JP3980635B2 - 外部シグナルに対する細胞応答性を調節するための方法および生成物 - Google Patents

外部シグナルに対する細胞応答性を調節するための方法および生成物 Download PDF

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Description

発明の技術分野
本発明は、MEKKタンパク質をコードしている単離された核酸分子、実質的に純粋なMEKKタンパク質、および細胞中のシグナル伝達を調節する生成物および方法に関する。
発明の要旨
本発明は、哺乳類のMEKタンパク質をリン酸化することができる実質的に純粋なMEKKタンパク質に関し、該MEKKタンパク質は触媒ドメインを含む。本発明は、細胞の表面上の増殖因子受容体から出発するシグナルを、MAPKタンパク質の活性を調節することによって、調節することができる実質的に純粋なMEKKタンパク質を包含し、調節する能力はRafタンパク質シグナル調節と異なる。特に、実質的に純粋なMEKKタンパク質は、配列番号4:、配列番号:6、配列番号:8および配列番号:10を含むアミノ酸配列をコードしている核酸分子と、緊縮条件下でハイブリッド形成することができる核酸によって、コードされたアミノ酸配列の少なくとも一部を含んでなる。実質的に純粋なMEKKタンパク質はMAPKタンパク質の活性を調節することができ、前記タンパク質はRafタンパク質と異なるアミノ酸配列を有する。
本発明はまた、配列番号:2、配列番号4:、配列番号:6、配列番号:8および配列番号:10を含むアミノ酸配列をコードしている核酸分子と、緊縮条件下でハイブリッド形成することができる核酸配列によってコードされたアミノ酸配列の少なくとも一部を有する少なくとも1種の単離たれたタンパク質を含んでなる製剤を包含する。
本発明の一つの態様は、Rafタンパク質から独立性の哺乳類MEKをリン酸化することができ、そしてMAPKタンパク質の活性を調節することができるタンパク質をコードしている配列を有する単離された核酸分子を包含する。特に、本発明は、配列番号1:、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7および配列番号:9からなる群から選ばれた核酸配列と、緊縮条件下でハイブリッド形成することができる単離された核酸分子を包含する。
本発明の他の態様は、配列番号:、1配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7および配列番号:9を含む核酸配列と、緊縮条件下でハイブリッド形成することができる核酸分子を含んでなり、核酸が発現ベクターに操作可能に結合している、組換え分子を包含する。
本発明のさらに他の態様は、発現ベクターに操作可能に結合している核酸分子を含んでなる、組換え分子で形質転換された組換え細胞であり、該核酸分子は配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7および配列番号:9(即ち、表1、表2、表3、表4および表5に示された核酸配列)からなる群から選ばれた核酸配列と、緊縮条件下でハイブリッド形成することができる核酸配列を含んでなる。
本発明はまた、細胞中のRaf依存性経路の活性に比してMEKK依存性経路の活性を調節することを含む細胞の恒常性を調節する方法を包含する。特に、この方法は、細胞のアポト−シスを調節することを含んでなる。かかる方法は内科的疾病を治療するのに有用である。特に、この方法は腫瘍形成および自己免疫を抑制するのに有用である。
本発明のよれば、疾患を治療する方法は、Raf依存性経路の活性を低下させることができる分子、MEKK依存性経路の活性を増加させることができる分子およびそれらの組合せを含む、少なくとも1種の調節分子を含んでなる治療化合物の有効量を、患者に投与することを含んでなり、該有効量は、疾患に関与する有害細胞を除去するに至る量を含んでなる。
また、本発明には、(a)細胞を推定上の調節分子と接触させること;(b)推定上の調節化合物が細胞中のMEKK依存性経路の活性を調節する能力を、前記MEKK依存性経路の少なくとも1つの構成員の活性化を測定することによって、決定すること;を含んでなる方法によって同定された、細胞中のMEKK依存性の活性を調節することができる治療用化合物が包含される。
本発明の1つの態様は、実質的に純粋なタンパク質を包含し、該タンパク質は、哺乳類MEKタンパク質をリン酸化することができ、そしてRafタンパク質から独立性のMAPKタンパク質の活性を調節することができるMEKタンパク質に選択的に結合することができる抗体を使用して単離され、該抗体は、(a)動物に、本発明の実質的に純粋なMEKKタンパク質の有効量を投与すること;(b)MEKKタンパク質に選択的に結合することができる抗体を回収すること;を含んでなる方法によって製造することができる。
本発明の他の実施例は、MEKKタンパク質に選択的に結合することができる単離された抗体を包含し、該抗体は、動物に、本発明の実質的に純粋なタンパク質の有効量を投与し、そしてMEKKタンパク質に選択的に結合することができる抗体を回収することを含んでなる方法によって製造することができる。
発明の背景
マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPKs)(細胞外シグナル調節キナーゼまたはERKsとも呼称される)は、チロシンキナーゼ(上皮増殖因子(EGF)受容体のような)である増殖因子受容体およびトロンビン受容体のような異種三量体グアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)に結合している受容体の両方によって結合しているリガンドに応答して、急速に活性化される。MAPKは、種々の第二メッセンジャーによって伝達された多重細胞内シグナルを統合するようである。MAPKはリン酸化して、酵素および、EGF受容体、Rsk90、ホスホリパーゼA2、c−Myc、c−JunおよびElk−1/TCFを含む転写因子の活性を調節する。チロシンキナーゼである受容体によるMAPKsの急速な活性化はRasに依存性であるが、MAPKのGタンパク質媒介活性化はRas依存性および独立性(非依存性)である経路を経て起こるようである。
酵母中のフェロモン誘発シグナル経路の相補性分析によって、MAPKのSpk1とFus3−Kss1、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)およびサッカロミセス・セレビシエ(Sacchromyces cerevisiae)同族体の活性を調節するプロテインキナーゼ系が規定された(例えば、B.R.Cairns等,Genes and Dev.,6,1305(1992);B.J.Stevenson等,Genes and Dev.,6,1293(1992);S.A.Nadin−Davis等,EMBO J.,7,985(1988);Y.Wang等,Mol.Cell.Biol.,11,3554(1991)参照)。S.セレビシエでは、プロテインキナーゼSte7はFus3−Kss1活性の上流調節体であり、プロテインキナーゼSte11はSte7を調節する。S.ポンベ遺伝子産物Byr1とByr2は夫々Ste7とSte11と相同である。MEK(MAPKキナーゼもしくはERKキナーゼ)またはMKK(MAPキナーゼキナーゼ)酵素は配列がSte7Bとyr1に類似である。MEKsはMAPKsをチロシンとスレオニン残基の両方の上でリン酸化し、これによってMAPKが活性化される。哺乳類のセリン−スレオニンプロテインキナーゼRafはリン酸化して、MEKを活性化して、MAPKが活性化される。Rafは、増殖因子受容体のチロシンキナーゼ活性に応答して活性化され、それ故Rafは、膜関連チロシンキナーゼの刺激に応答して、MAPKを活性化することができる。Rafは配列がSte11とByr2に関連性でない。従って、Rafは、哺乳類細胞中で、酵母中で規定されたフェロモン応答性プロテインキナーゼ系からの拡散を示すことができる。MAPKの調節において細胞および受容体に特異的な相違があることから、哺乳類MEKの他のRaf独立性調節体が存在することが示唆される。
