JP3997405B2 - 移動マニピュレータの制御装置および移動マニピュレータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、移動体にマニピュレータを搭載した移動マニピュレータに関し、特に、マニピュレータ先端部が把持した物体を人間と共同で運搬する際の移動マニピュレータの制御方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の移動マニピュレータの制御装置については、例えば、特開平13−113481号公報に開示された「パワーアシスト装置およびその制御方法」が知られている。このパワーアシスト型移動マニピュレータの制御装置は、マニピュレータ先端部が予め設定した領域内部にある場合は移動体を停止し、外部から加わわる力情報を基に生成した軌道をマニピュレータのみに与え、また、マニピュレータ先端部が設定領域周辺部にある時には、移動体を自走させて、マニピュレータ先端部と移動体との距離を減少する方法および装置が記載されている。
図6は従来のパワーアシスト装置のブロック図であり、図中、31はロボットアーム(マニピュレータ)、32は移動ベース(移動体)、33、34はそれぞれロボットアームおよび移動ベースの動作を制御するサーボ機構である。35はインピーダンス制御部であり、操作者による操作力を検出するセンサ情報と、運搬対象物の負荷を検出するセンサ情報と、ロボットアームに内蔵された複数の角度センサ情報を基に、ロボットアーム及び移動ベースのそれぞれのサーボ機構へ目標速度指令を算出する。
このインピーダンス制御部35は、移動ベースを基準としたロボットアーム先端位置の動作領域を、安全領域と、その外周の警告領域に分割し、それぞれの領域内でインピーダンスパラメータ(仮想的な慣性係数、粘性係数、バネ係数)を切り換えられるような構成となっている。
このような構成において、ロボットアームの先端部が安全領域内に存在する場合は、インピーダンスパラメータの少なくとも1つの係数を小さくし、移動ベースには目標速度指令を与えないようにすることで、移動ベースは停止し、ロボットアームのみで運搬物を操作することが可能となる。
【0003】
図7は、図6のロボットアーム先端部が安全領域内に存在する場合は、移動ベースを停止し、ロボットアームのみで外力である操作力に対して動作することを説明した図である。図中の1は安全領域、2は警告領域を示している。これに対して、ロボットアームの先端部が安全領域を脱し警告領域に達した場合、インピーダンスパラメータの少なくとも1つを大きくし、目標速度指令を移動ベースにも与えることで移動ベースとロボットアーム先端部の相対位置を初期状態に復帰することができるようになっている。
図8(A)は、ロボットアーム先端部が安全領域を逸脱して、警告領域に入った場合、外力である操作力に対してロボットアームが、図8(B)の初期状態になるまで移動ベースを移動させることを説明した図である。
このように、移動ベースを極力移動させずにロボットアームの初期状態に近い範囲での動作を行うため、作業中の安全性やロボットアームの応答速度を向上させると共に、限定した範囲であれば重量の大きな移動ベースを動かし続けなくてよいため、エネルギー消費が少ないといった効果が得られる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術においては、物体を人間と共同で長い距離運搬する場合には、「安全領域:移動ベース停止、ロボットアームのみ動作」→「警告領域:ロボットアームが初期状態になるまで移動ベースを移動」→「安全領域:移動ベース停止、ロボットアームのみ動作」→、…、というように、図7、図8を繰り返すような動作となる。このような動作では、移動ベースは加減速を繰り返す必要があるため、物体を長距離運搬する場合にはエネルギー消費を低減できるとは限らないという問題があった。
また、領域を分けて移動ベースの停止と移動およびインピーダンスパラメータを切り換えるため、領域が変わる境界上での作業性が安定し難いという問題があった。
