JP3993949B2 - 易分離性インキ組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、易分離性ラミネート印刷用インキ組成物に関する。
さらに詳しくは、例えば、発泡ポリスチレンシートに積層される印刷フイルムの印刷用インキとして用いたときに、印刷フイルムが発泡ポリスチレンシートから剥がれ易く、発泡ポリスチレンシートを廃棄するときにインキ層を印刷フイルムとともに発泡ポリスチレンシートから分別することができるために、発泡ポリスチレンのリサイクル製品の着色を防止できることを可能にするインキ組成物に関する。
すなわち、本発明はリサイクル技術に関連するインキ組成物の技術である。
【0002】
【従来の技術】
従来より、プラスチック成形品、特にシート成形品の表面に印刷するときに、直接印刷するよりも、印刷が容易な薄いプラスチックフイルムに所望の印刷を施工して、この印刷フイルムの印刷面を成形品表面に向けて、成形品に印刷フイルムを積層して、実質的に成形品表面上の印刷を実現するラミネートフイルム方式による積層印刷(これを本明細書ではラミネート印刷という)が広く行われている。この場合のラミネート方法は、加熱下の圧着又は接着剤によるラミネートがあるが、印刷インキによる印刷インキ層は加熱押圧すると接着剤として作用してラミネートを形成することができる。
現在、断熱性、緩衝性容器として大量に使用され、大量の産業廃棄物となり、リサイクルが重大な社会問題となっている物質の一つとして発泡ポリスチレンシートがある。
このような産業廃棄物となる発泡ポリスチレンシート品としては、単なる無印刷発泡ポリスチレンシートよりなる単層発泡ポリスチレンシート、無印刷の透明フイルムを表面に積層した発泡ポリスチレンシートのラミネート積層シート(以下白色積層発泡ポリスチレンシートと称する)と、印刷フイルムの印刷層を内側に介在させて積層した発泡ポリスチレンシートのラミネート積層シート(以下有色積層発泡ポリスチレンシート)の3通りの発泡シートが広く使用されている。
現時点で、漁港、スーパー等で回収されている印刷のない魚、肉等の箱容器及びトレーとして使用されている単層発泡シートは、粉砕、水洗等の工程を経て、リサイクル工程に使用されている。
また、白色積層発泡ポリスチレンシートは、無印刷の透明フイルムを剥離分離して(透明フイルムがポリスチレンの場合は分離する必要がない)、単層発泡ポリスチレンシートと同様にリサイクル工程に使用することができる。
しかし、柄印刷、黒ベタ印刷等が施工された印刷フイルムを積層した有色積層発泡ポリスチレンシートは、透明フイルム/インキ層/発泡ポリスチレンシートの順に積層されていて、インキ層は発泡ポリスチレン表面と印刷フイルムの間に存在する。このとき、発泡ポリスチレンシートの表面は多孔質であるため、表面が円滑な印刷フイルム側よりもインキ層に対する接着性が大きい。そのために、印刷フイルムを引き剥がしたときに、インキ層は発泡ポリスチレンシートの表面に転写されるように移行する。
従って、印刷フイルムを剥がしても、インキ層が発泡ポリスチレンシート側に付着して、インキ層を付着した発泡ポリスチレンシートをリサイクル工程に利用するとリサイクル製品が着色する。
従って、現時点では、有色積層発泡ポリスチレンシートは、リサイクル工程では除去しているのが実情である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、プラスチック成形品のラミネート印刷方式のフイルムの印刷に用いるインキ組成物として、特定のインキ組成物を用いることによって、インキ層をプラスチック成形品から分離可能として、分離されたプラスチック成形品をリサイクル工程に使用可能とすることを目的とする。特に、現時点でリサイクルすべき廃棄物として、重大な社会問題となっている発泡ポリスチレンシートのラミネート方式の印刷シート成形品をリサイクル可能とすることを、最優先の目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、従来使用されているフイルム/インキ層/発泡ポリスチレンシート積層品において、インキ層に特定のインキ組成物を選択して、この易分離性インキ層若しくはインキ層と発泡ポリスチレンシートの間に易分離性インキ層を介在させると、日常的環境では、通常のラミネート印刷方式の有色積層発泡ポリスチレンシートと全く変わらない性能と外観を有するが、温度60〜90℃でアルカリ水溶液中で処理した場合に、易分離性インキ層が膨潤し、易分離性インキ層と発泡ポリスチレンシートとの間が分離して、発泡ポリスチレンシート側にインキ層が付着することなく、発泡ポリスチレンシートを分離できる現象を発見し、この知見に基づき、本発明を完成するに至った。
