JP3981020B2 - スライドドア制御装置並びにそれを備えるスライドドア構造及び自動車 - Google Patents

スライドドア制御装置並びにそれを備えるスライドドア構造及び自動車 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スライドドア制御装置並びにそれを備えるスライドドア構造及び自動車に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、スライドドア構造を有する自動車が知られている(例えば、特許文献1参照)。このスライドドア構造は、図5に示すように、パワースライドドア101と、パワースライドドア101を開閉するように駆動するパワースライドドアモータ(以下、モータという)103と、モータ103を制御するパワースライドドアエレクトリックコントロールユニット(以下、コントロールユニットという)105と、電源としてのバッテリー107とを有している。そして、コントロールユニット105でモータ103を制御することにより、パワースライドドア101の開閉が自動的に行われる。
【0003】
だが、パワースライドドア101の駆動ユニットはモータ103のシャフトに常時つながっているため、パワースライドドア101にはモータ103の制動力が常に働く。したがって、利用者は手動でパワースライドドア101の開閉を行うことが容易でなかった。
【0004】
そこで、パワースライドドアとモータとの間にクラッチが設けられた自動車が開発された(例えば、特許文献2)。この自動車のスライドドア構造は、図6に示すように、パワースライドドア101と、モータ103と、パワースライドドア101とモータ103との間に設けられたクラッチ109と、モータ103及びクラッチ109を制御するコントロールユニット105と、バッテリー107とを有している。
【0005】
コントロールユニット105は、図7に示すように、クラッチ保持回路121を有している。
【0006】
クラッチ保持回路121は、バッテリー107に接続された電源回路111と、電源回路111に接続されたCPU113と、セットリレー119とを備えている。セットリレー119は、一端がバッテリー107に接続されるとともに他端がクラッチ109に接続された接点部115と、CPU113に接続されたコイル部117とを有している。接点部115は、コイル部117に信号(電流)が流れたときに、コイル部117に引き寄せられて開じた状態になる。
【0007】
そして、利用者が車内のパワースライドドアスイッチの開又は閉操作を行うこと、あるいは、キーレスエントリーシステムのリモコンで開又は閉操作を行うことにより、CPU113に対して信号が発信される。信号を受信したCPU113はコイル部117に対して信号を発信する。すると、コイル部117に信号が流れ、接点部115は閉じた状態となる。これにより、バッテリー107とクラッチ109とは電気的に接続され、バッテリー107からクラッチ109に対して電力信号が発信される。そして、コントロールユニット105によってモータ103が駆動されるとともにモータ103の駆動力がパワースライドドア101に対して伝わるようにクラッチ109が制御されることにより、パワースライドドア101の開閉が自動的に行われる。
【0008】
一方、通常時にはコイル部117に電流が流れていないため、接点部115は開いた状態にある。それゆえに、バッテリー107とクラッチ109との電気的な接続が切断された状態となり、パワースライドドア101とモータ103とは構造的に切れた状態になる。したがって、モータ103の制動力がパワースライドドア101に対して働かないため、利用者はパワースライドドア101を手動で開閉することができる。
【0009】
ここで、例えば、自動車が坂道で停車している場合、パワースライドドアスイッチの開操作を行うことによりパワースライドドア101を自動的に開いているとき、コントロールユニット105に不具合が発生したとする。このとき、CPU113からコイル部117に対する信号の発信が途絶えるおそれがある。それにより、接点部115は開いた状態となり、パワースライドドア101とモータ103とは切れた状態となる。したがって、コントロールユニット105によるパワースライドドア101の制御は不可能となる。このとき、開いている最中であったパワースライドドア101が自重により一転して閉まり始めることにより、利用者がパワースライドドア101に挟まれる危険性がある。
【0010】
そこで、CPU113とコイル部117との間に設けられた配線には、CPU113が故障しているか否かを検出する故障検出回路123が接続されている。そして、CPU113に不具合が発生しているときには、故障検出回路123がCPU113の異常を検出してコイル部117に対して信号を発信する。それにより、コイル部117に信号が流れ、パワースライドドア101とモータ103とはつながった状態のままとなる。したがって、利用者がパワースライドドア101に挟まれる事態を防ぐことができる。
