JP3997742B2 - 変色を戻す方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、飲料や食料品などの熱水処理による殺菌および調理を必要とする、内容物を収納するトレー型容器又は、衣料用洗剤、柔軟剤、シャンプー、リンスなどのトイレタリー用品や化粧品をはじめとする耐水性を必要とするトレー型容器などの容器と、それに使用される材料について、熱や熱水処理による材料又は容器の変色を、紫外線照射により戻す方法に関する。より詳しくは熱や熱水による変色がおこりにくく、かつ紫外線照射により変色を戻すことのできる耐熱性、耐水性にすぐれ色変化の小さい繊維構造物及びそれを使用した容器について、紫外線照射により変色を戻す方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境問題が重要視され容器類ならびに包装材の易廃棄性が必要とされ、易焼却性、リサイクル性、またはリサイクル材料使用の需要が高まっている。
【0003】
ボトル、トレイ形状の紙容器、および紙容器とプラスチックとの紙製容器や、化粧板や壁紙などの建装材や、ラベルなどの産業資材分野においてもプラスチック使用量を大幅に低減したいわゆる紙製品や、容器分野においては廃棄時に紙とプラスチックの分別が可能な紙製容器等が種々提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
我々は、鋭意検討をすすめた結果、レトルト処理にも耐える紙製容器を開発することに成功し、これに関して特許出願を行なった(特許願2000−011837号、特許願2000−011838号、特許願2000−011839号)。
【0005】
我々の発明によれば、耐水性、耐ボイル、耐レトルト適性のある、セルロース繊維構造物を得ることが出来る。
【0006】
しかしながら、我々が開発した上記性能を有するセルロース繊維構造物は、熱水処理をおこなうことで変色が起きるという問題があった。
【0007】
このため、我々が開発した上記性能を有するセルロース繊維構造物を、仮に容器として使用した場合、印刷上がりの色味と、容器にして熱水処理を行なって後に店頭販売された際の色味が異なってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は係る問題点に鑑みなされたものであり、以下のことを達成することを課題とする。
【0011】
熱水処理により変化した色合いを戻せるような樹脂を使用し、耐熱水性を付与したセルロース繊維構造物、又は、このセルロース繊維構造物を使用した容器の変色を戻す方法を提供すること。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を達成する請求項1の発明は、以下のようなものである。
【0022】
すなわち請求項1の発明は、繊維層の全層にイソシアネート系樹脂が含浸されているセルロース繊維構造物、又は前記セルロース繊維構造物を用いてなる容器に、温度40℃〜135℃の熱水での熱水処理で生じた初期の色からの色変化を、初期の色に戻す方法であって、
前記セルロース繊維構造物又は前記容器に紫外線を照射することにより前記色変化を、L*a*b*表色系での色差で評価して、3以下に戻すことを特徴とする変色を戻す方法である。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態について説明する。本発明は、耐水性、耐熱性、耐熱水性を有し、変色し難いセルロース繊維構造物、またそれを使用した容器の変色を戻す方法である。
【0024】
<セルロース繊維構造物>
イソシアネート系樹脂を含浸する基材としてのセルロース繊維構造物の種類には、100%バ−ジンパルプからなるもの、100%再生故紙からなるもの、それらを任意の割合で混合したもの、NBKP材、LBKP材の使用、木材パルプ以外のケナフ、バカラ、バンブー等の植物繊維材料、合成樹脂パルプ、など、様々な種類の紙を所望する耐水レベルに応じて用いることが可能である。ここでの紙は不織布、布等を包含するものであり抄紙による、いわゆる紙の種類に限定されるものではない。
【0025】
本発明は、これらの紙基材に抄紙後の二次加工として耐水性、耐熱水性を付与できるイソシアネート系樹脂を含浸するものである。
【0026】
