JP3981176B2 - 変色防止混用糸 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、雨水や汗等の水滲みによる変色を防止することができる混用糸、詳しくは、ブラウス、スポーツシャツ、ズボン、ロングパンツ等の衣料用途の他、日用雑貨の用途において水による変色を防止する性能を備えた布帛を製造することができる混用糸に関する。
【0002】
【従来の技術】
雨にぬれたり汗をかいたりしたときに、肩、脇や背中など衣服がぬれたところだけ変色、より詳しくは深色化してしまい不快感を覚えることがある。また水たまりの水はね等によってズボン、ロングパンツの裾が変色したときも外観上著しく不快感を与える。これは綿等の親水性繊維のみならずポリエステル繊維等の疎水性の合成繊維の編織物でもみられる欠点の1つである。
【0003】
ぬれたときでも肌が透けて見えにくくする繊維材料として、芯部に白色顔料を多く含む芯鞘型複合繊維を用いた布帛が知られている(特開平5−93343号公報等)。しかしながら、これらは白色顔料によって芯部の光反射を大きくして、水による繊維表面の屈折率低下で生じた白色光の割合の減少の寄与を小さくするというものであるため、ぬれても透けにくいという効果があるものの、水にぬれると変色してしまうという欠点はそのまま残る。従って水による変色を防止する性能を備えた糸はこれまで知られていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は水による変色を防止する性能を備えた布帛を製造することができる混用糸を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の構成を説明する前に、まず、一般に繊維が水にぬれるとなぜ変色するかについて説明する。
人間が物を見るとき、目はその物体の表面で反射した表面反射光と、物体の内部に入り、内部境界面で反射される内部反射光を合わせた光をとらえる。表面反射光は入射光と同じあらゆる波長の光を含んだ白色光であり、内部反射光は染料によりある特定の波長の光の吸収を受けた着色光である。ここで、この白色光の割合が大きいほど白っぽく、白色光の割合が小さいほど色が深く見えることがわかっている。水は繊維より小さい屈折率(n=1.33)をもつが、繊維が水にぬれると繊維表面が水に覆われて低屈折率化し、表面反射率が小さくなる。よって水にぬれると変色、すなわち深色化することになる。
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、白色顔料を特定量含有した合成繊維と白色顔料を特定量含有しかつ水拡散性を有する合成繊維といった互いに水に対して異なる性質を有する繊維を混用して成る混用糸は優れた変色防止性を有することを見出し、本発明に到達した。
【0007】
本発明による水に対して異なる性質を有する複数の繊維から成る混用糸は、混用糸を構成する繊維に白色顔料の含有量が1重量%以上6重量%以下の合成繊維、及び/又は白色顔料の含有量が3重量%以上15重量%以下の芯部と白色顔料の含有量が2重量%以下の鞘部から成る芯鞘型複合繊維を含み、該繊維と複合される他の繊維が白色顔料の含有量が1重量%以上であり、且つ水拡散性を有する合成繊維であることを特徴とする。
【0008】
本発明の混用糸が変色防止性を発揮するためには二種類(場合によっては三種類以上)の繊維を混用糸中に混用配置すれば良い。詳しくは、白色顔料の含有量が1重量%以上6重量%以下の合成繊維及び/又は白色顔料の含有量が3重量%以上15重量%以下の芯部と白色顔料の含有量が2重量%以下の鞘部から成る芯鞘型複合繊維と、白色顔料の含有量が1重量%以上でかつ水拡散性を有する合成繊維の両者が一定量以上混用配置されているものである。好ましくは、前者の、白色顔料の含有量が1重量%以上6重量%以下の合成繊維及び/又は白色顔料の含有量が3重量%以上15重量%以下の芯部と白色顔料の含有量が2重量%以下の鞘部から成る芯鞘型複合繊維を少なくとも20重量%含むものである。その点からすれば水に対して異なる性質を有する繊維をそれぞれ用いた二種類の糸の交撚によるサイドバイサイド複合糸や前記二種類の糸がほゞ同程度で糸表面に露出するカバー率の低いカバーヤーンでもよい。