【0011】
【特許文献1】
特開平11−343774号公報
【特許文献2】
特開2001−184129号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この場合、故障検出回路123を別途設ける必要があるため、コントロールユニット105の構造が複雑化し、また、コストが余計にかかった。さらに、この場合、故障検出回路123を作動させる電源の信頼性も問題となる。つまり、何らかの不具合により故障検出回路123に対する電力が絶たれると、故障検出回路123は働かなくなる。
【0013】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、故障検出手段を設けることなく、スライドドア開閉スイッチの開又は閉操作中に継電器制御手段に何らかの不具合が生じたときにもクラッチと電源装置とを電気的に接続された状態にするスライドドア制御装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るスライドドア制御装置は、スライドドアを開閉するように駆動する駆動装置と該駆動装置の駆動力を上記スライドドアに対して断続するクラッチとを制御対象とし、スライドドア開閉スイッチの開又は閉信号を受けると上記駆動装置を駆動するとともに上記駆動装置の駆動力が上記スライドドアに対して伝わるように上記クラッチを接続することにより上記スライドドアを開閉するスライドドア制御装置であって、通電時に電磁力を発生する第1コイル部と、一端が上記クラッチに対して電力信号を発信する電源装置に接続され、上記第1コイル部に通電すると上記電磁力により閉じた状態になる第1接点部とを有する第1継電器と、上記クラッチと上記第1接点部の他端とを接続する接続配線と、通電時に電磁力を発生する第2コイル部と、一端が上記第1コイル部に接続されるとともに他端が上記接続配線の中途部に接続され、上記第2コイル部に通電すると上記電磁力により開いた状態になる第2接点部とを有する第2継電器と、上記第1コイル部と上記第2コイル部とに接続され、スライドドア開閉スイッチの開又は閉信号を受けると上記第1コイル部に対してスライドドア作動信号を発信するとともに上記第2コイル部に対して信号を発しない継電器制御手段と、を備えているものである。
【0015】
これにより、スライドドア開閉スイッチの開又は閉信号を受けると、継電器制御手段が第1コイル部に対してスライドドア作動信号を発信する。よって、第1接点部は閉じた状態になる。ここで、継電器制御手段に不具合が発生し、スライドドア開閉スイッチの開又は閉操作中に継電器制御手段から第1コイル部に対するスライドドア作動信号の発信が途絶えたとする。このとき、第2接点部は閉じた状態にある。よって、電源装置からの電力信号が第2接点部を介して第1コイル部に流入する。それゆえに、第1接点部は閉じた状態のままとなる。したがって、本発明によれば、継電器制御手段に何らかの不具合が生じたときにもクラッチと電源装置とを電気的に接続された状態にすることができる。
【0016】
また、スライドドア開閉スイッチの開又は閉操作中に継電器制御手段に何らかの不具合が生じたときにもクラッチと電源装置とを電気的に接続された状態にすることができるため、上述のときにも駆動装置の駆動力がスライドドアに伝わるようにクラッチは接続されている。したがって、本発明によれば、スライドドア開閉スイッチの開又は閉操作中に継電器制御手段に何らかの不具合が生じたときにもスライドドア制御装置によるスライドドアの開閉が可能となる。
【0017】
また、スライドドア開閉スイッチの開又は閉操作中に継電器制御手段に何らかの不具合が生じたときにもクラッチと電源装置とを電気的に接続された状態にすることができるため、継電器制御手段の故障を検出する故障検出手段を設ける必要がない。したがって、本発明によれば、スライドドア制御装置の構造の単純化及びコストの削減を図ることができる。
【0018】
本発明に係るスライドドア制御装置は更に、継電器制御手段が、上記スライドドア作動信号としてワンショットパルスを発信するように構成されているものである。
【0019】
これにより、スライドドア開閉スイッチの開又は閉信号を受けると、継電器制御手段が第1コイル部に対してワンショットパルスを発信する。よって、第1接点部は一瞬閉じた状態になる。このとき、第2接点部は閉じた状態にあるため、電源装置からの電力信号が第2接点部を介して第1コイル部に流入する。それゆえに、第1接点部は閉じた状態のままとなる。したがって、本発明によれば、簡単な構成のワンショットパルスを第1コイル部に対して発信することにより、クラッチと電源装置とを電気的に接続された状態にすることができる。
【0020】
