JP3981223B2 - オーディオ音補正装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、オーディオ装置から出力されるオーディオ音の出力レベルを周囲の騒音等に応じて補正するオーディオ音補正装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、オーディオ音とそれ以外の周辺騒音とが存在する音響空間内において、オーディオ音の出力レベルを周辺騒音レベルの変動に追従して補正するオーディオ音補正装置が知られている。例えば、オーディオ装置を搭載した車両に対して上述したようなオーディオ音補正装置を適用した場合には、車両の走行に伴って発生するロードノイズやエンジンノイズ等の周辺騒音のレベル変動に応じてオーディオ音の出力レベルが補正されるので、利用者は、周辺騒音に邪魔されることなくオーディオ音を聴取することができる。
【0003】
上述したような従来のオーディオ音補正装置では、所定の時間窓長を設定してオーディオ音および周辺騒音の各々の平均レベルを算出しており、各平均レベルに基づいてオーディオ音を所定のゲインで増幅することにより補正を行っている。各平均レベルとゲインとの関係は人間の聴覚的な特性に基づいてあらかじめ求められており、オーディオ音および周辺騒音の各平均レベルに基づいて一義的に決定される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したような従来のオーディオ音補正装置では、オーディオ音と周辺騒音のそれぞれの平均レベルを算出する際に、同じ時間窓長が設定されていた。しかし、一般には、何らかの音源から音が発生して、人間がその大きさを感じるまでの時間は、音の種類によって異なっていると考えられるため、周辺騒音とオーディオ音のそれぞれの平均レベルを算出する際の時間窓長を同じに設定すると、上述したオーディオ音補正装置を用いて補正したオーディオ音の特性に人間の聴覚がなじめずに、オーディオ音のレベルがふらつくように感じるなどの聴感上の違和感があった。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、聴取者の聴感上の違和感を軽減することができるオーディオ音補正装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、本発明のオーディオ音補正装置では、オーディオ音とそれ以外の周辺騒音とが存在する音響空間内の所定位置に集音手段が設置されており、周辺騒音分離手段によって集音手段の出力信号からオーディオ音に対応する成分を除去することにより、周辺騒音に対応する成分を分離して周辺騒音信号を出力している。そして、レベル算出手段によってオーディオ音信号と周辺騒音信号のそれぞれの平均レベルを算出する際には、オーディオ音信号の平均レベルを算出する第1の時間を、周辺騒音信号の平均レベルを算出する第2の時間よりも短く設定しており、算出されたオーディオ音信号と周辺騒音信号のそれぞれの平均レベルに基づいて、ゲイン設定手段により増幅手段のゲインを設定し、設定されたゲインに基づいて増幅手段によりオーディオ音信号を増幅している。このように、オーディオ音信号の平均レベルを算出する第1の時間を、周辺騒音信号の平均レベルを算出する第2の時間よりも短く設定することにより、オーディオ音補正装置を用いて補正したオーディオ音の特性を人間の聴覚特性に対応させることができ、聴感上の違和感を軽減することができる。
【0007】
また、上述したレベル算出手段は、オーディオ音信号の平均レベルを算出するために用いる第1の時間を30〜70msの範囲で設定し、周辺騒音信号の平均レベルを算出するために用いる第2の時間を80〜120msの範囲で設定することが望ましい。第1の時間および第2の時間をそれぞれ上述したような値に設定することにより、補正後のオーディオ音に対する聴感上の違和感をより確実に軽減することができる。
【0008】
