JP3994405B2 - 汚泥中の重金属類の除去方法及び除去装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はヘドロや汚泥中に含まれる重金属類を効率良く除去する方法及びその除去装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、湖沼の底や湾内に堆積したヘドロが社会問題となっている。ヘドロは閉鎖性の湖沼において上流域からの、リン・窒素等の栄養塩の過剰供給により発生したアオコ等の植物プランクトンなどが蓄積したものであり、水質の悪化に深く関わっている。一方、ヘドロは水路を狭めたり、ダム湖の底部に堆積して貯水量能を低下させる原因にもなっており、定期的な浚渫が不可欠になっている。
【0003】
湖沼から浚渫されたヘドロは、乾燥すれば細かい粒子状になって舞い上がり、また水気を得ると元の軟弱な状態に戻ることから、一般に凝集剤を添加して固液分離した後にセメントなどで固化させ、埋め立て処分されるのが現状である。
しかし、埋め立て処分地の不足から、ヘドロの有効利用を望む声が広まっている。現在、様々な有効利用策が検討されているが、そのひとつとして、コンポスト化(堆肥化)がある。これは、土壌のリサイクリングという点において理想的であり、実際に浚渫ヘドロを農地に還元している例もみられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ヘドロをコンポスト化して農地への還元を図る場合に考慮すべき最も重要な問題は、ヘドロ中に含まれる重金属類の存在である。わが国では環境庁、農水省などがコンポストに含まれる重金属濃度について一定の基準値を設定している。しかし、上流に住宅団地や工業地域などといった重金属類の放出源をもつ湖沼のヘドロにおいては、この基準値を上回っているのが現状である。この様な重金属類を多く含むヘドロを用いてコンポストを作成する場合、何らかの手段によって最終的な含有重金属濃度を基準値以下に引き下げる必要がある。
【0005】
汚泥中からの重金属の除去に関する研究は数多く行われており、様々な手法が提案されているが、そのほとんどがコストがかかる割には除去効果が小さいといった状況にある。その中でも最も基本的で除去効果も高い手法として酸性の溶液によって重金属類を抽出する方法がある。しかし、一般にヘドロには強力な緩衝作用があり、pHを下げるために大量の酸を必要とする上、一度酸性になったヘドロを中和するために大量のアルカリを投入する必要があるなどの問題があり、また、酸を投入することにより、例えば堆肥等への有効利用が困難であり、必ずしも望ましい手段とはいえない。このほか、土壌を酸性にする手段として微生物を使ったリーチングを利用する手法も考えられているが、処理に時間がかかるのが現状である。
近年、土壌に含まれる重金属類を電気化学的に除去する試みがなされているが、現状では実用化されていない。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、汚泥状物からの重金属類の除去を、酸等の余分な添加物の投入なしで、短期間でかつ効率良く回収できる電解処理システムの提供にある。
本発明者らは、ヘドロ等の泥状物や土壌中に含まれる重金属類を電気化学的に除去する方法について種々研究した結果、汚泥状のスラリー中に直接一方の電極を挿入して電解処理すると、良好な結果が得られることを見いだして本発明を完成した。
【0007】
本発明の汚泥中の重金属類の除去方法は、ヘドロ等の汚泥状物の水性スラリー相と水相をイオン透過性隔壁で仕切り、スラリー相内と水相内のそれぞれに電極を配置して電解処理することを特徴とする方法である。
より具体的には、電解槽をイオン透過性隔壁で仕切ってヘドロ等の汚泥状物の水性スラリー用の汚泥槽と沈澱水用の沈澱水槽とに分離し、汚泥槽に陽極、沈澱水槽に陰極を設置して電極間に通電することによってスラリー中の重金属類を沈澱水槽内へ除去することからなる。