増殖および分化のようなある種の生物学的機能は、細胞内のシグナル伝達経路によってしっかりと調節されている。シグナル伝達経路は、細胞の平衡定常状態機能を維持している。疾患状態は、細胞中のシグナル伝達が壊れ、細胞機能に通常存在するしっかりした制御が除去される場合に起こることができる。例えば、腫瘍は、細胞増殖の調節が崩壊し、細胞のクローンが無限に膨脹する場合に発生する。シグナル伝達ネットワークは、細胞の種類に依存する多数の細胞機能を調節するから、多種類の疾病がかかるネットワーク中の異常に由来することができる。癌のような荒廃性疾患、自己免疫疾患、アレルギー反応、炎症、神経障害、およびホルモン関連疾患は異常なシグナル伝達に由来することができる。
種々の疾患状態に関与する細胞を調節する方法を理解し発見する必要性は長年感じられてきたが、シグナル伝達経路の複雑さによって、細胞中のシグナル導入経路を操作することによって細胞機能を調節する生成物と方法の開発が阻まれてきた。このように、細胞中のシグナル伝達の予想できる制御の実行を可能にし、従って異常な細胞機能によって生起する種々の疾患の治療を可能にする生成物と方法の必要性は残されている。
【図面の簡単な説明】
図1は脊椎動物と酵母のシグナル経路の略図である。
図2はRasタンパク質経路と異なるMEKKとRafの二相経路の略図である。
図3Aは数種の細胞株とマウス組織中の一本鎖の7.8kb MEKK mRNAのノーザン(RNA)ブロットを示す。
図3BはMEKK遺伝子のサザン(DNA)ブロットを示す。
図3Cは齧歯類の細胞株中の78kdと50kdのMEKKの発現を示すイムノブロットを示す。
図4はMEKK抗血清を使用するMEKKタンパク質の免疫沈降物を示す。
図5は免疫沈降物と細胞溶解物中のMEKKタンパク質のイムノブロットを示す。
図6AはMEKKでトランスフェクトされたCOS細胞中のMAPKの活性化を示す。
図6BはEGFで処理されたか、または処理されなかった細胞中のMEKKの発現を示すイムノブロットである。
図7はMEKKでトランスフェクトされたCOS細胞中のMEKの活性化とリン酸化を示す。
図8AはMEKKによるMEK−1のリン酸化を示す。
図8BはCOS細胞中で発現したMEKKによるMEK−1のリン酸化の経時変化を示す。
図8CはCOS細胞中で過発現(overexpressed)したMEKKのイムノブロットである。
図9Aは活性化MEK−1によるMAPKのリン酸化を示す。
図9Bは免疫沈降したMEKKによるMEK−1のリン酸化を示す。
図10Aは活性化RafによるMEK−1のリン酸化を示す。
図10Bは、MEKKを過発現していて、そしてEGFで処理されたCOS細胞から単離されたRafのリン酸化状態を示す。
図11は、免疫沈降したMEKKとRaf−Bが、キナーゼ不活性なMEK−1をリン酸化する相対的能力を示す。
図12はEGF刺激されたMEKKとRaf−B活性の経時変化を示す。
図13は、MEKK免疫沈降物からのRaf−Bの免疫低下がMEKK活性に影響しないことを示す。
図14は、MEKK免疫沈降物からのRaf−Bの免疫低下がRaf−B活性を低下させることを示す。
図15はPC12細胞溶解物のFPLCモノQイオン交換カラムフラクション中のMEKK活性を示す。
図16は優性の陰性N17RAS発現によるMEKKとRaf−B活性の阻害を示す。
図17は98kD MEKKによるMEKタンパク質の活性化を示す。
図18はフォルスコリンによるMEKKのEGF活性化の阻害を示す。
図19は切断された(truncated)トランケートMEKK分子による改良されたMEKK活性を示す。
図20はMEKKタンパク質によるJNK活性化を示す。
図21は、MEKKタンパク質による、c−Myc制御転写およびCREB制御転写の調節を示す。
図22はc−Myc制御転写のMEKK調節の略図である。
図23はMEKK3によるp38MAPKリン酸化の誘発を示す。
図24はビュ−ベリシン(beauvericin)によるSwiss3T3とREF52細胞中のアポト−シスの誘発を示す。
図25はMEKKによるREF52細胞中のアポト−シスの誘発を示す。
図26はMEKKによるSwiss3T3とREF52細胞中のアポト−シスの誘発を示す。
図27はMEKKタンパク質を発現しているアポト−シス的なREF52細胞の3枚の代表的な顕微鏡図を示す。
図28はMEKKタンパク質を発現しているアポト−シス的なSwiss3T3細胞の3枚の代表的な顕微鏡図を示す。
図29はMEKKタンパク質とRafタンパク質によるMAPK活性の類似な刺激を示す。
発明の詳細な記述
本発明は、細胞中のシグナル伝達を調節することができる新規なマイトジェンERKキナーゼキナーゼタンパク質(MEKK)に関する。本発明は、疾患を、かかる疾患に関与する細胞の活性を調節することによって治療する新規な方法を包含する。本発明は、本発明の新規な生成物および方法が、アポト−シスをもたらすことができるシグナル伝達を調節することができる点で、特に有利である。
本発明の1つの態様は単離されたMEKKタンパク質である。本発明によれば、単離されたタンパク質はその天然環境から取出されたタンパク質である。例えば、単離されたMEKKタンパク質はその天然源から得られるか、または組換えDNA技術を使用して製造されるか、または化学的に合成されることができる。本明細書で使用されるように、単離されたMEKKタンパク質は、アミノ酸が欠失(例えば、ペプチドのような、タンパク質の短縮された変形物)、挿入、逆転、置換および/または誘導体化(例えば、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ミリストイル化、プレニル化、パリミトイル化、アミド化および/またはグリコシルホスファチジルイノシトールの添加によって)されたMEKKタンパク質のような、全長のMEKKタンパク質またはかかるタンパク質のいずれかの相同体とすることができ、該改変タンパク質はマイトジェンERKキナーゼ(MEK)および/またはJun ERKキナーゼ(JEK)をリン酸化することができる。MEKKタンパク質の相同体は、この相同体をコードしている核酸配列が、天然MEKKタンパク質のアミノ酸配列をコードしている核酸配列に(即ち、と共に)、緊縮条件下でハイブリッド形成することができる程度に、天然MEKKタンパク質のアミノ酸配列に類似しているアミノ酸配列を有するタンパク質である。本明細書で使用されているように、緊縮(stringent)ハイブリッド形成条件とは、オリゴヌクレオチドを含む核酸分子が類似の核酸分子を同定するのに使用される、標準ハイブリッド形成条件を言う。かかる標準条件は、例えば、Sambrook等,分子クローニング:実験操作法(Molecular Cloning:A Laboratory Manual),Cold Spring Harbor Labs Press,1989年に開示されている。MEKKタンパク質の相同体はまた、その相同体が、天然に存在するMEKKタンパク質の少なくとも一つのエピトープに対する免疫反応を誘発する能力を有する程度に、交差反応性であるアミノ酸配列を有するタンパク質を包含する。