また、上述したレベル算出手段は、帯域分割された複数の周波数領域のそれぞれについて、オーディオ音信号と周辺騒音信号のそれぞれの平均レベルを算出し、ゲイン設定手段は、複数の周波数領域のそれぞれについて、オーディオ音の聴取者の聴感特性を考慮してゲインの設定を行い、増幅手段は、複数の周波数帯域のそれぞれについてゲイン設定手段によって設定されたゲインでオーディオ音信号を増幅することが好ましい。一般にオーディオ音や周辺騒音は、様々な周波数成分を有しており、その周波数成分ごとに音圧レベルが異なっているので、上述したように周波数特性を考慮して各周波数帯域ごとに最適なゲイン補正を行うことにより、補正後のオーディオ音に対する聴感上の違和感をさらに軽減することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した一実施形態のオーディオ音補正装置について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は、本実施形態のオーディオ音補正装置100の構成を示す図である。図1に示すオーディオ音補正装置100は、周辺騒音のレベル変動に追随してオーディオ装置200から出力されるオーディオ音信号のレベルを補正してスピーカ300に出力するものであり、マイクロホン10、周辺騒音抽出部12、2つの平均レベル算出部14、16、ゲイン算出部18、アンプ20を含んで構成されている。
【0011】
マイクロホン10は、音響空間内の所定位置に設置されており、周辺騒音を集音して電気信号に変換する。ただし、マイクロホン10によって集音された音声信号には、周辺騒音の他にスピーカ300から出力されるオーディオ音も含まれている。周辺騒音抽出部12は、マイクロホン10から出力された音声信号に含まれるオーディオ音成分を除去することにより、周辺騒音成分のみを抽出する。この周辺騒音抽出部12は、例えば、所定のフィルタ係数を有する適応フィルタ等を用いることにより実現される。
【0012】
平均レベル算出部14は、オーディオ装置200から出力されるオーディオ音信号の平均レベルを算出する。具体的には、オーディオ音信号の瞬時値をsとし、オーディオ音信号の瞬時値sをサンプリングする時間窓長をTsとすると、ある時間tから時間(t+Ts)の間におけるオーディオ音信号の平均レベルEsは以下に示す式により計算される。
【0013】
【数1】
【0014】
また、平均レベル算出部16は、周辺騒音抽出部12から出力される周辺騒音信号の平均レベルを算出する。具体的には、周辺騒音に対応する音声信号の瞬時値をnとし、音声信号の瞬時値nをサンプリングする時間窓長をTnとすると、ある時間tから時間(t+Tn)の間における周辺騒音信号の平均レベルEnは以下に示す式により計算される。
【数2】
ところで、従来のオーディオ音補正装置では、上述したオーディオ音信号に対する時間窓長Tsと周辺騒音信号に対する時間窓長Tnとが等しい値(例えば、数十ms程度)に設定されてオーディオ音の補正が行われていた。しかし、本発明の発明者が行った実験によれば、上述したオーディオ音信号に対する時間窓長Tsと周辺騒音信号に対する時間窓長Tnとの大小関係をTs<Tnとし、より望ましくは時間窓長Tsを30〜70msの範囲に設定し、周辺騒音に対応する時間窓長Tnを80〜120msの範囲に設定することにより、補正後のオーディオ音の聴覚上の違和感を軽減することができるという実験結果が得られた。このため、本実施形態では、平均レベル算出部14については、時間窓長Tsを30〜70msの範囲で設定しており、平均レベル算出部16については、時間窓長Tnを80〜120msの範囲で設定している。なお、時間窓長に関する実験結果の詳細については後述する。
【0015】
ゲイン算出部18は、平均レベル算出部14から出力されるオーディオ音の平均レベル算出結果と平均レベル算出部16から出力される周辺騒音の平均レベル算出結果とに基づいて、オーディオ音に加える最適なゲインを算出し、この算出されたゲイン値をアンプ20に向けて出力する。なお、ゲイン算出部18におけるゲイン算出の原理については後述する。アンプ20は、ゲイン算出部18から出力されるゲイン値を用いてオーディオ音信号を増幅し、増幅したオーディオ音信号をスピーカ300に出力する。
【0016】
上述したマイクロホン10が集音手段に、周辺騒音抽出部12が周辺騒音分離手段に、平均レベル算出部14、16がレベル算出手段に、ゲイン設定部18がゲイン設定手段に、アンプ20が増幅手段にそれぞれ対応している