本発明に係るスライドドア制御装置は更に、継電器制御手段が、スライドドア開閉スイッチの停止信号を受けると上記第2コイル部に対してスライドドア停止信号を発信するように構成されているものである。
【0021】
これにより、スライドドア開閉スイッチの停止信号を受けると継電器制御手段が第2コイル部に対してスライドドア停止信号を発信するため、第2接点部は開いた状態になる。それゆえに、第1接点部が閉じているときにおいて、電源装置から第1コイル部への電力信号の流入が途絶える。よって、第1接点部は開いた状態になる。したがって、本発明によれば、クラッチと電源装置との電気的な接続を切れた状態にすることができる。
【0022】
本発明に係るスライドドア制御装置は更に、継電器制御手段が、上記スライドドア停止信号としてワンショットパルスを発信するように構成されているものである。
【0023】
これにより、スライドドア開閉スイッチの停止信号を受けると継電器制御手段が第2コイル部に対してワンショットパルスを発信するため、第2接点部は開いた状態になる。それゆえに、第1接点部が閉じているときにおいて、電源装置から第1コイル部への電力信号の流入が途絶える。よって、第1接点部は開いた状態になる。したがって、本発明によれば、簡単な構成のワンショットパルスを第2コイル部に対して発信することにより、クラッチと電源装置との電気的な接続を切れた状態にすることができる。
【0024】
本発明に係るスライドドア制御装置は更に、スライドドアが自動的に開閉しているか否かを判定する判定手段を備え、継電器制御手段が、上記判定手段により上記スライドドアが停止中であると判定されたときにスライドドア開閉スイッチの開又は閉信号を受けるとワンショットパルスを発信するように構成されているものである。
【0025】
ところで、スライドドアが自動的に開閉している際にスライドドア開閉スイッチの開又は閉信号を受けたときには、継電器制御手段が第1コイル部に対してスライドドア作動信号としてワンショットパルスをすでに発信しているため、継電器制御手段が第1コイル部に対してワンショットパルスを改めて発信する必要はない。
【0026】
ここで、判定手段によりスライドドアが停止中であると判定されたときにスライドドア開閉スイッチの開又は閉信号を受けると第1コイル部に対してワンショットパルスを発信するように継電器制御手段が構成されている。よって、スライドドアが自動的に開閉している際にスライドドア開閉スイッチの開又は閉信号を受けたときに、継電器制御手段が第1コイル部に対してワンショットパルスを改めて発信することはない。したがって、本発明によれば、継電器制御手段が第1コイル部に対して不必要なスライドドア作動信号を発信することを防ぐことができる。
【0027】
本発明に係るスライドドア制御装置は更に、スライドドアが自動的に開閉しているか否かを判定する判定手段を備え、継電器制御手段が、上記判定手段により上記スライドドアが自動的に開閉していると判定されたときにスライドドア開閉スイッチの停止信号を受けるとワンショットパルスを発信するように構成されているものである。
【0028】
ところで、スライドドアが停止中にスライドドア開閉スイッチの停止信号を受けたときには、継電器制御手段が第2コイル部に対してスライドドア停止信号としてワンショットパルスをすでに発信しているため、継電器制御手段が第2コイル部に対してワンショットパルスを改めて発信する必要はない。
【0029】
ここで、判定手段によりスライドドアが自動的に開閉している際にスライドドア開閉スイッチの停止信号を受けると第2コイル部に対してワンショットパルスを発信するように継電器制御手段が構成されている。よって、スライドドアが停止中にスライドドア開閉スイッチの停止信号を受けたときに、継電器制御手段が第2コイル部に対してワンショットパルスを改めて発信することはない。したがって、本発明によれば、継電器制御手段が第2コイル部に対して不必要なスライドドア停止信号を発信することを防ぐことができる。
【0030】
本発明に係るスライドドア構造は、上記のスライドドア制御装置のいずれか1つを備えているものである。
【0031】
本発明に係る自動車は、上記のスライドドア構造を備えているものである。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、スライドドア開閉スイッチの開又は閉信号を受けると継電器制御手段が第1コイル部に対してスライドドア作動信号を発信するため、第1接点部は閉じた状態になる。ここで、継電器制御手段に不具合が発生し、スライドドア開閉スイッチの開又は閉操作中に継電器制御手段から第1コイル部に対するスライドドア作動信号の発信が途絶えたとする。このとき、第2接点部は閉じた状態にあるため、電源装置からの電力信号が第2接点部を介して第1コイル部に流入する。それゆえに、第1接点部は閉じた状態のままとなる。したがって、継電器制御手段に何らかの不具合が生じたときにもクラッチと電源装置とを電気的に接続された状態にすることができる。
