JP3993812B2 - コークス炉装入石炭添加用の結合剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コークス炉に装入する石炭を造粒するための結合剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
石炭を乾留してコークスを製造する場合、いろいろの種類の石炭を配合して使用するが、コークスの強度を向上させるために、粘結性の強い石炭が一般的に使用されている。この強粘結炭の使用量は要求されるコークスの強度と関係があり、強粘結炭の配合割合が高いほど、製品コークスの強度が向上する。
しかしながら、強粘結炭の埋蔵量は粘結性の低い非微粘結炭の埋蔵量に比べて少なく価格が高いので、製品コークスの製造コストを引き下げるためには、出来るだけ強粘結炭の配合割合を減らし、非微粘結炭を増加する必要がある。
【0003】
この強粘結炭の配合割合を減らし、非微粘結炭を増加するために、コークス炉に装入する石炭(粉炭)に、結合剤を添加して混合した後、成型する方法がある。この結合剤として、コークスを製造する際に副生したコ−ルタールの水分を除去した生タ一ル、又は、該コールタールを加熱蒸留処理して得た石炭ピッチが使用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−184542号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
また、近年、粉炭を乾燥して、粉炭の水分を低減する事が盛んに行われる様になっているが、この乾燥粉炭の結合剤としては生タールが一般的に使用されている。この生タールは粘性が低くて取り扱い易いが、悪臭がして作業環境上、好ましくないものであった。
【0006】
一方、前記石炭ピッチはコ−ルタールを蒸留処理したものであるために、悪臭はないが、常温では粘性が高いことから、220℃以上に加熱しながら搬送及び添加をしなければならず、加熱コストが掛かり、かつ、取り扱いが非常に厄介なものであった。
【0007】
本発明は、悪臭がなく作業環境が良好で、且つ、粘性が低く取り扱いも容易な結合剤を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであって、その特徴する手段1は、コークス炉に装入した石炭を乾留することにより副生するコールタールを加熱蒸留して得た前記装入石炭への添加用結合剤にであって、ナフタリン油、洗浄油からなる低沸点油と、クレオソート油と、ピレンと、コールタールを加熱蒸留した残渣物とからなり、前記低沸点油が10質量%以下で、かつ、該低沸点油とクレオソート油、ピレンの合計が15〜20質量%であるコークス炉装入石炭添加用の結合剤である。
更に、手段2は、前記コールタール中のスラッジを含有するコークス炉装入石炭添加用の結合剤である。
更に、手段3は、前記蒸留は、150℃に加熱し、15kPaの減圧状態で行われるコークス炉装入石炭添加用の結合剤である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明者は、前記生タールが有する悪臭、前記石炭ピッチの高粘性について検討した結果、この生タール中には、タール油、カルボル油、ナフタリン油、洗浄油等の低沸点油及びクレオソート油、ピレン等の軽質油が多量に含まれる事によるものであると判断した。また、石炭ピッチは上記低沸点油及び軽質油が殆どないことから粘性が高いものであると判断した。
【0010】
このことを基にして、前記悪臭もなく、かつ、低粘性の結合剤とするための低沸点油及び軽質油の含有量について種々実験検討した結果、臭気は低沸点油の含有量により異なり、粘性は低沸点油及び軽質油の含有量により異なる事が判明した。
そして、更に、この関係について検討した結果、低沸点油の含有量と臭気の程度を示す強度は図1に示す関係にあり、低沸点油と軽質油の合計含有量と粘性は図2に示す関係にあることを見出した。
【0011】
また、本発明者は、例えば、前記乾燥した粉炭に結合剤を添加する場合においては、この添加する乾燥粉炭の温度は85℃程度であるが、この温度域において、結合剤が偏在することなく均一に混合出来、しかも、取り扱いが容易な粘性としては200cp以下を有し、しかも、作業者に不快感を与えない臭気強度は2以下(何の臭いであるか判る程度の弱い臭い)にする必要が有るとの結論に至った。
この臭気強度を2以下とするには図1から低沸点物の含有量は10質量%以下にする必要がある。更に、粘性を200cp以下とするには図2から低沸点油及び軽質油の合計含有量を15質量%以上と必要がある。
【0012】
また、前記低沸点油及び軽質油はコークス炉内で乾留初期の温度で、結合効果を発現する以前に抜け出し、その部分が気孔として残存する。このため、この含有量が25重量%以上になるとコークス中に多くの気孔を有し、コークスは強度の低いものとなる。
このため、粘性と品質(気孔)の両者を適正にするには、低沸点油及び軽質油の合計含有量は10〜25質量%にすれば良いことが判明した。
【0013】
更に、本発明はスラッジを含んでいてもよく、別途スラッジの処理等をしなくても良いので好ましい。即ち、コークス炉で石炭を乾留する際に副生するコールタールにスラッジが含まれ、このスラッジは殆ど石炭であり、これが石炭中に混じっても何らコークスに悪影響を与えるものではない。このため、コールタールを加熱蒸留した残渣物をそのまま利用することが出来ることから、該コールタールにスラッジが含まれていても製造上では何ら差し支えない。