しかしより優れた変色防止性を発揮させるためには、混用糸中で二種類以上の繊維が均一に混合していることが望ましい。そのためにはトータルデニールが同一である二種類以上のマルチフィラメントを糸長差のない状態で混合するとよく、単繊維の太さが同一であるとより好ましい。具体的な例として前記二種類のマルチフィラメントに対して糸長差を与えない条件下でインターレース、タスラン等のエアー加工を施せば本発明の混用糸が得られる。その際エアー混繊後仮撚加工を施してもよい。
【0009】
本発明の混用糸において、芯鞘型複合繊維でない繊維(以下普通繊維という)の場合の白色顔料の含有量は1重量%以上6重量%以下にすることが肝要であり、2重量%以上5重量%以下が望ましい。なぜならば白色顔料の含有量が6重量%を超えると糸の強伸度が著しく低下し、原糸製造及び製編織工程過程を困難にする上、ガイド等を磨耗させ毛羽や筋等の欠点を起こしかねない。また1重量%未満では本発明が目的とする変色防止効果が得られない。
【0010】
芯鞘型複合繊維の場合は芯部の白色顔料の含有量が3重量%以上15重量%以下であることが肝要であり、5重量%以上10重量%以下が望ましい。なぜなら芯部の白色顔料の含有量が10重量%を超えると強度低下が徐々に始まり、15重量%以上になると著しく強伸度低下をきたすからである。また3重量%未満では本発明の変色防止効果が得られない。そして芯部と鞘部はベースポリマーが同じであってもなくてもよい。例えばポリエステルの芯鞘型複合繊維の場合、鞘部のみカチオン可染ポリマーであってもよい。また、ポリアミドの芯鞘型複合繊維の場合、芯部がナイロン66で鞘部がナイロン6であってもよく、任意の組合せを用いることができる。また、芯成分と鞘成分は同心円的に複合されていても偏心的に複合されていてもよい。また芯鞘重量比率は1/3〜3/1の範囲であることが好ましく、特に1/2〜2/1が望ましい。1/3未満であると変色防止効果が小さくなったり、3/1を超えると、紡糸時に芯成分を鞘成分で覆うことは困難となることがある。
【0011】
本発明において用いられる白色顔料は、染色しても発色性の低下に問題がなく原糸製造に障害に及ぼさなければその種類は特に制限されないが、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム等の金属酸化物が望ましい。コストを考慮すると酸化チタンが最も適している。
【0012】
本発明で用いる繊維は例えばポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン等の、溶融紡糸によって製造される繊維が製造工程上望ましく、それらの原糸、フィラメント加工糸どちらを用いてもよい。また普通繊維よりも芯鞘型複合繊維の方が変色防止効果が尚一層優れているので好ましい。変色防止効果以外にも芯鞘型複合繊維は白色顔料を均等に含有した普通繊維に比較して発色性、工程通過性も優れている。
【0013】
本発明の混用糸では前述のように白色顔料を特定量含有し、それによってぬれても変色しにくく、かつ透けにくいようにする糸とぬれた場合に早くその水分を他の区域に走行せしめながらも変色しにくい糸を糸構造内に均一に分散配置することが必要となる。この後者の糸は水拡散性に優れた糸であることが必要である。
