JP3988531B2 - ポンプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷却水などの液体を圧送するポンプに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
液体を循環させるポンプには、その循環液の循環流路上に配置されたハウジング内に、回転軸とこれに取り付けられたインペラ(回転翼)とを備えた回転体を配置し、この回転体を電動モータ等により回転させることでハウジング内から上記循環流路内へ循環液を流すものがある。
ところで、上記のようなポンプでは、その回転体の回転軸を支持する軸受をハウジング内で液中に没した状態で使用する必要がある。このような軸受には、従来、転がり軸受やすべり軸受が用いられているが、それらの軸受構成部材に、上記循環液が水を含む場合には当該液による腐食が生じることがあり、軸受寿命、ひいてはポンプ寿命が短くなることがあった。また、セラミックス材料を用いて軸受構成部材を形成した軸受を使用することも提案されているが、上記水を含む循環液に対する耐食性や液中使用での耐摩耗性や摺動特性が十分でなく、ポンプ寿命を向上することは難しいものであった。
【0003】
上記のような従来の問題点に鑑み、本発明は、回転体を支持する軸受の耐食性や耐摩耗性などを向上することができ、よって長寿命化を図ることができるポンプを提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明のポンプは、回転軸を有し、水を含んだ液体を圧送する回転体と、前記液体を潤滑流体として前記回転体の回転軸を回転自在に支持する動圧軸受とを備え、前記動圧軸受の軸方向一端側端面と軸方向他端側端面との間に形成される軸受面と前記回転軸の前記軸受面に対向する対向部分とが回転停止時に接触するポンプであって、前記軸受面の軸方向範囲において前記対向部分の表面にダイヤモンドライクカーボン膜を当該表面から突出するように形成するとともに、前記軸受面の表面を前記液体に対する耐食性を有する金属素材からなる耐食材により構成すると共に、前記軸受面の表面に動圧発生用溝を形成したことを特徴とするものである(請求項1)。
【0005】
上記のように構成されたポンプにおける動圧軸受は、その軸受面が上記耐食材により構成されるので、当該軸受の耐食性を向上することができる。また、上記回転体の軸受面に対向する対向部分の表面にダイヤモンドライクカーボン膜を形成しているので、回転開始時などでの当該動圧軸受の回転体に対する耐摩耗性及び摺動特性を向上することができる。
【0006】
また、本発明のポンプは、回転軸を有し、水を含んだ液体を圧送する回転体と、前記液体を潤滑流体として前記回転体の回転軸を回転自在に支持する動圧軸受とを備え、前記動圧軸受の軸方向一端側端面と軸方向他端側端面との間に形成される軸受面と前記回転軸の前記軸受面に対向する対向部分とが回転停止時に接触するポンプであって、前記回転体の回転軸を回転自在に支持する前記動圧軸受が前記液体を圧送する方向に離隔して二個形成され、前記軸受面の軸方向範囲において前記対向部分の表面にダイヤモンドライクカーボン膜を当該表面から突出するように形成するとともに、前記軸受面の表面を前記液体に対する耐食性を有する金属素材からなる耐食材により構成すると共に、前記軸受面の表面に動圧発生用溝を形成したことを特徴とするものである(請求項2)。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のポンプの好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。尚、以下の説明では、水を含む液体として、水とエチレングリコールとの混合液からなる冷却水(不凍液)を流路内で循環させる軸流式のポンプを構成した場合を例示して説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るポンプの構成を示す断面図であり、図2は図1に示した動圧軸受の動圧発生部とこれに対向する回転軸の対向部分とを示す拡大断面図である。図1及び2において、本実施形態のポンプ1は、筒状のハウジング2と、このハウジング2の吸入口2a側から吐出口2b側に上記冷却水を圧送する回転体3とを備えている。ハウジング2は上記流路の途中に配置されたものであり、その吸入口2a及び吐出口2bが流路を構成する配管(図示せず)に接続されている。