この外添による含浸、塗工方法としては、セルロース繊維構造物を含浸剤中に浸し過剰量の含浸剤を一時的に付与できるディッピング法や、好ましくは、含浸剤を一定量だけ塗工または含浸させるグラビアコーティング法やロールコーティング法などがある。
【0027】
紙基材に含浸材を供給できる方法であれば、使用される紙基材や含浸材の種類にもよるが、それらに応じて、いずれの方法を任意に選択することができる。さらにはこれらの加工は二次加工的に行われるため、抄紙工程に比較すると少量の加工を安価に行うことができる。
【0028】
また、含浸に使用される樹脂及び、表層の樹脂は、水性の物であっても良いし、溶剤系のものであってもよい。
【0029】
また印刷に使用されるインキは水性、溶剤系のものであってもよい。また樹脂とインキの溶媒タイプの組み合わせも自由に組み合わせることができる。
【0030】
耐水処理されるセルロース繊維構造物の処理については、未処理部が存在すると破壊等が起こるため、厚み方向へ全て処理(全層処理)されることが必要である。但し処理部において樹脂濃度勾配や、層によって樹脂を選択するなどの求められる耐水レベル、機能に応じて適宜調整できる。
【0031】
紫外線照射はカーボンアークによるものであればよく、JISB7751に準拠する耐光試験機FV型を使用した。(FEEDメーター(スガ試験機))。
紫外線の波長は特に指定される範囲はなく、紫外線領域100nm以上400nm以下全てを含む。
【0032】
紫外線の照射時間はエネルギー量との兼ね合いであるも生産を鑑みると48hr以下の照射時間が好ましい。
【0033】
変色の大きさは、印刷仕上りの色合いからの変化の大きさであり、L*a*b*表色系での色差で、評価される。L*a*b*表色系では、Lは明度指数をあらわし、+の値が白、−の値が黒、a,bはそれぞれ彩度を表し、aは+が赤、−が緑、bは+が黄、−が青を表わす(JISZ8729参照)。
2つの色(L,a,b)と(L’,a’,b’)の間の色差△Eは、次の式で求められる。
△E=((L−L’)2+(a−a’)2+(b−b’)2)(1/2)
【0034】
イソシアネート系樹脂を含浸したセルロース繊維構造物の、水や、熱水などにさらされる前の紫外線に対する耐性(耐光性)については、FEEDメーターによるカーボンアークによる照射48hrにおいて生ずる初期の色との色差△Eは2以下であれば、一般的に壁紙や床材等に使用されることが可能である。もちろん、変色が無いことが理想的なので、△Eは0以上である。
【0035】
熱水処理の温度範囲は、上は135℃程度のハイレトルトから、下は風呂まわりなどでの40℃程度まで、水の状態は、液体でも、蒸気であってもよい。
また一般的に100℃以上の熱水処理においては高温高圧釜を使用する。
ここに記載されてある全ての温度は最高温度を示す。時間は任意に数秒から数時間まで設定することが可能である。一般的な殺菌目的では最高温度で数分程度維持すれば良いが、他の目的(分離、精製や、味付け、化学反応等)に数分から数時間まで適宜設定することは可能である。
【0036】
熱水処理による変色の大きさは、求められる美称性等を考慮して決定されればよい。
【0037】
イソシアネート系樹脂を含浸したセルロース繊維構造物は熱水処理前後の、色差△Eは1.5以下であれば熱水処理による変色は小さいといえ好ましいものの、もとめられる物性をだすために樹脂量を増やし、また熱水処理がハイレトルトのような135℃程度の温度と水が介在したばあい、変色の大きさはより大きくなる方向になる。そのため紫外線照射による変色の戻りを鑑みて色差△Eは5以下であればこのましく使用できる。もちろん、変色が生じ無いことが理想的なので、△Eは0以上である。
【0038】
イソシアネート系樹脂を含浸したセルロース繊維構造物は熱水処理した後に紫外線照射をかけることにより、熱水処理前の色と、熱水処理した後紫外線照射した後の色との色差△Eは3以下に戻ることで、好ましく使用できる。もちろん、変色が無いことが理想的なので、△Eは0以上である。
【0039】
イソシアネート系樹脂を含浸したセルロース繊維構造物は、そのような熱水処理に耐え得るものとして撥水性をもたなければならなく、コッブ吸水度が30g/m2(2分)以下であれば好ましく使用でき、より好ましくは10g/m2(2分)程度の撥水性をもたせてあった方がよい。もちろん、撥水性が高ければ高いほど理想的なので、コッブ吸水度は0g/m2(2分)以上である。
【0040】