本発明のタンパク質相同体の最小の大きさは、対応する天然タンパク質をコードしている核酸分子の相補的配列と安定なハイブリッドを形成することができる核酸分子によってコードされる程度の大きさである。このように、かかるタンパク質相同体をコードしている核酸分子の大きさは、核酸組成、核酸分子と相補的配列との間のパーセント相同性並びにハイブリッド形成条件それ自体(例えば、温度、塩濃度およびホルムアミド濃度)に依存性である。かかる核酸分子の最小の大きさは通常、核酸分子がGCに富む場合、少なくとも約12〜約15個のヌクレオチドの長さであり、そしてATに富む場合、少なくとも約15〜約17個の塩基の長さである。このように、本発明のMEKKタンパク質相同体をコードするために使用された核酸分子の最小の大きさは、約12〜約18個のヌクレオチドの長さである。かかる核酸分子の最大の大きさについては、核酸分子が遺伝子の一部、全遺伝子、もしくは同義遺伝子、またはそれらの一部を含むことができるという実際的な制限以外に、全く制限はない。同様に、本発明のMEKKタンパク質相同体の最小の大きさは、約4〜約6個のアミノ酸の長さであり、好適な大きさは、全長で多価性のタンパク質(即ち、一つ以上のドメインを有し、各ドメインが機能を有する融合タンパク質)が望まれているか、またはかかるタンパク質の機能部分が望まれるかに依存している。
MEKKタンパク質相同体は、MEKKタンパク質をコードしている天然遺伝子の対立遺伝子変異の結果であることができる。天然遺伝子とは、天然中に最もしばしば見出される遺伝子の形態を言う。MEKKタンパク質相同体は、これに限定されないが、タンパク質をコードしている遺伝子を、例えば、無作為または標的突然変異誘発を行う古典的または組換えDNA技術を使用して、直接改変することを含む、当業界で既知の技術を使用して製造することができる。MEKKタンパク質相同体がMEKKおよび/またはJEKタンパク質をリン酸化する能力は、当業者に既知の技術を使用して試験することができる。かかる技術として、実施例で詳細に記載されるリン酸化測定法が挙げられる。
1つの態様では、本発明のMEKKタンパク質はMEKK依存性経路を調節することができる。本発明によれば、MEKK依存性経路とは一般的に、MEKKタンパク質が、Rafから実質的に独立している経路を調節する経路、およびMEKKタンパク質の調節が、Rafタンパク質特にMEKタンパク質を含む経路の共通の構成員に集中する経路を指す(図2を参照)。適切なMEKK依存性経路として、MEKKタンパク質とJEKタンパク質を含むが、Rafタンパク質を含まない経路が挙げられる。当業者は、MEKKタンパク質による経路の調節がRafタンパク質から実質的に独立していることを、MEKKタンパク質とRafタンパク質がかかる経路の下流の構成員のリン酸化を調節する能力を、例えば、実施例16に記載の一般的方法を使用して比較することによって、決定することができる。MEKKタンパク質がMEKKより下流の経路の構成員(例えば、JEK、JNK、Junおよび/またはATF−2を含むタンパク質)のリン酸化を、Rafタンパク質が利用される場合より有意的に大きい量だけ誘発する場合、MEKKタンパク質はRafタンパク質から実質的に独立している経路を調節する。例えば、JNKのリン酸化のMEKK誘発は、Rafタンパク質を使用する場合に誘発されるリン酸化より、好適には少なくとも約10倍、さらに好適には少なくとも約20倍、さらにもっと好適には少なくとも約30倍大きいJNKタンパク質のリン酸化である。リン酸化のMEKK誘発がリン酸化のRafタンパク質誘発と同様である場合、当業者は、MEKKタンパク質による経路の調節が、Rafタンパク質も含むことができたシグナル伝達経路の構成員を含むと結論することができる。例えば、MAPKのリン酸化のMEKK誘発は、Rafタンパク質によるリン酸化の誘発と同程度の大きさである。
「Raf依存性経路」とは、Rafタンパク質がMEKKタンパク質から実施的に独立しているシグナル伝達経路を調節するシグナル伝達経路、およびRafタンパク質調節がMEKKタンパク質を含む経路の共通の構成員に集中する経路を言うことができる。Rafタンパク質による経路の調節の、MEKKタンパク質による経路の調節からの独立性は、MEKKの独立性を決定するのに使用された方法と同様の方法を使用して決定することができる。
他の態様では、MEKKタンパク質は、これに限定されないが、マイトジェンERKキナーゼ(MEK)、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)、転写制御因子(TCF)、Ets様−1転写因子(Elk−1)、Jun ERKキナーゼ(JEK)、Junキナーゼ(JUK)、ストレス活性化MAPKタンパク質、Jun、活性化転写因子−2(ATF−2)および/またはMycタンパク質を含む、シグナル伝達タンパク質の活性を調節することができる。本明細書で使用されるように、タンパク質の「活性」は、タンパク質のリン酸化状態および/またはタンパク質が特定の機能を行う能力(例えば、他のタンパク質をリン酸化するまたは転写を調節する)に直接に関連することができる。本発明のMEKKタンパク質によって調節された好適なMEKタンパク質として、MEK−1および/またはMEK−2が挙げられる。本発明のMEKKタンパク質によって調節された好適なMAPKタンパク質として、p38MAPK、p42MAPKおよび/またはp44MAPKが挙げられる。p38MAPKタンパク質をリン酸化することができる好適なMEKKタンパク質として、配列番号:5によって表される核酸配列によってコードされたタンパク質が挙げられ、配列番号:7によって表されるアミノ酸配列を有するタンパク質はさらに好適である。本発明のMEKKタンパク質によって調節された好適なストレス活性化MAPKタンパク質として、Junキナーゼ(JNk)、ストレス活性化MAPK−αおよび/またはストレス活性化MAPK−βが挙げられる。本発明のMEKKタンパク質は、MEKタンパク質の活性をMEKの基礎水準(即ち、刺激されないで天然で見出される水準)以上に増加させることができる。例えば、MEKKタンパク質は好適には、実施例9に記載の条件下で測定した場合、基礎水準の少なくとも約2倍、さらに好適には少なくとも約3倍、さらにもっと好適には少なくとも約4倍まで、MEKタンパク質のリン酸化を増加させることができる。
本発明の好適なMEKKタンパク質はまた、MAPKタンパク質の活性をMAPKの基礎水準(即ち、刺激されないで天然で見出される水準)以上に増加させることができる。例えば、本発明のMEKKタンパク質は好適には、実施例3に記載の条件下で測定した場合、基礎水準の活性の少なくとも約2倍、さらに好適には少なくとも約3倍、さらにもっと好適には少なくとも約4倍まで、MAPK活性を増加させることができる。
さらに、本発明のMEKKタンパク質はJNKタンパク質の活性を増加させることができる。JNKは、T細胞、ニュートラル細胞または繊維芽細胞のような種々の細胞の種類の増殖および分化を調節することに関与している、転写因子JUNの活性を調節する。JNKはMAPKと構造的および調節的相同性を示す。例えば、本発明のMEKKタンパク質は好適には、実施例16に記載の条件下で測定した場合、Rafより少なくとも約30倍、さらに好適にはRafより少なくとも約40倍、さらにもっと好適にはRafより少なくとも約50倍まで、JNKタンパク質のリン酸化を誘発することができる。