また本発明は、イオン透過性隔壁で仕切られたヘドロ等の汚泥状物の水性スラリー用の汚泥槽と沈澱水用の沈澱水槽とを備えた電解槽と、該隔壁を挟んで両槽に設置された電極と、電極間への通電量を制御するための通電制御手段とからなることを特徴とする汚泥状物中の重金属類の除去装置に関するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、汚泥等の水性スラリー(以下単にスラリーという)に直接陽極を挿入して電解処理することを特徴とするもので、隔壁を介して2槽に分かれた汚泥槽と沈澱水槽内に配置された陽極と陰極の間に通電すると、汚泥槽では電極反応によって水素イオンが発生して高酸性状態が形成され、これによってスラリー粒子に吸着していた重金属類はイオンとして電気泳動可能な状態となって陰極のある沈澱水槽に移行して分離される。
陽極では水の電気分解反応により、
H2 O → 1/2O2 +2H+ +2e- (1)
に示すように水素イオンを生じ、また陰極では以下の反応
H2 O+e- →1/2H2 +OH+ (2)
によって溶液がアルカリ性を呈し、この現象が効率よい重金属類の回収を可能にしているものと推測される。
【0009】
隔壁は、陽極側のスラリーと陰極側の水相との混合防止や汚泥槽内の高酸性状態の維持のためであり、また沈澱水槽内に分離された重金属類のイオンがスラリーと混合しないようにするためである。
隔壁としては、通常電解処理に使用されているものを用いることができ、例えば、ろ紙、織布、不織布、ガラス繊維マット、又は素焼き板などの多孔質体などで、これらは電解槽内を仕切るための平板状のものでもよく、また、内部にスラリーが入れられるような容器形状でもよい。
電解処理をより効率的に行うためには、スラリーを入れる隔壁を円筒状としてその外周に円筒状の陰極を設けて行うとよい。これらのことから、電解槽内を円筒状に隔壁で仕切るか、または有底円筒容器状の隔壁を電解槽内に設置して行うとよい。
また、連続的に処理するためには、電解槽を上下に仕切り、上槽を汚泥槽、下槽を沈澱水槽として、スラリーと沈澱水槽用水を連続供給するようにするとよい。
【0010】
電極としては、特に限定されないが、白金電極などの耐腐食性のものが好ましい。しかしながら、価格的にはカーボン(炭素)電極、ステンレス等の鉄系電極などが使用される。形状としては、ロッド(丸棒)、平板、網状体などのいずれでも良い。電極の設置は1対1である必要はなく、装置に応じてそれぞれの電極を必要数並設してもよい。
【0011】
電極間に通電することによって、上記のように陽極側の汚泥槽内には酸性状態が形成されるが、一方陰極側の沈澱水槽では陰極反応により、水酸化物イオンが発生し、アルカリ性を呈する。これにより汚泥槽から移行してきた重金属類イオンは沈澱が促進されるものと考えられる。陰極は、隔壁でスラリー相と隔てられた沈澱水槽内に設置されているため、スラリー相での重金属類の不溶化は生じない。上記のことから、本発明は汚泥槽に酸等を加えることなく重金属類を分離することができる。
【0012】
分離される重金属類は、電気泳動の移動速度や容易度が金属によって異なるため、電極間の電流値や通電時間を制御することによって重金属類を選択的に分離回収することができる。通電は、電流値を一定として通電時間を変えて行う方法と電流値を変える方法のいずれによってもよい。通常は、電解時間の経過にしたがいスラリー中の金属が回収され電圧が変化するため、それに応じて電流値を変えることが望ましい。
【0013】
沈澱水槽に移行してきた重金属類のイオンは、イオン化の平衡状態が崩れて沈澱水槽内に沈殿する。沈澱水槽の水は静止状態、すなわちバッチ・システムで電解処理してもよいが、沈澱水槽に水を連続的に供給することによって、電解を促進し重金属類の沈澱をはやめることができ、低電力で除去操作を行うことができる。沈澱水槽に供給する水としては、水道水や井戸水などの他、河川水、湖沼水などであってもよい。
