JP3997099B2 - 信号波生成方法、信号波生成装置及び送信機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、所定の共振周波数での共振により、所定の周波数を有する所定信号から信号レベルの高い所定周波数の信号を生成し、その信号に基づいて所定情報を送信するための信号波を生成する信号波生成方法及び信号波生成装置、並びに、この信号波生成装置を備える送信機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
無線通信に利用する電波は、その送信レベルに応じて電波法によって規制を受け、所定レベルより大きい出力を伴う電波出力を発射するには免許を受ける必要がある。したがって、近距離で簡便な無線通信を行いたい場合には、電波法によって規制を受けない送信レベルを有する微弱電波を用いるのがよい。このように微弱電波を用いた近距離無線通信を利用すれば、電波法によって規制を受けないで無線通信を行うことができるため、市街地等に配置された送信機から送信される電波を視覚障害者が所持する受信機で受信することで所定の情報を案内する視覚障害者用情報案内システムをはじめ、玩具、ホームオートメーション、アラーム機器、医用テレメータリングなど、広範囲な応用分野での利用を期待できる。
【0003】
微弱電波を用いた近距離無線通信の実現のため、特開平5−63616号公報には、互いに近接した複数の周波数の電波が同一情報により変調されてなる複数の微弱電波を同時に送出し、これら電波を受信して合成し上記情報を再生する多波送受信式通信方法が開示されている。この通信方法によれば、受信側で同一情報を有する複数の微弱電波を合成して該情報を再生するので、個々の電波が微弱であっても合成によって大レベルの電波と同等の通信能力をもって無線通信を行うことができるとしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
また、本発明者は、特願2000−352255号において、所定情報により変調して得られた基本周波数を有する被変調波と、その所定情報により変調して得られた該基本周波数を整数倍した高調波周波数を有する被変調波とを、同時に送信する送信機を提案している。上記公報の通信方法は、同時に送出される複数の電波(以下、「多波電波」という。)の周波数が互いに近接しているため、その使用周波数がラジオやテレビ等の強力な電波と重複してしまうと、この強力な電波によって多波電波による無線通信が妨害されるという問題があるが、特願2000−352255号の送信機によれば、この問題を解決することができる。
【0005】
ここで、微弱電波を用いて安定した通信を行うためには、広い周波数帯域で所望の送信レベルを得ることが望ましい。しかし、上記特願2000−352255号の送信機は、例えば9kHzの所定信号である比較的微弱なパルス信号を所定情報により変調したものから、基本周波数(531kHz)を有する被変調波と、その3倍高調波(1593kHz)である被変調波とを、それぞれQが高く設定された同調回路(共振手段)を使って抽出する。そのため、この送信機では、所望の送信レベルを得ることができる周波数帯域が狭いものとなる。以下、具体的に説明する。
【0006】
図8(a)及び(b)は、上記2つの被変調波の送信スペクトラムを示すグラフである。尚、図8(a)のグラフにおける横軸の周波数範囲は、0〜2000kHzであり、図8(b)のグラフにおける横軸の周波数範囲は、500〜1000kHzである。上記送信機では、図8(a)に示すように、所望の送信レベルが得られる周波数は、各同調回路のほぼ共振周波数と同じである。
【0007】
尚、所望の送信レベルが得られる周波数帯域を広げる効果は、上述した微弱電波を用いた近距離無線通信だけでなく、送信レベルの大きな電波を用いた無線通信あるいは有線通信についても同様に有益である。
【0008】
本発明は、上記背景に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、所定情報を送信するための信号波において所望の送信レベルが得られる周波数帯域を広げることができる信号波生成方法、信号波生成装置及び送信機を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、所定の共振周波数での共振により、所定の周波数を有する所定信号から、所望の信号レベルに達する所定周波数の信号を生成し、その信号に基づいて所定情報を送信するための信号波を生成する信号波生成方法において、上記所定信号の半周期中に、該所定信号を共振させる共振周波数を変更することを特徴とするものである。