本発明の好適なMEKKタンパク質は追加的に、c−Mycのリン酸化転写トランスアクチベーションドメインが遺伝子転写を調節することができるような方法で、c−Myc転写トランスアクチベーションドメインタンパク質のリン酸化を誘発することができる。MEKタンパク質がc−Myc転写トランスアクチベーションドメインタンパク質のリン酸化を調節する能力は、Rafタンパク質または環状AMP依存性プロテインキナーゼがc−Mycタンパク質を調節する能力を超える。例えば、本発明のMEKKタンパク質は好適には、実施例17に記載の条件下で測定した場合、Rafより少なくとも約25倍、さらに好適には少なくとも約35倍、さらにもっと好適には少なくとも約45倍まで、リン酸化c−Myc転写トランスアクチベーションドメインタンパク質によるルシフェラーゼ遺伝子転写を誘発することができる。
本発明の他の態様は、MEKK活性が、これらに限定されないが、上皮増殖因子(EGF)、神経増殖因子(NGF)、腫瘍壊死因子(TNF)、C5A、インターロイキン−8(IL−8)、単球走化性プロテイン1(MIP1α)、単球化学誘引プロテイン1(MCP−1)、血小板活性化因子(PAF)、N−ホルミル−メチオニル−ロイシル−フェニルアラニン(FMLP)、ロイコトリエンB4(LTB4R)、ガストリン放出ペプチド(GRP)、IgE、主要組織適合性タンパク質(MHC)、ペプチド、超抗原、抗原、バソプレシン、トロンビン、ブラジキニンおよびアセチルコリンを含む増殖因子によって刺激される能力に関する。さらに、本発明のMEKKタンパク質の活性は、TPAのようなホルボールエステルを含む化合物によって刺激されることができる。好適なMEKKタンパク質はまたEGF、NGFおよびTNF(特に、TNFα)によって刺激されることができる。
好適には、本発明のMEKKタンパク質の活性は、MEKKタンパク質を産生する細胞が実施例3に記載の条件下でEGFと接触する場合、基礎水準(即ち、刺激されないで天然で見出される水準)の少なくとも2倍、さらに好適には基礎水準の少なくとも約4倍、さらにもっと好適には基礎水準の少なくとも約6倍まで、刺激されることができる。
同様に、本発明のMEKKタンパク質の活性は、MEKKタンパク質を産生する細胞が実施例9に記載の条件下でNGFと接触する場合、基礎水準の少なくとも1倍、さらに好適には基礎水準の少なくとも約2倍、さらにもっと好適には基礎水準の少なくとも約3倍まで、NGF刺激によって刺激されることができる。
好適には、本発明のMEKKタンパク質は、MEKKタンパク質を産生する細胞が実施例9に記載の条件下でTPAと接触する場合、基礎水準の少なくとも0.5倍、さらに好適には基礎水準の少なくとも約1倍、さらにもっと好適には基礎水準の少なくとも約2倍まで、TPA刺激によって刺激されることができる。
TPFは、種々の細胞の種類において細胞死および他の機能を調節することができる。本発明は、TNFによるMEKK刺激がRafから独立してることを発見したものである。同様に、本発明は、MEKKタンパク質が細胞の紫外線(UV)損傷によって直接に刺激されることができ、一方Raf依存性経路は刺激されることができないことを認識した最初のものである。それ故、TNFとUVの両方は、Rafを実質的に活性化することなく、MEKK活性を刺激する。さらに、MEKKのUVとTNF活性はRas依存性である。
本発明の他の態様は、本発明のMEKKタンパク質が細胞のアポト−シスを調節することができ、この能力はRafタンパク質によって共有されないという認識である。本明細書で使用されるように、アポト−シスとは、細胞質小器官の完全性を保存しながらの細胞容量の進行性退縮;光学または電子顕微鏡によって観察される染色質の凝縮;および遠心沈降分析法によって決定されるDNA切断を含んでなる細胞死の形態を言う。細胞の膜完全性が失われそして細胞溶解が起こる場合、細胞死が起こる。アポト−シスは、細胞が膨脹しついに破裂する点において、壊死と異なる。
本発明の好適なMEKKタンパク質は、細胞が、図24、25、26、27および28に示される細胞質退縮および/または核凝縮に実質的に類似する特徴を有するように、細胞のアポト−シスを誘発することができる。図24〜図28のアポト−シスは、MEKKタンパク質をコードしている発現プラスミドを細胞に微量注入して得たものである。注入された細胞は、抗−β−Gal抗体を使用して同定され、そして細胞のDNAはヨウ化プロピジウムで染色された。細胞質組織は抗−チューブリン抗体を使用して監視した。次いで、示差蛍光画像顕微鏡検査法によって、当業界の技術標準を使用して、細胞を映像した。細胞は、細胞質退縮と核凝縮を有する形態を示すことによって、アポト−シスを示した。
MEKK依存性である細胞増殖調節シグナル伝達経路の略図を図2に示す。本発明のMEKKタンパク質は、JEKタンパク質、JNKタンパク質、Junタンパク質および/またはATF−2タンパク質およびMycタンパク質の活性を調節することができ、かかる調節はRafタンパク質から実質的に(完全でなくとも)独立している。かかるRaf独立性調節は、細胞のアポト−シスを含む、細胞の増殖特性を調節することができる。さらに、本発明のMEKKタンパク質は、MEKタンパク質の活性を調節することができ、それはまたRafタンパク質によって調節されることができる。このように、本発明のMEKKタンパク質は、MAPKタンパク質、およびTCFタンパク質(Elk−1タンパク質とも呼称される)のような転写因子のEtsファミリーの構成員の活性を調節することができる。
図2を参照すると、本発明のMEKKタンパク質は、Rasタンパク質を活性化することができる多種類の増殖因子によって活性化されることができる。さらに、MEKKタンパク質は、JNKタンパク質を活性化することができ、それはまたRasタンパク質によって活性化されるが、Rafタンパク質によっては活性化されない。このように、本発明のMEKKタンパク質は、種々の細胞表面受容体によって始られるシグナル伝達経路中の分岐点のプロテインキナーゼを含んでなる。MEKKタンパク質はまた、Rafから独立性のTNFタンパク質によって調節されることができ、このことは、MEKKタンパク質がRasタンパク質とRafタンパク質から独立している新規なシグナル伝達経路に連合していることを示している。このようにして、MEKKタンパク質は、一つまたはそれ以上のシグナル伝達経路中で、Rafタンパク質から独立性かまたはバイパス性の多数の独特の機能を実行することができる。MEKKタンパク質はMEK活性および/またはJEK活性を調節することができる。このように、MEKKタンパク質は、Raf活性を実質的に含まないシグナル伝達経路の構成員の活性を調節することができる。かかる構成員として、これらに限定されないが、JNK、Jun、ATFおよびMycタンパク質を挙げられる。さらに、MEKKタンパク質は、Rafを含むシグナル伝達経路の構成員を調節することができ、かかる構成員として、これらに限定されないが、MEK、MAPKおよびTCFが挙げられる。従って、本発明のMEKKタンパク質は、Rafタンパク質による顕著な関与から独立している細胞のアポト−シスを調節することができる。
MEKKタンパク質の多数の機能的特徴の外に、本発明のMEKKタンパク質は多数の独特な構造的特徴を含んでなる。例えば、一つの態様では、本発明のMEKKタンパク質は、特定の機能的特徴を有する2つの異なった構造ドメインの少なくとも1つを含む。かかる構造ドメインには、MEKタンパク質および/またはJEKをリン酸化することができるCOOH−末端プロテインキナーゼ触媒ドメインを含む第二構造ドメインを調節するように働く、NH2末端調節ドメインが含まれる。
