JP3986786B2 - 窒素酸化物除去用光触媒 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、各種用途に適用可能な光触媒に関するものであり、特に太陽光等を利用して効率的に大気中の窒素酸化物を除去することのできる窒素酸化物除去用光触媒に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
窒素酸化物は、石油、石炭の燃焼などに伴い空気中の窒素が酸化されることにより生成し、光化学スモッグや酸性雨の要因となる。そこで、火力発電所や石油化学工場等の固定発生源には、脱硝設備が付設されアンモニア接触還元法により処理されている。また自動車等の移動発生源においても、ガソリンエンジン車には3元系触媒が搭載されており、窒素酸化物と一酸化炭素、炭化水素の同時除去がなされている。
【0003】
しかしながら、ディーゼルエンジン車に対する窒素酸化物対策が遅れており、大都市圏の自動車道路近傍においては、環境基準が満たされていないのが現状である。従って、このような一旦排出された大気中の低濃度の窒素酸化物を、効率よく経済的に処理する技術がもとめられている。
【0004】
最近、酸化チタン等の光触媒に、バンドギャップ以上のエネルギーを有する波長の光を照射することにより発現する強力な酸化力によって、窒素酸化物を浄化する方法が検討されている。例えば路面や道路周辺のビル側壁、ガードレールや防音壁等の建材表面に光触媒を塗工することにより、太陽光を利用して環境中の低濃度窒素酸化物を処理することが可能となる。ただし、従来の光触媒では、窒素酸化物の処理能力が不十分であり、NOが光触媒により酸化されて一部NOを生成するという問題があった。すなわち厳しい環境基準が設定されているNO濃度が、NOと光触媒との接触によって逆に増加するというものであり好ましくないものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一方、光触媒による窒素酸化物の浄化は、以下のサイクルが考えられている。最初に光触媒に光が照射されて表面に電子と正孔を生成する。これらは、スーパーオキサイドやOHラジカルといった強力な酸化剤を生成する。この酸化剤により燃焼排ガス中の窒素酸化物の主成分であるNOは、NOを経て硝酸にまで酸化される。生成した硝酸により光触媒とガスとの接触が阻害され経時的に除去性能の低下が起こるが、光触媒に付着した硝酸は、降雨等により洗い流され排水中に流出する。この際、排水中に含まれる硝酸は、低濃度であり、酸性度は弱いため環境への影響はほとんどない。このようにして光触媒は洗浄されることにより再生され性能を回復する。
【0006】
前述のように、従来の光触媒においては、上記サイクルにおいて、NOからへの酸化は比較的容易に進行するが、NOから硝酸への反応速度が遅いために、NOが気相にリークしてくることが問題となっていた。そこで対策としては、光触媒と共に、活性炭やゼオライト等の吸着剤を併用することが提案されている。これにより、使用初期は、NOのリークは抑制されるが、徐々に効果が弱まったり洗浄によって十分再生できないことが見られる。これらは酸化が起こる反応点と吸着点が異なることに起因すると予測される。
【0007】
また、酸性ガスであるNOの吸着を促進するために、例えば特開平11−192436号においては、Sr,Ba,Mg,Ca,Rb,Na,K等の塩基性金属の酸化物等を配合することが開示されている。しかしこのようなアルカリ金属やアルカリ土類金属は、光触媒反応により生成した硝酸と反応して水溶塩となり流出するため効果が消失すると予測される。
【0008】
また、光触媒の性能を向上するために、白金族金属や遷移金属を添加することが検討されている。特に、Pt,Pd,Rh,Ru,Ir等の白金族金属の添加は、光触媒の活性を高める効果が得られることがよく知られている。例えば特開平11−151406号においては、光触媒として酸化チタン−パラジウム複合触媒が好ましいことが開示されている。パラジウムの添加量としては、0.05〜1.5重量%であり、0.1%以上添加することにより飛躍的にNOx分解性能が向上すると明細書に記載されている。しかしながら、高価な白金族金属を多量に使用することは、光触媒の各種用途への適用性を損なうものであり好ましくない。
