JP3986230B2 - 倒立型ボイラ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボイラ本体の上部に燃料ノズル及び主空気ノズルが設けられたバーナ風箱を配置し、前記バーナ風箱の下方に付加空気供給用の付加空気ノズルを設け、ボイラ本体の最下部に配置された燃焼ガス出口から燃焼排ガスを排出するように構成された倒立型ボイラ装置における付加空気ノズルの配置構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
発電用等のボイラ装置においては、ボイラ本体の上部に燃料ノズル及び主空気ノズルが設けられたバーナ風箱を配置し、前記バーナ風箱の下方に付加空気供給用の付加空気ノズルを設け、ボイラ本体の最下部に配置された燃焼ガス出口から燃焼排ガスを排出するように構成された倒立型ボイラ装置が採用されるようになってきた。
【0003】
かかる倒立型ボイラ装置の一つとして、特開平6−50507号の発明がある。
かかる発明においては、ボイラ本体の上部に燃料ノズル及び主空気ノズルが設けられたバーナ風箱を配置し、主燃焼用空気を前記主空気ノズルから火炉内に吹き込み、前記燃料ノズルから前記火炉内に噴射される燃料の燃焼に供して、該燃料と主燃焼用空気とによる燃焼火炎が生成し燃焼が継続する。
前記火炉内での燃焼においては、主燃焼用空気量を燃料の理論燃焼空気量以下に設定して還元燃焼をせしめ、燃料の燃焼によって発生した窒素酸化物(以下NOxという)を還元させ消滅せしめる。
【0004】
前記燃焼による燃焼排ガスあるいは燃焼火炎は下方に流動し、バーナ風箱の下方に配置された付加空気ノズルの位置で該付加空気ノズルから付加空気が投入され、前記還元燃焼での残存可燃物及び中間生成物の酸化が行なわれ、最下部の燃焼ガス出口までに燃焼を完了する。
かかる倒立型ボイラ装置にあっては、火炉における燃焼ガスの流れと逆方向に浮力が生じるので、還元域及び酸化域の双方の領域においても燃焼ガスの滞留時間が長くなり、NOx及び未燃物の燃焼が十分になされ、これらの量が低減される。
また、かかる倒立型ボイラ装置は、蒸気加熱器等の重量の大きい部材が下側に配置されることから、ボイラ本体を吊り下げる装置が不要となり、ボイラ装置の設置に要する鉄骨量が低減されるとともに設置作業も簡単となり、設置コストが低減されるという利点を有する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、かかる倒立型ボイラ装置にあっては、前記のような利点を備えている反面、次のような解決すべき問題点を有している。
即ち、図6〜7に示されるように、かかる倒立型ボイラ装置においては、付加空気ノズル2aは、火炉102の炉壁5の周方向に沿って等間隔に複数個(この例では4個)設けられ、該付加空気ノズル2aから、還元燃焼における残存可燃物及び中間生成物等の未燃物の量が多い炉壁5寄りの部位に付加空気120aを噴出せしめ、かかる部位における前記未燃物を燃焼せしめている。
【0006】
しかしながら、かかる従来技術にあっては、前記のように、付加空気ノズル2aからの付加空気120aは炉壁5寄りの部位に方向づけて噴出されているため、火炉102内の中央寄りの部位には供給され難く、また、図6に示されるように、同図にZにて示されている付加空気120aの先端部近傍の炉内温度が還元域121よりも低く、この部分の空気の密度が大きくなるため、該付加空気120aの先端部が下向きに垂れる形態となって、空気の直進性が低下し、これらによって前記中央寄りの部位に前記残存可燃物及び中間生成物等の未燃物が残存することとなり、燃焼が悪化するとともに前記未燃物による有害物質の排出をみる。
