JP3987283B2 - 燃焼速度の向上した、高ガス発生量の非アジ化物ガス発生剤 - Google Patents

燃焼速度の向上した、高ガス発生量の非アジ化物ガス発生剤 Download PDF

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Description

【0001】
発明の背景
本発明は、自動車の膨張可能な乗員拘束エアバッグクッション(inflatable restraint airbag cushion )を膨張させるのに用いられるようなガス発生剤組成物に一般的に関し、特に燃焼速度の向上した、高ガス発生量の非アジ化物ガス発生剤組成物に関する。
【0002】
ガス発生剤組成物の燃焼速度は、下記の式(I)で表わされうる:
Rb=Bpn (I)
ここで、Rb=燃焼速度(線状)
B =定数
P =圧力
n =圧力指数(pressure exponent )であり、この圧力指数は、Y軸の燃焼速度の対数に対する、X軸の圧力の対数のプロットによるこう配である。
【0003】
自動車の膨張可能な乗員拘束エアバッグクッションの膨張に一般的に利用されているガス発生剤組成物は、アジ化ナトリウムを主原料として、最も一般的に以前より用いられてきた。このようなアジ化ナトリウムを主原料とする組成物は、起爆(initiation)の際に、窒素ガスを生成するのが通常である。アジ化ナトリウムおよびある他のアジ化物を主原料とするガス発生剤材料は、現在の工業用仕様、ガイドラインおよび規格を満たすが、そのような使用は、そのようなガス発生剤材料の安全で効果的な取扱い、供給および廃棄を含む潜在的な懸念を含みうるし、もしくは提起しうる。
【0004】
ある経済的および設計上の考慮もまた、アジ化物を主原料とする火工技術(pyrotechnics)および関連するガス発生剤の代替手段に対する必要および要求に帰着する。たとえば、膨張可能な乗員拘束システムのための全体的な空間を最小とする、もしくは少なくとも減少させることへの関心は、代表的な、もしくは通常の、アジ化物を主原料とするガス発生剤に比較して、単位容積あたりの比較的高いガス発生量を与えるガス発生剤への探索を活発化させた。さらに、自動車およびエアバッグ産業の競争は、比較的低コストの成分もしくは材料よりなる、もしくは、利用するような、またはもっと効率的もしくは低コストのガス発生剤処理法による処理を容易に受け入れるような、ガス発生剤組成物への要求に達するのが通常である。
【0005】
その結果、他の適切なガス発生剤材料の開発および使用が続行されてきた。特に、そのような努力が、そのようなインフレーター装置の用途において用いられるアジ化物のないガス発生剤の開発に向けられてきた。上述の点から、アジ化物を主原料とするガス発生剤の潜在的な問題もしくは足りない点の少くともいくつかを克服すると同時に、一般的なアジ化物を主原料とするガス発生剤に比較して、比較的高ガス発生量も与えうるようなアジ化物を含まないガス発生剤に対する必要および要求がある。特に、このような問題もしくは限界を解決する比較的低コストのガス発生剤材料が要望されている。
【0006】
このような開発検討を通じて、燃料と酸化剤の種々の組合わせが、ガス発生剤材料としての使用について提案されてきた。硝酸アンモニウムは、比較的低コストであり、商業的に入手しうる材料であって、適切な燃料材料と組合わされると、比較的高いガス発生量を与えうる。あいにく、ある不利な事情もしくは短所が、このようなガス発生剤のただ一つの酸化剤としての硝酸アンモニアの使用に伴うことがある。たとえば、このような使用は、比較的低い燃焼速度、比較的高い燃焼速度圧力指数 (すなわち、材料の燃焼速度は圧力に高い依存性を有する)および比較的高い吸湿性を有するガス発生剤材料に帰着しうる。
【0007】