本実施形態のオーディオ音補正装置100はこのような構成を有しており、次にゲイン算出部18におけるゲイン算出の原理について説明する。図2は、物理的な音圧レベルと、その音を人間が聞いたときに感じる音の大きさ(ラウドネス)との対応関係(ラウドネス曲線)を示す図である。同図において、横軸は音圧レベル(単位:dB−SPL)、縦軸は人間が感じる音の大きさを示すラウドネス(単位:sone)であり、曲線▲1▼は静寂下でのラウドネス曲線、曲線▲2▼は騒音下でのラウドネス曲線である。ただし、曲線▲2▼は騒音レベルに応じて変化するものである。
【0017】
図2において、ラウドネスの値が同じであれば、人間は同じ大きさの音であると感じる。したがって、例えば、人間が0.1soneの大きさを感じる音は、静寂下では約12dB−SPLの音圧レベルであるが、曲線▲2▼に示す騒音下では約37dB−SPLの音圧レベルの音である。すなわち静寂下で約12dB−SPLで出力していた音を曲線▲2▼の騒音下で同じ大きさに感じるには約37dB−SPLの音を出力する必要があり、約25dBのゲインを加える必要があるということである。また、人間が1soneの大きさに感じる音は、静寂下では約42dB−SPLの音圧レベルの音であるが、曲線▲2▼の騒音下では約49dB−SPLの音圧レベルの音であるため、騒音下では約7dBのゲインを加えてやる必要がある。したがって、同じ騒音下でも、出力される音の音圧レベルに応じて加えるゲインを変更する必要があるということである。
【0018】
図3は、騒音下において静寂下と同じ大きさの音に感じるために、静寂下の音圧レベルに対してどれだけゲインを加える必要があるかを示す図である。同図において、横軸は静寂下で出力される音の音圧レベルであり、縦軸は騒音下において静寂下と同じ大きさの音に感じるために加える必要があるゲイン値である。例えば、静寂下で音圧レベル20dBで出力される音は、騒音下では、約19dBのゲインを加えられることによって、人間は静寂下と同じ大きさの音であると感じるようになる。
【0019】
したがって、ゲイン算出部18は、あらかじめ様々な騒音レベルにおける図3に示すようなオーディオ音の音圧レベルと加えるゲインとの関係(以下、ゲインテーブルと呼ぶ)を内部のメモリに格納しておき、平均レベル算出部16から出力される周辺騒音の平均レベルに基づいて、最適なゲインテーブルを選択し、この選択したゲインテーブルと平均レベル算出部14から出力されるオーディオ音の平均レベルとに基づいて、最適なゲインを算出する。ゲイン算出部18は、この算出されたゲイン値をアンプ20に出力して、オーディオ音信号に対する最適なゲインを与える。
【0020】
次に、上述したオーディオ音信号に対する時間窓長Tsおよび周辺騒音に対する時間窓長Tnに関する実験結果の詳細について説明する。実験は、各時間窓長TsおよびTnを、それぞれ20〜140msの間で20ms毎に変化させてオーディオ音信号のレベル補正を行い、補正後のオーディオ音信号に基づいてスピーカ300から出力されたオーディオ音の聴感上の違和感を複数人の被験者によって評価することにより行った。聴感上の違和感に対する評価は、最も違和感が大きい場合を1、最も違和感が小さい場合を5とした5段階評価を行った。図4は、各時間窓長TsおよびTnを変化させた場合の聴感上の違和感に対する評価結果を示す図である。図4に示した評価結果は、複数人の被験者による評価結果の平均値を示している。また、図5および図6は、図4に示した実験結果をグラフ化した図である。
【0021】
図5は、周辺騒音信号に対する時間窓長Tnをパラメータとした場合のオーディオ音信号に対する時間窓長Tsと聴感上の違和感に対する評価結果との関係を示す図である。横軸が時間窓長Ts、縦軸が評価結果をそれぞれ示している。図5に示すように、全体的な傾向として、60〜80ms付近を境として、オーディオ音信号に対する時間窓長Tsが短い方が評価結果が高いことが分かる。また、周辺騒音信号に対する時間窓長Tnが80、100、120msの場合の評価結果が、他の時間窓長Tnにおける評価結果に比較して高いことが分かる。
【0022】
図6は、オーディオ音信号に対する時間窓長Tsをパラメータとした場合の周辺騒音信号に対する時間窓長Tnと聴感上に違和感に対する評価結果との関係を示す図である。横軸が時間窓長Tn、縦軸が評価結果をそれぞれ示している。図6に示すように、全体的な傾向としては、60〜80msを境として、周辺騒音信号に対する時間窓長Tnが長い方が評価結果が高いことが分かる。また、オーディオ音信号に対する時間窓長Tsが40、60、80msの場合の評価結果が、他の時間窓長Tsにおける評価結果に比較して高いことが分かる。