【0007】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、倒立型ボイラ装置において火炉内の全面に均等に付加空気を供給可能として、火炉内における空気の拡散を促進することにより、未燃物を完全燃焼し、燃焼を改善するとともに有害物質の排出を防止することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明はかかる課題を解決するため、請求項1記載の発明として、ボイラ本体の上部に配置されたバーナ風箱に設けられた燃料ノズル及び主空気ノズルから、火炉内に燃料及び燃焼用空気を夫々供給して理論空気量以下の還元雰囲気で燃焼させ、その燃焼ガス中に前記バーナ風箱よりも下方に配置された付加空気ノズルから付加空気を噴出させて残存可燃物を燃焼せしめ、ボイラ本体の最下部に配置された燃焼ガス出口から燃焼排ガスを排出するように構成された倒立型ボイラ装置において、前記付加空気ノズルを前記ボイラ本体の高さ方向に複数段設け、少なくとも前記バーナ風箱に最も近い最上位置に設けられた上流段の付加空気ノズルは前記火炉内の炉壁寄りの部位に付加空気を噴出するように配置され、これに隣り合う下方位置に設けられた燃焼排ガス流動方向下流段の付加空気ノズルは上位置の前記上流段の付加空気ノズルよりも前記火炉内の中央寄りの部位に付加空気を噴出するように配置され、前記付加空気ノズルそれぞれからの付加空気の噴出流速を、該付加空気ノズルが単段の場合における噴出流速60m/sより大きくして1・1〜2・0倍の範囲に設定するとともに、前記複数段の付加空気ノズルの段毎に噴出速度を前記範囲内において異なるように設定して、火炉内を下向きに流れる燃焼火炎に対する付加空気の貫徹力および拡散力が最適になるように構成したことを特徴とする倒立型ボイラ装置を提案する。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1において、前記複数段の付加空気ノズルは3段以上設置され、前記バーナ風箱に最も近い上流段の付加空気ノズルが前記火炉内の炉壁寄りの部位に付加空気を噴出するように配置され、該上流段の付加空気ノズルから燃焼排ガス流動方向下流段になるに従い該付加空気ノズルの付加空気噴出方向が前記火炉内の中央寄りの部位になるように配置されてなることを特徴とする。
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
かかる発明によれば、上流段の付加空気ノズルから火炉内に噴出される付加空気は、火炉内の炉壁寄りの部位に方向づけて噴出され、還元域に近く、かつ炉壁寄りの部位における残存可燃物及び中間生成物等の未燃物を酸化、燃焼せしめる。
また、下流段の付加空気ノズルからの付加空気は、火炉内の中央寄りに向けて噴出されるため、上流段の付加空気ノズルによっては付加空気が供給され難かった中央寄りの部位に、該下流段の付加空気ノズルからの付加空気が供給され、中央寄りの部位における未燃物を酸化、燃焼せしめる。
【0014】
従って、かかる発明によれば、上流段の付加空気ノズルからの付加空気によって火炉内の、還元域に近くかつ炉壁寄りの未燃物を酸化、燃焼せしめるとともに、下流段の付加空気ノズルからの付加空気によって、上流段の付加空気ノズルによっては付加空気が供給され難かった中央寄りの部位の前記未燃物を酸化、燃焼せしめることができ、火炉内の全面に均等に付加空気が供給されることとなって、該火炉内における空気の拡散が促進され、前記未燃物の燃焼が促進され、燃焼が改善されるとともに有害な未燃物の排出が防止される。
【0015】
また、請求項2記載の発明によれば、前記付加空気ノズルを3段以上設け、該付加空気ノズルからの付加空気の噴出方向を、バーナ風箱に近い上流側が炉壁寄りになるようにし、下流側になるに従い徐々に中央寄りに変向させて行くことにより、付加空気を炉壁寄りの部位から中央部までくまなく供給することができ、均一な燃焼が得られる。