そのために、ある硝酸アンモニウム含有組成物の燃焼速度は、一つもしくはそれより多い選択され添加剤、たとえば、選択された高エネルギー燃料成分、を含有することによって、またはアンモニウムおよび過塩素酸カリウムのような共酸化剤の添加により、様々に向上されてきた。このような高エネルギー燃料成分の含有は、燃焼速度を向上させうるが、さらに増大した燃焼速度が一般的に望まれる。加えて、このような高エネルギー燃料添加剤は、上で明らかにされたように、燃焼速度圧力指数を著しく減少させるのに有効ではないのが通常である。理解されるとおり、比較的低い燃焼速度圧力指数は、対応するエアバッグインフレーター装置の衝撃可変性を減少させるような組成に対して望ましいのが通常である。実際に、たいていの硝酸アンモニウム含有ガス発生剤組成物は、約0.75の燃焼速度圧力指数を有するが、それは、一般に望まれる0.60未満の水準に比べて非常に高い。
【0008】
さらに、エアバッグ用途のようなガス発生剤処方において、あとの共酸化剤を含有もしくは使用することは、流出ガス (たとえば好ましくないHClガスの生成)の毒性、ならびに関連するインフレーター装置のガス流からのある望ましくない副生物 (たとえば、アルカリ金属塩化物)をろ過するが困難であること、に関する懸念がありうるために、好ましくないとみなされることがある。
【0009】
加えて、硝酸アンモニウムは、貯蔵の通常期待される、もしくは予測される範囲、たとえば温度約−40〜110℃の温度にわたる結晶構造の種々の変化に通常、耐えると知られている。
これらの構造変化は、固体物質の膨張および収縮を一般に含む。このような変化は比較的微小であっても、対応するガス発生剤材料の物理的性質に強く影響し得、そして順に発生剤材料の燃焼速度に強く影響しうる。抑制されなければ、硝酸アンモニウムにおけるそのような変化は、硝酸アンモニアを組入れているガス発生剤においてそのような性能変化をもたらすこともあり、そのようなガス発生剤材料を、代表的な膨張可能な乗員拘束システム用途に受け入れ難いものにする。
【0010】
このように、アジ化物を主原料とするガス発生剤の潜在的な問題もしくは不足な点を少くともいくつか克服すると同時に、一般的なアジ化物を主原料とするガス発生剤と比較して、比較的高いガス発生量をも与えることができ、ならびに十分な量および望ましく高い燃焼速度と低い燃焼速度圧力指数を与える、ような、アジ化物を含まないガス発生剤材料に対する継続した必要および要求がある。
発明の要約
本発明の全般的な目的は、改良されたガス発生剤組成物および燃焼速度が向上した、高ガス発生量の、アジ化物を含まないガス発生剤を製造する方法を提供することにある。
【0011】
本発明のもっと特定された目的は、上述の問題の一つもしくはそれより多くを克服することにある。
本発明の全般的な目的は、
ガス発生燃料約30〜約60wt%、
金属アミン硝酸塩酸化剤約15〜約55wt%、燃焼速度向上のため、およびスラグ形成を促進のための金属酸化物添加剤約2〜約10wt%、ならびに
硝酸アンモニウム補助酸化剤約0〜約35wt%、を含有するガス発生剤組成物によって、少くとも部分的に達成されうる。
【0012】
比較的低コストで成分もしくは材料を利用しながら、一般的なアジ化物を主原料とするガス発生剤と比較して、単位容積あたりの比較的高いガス発生量を与え得、ならびに望まれている程度に圧力への減少した依存性を示して、急激に燃焼する、ようなガス発生剤材料を従来技術は供給することができない。
加えて、従来技術は、ガス発生剤材料が適切に、そして安全に生成されうるような加工方法を提供することができない。
【0013】
さらに本発明は、
硝酸グアニジン燃料約35〜約50wt%、
銅ジアミン二硝酸塩酸化剤約30〜約55wt%、
二酸化ケイ素燃焼速度向上およびスラグ生成添加剤約2〜約10wt%、および 硝酸アンモニウム補助酸化剤約0〜約25wt%、
を含有するガス発生剤組成物を包含する。
【0014】
さらに本発明は、燃焼速度を向上した、高ガス発生量の、非アジ化物ガス発生剤を製造する方法を包含する。そのガス発生剤は、ガス発生燃料および金属アミン硝酸塩約15〜約55wt%を含有し、そこで金属アミン硝酸塩の金属は、銅および亜鉛の群から選ばれる。硝酸アンモニウムおよび金属アミン硝酸塩の金属を含有する化合物もしくは物質が、第1のガス発生剤前駆体物質とともに添加され、第2のガス発生剤前駆体物質を生成する。その第2のガス発生剤前駆体物質は、ついで加熱され、
