果をディジタルアナログ変換処理して出力する。2値化回路60は、ディジタルアナログ変換回路DAの出力信号を2値化して2値化信号を生成する。
PLL回路61は、この2値化信号より再生クロックを検出する。同期検出回路62は、この2値化信号の信号レベルを監視することにより、光ディスク装置1の識別符号発生回路12において付加した同期信号のタイミングを検出して出力する。M系列発生回路63は、この同期検出回路62により検出されたタイミングによりリセットされた後、M系列符号を順次出力する。逆スクランブル回路64は、イクスクルーシブオア回路構成の加算回路65により、このM系列符号と2値化信号とを論理演算処理し、これにより識別データDC1を復調する。
システム制御回路77(図12)は、このコンパクトディスクプレイヤー50全体の動作を制御するコンピュータにより構成され、識別符号検出回路56において正しく識別データが検出されたか否か判断し、ここで否定結果が得られるとディジタルアナログ変換回路79の動作を停止制御する。ここでディジタルアナログ変換回路79は、システム制御回路77の制御によりECC回路55より出力されるオーディオデータをディジタルアナログ変換処理し、アナログ信号でなるオーディオ信号SAを出力する。
以上の構成において、光ディスク装置1においては(図1、図9)、エッジ位置補正回路15A及び15Bにおける補正値テーブル29を初期値に設定して、従来のコンパクトディスクの作成条件と同一の条件により評価用のディスク原盤2が作成され、このディスク原盤2より評価用のコンパクトディスク41が作成される(図10)。
この評価用のコンパクトディスク41は、基本周期Tの整数倍の周期で信号レベルが変化する変調信号によりレーザービームLがオンオフ制御されてディスク原盤2が順次露光され、これによりピット長及びピット間隔によりオーディオデータD1等が記録される。また識別データに基づいてレーザービームLの光量が立ち下げられ、これによりピット幅の変化により識別データが記録される。さらにこのピット幅の変化に伴い、ピット長が変化して形成される。
これによりこの評価用のコンパクトディスク41より得られる再生信号は、一定の光量によりピットが形成されている部分では、隣接ピットの符号間干渉によりジッタが観察されることになる。またピット幅が変化する部分については、隣接ピットの符号間干渉に加えてピット長の変化により、大きなジッタが発生することになる。またこのピット幅が変化する部分については、再生信号の振幅が大きく変化し、アシンメトリーも激しく変化することになる。
従ってこのコンパクトディスク41より得られる再生信号は、前後のピット及びランドの形状に対応する変調信号の変化パターン、露光時のレーザービーム光量に応じて、スライスレベルを横切るタイミングが変化し、この再生信号より生成される再生クロックにおいては大きなジッタが発生することになる。
このコンパクトディスク41は、コンパクトディスクプレイヤー42により再生され、再生信号RFがディジタルオシロスコープ45によりディジタル信号に変換された後、コンピュータ44により2値化信号、EFM復号信号、再生クロックが生成される。さらにコンパクトディスク41は、2値化信号の各エッジ毎に、復号信号より前後のピット及びランドが検出されて変調信号の変化パターンが検出され、各変化パターン毎に、再生クロックに対する各エッジのジッタ量が時間計測される。
さらにレーザービームの光量を立ち上げた場合と、一定値に保持した場合とで、これら時間計測結果が各変化パターン毎に平均値化され、レーザービームの各光量によるジッタ量が符号間干渉によるジッタ量と共に各変化パターン毎に検出される。コンパクトディスク41は、このようにして検出したジッタ量により、遅延回路31(図9)のタップ間遅延時間差τを基準にした(1)式の演算処理が実行され、遅延回路31のセンタータップを基準にして、この検出したジッタ量を打ち消すことができる遅延回路31のタップ位置が検出される。さらにコンパクトディスク41は、この検出したタップ位置を特定するデータが補正値データDFとしてリードオンリメモリに格納され、これにより遅延回路31のタップ間遅延時間差τをジッタ補正単位に設定して、補正値テーブル29が形成される。
このとき100〔%〕のレーザービーム光量に対応する補正値データDFが、エッジ位置補正回路15Aの補正値テーブル29に記録され、また85〔%〕のレーザービーム光量に対応する補正値データDFが、エッジ位置補正回路15Bの補正値テーブル29に記録される。
このようにして補正値テーブル29が形成されると、光ディスク装置1では、オーディオデータD1が所定のデータ処理を受け、基本周期Tを単位にして信号レベルの変化する変調信号S2に変換される。この変調信号S2は、エッジ位置補正回路15Aにおいて(図7)、信号レベルがTTLレベルに変換された後、PLL回路27によりクロックCKが再生される。またそれぞれ立ち上がりエッジ補正回路25A及び立ち下がりエッジ補正回路25Bにおいて(図9)、13段のラッチ回路28A〜28Mで順次ラッチされて、変化パターンが検出される。
