JP3985154B2 - コークス炭化炉の昇温用炉蓋 - Google Patents

コークス炭化炉の昇温用炉蓋 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コークス炉の炭化室(炉)に装入された石炭粒子の微粒子の侵入を阻みながら、該炭化炉の出入口(又は炉蓋)近傍部に装入された石炭粒子の加熱を促進する、炉内発生ガス回遊隔離室を設けたコークス炭化炉の昇温用炉蓋に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コークスを製造するコークス炉の炭化炉の出入口を開閉する炉蓋は、炭化炉に装入された石炭粒子を900℃以上の高温度で乾留する製造条件から、高温度の熱に耐えられる様に、頑丈な鋼鉄製フレーム構造体の炉内側に大きなブロック状の耐火煉瓦の内張が施されている。また、ここ数年前から世界中が地球環境保全の基盤が進められる中で、乾留中の石炭粒子から発生するCOやCHなどの汚染ガスのリークを防止した、ガスシール性の高い炉蓋が開発され使用されている。例えば特公昭60−25072号公報、特開2001−288472号公報その他多くの特許公報によって紹介される様に、炭化炉の出入口を大きな重量の耐火煉瓦で封印し、その周辺部の隙間をナイフエッジ断面の押圧条片でシールする炉内密閉構造の炉蓋が使用されている。地球環境の保全において、何ら問題を生じる事のない炉蓋である。しかしながら、炉蓋構造物の耐熱性の要求から内張された厚さ400mm程度の大きな耐火煉瓦が、炭化炉に隣接する加熱室(炉)から石炭粒子を乾留するために供給した高温度の熱を、吸収する。これが原因となって、炭化炉の炉蓋近傍部に装入された石炭粒子から充分に乾留が行われない不良コークスを製造し、コークス歩留の低下を来す問題があった。また不良コークスは他の乾留コークスと共に窯出しされるため、乾留コークスに混ざった不良コークスがコークスの品質劣化を招くため、その後においてコークスの選別作業を行わねばならず、生産性に大きく影響する問題があった。
【0003】
これらの問題を解消する目的から、炭化炉の炉蓋近傍部に装入された石炭粒子を加熱し、不良コークスを少なめる炉蓋の開発が試みられ、多くの特許公報で紹介されている。例えば特公平3−40074号公報(昭和55年出願)には「炭化室の装入物から生成する熱い気体を、該装入物と接触する少なくとも一つの扉の熱伝導性金属隔壁によって炭化室の内部と分離する扉の中の垂直な通路を通して送気管へ送り、該気体の通路での上昇と該隔壁の熱伝導性によって、該隔壁を介して該隔壁に接触する上記装入物の上方末端領域に、前記の熱い気体の一部を移して該装入物をコークス化する方法」が開示されている。この方法に基づいて開発されたのが特公平61−49353号公報(昭和57年出願)で、「扉体の炉内側に、スペース片を介してコーキングプレートを結合した個々の遮蔽部材が重なり合う炉内発生ガス通過用の遮蔽体を取り付けた、コークス炉蓋」がある。さらに特開昭62−72782号公報(昭和60年出願)には「炉壁の内側に取り付けた遮蔽体を、高さ方向に区分されたU字状の断面をもつ複数の遮蔽体で構成した、コークス炉蓋」、この他に金属製遮蔽体に耐熱性パッキンを取り付けた炉蓋の実公平6−43146号公報やコーキングプレートにセラミックスを使用した実開平2−69946号公報など、多くの昇温式炉蓋が開発されている。また特公平5−38795号公報の第1図で掲示される様に「炉蓋に付設した断熱材と炉内側に設けた加熱板との間に設けたガススペースで、乾留発生ガスの可燃性ガスの一部をノズルから吹き込む空気や酸素で燃焼させ、該ガススペースの温度を上昇させる加熱式の炉蓋」も開発されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この様に炉内発生ガスを通過させる遮蔽体やガススペースなどの空間ボックスを炉蓋に付設する事によって、従来から廃棄された炉内発生ガスが保有する高温度の熱を利用し炉蓋近傍部に装入された石炭粒子を加熱するため、不良コークスの発生を軽減する効果が期待される。しかしながら、実用化に供されていないのが現状である。