金属が銅である、銅ジアミン二硝酸塩、および
金属が亜鉛である亜鉛ジアミン二硝酸塩を約15〜約55wt%含有するガス発生剤物質を生成する。
【0015】
他の目的および利点は、添付の請求の範囲とともに次の詳細な説明から、当業者にとって明らかであろう。
発明の詳細な説明
本発明は、乗物の乗員拘束エアバッグクッションのような膨張可能な装置の膨張に用いられうるガス発生剤材料を提供する。このようなガス発生剤材料は、ガス発生燃料成分、金属アミン硝酸塩酸化剤成分、金属酸化物燃焼速度向上およびスラグ形成添加剤成分、ならびに所望ならば硝酸アンモニウム補助酸化剤成分を典型的に含有する。
【0016】
本発明のある好適な態様に従って、主題のガス発生剤物質約30〜約60wt%はそのようなガス発生燃料成分を構成する。上述のとおり、本発明の実施に使用される好適な燃料物質は、全くの非アジ化物である。本発明の実施に有用な燃料の群もしくはカテゴリーは種々の窒素含有有機燃料物質および少くとも一つの遷移金属のテトラゾール錯体を含有する。本発明の実施に有用な窒素含有有機燃料物質の特定の例は、硝酸グアニジン、硝酸アミノグアニジン、硝酸トリアミノグアニジン、ニトログアニジン、ジシアンジアミド、トリアザロン、ニトロトリアザロン、テトラゾールおよびそれらの混合物を含む。銅、コバルトあるいは亜鉛のような遷移金属のテトラゾール錯体が、たとえば、使用されうる。理解されるとおり、本発明にしたがってそのガス発生剤組成物のガス発生燃料成分は、個々のそのような燃料物質もしくはそれらの組合わせを含みうる。
【0017】
加えて、本発明のガス発生物質の燃料成分は、所望ならば、金属燃料物質を含みうる。本発明の実施に有用な金属燃料の特定の例は、ケイ素、アルミニウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウムおよびアグネシウムの合金、ならびにそれらの組合わせを含む。
本発明の特に好適なある態様によれば、本発明のガス発生物質は、燃料物質である硝酸グアニジン、 または硝酸グアニジンをケイ素、アルミニウム、ホウ素、アルミニウムおよびマグネシウムの合金、 ならびにそれらの組合わせの一つもしくはそれより多い金属燃料と組合わせたもの、を含む。理解されるとおり、このような金属燃料は、他の組成物成分との混合および組合わせを容易にするような粉末形態で利用されるのが好ましい。このような金属燃料の含有は種々の目的に役立ちうるが、通常このような金属燃料は、得られる組成物の燃焼温度を上昇させるために、そのような組成物に含まれるのが好ましい。
【0018】
実際面では、硝酸グアニジンは、 次のような一つもしくはそれより多い種々の要因により、通常、 特に好適な燃料である:比較的低い商業コストを有すること;銅もしくはさらに存在しうる他の遷移金属との望ましくない錯体化を通常避けること;そしてそれ自体比較的高度に酸化されており、外部から供給される、燃焼に必要な酸化剤の量を最小にするか、もしくは低減するのに役立ちうる。
【0019】
含有される場合には、ケイ素、アルミニウム、ホウ素、アルミニウムおよびマグネシウムの合金、 ならびにそれらの組合わせ、の粉末は、全ガス発生剤組成物の約5%までの量で存在するのが一般的に好ましい。
本発明のある好適な態様によれば、本発明のガス発生剤物質約15〜55wt%は、そのような金属アミン硝酸塩酸化剤を構成する。本発明の実施に使用される好適な金属アミン硝酸塩酸化剤物質は、銅ジアミン二硝酸塩、 亜鉛ジアミン二硝酸塩およびそれらの組合わせを含む。
【0020】
さらに、上述のとおり、本発明のガス発生剤物質は、所望ならば、硝酸アンモニウム補助酸化剤成分を約35wt%までさらに含有しうる。このように、本発明の幅広い実施において、本発明のガス発生剤物質は、そのような硝酸アンモニウム補助酸化剤成分を約0〜約35wt%含むことができる。