【0009】
本発明は、光触媒により窒素酸化物を除去するに際して、有害なNOを副生することなく、効率よく処理することが可能な窒素酸化物除去用光触媒を提供することを目的とする。すなわち、本発明の光触媒は、高価な白金族金属を添加することなく、NOの硝酸への反応速度を著しく高めることによって、NOとして、気相に脱離することを防止することができる。従って、本発明の光触媒のコストは安価であり、建材等の広範囲の面積に塗工することが可能であり、太陽光を利用して環境中の窒素酸化物を除去することに適している。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、窒素酸化物除去用光触媒に関するものであり、光半導性を有した光触媒基材に酸化鉄を0.1〜3質量%含有せしめている。より好ましい酸化鉄の含有率は、0.2〜2質量%である。上記含有率において酸化鉄はFeに換算した値であり、得られた光触媒において酸化鉄の結晶形態はα−Feであることが好ましい。
【0011】
光触媒基材として、酸化チタンと酸化ジルコニウムおよび/または酸化アルミニウムとの混合物、もしくはチタンとジルコニウムおよび/またはアルミニウムとの複合酸化物が用いられる。これら光触媒基材は、比表面積が30〜100m/gであり、酸化チタンとしての含有率が、少なくとも50質量%であることが好ましい。
【0012】
光触媒基材に酸化鉄を含有せしめる方法としては、酸化鉄の原料として水溶性の鉄化合物を用い、鉄塩含有水溶液に光触媒基材を含浸して乾燥、焼成する方法があり、この方法により酸化鉄を担持せしめることができ、本発明では好ましい形態である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の窒素酸化物除去用光触媒は、光照射により大気中の窒素酸化物除去に適した光触媒であって、光半導性を有した光触媒基材に酸化鉄が0.1〜3質量%含有されている。光触媒基材に酸化鉄を微量含有せしめることにより有害なNOの副生が著しく抑制され、NOを選択的に硝酸として除去することができる。
【0014】
本発明の光触媒基材に含有せしめる酸化鉄の含有率は、0.1〜3質量%の範囲であり、より好ましくは0.2〜2質量%である。酸化鉄の含有率が0.1質量%未満である場合は、NO副生の抑制効果が弱まる。また酸化鉄の含有率が3質量%より大きくなる場合は、光触媒基材の粒子表面が酸化鉄で覆われるため、光が光触媒基材に十分に照射されなくなり光触媒性能の低下を招く。
光半導性を有した光触媒基材としては、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛や酸化タングステン等の酸化物、チタン酸ストロンチウム等の複合酸化物や硫化カドミウム、硫化亜鉛、炭化ケイ素等の化合物やそれらの混合物が使用可能である。好ましくは酸化チタンを含有するものが好ましい。また特公平5−55184号公報に示されるチタン−ケイ素、チタン−ジルコニウム等のチタン系複合酸化物も、本発明の光半導性を有する光触媒基材として使用することができる。
【0015】
本発明の目的である窒素酸化物の処理においては、光触媒反応により硝酸が生成するため、硝酸により溶解等が予測される光触媒基材の使用は好ましくない。また光触媒基材に0.1〜3.0質量%の酸化鉄を含有せしめる方法としては、鉄塩水溶液に含浸し加熱処理により固定化することが一般的であり、光触媒基材は耐熱性が十分あることが好ましい。上記観点において酸化チタンあるいは前記チタン系の複合酸化物は、光触媒活性が高く、且つ化学的に安定であるため腐食性の高い硝酸に対して安定であり、好ましい実施形態である。特にチタン系複合酸化物は、優れた耐熱性も有しているため更に好ましい。
【0016】
これら光触媒基材は、比表面積が30〜100m/gであり、酸化チタンとしての含有率が少なくとも50質量%以上であるものが好ましい。比表面積が30m/g未満である場合は担持する酸化鉄の分散性が悪くなるため好ましくない。また比表面積が100m/gを超える場合は、光触媒基材がアモルファスであり、酸化鉄を含浸担持して焼成する際に粒子成長と同時に、著しい比表面積の低下を招く可能性が高い。特に光触媒用として市販されている酸化チタンは数百m/g以上の比表面積を有しているが、300℃以上の高温で焼成することにより、著しい熱収縮を起こして酸化鉄が光触媒基材の中に埋もれてしまうため好ましくない。従って、このような熱処理に対して安定な上記範囲の比表面積を有した光触媒基材を使用することが好ましい。