そこで本発明では水拡散性繊維糸として合成繊維糸を用いるに際して、繊維による水の保持性及び合成繊維糸を構成する単繊維間の毛細管現象による水の拡散性を利用する。より具体的には断面形状がL,C,W,Z,M、歯車形等の異形断面のフィラメント原糸及びそのフィラメント加工糸、中空の多孔質繊維(中空の空孔率3%〜40%、より好ましくは5%〜20%)のフィラメント原糸及びそのフィラメント加工糸、又は単糸デニールが1.5d以下のファインデニールの原糸及びそのフィラメント加工糸を用いるとよい。水の通り道を多くして水拡散性を高めるには断面形状W、又は歯車形の異形断面かつ中空繊維、または三角から八角の非円形断面でかつ中空繊維にし、さらに単糸デニールをファインデニールにする。より具体的には、繊維を構成するフィラメントが図1のように異形度が1.4以上2.2以下(好ましくは1.5以上)、θ1 〜θ3 が20°以上160°以下(好ましくは120°〜150°)のW形異形断面糸、図2のように異形度が1.1以上2.2以下(好ましくは1.2以上)でほぼ丸形の中空部をフィラメントの長さ方向に3つ持ち、トータルの中空率が5%以上10%以下の三角断面糸がよい。
特にW形断面糸はこのW形断面糸が重なり合った時にできる細い毛細管により、毛管吸引力が大きくなること、又この断面形状であると一度保持した水を他に移すことなく(ぬれ戻ることなく)水を抱え持つ性質もあるため、多量の汗を生ずるスポーツ衣料に用いると、冷え感やべとつきを全く感じないドライ性を発揮して、変色防止性と着用快適性を兼ね備えたものにすることができる。
この水拡散性繊維は混用糸重量の50重量%以上80重量%以下より好ましくは60重量%以上70重量%以下であるとよい。この水拡散性繊維は、異形断面繊維や中空繊維、ファインデニール繊維等であるため、工程管理を通常より慎重にする必要もあり繊維材料として80重量%以上含有すると染め筋等の欠点が見えやすくなることがある。50重量%以下では水拡散性が充分達成できない。
【0014】
本発明における水拡散性繊維の異形度は1.2以上2.2以下、より好ましくは1.4以上2.2以下である。1.2以上であると丸断面よりも格段に水拡散性に優れたものとなり、2.2を超えると紡糸性等の製造安定性に劣るので好ましくない。本発明でいう異形度は、異形糸の断面積と周長(周囲の長さ)を算出し、次に同じ断面積を持つ真円の半径を求め、そこからその真円の周長を算出し、次式により求める。
異形度=異形糸の周長/異形糸と同じ断面積の真円の周長
【0015】
前記のように合成繊維の原糸にフィラメント加工を施して捲縮を与えると、捲縮による水の物理的保持によって水の保持性を高めた合成繊維糸を得ることができる。ただしこの場合の捲縮は低捲縮、すなわち捲縮伸長率で10%以下、好ましくは5〜7%であるとよい。これは高捲縮であると物理的に水を保持するスペースは増すが、逆に水の拡散性が著しく低下することになり、布帛の変色防止にはマイナスに作用するからである。
本発明の混用糸中の水拡散性を有する繊維としては、後述する測定法によって求められる吸水性値及び水拡散性値それぞれ2cm以上及び10cm以上の値を示す繊維を用いることが好ましい。合成繊維の異形断面繊維は、異形度を大きくすることによって、水拡散性値10cm以上を示す繊維が得られる。例えば、単糸デニールが1.7d好ましくは1.5以下の繊維の場合、異形度が1.4以上を示すW形断面繊維で水拡散性値が15cm以上を示すポリエステル繊維、ナイロン繊維を得ることができる。前記した空孔率を有する多孔繊維、中空繊維は、前記レベルの水拡散性値を有する繊維が得られる。そして、異形断面繊維や多孔繊維等は、その形態効果に因って概ね2.1cm以上の吸水性を示す。
異形度が1.1〜1.4の異形断面繊維でも単糸繊維1.7d以下のものでは水拡散性値が12cm以上を示す。捲縮伸長率が5〜7%の丸形断面繊維によっても水拡散性値10cm以上、吸水性値2cm以上の繊維が得られる。
【0016】
前述の白色顔料を特定量含有し、かつ水拡散性を有する合成繊維を白色顔料含有する繊維と混用して用いれば、糸に接触した水分は前記糸内の水拡散性を有する合成繊維に吸収され、更に吸収された水分は糸内を移行して拡散するうえ自身は変色が大変小さく、糸及びその糸から作られた布帛の変色を防止するのに最も役立つ。