そして、本発明は、本質的には、加温アルカリ溶液中で部分的に膨潤しやすいインキ組成物を調製することを目的とするものである。
本発明の易分離性ラミネート印刷用インキ組成物は、アクリル系樹脂に、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸樹脂、ロジン−マレイン酸樹脂の1種又は2種以上を混合したインキ組成物、若しくは、好ましくは、当該組成物に水分膨潤性をさらに向上させるために界面活性剤を含有させたインキ組成物である。
【0005】
すなわち、本発明は、次の各項の発明よりなるものである。
(1)(A)成分として、アクリル酸エステル若しくはメタクリル酸エステルの重合体又は他の単量体との共重合体であるアクリル系樹脂(ただしスチレン−アクリル酸共重合体は除く)及び(B)成分として、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸樹脂、ロジン−マレイン酸樹脂から選ばれた1種又は2種以上の水膨潤性樹脂をビヒクル主成分として含むものであって、発泡スチレンであるプラスチック成形品表面上の印刷を実現するラミネート方式による積層印刷に用いることを特徴とする易分離性インキ組成物。
(2)(A)成分として、アクリル酸エステル若しくはメタクリル酸エステルの重合体又は他の単量体との共重合体であるアクリル系樹脂(ただしスチレン−アクリル酸共重合体は除く)(B)成分として、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸樹脂、ロジン−マレイン酸樹脂から選ばれた1種又は2種以上の水膨潤性樹脂及び(C)成分として、界面活性剤をビヒクル主成分として含むものであって、発泡スチレンであるプラスチック成形品表面上の印刷を実現するラミネート方式による積層印刷に用いることを特徴とする易分離性インキ組成物。
(3)ビヒクル主成分として、繊維素系樹脂として硝化棉を含有することを特徴とする第(1)項又は第(2)項記載の易分離性インキ組成物。
(4)(A)成分100重量部に対し、(B)成分5〜95重量部であることを特徴とする第(1)項、第(2)項又は第(3)項記載の易分離性インキ組成物。
【0006】
本発明易分離性ラミネート印刷用インキ組成物は、着色顔料を含有する場合及び着色顔料を含有しない場合がある。
着色顔料を含有する場合は、そのインキ層は印刷模様のインキ層としての役割及び易分離性層としての役割を兼用する。
着色顔料を含まない場合は、そのインキ層は印刷色模様を表すインキ層と成形品表面の間を易分離性にする役割のみを果たすものとなる。着色顔料を含まない無色若しくは淡色のインキ組成物は、クリアインキ組成物又はメジウム組成物と呼ばれるものである。本発明易分離性ラミネート印刷用インキ組成物の着色顔料を含まないものは、当該インキ層が成形品の表面に直接接するように全面ベタ印刷されるものであり、着色インキ層と成形品表面を完全に分離することができる。
本発明易分離性ラミネート印刷用インキ組成物が使用されるラミネート印刷方式には、印刷フイルムの印刷層が一色刷りの場合及び多色刷りの場合がある。
また、印刷もフイルム表面全面に印刷するベタ刷り印刷と部分的な模様印刷の場合がある。
一色刷りの場合には、本発明の易分離性ラミネート印刷用インキ組成物による印刷は、当該一色刷り用インキ層を本発明易分離性ラミネート印刷用インキ組成物による印刷層にすることができる。
また、多色刷りの場合には、成形品表面に接するベタ刷りのインキ層のみを本発明の易分離性ラミネート印刷用インキ組成物による印刷にすることができる。しかし、多色刷りのインキ層をすべて本発明易分離性ラミネート印刷用インキ組成物によるインキ層にするのが、分離性の点からは望ましい。
【0007】
また、一色刷り及び多色刷りの場合のいずれの場合にも、有色の印刷インキ層と成形品表面との間に、無色若しくは淡色の本発明易分離性ラミネート印刷用インキ組成物のベタ刷りインキ層を設けるのが望ましい。
この場合、無色若しくは淡色の本発明易分離性ラミネート印刷用インキ組成物によるインキ層は、当然ベタ印刷であり、インキ顔料を含有しない易分離性インキ層となるので、印刷インキ層の顔料の成形品表面への移行は完全に防止することができる。すなわち、無色若しくは淡色の本発明易分離性ラミネート印刷用インキ組成物としては、着色顔料を含まないクリアインキ組成物若しくは着色顔料が極端に少ないメジウムインキ組成物の成分を本発明で特定する易分離性ラミネート印刷用インキ組成物の成分にして使用することができる。このような無色の易分離性ラミネート印刷用インキ組成物による印刷インキ層は、着色インキ層と成形品表面との分別層として機能する。この場合、着色インキ層も本発明の易分離性ラミネート印刷用インキ組成物による印刷によって形成したものであることが易分離性の点からはさらに望ましい。