【0014】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
本例の結合剤は図3に示した設備を用いて製造したものであり、この製造設備を以下に説明する。
加圧脱水槽1において原料コールタール2を加圧脱水して含有水分の一部を除去し、高沸点タール熱交換器5でフラッシュ蒸留塔4より抜き取られた高沸点タール3(低沸点物を分離・排出した残渣物)と熱交換し、更にコールタール加熱器6において水蒸気7で加熱された後、フラッシュ蒸留塔4のチムニートレイ8に導入する。
【0015】
このフラッシュ蒸留塔4は、コールタールを溜めることの出来るチムニートレイ8を有し、温度150℃で、真空ポンプ10で15kPaの減圧状態に保っている。
チムニートレイ8に溜まったコールタールは低沸点油の蒸発により装入温度より低下するのを防止するため、塔下部からの水蒸気7を供給し加熱され、棚段9を流下する間に低沸点油の残りと軽質油の一部が蒸発分離されて、高沸点タール(残渣物)3となり回収される。一方、低沸点油及び軽質油はフラッシュ蒸留塔4の上部より真空ポンプ10を介して搬出する。また、使用した前記原料コールタール2の組成中にはタール軽油、カルボル油、ナフタリン油、洗浄油、クレオソート油、ピレン、ピッチ、スラッジ、水分等が含有されていた。
【0016】
コークス炉に装入する装入炭は粗粒炭(100μm以上)84質量%と造粒炭16質量%を混合して用いた。更に、造粒炭は、微粉炭(100μm以下)をパドルミキサで加熱して水分が4%で、温度が60℃にし、これに結合剤を混合して造粒した例である。
【0017】
また、臭気強度は6段階臭気強度表示法に基づくものであり、0は無臭、1はやっと感知できるにおい(検知閾値濃度)、2は何の臭いであるかが判る弱いにおい(認知閾値濃度)、3はらくに感知できるにおい、4は強いにおい、5は強烈なにおいである。
【0018】
本発明の実施例、比較例、従来例の結合剤成分,特性およびコークス炉での操業結果について表1にしめす。
【0019】
【表1】
Figure 0003993812
【0020】
本発明例1〜4においては、結合剤の低沸点油(タール軽油、カルボル油、ナフタリン油、洗浄油)及び該低沸点油と軽質油(クレオソート油、ピレン)の合計量のいずれも本発明範囲内とする事により、臭気強度が2以下で作業環境も良く、しかも、粘度も145cp以下と良好で取り扱い易く、気孔率:55%以下,DI強度:85以上の良好なコークスを得る事が出来た。
【0021】
これに対し比較例1は、低沸点油が本発明の範囲内であることから悪臭は殆どなかったが、低沸点油と軽質油の合計量が本発明の上限を越えたので、気孔率,強度とも悪いコークスとなった。また、比較例2、3は低沸点油が本発明の上限を超えたので悪臭があり、しかも、比較例1と同様に低沸点油と軽質油の合計量が本発明の上限を越えたので、気孔率、強度とも悪いコークスとなった。比較例4は低沸点油が本発明の範囲内であることから悪臭は殆どなかったが、低沸点油と軽質油の合計量が本発明の下限を下回ったので、粘性が高くなり、充分な結合剤の働きを発揮出来なく強度の悪いコークスとなった。
【0022】
更に、従来例1の結合剤は生タール(コールタール)であり、粘性が低く混練は容易であるが、結合剤として有効なピッチの比率が低い上、低沸点油成分が多く、悪臭があり、気孔率、強度とも悪いコークスであった。また、従来例2は結合剤として石炭ピッチを用いた例であり、低沸点油成分がないため悪臭がないが、粘度が非常に高く、強度の低い(悪い)コークスであった。
【0023】
【発明の効果】
本発明の結合剤によれば、悪臭の発生が殆どなく、粘性も低いことから、作業環境及び作業性が良好となり、そして、得られコークスの品質も良好となる。また、スラッジを含んだままの使用できることから、製造に際して無駄な工程がなく合理的で、省エネの効果もある等、この分野における効果は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の低沸点油の含有量と臭気強度の関係を示す図
【図2】本発明の低沸点油と軽質油の合計含有量と粘性の関係を示す図
【図3】原料コールタールから結合剤を製造する簡略設備図
【符号の説明】
1 加圧脱水槽
2 原料コールタール
3 高沸点タール(残渣物)
4 フラッシュ蒸留塔
5 高沸点タール熱交換器
6 コールタール加熱器
7 水蒸気
8 チムニートレイ
9 棚段
10 真空ポンプ

Claims (3)

  1. コークス炉に装入した石炭を乾留することにより副生するコールタールを加熱蒸留して得た前記装入石炭への添加用結合剤であって、
    フタリン油、洗浄油からなる低沸点油と、クレオソート油と、ピレンと、コールタールを加熱蒸留した残渣物とからなり、
    前記低沸点油が10質量%以下で、かつ、該低沸点油とクレオソート油、ピレンの合計が15〜25質量%であることを特徴とする、コークス炉装入石炭添加用の結合剤。
  2. 前記コールタール中のスラッジを含有することを特徴とする、請求項1記載のコークス炉装入石炭添加用の結合剤。
  3. 前記蒸留は、150℃に加熱し、15kPaの減圧状態で行われることを特徴とする、請求項1又は2に記載のコークス炉装入石炭添加用の結合剤。
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