【0023】
上述した図5および図6に示した実験結果から、オーディオ音信号に対する時間窓長Tsと周辺騒音信号に対する時間窓長Tnとの大小関係をTs<Tnを満たすように設定することにより高い評価結果が得られる、すわわち聴感上の違和感を軽減することができることが分かる。
【0024】
図7は、周辺騒音信号に対する時間窓長Tnが80、100、120msの場合の評価結果のみを上述した図5から抽出して示した図である。本実施形態では、聴感上の違和感に対する評価結果の良否の判断基準として、評価結果が3以上であれば「良」とするものとする。この評価基準に照らして図7を見ると、時間窓長Tsをだいたい30〜70msの範囲内にすれば、評価結果が3以上となる、すなわち「良」という評価結果が得られることが分かる。この結果から、本実施形態では、オーディオ音信号に対する時間窓長Tsを30〜70msの範囲内で設定することとしている。
【0025】
図8は、オーディオ音信号に対する時間窓長Tsが40、60、80msの場合の評価結果のみを上述した図6から抽出して示した図である。上述したように、聴感上の違和感に対する評価結果の良否の判断基準として、評価結果が3以上であれば「良」とするものとする。この評価基準に照らして図8を見ると、時間窓長Tnをだいたい80〜120msの範囲内にすれば、評価結果が3以上となることが分かる。ただし、図8に示すように、オーディオ音信号に対する時間窓長Tsが80msで周辺騒音信号に対する時間窓長Tnが120msの場合には、評価結果が2.75となっており、わずかに評価基準を超えていないが、これは、オーディオ音信号に対する時間窓長が上述した30〜70msの範囲内にないためであると考えられる。したがって、上述したようにオーディオ音信号に対する時間窓長Tsを30〜70msの範囲内に設定すれば、周辺騒音信号に対する時間窓長Tnが120msの場合における評価結果は3以上になると推測される。この結果から、本実施形態では、周辺騒音に対する時間窓長Tnを80〜120msの範囲内に設定することとしている。
【0026】
このように、本実施形態では、上述した図4〜図8に示した実験結果を分析することにより、オーディオ音信号に対する時間窓長Tsを30〜70msの範囲内に設定し、周辺騒音信号に対する時間窓長Tnを80〜120msの範囲内に設定することとしている。
【0027】
次に、本実施形態のオーディオ音補正装置100の動作を説明する。オーディオ装置200から出力されたオーディオ音信号は、周辺騒音抽出部12および平均レベル算出部14に入力されるとともに、アンプ20を介してスピーカ300から出力される。このスピーカ300から出力されたオーディオ音は、周辺騒音を集音するために所定位置に設置されたマイクロホン10によって、周辺騒音とともに集音されるため、マイクロホン10から出力される音声信号にはオーディオ音に対応する成分が含まれている。また、このオーディオ音は、音響空間に出力された後にマイクロホン10で集音されたものであるため、音響空間の伝達特性が反映されたものである。したがって、周辺騒音抽出部12は、例えば、オーディオ装置200から入力されるオーディオ音信号を音響空間の伝達特性を模擬したフィルタ係数を有する適応フィルタに通す等の処理を行って得られる信号と、マイクロホン10から入力された音声信号との差分を演算することにより、周辺騒音に対応する成分のみを抽出する。
【0028】
平均レベル算出部14は、上述したように時間窓長が30〜70msの範囲内で設定されており、オーディオ装置200から出力されるオーディオ音信号の平均レベルを算出する。また、平均レベル算出部16は、上述したように時間窓長が80〜120msの範囲内に設定されており、周辺騒音抽出部12から出力される周辺騒音信号の平均レベルを算出する。その後、ゲイン算出部18は、平均レベル算出部14から出力されるオーディオ音信号の平均レベルと平均レベル算出部16から出力される周辺騒音信号の平均レベルとに基づいて最適なゲインを算出し、この算出されたゲイン値をアンプ20に出力して、オーディオ音信号に対して最適な増幅を行う。