さらに変調信号S2は、このラッチ回路28A〜28Mの中間のラッチ回路28Gよりモノステーブルマルチバイブレータ30に入力され、立ち上がりエッジ補正回路25Aにおいては、立ち上がりエッジのタイミングで、立ち下がりエッジ補正回路25Bにおいては、立ち下がりエッジのタイミングで、モノステーブルマルチバイブレータ30の出力をトリガし、それぞれ立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジのタイミングで信号レベルが立ち上がる立ち上がりパルス信号及び立ち下がりパルス信号を生成する。
これら立ち上がりパルス信号及び立ち下がりパルス信号は、それぞれ立ち上がりエッジ補正回路25A及び立ち下がりエッジ補正回路25Bの遅延回路31において、補正値データDFの算出に利用された遅延時間τを単位にして順次遅延され、この遅延回路31のタップ出力がセレクタ33に出力される。これに対してラッチ回路28A〜28Mで検出された変調信号S2の変化パターンは、ラッチ回路28A〜28Mのラッチ出力をアドレスにした補正値テーブル29のアクセスにより、対応する補正値データDFが検出され、この補正値データDFによりセレクタ33の接点が切り換えられる。
これによりそれぞれ立ち上がりエッジ補正回路25A及び立ち下がりエッジ補正回路25Bのセレクタ33より、評価用のコンパクトディスク41で検出されたレーザービームLを100〔%〕の光量により照射した場合のジッタを補正するように、変調信号S2の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジのタイミングをそれぞれ補正してなる立ち上がりエッジ信号SS及び立ち下がりエッジ信号SRが出力され、これら立ち上がりエッジ信号SS及び立ち下がりエッジ信号SR(図7)が、フリップフロップ35により合成される。
さらにこのフリップフロップ35の出力信号S5がレベル逆変換回路36により信号レベルの補正を受け、これにより評価用のコンパクトディスク41で検出した、レーザービームLを100〔%〕の光量により照射した場合のジッタを補正するように、すなわち符号間干渉を低減するように、変調信号S2のエッジのタイミングを補正してなる変調信号S1Aが生成される。
同様にして、変調信号S2は、エッジ位置補正回路15Bにおいて、変化パターンが検出され、この変化パターンに対応する補正値データDFにより立ち上がりエッジ信号SS及び立ち下がりエッジ信号SRが生成され、これら立ち上がりエッジ信号SS及び立ち下がりエッジ信号SRがフリップフロップ35により合成される。これにより変調信号S2は、エッジ位置補正回路15Bにおいて、評価用のコンパクトディスク41で検出したレーザービームLを85〔%〕の光量により照射した場合のジッタを補正するように、すなわちレーザービーム光量の立ち下げに伴うピット長の変化を打ち消すように、また符号間干渉を低減するように、変調信号S2のエッジのタイミングを補正してなる変調信号S1Bが生成される。
これに対して光ディスク装置1では、識別データテーブル20(図6)より、同期信号、識別データ等が順次循環的に出力され、これらのデータがスクランブル回路21において、M系列符号により暗号化される。さらにこの暗号化された識別データ等による制御信号SC1が光変調器8A(図1)に入力される。これにより光ディスク装置1では、識別データ等に応じてレーザービームLの光量が100〔%〕の光量より85〔%〕の光量に切り換えられ、この光量の切り換えにより識別データ等がピット幅の変化によりディスク原盤2に記録される。
このときデータセレクタ13において、この光量の切り換えに連動して、エッジ位置補正回路15A及び15Bより出力される変調信号S1A及びS1Bが選択的に光変調器8Bに入力され、これによりディスク原盤2においては、ピット長及びピット間隔によりオーディオデータD1が記録され、このとき識別データ等に応じたピット幅の変化に伴うピット長の変化を防止するように露光のタイミングが補正される。また各ピットについて、隣接ピットによる符号間干渉を低減するように露光のタイミングが補正される。
このようにしてディスク原盤2が露光されると、このディスク原盤2よりコンパクトディスクHが生産され、このコンパクトディスクHがコンパクトディスクプレイヤー50(図12)により再生される。このコンパクトディスクHは、オーディオデータD1が隣接ピットからの符号間干渉を低減するように、隣接ピットとの組み合わせによるパターに応じて前エッジ及び後エッジの位置が補正されて、ピット長及びピット間隔により記録されることになる。さらに暗号化された識別データがピット幅の変化により記録され、オーディオデータD1においては、さらにこのピット幅の変化によるピット長の変化を打ち消すように、前エッジ及び後エッジの位置が補正されていることになる。