その理由は定かでないが、本発明者らの推測によると、次の様な問題があったものと考えられる。上記した様な遮蔽体は、ガス通気口が極端に少ないため、炉内発生ガスの流入量が制限され、該遮蔽体内の温度が上がらず、炉蓋近傍部の石炭粒子の加熱温度がそれほど上昇されない。乾留中に発生した泥状のタールが狭隘なガス通気口に流れ込んで凝固し閉塞する問題、タールで閉塞されたガス通気口の浄化作業を高い熱を保有する環境の中で行わねばならない作業上の問題があった。さらには遮蔽体が、金属板を溶接法で接合する組立構造物に製作されているため、コークスの窯出し毎に繰り返される熱変化によって起こる過大な熱応力の影響を受けて歪に変形し、溶接接合部から亀裂の発生を起こすなど構造上の問題があったものと考えられる。
【0005】
本発明者らは、こうした問題を解消するため、溶接法に依らない遮蔽体を設けたコークス炭化炉の昇温用炉蓋を、先に開発した。つまり、金属製の石炭粒子侵入遮蔽用短冊板を縦横に並列しかつ並列する該短冊板の左右に微小な通気用間隙を設けて炉内発生ガスを積極的に流入する炉内発生ガス回遊隔離室、さらに必要によっては空気や酸素などの燃焼用ガス吹込ノズルまたはCOやCなどの燃焼性ガス吹込ノズルを設けた炉内発生ガス回遊隔離室を、炉体構造体の炉内側に断熱ボックスを介して付設した、コークス炭化炉の昇温炉蓋を開発した。
さらに本発明者らは、先に開発した溶接法に依らない遮蔽体つまり炉内発生ガス回遊隔離室に、炭化炉に石炭粒子を装入する際に石炭粒子同志が衝突して発生しまたは浮遊する石炭微細子の侵入を阻み、石炭微細子による該回遊隔離室でのタール化を防止した目的のコークス炭化炉の昇温用炉蓋を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明はその目的を達成したもので、その要旨は、石炭粒子を装入する炭化炉の炉口枠に押圧するシールプレートを介して炭化炉の出入口を開閉する炉蓋構造体の炉内側に断熱ボックスを設け、さらに該断熱ボックスの炉高方向を複数段に分割する位置に横体枠を設けると共に、該横体枠の上下離隔間に石炭粒子侵入遮蔽用短冊板を縦横に並べかつ遊動可能に吊設して形成する炉内発生ガス回遊隔離室の少なくとも炭化炉内側で横並ぶ石炭粒子侵入遮蔽用短冊板の隣接側端部を突出部と切欠部の双方で狭隘な通気用曲折間隙路を形成する段差付継手形状に突き合わせて構成したコークス炭化炉の昇温炉蓋である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例で、炉高方向の断面図を示す。図1において、1はコークス炉の炭化炉である。2は炭化炉1に装入された石炭粒子である。3は、炉蓋構造体である。炉蓋構造体3は、炉体フレームと必要な箇所にフランジ部材で補強した鋼鉄製枠体フレーム4で、炭化炉1の炉口枠5を押圧する薄肉のシールプレート6を介して、炭化炉1の出入口7を開閉する構造に組み立てられている。8は閂である。閂8は、鋼鉄製枠体フレーム4を炭化炉1の出入口7に強く押圧して締結するもので、圧縮バネや螺子ボルトなどの締結用部材を組み合わせて構成されている。またシールプレート6の周縁部には、ナイフエッジ断面形状のフランジ部材9を接合すると共に、該フランジ部材9を炉口枠5に押圧するシリンダーやバネなどを使用した進退自在な押圧機具10が設けられている。すなわち、本発明における炉蓋構造体3は、炭化炉1の出入口7を開閉しかつ締結する構造に設けられている。
【0008】
11は、断熱ボックスである。断熱ボックス11は、金属製耐熱ボックス12にアルミナシリケートやカーボンウッドなど一般に使用される断熱効果の高い耐火断熱材を充填したもので、シールプレート6あるいは炉内ブレート13とシールプレート6とさらにスライドプレート14を介して炉蓋構造体3に設けられている。すなわち、断熱ボックス11は、シールプレート6を熱から保護すると共に、炉蓋構造体3から放出する熱を防止し、炭化炉1の炉蓋側を流通する炉内発生ガスの高温度の熱を保持する作用効果を奏するものである。
