JP3988669B2 - 車体部材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車体部材の製造方法に関し、特に窒化処理を施した鋼板を用いて高強度化を図るようにしたものの技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車の衝突安全性の向上化及び車体軽量化の観点より、車体用板材として高強度鋼板が使用されてきている。この高強度鋼板としては、通常、プレス成形性を良好に維持するために、引張強度が440MPa程度のものが使用されるが、最近では、プレス成形性(延性)を改善した590MPa材も使用されつつある。
【0003】
ところが、上記590MPa材では、プレス成形性は改善されるものの、強度(硬さ)が非常に高いことから、プレス能力を高める必要があるとともに、スプリングバック等の生産上の問題が生じる。また、従来の鋳鉄製では型寿命が短くなるので、工具鋼を使用し、さらには、その表面に耐摩耗性を改善するためにTiC処理等の表面処理をしなければならなくなる。また、更に高強度な鋼板を使用すると、複雑な形状の成形が困難になるとともに、型の高強度化及び表面処理が必須となり、多大な設備投資が必要となる。
【0004】
そこで、例えば特許文献1,2に示されているように、成形性に優れた窒化処理用の軟鋼板(引張強度280MPa程度)をプレス成形した後に、窒化処理することで、プレス成形性と高強度化とを両立するようにすることが考えられる。すなわち、このように軟鋼板を窒化処理すると、鋼板の硬さがビッカース硬さでHv200〜Hv400と高硬度になり、これにより、引張強度を600〜1000MPa相当に高強度化することができる。
【0005】
また、特許文献3には、自動車の車体部材を製造する方法として、鋼板をプレス成形した後、窒化処理し、しかる後に、その鋼板を他の板材と溶接し、次いで、それを塗装して乾燥することが開示されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−279686号公報
【0007】
【特許文献2】
特開2002−20853号公報
【0008】
【特許文献3】
特開2002−18868号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記窒化処理鋼板は、硬くなりすぎて延性が比較的低くなるために、割れが生じ易いという問題がある。特に、上記特許文献3のように、窒化処理鋼板を溶接(スポット溶接)すると、その窒化処理鋼板において、ナゲット(溶融接合部)に隣接する部分には、溶接時の熱により約700℃以上の温度となって焼入れされることで高強度化された熱影響部(以下、HAZ部(Heat Affected Zoneの略)という)が形成され、そのHAZ部の外周囲には、300℃以上でかつA1変態点以下の温度となって窒素が再固溶することで高強度化された再加熱部が形成されるが、この再加熱部で、非常に割れが生じ易くなる。
【0010】
一方、自動車の車体部材は、上記特許文献3のように、溶接後に塗装されて、その塗装の塗膜を乾燥させるために、通常、140℃〜190℃程度(シーラ乾燥を含めると100℃〜190℃程度)に加熱される。この加熱を利用すれば、窒化処理鋼板が焼戻しされることで、特に上記再加熱部と、HAZ部及び再加熱部以外の部分とにおいて、FeNの析出により軟化して延性が増し、再加熱部での割れを抑制することができるようになる。
【0011】
しかし、上記のように塗装乾燥熱を利用して窒化処理鋼板を焼戻す方法では、車体部材が塗装及び乾燥されるまでの間は、再加熱部が割れ易い状態にあるため、塗装工程ないし乾燥工程への搬送途中で割れが生じる可能性がある。しかも、車体部材の塗装及び乾燥は、通常、車体として組み立てられた状態で行われるため、車体部材が車体のどの位置に配置されるものであるかによって加熱温度が異なり、このため、その配置位置によって強度がばらついてしまう。すなわち、窒化処理鋼板の硬さは、加熱温度が100℃〜200℃の範囲では、加熱温度が高くなるに連れて低下するので、加熱温度が異なると、窒化処理鋼板の硬さがばらついて、安定した強度を確保することが困難になる。この結果、車体部材が、例えば衝突部材(フレーム部材)のような変形モードをコントロールするものである場合には、目的の変形モードを達成することが困難になる。