【0008】
上記回転体3は、軸長の回転軸4と、この回転軸4の一端部側の外周面4aに一体回転可能に取り付けられたインペラ5とを備えており、上記回転軸4が電動モータ7により図のR方向に回転駆動されたときに、回転体3は上記吸入口2aから冷却水をハウジング2内に導入し、その冷却水を図1の矢印Fにて示すようにハウジング2内を流して、上記吐出口2bから冷却水を送り出す。
上記回転軸4及びインペラ5は、冷却水に対する耐食性に優れた金属、例えばオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304等)により構成されたものであり、回転体3として必要な強度を有している。また、回転軸4の一端部側の先端部には球状部4bが形成されており、この球状部4bがハウジング2内に固定された円盤状のピボット板6の球面座6aに接した状態で、回転体3が回転するようになっている。このピボット板6は、例えば上記ステンレス鋼により構成されたものであり、回転体3が冷却水を圧送したときに当該回転体3が図1の左側に移動するのを規制している。また、このピボット板6には、冷却水を流すための複数の開口6bが周方向に沿って適宜設けられており、ポンプ効率の低下を極力抑えるようになっている。
【0009】
上記電動モータ7は、例えばハウジング2の外部に配置されたステータ巻線7aと、ハウジング2の内部に配置され、上記回転軸4に固定された筒状のモータロータ7bとを備えている。詳細には、モータロータ7bは、回転軸4が圧入された円筒部7cと、この円筒部7cとの間で周方向に所定間隔をおいて等配された複数のリブ7dとにより、回転軸4の軸方向中央部分に一体回転可能に取り付けられており、当該ロータ7bの一端開口部7b1から流入した冷却水が複数のリブ7dの各間を通って他端開口部7b2から流出するようになっている。また、これらのモータロータ7b、円筒部7c、及びリブ7dは、例えば上記オーステナイト系ステンレス鋼により構成されたものであり、必要な強度及び上記冷却水に対する耐食性が確保されている。また、モータロータ7bの外周側には、樹脂モールドされることにより防水性が確保された永久磁石(図示せず)が設けられている。そして、この電動モータ7は、そのステータ巻線7aに通電することによって回転磁界を発生させ、その回転磁界と上記永久磁石の磁界との相互作用により回転体3を所望の回転速度で回転させる。
【0010】
また、上記回転体3の回転軸4は、モータロータ7bを左右方向で挟むように設けられた一対の動圧軸受8により、上記ハウジング2内で回転自在に支持されている。
上記動圧軸受8は、上記オーステナイト系ステンレス鋼などの冷却水に対する優れた耐食性をもつ金属素材からなる耐食材により構成されたものであり、ハウジング2に固定された円環状の固定部8aと、この固定部8aと同芯円上に設けられ、軸方向一端側端面と軸方向他端側端面との間に形成される軸受面である内周面8b1にスパイラルパターンやへリングボーンパターン等の帯状の動圧発生用溝8b2(図2)が形成された円環状の動圧発生部8bとを備えている。また、動圧軸受8は、図1の矢印F1にて示すように、ハウジング2内を流れる冷却水を潤滑流体として、その動圧発生用溝8b2とこれに対向する回転軸外周面4aとの間に、回転体3の回転に応じた動圧を発生させることにより、回転体3をラジアル方向に支承する。
また、この動圧軸受8では、上記固定部8aと動圧発生部8bとの間で周方向に沿って等間隔に複数の開口8cが設けられており、これらの開口8cに冷却水を通してポンプ効率の低下を極力抑えるようになっている。