【0018】
酸化チタンに、耐熱性向上成分としてジルコニウムおよび/またはアルミニウムを酸化物として0.5〜10質量%含有せしめることによって、酸化チタンの耐熱性を大幅に改善することができる。これにより光触媒基材上に酸化鉄を高分散に担持せしめることが可能となり、微量の酸化鉄担持により良好な窒素酸化物除去性能を有している光触媒が得られる。
【0019】
具体的には、酸化チタンの粉末に、ジルコニウムおよび/またはアルミニウムの金属塩溶液またはゾル溶液を含浸して乾燥焼成することによって、酸化チタンの表面に酸化ジルコニウムまたは酸化アルミニウムを分散担持することにより目的を達成することができる。上記方法において酸化チタンを改質する場合は、酸化ジルコニウムおよび酸化アルミニウムの合計の担持率が、0.5〜10質量%とすることが好ましい。ジルコニウムあるいはアルミニウムの担持量が、0.5質量%未満では改質の効果は得られない。また10質量%を超える場合は、酸化チタンの表面が光不活性物質により被覆されてしまい光触媒性能が十分発揮できなくなってしまう。尚、酸化チタンに酸化ジルコニウムまたは酸化アルミニウムを担持してから酸化鉄を含有せしめても良いし、ジルコニウムまたはアルミニウムの溶液と同時に鉄化合物の溶液を含浸担持しても良い。
【0020】
また光触媒基材に適したチタン系複合酸化物としてはチタンとケイ素、ジルコニウムおよび/またはアルミニウムからなる複合酸化物を挙げることができる。すなわちTiO−SiO,TiO−ZrO,TiO−Al,TiO−SiO−ZrO,TiO−Al−ZrO等の複合酸化物を用いることが好ましく、特にTiO−ZrO複合酸化物が窒素酸化物除去に対して優れた効果を発揮する。
【0021】
チタン系複合酸化物においてケイ素、ジルコニウムおよびアルミニウム等のチタン以外の酸化物の合計が5〜50質量%であることが好まく、より好ましくは10〜30質量%である。5質量%未満では複合化の効果が不十分であり耐熱性の向上効果が小さくなる。また50質量%を超えると酸化チタンの含有率が低下して光触媒性能も低下するので好ましくない。
【0022】
上記チタン系複合酸化物は既知の手法により調製することが可能であるが、例えばチタンとジルコニウムの複合酸化物を調製する方法としては以下の方法を例示する。
▲1▼四塩化チタンをオキシ塩化ジルコニウム水溶液と共に混合し、アンモニアを添加して沈殿を生成せしめ、この沈殿を洗浄、乾燥後に焼成する方法。
▲2▼硫酸チタニル硫酸水溶液と硫酸ジルコニウム水溶液を混合して、共沸して加水分解により沈殿を生成させ、これを洗浄、乾燥後に焼成する方法。
▲3▼チタニウムテトラプロポキシドとジルコニウムテトラ−n−2プロポキシドのアルコール溶液に水を添加して加水分解することにより沈殿を生成させ、これを洗浄、乾燥後に焼成する方法。
【0023】
上記調製方法において、▲1▼の方法が特に好ましいものであり、安価で容易な製造方法により優れた光触媒特性を有するチタン系複合酸化物を得ることができる。またチタン源、ジルコニウム源およびアルミニウム源のモル比を所定量とすることにより、同様にしてチタン系各複合酸化物よりなる光触媒基材を得ることができる。複合酸化物の焼成温度は500〜900℃にて実施することにより、光触媒基材に好適な比表面積を有した複合酸化物を得ることができる。このようにして得られたチタン系複合酸化物は耐熱性が良好であり、光触媒性能の発現に必要である結晶化も十分なされている。
【0024】
光触媒基材に酸化鉄を含有せしめる方法としては、一般的な含浸法を用いることが好ましい。無機あるいは有機の鉄系化合物の水溶性鉄塩を、適当量の水に溶解して光触媒基材に含浸する。その後、ドラムドライヤーやスプレードライヤー等を用いて水分を蒸発させて乾燥し、焼成することにより光触媒基材に酸化鉄を固定することができる。焼成温度は200〜600℃の範囲であり、好ましくは300〜500℃で実施することが好ましい。焼成温度が、200℃以下では鉄化合物の分解が不十分となり、添加効果が得られないと同時に、酸化鉄として固定化されていないため使用時に雨等により洗い流されてしまうため好ましくない。また600℃以上で焼成すると光触媒基材の比表面積の低下を招くため好ましくない。