河川水、湖沼水などの場合、上記電解の際に水中に含まれるリン酸等の陰イオン成分は陽極側に移行し汚泥等に吸着又は包含されて除去される。
【0014】
本発明で処理対象となり得るスラリーとしては、湖沼のヘドロや、活性汚泥処理槽の汚泥、重金属類を含む土壌などが挙げられる。これらは、そのまま又は適当な濃度のスラリーとして電解処理することができる。これらの被処理スラリーは電解時に連続して供給してもよく、また回分式(バッチシステム)で処理してもよい。
【0015】
以下、本発明を実施例及び試験例によって説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0016】
【実施例】
実施例1
図1は本発明の基本的な電解槽の一例を示す断面模式図で、電解槽1中に容器状の隔壁2を装置して、該隔壁2内を汚泥槽Aとし、その外側の部分を沈澱水槽Bとしたもので、容器状隔壁2内に汚泥6を入れ、沈澱水槽Bの部分には水道水7等を入れ、汚泥槽Aに陽極4、沈澱水槽Bに陰極5を設け、陽極4と陰極5の間につないだ電源3を用いて電解処理を行うようにしたものである。
本例の場合、必要に応じて沈澱水槽Bに水を供給するための給水口8aと排水口8bが電解槽1に設けられている。
電解により汚泥6中の陽極4で水素イオンが発生し、汚泥中の重金属類9はプラスの電荷を持ったイオンとなり、隔壁2を透過して陰極方向に移動して沈澱水槽Bで沈澱物10として析出・分離される。
【0017】
実施例2
図2は本発明の他の電解槽の一例を示す断面模式図で、電解槽1中を隔壁2によって上下2段に分け、隔壁2より上側の槽を汚泥槽Aとし、下側の槽を沈澱水槽Bとしたものである。電解槽1には、汚泥槽Aにスラリーを供給・排出させるための供給口11aと排出口11bと沈澱水槽Bのための給水口8aと排水口8bが設けられている。図中、3は電源、4は陽極、5は陰極を示す。
隔壁2は電解槽があまり大きく無いときは素焼き板のようなセラミック製の多孔質板状体でもよく、また、プラスチック製のネットなどの支持体に濾布、ガラス繊維マットなどを保持させたものを用いるとよい。陽極4は炭素電極板などの平板状の電極を一枚又は多数並べて配置することができる。陰極5には板状電極も使用できるが、金網状の電極を使用すれば、上側の汚泥槽Aから移行・析出してきた重金属類が陰極間を通過してその下面の電解槽底部に沈澱するので有利である。沈澱水槽B内の水流を速くすると、沈澱すべき重金属類が水流に乗って除かれるため、電解槽外に沈澱槽を設けてもよい。
【0018】
試験例1(二槽式静水型電解法)
電解槽1としてトールビーカー、容器状隔壁2として筒形ろ紙を使用し、陽極4に棒状炭素電極、陰極5に白金網を用いた。
500mlのトールビーカー1の中に円筒ろ紙2(Advantec社,No.84,φ53mm×H150mm)を置き、ろ紙2の内側に200mlのヘドロ及び陽極4である炭素棒(φ12mm×H150mm)を、外側に純水200ml及び陰極5であるPt網(100mm×150mm,80mesh)を設置し、電極間に直流を流すことで電解を行った。本実験に用いた電解装置を図3に示す。電解のための電源には電気泳動用のパワーサプライ(BIORAD社,PowerPac3000)を用いた。電解は定電流にて行い、実験中の電圧、溶液のpH変化を経時的に測定した。
【0019】
ヘドロは千葉県の手賀沼東部に位置する大津川の流入口付近に堆積したものを使用した。
処理前後のヘドロに含まれる重金属類の測定は、それぞれの試料を風乾、粉砕後、環境基準に基づき、水抽出法と全量抽出法(湿式分解法)により行った。
水抽出法は、前記風乾、粉砕後の試料1.0gを10mgの水にて振とう(200 rpm,6時間)抽出し、1N・HClを同体積量加えて調製した液をサンプルとし、全量抽出法は前記試料2.5gに濃HNO3 5ml,H2 O2 3mlを加えて加温(120 ℃、6時間)後、1N・HClにて25mlにメスアップしたのちの濾過液をサンプルとした。電解操作の結果除去されて沈殿となった重金属類は、6NのHClで完全に溶解させた後200mlにメスアップしたものをサンプルとした。上記の方法によって得られたサンプルについて、適切な濃度に希釈した後ICP発光分析装置により含有重金属類の濃度を測定した。