本発明によれば、硝酸アンモニウムの量に比例して実質的な量の金属アミン硝酸塩を含有するガス発生剤物質は、増加した燃焼速度および減少した燃焼速度圧力指数を好適にもたらすことが見出された。実際には、硝酸アンモニウムを含有する組成物にそのような金属アミン硝酸塩が含まれることは、硝酸アンモニウムに通常関連する相変化を安定させるのに役立つことができるが、本発明の組成物は、安定化に要求されるよりも実質的に多い適切な量もしくは水準で、そのような金属アミン硝酸塩を含む。次に詳述するように、そのような適切な量で、そのような金属アミン硝酸塩の含有は、燃焼速度の望ましい増加、および燃焼速度圧力指数の望ましい低減を助けると考えられる。たとえば、硝酸アンモニウムの相変化を安定させるために、約15wt%以下の含量の金属アミン硝酸塩が通常要求もしくは所望される。対照的に、本発明組成物では、金属アミン硝酸塩錯体は、安定化に要求されるよりももっと多い、適切な量もしくは水準で使用され、たいていの場合、金属アミン硝酸塩錯体の量もしくは水準は、組成物中の硝酸アンモニウムの水準もしくは量を超えうる。このように、本発明の説明において、このような金属アミン硝酸塩錯体は、組成物の優位の、もしくは主要な酸化剤ということがある。
【0021】
本発明のガス発生剤物質は、このような金属酸化物燃焼速度向上およびスラグ形成添加剤を約2〜約10wt%をさらに含むのが好ましい。本発明の実施に有用な、特定の金属酸化物燃焼速度向上およびスラグ形成添加剤の例は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、 酸化ホウ素およびそれらの組合わせを含む。一般に、二酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよびそれらの組合わせが、本発明の実施に使用される好適な金属酸化物添加剤である。金属酸化物の使用は、燃焼速度向上剤として、さらにはエアバッグインフレーターのガス流から容易にろ過されるスラグ形成を目的とする。このようなケイ素およびアルミニウムの酸化物物質の混合および使用は、エアバッグインフレーターのガス流から比較的容易にろ過されるスラグ物質の製造を容易にするのに特に有効である。
【0022】
本発明の実施において、組成物中に存在するそのような金属酸化物成分および比較的多い量の金属アミン硝酸塩の組合わせは、組成物の高燃焼速度および低燃焼速度圧力指数の原因となる。
本発明による一つの特に好適なガス発生剤組成物は、
硝酸グアニジン燃料約35〜約50wt%、
銅ジアミン二硝酸塩酸化剤約35〜55wt%、
二酸化ケイ素燃焼速度向上およびスラグ形成添加剤約2〜約10wt%、 および 硝酸アンモニウム補助酸化剤約0〜約25wt%、
を含有する。
【0023】
当業者に理解されるとおり、本発明によるガス発生剤組成物は、種々の適切な方法もしくは技術を用いて製造されうる。一つの特に好適な製造法によれば、本発明組成物に用いられている特定の金属アミン硝酸塩酸化剤(すなわち、銅ジアミン二硝酸塩、亜鉛ジアミン二硝酸塩もしくはその組合わせ)は、硝酸アンモニウムを適切な銅および/または亜鉛含有化合物もしくは物質と反応させることによってその場で製造される。たとえば、銅ジアミン二硝酸塩については、Cu金属、Cu2 O,CuOもしくはCu(OH)2 のような銅含有物質が、硝酸アンモニウムと混合、 または別の方法で適切に接触され、ついで、たとえば少くとも約160℃の温度に加熱され、銅ジアミン二硝酸塩を生成する。同様に、亜鉛含有物質、すなわち、亜鉛ジアミン二硝酸塩の場合には、亜鉛金属もしくは酸化亜鉛のような亜鉛含有物質が、硝酸アンモニウムと混合、 または別の方法で適切に接触され、ついで適切に加熱され、亜鉛ジアミン二硝酸塩を生成する。
【0024】
理解されるとおり、銅ジアミン二硝酸塩は、通常水に安定ではなく、種々の取扱いおよび処理の複雑化および困難さが存在しうる。上述のように、このような銅ジアミン二硝酸塩の現場での製造は、そのような取扱いおよび処理の複雑化および困難さを、少くともいくらかでも避け、もしくは最小とするのに好適に役立ちうる。
【0025】