本発明の易分離性ラミネート印刷用インキ組成物によって印刷したインキ層は、アルカリ溶液中で温度50℃以上、好ましくは60℃以上、特に好ましくは80℃以上の条件で速やかに膨潤して、成形品に対する接着力を低下させてインキ層が分離する。
このときのアルカリ溶液の濃度は、1〜3%のアルカリ溶液、例えば苛性ソーダ溶液を使用することができる。
また、本発明易分離性ラミネート印刷用インキ組成物による印刷インキ層は、常温では、アルカリ溶液中でも膨潤せず、耐水性を有し、温度を上げた場合にのみ膨潤分離性を示す点に特徴がある。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明易分離性ラミネート印刷用インキ組成物の(A)成分であるアクリル系樹脂として、アクリル酸エステル若しくは、メタクリル酸エステルの重合体又は他の単量体との共重合体を使用することができる。
本発明の(A)成分樹脂の主たる単量体単位であるアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル(以下(メタ)アクリル酸エステルと略す)としては、特に制限はないが、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル及び(メタ)アクリル酸ブチルが易分離性の点から望ましい。
本発明(A)成分の樹脂の共重合体としては、(メタ)アクリル酸エステルの二種以上の単量体からなる共重合体のほか、(メタ)アクリル酸エステルの一種又は二種以上の単量体とスチレン、(メタ)アクリル酸、アクリロニトリル、酢酸ビニル、ブタジエン等の一種又は二種以上の単量体との共重合体を使用することができる。
本発明易分離性ラミネート印刷用インキ組成物の(B)成分のスチレン−アクリル酸共重合体としては、主として、スチレン単量体単位及びアクリル酸単量体単位を含有する共重合体を使用することができる。これら単量体単位以外に、アクリル酸エステル単量体単位を含有させることもできる。
例えば、スチレン20〜40重量%、メチルメタアクリレート5〜15重量%、アクリル酸ブチル10〜30重量%、アクリル酸10〜20重量%を主成分とするもので、酸価100〜240好ましくは140〜200、分子量1600〜20000好ましくは3000〜10000、Tg35〜85℃、好ましくは45〜60℃のものが好適に使用することができる。
本発明の(A)成分として使用される樹脂は、ポリスチレンフイルムの印刷に特に適したビヒクル樹脂成分として知られているものであり、本発明の特徴は、かかる公知のインキ組成物に(B)成分の水膨潤性樹脂を配合したところにある。
印刷基材フイルムを他のフイルムにする場合にも、本発明の(A)成分も使用することができるが、望ましくは、(A)成分としては、それぞれのプラスチックフイルムに使用されている公知のビヒクル用樹脂成分を使用するのが印刷の鮮明度及び印刷施工の容易性の点から好ましい。例えば、ポリプロピレンフイルムを本発明のラミネート印刷フイルムとして使用する場合は、ポリプロピレンフイルムに慣用されている塩素化ポリプロピレン樹脂、EVA樹脂などを(A)成分樹脂に代えて使用して、これに水膨潤性樹脂を配合する組み合わせが適当である。
これと同様の考えで、他の公知フイルムをラミネート印刷フイルムとする場合もそれぞれのフイルムに慣用されている樹脂成分を本発明の(A)成分に代えて、これに水膨潤性樹脂を配合するという本発明の発想を適用することができる。
【0009】
また、本発明(B)成分のスチレン及びスチレン−マレイン酸共重合体としては、スチレン単量体単位及びマレイン酸単位を主成分とする共重合体を使用することができる。例えば、スチレン−無水マレイン酸共重合体及びスチレン−マレイン酸モノエステル共重合体であり、酸価180〜280好ましくは200〜220、分子量2000〜80000好ましくは4000〜20000のものを使用することができる。
同じく、本発明の(B)成分のロジン−マレイン酸樹脂としては、酸価110〜300好ましくは150〜220、Tg130〜170℃、好ましくは140〜150℃のアルコール可溶性のものが好適に使用することができる。
本発明の(B)成分の樹脂は、いずれもカルボン酸基を有しているために、水に対する適度の膨潤性が付与されている。