そこで、本発明は、マニピュレータと移動体の動作を領域によって切り換えるのではなく、外力による力情報を解析することによってマニピュレータと移動体の動作を切り換えるようにして、物体を長距離運搬する場合にも移動体の加減速によるエネルギー消費を低減し、作業性を向上させることができる移動マニピュレータの制御方法および制御装置を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の移動マニピュレータの制御装置の発明は、移動体にマニピュレータを搭載した移動マニピュレータの制御装置において、外力を検出して力情報を取得するための力検出部と、前記力情報を基に、前記外力が変動成分であるか定常成分であるかを判定する外力解析部と、前記力情報から前記移動体および前記マニピュレータの操作量をそれぞれ演算により求める操作量演算部と、前記外力解析部が前記外力を変動成分であると判定した場合には、前記マニピュレータの操作量を前記マニピュレータの指令値を生成するマニピュレータモーション部へ出力し、前記外力解析部が前記外力を定常成分であると判定した場合には、前記移動体の操作量を前記移動体の指令を生成する移動体モーション部へ出力する操作量分配部と、を備えたことを特徴としている。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1記載の移動マニピュレータの制御装置において、前記外力の変動成分とは、外力の時間微分の絶対値が設定値以上であることを特徴としている。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1記載の移動マニピュレータの制御装置において、前記外力の定常成分とは、外力の時間積分の絶対値が設定値以上であることを特徴としている。
【0006】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1記載の移動マニピュレータの制御装置において、前記操作量分配部が、前記外力解析部が前記外力が定常成分であると判定して前記移動体の操作量を出力している場合においても、定常成分とは逆方向の外力を検出した場合には、前記移動体を停止させる操作量を出力することを特徴としている。
また、請求項5に記載の移動マニピュレータの発明は、請求項1〜4のいずれか1項記載の移動マニピュレータの制御装置を備えたことを特徴としている。
この移動マニピュレータの制御装置では、マニピュレータと移動体の制御を切替える設定領域を有するのではなく、人間が加える操作力を解析することによってマニピュレータと移動体の制御を切替えるようにしている。
具体的には、図3に示す制御内容を示す概念図のように、人間による操作力が予め設定した時間内で変動する変動成分(交流成分)の場合は、移動体は停止すると共に、外力微分、外力積分を基に生成した軌道をマニピュレータに与えて制御する。
また、図4に示すように、予め、設定した時間以上一定の操作力が加わる定常成分(直流成分)の場合は、マニピュレータを停止して、移動体を制御してマニピュレータと移動体を近付け操作力に追従させる。
また、図5に示すように、図3の交流成分と、図4の直流成分とが重畳しているような場合は、交流成分はマニピュレータの制御で対処し、直流成分は移動体の制御で対処する。
以上のような制御装置によって、力情報や指令情報の特性を基に移動体制御とマニピュレータ制御とを切替えるので、マニピュレータ先端位置がどのような位置にあっても、直ちに指令通りに目的の動作を得ることが可能である。
また、直流成分に対しては移動体制御で追従するため、マニピュレータは絶えず作業性の最も大きい領域で作業することが可能になる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る移動マニピュレータの制御装置のブロック図である。
図2は図1に示す移動マニピュレータの制御装置の処理のフローチャートである。
図1において、11は外力を検出する力検出部であり、例えば、6軸力センサを用いて並進力および回転モーメントを取得する。
12は力検出部11で取得した力情報が頻繁に変化する変動成分であるか、ほぼ決まった方向へ連続する定常成分であるかを解析する外力解析部、13は外力が小さくなるように移動マニピュレータの操作量を演算する操作量演算部、14は操作量演算部13で演算した操作量を移動体とマニピュレータの少なくとも一方に分配する操作量分配部である。