この信号波生成方法においては、所定の周波数を有する所定信号を所定の共振周波数で共振させて、所定情報を送信するための信号波を生成する。ここでいう信号波とは、所定情報により変調される前の搬送波又は所定情報により変調された後の被変調波をいう。また、上記所定信号としては、互いに異なる周波数をもつ複数の正弦波が合成された信号などが挙げられ、例えば、所定周期で繰り返される繰り返しパルス信号などを用いることができる。この場合、その所定信号は、その所定信号における周波数の高調波周波数をもつ多数の正弦波が合成されたものであるので、その所定信号から生成される信号の周波数はその所定信号に含まれる複数の正弦波がもつ周波数に限られ、共振周波数としてはその所定信号に含まれる複数の正弦波がもつ周波数と共振できる周波数に設定される。ここで、その所定信号から生成される信号の周波数は、その共振周波数及びその共振周波数を整数倍した周波数となる。したがって、その所定信号からは、その共振周波数と同じ周波数部分と、その共振周波数を基本周波数とする高調波周波数と同じ周波数部分にのみ高い信号レベルをもつ信号波が生成されることになる。
そこで、本信号波生成方法では、上記所定信号の半周期中に、その所定信号を共振させる共振周波数を変更する。これにより、その所定信号の半周期中に複数の共振周波数が存在することになる。よって、所定信号の半周期中に共振周波数が1つである場合に比べて所望の信号レベルに達する周波数帯域が広い信号を、その所定信号から抽出することができる。
また、本請求項の信号波生成方法により生成した信号波の共振周波数部分を基本周波数とする高調波周波数部分における変更前後の共振周波数の間隔は、その共振周波数部分(基本周波数部分)における変更前後の共振周波数の間隔よりも広くなる。したがって、高調波周波数部分における変更前後の共振周波数を含む周波数帯域を利用して所定情報を送信すれば、広い周波数帯域で高い信号レベルをもつ信号波による通信を実現できる。これは、例えば、所定情報を特定の周波数帯域内で通信する必要がある場合、一部の周波数が他の電波で使用されていて通信が妨害されたとしても、他の周波数部分により通信を行うことができ、安定した通信を実現できるので非常に有益である。
【0010】
請求項2の発明は、所定の共振周波数での共振により、所定の周波数を有する所定信号から、所望の信号レベルに達する所定周波数の信号を生成するための共振手段を備え、上記共振手段により生成された信号に基づいて、所定情報を送信するための信号波を生成する信号波生成装置において、上記所定信号の半周期中に、上記共振手段の共振周波数を変更する共振周波数変更手段を備えることを特徴とするものである。
この信号波生成装置は、各手段により請求項1の信号波生成方法を実行することができるので、上記所定信号の半周期中に複数の共振周波数を存在させることができる。よって、上記所定信号の半周期中に共振周波数が1つである場合に比べて所望の信号レベルに達する周波数帯域が広い信号を、その所定信号から抽出することができる。
【0011】
また、請求項3の発明は、請求項2の信号波生成装置において、上記所定信号よりも高い周波数を有する信号を分周して、該所定信号を生成する分周手段を備えており、上記共振周波数変更手段は、上記分周手段により分周される前の信号の周期に応じたタイミングで、上記共振手段の共振周波数を変更することを特徴とするものである。
この信号波生成装置においては、上記所定信号よりも高い周波数を有する信号を分周手段で分周することにより上記所定信号を生成する。そして、その所定信号の半周期中に共振周波数変更手段により共振手段の共振周波数を変更して、その所定信号から信号レベルの高い所定周波数の信号を生成する。ここで、上記分周手段により分周される前の信号は、上記共振手段の共振周波数を変更するタイミングを決定するパラメータとして利用する。例えば、9kHzの所定信号を生成する場合、36kHzの信号を18kHzの信号に分周し、更に18kHzの信号を分周する。そして、共振周波数の切換タイミングのパラメータとして、36kHzの信号又は18kHzの信号あるいはその両方を利用する。例えば、18kHzの信号の周期に応じたタイミングで共振周波数を変更する場合、共振周波数が上記所定信号の1/4周期ごとに変更されることになる。このように分周前の信号の周期に応じたタイミングで共振周波数を変更することで、そのタイミングを制御するための新たな発振回路等を設けなくても済む。また、上記所定信号と共振周波数の切換タイミングとの同期を取りやすくなるという利点もある。
【0012】
また、請求項4の発明は、請求項2の信号波生成装置において、所定の共振周波数での共振により、所定の信号から上記所定信号を生成する所定信号生成手段を有し、上記共振周波数変更手段は、上記所定信号生成手段により生成された上記所定信号が有する周波数のうち信号レベルが所望の信号レベルを越える周波数の範囲内で、上記共振手段の共振周波数を変更することを特徴とするものである。