【0012】
そこで、溶接工程後でかつ塗装工程前に、窒化処理鋼板に対して、100℃〜190℃のうちの一定温度で焼戻しを行うようにすることが考えられる。こうすれば、塗装工程ないし乾燥工程前における再加熱部での割れを抑制することができるとともに、窒化処理鋼板の硬さ、つまり強度を安定させることができるようになる。
【0013】
しかしながら、上記窒化処理鋼板の焼戻しを、塗装乾燥時よりも低い温度で行った場合には、塗装乾燥時に強度が変化してしまう。また、たとえ塗装乾燥時よりも高い温度で焼戻しを行うようにしたとしても、或る程度の温度ばらつきが生じ、上記したように、窒化処理鋼板の加熱温度が100℃〜200℃の範囲では、温度変化に対する硬さの変化量が比較的大きいので、上記温度ばらつきによって強度が変化してしまう。
【0014】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上記のように窒化処理鋼板を用いて車体部材を製造する場合に、塗装工程ないし乾燥工程前に窒化処理鋼板が割れるのを抑制するとともに、乾燥工程後における窒化処理鋼板の強度品質を安定させようとすることにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、この発明では、溶接工程後でかつ塗装工程前に、窒化処理鋼板の窒化処理部分における溶接部ないしその周囲の、溶接時に窒素が再固溶した再加熱部を含む部分を、200℃を越え250℃以下の温度で焼戻すようにした。
【0016】
具体的には、請求項1の発明では、鋼板を塑性加工する塑性加工工程と、上記塑性加工を施した鋼板の少なくとも一部を窒化処理する窒化処理工程と、上記鋼板の窒化処理部分と他の板材とを溶接して、車体の少なくとも一部を構成する車体部材を作製する溶接工程と、上記車体部材の少なくとも一部を塗装する塗装工程と、上記車体部材の少なくとも塗装部分を、190℃以下の温度に加熱することにより、該塗装部分の塗膜を乾燥させる乾燥工程とを含む車体部材の製造方法を対象とする。
【0017】
そして、上記溶接工程後でかつ塗装工程前に、上記鋼板の窒化処理部分における上記溶接部ないしその周囲の、上記溶接時に窒素が再固溶した再加熱部を含む部分を、200℃を越え250℃以下の温度で焼戻す焼戻し工程を備えるようにする。
【0018】
このことにより、塗装工程ないし乾燥工程前に窒化処理鋼板が割れるのを抑制することができるとともに、乾燥工程後における窒化処理鋼板の強度品質を安定させることができる。すなわち、窒化処理鋼板の硬さは、加熱温度が200℃を越え250℃以下の範囲では、加熱温度が高くなるに連れて上昇するが、その温度変化に対する硬さの変化量はかなり小さくて硬さ自体も十分に小さいので、この温度範囲内で焼戻しを行えば、窒化処理部分が十分に軟化されて延性が増し、再加熱部での割れを抑制することができるとともに、この温度範囲内で焼戻し温度が或る程度ばらついたとしても、窒化処理部分の硬さのばらつき量は比較的小さくなる。さらに、この焼戻し後に、塗装及び乾燥を行って窒化処理鋼板が加熱されても、この乾燥温度は、焼戻し温度よりも低いので、窒化処理部分の硬さに何ら影響を及ぼさず、焼戻し工程時の硬さが維持される。この結果、乾燥工程後において、安定した強度が得られることになる。
【0019】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、焼戻し工程において、鋼板の窒化処理部分における溶接部ないしその周囲の再加熱部を含む部分のみを焼戻すようにする。
【0020】
また、請求項3の発明では、請求項2の発明において、溶接工程は、鋼板の窒化処理部分と他の板材とをスポット溶接して車体部材を作製する工程であり、焼戻し工程において、上記鋼板の窒化処理部分における上記スポット溶接部ないしその周囲の再加熱部を含む部分のみを焼戻すようにする。
【0021】
これらの発明により、特に割れが生じ易い再加熱部の焼戻しを確実に行うようにすることができるとともに、再加熱部を設定温度に精度良く加熱することができ、より一層安定した強度が得られるようになる。
【0022】
請求項4の発明では、請求項1〜3のいずれか1つの発明において、車体部材は、自動車用車体フレーム部材であるものとする。