本発明によれば、本発明のMEKKタンパク質は、全長のMEKKタンパク質、並びに上記の機能の少なくとも1つを実行することができるMEKKタンパク質の少なくとも一部が含む。句「MEKKタンパク質の少なくとも一部」とは、本発明の全長のMEKKタンパク質をコードしている核酸と、緊縮条件下でハイブリッド形成することができる核酸分子によってコードされたMEKKタンパク質の一部を言う。MEKKタンパク質の好適な部分は細胞中のアポト−シスを調節するのに有用である。追加の好適な部分は、MEKKキナーゼ活性を調節するのに有用な活性を有する。本発明のMEKKタンパク質の一部に適した大きさは、本発明のMEKKタンパク質相同体について記載した通りである。
他の態様では、本発明のMEKKタンパク質は、トリス−グリシンSDS−PAGEによって、好適には8%ポリアクリルアミドSDSゲル(SDS−PAGE)を使用して決定しそして当業界の標準技術を使用して分解して、約70kD〜約250kDの範囲内の分子量を有するMEKKタンパク質の少なくとも一部を含む。好適なMEKKタンパク質は、約75kD〜約225kD、さらに好適には約80kD〜約200kDの範囲内の分子量を有する。
さらに他の態様では、本発明のMEKKタンパク質は、約3.5kD〜約12.0kDの範囲内、さらに好適には約4.0kD〜約11.0kDの範囲内、もっとさらに好適には約4.5kD〜約10.0kDの範囲内のmRNA(メッセンジャーリボ核酸)によってコードされたMEKKタンパク質の少なくとも一部を含んでなる。特に好適なMEKKタンパク質は、約4.5kD〜約5.0kDの範囲内の大きさ、約6.0kD〜約6.5kDの範囲内の大きさ、約7.0kの大きさ、または約8.0kD〜約10.0kDの範囲内の大きさを有するmRNAによってコードされたMEKKタンパク質の少なくとも一部を含んでなる。
他の態様では、本発明のNH2末端調節ドメインは、少なくとも約10%セリンおよび/またはスレオニン残基を有する約400個のアミノ酸、さらに好適には少なくとも約15%セリンおよび/またはスレオニン残基を有する約400個のアミノ酸、もっとさらに好適には少なくとも約20%セリンおよび/またはスレオニン残基を有する約400個のアミノ酸を含んでなるNH2末端を含む。
本発明の好適なNH2末端調節ドメインは、少なくとも約10%セリンおよび/またはスレオニン残基を有する約360個のアミノ酸、さらに好適には少なくとも約15%セリンおよび/またはスレオニン残基を有する約360個のアミノ酸、もっとさらに好適には少なくとも約20%セリンおよび/またはスレオニン残基を有する約360個のアミノ酸を含んでなるNH2末端を含む。
本発明の他の好適なNH2末端調節ドメインは、少なくとも約10%セリンおよび/またはスレオニン残基を有する約370個のアミノ酸、さらに好適には少なくとも約15%セリンおよび/またはスレオニン残基を有する約370個のアミノ酸、もっとさらに好適には少なくとも約20%セリンおよび/またはスレオニン残基を有する約370個のアミノ酸を含んでなるNH2末端を含む。
一つの態様では、本発明のMEKKタンパク質はSH2とSH3ドメインが欠けている。
他の態様では、本発明のMEKKタンパク質は、天然に存在するMEKKタンパク質のキナーゼ触媒ドメインと、好適には少なくとも約50%、さらに好適には少なくとも約75%、さらにもっと好適には少なくとも約85%のアミノ酸相同性(比較できる領域内での同一性)を有するMEKKタンパク質相同体の少なくとも一部を含む。本発明の他のMEKKタンパク質はまた、天然に存在するMEKKタンパク質のNH2末端調節ドメインと、少なくとも約10%、さらに好適には少なくとも約20%、さらにもっと好適には少なくとも約30%のアミノ酸相同性を有する本発明のMEKK相同体の少なくとも一部を含む。
MEKKタンパク質の触媒ドメインを含む配列はホスホトランスフェラーゼ活性に関与し、それ故、比較的に保存されたアミノ酸配列を示す。しかし、MEKKタンパク質のNH2末端調節ドメインは実質的に拡散的であることができる。MEKKタンパク質のNH2末端調節ドメイン間に顕著な相同性が欠けることは、かかるドメインの各々が種々の上流の調節タンパク質によって調節されることと関連している。例えば、MEKKタンパク質はタンパク質Rasによって調節されることができ、一方他のものはRasから独立して調節されることができる。さらに、幾つかのMEKKタンパク質は増殖因子TNFαによって調節されることができ、一方他のものはできない。このように、MEKKタンパク質のNH2末端調節ドメインは上流のシグナル伝達調節に選択性を与え、一方触媒ドメインはMEKK基質選択性機能を与える。
好適なMEKK相同体は、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8または配列番号:10によって表されるアミノ酸配列を有するMEKKタンパク質のキナーゼ触媒ドメインと、少なくとも約50%、さらに好適には少なくとも約75%、さらにもっと好適には少なくとも約85%のアミノ酸相同性を有する。他の好適なMEKK相同体は、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8または配列番号:10によって表されるアミノ酸配列を有するMEKKタンパク質のNH2末端調節ドメインと、少なくとも約10%、さらに好適には少なくとも約20%、さらにもっと好適には少なくとも約30%のアミノ酸相同性を有する。
好適な態様では、本発明のMEKKタンパク質は、MEKKタンパク質のキナーゼ触媒ドメインをコードしている核酸分子と、少なくとも約50%、さらに好適には少なくとも約75%、さらにもっと好適には少なくとも約85%の相同性を有する核酸分子によってコードされる、本発明のMEKKタンパク質相同体の少なくとも一部を含む。他の好適なMEKKタンパク質相同体は、MEKKタンパク質のNH2末端調節ドメインをコードしている核酸分子と、少なくとも約10%、さらに好適には少なくとも約20%、さらにもっと好適には少なくとも約30%の相同性有する核酸分子によってコードされる。
さらに他の好適なMEKK相同体は、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7または配列番号:9によって表される核酸配列によってコードされたMEKKタンパク質のキナーゼ触媒ドメインと、少なくとも約50%、さらに好適には少なくとも約75%、さらにもっと好適には少なくとも約85%の相同性有する核酸分子によってコードされる。MEKK相同体はまた、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7または配列番号:9によって表される核酸配列によってコードされたMEKKタンパク質のNH2末端調節ドメインと、少なくとも約10%、さらに好適には少なくとも約20%、さらにもっと好適には少なくとも約30%の相同性有する核酸分子によってコードされたものを含む。
本発明のMEKKタンパク質は、MEKK1と呼称し、表1に示されそして配列番号:1と配列番号:2で夫々表された核酸および/またはアミノ酸配列の少なくとも一部を有する(即ち、含む)MEKKタンパク質を包含する。
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本発明のMEKKタンパク質は、MEKK2と呼称し、表2に示されそして配列番号:3と配列番号:4で夫々表された核酸および/またはアミノ酸配列の少なくとも一部を有するMEKKタンパク質を包含する。