【0011】
また、図2に示すように、上記動圧発生部8bと対向する回転軸外周面4aの上記対向部分の表面にはダイヤモンドライクカーボン膜(以下、「DLC膜」ともいう)10が形成されている。
上記DLC膜10は、例えば炭素をターゲットとしたスパッタリング法により、1.0〜5.0μm程度の膜厚で上記対向部分の表面上に成膜されたものであり、ビッカース硬度1000〜2000(Hv)程度の硬さを有する硬質膜を構成している。このDLC膜10の表面粗さは例えば中心線平均粗さ(Ra)で0.1μm以下に管理されている。また、このDLC膜10は、所定の密着力(少なくとも40N、好ましくは60N)で対向部分の上記表面に接合されており、この表面から剥離しないようになっている。さらに、このDLC膜10は、冷却水に対する優れた耐食性を有するとともに、当接する相手材への攻撃性及び摩擦係数が低く、しかも耐摩耗性に優れ、若干の自己潤滑性を有する皮膜であり、回転体3の回転開始時や停止時などにおいて動圧軸受8と回転体3の回転軸外周面4aとが接触するときに動圧軸受8の回転軸外周面4aとの間での耐摩耗性及び摺動特性を向上させる。
【0012】
上記スパッタリング法によるDLC膜10の形成では、アルゴンガス、炭化水素ガスなどの導入ガスが導入された蒸着室内の圧力を10-3〜10(Torr)程度とし、放電電圧100〜2000(V)、電流2〜10(A)の放電処理を行うことにより、ターゲット面である上記対向部分の表面に炭素を蒸着する。これにより、上記膜厚、硬さ等を有し、グラファイト(SP2)構造とダイヤモンド(SP3)構造とが共存した非晶質構造からなるDLC膜10が上記対向部分の表面上に形成される。尚、このDLC膜10を形成するときには、上記ターゲット面以外の外周面4aなどの回転軸表面はマスク部材によりマスキングが施され、炭素が付着しないようになっている。
また、上記DLC膜10の膜厚が1.0μm未満であれば耐摩耗性が不足し、5.0μmを超えると、コストが膨大となるだけでなく、膜厚が厚すぎることによる内部応力が大きくなり剥離の原因となる。それ故、DLC膜10の好ましい膜厚は、1.0〜5.0μmであり、さらに好ましくは3.0μmである。
また、DLC膜10の上記表面に対する密着力が40N未満であると、当該DLC膜10の剥離を生じやすくなる。
また、DLC膜10の硬さがビッカース硬度(Hv)で1000未満であれば耐摩耗性が不足し、2000を超えると、内部応力が大きくなり剥離の原因となる。
【0013】
尚、上記のスパッタリング法以外に、ベンゼンを原料ガスとしたイオンビーム蒸着によるイオンプレーティング法等の他の物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)、あるいはプラズマジェットを利用したプラズマ溶射などの溶射法を用いて、DLC膜10を形成してもよい。また、ローレット加工等により、上記対向部分の表面を粗面に仕上げることでDLC膜10が形成される表面への密着性(密着強度)を高めてもよい。但し、上記スパッタリング法等のPVDは、物理的メカニズムを利用した成膜法であることから、下地(回転軸4)の材料に左右されることがなく、他の成膜法に比べて下地に対する高い密着性を容易に確保できるので、DLC膜10の形成に最適である。また、この説明以外に、タングステン等をDLC膜10に含有させたり、クロム膜等をDLC膜10と表面との間に介在させたりして、DLC膜10の回転軸表面に対する密着強度を高める構成でもよい。
【0014】
また、図1においては、上記動圧発生部8bと回転軸4との隙間を誇張して図示しているが、実際の隙間の寸法は数十μm程度に設定されており、動圧発生部8bがDLC膜10との間でキャビテーションとこれに起因する異常音及び異常振動等を生じることなく、上記動圧を適切に発生させて回転体3を安定して支持するようになっている。