【0009】
さらに本発明においては、炉蓋構造体3に設けた断熱ボックス11の炉内側には、断熱ボックス11の炉高方向を複数段に分割する位置に、鉄鋼またはその他耐熱性金属材料の横体枠15が設けられている。横体枠15は、後述する炉内発生ガス回遊隔離室を断熱ボックス11に付設するもので、その形状については特に限定するものでない。
【0010】
16は、前記した炉内発生ガス回遊隔離室である。炉内発生ガス回遊隔離室16は、炭化炉1で発生した高温度の炉内発生ガスを流動(回遊)するもので、図2および図3で示す様に、鉄鋼またはその他耐熱性金属の板状やブロック状あるいはこれらを任意な形状に曲げ加工した石炭粒子侵入遮蔽用短冊板17を、横体枠15に遊動可能に吊設しながら、上下離隔間を周囲に沿って縦横に並べた壁面体の有底または無底のボックス構造に製作されている。また炉内発生ガス回遊隔離室16を形成する少なくとも炭化炉内側で横並ぶ石炭粒子侵入遮蔽用短冊板17の隣接側端部は、狭隘な通気用曲折間隙路を形成する段差付継手構造に突き合わせられて構成されている。さらに炉内発生ガス回遊隔離室16の上方端部には、必要によっては天板19あるいは排気パイプ(図示せず)に連通する排気口を設けてもよく、該室内には空気や酸素あるいは可燃性ガスを吹き込むノズルを1個または炉高方向に2個以上を設けてもよい。すなわち、炉内発生ガス回遊隔離室16を形成する石炭粒子侵入遮蔽用短冊板17の加熱時に起こる膨脹による変形は、横体枠15に遊動可能に吊設する逃避構造で解消される。また隣接する石炭粒子侵入遮蔽用短冊板17の通気用間隙から侵入しタール化し易い石炭微細子、図2あるいは図3で示す様に、隣接側部端を突出部と切欠部の双方を重合する様に突き合わせ狭隘な通気用曲折間隙路18を形成する段差付継手形状で、侵入を阻む構造に製作されている。
【0011】
さらに本発明においては、コークス炉の操業中または窯出し中に何かの障害で損傷した石炭粒子侵入遮蔽用短冊部材17のみを簡単に取り替え易い様に、ボルトナット締結具による固定の他に、横体枠15に安定に吊設する着脱自在機構の係留構造に設けてもよい。図4は、係合構造の一実施例を図1のA−A線に相当する炭化炉側横断面の斜視図を示したものである。下段側石炭粒子侵入遮蔽用短冊部材17Aの上端部側には、上部側を凹凸面に成形した横体枠15の凹部20に係留する鉤型形状の2条の離隔引掛片21を設けて横方向への移動を拘束すると共に、その反対の下端部側すなわち図中においては上段側石炭粒子侵入遮蔽用短冊部材17Bの下端部と前記した石炭粒子侵入遮蔽用短冊部材17Aの上端部とを切欠断面段付継手構造で縦合し、さらに双方の切欠突出片側には、石炭粒子侵入遮蔽用短冊部材17の膨張による長手方向の伸びを収容しかつ該短冊部材17の着脱作業時に使用される摺動用空間Sを設けた継手構造に構成されている。すなわち、継手構造は、損傷した石炭粒子侵入遮蔽用短冊部材17を下方から上方に突き上げながら摺動用空間Sを上昇させつつ、該短冊部材17の離隔引掛片21を横体枠15から掛け離した後、下側から外側に回転させながら取り外す構造に設けられている。また石炭粒子侵入遮蔽用短冊部材17の下方側には、何らかの衝突で該短冊部材17が異常突き上げられて横体枠15から不必要に離脱する事を防止する、突上離脱防止用突起物22が設けられている。該突起物22の形状については、横体枠15の下端部に衝止する高さであればよく、特に限定するものでない。図は、矩形断面の突起条物を示す。尚、図4の18Aおよび18Bは、通気用曲折間隙路18の一側端面形状を示す。
【0012】