このイソシアネート系樹脂を含浸したセルロース繊維構造物を用いて、容器を作る場合に容器の形状が崩れないように湿潤状態での引っ張り強度が39.2N/15mm以上であることが好ましい。もちろん、引っ張り強度は、大きければ大きいほど理想的なので、特に上限を定めない。
この場合の湿潤状態とは室温水に試験片巾(15mm*長さは100mm〜250mm)を1時間浸積させ、測定直前にペーパ−タオルにより、表面に付着した水をかるくとり除いたのちに引っ張り試験機で測定する。測定数nはn=10以上でロードセルの引っ張り速度は20mm/minである。
【0041】
イソシアネート系樹脂を含浸することによっての湿潤状態での引っ張り強度の改質効果をあらわす指標として、樹脂を含浸するまえのセルロース繊維構造物の乾燥状態での引っ張り強度に対する、樹脂を含浸したセルロース繊維構造物の湿潤状態での引っ張り強度の比率であらわし、10%以上であれば好ましく使用できる。初期の10%以上であれば形状は保たれてあり、乾燥し強度を復元されてあればよい。もちろん、引っ張り強度が変わらないことが理想的なので、この比率は100%以下である。
【0042】
紫外線照射により色がかわるということは分子構造の変化を示すものであり、物性等も若干変化する。
例えば、このようなセルロース繊維構造物を使用した容器を熱水処理した後に、色変化を初期の色合いに戻すように紫外線を照射した場合、色は初期の色合いにもどっても、物性が極端におちてしまっては困る。
紫外線を照射する場合は、引っ張り強度を強い状態に復元させながら紫外線照射を行えばよく、具体的には、セルロース繊維構造物を乾燥させて後か、乾燥と同じ工程中において照射すれば良い。その時に必要な引っ張り強度は乾燥状態で98N/15mm以上であればよい。もちろん、引っ張り強度は、大きければ大きいほど理想的なので、特に上限を定めない。
【0043】
<容器等>
イソシアネート系樹脂を含浸したセルロース繊維構造物を用いて作られる容器は、目的に応じて、フィルムなどと組み合わせることも自由であり、一例としては、真空成形でバリアフィルムと組み合わせて食品用トレーなどを作成する事ができる。
【0044】
イソシアネート系樹脂を含浸したセルロース繊維構造物は、蒸気や熱水のかかる場所に使用されるもの(断熱材や壁紙等)であっても良いし、下敷きや床材に使用されるものであっても良いし、これを利用して容器形態に成函して食品や医療用器具など殺菌処理するような容器にして使用されてもよいし、ねじや釘等をいれる容器として、雨や水などで形状が壊れないような性能が求められる容器にして使用されても良い。
【0045】
このように、イソシアネート系樹脂を含浸したセルロース繊維構造物は、既に述べたように床材、壁材、等にも使用できるし、またこれを利用し、箱、トレー容器、カートン容器などの包装体にも使用できる。
【0046】
<変色を戻す方法>
変色を戻す方法としては使われる紫外線照射は、キセノンアークによるもの、ハロゲンランプによるもの、カーボンアークによるもの等、特に限定されない。また紫外線の照射量は、イソシアネート系樹脂を含浸する前のセルロース繊維構造物単体での変色のし易さ、熱水条件、樹脂含浸量等によるため特に限定しない。高分子の光劣化機構は、ひとつは純粋な高分子の化学構造からは、太陽光の吸収は考えられないが、異種構造や不純物が光劣化の開始の拠点となり、ポリオレフィン、ポリビニルハライド、ポリスチレン、ジエン系などの汎用高分子のようなものや、ひとつは高分子の構成する単位や、官能自身が太陽光を吸収するような芳香族系のポリアミド、ポリエステル、ポリスルホンなどがある。イソシアネート系樹脂が水存在下の121℃の高温下でモノマーからポリマーに反応していく際にアミンのような発色団をつくることにより黄変する。紫外線照射によりこの発色団を退光(劣化)させることにより、もとの色合いにもどすことが出来る。
【0047】
以下、本発明の実施の形態を、さらに詳細に説明する。
【0048】
本発明は、「繊維層の全層にイソシアネート系樹脂が含浸されているセルロース繊維構造物、又は前記セルロース繊維構造物を用いてなる容器に、温度40℃〜135℃の熱水での熱水処理で生じた初期の色からの色変化を、初期の色に戻す方法であって、
紫外線を照射することにより初期の色からの色変化を、L*a*b*表色系での色差で評価して、3以下に戻すことを特徴とする変色を戻す方法」である。