【0015】
以上のように、本実施形態のポンプ1では、上記金属素材からなる耐食材により動圧軸受8を構成しているので、当該軸受8の冷却水に対する耐食性を向上することができる。また、回転軸外周面4aの動圧軸受8と対向する対向部分に上記DLC膜10を形成して、回転体3の回転開始時などでの動圧軸受8の回転軸外周面4aとの間での耐摩耗性及び摺動特性を向上させるので、冷却水に対する耐食性を向上することができる点とも相まって、動圧軸受8は長期間にわたって回転体3を高精度に支持することができ、当該動圧軸受8の寿命、ひいてはポンプ1の寿命を長寿命なものとすることができる。さらに、ポンプ1の循環水である冷却水を潤滑流体として用いた動圧軸受8によって回転体3を支持させているので、グリースが封入された転がり軸受を用いた場合と異なり、軸受内部への循環水の浸入に起因するグリースの流出やその粘度低下、劣化等が発生することがなく、循環水の汚染及び軸受性能の低下などの発生を防いだ高性能で環境性に優れ、かつ長期間にわたって回転体3の回転精度を維持することができるエンジン冷却用等のポンプを容易に構成することができる。
【0016】
尚、本発明の発明者等による検証試験によれば、回転体3を10000rpmで回転させて、60℃の水を循環供給するポンプで6ヶ月以上連続運転させても、動圧軸受8及びポンプ1に不具合発生の兆候は全く現れておらず、ポンプ寿命を格段に延ばせることが実証されている。
【0018】
また、上記の説明では、モータロータ7bを左右方向で挟むように、一対の動圧軸受8を設けた構成について説明したが、動圧軸受8の形状、設置数や設置箇所、またはDLC膜10の成膜箇所、あるいはインペラ5の形状や個数などの回転体3の構成は上記のものに何等限定されない。
具体的にいえば、上記一対の動圧軸受8に代えて、図3及び4に示すように、モータロータ7bの外周面に対向するようハウジング2の内周面に固定された筒状のスリーブ部材18aによって動圧軸受18を構成して、回転体3を回転自在に支持する構成でもよい。上記スリーブ部材18aは、動圧軸受8と同様に、上記オーステナイト系ステンレス鋼などの金属素材からなる耐食材によって構成されたものであり、当該スリーブ部材18aには、モータロータ7bの対向する外周面7b3との対向面に回転体3の回転に応じた所望の動圧を発生させる動圧発生用溝18a2が内周面18a1に形成されている。
また、図4に示すように、モータロータ7bの外周面7b3の表面上には、上記DLC膜10が形成されている。尚、上記とは逆に、モータロータ7bの外周面7b3に動圧発生用溝を設け、スリーブ部材18aには同溝を設けない構成としてもよい。
【0019】
また、図3においては、スリーブ部材18aと上記モータロータ7bとの隙間を誇張して図示しており、スリーブ部材18aとモータロータ7bの最外周部である上記DLC膜10との隙間は数十μm程度であり、図1に示した場合と同様に、スリーブ部材18aがDLC膜10との間でキャビテーションとこれに起因する異常音及び異常振動等を生じることなく、上記動圧を適切に発生させて回転体3を安定して支持するようになっている。また、上記耐食材によりスリーブ部材18aを構成するとともに、このスリーブ部材18aに対向するモータロータ7bの表面にDLC膜10を形成したことから、動圧軸受18は図1に示した動圧軸受8と同様な効果を得ることができる。
【0020】
また、この実施形態では、図3に示すように、モータロータ7bの内部に一対のインペラ5を設け、これらのインペラ5を介してモータロータ7bと回転軸4とを一体回転可能に連結するとともに、上記動圧軸受18と同軸上で回転体3を回転支持する一対のタッチダウン軸受12をハウジング2内に設けている。
詳細には、インペラ5の一端(外周)側がモータロータ7bの内周面側に固定され、他端(内周)が回転軸4の外周面側に一体回転可能に取り付けられている。これにより、図1に示した円筒部7c及びリブ7dを割愛することができるとともに、インペラ5をモータロータの7bの内部に設けたことから、回転体3、ひいてはポンプ1の軸方向長さを容易に短くすることができる。