【0017】
本発明における混用糸において水拡散性を有する合成繊維にも白色顔料を多く含有させると良い。その含有量は前述のように、普通繊維の場合、1重量%以上6重量%、より好ましくは2重量%以上5重量%以下である。芯鞘型複合繊維の場合は、芯部の白色顔料の含有量が3重量%以上15重量%以下、より好ましくは5重量%以上10重量%以下である。これはこれら合成繊維自体の変色を白色顔料によって抑えることになり混用糸及び混用糸を用いて作られた布帛全体の変色防止効果を高めるのに役立つ。
【0018】
本発明で用いられる糸の太さはマルチフィラメントの場合で30d〜150d、紡績糸の場合で10s〜40s(綿番手)が好ましく用いられる。たゞしこの太さの糸に限定されるものではない。
【0019】
本発明の混用糸の吸水性を高めるためにこの混用糸を用いて作られた布帛の染色仕上工程の最終段階で吸収剤を付与してもよい。このように吸収剤を付与すると合成繊維の水との親和性が向上し、水の拡散性が向上して変色の程度が小さくなる。例えば高松油脂(株)製のSRシリーズ、センカ(株)製のファインセットF101等の親水性共重合物を主成分とする吸収剤又は親水化剤を3〜5%owf 付与すると良い。その際洗濯や長期着用に対する吸水剤の耐久性を向上させる仕上処理を行うと変色防止効果を長期間維持できるので好ましい。なお吸収剤の付与は混用糸を用いて作られた布帛に対して施すと良い。
【0020】
次に本発明の混用糸及び混用糸を用いて作られた布帛の各種物性値の定義及び測定又は評価方法を以下にまとめて説明する。
(1)捲縮伸長率
JIS−L−1090(1992)合成繊維嵩高加工糸試験方法、5.7伸縮法B法により測定する。
先ず下記方法により前処理した試料片をつくる。
試料を、試料に損傷を与えない様な棒に掛けて輪にしたもの5個作り、それぞれに2mgf ×試料表示デニール数の荷重をかける。次に、この5個の試料をひとまとめにして約50cmの間隔をおき上下を綿糸でしっかり結んだ後、直ちに除重する。続いて0.3mgf ×10×試料表示デニール数の荷重を掛けながら80℃で15分間乾熱処理を行い、除重後一昼夜放置する。
このような前処理をした10本1束の試料片を、前記JIS−L−1090、5.7伸縮性B法に基づき、2mgf ×10×試料表示デニール数の初荷重をかけた状態で、試験長が約20cmになるよう試料片上部をクランプで固定し、30秒後の試料長(a)を正確に測定する。次に、0.1gf×10×試料表示デニール数の荷重にかけて30秒後の試料長(b)を正確に測定する。そして次式によって捲縮伸長率(%)を算出する。
捲縮伸長率(%)=〔(b−a)/a〕×100
【0021】
(2)繊維の吸水性
混用糸を構成する水拡散性繊維の吸水性を下記の方法によって評価した。混用糸を構成する水拡散性繊維の糸をかせ巻きにし、実施例と同一の精練・染色・乾燥工程を経たものを試料糸とする。
ただし、繊維がフィラメント糸の場合は実施例、比較例で用いられるフィラメント糸の単糸デニールと同一の単糸デニールの単糸を束ねてトータルデニールが75d±5dになるように試験用の糸を用意し、この糸に300T/mの値をかけ、100℃×15分間スチームでセットし、乾燥の後、20℃、湿度65%RHで一昼夜放置して試料糸を調製する。
使用繊維が短繊維の場合は、下記式で示す撚係数が120になるようなm当り撚数の撚を有する綿糸10sに相当する太さと撚を有する糸を合糸によって調製し試料糸とする。
T=α×√N
T:m当り撚数、N:綿番手、α:撚係数
このようにして調製した試料糸を50cm切り取り、上端を固定した状態で0.1g/dの荷重を糸の下端にかけた後、下端を水(常温)につけ、10分後に水の吸い上げ垂直距離を測定する。評価は10本の平均値をもって行う。この吸い上げ距離が2cm以上である場合に吸水性良好であると評価する。