【0025】
酸化鉄はFeO、Fe、α−Fe、γ−Fe等の各種結晶形態があることが知られているが、本発明の光触媒基材に担持されている酸化鉄の結晶形としてはα−Feであることが好ましい。酸化鉄の出発原料としては硝酸鉄、塩化鉄、硫酸鉄等の無機系鉄化合物やシュウ酸鉄、クエン酸鉄等の有機系鉄化合物を用いることができるが、比較的低温で熱処理することによりα−Feを容易に得ることができる硝酸鉄を鉄源として用いることが好ましい。
【0026】
また、本発明の窒素酸化物除去用光触媒は、さらに、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、イリジウム、金、銀から選ばれる元素を必要により含有せしめることが可能である。上記元素は光触媒基材に対する含有率は0〜0.1質量%であり、より好ましくは0.003〜0.03質量%である。これら元素を含有せしめることにより、更に性能を向上させることができる。
【0027】
本発明の光触媒は路面や道路周辺の建材等の表面に被覆することにより、太陽光を利用して環境中の窒素酸化物を効率よく処理することが可能である。また人工光源を利用してトンネルや地下駐車場の排ガスに含まれる窒素酸化物を処理するシステムに適用することも考えられる。
【0028】
光触媒を建材等の表面に被覆する方法に関しては、無機系および/または有機系の結合材と共に各種建材に吹き付けたり、塗料化して各種建築物に塗布したり、コンクリートやセメントと混練りして利用する方法がある。本発明における、光触媒を建材等に固定化する結合材としては、アクリル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂やポリビニルアルコール等の有機系結合材およびシリカゾル、アルミナゾル、セメント、水ガラスやりん酸塩等の無機系結合材を使用することができる。
【0029】
光触媒を施工する上記建材や建築物としては路面、ブロック、レンガ、防音壁、遮光壁、ビル側壁、ガードレール、道路標識等が挙げられる。これら道路関連の建造物等に、本発明の光触媒を被覆することにより窒素酸化物除去機能を付与することが可能であり、本発明の好ましい使用形態である。
【0030】
【実施例】
(実施例1)
最初にチタンおよびジルコニウムからなる複合酸化物を、以下に述べる方法で調製した。オキソ硝酸ジルコニウム水溶液83.3kg(ZrO濃度18重量%)と硫酸チタニルの硫酸水溶液180L(TiO濃度250g/L,全硫酸濃度1100g/L)を水250kgで希釈して十分に混合した。次に、この溶液を攪拌しながら徐々にアンモニア水800kg(濃度10重量%)を滴下して共沈ゲルを生成し15時間静置した。得られたゲルを濾過、水洗後200℃で10時間乾燥し、650℃で4時間焼成した後にハンマーミルにて粉砕しチタンとジルコニウムの複合酸化物TZ−1を得た。この複合酸化物の組成は、酸化物換算でTiO/ZrO=75/25の比率で含有されており、比表面積は50m/gであった。このようにして得られたTZ−1を光触媒基材として硝酸鉄水溶液に浸漬し、乾燥後に400℃で2時間焼成することにより、酸化鉄が1.0質量%担持された光触媒Aを得た。
【0031】
(実施例2)
実施例1の複合酸化物の調製において、オキソ硝酸ジルコニウムの代わりに硝酸アルミニウムを使用した以外は、実施例1と同様にしてチタンとアルミニウムの複合酸化物TA−1を調製した。この複合酸化物の組成は、酸化物換算でTiO/Al=75/25の比率で含有されており、比表面積は80m/gであった。このようにして得られたTA−1を光触媒基材として実施例1と同様にして酸化鉄が1.0質量%担持された光触媒Bを得た。
【0032】
比較例5〜7
実施例1において、比表面積が75m/gであり結晶形がアナターゼの市販されている酸化チタンを光触媒基材として用いた以外は、実施例1と同様にして酸化鉄が1.0質量%担持された比較例5の光触媒を得た。また、比較例5において、酸化鉄の担持量を変更して比較例6、7の各光触媒を調製し、表1にその組成を示した。
【0033】
(実施例3、4