この信号波生成装置においては、所定信号生成手段により共振する前の信号を所定の共振周波数で共振させて得た上記所定信号を、上記共振手段により共振させて信号波を生成する。そして、共振周波数変更手段により共振手段の共振周波数の変更するとき、所定信号生成手段により生成された所定の信号レベルをもつ所定信号の周波数範囲内で、その共振手段の共振周波数を変更する。この場合、上記所定信号の周波数帯域のうち信号レベルが所定値以上である周波数帯域から、共振手段により周波数帯域が広い信号を抽出できるので、高い信号レベルをもつ信号波を安定して生成することができる。
また、請求項5の発明は、請求項4の信号波生成装置において、上記所定信号生成手段により共振する前の信号の半周期中に、該所定信号生成手段の共振周波数を変更する第2の共振周波数変更手段を備えることを特徴とするものである。
この信号波生成装置においては、第2の共振周波数変更手段により、所定信号生成手段により共振する前の信号を共振させる共振周波数を、その共振前の信号の半周期中に変更する。これにより、上述と同様に、共振前の信号の半周期中に共振周波数が1つである場合に比べて所望の信号レベルに達する周波数帯域が広い上記所定信号を抽出することができる。よって、本請求項の信号波生成装置によれば、このような所望の信号レベルに達する周波数帯域が広い所定信号から共振手段により信号を生成できるので、より広い周波数帯域で高い信号レベルをもつ信号波を安定して生成することができる。
また、請求項6の発明は、請求項2、3、4又は5の信号波生成装置において、上記共振手段は、キャパシタンス素子とインダクタンス素子とからなる共振回路を有しており、上記共振周波数変更手段は、キャパシタンス素子及びインダクタンス素子の少なくとも一方の素子と、上記少なくとも一方の素子及び上記共振回路が電気的に接続した状態と電気的に離間した状態とを切り換えるスイッチング手段とを有することを特徴とするものである。
この信号波生成装置においては、上記所定信号を、キャパシタンス素子とインダクタンス素子とからなる共振回路で共振させて信号波を生成する。この共振回路としては、例えば、キャパシタンス素子としてコンデンサを使用し、インダクタンス素子としてコイルを使用したLC共振回路が挙げられる。このLC共振回路は、直列共振回路であっても、並列共振回路であってもよい。ここで、信号波生成装置においては、キャパシタンス素子及びインダクタンス素子の少なくとも一方(以下、適宜「共振周波数変更素子」という。)が、スイッチング手段を介して上記共振回路に接続されている。このスイッチング手段は、その共振周波数変更素子を、上記共振回路に対して電気的に接続した状態又は電気的に離間した状態に切り換えることができる。このとき、スイッチング手段がOFF状態になっているとき、共振周波数変更素子は共振回路と電気的に離間した状態にあるので、その共振回路の共振周波数は、この共振回路を構成するキャパシタンス素子とインダクタンス素子によって決まる共振周波数となる。一方、スイッチング手段がON状態になっているとき、共振周波数変更素子は共振回路と電気的に接続した状態となるので、その共振回路の共振周波数は、この共振回路を構成するキャパシタンス素子及びインダクタンス素子と、その共振周波数変更素子とによって決まる共振周波数となる。
【0015】
請求項7の発明は、所定の共振周波数での共振により、所定の周波数を有する所定信号から、所望の信号レベルに達する所定周波数の信号を生成し、その信号に基づいて所定情報を送信するための信号波を生成する信号波生成手段と、上記信号波生成手段により生成される信号波を、所定情報により変調された状態で送信する送信手段とを備える送信機において、上記信号波生成手段として、請求項2、3、4、5又は6の信号波生成装置を用いたことを特徴とするものである。
この送信機においては、請求項2、3、4、5又は6の信号波生成装置により生成される信号波を、所定情報により変調された状態で送信するので、上記所定信号の半周期中に共振周波数が1つである場合に比べて所望の信号レベルに達する周波数帯域が広い信号波を利用して、所定情報を送信することができる。よって、例えば、一部の周波数による通信が他の電波により妨害されたとしても、他の周波数部分により通信を行うことができる。
【0016】
また、請求項8の発明は、請求項7の送信機において、上記信号波生成手段により生成される信号波の中から、上記所定信号の周波数を整数倍した基本周波数を有する信号波と、該基本周波数を整数倍した高調波周波数を有する信号波とを抽出する抽出手段を備え、上記送信手段は、上記抽出手段により抽出される複数の信号波を、同一情報により変調された状態で送信することを特徴とするものである。