【0029】
このように、本実施形態のオーディオ音補正装置100は、音響空間内の所定位置に設置されたマイクロホン10によってオーディオ音を含む周辺騒音を集音し、マイクロホン10の出力信号からオーディオ音に対応する成分を除去することにより、周辺騒音に対応する成分を分離して周辺騒音信号を出力している。そして、平均レベル算出部14、16によってオーディオ音信号と周辺騒音信号のそれぞれの平均レベルを算出する際には、オーディオ音信号の平均レベルを算出するための時間窓長Tsを周辺騒音信号の平均レベルを算出するための時間窓長Tnよりも短く設定しており、算出されたオーディオ音信号と周辺騒音信号のそれぞれの平均レベルに基づいてゲインを設定し、設定されたゲインに対応してアンプ20によりオーディオ音信号を増幅している。このように、オーディオ音信号の平均レベルを算出するために用いる時間窓長Tsを周辺騒音信号の平均レベルを算出するために用いる時間窓長Tnよりも短く設定することにより、補正後のオーディオ音に対する聴感上の違和感を軽減することができる。
【0030】
特に、本実施形態では、上述したオーディオ音信号の平均レベルを算出するための時間窓長Tsを30〜70msの範囲で設定し、周辺騒音信号の平均レベルを算出するための時間窓長Tnを80〜120msの範囲で設定しており、これにより補正後のオーディオ音に対する聴感上の違和感をより確実に軽減することができる。
【0031】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態ではオーディオ音の補正を行う際にオーディオ音や周辺騒音の周波数特性までは考慮していなかったが、一般にオーディオ音や周辺騒音は、様々な周波数成分を有しており、その周波数成分ごとに音圧レベルが異なっているので、周波数特性を考慮した補正を行うようにしてもよい。具体的には、オーディオ音信号と周辺騒音のそれぞれを所定の周波数帯域に分割して、各周波数帯域ごとに周辺騒音信号の周波数成分に基づいて最適なゲインテーブルを選択し、この選択したゲインテーブルとオーディオ音信号の周波数成分とに基づいて最適なゲインを算出することにより、聴取者の聴感上の違和感をさらに軽減することができる。
【0032】
図9は、各周波数帯域ごとに最適なゲインを算出する場合のオーディオ音補正装置100aの構成を示す図である。図9に示すオーディオ音補正装置100aは、マイクロホン10、周辺騒音抽出部12、周波数帯域別平均レベル算出部30、32、周波数帯域別ゲイン算出部34、オーディオ音補正用フィルタ36を含んで構成されている。
【0033】
マイクロホン10は、音響空間内の所定位置に設置されており、オーディオ音を含む周辺騒音を集音し、電気信号に変換する。周辺騒音抽出部12は、マイクロホン10から出力された音声信号に含まれるオーディオ音信号を除去して周辺騒音成分のみを抽出する。周波数帯域別平均レベル算出部30は、オーディオ装置200から出力されるオーディオ音信号を所定の周波数帯域毎に分割し、オーディオ音信号の各周波数帯域毎の平均レベルを算出する。また、周波数帯域別平均レベル算出部32は、周辺騒音抽出部12から出力される周辺騒音信号を所定の周波数帯域に分割し、周辺騒音信号の各周波数帯域毎の平均レベルを算出する。
【0034】
周波数帯域別ゲイン算出部34は、周波数帯域別平均レベル算出部30から出力されるオーディオ音の平均レベル算出結果と周波数帯域別平均レベル算出部32から出力される周辺騒音の平均レベル算出結果とに基づいて、オーディオ音信号に加える最適なゲインを各周波数帯域毎に算出し、この算出されたゲイン値をオーディ音補正用フィルタ36に向けて出力する。オーディオ音補正用フィルタ36は、周波数帯域別ゲイン算出部34によるゲイン算出結果に基づいて、オーディオ音信号に対して周波数帯域毎にゲイン設定を行う。
【0035】