【0023】
すなわち、フレーム部材では、変形モードをコントロールする必要があるので、強度がばらつくと、目的の変形モードを達成することが困難になる。しかし、この発明では、安定した強度が得られので、目的の変形モードを確実に達成することができ、請求項1〜3の発明の作用効果を有効に発揮させることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る車体部材の製造方法を示す工程図であり、最初のステップS1では、鋼板(この実施形態では、引張強度が280MPaの軟鋼板)をプレスにより塑性加工する(塑性加工工程)。
【0026】
次のステップS2では、上記塑性加工を施した鋼板の一部(強度を必要とする所定部分)を窒化処理する(窒化処理工程)。この窒化処理は、処理時間が比較的短い軟窒化(例えばガス軟窒化や塩浴窒化等)が好ましいが、この軟窒化に限定はされない。また、上記塑性加工を施した鋼板全体を窒化処理するようにしてもよい。
【0027】
次のステップS3では、上記窒化処理鋼板の窒化処理部分と他の板材(例えば軟鋼板(別の窒化処理鋼板であってもよい))とをスポット溶接して、自動車の車体の一部を構成する車体部材(例えば自動車用車体フレーム部材等のサブアセンブリ)を作製する(溶接工程)。尚、この段階で、車体部材が車体全体を構成するようにしてもよい。また、スポット溶接に限らず、レーザ溶接等を行ってもよい。
【0028】
図2に示すように、上記スポット溶接により、窒化処理鋼板1において、溶融接合部であるナゲット2に隣接する部分には、溶接時の熱により約700℃以上の温度となって焼入れされることで高強度化されたHAZ部3が形成され、そのHAZ部3の外周囲には、300℃以上でかつA1変態点以下の温度となって窒素が再固溶することで高強度化された再加熱部4が形成される。尚、図2中、7は、窒化処理鋼板1と溶接した上記他の板材(図2では、軟鋼板)である。
【0029】
次のステップS4では、上記窒化処理鋼板の窒化処理部分を、200℃を越え250℃以下の温度で焼戻す(焼戻し工程)。この焼戻しは、窒化処理鋼板全体を炉内で加熱することで、窒化処理部分全体に対して行ってもよいが、窒化処理部分の一部のみ、具体的には、上記窒化処理鋼板の窒化処理部分における上記スポット溶接部ないしその周囲(少なくとも上記再加熱部が含まれる部分)のみに対して行うことが好ましい。こうすると、特に割れが生じ易い再加熱部の焼戻しを確実に行うようにすることができるとともに、再加熱部を設定温度に精度良く加熱することができる。このように窒化処理部分の一部のみを焼戻す場合には、例えば高周波加熱等により行えばよい。
【0030】
次のステップS5では、上記車体部材全体を塗装する(塗装工程)。この塗装は、本実施形態では、上記ステップS1〜S4の工程を経た複数の車体部材(サブアセンブリ)を組み立てて車体を完成させた後に該車体全体で行う。すなわち、車体全体を電着液に浸漬させて電着塗装を行う。
【0031】
次のステップS6では、上記車体全体を190℃以下の温度に加熱することにより、上記電着塗装の塗膜を乾燥させる(乾燥工程)。
【0032】
上記乾燥工程の後、図1では工程を省略しているが、車体に車体シーラを塗布して、その車体シーラを乾燥させ、続いて、中塗塗装を行って、その中塗塗装の塗膜を乾燥させ、次いで、上塗塗装を行って、その上塗塗装の塗膜を乾燥させる。上記電着塗装、車体シーラ、中塗塗装及び上塗塗装の各乾燥時に、車体は、100℃以上190℃以下(車体シーラの乾燥を除くと、140℃以上190度以下)に加熱されることになる。
【0033】
尚、上記塗装及び乾燥は、必ずしも車体全体で行う必要はなく、サブアセンブリ状態にある車体部材で行ってもよい。その際、その車体部材全体を塗装し乾燥させてもよく、車体部材の一部を塗装し、少なくともその塗装部分(本発明の作用効果を発揮させるためには、窒化処理鋼板の窒化処理部分(特にスポット溶接部ないしその周囲)を含むことが望ましい)を乾燥させるようにしてもよい。
【0034】
ここで、上記窒化処理鋼板の加熱温度と硬さ(つまり強度)との関係を、図3に示す。この窒化処理鋼板は、極低炭素鋼板でTiが0.07%含有されたものを塩浴窒化処理(タフライド:580℃×1.5hで油冷)したものである。
【0035】