そのために、アルカリ性の温水中で、速やかに膨潤して、成形品表面から分離する作用効果を達成することができる。
本発明易分離性ラミネート印刷用インキ組成物においては、本発明の上記作用効果を損なわない範囲で、(A)成分及び(B)成分以外にビヒクル成分として、他樹脂を併用することができる。併用する樹脂としては、(A)成分及び(B)成分樹脂と相溶性があり、グラビア印刷もしくは、フレキソ印刷インキに用いられるものは適宜併用することができる。
例えば、クマロン樹脂、ケトン樹脂、エポキシ樹脂、繊維素系樹脂、塩酢ビ共重合樹脂、ウレタン樹脂等を使用することができる。
【0010】
本発明で使用されるビヒクル成分は、(A)成分100重量部に対し、(B)成分5〜95重量部である。好ましくは、(A)成分100重量部に対し、(B)成分20〜80重量部、特に30〜70重量部が好ましい。(B)成分が5重量部以下であると、希アルカリ溶液に浸漬しても、加温時膨潤性が十分に得られない。また(B)成分が95重量部以上になると、インキの折曲げ性、耐水性、モミ性が損なわれるので好ましくない。
本発明の着色性易分離性ラミネート印刷用インキ組成物においては、通常グラビア印刷インキに用いる顔料を特に制限なく使用することができる。例えば、群青、紺青、弁柄、鉄黒、黄色酸化鉄、二酸化チタン、カーボンブラック、チタンブラック等の無機顔料、モノアゾ系顔料、ジスアゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アンスラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、イソイレドリン系顔料、チオイレジゴ系顔料、ジオキサジン系顔料、ピロロピロール系顔料等の有機顔料を使用することができる。
上記の着色顔料の使用量は、目的とする色調、濃度によって変化するがインキ全量中の0.3〜50重量%の範囲で使用される。
【0011】
本発明で使用されるインキ組成物には、粘度、流動性等印刷インキの特性維持と印刷面のスリップ性付与、つや出し、つや消し等の目的で体質顔料、ワックス、プラスチック微粉末、可塑剤を配合することができる。
体質顔料としては、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、沈降性バリウム等を使用することができる。ワックスとしては、ポリエチレン系ワックス、ポリプロピレン系ワックスを好適に使用することができる。
可塑剤としては、微量使用であるが、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートを好適に使用することができる。
本発明易分離性ラミネート印刷用インキ組成物によって印刷される印刷基材であるフイルムは通常透明フイルムであり、ポリプロピレンフイルム、ポリエチレンフイルム、ポリエステルフイルム、ポリ塩化ビニルフイルム、ポリスチレンフイルム等を使用することができる。
また、本発明易分離性ラミネート印刷用インキ組成物が使用されるプラスチック成形品は、発泡ポリスチレンシートの場合が、大量のリサイクル物質であるので最適であるが、ラミネート印刷を行う他のプラスチック製品の場合にも応用できる。他の製品の場合も、発泡製品がインキの着色顔料を吸着しやすいので、例えば発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン等が本発明の顔料分離効果が顕著に表れる点で適している。
また、基材印刷フイルムの種類によって、適宜インキ組成物の溶剤は選択することができる。
例えば、成形品が発泡ポリスチレンシートで、印刷フイルムがポリスチレンフイルムである場合は、ポリスチレンは耐溶剤性が低いので、ビヒクルの媒体として使用する有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル30〜40重量部に対し、アルコールとして、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール等が70〜60重量部の比率で混合した混合溶剤を使用することができる。この場合、遅乾性溶剤として、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が少量使用することができる。
【0012】
本発明易分離性ラミネート印刷用インキ組成物の好ましい態様として、易分離性を向上させるために、界面活性剤をビヒクル成分に混合することができる。