本発明の少くとも、ある好適な態様によれば、本発明の燃焼速度の向上した、高ガス発生量の非アジ化物ガス発生剤は、硝酸アンモニウムおよび金属アミン硝酸塩の金属を含有する化合物もしくは物質(たとえば、銅もしくは亜鉛の含有物質)(ここで「第1のガス発生剤前駆体物質」という)を添加することにより好適に生成されうる。理解されるように、このような第1の前駆体物質は、ガス発生剤組成物もしくはその適切な前駆体のバランスを適切に含む。たとえば、このような第1の前駆体はガス発生剤物質の燃料成分、もしくはその適切な前駆体の一つ以上、金属酸化物燃焼速度向上およびスラグ形成添加剤もしくはその前駆体、またはこのような物質の種々の組合わせを含んでいてもよい。
【0026】
本発明によれば、燃焼速度を向上した、高ガス発生量の非アジ化物ガス発生剤を製造する方法は、硝酸グアニジン燃料、銅ジアミン硝酸塩酸化剤、二酸化ケイ素燃焼速度向上およびスラグ形成添加剤、ならびに所望ならば約25wt%までの硝酸アンモニウム補助酸化剤を含む上述の好適なガス発生剤組成物に特に関して説明される。
【0027】
このような組成物は、各成分:硝酸グアニジン、二酸化ケイ素、硝酸アンモニウムおよび銅含有物質、たとえばCu金属、Cu2 O,CuOもしくはCu(OH)2 を一緒に混合することによって好適に製造されうる。ついで、混合物は、約160℃の温度に加熱され、硝酸グアニジン、SiO2 、銅ジアミン二硝酸塩および硝酸アンモニウムという最終生成物を生成する。Cu金属もしくはCu2 Oが使用される場合には、加熱は好ましくは空気にさらして行なわれ、これらの物質をCuO形態に酸化させる。
【0028】
銅ジアミン二硝酸塩を生成する反応は、商業的に入手しうるCuOよりもむしろCu2 OのようなCu含有物質で開始するときに、著しく速い速度で進行するが意外にも見出された。Cu2 Oのような出発物質の使用は、予備的にCuOのその場での生成をもたらし、そのような、その場で生成されたCuOは、商業的に入手しうるCuOよりも著しく反応性が大きいからと考えられる。このように本発明は、反応が進行するにつれて、現場でCuOを生成するのに役立つCu2 Oのような銅含有物質を用いるのが好適である。
【0029】
さらに、硝酸グアニジンのような組成物燃料成分も加熱サイクルの間に反応混合物中に望ましくは生成されうることが理解されよう。たとえば、硝酸グアニジンは、ジシアンジアミドおよび硝酸アンモニウムの適切な混合物を結合させ、加熱することにより、その場で生成されうる。このような場合、はじめの反応物質は、ジシアンジアミド二酸化ケイ素、硝酸アンモニウムならびにCu,Cu2 O,CuOおよびCu(OH)2 の群から選ばれる一つ以上の物質を含み、加熱サイクルで、硝酸グアニジン、銅ジアミン二硝酸塩、SiO2 、および硝酸アンモニウムを生成する。このような方法によれば、硝酸グアニジンはジシアンジアミドおよび硝酸アンモニウムの付加生成物である。
【0030】
エアバッグインフレーター装置に含有させるための組成物の処理は、たとえば、水スラリーの形態で反応成分をスプレー乾燥させることにより反応物物質の固体プリルを生成させて成し遂げられる。ついで、その固体プリルは、所望の温度、たとえば約160℃の温度に加熱されることができ、それによって反応物質は反応して、銅ジアミン二硝酸塩、亜鉛ジアミン二硝酸塩もしくはそれらの混合物約15〜約55wt%を含む所望のガス発生剤物質を生成する。
【0031】
本発明は、本発明の実施に含まれる種々の態様を例証もしくは実験する次の実施例によりさらに詳細に説明される。本発明の趣旨の範囲内でのすべての変更は、保護されるべきであり、このように本発明はこれらの実施例に限定して解釈されるべきでない。
実施例
比較例1〜3ならびに実施例1および2
表1は、比較例(CE)1〜3ならびに実施例(Ex)1および2の特定のガス発生剤組成物について、成分および各々の相対的量(wt%)を明らかにする。
【0032】
特にCE1の組成物は、本発明に従って、ガス発生燃料 (たとえば硝酸グアニジン)および金属酸化物添加剤 (たとえば、二酸化ケイ素)を含んでいたが、金属アミン硝酸塩酸化剤(たとえば、銅ジアミン二硝酸塩)を、本発明のガス発生剤組成物について特定された量より著しく低い、7.17wt%の相対量で含むにすぎなかった。