【0021】
また、上記タッチダウン軸受12は、上記耐食材からなる円筒状の部材により構成されたものであり、同耐食材により構成されたドーナツ状の取付部材11を介してハウジング2内に配置されている。
上記取付部材11は、ハウジング2に固定された円環状の固定部11aと、タッチダウン軸受12が圧入固定されたリング状部11bと、これら固定部11aとリング状部11bとの間で周方向に沿って等間隔に形成された複数の開口11cとを備えており、上記の開口11cに冷却水を通してポンプ効率の低下を極力抑えるようになっている。
また、上記タッチダウン軸受12の内周面12aと回転軸4の外周面4aとの離間寸法は、動圧軸受18の内周面18a1と上記外周面7b3上のDLC膜10との間の間隔寸法より、数μm〜数十μm程度小さい値に設定されており、タッチダウン軸受12は回転体3のラジアル方向の可動範囲を規制するとともに、ポンプ1の起動時及び停止時などで回転軸4の外周面4aと当接することによって、動圧軸受18のDLC膜10との接触を防止する。
【0022】
以上のように、この実施形態では、タッチダウン軸受12を設けて動圧軸受18のDLC膜10との接触を防止するので、この接触による摩耗や損傷が動圧軸受18及びDLC膜10などに発生するのを確実に防止することができる。また、タッチダウン軸受12が動圧軸受18とDLC膜10との接触を防止することから、たとえ冷却水漏れ等により動圧軸受18が動圧を発生させることができないポンプ緊急停止時などでも、当該軸受18とDLC膜10との衝突を防ぐことができ、上記動圧発生用溝18a2などに変形や破損を生じることを防止することができる。また、上記取付部材11及びタッチダウン軸受12を、動圧軸受8,18と同様に上記耐食材により構成したことから冷却水に対する耐食性を向上することができるとともに、タッチダウン軸受12の回転軸4に対する耐摩耗性及び摺動特性を向上させることができ、タッチダウン軸受12の寿命、ひいてはポンプ寿命を長寿命化することができる。また、ポンプ1の起動停止を頻繁に行う用途でタッチダウン軸受12が損傷した場合でも、当該ダッチダウン軸受12のみ交換すればポンプ1の継続使用が可能となる。また、モータロータ7bに向かい合う上記動圧軸受18によって回転体3を回転自在に支持することから、一対の動圧軸受8を用いたものに比べて、ポンプ1の軸方向長さを長くすることなくタッチダウン軸受12を容易にハウジング2内に設けることができる。
【0023】
尚、上記の説明では、冷却水を循環させる軸流式のポンプに適用した場合について説明したが、本発明は、蒸留水などのピュアな水や化学物質を含んだ水溶液などの液体を圧送する回転体と、この液体を潤滑流体として用いて回転体を回転自在に支持する動圧軸受とを有する、電動ウォータポンプ等の各種ポンプに好適に用いることができる。
また、本発明における動圧軸受には、動圧溝を有さないものや、すべり軸受、ステップ軸受をも含んでいる。
また、上記の説明では、オーステナイト系ステンレス鋼などの金属素材からなる耐食材により動圧軸受8,18を構成した場合について説明したが、本発明は、冷却水等の水を含む液体(潤滑流体)に対する耐食性をもつ耐食材により動圧軸受8,18を構成するものであれば何等限定されない。具体的には、上記DLC膜10を軸受用鋼(SUJ2等)の表面に形成した耐食材により、動圧軸受8,18を構成してもよく、このように動圧軸受8,18側にDLC膜10を形成した場合は、その軸受の耐摩耗性及び摺動特性を向上することから回転体3側でのDLC膜10の形成を割愛することができる。また、DLC膜10に代えて、上記水を含む液体に対する耐食性に優れたニッケル等の金属皮膜を電気メッキなどによって軸受用鋼などの表面上に形成した耐食材を用いて、動圧軸受8,18を構成してもよい。
【0024】