【0049】
耐熱性、耐水性、耐熱水性を機能付与したセルロース繊維構造物の開発を鑑みるにあたって、一般的なセルロース繊維構造物単体であると、水が介在したさいにセルロース繊維同士の水素結合がゆるみ、構造物自体の形状を保持するだけの強度をうしなってしまう。
われわれはこれを、撥水性、耐水性、耐熱水性をもった樹脂を、外添によってセルロース繊維構造物に与えることで機能を完成されることを鑑みた。
耐水性には、撥水性等の優れる樹脂、熱に関しては、求められる耐熱温度で使用した際に樹脂の溶融や、分解等がおきない樹脂、耐熱水性に関しては前述した2つの特性(耐水性と耐熱性)を併せ持つ樹脂のなかから選定を行い、イソシアネート系の樹脂が選定された。
【0050】
この樹脂に対するセルロース繊維構造物単体の形状は、一般的なカップ原紙、コートボール原紙等の板紙が好ましく使用できる。また、イソシアネート系樹脂は、和紙、洋紙、厚紙、薄紙、段ボール原紙等使用目的に応じた紙に使用できるし、パルプスラリーからできるパルプモールド体のようなほぼパルプで構成されてあるものにも使用できるし、パルプ繊維を乾燥状態で天然高分子や、合成高分子を混抄してマット上にされたパルプマットのようなものにも使用できる。
【0051】
樹脂をセルロース繊維構造物に内在させる方法としては、どぶづけで含浸させてあっても良いし、一般的な紙であれば印刷機により塗工し含浸される。
塗工量は求められる機能におうじて適宜きめられ、表面撥水のみを求められる場合は、塗工量は少なくでも良いであろうし、蒸気釜のなかで使用されるようなものであっては、塗工量は多くまたセルロース繊維構造物の全層が樹脂で含浸されてなくてはいけない。
【0053】
イソシアネート樹脂を含浸する前のセルロース繊維構造物は、加工性、コスト、剛性性能等を鑑みて、坪量が500g/m2以下のセルロース繊維構造物であれば好ましい。もちろん、イソシアネート樹脂を含浸する前のセルロース繊維構造物の坪量は、0g/m2より大きい。
【0055】
イソシアネート系樹脂が全層含浸されたセルロース繊維構造物は、特殊な用途に使用される以外は、一般的に直接紫外線を浴び続けるような状況は屋外に使用される場合である。その際には紫外線照射によって変色を起こす範囲では、カーボンアークによる照射24hrで△Eが2以下であることが望ましい。もちろん、変色は無いことが理想的なので、△Eは0以上である。
【0057】
イソシアネート系樹脂が全層含浸されたセルロース繊維構造物は、耐水、耐熱性、耐熱水性に優れるものであり、能力的には135℃の熱水にも耐えうる性能をもつが、135℃付近で1時間の熱水殺菌などを行うと、含浸前のセルロース繊維自体の変色がおこることがわかった。われわれは鋭意検討を行い、セルロース繊維の内添剤の処方変更をおこない、135℃の熱水処理を任意に設定した時間で処理をおこなった場合に△Eが5以下のセルロース構造物であれば、各種容器等の基材として使用できるものであることを見いだした。もちろん、変色が無いことが理想的なので、△Eは0以上である。またこの検討途中において、温度が低く、処理時間が短ければ変色は小さいことが見いだされたが、医療用、食品用、他電子部品用のパッケージ容器として使用する場合には、ハイレトルトから低温ボイル、湯せんまで幅広くしようできる繊維構造物を得るため、もっとも条件の厳しい135℃での耐性をもとめた。
【0059】
イソシアネート系樹脂が全層含浸されたセルロース繊維構造物は、紫外線を照射することにより色変化を元に戻す方向で、熱水処理前(初期)からの色変化△Eを3以下まで戻すことが出きる。もちろん、変色が完全に元に戻ることが理想的なので、△Eは0以上である。照射時間及び照射量に関しては熱水処理後の色変化によるものなので特に限定しない。
【0061】
イソシアネート系樹脂を全層含浸して耐熱性、耐水性、耐熱水性を機能付与したセルロース繊維構造物は、湿潤の層間強度が強いことに加えて、表面の撥水性も高いほうがより性能が向上することが研究により判明した。コッブ吸水度が30g/m2(2分間の水の接触での重量増加より算出)以下であればこのましく使用できる。更に好ましくは10g/m2(2分)程度であれば、撥水性は非常に強いといえる。もちろん、撥水性が高ければ高いほど理想的なので、コッブ吸水度は0g/m2(2分)以上である。
【0063】