【0022】
(3)繊維の水拡散性
吸水性の測定に用いた試料糸と同一の糸を用いて水拡散性を測定する。前期試料糸1mを切り取り、糸の一端を固定した状態で、もう一方の端に程近い部分を滑車にひっかけた後、その端に0.1g/dの荷重をかけて水平に糸を張る。緊張下の糸の中央付近に0.01ccの水を与えて10分後の水の水平方向移動距離を測定する。測定は20℃、湿度65%RH下で行う、10本の測定値の平均で水拡散性を評価した。移動距離が10cm以上の糸を水拡散性良好と評価する。
【0023】
(4)布帛の水拡散性
本発明の混用糸を用いて作られた布帛の水拡散性を下記方法によって測定する。
混用糸による布帛を実施例で用いる染色仕上工程から染色工程だけを省いた繊維・乾燥又は精錬・吸水加工・乾燥工程に通して白布帛を用意し、この白布帛から10cm×10cmの試料を切取る。一方Diacid Alizarine Light Blue 4GL(ダイスター(株)製染料)を0.1g、100mlの蒸留水に希釈して着色水を調製する。なお前記染料は分子量が小さく水に溶けやすいものである。この着色水(常温)をマイクロピペットに入れ、マイクロピペットの先端を試料表面から2cmの高さにして、0.2cc試料上に滴下する。滴下後1分後の着色水のぬれ拡った拡散面積(cm2 )を測定して、布帛の水拡散性値とした。この数値から15cm2 以上の布帛は水拡散性が良好であると評価する。
【0024】
(5)布帛での変色防止性の評価
下記に示す測色計による数値評価と官能評価を併せて行った。
(a)測色計による数値で示す色差(ΔE*)
サカタインクス(株)製の測色計マクベスカラーアイ3000を用いて測定する。
▲1▼ 10cm×10cm程度の乾燥した試料サンプルを2つ折りにして測色計の直径2.5cmの測色部に当て光源Cを用いて測定し、知覚色度指数a* ,b* 及び明度L* を得る。得られた値をそれぞれ知覚色度指数及び明度のスタンダード値とする。
▲2▼ 次に水1ミリリットルを試料サンプルに与え30秒後にぬれ拡った部分を測定し、同様に知覚色度指数a* ,b* 及び明度L* を得る。得られた値をそれぞれ知覚色度指数及び明度のトライアル値とする。
▲3▼ 知覚色度指数a* ,b* 及び明度L* のスタンダード値とトライアル値との差を次式に代入して色素ΔE*を得る。サンプル数は2である。
ΔE* ={(ΔL* )2 +(Δa* )2 +(Δb* )2 }1/2
(b)官能評価
5人の検査員に目視による変色程度の評価を依頼し、得られた評価の平均値を下記官能評価基準により分類した、具体的には20cm×20cmの布帛の試料片を用意し、そのほゞ中央部分に1ミリリットルの水をピペットで滴下し、30秒後に水の滴下によって着色した部分と周辺区域を比較する。
変色が小さいものから順に、
◎↑ 乾湿間の色の差が全くない
◎ 〃 〃 が殆どない
○ 〃 〃 あまりない
△ 〃 〃 ややある
× 〃 〃 大いにある
前記乾湿時の色差が大きい程官能検査で不快を感じる。好ましい乾湿時の色差は5以下である。
【0025】
(5)工程通過性
実施例、比較例中の工程通過性が良いものというのは、編織工程で、編織機に対してガイド等へ摩耗や傷を与えたりしないものをいう。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明を実施例により以下詳述する。但し本発明がこれら実施例によって限定されるものではない。
各実施例及び各比較例の記載をより明確にするために、複数例に共通する物性値及び加工条件は実施例の記載に先立って一括して以下記載する。
又各実施例1〜3及び各比較例1〜2の評価結果はまとめて表1として実施例1〜3及び比較例1〜2の後に記載した。
【0027】
【0028】
【0029】
(6)糸加工の条件
下記5種類の糸加工を行った。
▲1▼ 加工条件(1) 複合仮撚(インターレース仮撚)