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本発明のMEKKタンパク質は、MEKK3と呼称し、表3に示されそして配列番号:5と配列番号:6で夫々表された核酸および/またはアミノ酸配列の少なくとも一部を有するMEKKタンパク質を包含する。
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本発明のMEKKタンパク質は、表4に示されそして配列番号:7と配列番号:8で夫々表された核酸および/またはアミノ酸配列の少なくとも一部を有するMEKKタンパク質を包含することができ、MEKK4と呼称される。
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本発明のMEKKタンパク質は、MEKK5と呼称し、表5に示されそして配列番号:9と配列番号:10で夫々表された核酸および/またはアミノ酸配列の少なくとも一部を有するMEKKタンパク質を包含する。
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MEKK5はMEKK4のスプライス変異体を表す。表5に示された配列の下線の部分はスプライス挿入を示す。
MEKK1のアミノ酸配列と比較して、MEKK2とMEKK3のアミノ酸配列が表6に示される。
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ボールドのアミノ末端−調節ドメイン
下線の配列−調節ヒンジ配列
ボールドのイタリック体−触媒ドメイン
表7は、MEKK1、MEKK2およびMEKK3のキナーゼドメインと比較して、MEKK4のキナーゼドメインのアミノ酸配列を示す。
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上記の配列番号は、実施例に記載の方法に従って推論された配列を表す。核酸およびアミノ酸の配列決定技術は完全には誤り発生なしではないから、上記の配列番号はせいぜい本発明のMEKKタンパク質の見掛けの核酸配列およびのアミノ酸配列を表すことを注目すべきである。
本発明によれば、本発明のMEKKタンパク質は、転写後修飾を受けたMEKKタンパク質を含むことができる。かかる修飾として、例えば、グリコシル化(例えば、N−結合および/またはO−結合オリゴ糖の付加)または転写後立体配座変化もしくは転写後欠失を挙げることができる。
本発明の他の態様は、本発明のMEKKタンパク質をコードしているMEKKタンパク質遺伝子と、緊縮条件下でハイブリッド形成することができる単離された核酸分子である。本発明によれば、単離された核酸分子は、天然環境から取出された(即ち、人間の操作を受けた)核酸分子である。このように、「単離された」は、核酸分子が精製された程度を反映しない。単離たれた核酸分子として、DNA、RNA、またはDNAもしくはRNAの誘導体を挙げることができる。
本発明の単離された核酸分子は、その天然源から、全(即ち、完全)遺伝子またはその遺伝子と安定なハイブリッドを形成することができるそれらの一部として得ることができる。本明細書で使用されるように、句、実体「の少なくとも一部」とは、実体の機能側面を有するのに少なくとも十分である実体の量を言う。例えば、核酸配列の少なくとも一部は、本明細書で使用されるように、特定の所望遺伝子(例えば、MEKK遺伝子)と、緊縮ハイブリッド形成条件下で安定なハイブリッドを形成することができる核酸配列の量である。本発明の単離された核酸分子はまた、組換えDNA技術(ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、クローニング)または化学合成法を使用して製造することができる。単離されたMEKKタンパク質核酸分子は、これらに限定されないが、天然の対立遺伝子変異体、およびかかる修飾が本発明のMEKKタンパク質をコードするかまたはMEKKの天然核酸分子単離体と緊縮条件下で安定なハイブリッドを形成する核酸の能力を妨害しないような方式で、ヌクレオチドが挿入、欠失、置換、および/または転位された修飾核酸分子を含む、天然の核酸分子とそれらの相同体を含む。
本発明のMEKKタンパク質核酸分子に対する好適な改変として、例えば、調節ドメインをコードしているMEKKタンパク質核酸分子の少なくとも一部を削除して(表6に示された例)構成的に活性なMEKKタンパク質を作成すること;触媒ドメインをコードしているMEKKタンパク質核酸分子の少なくとも一部を削除して(表6に示された例)不活性なMEKKタンパク質を作成すること;によって、全長のMEKKタンパク質核酸分子を切断すること、およびMEKKタンパク質を修飾してタンパク質の所望の不活性化および/または刺激を達成すること、例えば、触媒ドメイン(即ち、ホスホトランスフェラーゼドメイン)中のリジン残基をコードしているコドンをメチオニン残基で置換して触媒ドメインを不活性化することが挙げられる。
切断された好適なMEKK核酸分子は、触媒ドメインを含有するが、調節ドメインを欠ている、MEKKタンパク質の形態をコードする。好適な触媒ドメイン切断MEKK核酸分子は、MEKK 1の約352〜約672、MEKK 2の約352〜約619、MEKK 3の約358〜約626、MEKK 4の約811〜約1195、またはMEKK 5の約863〜約1247の残基をコードする。
他の切断された好適なMEKK核酸分子は、NH2末端調節ドメインを含むが、触媒ドメインを欠ているMEKKタンパク質の形態をコードする。好適な調節ドメイン切断MEKK核酸分子は、MEKK 1の約1〜約369、MEKK 2の約1〜約335、MEKK 3の約1〜約360、MEKK 4の約1〜約825、またはMEKK 5の約1〜約875の残基をコードして、調節ドメインを除去して、切断されたMEKK分子を形成する。
本発明の単離された核酸分子は、本発明の少なくとも1種のMEKKタンパク質をコードする核酸配列を含み、かかるタンパク質の例は本明細書で開示されている。句「核酸分子」とは主として、物理的な核酸分子を表し、そして句「核酸配列」とは主として、核酸分子を含んでなるヌクレオチドの配列を表し、2つの句は互換可能に使用することができる。上記に開示されたように、本発明のMEKKタンパク質として、これらに限定されないが、全長のMEKKタンパク質コード領域を有するタンパク質、それらの一部、および他のMEKKタンパク質相同体が挙げられる。
本明細書に使用されるように、MEKKタンパク質遺伝子は、その遺伝子(これらに限定されないが、転写、翻訳または転写後制御領域を含む)並びにコード領域それ自体によってコードされたMEKKタンパク質の産生を制御する調節領域のような天然MEKKタンパク質遺伝子に関連するすべての核酸配列を含む。本発明の核酸分子は、単離された天然MEKKタンパク質核酸分子またはそれらの相同体であることができる。本発明の核酸分子は、一つまたはそれ以上の調節領域、全長もしくは部分コード領域、またはそれらの組合せを含むことができる。本発明のMEKKタンパク質核酸分子の最小の大きさは、対応する天然の遺伝子と緊縮ハイブリッド形成条件下で安定なハイブリッドを形成することができる最小の大きさである。