【0020】
ヘドロに含まれる金属種の組成と規制基準値を表1に示す。表中、注1)は特殊肥料等の重金属含有量指定値(農水省)、2)は金属等を含有する産業廃棄物に係る判定基準値(総理府)を示し、Cr欄の*は六価クロムの値を示す。
【0021】
【0022】
比較例1(三槽式静水型電解法)
本発明の二槽式電解槽に対して、純水作成装置などの様に電解によって水中の含有イオンを除去するのに利用されている三槽式電解槽を用いてヘドロの重金属除去実験を行った。
本実験に使用した三槽式電解槽を図4に示す。電解槽はアクリル製の水槽21の内部をろ紙22で三槽に仕切った形状とし、中央にヘドロ6を200ml入れ、両側の槽23にそれぞれ純水150ml、及びPt網電極(100mm×100mm,80mesh)24、25を入れ、電極間に直流を流すことで行った。
ヘドロ及び電解処理は、試験例1と同様に行った。結果を試験例1の結果と共に図5に示す。図中、aは三槽式、bは二槽式電解槽の結果を示す。
【0023】
試験例2(二槽式流水型電解法)
二槽式電解法においてさらに高速での重金属除去を実現するために水槽の液を流し続けるシステムを検討した。この方法では常に新鮮な液が供給されるためにより重金属類の抽出が促進されることが期待される。400mA,3日間の電解中、水槽に水道水を1.8L/hの流速で流したときの亜鉛の残存率を図6に示す。処理後の亜鉛の残存率は20%まで低減し、流水のない電解のみの場合に比べ約二倍の除去効果がみられた。なお、電解を行わず流水のみの場合には、ほとんど除去されなかったことから電解と流水を同時に行うことにより重金属除去効果が促進されたことが確認された。さらに1.8L/hの流水実験での電極間電圧は10V程度と、静水系の電解の1/3程度に維持された。これは水道水から常に供給される微量の電解質が溶液の抵抗を低減しているためと考えられ、エネルギー効率の向上にも有効であると判断できる。
【0024】
比較例2(酸処理)
電解処理との比較のために塩酸による重金属処理をおこなった。80mlのヘドロを種々の濃度の塩酸溶液800ml中に入れ1日間攪拌し、ろ過した。処理後の含有重金属の分析は電解処理と同様におこなった。
【0025】
結果及び考察
1.ヘドロ中の含有重金属濃度
表1に示すように試料として用いたヘドロ中に含まれる金属類の濃度は、環境基準値が設けられている重金属類については水抽出の値はすべて基準値を満たしているが、全量抽出では亜鉛、カドミウムの各元素は基準値を超える濃度を示した。特に亜鉛については基準値を大きく上回っていた。コンポストとしての利用を考える場合、これら基準値を超える重金属の除去が必須である。本試験例の実験では全量抽出に焦点をしぼり、亜鉛を含めた各重金属について処理前後の濃度変化を測定した。なお、ヘドロの成分はロットごとにばらつきがあるため、同じロッドの未処理ヘドロの含有濃度に対する、処理後のヘドロの含有濃度の百分率を残存率と定義し、電解処理効果の評価をすることとした。
【0026】
2.静水型電解(試験例1)による結果
a.除去効果
図5にbとして200mAの定電流電解を6日間おこなったヘドロにおける各重金属の残存率を示す。ほとんどすべての重金属で三槽式の電解装置(比較例1)よりも高い除去効果が得られた。特に亜鉛については含有量の60%を除去できた。
ヘドロ中から除去された各種の重金属類は陰極のある沈澱水槽へと移動したことになるが、表2に示すようにイオン化傾向の小さい、いわゆる重金属についてはほぼ100%の割合で沈殿となっていることがわかる。
【0027】
b.電流値と除去率
電解中に流れる電流は汚泥槽から沈澱水槽へのイオンの移動と見ることができる。よって、電流値が大きいほどより早く重金属類が移動することが期待される。
