JP3989585B2 - 手術針の不動態化方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明が関係する技術分野は手術針であり、より特に手術針を不動態化する方法である。
【0002】
【発明の背景】
手術針は典型的には、針が製造後に且つ使用前および使用中に周囲環境条件に露呈される時に腐食しない種々の等級の金属鋼合金から製造されている。金属合金は典型的には300〜400シリーズのステンレス鋼並びに例えば420、420F、455などの如き他の一般的な合金を含む。さらに、例えば引用することにより方法の内容となる米国特許第5,000,912号に開示されているようなニッケルおよびチタンを含有するマルテンサイトステンレス鋼合金も有用である。手術針および手術針の製造方法は引用することにより方法の内容となる共通して譲渡されている同時に出願継続中の米国特許出願番号08/405,554および08/429,446に開示されている。そのような金属合金から製造される手術針を耐腐食性にするためには、針の外表面を不動態化することが知られている。
【0003】
「不動態化」という語は一般的には金属表面を処理して表面上に均一な薄い酸化物層を与える方法を意味すると定義される。この酸化物層は気体−不透過性表面として作用することにより下にある金属表面を腐食から保護する。ステンレス鋼合金および他の一般的な金属合金を不動態化するための種々の化学的および電気化学的方法を含む多数の既知の一般的な方法がある。
【0004】
手術針は現在ではそのような一般的な不動態化方法を使用して不動態化されている。最も典型的に使用されている一般的な不動態化方法は化学的不動態化方法および電気化学的不動態化方法である。化学的不動態化方法は手術針の表面を酸化するために酸と水性塩との種々の混合物を使用し、それにより酸化された層を形成しそして針を不動態化する。例えば、典型的に使用されている化学的不動態化混合物は水浴中に硫酸および二クロム酸カリウムをまたは水浴中にHNO3を含有するであろう。水浴は好適には室温に保たれるが、他の温度を使用することもできる。しばしば使用される別のタイプの不動態化方法は、以上に記載されているように、電気化学的不動態化方法である。電気化学的不動態化方法では、針を化学浴の中に入れそして電流を浴の中に通す。約3ボルト〜約40ボルトの範囲内の電圧および約5アンペア〜約175アンペアの範囲内の高いアンペア数がそのような方法において典型的に使用される。
【0005】
現存する電気化学的および化学的不動態化方法は適度に不動態化された表面を生成するが、これらの方法の使用にはある種の欠点が伴われる。これらの方法は化学蒸気および有害な廃棄物を発生する化学浴の使用を必要とする。化学浴は限られた寿命を有しておりそしてかなりの費用をかけて廃棄しなければならない。さらに、化学的または電気化学的不動態化浴に必要なタイプの化学物質の使用にはそれに伴う安全上の危険性があり、それは絶えず監視しなければならない。また、電気化学的方法は相対的に高い電圧およびアンペア数を使用しそしてここでも操作員を保護するためにかなりの安全上の注意を払わなければならない。
【0006】
従ってこの技術においては化学的または電気化学的方法を使用せずに金属合金手術針および手術器具の表面を不動態化する新規な方法に関して要望がある。
【0007】
【発明の開示】
本発明の一つの目的は化学浴を使用せずに金属合金手術針および手術器具の表面を不動態化する方法を提供することである。
【0008】
本発明のさらに別の目的は電気化学浴を使用せずに金属合金手術針および手術器具の表面を不動態化する方法を提供することである。
【0009】
本発明のさらに別の目的は針または器具中に電流を通す必要のない金属合金手術針または手術器具の表面を不動態化する方法を提供することである。
【0010】
従って、金属合金手術針または手術器具を不動態化する方法が開示される。金属手術器具または手術針は外表面を有する。金属手術針または手術金属の外表面を気体状プラズマに針または器具の外表面を効果的に不動態化するのに十分な時間にわたり十分な温度において露呈する。針または手術器具は1つもしくはそれ以上の内表面も有しているかもしれず、それらも不動態化されるかもしれない。
【0011】
本発明の金属合金手術針または手術器具の新規な不動態化方法は多くの利点を有する。化学浴および電気化学浴が必要ないため、これらの化学浴の使用に伴う環境上の危険性が排除される。さらに、手術器具および手術針の外表面を不動態化するために使用される気体状プラズマは各工程後に再捕獲されそして再循環される。本発明のさらに別の利点は針の中に電流を通す必要性およびそれに伴う安全上の危険性が排除されることである。