【0016】
また、請求項1記載の発明は、前記付加空気ノズルからの付加空気の噴出流速を、該付加空気ノズルが単段の場合における噴出流速60m/s程度より大きくして1・1〜2・0倍に設定したことを特徴とする。
【0017】
かかる構成によれば、前記噴出流速vを従来技術における単段の場合の値v(v=60m/s程度)よりも大きくし、前記範囲v/v=1・1〜2・0のように設定することにより、火炉内における付加空気の直進性が上昇し、該空気の貫徹力が上昇して、付加空気の先端部が下向きに垂れる形態となるのが回避され、火炉内における空気の拡散がさらに促進される。
【0018】
さらに、請求項1記載の発明は、前記付加空気の噴出流速を、前記噴出流速の範囲内で前記複数段の付加空気ノズルの段毎に異なるように設定したことを特徴とする。
かかる構成によれば、一方側の段の付加空気ノズルにより火炉内の炉壁寄りの部位に噴出される付加空気の噴出流速と、他方側の段の付加空気ノズルにより中央寄りの部位に噴出される付加空気の噴出流速とを、該付加空気の貫徹力及び拡散力が最適になるように設定でき、さらなる付加空気の均一な拡散が得られる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0020】
図1は本発明の実施形態における、第1実施例に係る付加空気ノズルの平面配置図で、(A)は図2のA−A矢視図、(B)は図2のB−B矢視図である。図2は本発明が適用される倒立型ボイラ装置の全体構成図である。図3は第1実施例の作用説明用平面図で、(A)は図2のA−A矢視該略図、(B)は図2のB−B矢視該略図である。図4は第2実施例に係るボイラ本体の要部縦断面図である。図5は第2実施例に係る付加空気ノズルの平面配置図で、(A)は図4のE−E矢視図、(B)は図4のD−D矢視図、Cは図4のC−C矢視図である。また図8は、付加空気ノズルの実験結果を示す線図である。
【0021】
本発明に係る倒立型ボイラ装置の全体構成を示す図2において、1はボイラ本体で、最上部に火炉102が設けられ、燃焼排ガスが該火炉102から下方に流れて、最下部に設けられた燃焼ガス出口130から排出されるように構成された倒立型のボイラ本体となっている。
4は前記ボイラ本体1の火炉102に対向して設置されたバーナ風箱、3及び3aは、該バーナ風箱4内に縦方向に複数段かつ周方向に複数列夫々設けられた燃料ノズル及び主空気ノズルである。
【0022】
125は前記燃料ノズル3に接続されて該燃料ノズル3に燃料を供給するための燃料供給管である。116は前記バーナ風箱4の主空気ノズル3aに接続される空気通路で、該空気通路116から分岐された付加空気通路6が後述する付加空気ノズル2a、2bに接続されている。
107は前記ボイラ本体1下部の燃焼ガス出口130に接続される排ガス通路、108は該排ガス通路107に設置された蒸気加熱管、109はエコノマイザ、110は脱硝装置、111は前記排ガス通路を通る排ガス124により前記空気通路116に送られる燃焼用空気118を予熱する空気加熱器、112は集塵器、114は煙突である。
【0023】
以上の基本構成は従来技術と同様である。本発明は付加空気ノズル(2a、2b)の配置態様の改良に係るものである。
【0024】
即ち、前記ボイラ本体1の、前記バーナ風箱4の下方部位つまり燃焼排ガス下流部位には2段の付加空気ノズル、即ち上流側の付加空気ノズル2a及び下流側の付加空気ノズル2bが炉壁5の周方向等間隔に夫々4個(複数個であればよい)設置されており、前記ボイラ本体1内は、前記火炉102と該付加空気ノズル2a、2b設置部との間に還元燃焼を行う還元域121、該付加空気ノズル2a、2b設置部と前記燃焼ガス出口130との間に酸化燃焼を行う酸化域122が夫々形成される。