この送信機においては、抽出手段により、信号波生成手段で生成される信号波の中から、上記所定信号の周波数を整数倍した基本周波数を有する信号波とその基本周波数を整数倍した高調波周波数を有する信号波とを抽出する。そして、抽出手段により抽出される複数の信号波は、送信手段により同一情報により変調された状態で送信される。これにより、受信機側では、基本周波数を有する信号波を受信したときでも、その高調波周波数を有する信号波を受信したときでも、同じ情報を得ることができる。よって、受信機周辺において、例えば、その基本周波数帯域が他の電波で使用されていて、その無線通信が妨害されたとしても、受信機の受信周波数を高調波周波数に切り換えれば、上記送信機から送信された情報を入手することが可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、位置情報等の視覚障害者に有用な情報を無線通信により案内する位置情報案内システムに適用した一実施形態について説明する。本実施形態における送信機は、上記位置情報等の音声信号を変調信号とし、基本周波数を有する搬送波を該変調信号によって変調することで生成された被変調波を電波として送信するものである。尚、この電波の送信レベルは、法規制範囲内の微弱なものである。
【0018】
まず、本実施形態における送信機の構成及び動作について説明する。
図1は、本実施形態における送信機の概略構成を示すブロック図である。この送信機は、36kHzの周波数を有する分周前の信号である繰り返しパルス信号(以下、単に「パルス信号」という。)を発生させるパルス信号発生部1と、このパルス信号発生部1から出力されるパルス信号を分周する分周手段としての第1分周部2a及び第2分周部2bと、その第2分周部2bにより分周された後の所定信号となるパルス信号を所定の共振周波数で共振させる共振手段としての共振部3と、位置情報等を案内する音声信号を生成する変調信号発生手段としての音声信号生成部4と、共振部3から出力される搬送波となる信号を音声信号生成部4から出力される音声信号からなる変調信号により変調する変調部5と、変調部5から出力される被変調波の信号レベルを増幅する増幅部6と、増幅された被変調波を送信するためのアンテナ7とから構成されている。
【0019】
上記音声信号生成部4は、位置情報等を音声で入力するためのマイク4aと、マイクから入力された音声信号を増幅するプリアンプ4bと、プリアンプによって増幅された音声信号を録音して再生する音声信号録音再生部4cとを備えている。位置情報等を録音する場合、マイク4aから入力された音声信号は、プリンアンプ4bで増幅された後、音声信号録音再生部4cに設けられた図示しない記憶部に記憶される。この記憶部としては、メモリー、磁気テープ、磁気ディスク、光ディスク等を利用することができる。本実施形態においては、その記憶部に記憶された音声信号が常に再生されている状態となっているが、記憶部に記憶された音声信号を任意のタイミングで再生できるように構成してもよい。また、本実施形態においては、音声信号生成部4にマイク4aを設けて、送信機で音声情報を録音できる構成としているが、例えば、音声信号生成部4にマイク4aを設けず、音声信号を記憶する記憶部と、記憶部に音声信号を入力するための入力インターフェース部とを設けて、別の場所で一旦録音した位置情報等の音声信号をその入力インターフェースを介して記憶部に入力するように構成してしてもよい。
【0020】
図2は、パルス信号発生回路部1を構成するパルス発生回路の回路図である。このパルス発生回路を構成する3つのインバータInv1,Inv2,Inv3は、安価で入手が容易な汎用ディジタルIC(例えば、CMOSタイプの74HC04)を用いることができる。このパルス発生回路からは、36kHzの周波数をもつ分周前の信号であるパルス信号V1が出力される。尚、パルス信号発生部1には、例えば、図3に示すように、インバータInv4と、水晶振動子XTALやコンデンサCからなる帰還回路とを備えた発振回路を用いることもできる。
【0021】
パルス信号発生回路部1から出力されたパルス信号V1は、第1分周部2aに入力される。この第1分周部2aでは、そのパルス信号V1の周波数(36kHz)を1/2に分周して、18kHzの周波数をもつ分周前の信号であるパルス信号V2を出力する。このパルス信号V2は、次に、第2分周部2bに入力され、更に1/2に分周される。これにより、第2分周部2bからは、9kHzの周波数をもつ所定信号としてのパルス信号V2を出力する。これら第1分周部2a及び第2分周部2bは、フリップフロップ回路素子(4013、74HC74など)を用いて構成することができる。このようにして得られた9kHzのパルス信号は、共振部3に送られる。