【0012】
本発明の上記のおよび他の特徴および利点は以下の記述および添付図面からさらに明らかになるであろう。
【0013】
【発明を実施するための最良方法】
本発明のプラズマ用に使用できる気体には酸素、ヘリウム、四弗化炭素、窒素、アルゴンなど並びにそれらの混合物およびそれらの同等物が包含される。酸素または例えば酸素、ヘリウムおよび四弗化炭素の如き気体の混合物を使用することが好ましい。酸素、ヘリウムおよび四弗化炭素の混合物を使用する時には、有効なプラズマ混合物を与えるのに十分な量の各成分が使用されるであろう。典型的には約50%〜約99%、より典型的には約60%〜約99%、そして好適には約70%〜約99%の酸素がそのような混合物中で使用されるであろう。そのような混合物中で使用されるヘリウムの典型的な量は典型的には約1%〜約50%、より典型的には約10%〜約40%、そして好適には約10%〜約30%であろう。好適な混合物中で使用される四弗化炭素の量は典型的には約1%〜約40%、より典型的には約15%〜約35%、そして好適には約10%〜約30%であろう。ここで使用される百分率は重量百分率である。プラズマを生成するために酸素、または酸素およびヘリウムの混合物、または酸素および四塩化炭素の混合物を使用することが特に好ましい。酸素およびヘリウムの混合物を使用する時には、約50%〜約80%、好適には約80%の酸素が使用され、そして約10%〜約50%、好適には約20%のヘリウムが使用される。酸素および四塩化炭素の混合物を使用する時には、約50%〜約80%、好適には約80%の酸素が使用され、そして約10%〜約50%、好適には約20%の四塩化炭素が使用される。
【0014】
一般的なプラズマ処理法装置が本発明の方法において典型的に使用される。プラズマ装置は典型的には圧力および真空の両者に耐えられる大容量の室を有しているであろう。その室内に少なくとも1つの電極が設置されるであろう。好適な装置はカリフォルニア州、サンノゼのガソニックス(Gasonics)/IPLにより製造されたガソニックス(Gasonics)Rプラズマ装置であるが、いずれの一般的なまたは同等な気体プラズマ装置でも使用することができる。気体状混合物または気体をこれらの装置中でプラズマ状態を効果的に誘導するのに十分な例えば高周波(Radio Frequency)電磁波、マイクロ波などの如き電磁エネルギーに露呈することによりそれらの気体をプラズマ状態まで高める。しかしながら、直流、レーザーエネルギー、それらの同等物などを含む気体をプラズマ状態に励起する他の手段を利用してもよい。所望するなら、針または手術器具を一般的なプラズマトーチに露呈することもできる。
【0015】
プラズマ状態を効果的に生成するのに十分な電磁エネルギーが気体に適用されるであろう。典型的には使用されるエネルギーの量は約250W(0.12ワット/M2)〜約2500ワット(1.2ワット/M2)、より典型的には約300ワット(.014ワット/M2)〜約1000ワット(0.46ワット/M2)、そして好適には約400ワット(0.18ワット/M2)〜約900ワット(0.42ワット/M2)であろう。もちろん、当技術の専門家は使用されるエネルギーの量が気体流、気体タイプ、電極面積、および真空などを含む工程パラメーター並びにプラズマ装置のタイプ、寸法、条件および配置に応じて変動するであろうことを認識するであろう。
【0016】
気体はプラズマ処理法装置中にプラズマを生成するのに十分な量の流速で流入するであろう。処理装置の室は処理しようとする針または器具を効果的に含有するのに十分な容量を有しているであろう。これらのパラメーターは工程の特定パラメーターに応じて変動するであろうしそしてそれらは当技術の専門家により容易に決められる。
【0017】
