JP3983910B2 - ガス水和物の生成方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はガス水和物の生成方法に係り、特に、水と、水和物生成ガスを溶解する性質を有する疎水性液体と、該疎水性液体に溶解する性質を有する分散剤とを含有し、水が該疎水性液体中に分散している分散系と該水和物生成ガスとを接触させてガス水和物を効率的に生成するガス水和物の生成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、都市ガスや化学工業の原料となる天然ガスや石油ガスは液化天然ガス(LNG)又は液化石油ガス(LPG)として貯蔵・運搬されている。しかし、上記ガスを液化するためには、−160℃程度の超低温が必要であるため、その生成、貯蔵に大規模な設備や多大なエネルギーを必要とする。
そこで、上記ガスを固定化する新たな技術が要望されているが、このような技術の一として上記ガスをガス水和物として固定化することが提案されている。ガス水和物(ガスハイドレート)とはガスと水とが結合した包摂化合物であり、水分子が水素結合した篭状構造中にガス分子が入り込むことにより安定した結晶構造を有する。このようなガス水和物は0〜10℃程度の室温よりやや低い温度で生成することが可能なため、生成、貯蔵に必要な設備やエネルギーを削減することが可能になる。
【0003】
また、近年、地球規模での環境汚染が深刻に懸念され、二酸化炭素による地球温暖化やフロンガスによるオゾン層破壊が大きな問題となっている。このようなガスの固定化法としても、ガスを水和物化する方法が検討されている。例えば、二酸化炭素を深海底に投棄し、二酸化炭素水和物として固定化する方法(特開平4−83528号)や、アルコールを添加することによりフロンガスを水和物として固定化する方法(「日本冷凍協会論文集」第4巻、第3号、第19〜24頁(1987年))等が既に提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述のガスについて、ガス水和物を効率的に生成するためには、水とガスとの接触を十分に行わせること及び反応初期段階において水表面で生成されたガス水和物がガスと水との接触を阻害することにより生じる封じ込め現象を防止することが必要となる。このため、高生成率でガス水和物を生成するには、水和物生成ガスと水とを激しい混合状態で接触させることが必要となるが、大量のガスを処理する場合に混合状態を形成するのは容易でなく、実用性に乏しい。このため、従来の方法で天然ガス成分等のガス水和物を量産しようとすると、30%程度の低い生成率しか得られず、天然ガス等の成分を水和物として運搬する場合、生成された水和物とともに多量の未反応の水を運搬することとなり、輸送の効率化が図れない。
【0005】
また、ガス水和物は固体であるため、液体と比べて、輸送に際しての取り扱いが困難である。これを回避するため、ガス水和物を水中でスラリ−状に分散させる方法が既に提案されている。しかし、従来の方法で天然ガス成分のガス水和物をスラリー化した場合、スラリー中のガス水和物の割合は10%程度と低いため、輸送の効率化が図れない。また、長期の輸送、保存により、スラリー中のガス水和物が固体化して沈降し、配管による移送が困難になる場合がある。このため、配管による移送に際しては、沈降して固体化したガス水和物を粉砕して再び分散させるための機械的動力が必要となるといった問題もあった。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、大量の水和物生成ガスを高生成率でガス水和物として固定化することができ、しかも、生成されたガス水和物を取り扱いが容易で、安定した分散系として得ることが可能なガス水和物の生成方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明者は鋭意研究した結果、水と、水和物生成ガスを溶解する性質を有する疎水性液体と、該疎水性液体に溶解する性質を有する分散剤とを含有し、水が該疎水性液体中に分散している分散系と該水和物生成ガスとを接触させることにより、高い生成率で効率的にガス水和物を生成することができ、しかも、生成されたガス水和物を安定した分散系として得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
本発明は、水と、水和物生成ガスを溶解する性質を有する疎水性液体と、該疎水性液体に溶解する性質を有する分散剤とを含有し、水が該疎水性液体中に分散している分散系と該水和物生成ガスとを接触させることを特徴とするガス水和物の生成方法である。
本発明において、ガス水和物とは水和物生成ガスと水とが結合した包摂化合物である。このガス水和物は、一般的には、水分子が互いに水素結合で結びついて篭状化合物を作り、その中に水和物生成ガスのガス分子が入り込むことにより安定した結晶構造を有する。
水和物生成ガスとは水と結合して上記のガス水和物を生成するガスであり、具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタン等の炭化水素ガス、二酸化炭素、窒素、塩素等の無機ガス、フロンR−11、フロンR−12、CFC−134a等のフロン系ガス、硫化水素等がある。
【0008】
また、疎水性液体とは水との親和性の低い液体であり、本発明では水和物生成ガスに対し高い溶解性を有するものが用いられる。例えば、水和物生成ガスとしてメタンを用いる場合、n−ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、ジメチルエーテル等が、水和物生成ガスとして二酸化炭素を用いる場合、上述のものの他、酢酸エチル等が用いられる。
【0009】
本発明において、分散剤としては、疎水性液体に溶解し、疎水性液体中で水を分散させる性質を有する界面活性剤が用いられる。特に、本発明では、水を疎水性液体中で小粒径且つ高密度でしかも長時間安定して分散させることができるものを用いることが好ましい。通常、このような分散剤としては、疎水性(親油性)が高く、疎水性液体に高い溶解性を有する界面活性剤、例えば、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート、ソルビタンセスキオレート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、ショ糖脂肪酸エステル、モノグリセリド等が用いられる。