図10は、上述した周波数帯域別平均レベル算出部30、32および周波数帯域別ゲイン算出部34の詳細構成を示す図である。図10に示す周波数帯域別平均レベル算出部30は、フィルタバンク50とブロック平均部52を含んで構成されている。フィルタバンク50は、所定の周波数帯域幅を持つバンドパスフィルタ群であり、これらのバンドパスフィルタ群によってオーディオ装置200から出力されるオーディオ音信号を所定の周波数帯域ごとに分割する。ブロック平均部52は、フィルタバンク50から出力される周波数帯域ごとに分割されたオーディオ音信号の音圧レベルを所定の時間窓長Ts(時間ブロック)ごとに平均して、平均レベルを周波数帯域別ゲイン設定部34に出力する。上述したように、ブロック平均部52においてオーディオ音に対応する平均の音圧レベルを求める際の時間窓長Tsは、30〜70msの範囲内で設定される。
【0036】
周波数帯域別平均レベル算出部32は、フィルタバンク60とブロック平均部62を含んで構成されている。フィルタバンク60は、フィルタバンク50と同様に所定の周波数帯域幅を持つバンドパスフィルタ群であり、これらのバンドパスフィルタ群によって周辺騒音抽出部12から出力される周辺騒音信号を所定の周波数帯域ごとに分割する。ブロック平均部62は、フィルタバンク60から出力される周波数帯域ごとに分割された周辺騒音信号の音圧レベルを所定の時間窓長Tn(時間ブロック)ごとに平均して、平均レベルを周波数帯域別ゲイン設定部34に出力する。上述したように、ブロック平均部62において周辺騒音信号の平均レベルを求める際の時間窓長Tnは、80〜120msの範囲内で設定される。
【0037】
また、図10に示すように、周波数帯域別ゲイン設定部34は、ラウドネス算出部70、周波数帯域ゲインテーブル選択部72、ゲインテーブル74を含んで構成されている。ラウドネス算出部70は、周知のZwickerのラウドネス算出手法(ISO 532B)やStevensのラウドネス算出手法(ISO 532A)を用いて、周波数帯域別平均レベル算出部32から周波数帯域ごとに出力される周辺騒音の音圧レベルを調整する。具体的には、以下のように調整を行う。すなわち、ある周波数成分の周辺騒音があるとき、この周辺騒音は、同一の周波数成分のオーディオ音の聞き取りにくさに影響するのみならず、高周波側に隣接する周波数成分のオーディオ音の聞き取りにくさにも影響を与える。ラウドネス算出部70は、これを考慮して、周辺騒音の各周波数成分の音圧レベルを低周波側に隣接する周辺騒音の周波数成分の音圧レベルの大きさに応じて調整を行う。すなわち、隣接する低周波成分の音圧レベルが大きい場合には、高周波側に隣接する周波数成分の音圧レベルを高めに補正する。このような調整を行うことで、各周波数帯域ごとのゲインテーブルを選択する際には、対応する各周波数帯域の周辺騒音の音圧レベルに着目するのみで足り、低周波側に隣接する周波数帯域の周辺騒音を考慮するという煩雑な処理を行う必要がなくなる。
【0038】
周波数ゲインテーブル選択部72は、ラウドネス算出部70から出力される調整後の周波数帯域ごとの周辺騒音の音圧レベルに基づいて、周波数帯域ごとに最適なゲインテーブル74を選択する。
【0039】
図11は、上述した図9に示したオーディオ音補正用フィルタ36の詳細構成を示す図である。図11に示すオーディオ音補正用フィルタ36は、フィルタバンク80、可変ゲイン部82、加算器84を含んで構成されている。なお、オーディオ音補正用フィルタ36は、上述した周波数帯域別ゲイン算出部34で算出されたゲイン値に基づいて各周波数成分のレベルを調整できるものであればよいため、図11に示した構成の他にも様々な構成が考えられる。
【0040】
フィルタバンク80は、所定の周波数帯域幅を持つバンドパスフィルタ群であり、これらのバンドパスフィルタ群によってオーディオ音信号を周波数帯域ごとに分割する。可変ゲイン部82は、周波数帯域別ゲイン設定部34によって算出された各周波数帯域ごとのゲインを、フィルタバンク80から出力される周波数帯域ごとに分割されたオーディオ音信号の音圧レベルに与えて、ゲイン調整を行う。加算器84は、各周波数帯域ごとにゲイン調整されたオーディオ音信号を足し合わせて出力して、所望のゲイン補正を実現する。
【0041】
このように、上述した変形例におけるオーディオ音補正装置100aでは、オーディオ音信号や周辺騒音の所定の周波数帯域毎の音圧レベルを求め、各周波数帯域毎の音圧レベルに適したゲインテーブルを選択しており、入力されるオーディオ音信号の各周波数帯域毎に最適なゲイン補正を行うことができる。
【0042】
【発明の効果】