本発明の不動態化方法用に典型的な工程系統図は図1に示されているが、当技術の専門家は種々の段階を除いてもまたは本発明の方法に加えてもよいことを認識するであろう。図1に示されているように、そのような方法の最初の段階は針または手術器具10をプラズマ処理装置20の室25中に充填することである。次に、空気を室から効果的に除去しそしてプラズマを加えるのに十分な真空を生ずるのに十分となるように室25を真空30で引っ張る。典型的には、真空は約.25〜約1トール、より典型的には約0.25〜約0.75トール、そして好適には約0.3〜約0.5トールであろうが、これは使用されるプラズマ装置のタイプおよび配置により変動するであろう。次に、気体プラズマ50を効果的に生成するのに十分な量の気体40が室25中に存在するように、選択された気体または気体混合物40が室25に充填される。典型的には使用される気体流40の量は約50〜約500cc/分、より典型的には約100〜約500cc/分、そして好適には約200〜約500cc/分であろうが、これは使用されるプラズマ装置のタイプおよび配置により変動するであろう。次に、気体プラズマ装置に電力をスイッチオンしそれによりエネルギー源60を活性化させ且つプラズマ50を生成可能にし、そして針または手術器具10を気体プラズマ50に針または手術器具10の外表面上で効果的な不動態化を効果的に生ずるのに十分な時間にわたり露呈する。典型的には、プラズマサイクル時間は約10〜約60分間、より典型的には約20〜約40分間、そして好適には約30〜約45分間であるが、これは工程サイクル、工程パラメーター、並びに使用されるプラズマ装置のタイプおよび配置により変動するであろう。次に、気体40が排気口80から除去されそして室25に不活性気体70、例えば窒素、が逆充填され、そして針または器具を効果的に冷すのに十分な圧力に十分な時間量にわたり保たれる。例えば、針または器具10は冷却段階において約3〜約10分間、より典型的には約3〜約7分間、そして好適には約3〜約5分間にわたり保たれる。不活性気体圧力は、例えば、約0.05トール〜約1.0トールであろう。最後に、不動態化された針または器具10が気体プラズマ装置20の室25から除去される。気体40は排気口80から除去されそしてこの方法における使用のために再循環されてもよい。
【0018】
本発明のプラズマ処理不動態化方法により製造される酸化物層は下にある金属を腐食から効果的に保護するのに十分な厚さであろう。典型的には、酸化物層は一般的な厚さ、例えば1原子の厚さ、であろう。
【0019】
本発明の方法を使用して不動態化することができる手術針には、先が尖ったまたは丸い貫通点および縫合糸装着端部を有する一般的な手術針のいずれでも包含される。縫合糸装着端部は縫合糸を受けるための溝または出口のない穴を有していてもよい。本発明の方法を使用して不動態化することができる手術器具には、一般的な器具またはその部品、例えば針つかみ、はさみ、鉗子、メス、カテーテル、切断器具、クランプ、鋸子などが包含される。ここで使用される手術器具という語は手術器具の金属部分を含むと定義される。針および手術器具は典型的には本発明の方法を使用して不動態化される外表面を有しているであろうが、これも不動態化されるかもしれない内表面を有していてもよい。
【0020】
下記の実施例は本発明の原則および実施を説明する。
【0021】
【実施例】
420ステンレス鋼金属合金製の約3000本の手術針をガソニックス(Gasonics)Rプラズマ装置の室内に入れた。この室は約4ft3の容量を有していた。室への扉を密封しそして室を約0.15トールの真空下で約1分間にわたり真空にして揮発分および不純物を排除した。この室に次に50cc/分の酸素および50cc/分のヘリウムの混合物を約0.3〜約0.5トールの圧力となるまで逆充填した。電力をスイッチオンする前に気体状混合物を室内で約2分間保った。次に、装置に電力をスイッチオンしそして約500ワットの電力水準に保たれている生じた気体状プラズマに針を約30分間にわたり露呈した。次に、電力をスイッチオフしそして気体状混合物を室から排除した。次に、室に窒素を充填しそして針が取り扱うのに十分なほど冷えるまで約1.0トールの圧力に約3−5分間にわたり保った。針を次に気体プラズマ装置の室から除去した。検査すると、針の表面は不動態化されておりそして針は一般的な厚さの均一な酸化物コーテイングを有していた。
【0022】
金属合金手術針および手術器具の表面を不動態化するための本発明の方法は多くの利点を有する。驚くべきことに且つ予期せぬことに、化学浴または電気化学浴を使用せずにしかもそれらに付随する蒸気、発光および有害な廃棄物流を発生しない調節された方法で金属合金手術針および手術器具の表面を不動態化することが今回可能になった。本発明のプラズマ法を使用すると、気体状プラズマ剤を再循環することもできる。さらに、針を不動態化するための高アンペア数の使用が排除される。本発明のさらに別の利点は本発明の気体プラズマ法で処理された針は化学的または電気化学的方法の特徴的欠点である金属の除去を受けないことである。本発明の方法のさらに他の利点はそれが先行技術の従来の不動態化方法より意義あるほど経済的であり且つ費用効果的であることである。本発明の方法は従来の不動態化方法に伴う安全問題も排除する。