【0022】
次に、本発明の特徴部分である共振部3の構成及び動作について説明する。
図4は、本実施形態における共振部3の回路構成を示す回路図である。この共振部3は、図示のように、共振手段としての共振回路3aと、共振周波数変更手段としての第1共振周波数変更部3b及び第2共振周波数変更部3cとから構成されている。共振回路3aは、インダクタンス素子としてのコイルLとキャパシタンス素子としてのコンデンサCとからなるLC直列共振回路である。また、第1共振周波数変更部3bは、キャパシタンス素子としてのコンデンサC1と、これに直列に接続されたトランジスタTr1とから構成されている。また、第2共振周波数変更部3cも、キャパシタンス素子としてのコンデンサC2と、これに直列に接続されたトランジスタTr2とから構成されている。これら第1共振周波数変更部3b及び第2共振周波数変更部3cは、共振回路3aの出力端子に並列接続されている。
【0023】
共振回路3aを構成するコイルL及びコンデンサCの値は、その共振周波数が558kHzとなるように設定されている。よって、第2分周部から出力された9kHzのパルス信号V3は、この共振回路3aによって、基本周波数である558kHz付近と、その高調波周波数である1674kHz等の付近に信号レベルのピークをもつ搬送波信号V4に変換されることになる。
【0024】
第1共振周波数変更部3bを構成するトランジスタTr1がOFF状態にあると、コンデンサC1は、共振回路3aのコンデンサCに対して電気的に離間した状態になる。一方、トランジスタTr1がON状態になると、コンデンサC1は、共振回路3aのコンデンサCに対して電気的に並列接続されることになる。よって、トランジスタTr1は、コンデンサC1の共振回路3aに対する電気的な接続状態を切り換えるスイッチング手段として機能している。また、トランジスタTr1のベース端子は、第1分周部2aの出力端子に接続されており、そのベース端子には、第2分周部2bにより分周される前の分周前の信号であるパルス信号V2が入力されることになる。したがって、トランジスタTr1のON/OFF動作のタイミングは、パルス信号V2の信号レベルにより決まる。尚、本実施形態では、パルス信号V2がHレベルのときに、トランジスタTr1がON状態となり、パルス信号V2がLレベルのときに、トランジスタTr1がOFF状態となる。
【0025】
また、第2共振周波数変更部3cを構成するトランジスタTr2も、上記第1共振周波数変更部3bのトランジスタTr1と同様に、コンデンサC2の共振回路3aに対する電気的な接続状態を切り換えるスイッチング手段として機能している。このトランジスタTr2のベース端子は、パルス信号発生部1の出力端子に接続されており、そのベース端子には、第2分周部2aにより分周される前の信号としてのパルス信号V1が入力されることになる。したがって、トランジスタTr2のON/OFF動作のタイミングは、パルス信号V1の信号レベルにより決まる。尚、本実施形態では、パルス信号V1がHレベルのときに、トランジスタTr2がON状態となり、パルス信号V1がLレベルのときに、トランジスタTr2がOFF状態となる。
【0026】
図5は、パルス信号発生部1から出力されるパルス信号V1の波形、第1分周部2aから出力されるパルス信号V2の波形及び第2分周部2bから出力されるパルス信号V3の波形を示す説明図である。各横軸は、時間軸であり互いに一致している。パルス信号V1及びパルス信号V2がLレベルのとき、すなわち、図中符号Aで示す期間においては、第1共振周波数変更部3b及び第2共振周波数変更部3cのトランジスタTr1,Tr2がいずれもOFF状態となるので、それぞれのコンデンサC1,C2は、共振回路3aから電気的に離間した状態にある。よって、このときの共振部3の共振周波数f1は、共振回路3aがもつ共振周波数と同じであり、1/2π(L×C)1/2から求められ、558kHzとなる。
【0027】
そして、その状態から図中符号Bで示す期間に移行すると、パルス信号V1がHレベルとなり、第2共振周波数変更部3cのトランジスタTr2がON状態に切り替わる。これにより、第2共振周波数変更部3cのコンデンサC2は、共振回路3aに電気的に接続された状態となる。このときの共振部3の共振周波数f2は、期間Aの共振周波数とは異なるものとなる。具体的には、共振周波数f2は、1/2π{L×(C+C1)}1/2となり求められ、本実施形態では549kHzとなる。
【0028】