【0033】
同様に、CE2の組成物は、本発明に従ってガス発生燃料 (たとえば、硝酸グアニジン)を含有したが、金属アミン硝酸塩酸化剤(たとえば、銅ジアミン二硝酸塩)を本発明のガス発生剤組成物に特定された量よりも著しく低い、7.64wt%の相対量で含むにすぎず、さらに金属酸化物燃焼向上およびスラグ形成添加剤、すなわち二酸化ケイ素を全く含有していなかった。
【0034】
さらに、CE3の組成物は、本発明に従ってガス発生燃料 (たとえば硝酸グアニジン) および金属アミン硝酸塩酸化剤 (たとえば銅ジアミン二硝酸塩)を含んでいたが、ここで述べられている金属酸化物添加剤 (たとえば、二酸化ケイ素)を全く含んでいなかった。
対照的に、ExおよびExのガス発生剤組成物はそれぞれ、本発明に従って、ガス発生燃料(たとえば、硝酸グアニジン)、金属アミン硝酸塩酸化剤(たとえば、銅ジアミン二硝酸塩)および金属酸化物添加剤(たとえば酸化ケイ素)を含んでいた。そして実施例1の組成物は多量の(たとえば、9.91wt%)硝酸アンモニウムを付加的に含有していた。
【0035】
【表1】
Figure 0003987283
【0036】
結果の考察
上記の表1も、これらのガス発生剤組成物のそれぞれについて、燃焼速度および燃焼速度圧力指数を明らかにする。示されるとおり、本発明に従うガス発生剤組成物(実施例1および2)は、特定された相対量で一つ以上の特定成分を含まない類似の組成よりも著しく大きい燃焼速度を示した。
【0037】
同様に、本発明に従うガス発生剤組成物(実施例1および2)は、特定された相対量で一つ以上の特定成分を含まないCE1,CE2およびCE3の類似組成に比較して、著しく低減した燃焼速度圧力指数を示した。
このように、本発明は、非常に高いガス発生量( たとえば、組成物100gあたり、約3モルを超えるガス、好適には少くとも約3.3モルガスを発生する)、比較的高い燃焼速度(たとえば、望ましくは6895kPa (1000psi )で、1秒あたり8.89mm(0.35インチ)を超え、好適には6895kPa (1000psi )で、1秒あたり11.4mm(0.45インチ)を超える)、および低い燃焼速度圧力指数(たとえば、0.7未満の燃焼速度圧力指数、好ましくは約0.6未満)をもたらす、ガス発生剤組成物を提供することが理解されよう。
【0038】
理解されるとおり、本発明によるガス発生剤組成物は、代表的な、もしくはふつうのアジ化物を原料とするガス発生剤に比較して、単位容積あたり比較的高いガス発生量を与え、本発明のガス発生剤組成物はもっと急激に、そして圧力に対して減少した依存性で、好適に燃焼しうる。さらに、本発明は、本発明のガス発生剤組成物のある構成成分についての取扱いおよび処理の複雑化および困難さを少くともいくらか避ける、もしくは最小化するのに好適に役立ちうる。
【0039】
たとえば、CuOの理論付けされたその場での生成に関する考察のような、理論の考察は、本発明の理解に役立つのに含まれるものであり、もっと広い使用で、何ら本発明を制限するものではない。
ここで適切に例証的に開示された発明は、特にここで開示されていない要素、部分、工程、もしくは成分がなくても実施されうる。
【0040】
前述の詳細な説明において、本発明はその好適な態様について説明され、そして多くの詳細かつ例証の目的で述べられたが、本発明は追加の態様を受け入れやすく、そして、ここで詳細に述べられた詳細は本発明の本質から離れないかぎりかなり変更されうることは当業者に明らかであろう。

Claims (23)

  1. ガス発生燃料30〜60wt%、金属アミン硝酸塩酸化剤15〜55wt%、金属酸化物燃焼速度向上およびスラグ形成添加剤2〜10wt%、ならびに硝酸アンモニウム補助酸化剤0〜35wt%、を含有するガス発生剤組成物であり、ここで金属アミン硝酸塩は硝酸アンモニウム補助酸化剤よりも多い量で存在し、そしてガス発生剤組成物は6895k Pa (1000p si )で1秒あたり8.89 mm (0.35インチ)を超える燃焼速度、および組成物100gあたり3モルを超えるガスのガス発生量を与える、ガス発生剤組成物。