【0033】
また、スライドドア開閉スイッチの開又は閉操作中に継電器制御手段に何らかの不具合が生じたときにもクラッチと電源装置とを電気的に接続された状態にすることができるため、上述のときにも駆動装置の駆動力がスライドドアに伝わるようにクラッチは接続されている。したがって、スライドドア開閉スイッチの開又は閉操作中に継電器制御手段に何らかの不具合が生じたときにもスライドドア制御装置によるスライドドアの開閉が可能となる。
【0034】
また、スライドドア開閉スイッチの開又は閉操作中に継電器制御手段に何らかの不具合が生じたときにもクラッチと電源装置とを電気的に接続された状態にすることができるため、継電器制御手段の故障を検出する故障検出手段を設ける必要がない。したがって、スライドドア制御装置の構造の単純化及びコストの削減を図ることができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0036】
本発明に係る自動車1は、図1に示すように、スライドドア構造3とボディシェル5とを有している。
【0037】
スライドドア構造3は、図1及び図2に示すように、パワースライドドア(PSD)7と、クラッチ9と、駆動装置としてのパワースライドドアモータ(以下、モータという)11と、スライドドア制御装置としてのパワースライドドアエレクトリックコントロールユニット(以下、コントロールユニットという)13と、電源装置としてのバッテリー15とを有している。
【0038】
パワースライドドア7は、図1に示すように、ボディシェル5に沿って前後方向に滑らせることにより開閉可能に構成されている。そして、モータ11を駆動させることにより、パワースライドドア7を自動的に開閉することができる。
【0039】
クラッチ9は、図2に示すように、パワースライドドア7の駆動ユニット(図示せず)及びモータ11のシャフト(図示せず)に構造的に接続されている。
【0040】
クラッチ9はコントロールユニット13に電気的に接続され、コントロールユニット13によって制御されている。そして、パワースライドドア7とモータ11とがつながるようにクラッチ9を制御すると、モータ11の制動力が常にパワースライドドア7に対して働く。言い換えると、モータ11の駆動力がパワースライドドア7に対して伝わるようにクラッチ9を制御すると、モータ11の制動力が常にパワースライドドア7に対して働く。
【0041】
一方、パワースライドドア7とモータ11とが切れるようにクラッチ9を制御すると、モータ11の制動力がパワースライドドア7に対して働かない。言い換えると、モータ11の駆動力がパワースライドドア7に対して伝わらないようにクラッチ9を制御すると、モータ11の制動力がパワースライドドア7に対して働かない。このとき、パワースライドドア7を手動で容易に開閉することができる。
【0042】
モータ11はコントロールユニット13に電気的に接続され、コントロールユニット13によって制御されている。
【0043】
コントロールユニット13は、図3に示すように、電源回路17、継電器制御手段としてのCPU19、第1継電器としてのセットリレー21、及び第2継電器としてのリセットリレー23を有するクラッチ保持回路24を備えている。
【0044】
電源回路17は第1配線25を介してバッテリー15に接続されるとともに、第2配線27を介してCPU19に接続されている。電源回路17は、CPU19に対して適切なエネルギーを供給するために、バッテリー15からのエネルギーの変換、調整、整流等を行うものである。
【0045】
CPU19は第3配線29を介して後述する第4配線31の中途部に接続されるとともに、第5配線33を介して後述するリセットリレーコイル部23aに接続されている。そして、ユーザが車1内に設けられたパワースライドドアスイッチ(図示せず)の操作を行うこと、パワースライドドア7のインサイドドアハンドル(図示せず)を軽く動かすこと、パワースライドドア7のアウトサイドドアハンドル16(図1参照)を軽く動かすこと、あるいは、電波式キーレスエントリーシステムのリモコン(図示せず)の操作を行うこと等により、スライドドア作動信号又はスライドドア停止信号がCPU19に対して発信される。
【0046】
CPU19は、パワースライドドア7の作動条件が成立したか否かを判定する。具体的には、CPU19は、パワースライドドア7の作動入力が行われたか否かを判定する。本実施形態においては、パワースライドドア7の作動入力が行われたか否かの判定は、パワースライドドアスイッチの開又は閉操作を行うこと等によりCPU19に対して発信されるスライドドア作動信号に基づいて行われる。
【0047】
CPU19は、パワースライドドア7の停止条件が成立したか否かを判定する。具体的には、CPU19は、パワースライドドア7の停止入力が行われたか否かを判定する。本実施形態においては、パワースライドドア7の停止入力が行われたか否かの判定は、パワースライドドアスイッチの停止操作を行うこと等によりCPU19に対して発信されるスライドドア停止信号に基づいて行われる。