次に、その状態から図中符号Cで示す期間に移行すると、パルス信号V1がLレベルとなるとともにパルス信号V2がHレベルとなる。よって、第1共振周波数変更部3bのトランジスタTr1がON状態に切り替わるとともに、第2共振周波数変更部3cのトランジスタTr2がOFF状態に切り替わる。これにより、第1共振周波数変更部3bのコンデンサC1は、共振回路3aに電気的に接続された状態となり、第2共振周波数変更部3cのコンデンサC2は、共振回路3aから再び電気的に離間した状態となる。このときの共振部3の共振周波数f3は、期間A及び期間Bの共振周波数とは異なるものとなる。具体的には、共振周波数f3は、1/2π{L×(C+C2)}1/2となり求められ、本実施形態では540kHzとなる。
【0029】
更に、その状態から図中符号Dで示す期間に移行すると、パルス信号V1が再びHレベルとなり、第1共振周波数変更部3bのトランジスタTr1及び第2共振周波数変更部3cのトランジスタTr2とも、ON状態になる。これにより、第1共振周波数変更部3bのコンデンサC1及び第2共振周波数変更部3cのコンデンサC2とも、共振回路3aに電気的に接続された状態となる。このときの共振部3の共振周波数f4は、期間A、期間B及び期間Cの共振周波数とは異なるものとなる。具体的には、共振周波数f3は、1/2π{L×(C+C1+C2)}1/2となり求められ、本実施形態では531kHzとなる。
【0030】
このように、本実施形態では、共振部3に入力される所定信号としてのパルス信号V3の半周期中に、共振周波数がf1=558、f2=549、f3=540、f4=531と変化する。よって、パルス信号V3は、各期間A,B,C,Dにおいて、それぞれの共振周波数で共振し、パルス信号V3の半周期中に共振周波数がf1=558のみである場合に比べて、その場合の信号レベルと同程度の信号レベルをもつ周波数帯域が広がることになる。
【0031】
図6(a)及び(b)は、本実施形態における共振部3から出力されるスペクトラムを示すグラフである。一方、図8(a)及び(b)は、パルス信号V3の半周期中に共振周波数がf1=558のみである従来の場合、すなわち、第1共振周波数変更部3b及び第2共振周波数変更部3cのトランジスタTr1,Tr2を、常時OFF状態にしたときの共振部3から出力されるスペクトラムを示すグラフである。尚、図6(a)及び図8(a)のグラフにおける横軸の周波数範囲は、0〜2000kHzであり、図6(b)及び図8(b)のグラフにおける横軸の周波数範囲は、500〜1000kHzである。
【0032】
図6と図8が示すスペクトラムを比較すると、本実施形態における搬送波信号は、図6(b)に示すように、530kHz〜560kHzの周波数帯域にわたって、ある程度均一に信号レベルが高くとなっている。一方、共振周波数を変化させない従来の場合では、図8(b)に示すように、その共振周波数である558kHzで高い信号レベルを示すが、その両側帯域での信号レベルの落ち込みがかなり大きいことがわかる。特に、530kHz〜560kHzの周波数帯域を基本周波数としたときの3倍高調波の周波数帯域である1600kHz付近について観察すると、図8(a)では1つのピークしか存在しないが、図6(a)では複数のピークが存在するという事実から明らかである。
【0033】
この結果、パルス信号V3の半周期中に共振周波数を変化させて4つの共振周波数を存在させたことで、パルス信号V3が共振部3において各共振周波数でそれぞれ共振し、搬送波信号の信号レベルが各共振周波数を含む周波数帯域内で高くなったものと考えられる。また、この結果を確かめるため、第2共振周波数変更部3cのトランジスタTr2を常時OFF状態にし、第1共振周波数変更部3bだけで共振周波数の変更を行ったときのグラフを、図7に示す。この場合、パルス信号V3の半周期中には2つの共振周波数しか存在せず、図7(a)に示すように、3倍高調波の周波数帯域である1600kHz付近において、2つのピークが存在することから明らかである。
【0034】
このようにして共振して共振部3から出力された搬送波信号は、変調部5に入力される。変調部5では、その搬送波信号を、音声信号生成部4から出力される音声信号からなる変調信号によって変調する。このようにして変調された被変調波信号は、増幅部6により増幅され、アンテナ7から電波として空中に放射される。
【0035】
以上、本実施形態によれば、所定信号となる9kHzのパルス信号V3の半周期中に、そのパルス信号V3を共振させる共振部3の共振周波数fを変更するので、パルス信号V3の半周期中に複数の共振周波数が存在し、高い信号レベルの周波数帯域が共振周波数が1つである場合に比べて広い搬送波信号を生成することができる。そして、このような搬送波信号に基づいて生成された信号波である被変調波を視覚障害者が所持する受信機で受信することで、視覚障害者等は、位置情報等の音声信号を音声で聴くことができる。よって、受信時に、ラジオ放送局等からの強力な電波により、例えば531kHz帯域付近の電波が妨害されたとしても、視覚障害者が受信機を540kHz〜558kHz帯域の周波数にチューニングすれば、送信機からの情報を入手することができる。