同図から判るように、窒化処理鋼板は、加熱(300℃以下)されると、基地中に固溶していた窒素が窒化鉄(FeN)として析出し、これにより軟化する。具体的には、100℃よりも小さい温度では、殆ど軟化しないが、100℃以上になると、200℃付近まで比較的大きな勾配で硬さが低下し、200℃を越えると、250℃までは硬さが若干上昇するが、250℃を越えると、300℃まで、再び大きな勾配(100℃を越え200℃付近までの勾配と略同じ勾配)で低下する。尚、複数回加熱(300℃以下)されたときには、最大加熱時の硬さになる。つまり、今回の加熱温度が前回よりも高いときには、今回の加熱温度に相当する硬さになり、今回の加熱温度が前回よりも低いときには、前回の加熱温度に相当する硬さを維持する。
【0036】
一方、300℃を越えると、上記析出した窒素が再固溶し、これにより、加熱温度が高くなるに連れて硬さが上昇する。上記再加熱部は、このように窒素が再固溶した状態にあると考えられる。そして、この状態から上記300℃以下に加熱されると、窒素が窒化鉄として析出して、その加熱温度に応じた硬さとなる。
【0037】
仮に、上記焼戻し工程をなくした場合、上記溶接工程後に、塗装工程及び乾燥工程(車体シーラの乾燥等を含む)を行うことにより、窒化処理鋼板が、100℃以上190℃以下に加熱されるので、この乾燥工程で上記焼戻し工程と同様の焼戻しが行われ、窒化処理鋼板の硬さを低下させることができる。ここで、図4は、上記溶接工程後において焼戻し工程をなくした場合の塗装乾燥前後における、ナゲット端からの距離x(図2参照)と窒化処理鋼板内部の硬さとの関係を示す。このことより、再加熱部と、HAZ部及び再加熱部以外の部分とにおいて、塗装乾燥後に硬さが低下していることが判る。
【0038】
ところが、上記焼戻し工程をなくした場合、塗装工程ないし乾燥工程への搬送途中で窒化処理鋼板が割れる可能性があるとともに、上記乾燥工程においては、車体部材が車体のどの位置に配置されるものであるかによって加熱温度が異なり、その加熱温度が100℃〜190℃の範囲では、上記した窒化処理鋼板の加熱温度と硬さとの関係より、特に再加熱部の硬さ(つまり強度)が非常に大きくばらついてしまう(図4の塗装乾燥後の硬さ参照)。このような強度のばらつきがあると、車体部材がフレーム部材(フロントフレームやセンターピラー等)のように変形モードをコントロールするものである場合には、目的の変形モードを達成することが困難になる。
【0039】
また、上記焼戻し工程における焼戻し温度を、上記乾燥工程における加熱温度と同じ100℃〜190℃のうちの一定温度で焼戻しを行うようにすることが考えられる。しかし、このようにしても、塗装工程ないし乾燥工程前における再加熱部での割れを抑制することはできるものの、窒化処理鋼板の焼戻しを、塗装乾燥時よりも低い温度で行った場合には、乾燥工程で強度が変化してしまう。
【0040】
実際に、窒化処理後の硬さがHv330である窒化処理鋼板に対して100℃で焼戻しを行った結果、硬さはHv325となり、これが、140℃の塗装乾燥後にはHv300と低下した。また、上記窒化処理鋼板に対して140℃で焼戻しを行った結果、硬さはHv300となり、これが、140℃の塗装乾燥後にはHv295となってそれ程変化しなかったが、180℃の塗装乾燥後にはHv265と低下した。さらに、上記窒化処理鋼板に対して140℃で焼戻しを行った結果、硬さはHv265となり、これが、180℃の塗装乾燥後にはHv263となって殆ど変化しなかった。
【0041】
そして、たとえ塗装乾燥時よりも高い温度で焼戻しを行うようにしたとしても、或る程度の温度ばらつきが生じ、上記したように、窒化処理鋼板の加熱温度が100℃〜200℃の範囲では、温度変化に対する硬さの変化量が比較的大きいので、その温度ばらつきによって強度が変化してしまう。
【0042】
これに対し、本実施形態では、溶接工程後でかつ塗装工程前に、窒化処理鋼板の窒化処理部分を、200℃を越え250℃以下の温度で焼戻すので、塗装工程ないし乾燥工程前に窒化処理鋼板が割れるのを抑制することができるとともに、乾燥工程後における窒化処理鋼板の強度品質を安定させることができる。すなわち、乾燥工程時よりも高い温度で焼戻すとともに、この温度範囲では、温度変化に対する硬さ変化量が比較的小さくて安定しているので、焼戻し温度が或る程度ばらついたとしても、窒化処理鋼板の窒化処理部分における硬さのばらつき量は比較的小さくなる。よって、この焼戻し工程後の乾燥工程では、窒化処理部分の硬さに何ら影響を及ぼさず、焼戻し工程時の硬さが維持され、この結果、安定した強度が得られることになる。