【0048】
CPU19は、パワースライドドア7が停止しているか否かを判定する。
【0049】
CPU19は、パワースライドドア7が電動で作動しているか否かを判定する。
【0050】
CPU19は、1回前(前回)のルーチンでパワースライドドア7が停止していたか否かを判定する。具体的には、CPU19は、CPU19内のメモリに記憶された1回前のルーチンの情報により、1回前のルーチンでパワースライドドア7が停止していたか否かを判定する。
【0051】
CPU19は、1回前(前回)のルーチンでパワースライドドア7が電動で作動していたか否かを判定する。具体的には、CPU19は、CPU19内のメモリに記憶された1回前のルーチンの情報により、1回前のルーチンでパワースライドドア7が電動で作動していたか否かを判定する。なお、本発明で言うところの判定手段は、CPU19に対応する。
【0052】
CPU19は、パワースライドドア7の作動入力が行われ、且つ、1回前のルーチンでパワースライドドア7が停止していたときに、後述するセットリレーコイル部21aに対してスライドドア作動信号を発信する。本実施形態においては、CPU19は、パワースライドドア7の作動入力が行われ、且つ、1回前のルーチンでパワースライドドア7が停止していたときに、セットリレーコイル部21aに対してスライドドア作動信号として1つのパルス、すなわち、ワンショットパルスを発信する。
【0053】
CPU19は、パワースライドドア7の停止入力が行われ、且つ、1回前のルーチンでパワースライドドア7が電動で作動していたときに、後述するリセットリレーコイル部23aに対してスライドドア停止信号を発信する。本実施形態においては、CPU19は、パワースライドドア7の停止入力が行われ、且つ、1回前のルーチンでパワースライドドア7が電動で作動していたときに、リセットリレーコイル部23aに対してスライドドア停止信号として1つのパルス、すなわち、ワンショットパルスを発信する。
【0054】
セットリレー21は第1コイル部としてのセットリレーコイル部21a及び第1接点部としてのセットリレー接点部21bを有する。
【0055】
セットリレーコイル部21aは、通電時に電磁力を発生する。
【0056】
セットリレー接点部21bは、その一端(上端)が第6配線35を介してバッテリー15に接続され、その他端(下端)が接続配線としての第7配線37を介してクラッチ9に接続されている。そして、セットリレーコイル部21aにスライドドア作動信号(電流)が流れていないときには、セットリレー接点部21bは開いた状態、すなわち、OFFの状態となる。一方、セットリレーコイル部21aにスライドドア作動信号(電流)が流れたときには、セットリレー接点部21bはセットリレーコイル部21aに発生した電磁力により引き寄せられて閉じた状態、すなわち、ONの状態となる。
【0057】
リセットリレー23は、第2コイル部としてのリセットリレーコイル部23a及び第2接点部としてのリセットリレー接点部23bを有する。
【0058】
リセットリレーコイル部23aは、通電時に電磁力を発生する。
【0059】
リセットリレー接点部23bは、その一端(上端)が第4配線31を介してセットリレーコイル部21aに接続され、その他端(下端)が第8配線39を介して第7配線37の中途部に接続されている。そして、リセットリレーコイル部23aにスライドドア停止信号(電流)が流れていないときには、リセットリレー接点部23bは閉じた状態、すなわち、ONの状態となる。一方、リセットリレーコイル部23aにスライドドア停止信号(電流)が流れたときには、リセットリレー接点部23bはリセットリレーコイル部23aに発生した電磁力により遠ざけられて開いた状態、すなわち、OFFの状態となる。
【0060】
ここで、本実施形態に係るスライドドア構造3の動作を、図3及び図4に示したフローチャートを参照しながら説明する。なお、本実施形態においては、自動車1は坂道に停車した状態にあり、フロント部1a(図1参照)がリア部1bより低い側に位置する。
【0061】
(パワースライドドアスイッチの開操作を行ってパワースライドドアを開く場合)
まず、ユーザがパワースライドドア7を開くために車1内に設けられたパワースライドドアスイッチの開操作を行うと、スライドドア作動信号がコントロールユニット13に対して発信される。
【0062】
次に、スライドドア作動信号を受信したCPU19は、パワースライドドア7の作動入力が行われたか否かを判定する(ステップS1)。
【0063】
次に、パワースライドドア7の作動入力が行われたと判定したとき、CPU19は1回前のルーチンでパワースライドドア7が停止していたか否かを判定する(ステップS2)。
【0064】