【0036】
また、本実施形態の送信機から送信される電波を、共振部3の各共振周波数に対応する周波数でそれぞれ同時に受信し、その受信した各受信信号を合成すれば、受信レベルを高めることができる。本実施形態では、互いに近接する周波数の信号レベルが高いので、これらを合成すれば、共振周波数を変更しない場合に比べて高い受信レベルを得ることができる。尚、複数の共振部を用いれば、搬送波信号の信号レベルが高い周波数帯域を広げることは可能であるが、本実施形態では、1つの共振部3でこれを実現できるので、コスト面で優れている。
【0037】
尚、本実施形態では、変調部5により変調される前の搬送波信号を得るときに使用される共振部3の共振周波数を変更する場合について説明したが、共振回路を備えた他の部分の共振周波数を変更するように構成することも可能である。例えば、搬送波信号を得るための共振部3は、固定された共振周波数(例えば540kHz)をもつ共振回路で構成し、上記増幅部6を本実施形態の共振部3と同様に共振回路の共振周波数が変更される構成とする。この場合、増幅部6において上述と同様に共振周波数が変更されるため、高い信号レベルの周波数帯域が共振周波数が1つである場合に比べて広い被変調波を生成することができる。このような構成であっても、本実施形態と同様の効果を得ることができる。尚、増幅部6で変更される共振周波数の範囲は、所定レベルを越える搬送波信号の周波数帯域内とするのが望ましい。このとき、その共振部3の共振回路は所定信号生成手段として機能し、その増幅部6の共振回路は共振手段として機能する。この場合、搬送波信号の周波数帯域のうち信号レベルが所定値以上である周波数帯域から、増幅部6により周波数帯域が広い被変調波を抽出できるので、高い信号レベルをもつ被変調波を安定して生成することができる。
【0038】
また、本実施形態では、共振周波数が変更される共振手段が共振部3の共振回路3aのみの場合について説明したが、このような共振手段を2以上設けてもよい。例えば、共振部3だけでなく、上記増幅部6もその共振部3と同様の構成とする。この場合、共振部3において、共振回路が所定信号生成手段として、第1共振周波数変更部及び第2共振周波数変更部が第2の共振周波数変更手段として機能し、増幅部6において、共振回路が共振手段として、第1共振周波数変更部及び第2共振周波数変更部が共振周波数変更手段として機能する。この場合、共振部3により高い信号レベルをもつ周波数帯域が広い搬送波信号が生成され、その搬送波信号に基づいて得られた被変調波信号における高い信号レベルをもつ周波数帯域を広げることができる。これにより、例えば、共振部3において531kHz〜558kHzの周波数帯域で高い信号レベルの搬送波信号を得た後、増幅部6において513kHz〜576kHzの周波数帯域で高い信号レベルの被変調波を得ることができる。したがって、高い信号レベルをもつ被変調波を、より広い周波数帯域で安定して得ることができる。
【0039】
また、本実施形態では、位置情報案内システムが単方向通信システムであるため、送信機能のみ有する送信機について説明したが、本発明を双方向通信システムに適用する場合には、上記送信機に受信機能を付加した送受信機とした構成にしてもよい。
【0040】
また、本実施形態では、送信する情報として音声情報を送信する場合について説明したが、本発明は、音声情報以外にも、他のアナログ情報又はディジタル情報なども通信することが可能である。また、その通信方式も、無線通信に限らず、有線通信にも適用することが可能である。
【0041】
【発明の効果】
請求項1乃至8の発明によれば、所望の信号レベルに達する周波数帯域がより広い信号を所定信号から生成できるので、所望の送信レベルが得られる信号波の周波数帯域を広げることが可能となるという優れた効果がある。
特に、請求項3の発明によれば、共振周波数の変更タイミングを制御するための新たな発振回路等を設けなくても済み、かつ、所定信号と共振周波数の切換タイミングとの同期を取りやすくなるので、構成を簡略化でき、低コスト化を図ることができるという優れた効果がある。
また、請求項4の発明によれば、高い信号レベルをもつ信号波を安定して生成することができるので、所望の送信レベルが得られる信号波の周波数帯域を安定して広げることが可能となるという優れた効果がある。
また、請求項5の発明によれば、より広い周波数帯域で高い信号レベルをもつ信号波を安定して生成することができるので、所望の送信レベルが得られる信号波の周波数帯域を安定してより広げることが可能となるという優れた効果がある。
また、請求項6の発明によれば、スイッチング手段の切換動作を制御するだけで共振周波数を変更できるので、構成の簡易化及び低コスト化を図ることができるという優れた効果がある。