【0043】
実際に、上記した、窒化処理後の硬さがHv330である窒化処理鋼板に対して、210℃で焼戻しを行った結果、硬さはHv264となり、これが、140℃の塗装乾燥後にはHv263となって殆ど変化せず、180℃の塗装乾燥後においても、Hv262となって殆ど変化しなかった。また、上記窒化処理鋼板に対して250℃で焼戻しを行った結果、硬さはHv275となり、これが、180℃の塗装乾燥後にはHv277となって殆ど変化しなかった。
【0044】
したがって、上記実施形態では、溶接工程後でかつ塗装工程前に、鋼板の窒化処理部分を、200℃を越え250℃以下の温度で焼戻すようにしたので、塗装工程ないし乾燥工程前に窒化処理鋼板が割れるのを抑制することができるとともに、乾燥工程後における窒化処理鋼板の強度品質を安定させることができる。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると、鋼板を塑性加工する塑性加工工程、上記鋼板の少なくとも一部を窒化処理する窒化処理工程、上記鋼板の窒化処理部分と他の板材とを溶接して、車体の少なくとも一部を構成する車体部材を作製する溶接工程、上記車体部材の少なくとも一部を塗装する塗装工程、及び上記車体部材の少なくとも塗装部分を、190℃以下の温度に加熱することにより、該塗装部分の塗膜を乾燥させる乾燥工程を順に行うことで車体部材を製造する方法として、上記溶接工程後でかつ塗装工程前に、上記鋼板の窒化処理部分における上記溶接部ないしその周囲の、上記溶接時に窒素が再固溶した再加熱部を含む部分を、200℃を越え250℃以下の温度で焼戻す焼戻し工程を備えたことにより、塗装工程ないし乾燥工程前に窒化処理鋼板が割れるのを抑制することができるとともに、乾燥工程後における窒化処理鋼板の強度品質の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る車体部材の製造方法を示す工程図である。
【図2】 窒化処理鋼板のスポット溶接部を示す断面図である。
【図3】 窒化処理鋼板の加熱温度と硬さとの関係を示すグラフである。
【図4】 溶接工程後において焼戻し工程をなくした場合の塗装乾燥前後における、ナゲット端からの距離xと窒化処理鋼板内部の硬さとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 窒化処理鋼板
2 ナゲット
3 熱影響部(HAZ部)
4 再加熱部
Claims (4)
- 鋼板を塑性加工する塑性加工工程と、
上記塑性加工を施した鋼板の少なくとも一部を窒化処理する窒化処理工程と、
上記鋼板の窒化処理部分と他の板材とを溶接して、車体の少なくとも一部を構成する車体部材を作製する溶接工程と、
上記車体部材の少なくとも一部を塗装する塗装工程と、
上記車体部材の少なくとも塗装部分を、190℃以下の温度に加熱することにより、該塗装部分の塗膜を乾燥させる乾燥工程とを含む車体部材の製造方法であって、
上記溶接工程後でかつ塗装工程前に、上記鋼板の窒化処理部分における上記溶接部ないしその周囲の、上記溶接時に窒素が再固溶した再加熱部を含む部分を、200℃を越え250℃以下の温度で焼戻す焼戻し工程を備えたことを特徴とする車体部材の製造方法。 - 請求項1記載の車体部材の製造方法において、
焼戻し工程において、鋼板の窒化処理部分における溶接部ないしその周囲の再加熱部を含む部分のみを焼戻すことを特徴とする車体部材の製造方法。 - 請求項2記載の車体部材の製造方法において、
溶接工程は、鋼板の窒化処理部分と他の板材とをスポット溶接して車体部材を作製する工程であり、
焼戻し工程において、上記鋼板の窒化処理部分における上記スポット溶接部ないしその周囲の再加熱部を含む部分のみを焼戻すことを特徴とする車体部材の製造方法。 - 請求項1〜3のいずれか1つに記載の車体部材の製造方法において、
車体部材は、自動車用車体フレーム部材であることを特徴とする車体部材の製造方法。
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