村田機械33H仮撚加工機を用い、各々の糸のフィード率を1.5%、エアー圧2.0kg/cm2 でインターレース加工をした後、村田機械33H仮撚加工機でDR=1.04倍、加工速度400m/分、撚数Z−2400T/M、ヒーター温度180℃で仮撚加工した。
▲2▼ 加工条件(2) 複合仮撚(タスラン仮撚)
村田機械33H仮撚加工機を用い、各々の糸のフィード率を10%、エアー圧7.0kg/cm2 でタスラン加工をした後、村田機械33H仮撚加工機でDR=1.04倍、加工速度400m/分、撚数Z−2400T/M、ヒーター温度180℃で仮撚加工した。
▲3▼ 加工条件(3) エアー混繊(インターレース)
村田機械33H仮撚加工機を用い、各々の糸のフィード率を1.5%、エアー圧2.0kg/cm2 でインターレース加工をした。
【0030】
▲4▼ 加工条件(4) エアー混繊(タスラン)
村田機械33H仮撚加工機を用い、各々の糸のフィード率を10%、エアー圧7.0kg/cm2 でタスラン加工をした。
【0031】
【実施例】
以下実施例により本発明に詳述する。本発明の混用糸の特徴とする変色防止性は糸としての評価が困難であるので、下記実施例及び比較例では対応する複合糸を用いて天竺編地を作り、その編地での変色防止性を色差ΔE及び官能検査で評価した。なお水拡散性及び吸水性については混用糸を構成する水拡散性糸の値である。混用糸の性能評価を表1として比較例2の後に一括して示す。表中の水拡散面積は本発明の混用糸を用いた布帛の値である。又本実施例及び比較例で用いた混用糸の側面の表面写真を撮影し、画像解析を用いて構成する各々の糸が表面を占める面積を算出して、それぞれの糸の「表面への露出割合」として表1中に示した。
【0032】
〔実施例1〕
3重量%の酸化チタンを含有し、中空部が8%で異形度1.2で、ほぼ円形の中空部を3つ有する3角断面繊維の単糸で構成されたポリエステル長繊維糸(75d/24f)と1重量%の酸化チタンを含有した丸断面繊維からなるポリエステル長繊維糸(75d/36f)を用い、加工条件(1)で各フィラメントがランダムに混合された複合仮撚糸を作った。この糸を用い28GGシングル編機で目付130g/m2 の天竺編地を作成し、染色した。この布帛はぬれたときの変色が大変小さいものとなった。この編地のぬれたときの変色の評価結果を複合仮撚糸を構成する繊維の水拡散性値と共に表1にまとめて示す。
【0033】
〔実施例2〕
3重量%の酸化チタンを含有し、丸断面繊維の単糸で構成されたポリエステル長繊維糸(75d/36f)と1重量%の酸化チタンを含有した異形度1.55を有し、θ1 =θ2 =θ3 =135°であるW形異形断面繊維からなるポリエステル長繊維糸(75d/30f)を用い、加工条件(1)で各フィラメントがランダムに混合された複合仮撚糸を作った。この糸を用い28GGシングル編機で目付130g/m2 の天竺編地を作成し、染色した後、吸水加工を行った。この布帛はぬれたときの変色が大変小さく、ぬれていることを感じさせないものとなった。この編地のぬれたときの変色の評価結果等を複合仮撚糸を構成する繊維の水拡散性値と共に表1にまとめて示す。
【0034】
〔実施例3〕
3重量%の酸化チタンを含有し、中空率が8%で異形度1.2を有する前述の3角断面繊維の単糸から構成されたポリエステル長繊維糸(75d/36f)と2重量%の酸化チタンを含有した丸形断面繊維からなるポリエステル長繊維糸(75d/36f)を加工条件(3)を用いて各フィラメントがランダムに混合された混繊糸を作った。この糸を用い28GGシングル編機で目付120g/m2 の天竺編地を作成し、染色した。この布帛はぬれたときの変色が小さいものとなった。この編地のぬれたときの変色の評価結果等を混繊糸を構成する繊維の水拡散性値と共に表1にまとめて示す。
【0035】
〔比較例1〕