また、請求項7の発明によれば、一部の周波数による通信が他の電波により妨害されたとしても、他の周波数部分により通信を行うことができるという優れた効果がある。
また、請求項8の発明によれば、他の電波や信号等によって通信が妨害されても所定の情報を確実に通信し、安定した通信が可能となるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態における送信機の概略構成を示すブロック図。
【図2】同送信機におけるパルス信号発生回路部を構成するパルス発生回路の回路図。
【図3】同パルス信号発生部の変形例を示す回路図。
【図4】同送信機における共振部の回路構成を示す回路図。
【図5】同パルス信号発生部から出力されるパルス信号V1の波形、第1分周部から出力されるパルス信号V2の波形及び第2分周部から出力されるパルス信号V3の波形を示す説明図。
【図6】(a)及び(b)は、共振周波数を3回変更されるときに、同共振部から出力されるスペクトラムを示すグラフ。
【図7】(a)及び(b)は、共振周波数を1回変更されるときに、同共振部から出力されるスペクトラムを示すグラフ。
【図8】(a)及び(b)は、同共振部の共振周波数を固定したときの送信スペクトラムを示すグラフ。
【符号の説明】
1 パルス信号発生部
2a 第1分周部
2b 第2分周部
3 共振部
3a 共振回路
3b 第1共振周波数変更部
3c 第2共振周波数変更部
4 音声信号生成部
5 変調部
Claims (8)
- 所定の共振周波数での共振により、所定の周波数を有する所定信号から、所望の信号レベルに達する所定周波数の信号を生成し、その信号に基づいて所定情報を送信するための信号波を生成する信号波生成方法において、
上記所定信号の半周期中に、該所定信号を共振させる共振周波数を変更することを特徴とする信号波生成方法。 - 所定の共振周波数での共振により、所定の周波数を有する所定信号から、所望の信号レベルに達する所定周波数の信号を生成するための共振手段を備え、
上記共振手段により生成された信号に基づいて、所定情報を送信するための信号波を生成する信号波生成装置において、
上記所定信号の半周期中に、上記共振手段の共振周波数を変更する共振周波数変更手段を備えることを特徴とする信号波生成装置。 - 請求項2の信号波生成装置において、
上記所定信号よりも高い周波数を有する信号を分周して、該所定信号を生成する分周手段を備えており、
上記共振周波数変更手段は、上記分周手段により分周される前の信号の周期に応じたタイミングで、上記共振手段の共振周波数を変更することを特徴とする信号波生成装置。 - 請求項2の信号波生成装置において、
所定の共振周波数での共振により、所定の信号から上記所定信号を生成する所定信号生成手段を有し、
上記共振周波数変更手段は、上記所定信号生成手段により生成された上記所定信号が有する周波数のうち信号レベルが所望の信号レベルを越える周波数の範囲内で、上記共振手段の共振周波数を変更することを特徴とする信号波生成装置。 - 請求項4の信号波生成装置において、
上記所定信号生成手段により共振する前の信号の半周期中に、該所定信号生成手段の共振周波数を変更する第2の共振周波数変更手段を備えることを特徴とする信号波生成装置。 - 請求項2、3、4又は5の信号波生成装置において、
上記共振手段は、キャパシタンス素子とインダクタンス素子とからなる共振回路を有しており、
上記共振周波数変更手段は、
キャパシタンス素子及びインダクタンス素子の少なくとも一方の素子と、
上記少なくとも一方の素子及び上記共振回路が電気的に接続した状態と電気的に離間した状態とを切り換えるスイッチング手段とを有することを特徴とする信号波生成装置。 - 所定の共振周波数での共振により、所定の周波数を有する所定信号から、所望の信号レベルに達する所定周波数の信号を生成し、その信号に基づいて所定情報を送信するための信号波を生成する信号波生成手段と、
上記信号波生成手段により生成される信号波を、所定情報により変調された状態で送信する送信手段とを備える送信機において、
上記信号波生成手段として、請求項2、3、4、5又は6の信号波生成装置を用いたことを特徴とする送信機。 - 請求項7の送信機において、
上記信号波生成手段により生成される信号波の中から、上記所定信号の周波数を整数倍した基本周波数を有する信号波と、該基本周波数を整数倍した高調波周波数を有する信号波とを抽出する抽出手段を備え、
上記送信手段は、上記抽出手段により抽出される複数の信号波を、同一情報により変調された状態で送信することを特徴とする送信機。
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