試験例1において電流値を2倍の400mAにした場合、200mAの電解に比べて電解時間がほぼ半分に短縮された。電解3日後のヘドロに含まれる重金属の残存率は200mA,6日間の電解結果とほぼ一致することから、電解の際の電流値を上げることで電解処理速度を短縮できることが認められた。
【0028】
c.酸処理との比較
二槽式静水型電解による200mA,6日間の電解除去処理が従来法である酸処理と比べ、どの程度の酸の投入に相当するのかを調べるために、種々の強度の塩酸による抽出結果と比較した。表3に種々の重金属についての電解処理、酸処理後のヘドロ中の残存率を示す。表3の結果から電解処理は、おおよそpH1から3の間の塩酸処理に相当することがわかる。ヘドロには強力な緩衝作用があり、酸の投入によりこのレベルまで酸性にするためには膨大な量が必要となる。余分な酸を添加せず、同等の状態を形成しうる電解法の効果が確認できた。
【0029】
d.電解時間と除去効果
二槽式の静水型電解法の除去能力の限界を調べるために400mAの電流で10日間の連続電解をおこなった。ここでは亜鉛に着目し、除去された量を経時的に測定した。図6に電解開始からの経過時間と一日間で抽出された亜鉛の量の関係を棒グラフで示す。抽出量は2日目をピークに徐々に減少する形となった。この数値を元に、ヘドロ中の亜鉛の残存率の時間変化を算出した結果を図6に併せて曲線で示す。10日間の電解により20分の1まで残存濃度を減少させることができた。
以上のように、静水型の二槽式電解法により、ヘドロ中の重金属を電気化学的に除去すると同時に、重金属を沈殿として効率よく回収できる。
【0030】
【0031】
【0032】
3.流水型電解(試験例2)による結果
a.除去効果
二槽式電解法においてさらに高速での重金属除去を実現するために水槽の液を流し続けるシステムを検討した。この方法では常に新鮮な液が供給されるためにより重金属類の抽出が促進されることが期待される。400mA,3日間の電解中、沈澱水槽に水道水を1.8L/hの流速で流したときの亜鉛の残存率を図7に示す。処理後の亜鉛の残存率は20%まで低減し、流水のない電解のみの場合に比べ約二倍の除去効果がみられた。なお、電解を行わず流水のみの場合には、ほとんど除去されなかったことから電解と流水を同時に行うことにより重金属除去効果が促進されたことが確認された。さらに1.8L/hの流水実験での電極間電圧は10V程度と、静水系の電解の1/3程度に維持された。これは水道水から常に供給される微量の電解質が溶液の抵抗を低減しているためと考えられ、エネルギー効率の向上にも有効であるといえる。
【0033】
b.電解時間等と除去効果
1.8L/hの流水系における400mAの電解において電解時間と残存率の関係を調べた。0.5日、1日、3日間の電解処理をした結果、ヘドロ中の亜鉛の残存率変化は時間に対して直線性は示しておらず、むしろ時間とともに一定の割合で半減していく変化を示した。
次ぎに、電流値と除去効果について、1.8L/hの流水系での0.5日間の電解において、電流値を400mA及び200mAに設定したときの亜鉛の残存率を調べたところ、電流値の増加とともに除去能力も上昇し、除去効果は電流と電解時間の積、すなわち投入電荷量に対して相関があると推察された。
【0034】
c.流水速度と除去効果
400mA、0.5日の電解で流水速度を変化させたときのヘドロ中の亜鉛の残存率変化を調べたところ、大量の水を流すほど除去効果が向上する傾向が認められたが、0.48L/hの実験ではほとんど除去されなかった。高速で重金属の除去をするためには一定量以上の水を流すことが不可欠であることが示された。
【0035】
d.水の種類と除去率
流水電解の場合における流す水の組成による影響を調べるために、水道水の他に湖沼水を直接使用して電解処理を行った。