  2. 金属アミン硝酸塩酸化剤が銅ジアミン二硝酸塩を含む請求項1記載のガス発生剤組成物。
  3. 金属アミン硝酸塩酸化剤が亜鉛ジアミン二硝酸塩である請求項1記載のガス発生剤組成物。
  4. ガス発生燃料が非アジ化物燃料である請求項1記載のガス発生剤組成物。
  5. 非アジ化物ガス発生燃料が窒素含有有機燃料物質である請求項4記載のガス発生剤組成物。
  6. 窒素含有有機燃料物質が、硝酸グアニジン、硝酸アミノグアニジン、硝酸トリアミノグアニジン、ニトログアニジン、ジシアンジアミド、トリアザロン、ニトロトリアザロン、テトラゾールおよびこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項5記載のガス発生剤組成物。
  7. 窒素含有有機燃料物質が、硝酸グアニジンを含む請求項5記載のガス発生剤組成物。
  8. 非アジ化物ガス発生燃料が少くとも一つの遷移金属のテトラゾール錯体である請求項4記載のガス発生剤組成物。
  9. ガス発生燃料が、ケイ素、アルミニウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウムおよびマグネシウムの合金ならびにそれらの組合わせからなる群より選ばれる金属燃料をさらに含む請求項4記載のガス発生剤組成物。
  10. 金属酸化物添加剤が、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン酸化ホウ素およびそれらの組合わせからなる群より選ばれる請求項1記載のガス発生剤組成物。
  11. 6895kPa (1000psi )で1秒あたり11.4mm(0.45インチ)を超える燃焼速度を有する請求項1記載のガス発生剤組成物。
  12. 0.7未満の燃焼速度圧力指数を有する請求項1記載のガス発生剤組成物。
  13. 0.6未満の燃焼速度圧力指数を有する請求項1記載のガス発生剤組成物。
  14. 硝酸グアニジン燃料35〜50wt%、銅ジアミン二硝酸塩酸化剤30〜55wt%、二酸化ケイ素燃焼向上およびスラグ形成添加剤2〜10wt%、ならびに
    硝酸アンモニウム補助酸化剤0〜25wt%、
    を含有するガス発生剤組成物。
  15. 燃焼速度の向上した、高ガス発生量の、請求項1記載の非アジ化物ガス発生剤組成物を製造する方法において、ガス発生剤組成物、金属アミン硝酸塩酸化剤15〜55wt%を含有し、そこで金属アミン硝酸塩の金属は、銅および亜鉛の群から選ばれ、次の工程:
    硝酸アンモニウムおよび金属アミン硝酸塩の金属を含有する物質を、第1のガス発生剤前駆体物質とともに添加して第2のガス発生剤前駆体物質を生成させ、
    そして、その第2のガス発生剤前駆体物質を加熱して、
    金属が銅である、銅ジアミン二硝酸塩および金属が亜鉛である亜鉛ジアミン二硝酸塩を15〜55wt%含むガス発生剤物質を生成させる、
    ことを特徴とするガス発生剤組成物の製造法。
  16. 加熱工程の前に第2のガス発生剤前駆体物質をスプレー乾燥する工程をさらに含む請求項1記載の製造法。
  17. 金属アミン硝酸塩酸化剤が銅ジアミン二硝酸塩である請求項1記載の製造法。
  18. 金属アミン硝酸塩酸化剤が亜鉛ジアミン二硝酸塩である請求項1記載の製造法。
  19. 加熱工程が、少くとも160℃の温度に第2のガス発生剤前駆体物質を加熱することを含む請求項1記載の製造法。
  20. 金属アミン硝酸塩の金属が銅であり、硝酸アンモニウムとともに添加される物質が、Cu金属、Cu2 O,CuOおよびCu(OH)2 よりなる群から選ばれる請求項1記載の製造法。
  21. Cu2 Oが硝酸アンモニアとともに添加される物質である請求項2記載の製造法。
  22. ガス発生燃料が硝酸グアニジンを含む請求項1記載の製造法。
  23. 第1のガス発生剤前駆体物質が、加熱工程でさらに生成される硝酸グアニジンガス発生燃料とともにジシアンジアミドを含有する請求項2記載の製造法。
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