具体的には、疎水性液体としてn−ヘキサンを用いる場合、分散剤としてはソルビタンモノオレート等を0.1〜5.0wt.%程度添加することが好ましい。
【0010】
また、本発明の分散系は、水が液体状態で疎水性液体中に分散している油中水滴型(W/O型)エマルジョンとして、又は水が固体状態で疎水液体中に分散している油中水滴型サスペンションとして調製される。この分散系における水の含有量は、水和物生成ガス、疎水性液体の種類等に応じて適宜設定されるが、一般的には、30〜70wt.%程度である。
水は疎水性液体中で、0.5〜30μm、好ましくは2〜7μm程度の粒径で且つ60%程度の密度で分散していることが好ましい。このような分散系の調製方法は、特に限定されるものではないが、通常、水、疎水性液体及び分散剤の混合物を撹拌すること等により調製される。
【0011】
本発明では、水和物生成ガスは分散系と接触することにより、疎水性液体に溶解し、疎水性液体中に分散している水と接触して、水和物を生成する。本発明では、水を疎水性液体中で小粒径で分散させることにより、水と水和物生成ガスとの接触面積が増大し、水和物生成が促進される。また、生成されたガス水和物は疎水性液体中で分散剤の作用により安定して分散するので、得られたガス水和物の取り扱いが容易となる。
【0012】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
ガス水和物生成装置
図1は本実施例で用いたガス水和物生成装置の概略を示す。
図1に示されるように、ガス水和物生成装置10は、水和物生成ガスと分散系とを接触させてガス水和物の生成を行うためのガラス製の耐圧セル12と、耐圧セル12に水和物生成ガスを供給するためのガスボンベ16と、分散系を耐圧セル12に供給するための分散系タンク18とを備えている。耐圧セル12は恒温槽14内に設けられており、内部を所定温度に保持することができる。ガスボンベ16と分散系タンク18は、それぞれ、バルブV1、V2を有する配管P1、P2を介して耐圧セル12と連結されている。また、耐圧セル12はバルブV3を有する配管P3により真空ポンプ20と連結されており、耐圧セル12内を真空とした後に、内部に水和物生成ガスと分散系を導入することができる。さらに、耐圧セル12には、バルブV4を有する排気管P4が連結されており、ガス水和物生成後に耐圧セル12内に存在する水和物生成ガスの全量を測定しつつ、排気することができるように構成されている。
【0013】
実施例1〜5
疎水性液体40gに界面活性剤ソルビタンモノオレートを2.5wt%を混合し、これと水60gをビーカー内で撹拌して分散系を調製した。この分散系を少量取り出し、硫酸第二鉄を加えて光学顕微鏡で観察したところ、分散相が青く変色していることから、疎水性液体が連続相で、水が分散相である油中水滴型(W/O型)分散系であることを確認した。また、分散相の粒径を測定したところ、3〜7μmであった。
次に、図1に示すガス水和物生成装置を用いて水和物を生成した。まず、ガラス製の耐圧セル12内を真空ポンプ20により真空状態とした後、分散系タンク18から上記操作により得られた分散系を吸引により4cm3注入した。その後、ガスボンベ16から耐圧セル12に内圧が50atmとなるまで水和物生成ガスを注入し、ガス水和物の生成の増加が観察されなくなるまで、2℃で、1時間放置し、ガス水和物の生成率を測定した。尚、ガス水和物の生成に際しては、水和物生成ガスと分散系との接触を促進するための特別の操作(撹拌等)は行わなかった。
【0014】
ガス水和物の生成率W(%)は以下の式により求めた。
W=(nX/Y)×100
上式において、Xはガス水和物の生成で消費されたガス量(モル)を表す。また、Yはセル内の水の量(モル)、nは水和数であり、メタンガスについては5.75、プロパンガスについては17、二酸化炭素については6.0である。
【0015】
比較例
疎水性液体としてn−へキサン40gに界面活性剤としてソルビタンモノオレートを2.5wt%を添加した後、水60gを撹拌することなく混合し、非分散系を調製した。
この非分散系を用いて、実施例と同様の操作を行い、ガス水和物の生成を観察した。
結果を表1に示す。
【表1】
Figure 0003983910
【0016】
表1に示されるように、実施例ではいずれも90〜97%の高い生成率を示したのに対し、比較例では30%以下の低い生成率しか示さなかった。
また、各実施例で得られたガス水和物は、長期間の保存によってもスラリー化することなく、分散系として安定して保存できることが明らかになった。一方、比較例では、生成されたガス水和物は塊状となってしまい、分散させるのは困難であった。
【0017】
【発明の効果】
以上の説明から明らかように、本発明に係るガス水和物の生成方法によれば、高い生成率で効率的にガス水和物を生成することが可能になる。また、生成されたガス水和物を取り扱いが容易で、安定した分散系として得ることが可能になる。従って、天然ガスや石油ガスの貯蔵、運搬や、二酸化炭素やフロンガスの固定化にガス水和物を利用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例で用いたガス水和物生成装置の概略を示す図である。
【符号の説明】
10 ガス水和物生成装置
12 耐圧セル
16 ガスボンベ
18 分散系タンク

Claims (2)

  1. 水と、水和物生成ガスを溶解する性質を有する疎水性液体と、該疎水性液体に溶解する性質を有する分散剤とを含有し、水が該疎水性液体中に分散している分散系と該水和物生成ガスとを接触させることを特徴とするガス水和物の生成方法。
  2. 前記分散系における水の含有量は30〜70wt.%であり、粒径は0.5〜30μmである請求項1記載のガス水和物の生成方法。
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