実施例1において、比表面積が75m /gであり結晶形がアナターゼの市販されている酸化チタンを光触媒基材として用い、かつ、酸化鉄と同時に硝酸ジルコニウム水溶液またはアルミナゾルを添加した以外は実施例と同様にして、実施例3、4の光触媒を得た。各光触媒の組成を同様に表1に示した。
【0034】
(比較例1〜3)
実施例3において酸化鉄を担持しない市販の酸化チタンを比較例1(光触媒a)とした。また実施例3において酸化鉄の担持量を変更して比較例2および3を調製し、表1に組成を示した。
【0035】
(比較例4)
実施例3において硝酸鉄水溶液の代わりに硝酸白金水溶液に含浸した以外は実施例3と同様にして白金が1.0質量%担持された比較例4の光触媒dを得た。光触媒の組成を表1に示した。
【0036】
【表1】
Figure 0003986786
【0037】
<試験例1>
実施例1〜および比較例1〜の光触媒を、以下に示す流通式試験方法で窒素酸化物処理性能を確認した。試験試料は光触媒をエタノールと共にガラスビーズで湿式粉砕し得られた光触媒含有スラリーを、150×70mmのガラス板の片面に光触媒が20g/mとなるように塗布し室温で乾燥したものを使用した。上記試料を反応器に設置し紫外線を照射して光触媒による窒素酸化物処理性能を調べた。処理ガスは、NO濃度が1ppmの窒素酸化物含有空気とし5.5L/minで通ガスして、反応部におけるガス線速が0.4m/sに調した。入口及び出口のガスを化学発光式のNOx計を用いて窒素酸化物濃度を測定し、出口NO濃度からNO除去率を、出口NO濃度からNOx除去率をもとめた。尚、光源としてブラックライトを用いて反応器の窓板より光を照射し試料表面における365nm付近の紫外線強度は1mW/cmであった。各光触媒の性能試験結果を表2に示した。尚、上記試験試料は、本発明の光触媒を使用した被覆材の一つの実施形態である。
【0038】
【表2】
Figure 0003986786
【0039】
上記試験条件は、光触媒が実際に使用される環境を想定したものであるが、ガスと光触媒が二次元で接触しており、しかも0.4秒以下の短い接触時間であるため、比較例1に示されるように、従来の酸化チタン単独の光触媒では、NOがNOに転化するのみで、NOxの除去率としてはほとんど得られていない。そこでこれらの不足性能を補うために、従来の光触媒は活性炭、ゼオライト等の吸着剤やアルカリ成分等のトラップ剤を共存させる必要があった。あるいは比較例4に示すように、多量の白金族金属を担持することにより、性能は大幅に改善されるが、触媒コストが大幅アップとなり広く適用することが不可能である。
【0040】
一方、本発明に開示されている範囲で酸化鉄を含有せしめた実施例の光触媒は、NOをほとんど副生することなくNOを除去することが可能であり、高価な白金族金属を担持しなくても実用レベルのNOx除去性能が得られている。
【0041】
【発明の効果】
本発明の光触媒は、環境中の窒素酸化物処理に優れた効果を発揮し、窒素酸化物を硝酸にまで酸化する速度が極めて速い。これにより従来、耐久性が問題視されていた吸着剤やトラップ剤が不要であり、光触媒のみの効果により窒素酸化物を除去することが可能となる。すなわち生成した硝酸により、光触媒は変質されることなく雨水等により洗浄されて再生されるため、本発明の光触媒は長期的に効果を持続することが可能となる。また白金族金属を添加しなくても良いため、光触媒を安価に製造することが可能であり広く各種用途に適用することができる。

Claims (4)

  1. 酸化チタンと酸化ジルコニウムおよび/または酸化アルミニウムとの混合物、あるいはチタンとジルコニウムおよび/またはアルミニウムとの複合酸化物からなる光触媒基材に、酸化鉄を0.1〜3質量%含有せしめてなる窒素酸化物除去用光触媒であって、該酸化鉄が、水溶性鉄化合物の水溶液を光触媒基材に含浸、または、該水溶液に光触媒基材を浸漬した後、焼成して得られたものであることを特徴とする窒素酸化物除去用光触媒。
  2. 水溶性鉄化合物が硝酸鉄である請求項1記載の窒素酸化物除去用光触媒。
  3. 光触媒基材中のチタンの含有量(酸化チタン換算)が50質量%以上である請求項1または2記載の窒素酸化物除去用光触媒。
  4. 光触媒基材の比表面積が30〜100m/gである請求項1、2または3記載の窒素酸化物除去用光触媒。
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