129は前記燃料供給管125から分岐されて前記付加空気ノズル2a、2bに接続される温調用燃料供給管である。尚、該温調用燃料供給管129は必要に応じて設けるものとする。
【0025】
前記付加空気ノズル2a、2bの平面配置を示す図1において、前記バーナ風箱4に最も近い側にある上流段の付加空気ノズル2aは、図1(A)に示すように、前記火炉102内の炉壁5寄りの部位に付加空気120を噴出するように配置され、また、これに隣り合う燃焼排ガス流動方向下流段の付加空気ノズル2bは、図1(B)に示すように、前記上流段の付加空気ノズル2aよりも前記火炉102内の中央寄りの部位に付加空気120を噴出するように配置されている。即ち、図1において、前記上流段の付加空気ノズル2aは、(A)のように、夫々の空気噴出方向線02が直径D1の円の接線方向となり、また前記下流段の付加空気ノズル2bは、(B)のように、夫々の空気噴出方向線02が前記直径D1よりも小さい直径D2の円の接線方向となるように配置されている。
【0026】
また、前記付加空気ノズルは、前記火炉102内の炉壁5寄りの部位に付加空気を噴出するように配置された上流段の付加空気ノズル2aと、前記火炉102内の中央寄りの部位に付加空気を噴出するように配置された下流段の付加空気ノズル2bとを、前記ボイラ本体1の高さ方向に交互に設置する、つまり、図2のような、前記上流段の付加空気ノズル2aと下流段の付加空気ノズル2bとを1組として、これをボイラ本体1の高さ方向に複数組設けることもできる。
【0027】
かかる構成からなる倒立型ボイラ装置の運転時において、空気加熱器111にて排ガス124との熱交換により昇温された燃焼用空気118は、主燃焼用空気119と付加空気120とに分流され、主燃焼用空気119はバーナ風箱4の主空気ノズル3aへ、付加空気120は付加空気通路6を通って前記付加空気ノズル2a、2bへ送られる。
前記主燃焼用空気119は主空気ノズル3aから前記火炉102内に吹き込まれ、前記燃料ノズル3から火炉102内に噴射される燃料の燃焼に供される。そして、図示しない着火源によって前記燃料が着火し該燃料と主燃焼用空気119とによる燃焼火炎が生成され、燃焼が継続される。
【0028】
前記火炉2内における燃焼時において、前記燃焼火炎の燃焼継続に使用される主燃焼用空気119の量は、通常、燃料ノズル3から投入される燃料の理論燃焼空気量以下に設定される。その結果、前記付加空気ノズル2a、2bよりも上流側の火炉2内には還元雰囲気の還元域121が形成される。
前記還元域121では、前記燃料の燃焼によって発生した窒素酸化物(以下NOxという)が還元されて消滅し、代わってシアン、アンモニア等の中間生成物が発生する。また、理論燃焼空気量以下での燃焼であるため、投入された燃料の完全燃焼は不可能であり、燃焼排ガス中には可燃物が残存する。尚、前記還元燃焼ゾーンにおける空気比は低い程、前記NOxの還元効果は大きいが、前記のように、燃焼排ガス中の残存可燃物の量が増大する。
【0029】
前記燃焼により燃焼排ガスあるいは燃焼火炎は、燃焼を継続しながら下降し、前記2段の付加空気ノズル2a、2bの位置で該付加空気ノズル2a及び2bから付加空気120が投入され、前記残存可燃物及び中間生成物の酸化が行なわれ、最下部の燃焼ガス出口130までに燃焼を完了する。
前記燃焼による排ガス124前記は燃焼ガス出口130から蒸気加熱管108に送られ、ここで該蒸気加熱管108の管内を流れる水と熱交換して蒸気を発生させた後、エコノマイザ109、脱硝装置110、空気加熱器111、集塵器112等を経て、煙突114から大気中に放出される。
【0030】
前記のように、還元域121においては、理論空気量以下の還元雰囲気で燃焼を行い、これによりNOxの発生量が抑制される。そして、この燃焼ガスは燃焼を継続しながら下降し、前記2段の付加空気ノズル2a、2bの位置で該付加空気ノズル2a及び2bから付加空気120a及び120bが投入され、前記還元域121での燃焼による残存可燃物及び中間生成物の酸化が行なわれる。