次に、1回前のルーチンでパワースライドドア7が停止していたと判定したとき、CPU19はスライドドア作動信号としてワンショットパルスをセットリレーコイル部21aに対して発信する(ステップS3)。それにより、セットリレーコイル部21aにスライドドア作動信号が一瞬流れ、セットリレー接点部21bは一瞬閉じた状態となる。そして、クラッチ9とバッテリー15とは、セットリレー接点部21bを介して電気的に接続される。
【0065】
次に、CPU19がセットリレーコイル部21aに対して発信したスライドドア作動信号はワンショットパルスであるため、セットリレー接点部21bは一瞬閉じた状態となる。
【0066】
ここで、リセットリレーコイル部23aにはCPU19から信号が発信されていないため、リセットリレー接点部23bは閉じた状態にある。よって、バッテリー15からの電流が、第7配線37、第8配線39、リセットリレー接点部23b、及び第4配線31を介して、セットリレーコイル部21aに流れる。それにより、セットリレー接点部21bは閉じた状態となり、バッテリー15とクラッチ9とは電気的に接続される。
【0067】
次に、バッテリー15からクラッチ9に電流が流れ、パワースライドドア7とモータ11とがつながるようにクラッチ9は接続される。これと同時に、コントロールユニット13は、パワースライドドア7を開くようにモータ11を駆動する。そして、駆動したモータ11はパワースライドドア7を開く。
【0068】
この後、CPU19に不具合が発生したとしても、セットリレー接点部21bは閉じた状態のままなので、コントロールユニット13によるパワースライドドア7の開作業は可能である。したがって、自動的に開いている最中のパワースライドドア7が一転して自重により閉まることはなく、ユーザがパワースライドドア7に挟まれるおそれはない。
【0069】
なお、パワースライドドアスイッチの閉操作を行ってパワースライドドア7を電動で閉じる場合も、上述とほぼ同様の工程を経る。
【0070】
(パワースライドドアを電動で開いている最中の場合)
このとき、パワースライドドア7を電動で開いている最中であるため、セットリレー接点部21b及びリセットリレー接点部23bは閉じた状態にある。
【0071】
ユーザが車1内に設けられたパワースライドドアスイッチの開操作を行うと、スライドドア作動信号がコントロールユニット13に対して発信される。
【0072】
CPU19は、パワースライドドア7の作動入力が行われたか否かを判定する(ステップS1)。
【0073】
パワースライドドア7の作動入力が行われたと判定したとき、CPU19は1回前のルーチンでパワースライドドア7が停止していたか否かを判定する(ステップS2)。
【0074】
CPU19が1回前のルーチンでパワースライドドア7が停止していなかったと判定、すなわち、1回前のルーチンでパワースライドドア7が電動で作動していたと判定したとき、初期状態(スタート)に移行する。
【0075】
この後、CPU19に不具合が発生したとしても、上述と同様に、開いている最中のパワースライドドア7が一転して自重により閉まることはなく、ユーザがパワースライドドア7に挟まれるおそれはない。
【0076】
なお、パワースライドドア7を電動で閉じている最中の場合も、上述とほぼ同様の工程を経る。
【0077】
(パワースライドドアが停止している場合)
このとき、パワースライドドア7が停止しているため、セットリレー接点部21bは開いた状態にあり、リセットリレー接点部23bは閉じた状態にある。
【0078】
ユーザがパワースライドドア7を停止するために車1内に設けられたパワースライドドアスイッチの停止操作を行うと、スライドドア停止信号がコントロールユニット13に対して発信される。
【0079】
CPU19は、パワースライドドア7の作動入力が行われたか否かを判定する(ステップS1)。
【0080】
パワースライドドア7の作動入力が行われなかったと判定したとき、CPU19はパワースライドドア7の停止入力が行われたか否かを判定する(ステップS4)。
【0081】
パワースライドドア7の停止入力が行われたと判定したとき、CPU19は1回前のルーチンでパワースライドドア7が電動で作動していたか否かを判定する(ステップS5)。
【0082】
CPU19が1回前のルーチンでパワースライドドア7が電動で作動していなかったと判定、すなわち、1回前のルーチンでパワースライドドア7が停止していたと判定したとき、初期状態に移行する。
【0083】
このとき、セットリレー接点部21bは開いた状態にあるため、バッテリー15とクラッチ9とは切れた状態にある。したがって、パワースライドドア7とモータ11とは切れた状態にあり、パワースライドドア7を手動で開閉することが可能である。
【0084】
(パワースライドドアを電動で開くことも停止することも行っていない場合)CPU19は、パワースライドドア7の作動入力が行われたか否かを判定する(ステップS1)。