【0023】
本発明をその詳細な態様に関して示しそして記載してきたが、当技術の専門家には特許請求されている発明の精神および範囲から逸脱しない限りその形態および詳細における種々の変更を行えるということが理解されよう。
【0024】
本発明の主なる特徴および態様は以下のとおりである。
【0025】
1.外表面を有する金属製手術針を気体状プラズマに針の外表面を効果的に不動態化するのに十分な時間にわたり十分な温度において露呈することを含んでなる、金属製手術針の表面を不動態化する方法。
【0026】
2.気体状プラズマが酸素およびヘリウムおよび四弗化炭素の混合物を含んでなる、上記1の方法。
【0027】
3.気体状プラズマが酸素、アルゴンおよび四弗化炭素の混合物を含んでなる、上記1の方法。
【0028】
4.プラズマ混合物が約50重量%〜約99重量%の酸素および約1重量%〜約50重量%のヘリウムおよび約1重量%〜約40重量%の四弗化炭素を含んでなる、上記1の方法。
【0029】
5.金属製針がT−420ステンレス鋼、T−420Fステンレス鋼、T−455ステンレス鋼、およびチタンニッケルマルテンサイトステンレス鋼合金よりなる群から選択される合金を含んでなる、上記1の方法。
【0030】
6.気体状プラズマがエネルギー源により励起され、ここで該エネルギー源が高周波、マイクロ波および直流放電よりなる群から選択される一員を含んでなる、上記1の方法。
【0031】
7.プラズマが酸素を含んでなる、上記1の方法。
【0032】
8.プラズマが酸素およびヘリウムの混合物を含んでなる、上記1の方法。
【0033】
9.混合物が酸素および四塩化炭素の混合物を含んでなる、上記1の方法。
【0034】
10.外表面を有する金属製手術器具を気体状プラズマに器具の外表面を効果的に不動態化するのに十分な時間にわたり十分な温度において露呈することを含んでなる、金属製手術器具の表面を不動態化する方法。
【0035】
11.気体状プラズマが酸素およびヘリウムおよび四弗化炭素の混合物を含んでなる、上記10の方法。
【0036】
12.気体状プラズマが酸素およびアルゴンおよび四弗化炭素の混合物を含んでなる、上記10の方法。
【0037】
13.プラズマ混合物が約50重量%〜約99重量%の酸素および約1重量%〜約50重量%のヘリウムおよび約1重量%〜約40重量%の四弗化炭素を含んでなる、上記10の方法。
【0038】
14.金属製器具がT−420ステンレス鋼、T−420Fステンレス鋼、T−455ステンレス鋼、およびチタンニッケルマルテンサイトステンレス鋼合金よりなる群から選択される合金を含んでなる、上記10の方法。
【0039】
15.気体状プラズマがエネルギー源により励起され、ここで該エネルギー源が高周波、マイクロ波および直流放電よりなる群から選択される一員を含んでなる、上記10の方法。
【0040】
16.プラズマが酸素を含んでなる、上記10の方法。
【0041】
17.プラズマが酸素およびヘリウムの混合物を含んでなる、上記10の方法。
【0042】
18.混合物が酸素および四塩化炭素の混合物を含んでなる、上記10の方法。
【0043】
19.針がさらに内表面を含んでなりそして内表面も不動態化される、上記1の方法。
【0044】
20.器具がさらに内表面を含んでなりそして内表面も不動態化される、上記10の方法。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の不動態化方法の工程系統図を示す。

Claims (2)

  1. 外表面を有する金属製手術針を気体状プラズマに針の外表面を効果的に不動態化するのに十分な時間にわたり十分な温度において露呈することを含み、プラズマ混合物が酸素および1重量%〜50重量%のヘリウムおよび1重量%〜40重量%の四弗化炭素を含んでおり、気体状プラズマが電磁エネルギー源により励起されることを特徴とする、金属製手術針の表面を不動態化する方法。
  2. 外表面を有する金属製手術器具を気体状プラズマに器具の外表面を効果的に不動態化するのに十分な時間にわたり十分な温度において露呈することを含み、プラズマ混合物が酸素および1重量%〜50重量%のヘリウムおよび1重量%〜40重量%の四弗化炭素を含んでおり、気体状プラズマが電磁エネルギー源により励起されることを特徴とする、金属製手術器具の表面を不動態化する方法。
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