イソシアネート系樹脂が全層含浸されたセルロース繊維構造物は、その湿潤状態での引っ張り強度が、一番強い部分(一般的な板紙では、ながれ方向(MD方向))で39.2N/15mm以上であれば好ましく使用できる。紙目方向のないパルプモールドなどを基材として耐熱処理(イソシアネート系樹脂による処理)を行ったものも、15mm幅の試験片において湿潤状態で39.2N/15mm以上であれば好ましく使用できる。ここで湿潤状態というのは室温水(25℃)で1時間浸積させた状態をいい、測定は浸積のあと測定直前に、試験片の表面の水をペーパータオルでぬぐった状態で測定を行っている。引っ張り強度は、大きければ大きいほど理想的なので、特に上限を定めない。
【0065】
樹脂を含浸する前後において、セルロース構造物の引っ張り物性が変化する。樹脂を含浸したことによる、物性の変化の大きさを評価するのに、我々は含浸前の基材の乾燥強度を分母とし、含浸後の基材の湿潤強度を分子としパーセンテージで表した数値で評価している。この評価方法によれば、湿潤時での強度アップを目的とした改質効果を最適に評価出きた。この評価方法で、10%以上の値であれば一般的なセルロース構造物は外観の破壊等無く、各種容器等に使用することができる。もちろん、もちろん、引っ張り強度が変わらないことが理想的なので、この比率は100%以下である。
【0067】
イソシアネート系樹脂が全層含浸されたセルロース繊維構造物は、乾燥後に98N/15mm以上の引っ張り強度を維持することができれば各種容器等に好ましく使用できる。もちろん、引っ張り強度は、大きければ大きいほど理想的なので、特に上限を定めない。イソシアネート系樹脂が全層含浸されたセルロース繊維構造物は、紫外線を照射することでの物性変化はそれほど大きいものではない。しかしながら部分的に過剰な照射量になることで部分的に強度低下が起こる事も考えられる。
【0069】
イソシアネート系樹脂が全層含浸されたセルロース繊維構造物を用いて、トレー容器や、皿、パウチ、缶形状、直方体、立方体の容器など様々な形状の容器を作成することが出きる。この際、容器に、形状、容量の制限を設けることはしない。
【0071】
高温になるような状況にセルロース構造物がおかれた場合、一般的に色変化が、大なり、小なり起こる。我々は抄紙に使用する内添材料、パルプ等を量、種類様々に変更することで、色変化を抑える処方も見いだしたが、紫外線照射により、色が変わっても、変色の大きさを小さくする方法を見いだした。高分子の光劣化機構は、ひとつは純粋な高分子の化学構造からは、太陽光の吸収は考えられないが、異種構造や不純物が光劣化の開始の拠点となり、ポリオレフィン、ポリビニルハライド、ポリスチレン、ジエン系などの汎用高分子のようなものや、ひとつは高分子の構成する単位や、官能自身が太陽光を吸収するような芳香族系のポリアミド、ポリエステル、ポリスルホンなどがある。イソシアネート系樹脂が水存在下の121℃の高温下でモノマーからポリマーに反応していく際にアミンのような発色団をつくることにより黄変する。紫外線照射によりこの発色団を退光(劣化)させることにより、もとの色合いにもどすことが出来る。
【0072】
【実施例】
以下、各実施例及び各比較例を説明する。また、各実施例及び各比較例の変色測定結果の一覧を図1に示す。また、各実施例及び各比較例の物性測定結果の一覧を図2に示す。また、各実施例及び各比較例の総合評価結果の一覧を図3に示す。
【0073】
<実施例1>
(サンプル)
400g/m2のカップ原紙にイソシアネート系樹脂を塗工した基材。
印刷は無し。
このサンプルの初期の色をAとする。
【0074】
(紙片形状での耐熱水性)
上記サンプルを95℃60分のボイル処理をおこなった。サンプルは層間破壊等をおこさず、紙容器の骨格等に使用できる良好なものであった。
【0075】
(色変化)
熱水処理をおこなう前後の色差を色差測定器で評価した。
△Eは1.8であった。
色差は1.5以上であると目視でも変色を認識できる。
われわれはこれを1.5以下になるように鋭意検討した結果、紫外線を照射することにより、変色をしめす分子結合を破壊することができることを見いだすことが出来た。
【0076】
紫外線を6時間照射した。Aを基準とした色差は1.6まで低下した。
12時間照射したサンプルは、Aを基準として色差は1.3まで低下した。
24時間照射したサンプルは、Aを基準として色差は1.7となった。
【0077】
紫外線を照射することにより、初期からの色変化を小さくすることができ、これは初期の色合いに戻すことができることを示した。