コンパクトディスクプレイヤー50においては、このようにして生産されたコンパクトディスクHより戻り光の光量に応じて信号レベルが変化する再生信号RFを検出し、再生信号RFが、2値化回路52において、所定のスライスレベルによりスライスされ、2値化信号S7に変換される。さらにこの2値化信号S7よりPLL回路53において再生クロックCKが生成され、EFM復調回路54において、この再生クロックCKにより2値化信号S7が順次ラッチされて再生データが生成された後、復調される。さらにこの再生データが続くECC回路55においてデインターリーブ処理、誤り訂正処理され、アナログ信号に変換されて出力される。
この一連の処理において、この実施例に係るコンパクトディスクHでは、ピット幅の変化によるピット長の変化を打ち消すように、前エッジ及び後エッジの位置が補正されていることにより、一定のスライスレベルSLにより再生信号RFを2値化して、正しいタイミングにより2値化信号を生成することができる。すなわち光量の切り換えに伴う再生クロックCKのジッタを有効に回避することができるように、2値化信号を生成することができる。さらに符号間干渉についても、これを低減するようにエッジの位置が補正されていることにより、符号間干渉によるジッタも低減することができる。これによりピット幅を変化させたにも係わらず、オーディオデータを正しく再生することができる。
また2値化信号S7は、再生信号RF、再生クロックCKと共に識別符号検出回路56に入力され、ここでピット幅の変化により記録された識別データが再生される。すなわち識別符号検出回路56において(図13)、2値化信号S7は、ピット検出回路57において周期6T以上のピットのタイミングが検出され、このタイミングによりラッチ回路Rで信号レベルが検出される。さらにこの信号レベルが2値化回路60により判定され、暗号化されてなる識別データが再生される。この識別データは、PLL回路61によりクロックが再生され、このクロックを基準にしてM系列データにより暗号化が解除される。
コンパクトディスクプレイヤー50においては、システム制御回路77において、この識別データが正しく再生されたか否か判断されることにより、コンパクトディスクHが正規の品物か否か判断され、正規のコンパクトディスクにおいては、ディジタルアナログ変換回路79よりオーディオ信号SAが出力されるのに対し、コピー品の場合、オーディオ信号SAの出力が停止される。
すなわちこの種のコンパクトディスクプレイヤー50で再生したオーディオデータD1を記録して生成されるコピーのコンパクトディスクについては、ピット幅を制御して識別データを記録することが困難で、結局コンパクトディスクプレイヤー側で識別データを再生することが困難になる。またこの識別データ自体暗号化されていることにより、容易に解読することが困難になる。これによりこのようなコピーについては、コンパクトディスクプレイヤー50側で再生困難にすることができ、市場より駆逐することができる。
また正規品でなるコンパクトディスクHより物理的にピット形状を転写してコンパクトディスクをコピーする場合、ピット形状の物理的な変化を避け得ず、これにより補正したエッジ位置、さらにはピット幅の変化を正確に再現することが困難になる。これによりこの種のコピーによるコンパクトディスクは、再生信号RFを2値化して正しいタイミングにより2値化信号S7の信号レベルが変化しなくなり、その分再生クロックCKにジッタが発生し、さらには再生データに誤り訂正困難なビット誤りが発生する。これによりコンパクトディスクプレイヤー50では、この種のコピーによるコンパクトディスクを再生することが困難になる。
また正しくピット幅をコピーすることが困難なことにより、コンパクトディスクプレイヤー側で、正しい識別データを検出することも困難になり、これによっても再生困難にすることができる。
以上の構成によれば、主のデータでなるオーディオデータD1をピット長及びピット間隔により記録すると共に、コンパクトディスクの識別データを暗号化してピット幅により記録することにより、違法なコピーについては、再生装置側で容易に識別して再生困難に設定することができ、この種の違法なコピーを排除することができる。
またこのときピット幅に伴うピット長の変化を補正するように、さらには隣接ピットによる符号化干渉を低減するように、各ピットのエッジを補正することにより、所望のデータを高密度に記録した場合でも、オーディオデータを確実に再生して、違法なコピーについては確実に排除することができ、この種の違法なコピーを排除することができる。
さらに周期6T以上のピットについて、選択的に再生信号の信号レベルを検出してピット幅により記録した識別データを再生することにより、ピット幅の変化に伴う再生信号の信号レベルの変化を確実に検出して、正しく識別データを再生することができる。
1……光ディスク装置、2……ディスク原盤、8A、8B……光変調器、12……識別符号発生回路、13……データセレクタ、15A、15B……エッジ位置補正回路、21……スクランブル回路、29……補正値テーブル、41、H……コンパクトディスク、42、50……コンパクトディスクプレイヤー、44……コンピュータ、56……識別符号検出回路、57……ピット検出回路、77……システム制御回路