移動体およびマニピュレータへの操作量は、移動体およびマニピュレータのモーション部151、152へ分配された後、運動学計算を行いマニピュレータの位置指令から逆運動学演算によりモータ角度を算出して、各アクチュエータの指令値を生成する。これらの指令値は移動体およびマニピュレータのサーボ部161、162へ渡され、各アクチュエータのフィードバック制御を行う。これらが滞りなく機能することでマニピュレータ機構部171および移動体機構部172の位置姿勢が変化し、所望の動作を実現することができる。
【0008】
つぎに動作について図2を参照して説明する。
力検出部11で外力ベクトルFを取得し(S11a)、次の外力解析部12において、外力を時間tについて微分(S12a)、および積分(S12b)し、微分値dF/dtの絶対値を評価基準として予め設定した値Dよりも、この基準値が大きければ外力は変動成分であると判定する(S12c)。また、積分値・Fdtの絶対値を評価基準として、予め設定した値Iよりも大きければ定常成分であると判定する(S12d)。
それぞれの判定が変動成分、又は定常成分であると判定された場合は、操作量演算部13にて、マニピュレータの操作量Mと移動体の操作量Vを求めるが、判定が変動成分あるいは定常成分ではないと判定された場合は、それぞれの操作量は(S14c)、(S14f)にて0に設定される。
この例では、評価基準の一つを力の一階時間微分としたが、力の2階時間微分や3階時間微分を評価基準の対象としてもよい。
ところで、マニビュレータ(ロボットアーム)には各軸の軸角度が特定の組み合わせになった場合に、例えば、アームが互いに一直線上に伸び切った状態の場合等のように、ある方向にアームを動かそうとしても制御不能になる状態が複数存在し、これを特異状態と呼んでいる。従って、マニピュレータの制御では、予め、こうした特異状態および特異状態近傍での制御を避けるように考慮する必要がある。
このマニピュレータの特異状態を検知するにはヤコビ行列を監視する方法が知られている。通常、マニピュレータが特異状態に近付いて行くと、ヤコビ行列Jmの解ノルム‖Jm‖は連続して減少して行くものなので、予め、しきい値αを設けて、操作量分配部14は、マニピュレータのヤコビ行列Jmのノルム(解)‖Jm‖が、予め、設定された値α以上ならば特異状態ではないと判定して(S14a)、更に、‖Jm‖がαよりも小さい場合でも操作量演算部13で求めた次の動作のための操作量Mを適用した場合のヤコビ行列のノルム‖Jm´‖が、現在の‖Jm‖よりも大きい場合、即ち次の操作量でマニピュレータを動作させた場合に特異状態を脱する方向に作用する場合には(S14b)、マニピュレータの操作量は、通常の操作量演算部13で求めた操作量M=K1*F(但し、K1:定数)、を用いる。
これに対して、S14aの判断でマニピュレータの状態が特異状態に近い(即ち、‖Jm‖がαより小さい)、且つ、S14bの判断で‖Jm´‖が‖Jm‖以下、即ち、マニピュレータの次の動作で特異状態により近付く場合には、マニピュレータの操作量を0と設定する(S14c)。
このように、マニピュレータのヤコビ行列を監視し、ノルム間の差分検知も行って方向性を検知し、特異状態にならないようにするので、マニピュレータを用いた際の作業性が向上する。
また、操作量分配部14では、外力Fと外力の時間積分∫Fdtの正負の符号を比較して(S14e)、同一符号ならば移動体への操作量Vは、
V=K2*∫Fdt(K2:定数)とし、
異符号であれば操作量Vを0とすることで移動体を停止させる(S14f)。
【0009】
以上の分配法を、図3、図4、図5に示す分配制御の概念図で説明すると、図3は人間による操作力が予め設定した時間内で変動する場合(交流成分)には、移動体を停止すると共に、生成した軌道をマニピュレータに与えて、マニピュレータだけを駆動する状態を、図4は、予め、設定した時間以上一定(直流成分)の操作力が加えられた場合は、マニピュレータを停止し移動体を制御して操作力に追従する状態を、図5は、両方が重畳したような場合は、交流成分はマニピュレータ制御で対処し、直流成分は移動体制御で対処する、というそれぞれの制御形態を示している。
このように本実施の形態によれば、従来の領域と領域の境目において、インピーダンスパラメータを切替えるために、領域の境界上では作業が安定しにくいといった不都合が解消され、ヤコビ行列監視による特異状態検知についても、ノルム間の比較による方向性検知まで実施して正確な回避を行ないながら、変動成分と定常成分によるマニピユレータと移動体への分配制御を実施するので、追従性の高い且つ安全な制御が可能になる。