400mA、0.5日の電解で純水と手賀沼の沼水をそれぞれ1.8L/hの速度で流したときの亜鉛の除去の度合を測定した。その結果、純水を流し続けた系では全く除去効果が見られなかった。導電性を上げるための電解質の供給がない純水の場合、状況は静水系と同様と考えることができ、0.5日までの電解では亜鉛イオンの移動は始まらなかったものといえる。
【0036】
一方、手賀沼の水を使った電解実験では水道水の場合と同等のレベルまで亜鉛を除去することができた。さらに沼水に含まれるリン酸や硝酸イオンは、電解槽を通過した後にはその濃度が減少していることがわかった。これは負に荷電しているこれらのイオンが電気泳動により汚泥槽へ移動したことを示唆するものである。これは水質浄化の点からも有用であるうえ、コンポストとして利用するヘドロ側から見ても、栄養塩濃度を上げることになり、二重の効果をもたらすものといえる。
【0037】
以上説明したごとく、本発明の方法によれば、酸等の前処理用薬品を使用することなく、ヘドロ等の被処理物をそのまま又は単に希釈するだけで電解処理することができ、重金属類を除去することができる。静水型処理によるときは除去した重金属類を沈澱として回収することができる。流水型処理の場合には、電解時での重金属類の回収は困難であるが、急速な除去が見込まれるので回収が不要な場合や次工程での回収が可能な場合に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電解処理装置の一実施例を示す断面模式図である。
【図2】本発明の電解処理装置の他の実施例を示す断面模式図である。
【図3】試験例1で用いた電解処理装置(二槽式)の断面模式図である。
【図4】比較例1で用いた電解処理装置(三槽式)の断面模式図である。
【図5】二槽式と三槽式電解槽の処理結果を示すグラフである。
【図6】二槽式電解槽の除去能力を示すグラフである。
【図7】流水型電解法によるZnの除去効果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 電解槽
2 隔壁
3 電源
4 陽極
5 陰極
6 汚泥
7 水道水
8a 給水口
8b 排水口
9 重金属類
10 沈澱物
Claims (6)
- 電解槽をイオン透過性隔壁で仕切ってヘドロ等の汚泥状物の水性スラリー用の汚泥槽と沈澱水槽とに分離し、汚泥槽内に該スラリーに直接接する形で陽極を設置し、沈澱水槽に陰極を設置し、陽極面で電極反応によって水素イオンが発生して汚泥槽内が酸性状態となるように両電極間に通電することによって、該スラリー中の重金属類を沈澱水槽内へ除去することを特徴とする重金属類の除去方法。
- 沈澱水槽に水を供給しながら電極間に通電処理することを特徴とする請求項1記載の重金属類の除去方法。
- 電極間の通電量を制御することによって重金属類を選択的に分離回収することを特徴とする請求項1又は2項に記載の重金属類の除去方法。
- 電解槽内に円筒容器状のイオン透過性隔壁を設け、該円筒容器状隔壁内に除去すべき重金属類を含む汚泥状物のスラリーを入れ、該スラリーに直接接する形で該隔壁内に陽極を配置し、該隔壁外の電解槽内に円筒状の陰極を配置して電解処理することを特徴とする請求項1ないし3項のいずれか1項記載の重金属類の除去方法。
- 汚泥槽中の重金属類を分離回収するとともに、沈澱水槽内に河川水、湖沼水等の被処理水を供給して被処理水中のリン酸等の陰イオンを汚泥状物中に回収することを特徴とする請求項1ないし4項のいずれか1項記載の重金属類の除去方法。
- 電解槽と、該電解槽内に設けられたイオン透過性隔壁で作られた円筒容器状のヘドロ等の汚泥状物の水性スラリー用の汚泥槽と該汚泥槽の外周に設けられた沈澱水槽と、該汚泥槽内に配置された陽極と、該汚泥槽の外周の沈殿水槽内に配置された該汚泥槽を囲む形の円筒状の陰極と、電極間への通電量を制御するための通電制御手段とからなることを特徴とする汚泥状物中の重金属類の除去装置。
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