本発明に用いる界面活性剤としては、アニオン系、ノニオン系及びカチオン系のいずれの界面活性剤も特に制限なく使用することができる。特に好ましいのは、飽和高級アルコールの硫酸エステルのナトリウム塩、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、ポリアルキレングリコールの硫酸エステルナトリウム塩、ジアルキルスルホンコハク酸ナトリウム塩のような湿潤効果に優れたアニオン系界面活性剤が特に好適である。
これらの界面活性剤は、本発明易分離性ラミネート印刷用インキ組成物のビヒクル成分に対して、1〜20重量%の範囲で使用することができる。
本発明易分離性ラミネート印刷用インキ組成物によって、通常の印刷基材フイルムに、通常の印刷で印刷することができる。
そして、得られたラミネート方式の印刷成形品は、通常のラミネート方式の印刷成形品と同一の外観及び物性を示す。
本発明易分離性ラミネート印刷用インキ組成物を適用するリサイクル用成形品として、発泡ポリスチレンシートを選択した場合、有色ラミネート発泡ポリスチレンシート品を80〜90℃に加熱された1〜3%の苛性ソーダ水溶液に浸漬し、20〜30分間液体を撹拌処理すると、基材フイルム/インキ層と発泡ポリスチレンシート層とに完全に分離することができる。しかも、発泡ポリスチレンシート層の表面には、顔料の付着のみならずインキのビヒクルの付着も起こさない。
【0013】
【実施例】
次に実施例をあげて本発明を具体的に説明する。
実施例1
易分離性ラミネート印刷用インキ組成物である青色インキ組成物、白色インキ組成物及び無色インキ組成物を、表示の成分を混合して調製した。
青色インキ組成物及び白色インキ組成物には、それぞれ表示の顔料が配合され、無色インキ組成物には、ビヒクルに、界面活性剤が配合されている。
また、すべてのインキ組成物に繊維素系樹脂がそれぞれ表示の割合で配合されている。
これら3種のインキ組成物は、表示の成分を、ペイントシェーカーに表示量配合して、撹拌して分散させ、それぞれのインキ組成物を得た。
ペイントシェーカーの撹拌時間は、着色インキ組成物は60分間行った。無色インキ組成物の場合は、15分で均一分散が達成された。
実施例2〜9
第1〜3表の各成分を実施例1と同様に、各実施例毎に、本発明易分離性ラミネート印刷用インキ組成物として、青色インキ組成物、白色インキ組成物及び無色インキ組成物を得た。
【0014】
【表1】
【0015】
【表2】
【0016】
【表3】
【0017】
1)商品名 ダイヤナールBR−107[三菱レイヨン社製品]の酢酸エチル/1PA溶剤で溶解したワニス。
2)商品名 1/2L硝化綿[旭化成工業社製品]を酢酸エチル/1PA溶剤で溶解したワニス。
3)商品名 サンワックス131[三洋化成社製品]。
4)商品名 ジョンクリル682[ジョンソンポリマー社製品]の酢酸エチル/1PAの溶剤で溶解したワニス。
5)商品名 DisrolSH[日本乳化剤社製品]のアニオン活性剤。
6)商品名 Pigment Blue P.B−15:3[大日精化工業社製品]。
7)商品名 R−820チタン[石原産業社製品]。
8)商品名 CA−6623[近代化学社製品]酢酸エチル/1PAの40%溶液。
9)Pigment Yellow P.Y−12[大日精化工業社製品]。
10)マルキード No.32[荒川化学工業社製品]の1PA/酢酸エチルで40%溶解したワニス。
11)商品名 三菱カーボンMA−11[三菱化学社製品]。
【0018】
比較例1
第4表の通り、実施例2のB成分(スチレン・アクリル酸共重合体)及びアニオン系界面活性剤を除いた他は実施例2と同様にして、青色インキ組成物、白色インキ組成物及び無色インキ組成物を得た。
【0019】
【表4】
【0020】
得られた実施例インキ組成物及び比較例インキ組成物を組み合わせて印刷重ね構成を設定し、ポリスチレンフイルムに印刷し、発泡ポリスチレンと170℃の熱圧着により、ラミネート積層シートを形成した。
ここに得られた積層シートのラミネート強度、耐水性及び1.5%苛性ソーダの85℃溶液浸漬撹拌でポリスチレン/着色インキ層/無色インキ層と発泡ポリスチレン層の分離性を調べた。
その結果を第5表に示す。
試験サンプル層構成は下記の通りにした。
試料1:PS/比較例着色インキ層/比較例無色インキ層/発泡ポリスチレン
試料2:PS/比較例インキ層/実施例1無色インキ層/発泡ポリスチレン
試料3:PS/比較例インキ層/実施例2無色インキ層/発泡ポリスチレン
試料4:PS/比較例インキ層/実施例3無色インキ層/発泡ポリスチレン
試料5:PS/比較例インキ層/実施例5無色インキ層/発泡ポリスチレン
試料6:PS/比較例インキ層/実施例8無色インキ層/発泡ポリスチレン
試料7:PS/実施例1インキ層/実施例1無色インキ層/発泡ポリスチレン