【0010】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、外力の変動成分はマニピュレータで対応し、定常成分は移動体を動作させることで対応することによって、細かな作業を行う場合のように、絶えず力の変動が生じる場合はマニピュレータが動作するため作業時の操作性が向上すると共に、物体を人間と共同で長距離運搬する場合のように一方向の力(定常的な力)が加わる状態が続く場合には移動体を動作させるため、従来のように境界を設定してマニピュレータと移動体の操作量を分配するような加減速の繰り返しが少なくなり、エネルギー消費を低減することができるという効果がある。
また、外力の時間積分値と外力の正負の符号を比較して、異符号の場合に停止するため、例えば、物体を人間と共同で運搬していて、人間が壁と物体との間に挟まれたような場合に、移動体が動作する方向(即ち、外力の積分の符号)とは逆の力(反力)を力検出部11が検出するため、外力の積分値と外力の符号が異符号となり移動体が停止するので安全性が向上するという効果がある。
また、マニピュレータのヤコビ行列を監視して、特異状態にならないように制御するので、マニピュレータによる作業性が向上する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る移動マニピュレータの制御装置のブロック図である。
【図2】図1に示す移動マニピュレータの制御装置の処理のフローチャートである。
【図3】図1に示す移動マニピュレータの制御装置で操作力が変動する時の制御を説明する概念図である。
【図4】図3に示す移動マニピュレータの制御装置で操作力が一定の場合の制御を説明する概念図である。
【図5】図3に示す移動マニピュレータの制御装置で操作力が変動成分と一定の成分と重畳する場合の制御を説明する概念図である。
【図6】従来のパワーアシスト装置のブロック図である。
【図7】図6に示すパワーアシスト装置のロボットアーム先端部が安全領域内にある場合の説明図である。
【図8】図7に示すロボットアーム先端部が警告領域内にある場合の説明図である。
【符号の説明】
11 力検出部
12 外力解析部
13 操作量演算部
14 操作量分配部
151 移動体モーション部
152 マニピュレータモーション部
161 移動体サーボ部
162 マニピュレータサーボ部
171 移動体機構部
172 マニピュレータ機構部
Claims (5)
- 移動体にマニピュレータを搭載した移動マニピュレータの制御装置において、
外力を検出して力情報を取得するための力検出部と、
前記力情報を基に、前記外力が変動成分であるか定常成分であるかを判定する外力解析部と、
前記力情報から前記移動体および前記マニピュレータの操作量をそれぞれ演算により求める操作量演算部と、
前記外力解析部が前記外力を変動成分であると判定した場合には、前記マニピュレータの操作量を前記マニピュレータの指令値を生成するマニピュレータモーション部へ出力し、
前記外力解析部が前記外力を定常成分であると判定した場合には、前記移動体の操作量を前記移動体の指令を生成する移動体モーション部へ出力する操作量分配部と、を備えたことを特徴とする移動マニピュレータの制御装置。 - 前記外力の変動成分とは、外力の時間微分の絶対値が設定値以上であることを特徴とする請求項1記載の移動マニピュレータの制御装置。
- 前記外力の定常成分とは、外力の時間積分の絶対値が設定値以上であることを特徴とする請求項1記載の移動マニピュレータの制御装置。
- 前記操作量分配部は、前記外力解析部が前記外力が定常成分であると判定して前記移動体の操作量を出力している場合においても、定常成分とは逆方向の外力を検出した場合には、前記移動体を停止させる操作量を出力することを特徴とする請求項1記載の移動マニピュレータの制御装置。
- 請求項1〜4のいずれか1項記載の移動マニピュレータの制御装置を備えたことを特徴とする移動マニピュレータ。
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