【0078】
変色を小さくするための最適条件は、カップ紙の種類、樹脂系のグレード、塗工量および、熱水処理条件によるため、本出願では特に限定しない。
この場合、最適な照射時間は12hrであった。
【0079】
(トレー容器の耐熱水性)
次にこの基材を使用して内袋にフィルムを真空成型したトレーを作成した。上記熱水処理条件にもつことができた。
【0080】
(試験片での強度物性評価)
次に巾15mm×長さ20mmの試験片で物性を調査した。
ロードセル速度20mm/minで測定した。
【0081】
初期の、熱水処理前の乾燥状態においては、引っ張り強度は、294N/15mmであり、
20℃の水に浸積させた状態では,引っ張り強度は、58.8N/15mmであった。
【0082】
熱水処理後に、紫外線24hr照射したのち室内で1日放置して乾燥させたサンプルについては、254.8N/15mmであり、容器に使用できる十分な強度であった。
【0083】
ここに変色に対応し、熱水処理にも耐え得る紙基材を得ることができた。
【0084】
<実施例2>
(サンプル)
400g/m2のカップ原紙にイソシアネート系樹脂を塗工した基材。
印刷は無し。
このサンプルの初期の色をAとする。
【0085】
(紙片形状での耐熱水性)
上記サンプルを121℃30分のレトルト処理をおこなった。サンプルは層間破壊等をおこさず、紙容器の骨格等に使用できる良好なものであった。
【0086】
(色変化)
熱水処理をおこなう前後の色差を色差測定器で評価した。
△Eは3.6であった。
【0087】
紫外線を6時間照射した。Aを基準とした色差は2.1まで低下した。
12時間照射したサンプルは、Aを基準として色差は1.8まで低下した。
24時間照射したサンプルは、Aを基準として色差は1.4となった。
【0088】
紫外線を照射することにより、初期からの色変化を小さくすることができ、これは初期の色合いに戻すことができることを示した。
熱水処理条件が厳しくなると、変色の大きさも大きくなることが見られるも、紫外線を照射することにより劇的にもとの色合いに戻ることが示された。
【0089】
変色を小さくするための最適条件は、カップ紙の種類、樹脂系のグレード、塗工量および、熱水処理条件によるため、本出願では特に限定しない。
この場合、最適な照射時間は24hrであった。
【0090】
(トレー容器の耐熱水性)
次にこの基材を使用して内袋にフィルムを真空成型したトレーを作成した。上記熱水処理条件にもつことができた。
【0091】
(試験片での強度物性評価)
次に巾15mm×長さ20mmの試験片で物性を調査した。
ロードセル速度20mm/minで測定した。
【0092】
初期の、熱水処理前の乾燥状態においては、引っ張り強度は、294N/15mmであり、
20℃の水に浸積させた状態では、引っ張り強度は、588N/15mmであった。
【0093】
熱水処理後に、紫外線24hr照射したのち室内で1日放置して乾燥させたサンプルについては、引っ張り強度は、245N/15mmであり、容器に使用できる十分な強度であった。
【0094】
ここに変色に対応し、熱水処理にもたえうる紙基材を得ることができた。
【0095】
<実施例3>
(サンプル)
400g/m2のカップ原紙にイソシアネート系樹脂を塗工した基材。
印刷は無し。
このサンプルの色を基準とする。
【0096】
(紙片形状での耐熱水性)
上記サンプルを135℃30分のレトルト処理をおこなった。サンプルは層間破壊等をおこさず、紙容器の骨格等に使用できる良好なものであった。
【0097】
(色変化)
熱水処理をおこなう前後の色差を色差測定器で評価した。
△Eは4.8であった。
【0098】
紫外線を6時間照射した。Aを基準とした色差は2.8まで低下した。
12時間照射したサンプルは、Aを基準として色差は2.2まで低下した。
24時間照射したサンプルは、Aを基準として色差は1.5となった。
【0099】
紫外線を照射することにより、初期からの色変化を小さくすることができ、これは初期の色合いに戻すことができることを示した。
熱水処理条件が厳しくなると、変色の大きさも大きくなることが見られるも、紫外線を照射することにより劇的にもとの色合いに戻ることが示された。
【0100】
変色を小さくするための最適条件は、カップ紙の種類、樹脂系のグレード、塗工量および、熱水処理条件によるため、本出願では特に限定しない。