また、上記の説明では、回転軸4の一端部側の先端部に球状部4bを設け、この球状部4bをピボット板6の球面座6aに接した状態で回転体3を回転させる構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば上記球状部4bを設けることなく回転軸4の上記先端部を断面円形状とし、さらに上記球面座6aの代わりに、ピボット板6の回転軸先端部に対向する軸方向端面にヘリングボーン状等の動圧発生用溝を形成して、この溝により発生させた動圧によって回転体3が冷却水を圧送したときに当該回転体3が図1,3の左側に移動するのを規制しつつ、軸方向に回転体3を支承する構成でもよい。このようにピボット板6で回転体3を軸方向に支承する場合、動圧軸受8,18と同様に、このピボット板6あるいは球状部4bを上記耐食材によって構成し、このピボット板6に対向する回転軸4の先端部表面にDLC膜10を形成することにより、当該ピボット板6の寿命、ひいてはポンプ寿命を容易に向上することができる。また、逆に、ピボット板6の表面にDLC膜10を形成し、対向する回転軸4の先端部を上記耐食材で形成してもよい。
【0026】
【発明の効果】
以上のように構成された本発明は以下の効果を奏する。
請求項1のポンプによれば、動圧軸受の水を含む液体に対する耐食性を向上することができるとともに、回転開始時などでの当該軸受の回転体に対する耐摩耗性及び摺動特性を向上することができるので、長期間にわたって回転体を高精度に支持することができ、軸受寿命、ひいてはポンプ寿命の長寿命化を図ることができる。
【0027】
請求項2のポンプによれば、上記動圧軸受が二個配置されているので、請求項1と同様に、長期間にわたって回転体を高精度に支持することができ、軸受寿命、ひいてはポンプ寿命の長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るポンプの構成を示す断面図である。
【図2】図1に示した動圧軸受の動圧発生部とこれに対向する回転軸の対向部分とを示す拡大断面図である。
【図3】別の実施形態に係るポンプの構成を示す断面図である。
【図4】図3に示した動圧軸受の動圧発生部とこれに対向するモータロータの対向部分とを示す拡大断面図である。
【符号の説明】
1 ポンプ
3 回転体
8,18 動圧軸受
10 ダイヤモンドライクカーボン膜(DLC膜)
12 タッチダウン軸受
Claims (2)
- 回転軸を有し、水を含んだ液体を圧送する回転体と、前記液体を潤滑流体として前記回転体の回転軸を回転自在に支持する動圧軸受とを備え、
前記動圧軸受の軸方向一端側端面と軸方向他端側端面との間に形成される軸受面と前記回転軸の前記軸受面に対向する対向部分とが回転停止時に接触するポンプであって、
前記軸受面の軸方向範囲において前記対向部分の表面にダイヤモンドライクカーボン膜を当該表面から突出するように形成するとともに、前記軸受面の表面を前記液体に対する耐食性を有する金属素材からなる耐食材により構成すると共に、前記軸受面の表面に動圧発生用溝を形成したことを特徴とするポンプ。 - 回転軸を有し、水を含んだ液体を圧送する回転体と、前記液体を潤滑流体として前記回転体の回転軸を回転自在に支持する動圧軸受とを備え、
前記動圧軸受の軸方向一端側端面と軸方向他端側端面との間に形成される軸受面と前記回転軸の前記軸受面に対向する対向部分とが回転停止時に接触するポンプであって、
前記回転体の回転軸を回転自在に支持する前記動圧軸受が前記液体を圧送する方向に離隔して二個形成され、
前記軸受面の軸方向範囲において前記対向部分の表面にダイヤモンドライクカーボン膜を当該表面から突出するように形成するとともに、前記軸受面の表面を前記液体に対する耐食性を有する金属素材からなる耐食材により構成すると共に、前記軸受面の表面に動圧発生用溝を形成したことを特徴とするポンプ。
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