MEKKタンパク質核酸分子相同体は、当業者に既知の多数の方法(例えば、Sambrook等、上掲)を使用して製造することができる。例えば、核酸分子は、これらに限定されないが、部位特異的突然変異誘発、突然変異を誘発するための核酸分子の化学的処理、核酸断片の制限酵素切断、核酸配列の選択された領域のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅および/または突然変異誘発、オリゴヌクレオチド混合物の合成と核酸分子の混合物を「構築」するための混合物群の連結、およびそれらの組合せのような、古典的な突然変異誘発技術と組換えDNA技術を含む多種類の技術を使用して改変することができる。核酸分子相同体は、改変核酸の混合物から、核酸によってコードされたタンパク質の機能(相同体がMEKタンパク質またはJEKタンパク質をリン酸化する能力)についてスクリーニングすることによって、および/または単離されたMEKKタンパク質核酸と緊縮条件下でハイブリッド形成させることによって、選択することができる。
本発明の一つの態様は、本明細書に記載のように、MEKKタンパク質の少なくとも一部をコードすることができるMEKKタンパク質核酸分子、またはその相同体である。本発明の好適な核酸分子は、これらに限定されないが、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8および配列番号:10によって表されるアミノ酸配列の少なくとも一部を有するタンパク質をコードする核酸分子、またはその相同体を含む。
本発明の好適な核酸分子は、MEKKタンパク質の少なくとも一部をコードする核酸、またはその相同体と、緊縮条件下でハイブリッド形成することができる。MEKKタンパク質の触媒ドメインをコードしている核酸配列の対応領域と、少なくとも約50%、好適には少なくとも約75%、さらに好適には少なくとも約85%の相同性を有する核酸配列含むMEKKタンパク質核酸分子、またはその相同体も好適である。MEKKタンパク質のNH2末端調節ドメインをコードしている核酸配列の対応領域と、少なくとも約20%、好適には少なくとも約30%、さらに好適には少なくとも約40%の相同性を有する核酸配列含むMEKKタンパク質核酸分子、またはそれらの相同体をも好適である。特に好適な核酸配列は、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8および配列番号:10によって表されるアミノ酸配列の触媒ドメインをコードしている核酸配列と、少なくとも約50%、好適には少なくとも約75%、さらに好適には少なくとも約85%の相同性を有する核酸配列である。他の特に好適な核酸配列は、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8および配列番号:10によって表されるアミノ酸配列のNH2末端調節ドメインをコードしている核酸配列と、少なくとも約20%、好適には少なくとも約30%、さらに好適には少なくとも約40%の相同性を有する核酸配列である。
かかる核酸分子は、全長のタンパク質、ハイブリッドタンパク質、融合タンパク質、多価性タンパク質または切断フラグメントをコードしている全長の遺伝子および/または核酸分子であることができる。本発明のさらに好適な核酸分子は、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7および配列番号:9によって表される核酸配列を有する単離された核酸分子を含んでなる。
本発明のMEKKタンパク質の核酸分子を知ることによって、当業者は、その核酸分子のコピーを作成すること、並びにMEKKタンパク質コード遺伝子(例えば、翻訳出発部位および/または転写および/もしくは翻訳制御領域を含む核酸分子)および/またはMEKKタンパク質核酸分子相同体を得ることが可能になる。本発明のMEKKタンパク質のアミノ酸配列の一部を知ることによって、当業者は、かかるMEKKタンパク質をコードしている核酸配列をクローニングすることが可能になる。
本発明はまた、MEKKタンパク質の少なくとも一部をコードする、本発明の他の(好適には長い)核酸分子の相補的領域と、緊縮条件下でハイブリッド形成することができるオリゴヌクレオチドである核酸分子、またはそれらの相同体を包含する。好適なオリゴヌクレオチドは、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8および配列番号:10によって表されるアミノ酸配列の少なくとも一部をコードすることができる核酸分子、またはそれらの相同体と、緊縮条件下でハイブリッド形成することができる。さらに好適なオリゴヌクレオチドは、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7および配列番号:9によって表される核酸配列を有する核酸分子、またはそれらの相補体とハイブリッド形成することができる。
本発明のオリゴヌクレオチドは、RNA、DNAまたはそのいずれかの誘導体であることができる。かかるオリゴヌクレオチドの最小の大きさは、ある種のオリゴヌクレオチドと、本発明の他の核酸分子上の相補的配列との間に安定なハイブリッドを形成するのに必要な大きさである。最小の大きさの特性は、本明細書に開示されている。オリゴヌクレオチドの大きさはまた、本発明に従ってオリゴヌクレオチドを使用するのに十分なものでなければならない。本発明のオリゴヌクレオチドは、これらに限定されないが、追加の核酸分子を同定するプローブとして、核酸分子を増幅または伸張させるプライマーとして、または例えば、細胞によるMEKKタンパク質の発現を阻害する治療的応用において、を含む多種類の応用で使用することができる。かかる治療的応用として、例えば、アンチセンス−、トリプレックス形成−、リボザイム−および/またはRNA薬物−に基づく技術で、かかるオリゴヌクレオチドを使用することを含む。それ故、本発明は、かかるオリゴヌクレオチドの使用およびMEKKタンパク質の産生を妨害する方法を含む。
一つの態様では、本発明の単離されたMEKKタンパク質は、このタンパク質を製造するのに有効な条件下でこのタンパク質を培養し、そのタンパク質を回収することによって、製造することができる。培養するのに好適な細胞は、MEKKタンパク質を発現することができる組換え細胞であり、その組換え細胞は、本発明の一つまたはそれ以上の核酸分子で宿主細胞を形質転換することによって製造することができる。核酸分子の細胞中への形質転換は核酸分子を細胞中に挿入することができる方法によって行うことができる。形質転換技術として、これらに限定されないが、トランスフェクション、エレクトロポレーション、微量注入法、リポフェクション、吸着法、およびプロトプラスト融合法が挙げられる。組換え細胞は、単細胞にとどまるかまたは組織、器官もしくは多細胞生物に増殖することができる。本発明の形質転換された核酸分子は染色体外にとどまるか、または形質転換された(即ち、組換え)細胞の染色体内の一つまたはそれ以上の部位中に、発現する能力が保持される方法で、統合することができる。
本発明は、宿主細胞中に核酸分子を送達することができるベクター中に挿入された、本発明の少なくとも1種のMEKKタンパク質核酸分子を含む組換えベクターを包含する。かかるベクターは、異種核酸配列、例えば、天然では本発明のMEKKタンパク質核酸分子に隣接して見出されない核酸配列を含有する。ベクターは、RNAまたはDNAのいずれか、および原核または真核のいずれかであり、そして通常はウイルスまたはプラスミドである。組換えベクターは、クローニング、配列決定、および/またはその他本発明のMEKKタンパク質核酸分子の操作に使用することができる。組換えベクターの1つの型(本明細書では組換え分子と呼称し、そして以下に詳細に説明する)は本発明の核酸分子の発現に使用される。好適な組換えベクターは形質転換細胞中で複製することができる。