この場合、最適な照射時間は24hrであった。
【0101】
(トレー容器の耐熱水性)
次にこの基材を使用して内袋にフィルムを真空成型したトレーを作成した。上記熱水処理条件にもつことができた。
【0102】
(試験片での強度物性評価)
次に巾15mm*長さ20mmの試験片で物性を調査した。
ロードセル速度20mm/minで測定した。
【0103】
初期の、熱水処理前の乾燥状態においては、引っ張り強度は、294N/15mmであり、
20℃の水に浸積させた状態では、引っ張り強度は、58.8N/15mmであった。
【0104】
熱水処理後に、紫外線24hr照射したのち室内で1日放置して乾燥させたサンプルについては、引っ張り強度は、235.2N/15mmであり、容器に使用できる十分な強度であった。
【0105】
ここに変色に対応し、熱水処理にも耐え得る紙基材を得ることができた。
【0106】
<実施例4>
(サンプル)
400g/m2のカップ原紙にイソシアネート系樹脂を塗工した基材。
印刷は油性の2液硬化型インキを使用し白を印刷した。グレード名はマルチセットシリーズ(東洋インキ)。
このサンプルの色を基準Aとする。
インキの上から紫外線を照射することでも、基材の変色をさげることが出来るかを検討した。
【0107】
(紙片形状での耐熱水性)
上記サンプルを135℃30分のレトルト処理をおこなった。サンプルは層間破壊等をおこさず、紙容器の骨格等に使用できる良好なものであった。
【0108】
(色変化)
熱水処理をおこなう前後の色差を色差測定器で評価した。
△Eは4.9であった。
インキの色変化に加え、原紙の色変化が加わり△Eが大きくなったものと思われるも、インキの変色より原紙の色変化の影響が大きいものと思われる。
また原紙の変色を印刷で隠すことができないということもわかった。
【0109】
紫外線を6時間照射した。Aを基準とした色差は3.0まで低下した。
12時間照射したサンプルは、Aを基準として色差は2.2まで低下した。
24時間照射したサンプルは、Aを基準として色差は1.5となった。
【0110】
印刷の上からでも紫外線を照射することで変色を元の色合いに戻すことが出来ることが見いだされた。
印刷で原紙の変色を覆い隠すことができなかったのが、紫外線照射で元の色合いに戻すことができるという画期的な方法であることが見いだされた。
【0111】
変色を小さくするための最適条件は、カップ紙の種類、樹脂系のグレード、塗工量および、熱水処理条件によるため、本出願では特に限定しない。
この場合、最適な照射時間は24hrであった。
【0112】
(トレー容器の耐熱水性)
次にこの基材を使用して内袋にフィルムを真空成型したトレーを作成した。 上記熱水処理条件にもつことができた。
【0113】
(試験片での強度物性評価)
次に巾15mm×長さ20mmの試験片で物性を調査した。
ロードセル速度20mm/minで測定した。
【0114】
初期の、熱水処理前の乾燥状態においては294N/15mmであり、20℃の水に浸積させた状態では58.8N/15mmであった。
【0115】
熱水処理後に、紫外線24hr照射したのち室内で1日放置して乾燥させたサンプルについては、235.2N/15mmであり、容器に使用できる十分な強度であった。
【0116】
ここに変色に対応し、熱水処理にもたえうる紙基材を得ることができた。
【0117】
<比較例1>
(サンプル)
400g/m2のカップ原紙に樹脂を塗工しないものを基材とする。
印刷は無し。
このサンプルの初期の色をAとする。
【0118】
(紙片形状での耐熱水性)
樹脂を塗工しない基材に関しては、まず熱水処理にもたない。
【0119】
(色変化)
熱水処理をかけないサンプルで、紫外線照射をおこなった。(※熱水処理にはもたないため。)
紫外線を6時間照射したところ、Aを基準として色差は1.3。
12時間照射したサンプルはAを基準として色差は1.2。
24時間照射したところサンプルはAを基準として色差は1.5となった。
基材は黄変する方向に変色をおこした。
UV照射は、イソシアネート系樹脂を塗工した基材に、熱水処理をおこなったものの変色に有効であることが見受けられた。
【0120】
(トレー容器の耐熱水性)
この基材を使用して内袋にフィルムを真空成型したトレーを作成したところ、上記熱水処理条件には繊維の層間破壊をおこし、もたなかった。