試料8:PS/実施例2インキ層/実施例2無色インキ層/発泡ポリスチレン
試料9:PS/実施例3インキ層/実施例3無色インキ層/発泡ポリスチレン
試料10:PS/実施例4インキ層/実施例4無色インキ層/発泡ポリスチレン
試料11:PS/実施例5インキ層/実施例5無色インキ層/発泡ポリスチレン
試料12:PS/実施例6インキ層/実施例6無色インキ層/発泡ポリスチレン
試料13:PS/実施例7インキ層/実施例7無色インキ層/発泡ポリスチレン
試料14:PS/実施例8インキ層/実施例8無色インキ層/発泡ポリスチレン
試料15:PS/実施例9インキ層/実施例9無色インキ層/発泡ポリスチレン
PSはポリスチレンフイルム。
【0021】
各物性の判定規準は次の通りとした。
ラミネート強度:ラミネート品を手で剥離し、インキがポリスチレンフイルム、発泡ポリスチレンフイルムに残り、ポリスチレンフイルムが破壊切れを生じるものを○、発泡ポリスチレンフイルムにインキが残らないがポリスチレンフイルムが破壊切れを生じるものを△、ポリスチレンフイルムが破壊切れを生じないものを×とした。
耐水性(1):ポリスチレンフイルムに印刷した状態で常温水に浸漬し、24時間後にセロテープ接着剥離し、剥離しないものを○、20%程度剥離するものを△、50%以上剥離するものを×とした。
耐水性(2):熱ラミネート品を常温水に24時間浸漬し変化のないものを○、浮き等変化の出たものを×とした。
アルカリによる分離性:PS/インキ/メヂウム/発泡PS積層試料を1cm×1cm程度に粉砕(カッターにてカット)し、試料を1.5%苛性ソーダ85℃加温溶液中に浸漬し、撹拌し、30分以内に分離したものを○、40〜60分で分離したものを△、60分で分離しないものを×とした。
【0022】
【表5】
【0023】
【発明の効果】
本発明の易分離性ラミネート印刷用インキ組成物は、従来使用されているインキ組成物と比較し、印刷適性、熱圧着ラミネート適性等は同一の性能が維持され、従来と同様に使用することができる。
また、本発明易分離性ラミネート印刷用インキ組成物によって印刷された印刷フイルムを用いた発泡ポリスチレンのラミネート積層シートは、加熱した比較的希薄なアルカリ水溶液に短時間浸漬撹拌することによって、発泡ポリスチレンシート層をインキ組成物に含有される着色顔料から分離することができ、ラミネート積層印刷発泡ポリスチレンシートを再生使用することを可能とする。
Claims (4)
- (A)成分として、アクリル酸エステル若しくはメタクリル酸エステルの重合体又は他の単量体との共重合体であるアクリル系樹脂(ただしスチレン−アクリル酸共重合体は除く)及び(B)成分として、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸樹脂、ロジン−マレイン酸樹脂から選ばれた1種又は2種以上の水膨潤性樹脂をビヒクル主成分として含むものであって、発泡スチレンであるプラスチック成形品表面上の印刷を実現するラミネート方式による積層印刷に用いることを特徴とする易分離性インキ組成物。
- (A)成分として、アクリル酸エステル若しくはメタクリル酸エステルの重合体又は他の単量体との共重合体であるアクリル系樹脂(ただしスチレン−アクリル酸共重合体は除く)(B)成分として、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸樹脂、ロジン−マレイン酸樹脂から選ばれた1種又は2種以上の水膨潤性樹脂及び(C)成分として、界面活性剤をビヒクル主成分として含むものであって、発泡スチレンであるプラスチック成形品表面上の印刷を実現するラミネート方式による積層印刷に用いることを特徴とする易分離性インキ組成物。
- ビヒクル主成分として、繊維素系樹脂として硝化棉を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の易分離性インキ組成物。
- (A)成分100重量部に対し、(B)成分5〜95重量部であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の易分離性インキ組成物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP12256499A JP3993949B2 (ja) | 1999-04-28 | 1999-04-28 | 易分離性インキ組成物 |
Applications Claiming Priority (1)
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