【0031】
かかる燃焼時において、前記バーナ風箱4に最も近い側、つまり前記残存可燃物及び中間生成物の量が多い還元域121寄りにある上流段の付加空気ノズル2aから火炉102内に噴出される付加空気120aは、図3(A)に示すように、火炉102内の炉壁5寄りの部位に方向づけて噴出され、還元域121に近く、かつ炉壁5寄りの前記残存可燃物及び中間生成物等を酸化、燃焼せしめる。
しかしながら、図3に示されるように、前記上流段の付加空気ノズル2aからの付加空気120aは炉壁5寄りの部位に方向づけているため、火炉102内の中央寄りの部位には供給され難く、また、図6に示されるように、付加空気120aの先端部近傍の炉内温度が前記還元域121よりも低くこの部分の空気の密度が大きくなるため、該付加空気120aの先端部が下向きに垂れる形態となって、空気の直進性が低下し、これらによって前記中央寄りの部位に前記残存可燃物及び中間生成物等の未燃物が残存する。
【0032】
然るに、かかる実施例においては、前記上流段の付加空気ノズル2aの下流側に配置された下流段の付加空気ノズル2bから前記火炉102内の中央寄りの部位に付加空気120bが噴出せしめられる。即ち図3(B)に示すように、該下流段の付加空気ノズル2bからの付加空気120bは火炉102内の中央寄りに向けて噴出されるため、上流段の付加空気ノズル2aによっては付加空気が供給され難かった中央寄りの部位に、該下流段の付加空気ノズル2bからの付加空気120bが供給されることとなる。
従って、前記上流段の付加空気ノズル2aからの付加空気120aによって火炉102内の、還元域121に近くかつ炉壁5寄りの前記未燃物を酸化、燃焼せしめるとともに、前記下流段の付加空気ノズル2bからの付加空気120bによって、上流段の付加空気ノズル2aによっては付加空気が供給され難かった中央寄りの部位の前記未燃物を酸化、燃焼せしめることができ、火炉102内の全面に均等に付加空気120が供給されることとなって、火炉102内における空気の拡散が促進され、前記未燃物の燃焼が促進される。
【0033】
ここで、本発明においては、前記付加空気ノズル2a、2bからの付加空気120a、120bの噴出流速を、該付加空気ノズル2が単段の場合における噴出流速の1・1〜2・0倍に設定する。かかる噴出流速の設定根拠は次のとおりである。
即ち、従来技術に係る付加空気ノズルが単段の場合における付加空気120の噴出流速vは、60m/s程度であるが、該噴出流速vを大きくすると付加空気120の直進性が上昇し、前記のような直進性の低下によって、付加空気120の先端部が下向きに垂れて該付加空気120が火炉102内全面に行き渡らなくなるのが回避される。
しかしながら、その一方で、該噴出流速vを大きくすると付加空気ノズル2a、2bの圧力損失が増大する。
【0034】
そこで、発明者らは、かかるボイラー装置を模した燃焼装置において、前記2段の付加空気ノズル2a、2bを用いて燃焼実験を行い、前記噴出流速vを変化させて燃焼状態及び前記付加空気ノズル2a、2bの圧力損失を計測した。その結果を図8に示す。
図8に示すように、前記未燃物の量Qは、前記噴出流速vを前記単段の場合の値v0=60m/sから大きくするに従って減少してv/v=1.1〜1.3程度で最小値となり、その値からやや平行線になった後増大に転じ,また前記付加空気ノズル2a、2bの圧力損失は、前記噴出流速v増大とともに増大しv/v=2・0以上になると圧力損失限界の許容値を超える。
以上の結果より、前記噴出流速vの許容範囲は、v/v=1・1〜2・0であり、最適範囲はv/v=1.1〜1.3とする。