上述したように、本発明によれば、オーディオ音信号の平均レベルを算出する第1の時間を周辺騒音信号の平均レベルを算出する第2の時間よりも短く設定して、オーディオ音信号および周辺騒音の各平均レベルを算出しており、算出された各平均レベルに基づいてゲインを設定してオーディオ音信号を増幅しているので、オーディオ音補正装置を用いて補正したオーディオ音の特性を人間の聴覚特性に対応させることができ、聴感上の違和感を軽減することができる。特に、上述したオーディオ音信号の平均レベルを算出するために用いる第1の時間を30〜70msの範囲で設定し、周辺騒音信号の平均レベルを算出するために用いる第2の時間を80〜120msの範囲で設定することにより補正後のオーディオ音に対する聴感上の違和感をより確実に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態のオーディオ音補正装置の構成を示す図である。
【図2】音圧レベルとその音を人間が聞いたときに感じる音の大きさとの対応関係を示す図である。
【図3】騒音下において静寂下と同じ大きさの音に感じるために、静寂下の音圧レベルに対してどれだけゲインを加える必要があるかを示す図である。
【図4】各時間窓長TsおよびTnを変化させた場合の聴感上の違和感に対する評価結果を示す図である。
【図5】周辺騒音信号に対する時間窓長Tnをパラメータとした場合のオーディオ音信号に対する時間窓長Tsと聴感上の違和感に対する評価結果との関係を示す図である。
【図6】オーディオ音信号に対する時間窓長Tsをパラメータとした場合の周辺騒音信号に対する時間窓長Tnと聴感上に違和感に対する評価結果との関係を示す図である。
【図7】周辺騒音信号に対する時間窓長Tnが80、100、120msの場合の評価結果のみを図5に示した関係から抽出して示した図である。
【図8】オーディオ音信号に対する時間窓長Tnが40、60、80msの場合の評価結果のみを図6に示した関係から抽出して示した図である。
【図9】各周波数帯域ごとに最適なゲインを算出する場合のオーディオ音補正装置の構成を示す図である。
【図10】周波数帯域別平均レベル算出部および周波数帯域別ゲイン算出部の詳細構成を示す図である。
【図11】オーディオ音補正用フィルタの詳細構成を示す図である。
【符号の説明】
10 マイクロホン
12 周辺騒音抽出部
14、16 平均レベル算出部
18 ゲイン算出部
20 アンプ
30、32 周波数帯域別平均レベル算出部
34 周波数帯域別ゲイン算出部
36 オーディオ音補正用フィルタ
100、100a オーディオ音補正装置
200 オーディオ装置
300 スピーカ
Claims (3)
- オーディオ音とそれ以外の周辺騒音とが存在する音響空間内の所定位置に設置された集音手段と、
オーディオ装置から出力されるオーディオ音信号が入力されており、前記集音手段の出力信号から前記オーディオ音に対応する成分を除去することにより、前記周辺騒音に対応する成分を分離して周辺騒音信号を出力する周辺騒音分離手段と、
前記オーディオ音信号の平均レベルを算出する第1の時間を、前記周辺騒音信号の平均レベルを算出する第2の時間よりも短く設定して、前記オーディオ音信号と前記周辺騒音信号のそれぞれの平均レベルを算出するレベル算出手段と、
前記オーディオ音信号を所定のゲインで増幅する増幅手段と、
前記レベル算出手段によって算出された前記オーディオ音信号と前記周辺騒音信号のそれぞれの平均レベルに基づいて、前記増幅手段のゲインを設定するゲイン設定手段と、
を備えることを特徴とするオーディオ音補正装置。 - 請求項1において、
前記レベル算出手段によって前記平均レベルを算出するために用いる第1の時間を30〜70msの範囲で設定し、前記第2の時間を80〜120msの範囲で設定することを特徴とするオーディオ音補正装置。 - 請求項1において、
前記レベル算出手段は、帯域分割された複数の周波数帯域のそれぞれについて、前記オーディオ音信号と前記周辺騒音信号のそれぞれの平均レベルを算出し、
前記ゲイン設定手段は、前記複数の周波数帯域のそれぞれについて前記ゲインの設定を行い、
前記増幅手段は、前記複数の周波数帯域のそれぞれについて前記ゲイン設定手段によって設定された前記ゲインで前記オーディオ音信号を増幅することを特徴とするオーディオ音補正装置。
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