0.3重量%の酸化チタンを含有し丸形断面繊維の単糸で構成されたポリエステル長繊維(75d/24f)と0.1重量%の酸化チタンを含有した丸形断面繊維から編機されたポリエステル長繊維(75d/24f)を加工条件(1)を用いて各フィラメントがランダムに混合された複合仮撚糸を作った。この糸を用い28GGシングル編機で目付120g/m2 の天竺編地を作成し、染色した。この布帛はぬれたとき変色するものとなった。この編地のぬれたときの変色の評価結果等を複合仮撚糸を構成する繊維の水拡散性値と共に表1にまとめて示す。
【0036】
〔比較例2〕
3重量%の酸化チタンを含有し丸形断面繊維の単糸で構成されたポリエステル長繊維(75d/36f)と0.1重量%の酸化チタンを含有した丸形断面繊維から構成されたポリエステル長繊維(75d/36f)を加工条件(4)を用いて各フィラメントがランダムに混合された混繊糸を作った。この糸を用い28GGシングル編機で目付125g/m2 の天竺編地を作成し、染色した。この布帛はぬれたとき変色するものとなった。この編地のぬれたときの変色の評価結果等を混繊糸を構成する繊維の水拡散性値と共に表1にまとめて示す。
【0037】
【表1】
【0038】
【発明の効果】
本発明の変色防止混用糸は、白色顔料含有合成繊維が糸の表面層での白色光の量的割合を高める一方、水拡散性の優れた繊維を均一に混用した断面を有する糸構造を有するので糸表面から内部にかけて滲みこんでくる水が速やかに糸断面全体に拡散して、水濡れにより糸表面色の変色が効果的に防止できる衣料用糸材である。本発明の変色防止混用糸は、外衣用編織物の糸材として用いることによって、水滲みによる表面色の変化が抑制されたブラウス、ポロシャツ、パンツ等の外衣を提供するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の変色防止混用糸に用いる水拡散性繊維のW形断面をもつ単糸断面の1例を示す。
【図2】図2は、本発明の変色防止に用いる水拡散性繊維の他の異形数の単糸断面を示す。
Claims (6)
- 水拡散性が異なる複数の繊維からなり、白色顔料の含有量が1〜6重量%の合成繊維及び/又は白色顔料の含有量が3〜15重量%の芯部と2重量%以下の鞘部を有する芯鞘型複合合成繊維を構成繊維として含み、該繊維と複合される他の繊維が白色顔料の含有量が1重量%以上でかつ水拡散性を有する合成繊維である混用糸であって、該混用糸中の少なくとも50重量%が白色顔料の含有量が1重量%以上でかつ水拡散性を有する合成繊維であることを特徴とする変色防止混用糸。
- 白色顔料の含有量が1重量%以上でありかつ水拡散性を有する合成繊維の断面がW形異形断面繊維であることを特徴とする請求項1記載の変色防止混用糸。
- 白色顔料の含有量が1重量%以上でありかつ水拡散性を有する合成繊維の断面が三角でかつ繊維の長さ方向にほぼ丸形の中空部を少なくとも1つ有する繊維であることを特徴とする請求項1記載の変色防止混用糸。
- 白色顔料の含有量が1〜6重量%の合成繊維及び/又は白色顔料の含有量が3〜15重量%の芯部と2重量%以下の鞘部を有する芯鞘型複合合成繊維を、少なくとも20重量%含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の変色防止混用糸。
- 白色顔料の含有量が3〜15重量%の芯部と2重量%以下の鞘部を有する芯鞘型複合合成繊維の芯鞘重量比率が1/3〜3/1であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の変色防止混用糸。
- 白色顔料の含有量が1重量%以上でありかつ水拡散性を有する合成繊維の本明細書で定義する水拡散性値が10cm以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の変色防止混用糸。
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