【0121】
(試験片での強度物性評価)
次に物性を調査した。
巾15mm×長さ20mmの試験片の引っ張り強度を測定した。
ロードセル速度は20mm/min。
初期の乾燥条件においては294N/15mmであったが、20℃の水に浸積させた状態でも繊維の層間破壊をおこした。
【0122】
<比較例2>
(サンプル)
400g/m2のカップ原紙にイソシアネート系樹脂を塗工した基材。
印刷は無し。
このサンプルの初期の色をAとする。
【0123】
(試験片での耐熱水性評価)
上記サンプルを135℃30分のレトルト処理をおこなった。
サンプルは層間破壊等をおこさず、紙容器の骨格等に使用できる良好なものであった。
【0124】
(色変化)
熱水処理をおこなう前後の色差を色差測定器で評価したところ△Eは4.8であった。
【0125】
変色は大きいため、紫外線照射により変色を戻さない場合は、基材の変色を濃い色の印刷等で変色が目立たないようにするデザイン上の限定がかかる。但し、このようなものでも使用できる分野も存在する。
【0126】
<比較例3>
(サンプル)
400g/m2のカップ原紙にイソシアネート系樹脂を塗工した基材。
但し、部分的に塗工してあり、厚み方向に塗工されていない箇所がある。
印刷は無し。
このサンプルの初期の色をAとする。
【0127】
(色変化)
熱水処理をおこなう前後の色差を色差測定器で評価したところ△Eは4.6であった。
【0128】
(試験片での耐熱水性評価)
上記サンプルを135℃30分のレトルト処理をおこなった。サンプルは層間破壊をおこし、紙容器の骨格等には使用できなかった。
【0129】
(試験片での強度物性評価)
物性を調査した。
巾15mm×長さ20mmの試験片の引っ張り強度を測定した。
ロードセル速度20mm/min
初期の乾燥条件においては235.2N/15mmであり、20℃の水に浸積させた状態では繊維の層間破壊をおこした。
【0130】
<比較例4>
(サンプル)
50g/m2のカップ原紙にイソシアネート系樹脂を塗工した基材。
但し、部分的に塗工してあり、厚み方向に塗工されていない箇所がある。
印刷は無し。
このサンプルの初期の色をAとする。
【0131】
(試験片での耐熱水性評価)
上記サンプルを135℃30分のレトルト処理をおこなった。サンプルは層間破壊をおこし、紙容器の骨格等には使用できなかった。
【0132】
(色変化)
熱水処理をおこなう前後の色差を色差測定器で評価したところ△Eは4.6であった。
【0133】
(試験片での強度物性評価)
物性を調査した。
巾15mm×長さ20mmの試験片の引っ張り強度を測定した。
ロードセル速度20mm/min
初期の乾燥条件においては78.4N/15mmであり、20℃の水に浸積させた状態では19.6N/15mmであった。
【0134】
【発明の効果】
【0138】
繊維層の全層にイソシアネート系樹脂が含浸されているセルロース繊維構造物は、耐熱性、耐水性、耐熱水性に優れ、しかも、熱水処理による変色を、紫外線照射によって、低下させることができる。
【0148】
本発明は、繊維層の全層にイソシアネート系樹脂が含浸されているセルロース繊維構造物、又は前記セルロース繊維構造物を用いてなる容器について、熱水処理で生じた変色を戻すことができるという効果がある。
【0149】
以上、本発明により、熱水処理により変化した色合いを戻せるような樹脂を使用し、耐熱水性を付与したセルロース繊維構造物、及び、それを使用した容器の変色を戻す方法を提供できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】各実施例及び各比較例の変色測定結果を一覧にした図。
【図2】各実施例及び各比較例の物性測定結果を一覧にした図。
【図3】各実施例及び各比較例の総合評価を一覧にした図。
Claims (1)
- 繊維層の全層にイソシアネート系樹脂が含浸されているセルロース繊維構造物、又は前記セルロース繊維構造物を用いてなる容器に、温度40℃〜135℃の熱水での熱水処理で生じた初期の色からの色変化を、初期の色に戻す方法であって、
前記セルロース繊維構造物又は前記容器に紫外線を照射することにより前記色変化を、L*a*b*表色系での色差で評価して、3以下に戻すことを特徴とする変色を戻す方法。
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