【0085】
パワースライドドア7の作動入力が行われなかったと判定したとき、CPU19はパワースライドドア7の停止入力が行われたか否かを判定する(ステップS4)。
【0086】
CPU19がパワースライドドア7の停止入力が行われなかったと判定したとき、初期状態に移行する。
【0087】
本実施形態によれば、パワースライドドアスイッチの開操作を行うと、CPU19がセットリレーコイル部21aに対してスライドドア作動信号を発信する。よって、セットリレー接点部21bは閉じた状態になる。このとき、CPU19からリセットリレーコイル部23aに対して信号が発信されていないため、リセットリレー接点部23bは閉じた状態にある。それゆえに、CPU19に不具合が発生し、パワースライドドアスイッチの開操作中にCPU19からセットリレーコイル部21aに対するスライドドア作動信号の発信が途絶えたとしても、バッテリー15からの電流がリセットリレー接点部23bを介してセットリレーコイル部21aに流れる。よって、セットリレー接点部21bは閉じた状態のままとなる。したがって、本実施形態によれば、CPU19に何らかの不具合が生じたときにもクラッチ9とバッテリー15とを電気的に接続された状態にすることができる。
【0088】
また、パワースライドドアスイッチの開操作中にCPU19に何らかの不具合が生じたときにもクラッチ9とバッテリー15とを電気的に接続された状態にすることができるため、上述のときにもパワースライドドア7とモータ11とをつなぐようにクラッチ9は接続されている。したがって、本実施形態によれば、パワースライドドアスイッチの開操作中にCPU19に何らかの不具合が生じたときにもコントロールユニット13によるパワースライドドア7の開作業が可能となる。
【0089】
また、パワースライドドアスイッチの開操作中にCPU19に何らかの不具合が生じたときにもクラッチ9とバッテリー15とを電気的に接続された状態にすることができるため、CPU19の故障を検出する故障検出手段を設ける必要がない。したがって、本実施形態によれば、スライドドア構造3の構造の単純化及びコストの削減を図ることができる。
【0090】
また、パワースライドドアスイッチの開操作を行うと、CPU19がセットリレーコイル部21aに対してワンショットパルスを発信する。よって、セットリレー接点部21bは一瞬閉じた状態になる。このとき、CPU19からリセットリレーコイル部23aに対して信号が発信されていないため、リセットリレー接点部23bは開じた状態にある。それゆえに、バッテリー15からの電流がリセットリレー接点部23bを介してセットリレーコイル部21aに流れる。よって、セットリレー接点部21bは閉じた状態のままとなる。したがって、本実施形態によれば、簡単な構成のワンショットパルスをセットリレーコイル部21aに対して発信することにより、クラッチ9とバッテリー15とを電気的に接続された状態にすることができる。
【0091】
また、パワースライドドア7を電動で開いている最中に、パワースライドドアスイッチの停止操作を行うとCPU19がリセットリレーコイル部23aに対してスライドドア停止信号を発信し、リセットリレー接点部23bは開いた状態になる。それゆえに、バッテリー15からセットリレーコイル部21aへの電流の流入が途絶える。よって、セットリレー接点部21bは開いた状態になる。したがって、本実施形態によれば、パワースライドドア7を電動で開いている最中に、パワースライドドアスイッチの停止操作を行うことにより、クラッチ9とバッテリー15との電気的な接続を切れた状態にすることができ、開いている最中のパワースライドドア7を停止することができる。また、簡単な構成のワンショットパルスをリセットリレーコイル部23aに対して発信することにより、クラッチ9とバッテリー15との電気的な接続を切れた状態にすることができる。
【0092】
また、パワースライドドア7の作動入力が行われたと判定した後に、1回前のルーチンでパワースライドドア7が停止していたと判定したときに、CPU19はスライドドア作動信号としてワンショットパルスをセットリレーコイル部21aに対して発信する。よって、パワースライドドア7を電動で開いている最中に、CPU19がワンショットパルスをセットリレーコイル部21aに対して発信することはない。したがって、本実施形態によれば、CPU19がセットリレーコイル部21aに対して不必要なワンショットパルスを発信することを防ぐことができる。
【0093】
また、パワースライドドア7の停止入力が行われたと判定した後に、1回前のルーチンでパワースライドドア7が電動で作動していたと判定したときに、CPU19はスライドドア停止信号としてワンショットパルスをリセットリレーコイル部23aに対して発信する。よって、パワースライドドア7が停止している最中に、CPU19がワンショットパルスをリセットリレーコイル部23aに対して発信することはない。したがって、本実施形態によれば、CPU19がリセットリレーコイル部23aに対して不必要なワンショットパルスを発信することを防ぐことができる。