前記噴出流速vを従来技術における単段の場合の値v0=60m/sよりも大きくし、前記範囲v/v=1・1〜2・0のように設定することにより、火炉102内における付加空気120の直進性が上昇し該空気の貫徹力が上昇して、前記のように付加空気120の先端部が下向きに垂れる形態となるのが回避され、火炉102内における空気の拡散がさらに促進される。
【0035】
尚、前記付加空気120の噴出流速vを前記範囲v/v=1・1〜2・0に設定し、前記2段の付加空気ノズル2a、2bの噴出流速vを前記範囲内において前記2つの段で異なるように設定することもできる。
このようにすれば、前記付加空気ノズル2aにより火炉102内の炉壁5寄りの部位に噴出される付加空気120aの噴出流速と、付加空気ノズル2bにより中央寄りの部位に噴出される付加空気120bの噴出流速とを、該付加空気の貫徹力及び拡散力が最適になるように設定できる。
【0036】
図4〜5に示す第2実施例においては、図4に示すように、前記付加空気ノズルは3段設けられており、各段の付加空気ノズル2a、2c、2bは、前記第2実施例と同様に、炉壁5の周方向等間隔に夫々4個(複数個であればよい)設置されている。
そして、前記上流段の付加空気ノズル2aは、図5(A)のように、夫々の空気噴出方向線02が直径D1の円の接線方向となり、また中間段の付加空気ノズル2cは、図5(B)のように、夫々の空気噴出方向線02が前記直径D1よりも小さい直径D3の円の接線方向となり、さらに前記下流段の付加空気ノズル2bは、図5(C)のように、夫々の空気噴出方向線02が前記直径D3よりもさらに小さい直径D2の円の接線方向となるように配置されている。
【0037】
即ち、かかる第2実施例においては、前記3段の付加空気ノズル2a、2c、2bは、前記バーナ風箱4に最も近い上流段の付加空気ノズル2aが前記火炉102内の炉壁5寄りの部位に付加空気120を噴出するように配置され、該上流段の付加空気ノズル2aから燃焼排ガス流動方向下流段の付加空気ノズル2c、2bになるに従い該付加空気ノズル2c、2bの付加空気の空気噴出方向線02が前記火炉102内の中央寄りの部位になるように配置されている。
尚、前記付加空気ノズルを4段以上設けて、最上流段の付加空気ノズル2aの空気噴出方向線02を炉壁5寄りにし、下流段になるに従い空気噴出方向線02が中央寄りになるように設定することもできる。
【0038】
かかる実施例によれば、前記付加空気ノズルを多段設け、該付加空気ノズルからの付加空気120の噴出方向を、前記バーナ風箱4に近い上流側が炉壁5寄りになるようにし、下流側になるに従い徐々に中央寄りに変向させて行くことにより、付加空気120を炉壁5寄りの部位から中央部までくまなく供給することができ、均一な燃焼が得られる。
【0039】
【発明の効果】
以上記載の如く本発明によれば、上流段の付加空気ノズルからの付加空気によって火炉内の、還元域に近くかつ炉壁寄りの未燃物を酸化、燃焼せしめるとともに、下流段の付加空気ノズルからの付加空気によって、上流段の付加空気ノズルによっては付加空気が供給され難かった中央寄りの部位の前記未燃物を酸化、燃焼せしめることができ、火炉内の全面に均等に付加空気が供給されることとなって、該火炉内における空気の拡散が促進され、未燃物の燃焼が促進され、燃焼が改善されるとともに有害な未燃物の排出が防止される。
【0040】
特に請求項2のように構成すれば、前記付加空気ノズルを3段以上設け、該付加空気ノズルからの付加空気の噴出方向を、バーナ風箱に近い上流側が炉壁寄りになるようにし、下流側になるに従い徐々に中央寄りに変向させて行くことにより、付加空気を炉壁寄りの部位から中央部までくまなく供給することができ、さらに均一な燃焼が得られる。
【0041】