上記の様に構成された本発明のコークス炉蓋は、従来のコークス化操業に従って、炭化炉1の出入口7をシールプレート6で密閉しつつ炉蓋構造体3で閉塞した後、石炭粒子2を炭化炉1に装入する。炭化炉1に装入された石炭粒子2は、隣接する加熱炉から供給される高温度の熱で乾留されながら、徐々にコークス化する。このとき炭化炉1の中央部に装入された石炭粒子2から発生する高温度の熱を保有する炉内発生ガスは、石炭粒子侵入遮蔽用短冊部材17側へ流動しながら炉蓋近傍部に装入された石炭粒子2を加熱し、炉内発生ガス回遊隔離室16の狭隘な通気用曲折間隙路18を通過しながら、該回遊隔離室16に流入する。このとき狭隘な通気用曲折間隙路18の直前で、流入する炉内発生ガスに減圧作用を呈して該ガス中に混在する石炭微細子の流入が阻まれ、炉内発生ガスのみが流入し、炉内発生ガス回遊隔離室16でタールの生成を著しく軽減する作用効果を奏する。炉内発生ガス回遊隔離室16に流入した炉内発生ガスは、該回遊隔離室16を回遊しながら石炭粒子侵入遮蔽用短冊部材17を加熱しまたその一部のガスを排気処分しながら、該短冊部材17を介して炉蓋近傍部に装入された石炭粒子2を加熱する。
本発明において炉内発生ガス回遊隔離室16が、通気用曲折間隙路18を介して石炭粒子侵入遮蔽用短冊部材17を並列する組み立て構造に製作されているため、炉蓋近傍部に装入された石炭粒子2を急速に加熱する。従って、石炭粒子2の乾留速度が速められ、早い時期に乾留コークスが製造される。また低温時の石石炭粒子侵入遮蔽用短冊部材17の通気用曲折間隙路18直前で生成した泥状タールも、高温度に曝されながら凝固する事なく、早い時期にガス化する効果も奏する。
【0013】
【発明の効果】
以上述べた様に鉄鋼またはその他の耐熱性金属材料で組み立てられた本発明のコークス炉蓋によれば、石炭粒子侵入遮蔽用短冊板17を縦横に並べた炉内発生ガス回遊隔離室16を炉蓋構造体3に付設する構造であるため、炉蓋付近に装入された石炭粒子2を急速に加熱し、例え石炭粒子侵入遮蔽用短冊板17の一本が損傷した場合でも直ちに新部材に取り替えられる作業上の特長がある。また損傷して取り替えられた石炭粒子侵入遮蔽用短冊板17は、損傷した箇所を矯正加工を施して再使用する事も出来、鉄鋼業において再資源として活用できる。さらにまた本発明における炉内発生ガス回遊隔離室16は、縦方向に並べられる石炭粒子侵入遮蔽用短冊板17の隣接側端部がタール化し易い石炭微粒子の流入を阻む通気用曲間隙路18を形成する構造に設けられているため、炉蓋のクリーナ作業を頻繁に行う必要もない等、多くの利点や特長を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例で、炉高方向の断面図を示す。
【図2】図1における炉蓋構造体の炭化炉側を拡大した断面斜視図を示す。
【図3】図1における別の一実施例で、炉蓋構造体の炭化炉側を拡大した断面斜視図を示す。
【図4】本発明における石炭粒子侵入遮蔽用短冊部材17の継手部分の一実施例を斜視図で示す。
【符号の説明】
1 炭化炉
2 石炭粒子
3 炉蓋構造体
5 炉口枠
6 シールプレート
7 出入口
11 断熱ボックス
15 横体枠
16 炉内発生ガス回遊隔離室
17 石炭粒子侵入遮蔽用短冊部材
18 通気用曲折間隙路

Claims (1)

  1. 石炭粒子(2)を装入する炭化炉の炉口枠(5)に押圧するシールプレート(6)を介して炭化炉(1)の出入口(7)を開閉する炉蓋構造体(3)の炉内側に断熱ボックス(11)を設け、さらに該断熱ボックス(11)の炉高方向を複数段に分割する位置に横体枠(15)を設けると共に、該横体枠(15)の上下離隔間に石炭粒子侵入遮蔽用短冊板(17)を縦横に並べかつ遊動可能に吊設して形成する炉内発生ガス回遊隔離室(16)の少なくとも炭化炉内側で横並ぶ石炭粒子侵入遮蔽用短冊板(17)の隣接端部を突出部と切欠部の双方で狭隘な通気用曲折間隙路を形成する段差付継手形状に突き合わせて構成した事を特徴とするコークス炭化炉の昇温炉蓋。
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