【0094】
なお、本実施形態では、ステップS4が設けられているが、ステップS4を省略してもよい。このとき、ステップS1において、CPU19がパワースライドドア7が電動で作動していないと判定したとき、ステップS5に移行する。
【0095】
また、本実施形態では、CPU19がスライドドア作動信号としてワンショットパルスをセットリレーコイル部21aに対して発信しているが、CPU19がセットリレーコイル部21aに対してスライドドア作動信号を常に発信し続けてもよい。このとき、ステップS2を省略してもよい。
【0096】
また、本実施形態では、パワースライドドア7はボディシェル5に沿って後方に滑らせることにより開くように構成されているが、前方に滑らせることにより開くように構成されてもよい。
【0097】
また、本実施形態では、スライドドア構造3は自動車1に採用されているが、自動車1以外の他の乗物に採用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係る自動車の側面図である。
【図2】実施形態に係るスライドドア構造の概略構成図である。
【図3】実施形態に係るクラッチ保持回路の概略構成図である。
【図4】実施形態に係るクラッチ保持回路の動作を示すフローチャート図である。
【図5】従来のスライドドア構造の概略構成図である。
【図6】従来のスライドドア構造の概略構成図である。
【図7】従来のクラッチ保持回路の概略構成図である。
【符号の説明】
1 自動車
3 スライドドア構造
7 パワースライドドア
9 クラッチ
11 パワースライドドアモータ(駆動装置)
13 パワースライドドアエレクトリックコントロールユニット(スライドドア制御装置)
15 バッテリー(電源装置)
17 電源回路
19 CPU(継電器制御手段)
21 セットリレー(第1継電器)
23 リセットリレー(第2継電器)
24 クラッチ保持回路

Claims (8)

  1. スライドドアを開閉するように駆動する駆動装置と該駆動装置の駆動力を上記スライドドアに対して断続するクラッチとを制御対象とし、スライドドア開閉スイッチの開又は閉信号を受けると上記駆動装置を駆動するとともに上記駆動装置の駆動力が上記スライドドアに対して伝わるように上記クラッチを接続することにより上記スライドドアを開閉するスライドドア制御装置であって、
    通電時に電磁力を発生する第1コイル部と、一端が上記クラッチに対して電力信号を発信する電源装置に接続され、上記第1コイル部に通電すると上記電磁力により閉じた状態になる第1接点部とを有する第1継電器と、
    上記クラッチと上記第1接点部の他端とを接続する接続配線と、
    通電時に電磁力を発生する第2コイル部と、一端が上記第1コイル部に接続されるとともに他端が上記接続配線の中途部に接続され、上記第2コイル部に通電すると上記電磁力により開いた状態になる第2接点部とを有する第2継電器と、
    上記第1コイル部と上記第2コイル部とに接続され、スライドドア開閉スイッチの開又は閉信号を受けると上記第1コイル部に対してスライドドア作動信号を発信するとともに上記第2コイル部に対して信号を発しない継電器制御手段と、
    を備えているスライドドア制御装置。
  2. 継電器制御手段は、上記スライドドア作動信号としてワンショットパルスを発信するように構成されている請求項1記載のスライドドア制御装置。
  3. 継電器制御手段は、スライドドア開閉スイッチの停止信号を受けると上記第2コイル部に対してスライドドア停止信号を発信するように構成されている請求項2記載のスライドドア制御装置。
  4. 継電器制御手段は、上記スライドドア停止信号としてワンショットパルスを発信するように構成されている請求項3記載のスライドドア制御装置。
  5. スライドドアが自動的に開閉しているか否かを判定する判定手段を備え、
    継電器制御手段は、上記判定手段により上記スライドドアが停止中であると判定されたときにスライドドア開閉スイッチの開又は閉信号を受けるとワンショットパルスを発信するように構成されている請求項2記載のスライドドア制御装置。
  6. スライドドアが自動的に開閉しているか否かを判定する判定手段を備え、
    継電器制御手段は、上記判定手段により上記スライドドアが自動的に開閉していると判定されたときにスライドドア開閉スイッチの停止信号を受けるとワンショットパルスを発信するように構成されている請求項4記載のスライドドア制御装置。
  7. 請求項1〜6のいずれか1つに記載のスライドドア制御装置を備えているスライドドア構造。
  8. 請求項7記載のスライドドア構造を備えている自動車。
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