また、請求項1記載の発明のようにすれば、前記噴出流速vを従来技術における単段の場合の値v(v=60m/s程度)よりも大きくし、前記範囲v/v=1・1〜2・0のように設定することにより、火炉内における付加空気の直進性が上昇し、該空気の貫徹力が上昇して、付加空気の先端部が下向きに垂れる形態となるのが回避され、火炉内における空気の拡散がさらに促進される。
【0042】
さらに請求項1記載の発明のように構成すれば、一方側の段の付加空気ノズルにより火炉内の炉壁寄りの部位に噴出される付加空気の噴出流速と、他方側の段の付加空気ノズルにより中央寄りの部位に噴出される付加空気の噴出流速とを、該付加空気の貫徹力及び拡散力が最適になるように設定でき、さらなる付加空気の均一な拡散が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態における、第1実施例に係る付加空気ノズルの平面配置図で、(A)は図2のA−A矢視図、(B)は図2のB−B矢視図である。
【図2】 本発明が適用される倒立型ボイラ装置の全体構成図である。
【図3】 第1実施例の作用説明用平面図で、(A)は図2のA−A矢視該略図、(B)は図2のB−B矢視該略図である。
【図4】 第2実施例に係るボイラ本体の要部縦断面図である。
【図5】 第2実施例に係る付加空気ノズルの平面配置図で、(A)は図4のE−E矢視図、(B)は図4のD−D矢視図、Cは図4のC−C矢視図である。
【図6】 従来技術を示す図4対応図である。
【図7】 従来技術を示す図3対応図である。
【図8】 付加空気ノズルの実験結果を示す線図である。
【符号の説明】
1 ボイラ本体
2a、2b、2c 付加空気ノズル
3 燃料ノズル
3a 主空気ノズル
4 バーナ風箱
4a 空気ノズル
5 炉壁
6 付加空気通路
8 空気加熱器
102 火炉
107 排ガス通路
108 蒸気加熱管
111 空気加熱器
116 空気通路
118 燃焼用空気
119 主燃焼用空気
120、120a、120b 付加空気
121 還元域
122 酸化域
124 排ガス
125 燃料供給管
130 燃焼ガス出口

Claims (2)

  1. ボイラ本体の上部に配置されたバーナ風箱に設けられた燃料ノズル及び主空気ノズルから、火炉内に燃料及び燃焼用空気を夫々供給して理論空気量以下の還元雰囲気で燃焼させ、その燃焼ガス中に前記バーナ風箱よりも下方に配置された付加空気ノズルから付加空気を噴出させて残存可燃物を燃焼せしめ、ボイラ本体の最下部に配置された燃焼ガス出口から燃焼排ガスを排出するように構成された倒立型ボイラ装置において、前記付加空気ノズルを前記ボイラ本体の高さ方向に複数段設け、少なくとも前記バーナ風箱に最も近い最上位置に設けられた上流段の付加空気ノズルは前記火炉内の炉壁寄りの部位に付加空気を噴出するように配置され、これに隣り合う下方位置に設けられた燃焼排ガス流動方向下流段の付加空気ノズルは上位置の前記上流段の付加空気ノズルよりも前記火炉内の中央寄りの部位に付加空気を噴出するように配置され、前記付加空気ノズルそれぞれからの付加空気の噴出流速を、該付加空気ノズルが単段の場合における噴出流速60m/sより大きくして1・1〜2・0倍の範囲に設定するとともに、前記複数段の付加空気ノズルの段毎に噴出速度を前記範囲内において異なるように設定して、火炉内を下向きに流れる燃焼火炎に対する付加空気の貫徹力および拡散力が最適になるように構成したことを特徴とする倒立型ボイラ装置。
  2. 前記複数段の付加空気ノズルは3段以上設置され、前記バーナ風箱に最も近い上流段の付加空気ノズルが前記火炉内の炉壁寄りの部位に付加空気を噴出するように配置され、該上流段の付加空気ノズルから燃焼排ガス流動方向下流段になるに従い該付加空気ノズルの付加空気噴出方向が前記火炉内の中央寄りの部位になるように配置されてなることを特徴とする請求項1記載の倒立型ボイラ装置。
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