組換えベクター中に挿入される好適な核酸分子には、MEKKタンパク質の少なくとも一部をコードする核酸分子、またはそれらの相同体が含まれる。組換えベクター中に挿入されるさらに好適な核酸分子には、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8および/または配列番号:10によって表されるアミノ酸配列の少なくとも一部をコードしている核酸分子、またはそれらの相同体が含まれる。組換えベクター中に挿入されるさらにもっと好適な核酸分子には、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7および/または配列番号:9によって表される核酸分子、またはそれらの相補体が含まれる。
細胞を形質転換するのに適した宿主細胞は、本発明の少なくとも1種の核酸分子で形質転換された後、本発明のMEKK分子を産生することができるものであればいずれの細胞も含むことができる。宿主細胞は、未形質転換細胞、またはすでに少なくとも1種の核酸分子で形質転換されている細胞であることができる。本発明の適切な宿主細胞として、細菌、真菌(酵母を含む)、昆虫、動物および植物細胞を挙げることができる。好適な宿主細胞として、細菌、酵母、昆虫および哺乳類細胞が挙げられ、哺乳類細胞が特に好適である。
組換え細胞は好適には、宿主細胞を、その各々が一つまたはそれ以上の転写制御配列を含有する発現ベクターに作用結合している本発明の一つまたはそれ以上の核酸分子を含んでなる、一つまたはそれ以上の組換え分子で形質転換することによって製造される。句、作用結合したとは、ベクターが宿主細胞中に形質転換された場合に核酸分子が発現することができるような方式で、核酸分子を発現ベクター中に挿入することを言う。本明細書で使用されているように、発現ベクターは、宿主細胞を形質転換することができ、そして特定の核酸分子の発現を行うことができるDNAまたはRNAベクターである。好適には、発現ベクターはまた、宿主細胞中で複製することができる。発現ベクターは、原核または真核のいずれかであり、そして通常はウイルスまたはプラスミドである。本発明の発現ベクターには、細菌、真菌、昆虫、動物および/または植物細胞中を含む、本発明の組換え細胞中で作用する(即ち、直接遺伝子発現)ものであればいずれのベクターも含まれる。このように、本発明の核酸分子は、プロモーター、オペレーター、リプレッサー、エンハンサー、停止配列、複製の起点、および組換え細胞と適合性でありそして本発明の核酸分子の発現を制御する他の調節配列ような調節配列を含有する発現ベクターに作用結合することができる。本明細書で使用されるように、転写制御配列には、転写の開始、伸張および停止を制御することができる配列が含まれる。特に重要な転写制御配列は、プロモーター、エンハンサー、オペレーターおよびリプレッサー配列のような転写開始を制御するものである。適切な転写制御配列には、本発明の少なくとも一つの組換え細胞中で作用することができるものであればいずれの転写制御配列も含まれる。多種類のかかる転写制御配列は当業者に知られている。好適な転写制御配列として、これらに限定されないが、tac、lac、trp、trc、oxy−pro、omp/lpp、rrnB、バクテリオファージランダ(λ)(λPLとλPRかおよびかるプロモーターを含む融合物)、バクテリオファージT7、T7lac、バクテリオファージT3、バクテリオファージSP6、バクテリオファージSP01、メタロチオネイン、アルファ交配因子、バキュロウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、アデノウイルス、シミアンウイルス40、レトロウイルスアクチン、レトロウイルス長末端反復、ラウスウイルス、熱ショック、ホスフェートおよびニトレート転写制御配列、並びに原核または真核細胞中の遺伝子発現を制御することができる他の配列のような、細菌、酵母、および哺乳類細胞中で作用するものが挙げられる。追加の適切な転写制御配列として、組織特異性プロモーターとエンハンサー並びにリンホカイン誘発プロモーター(例えば、インターフェロンまたはインターロイキンによって誘発されるプロモーター)が挙げられる。本発明の転写制御配列はまた、MEKKタンパク質をコードしているDNA配列と天然で会合している天然に存在する転写制御配列を包含することができる。
発現ベクター中への挿入のために好適な核酸分子には、MEKKタンパク質の少なくとも一部をコードする核酸分子、またはそれらの相同体が含まれる。発現ベクター中への挿入のためにさらに好適な核酸分子には、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8および/または配列番号:10によって表されるアミノ酸配列の少なくとも一部をコードしている核酸分子、またはそれらの相同体が含まれる。発現ベクター中への挿入のためにさらにもっと好適な核酸分子には、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7および/または配列番号:9によって表される核酸分子、またはそれらの相補体が含まれる。
本発明の発現ベクターはまた、本発明の挿入された核酸分子が融合タンパク質として発現する融合配列を含有する。本発明のMEKK核酸分子の一部として融合配列が含まれると、核酸分子によってコードされたタンパク質の産生、貯蔵および/または使用の間の安定性が向上する。さらに、融合セグメントは、得られた融合タンパク質をアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製することができるように、MEKKタンパク質の精製を単純化する道具として作用することができる。適切な融合セグメントは、所望の機能(例えば、向上した安定性および/または精製道具)を有するいずれの大きさのドメインであることができる。一つまたはそれ以上の融合セグメントを使用することは本発明の範囲内である。融合セグメントは、MEKKタンパク質のアミノおよび/またはカルボキシル末端に結合することができる。融合セグメントとMEKKタンパク質との間の結合は、MEKKタンパク質の直送的(straight forward)回収を可能にする切断に感受性をもつように、構築することができる。融合タンパク質は好適には、MEKKタンパク質のカルボキシルおよび/またはアミノ末端に結合した融合セグメントを含むタンパク質をコードする融合核酸配列で形質転換された組換え細胞を培養することによって製造することができる。
本発明の組換え細胞には、本発明のいずれか少なくとも一種の核酸分子で形質転換されたいずれの細胞も含まれる。好適な組換え細胞は、MEKKタンパク質の少なくとも一部をコードする少なくとも一種の核酸分子、またはそれらの相同体で形質転換された細胞である。さらに好適な組換え細胞は、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8および/または配列番号:10によって表されるアミノ酸配列の少なくとも一部をコードすることができる核酸分子、またはそれらの相同体で形質転換される。さらにもっと好適な組換え細胞は、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7および/または配列番号:9によって表される少なくとも一種の核酸分子、またはその相補体で形質転換される。特に好適な組換え細胞には、下記の核酸分子の少なくとも一種で形質転換された、疾病に関与する哺乳類細胞が含まれる。
組換えDNA技術を使用すると、形質転換された核酸分子の発現を、例えば、宿主細胞内の核酸分子のコピー数、これらの核酸分子が転写される効率、得られた転写物を翻訳される効率、および転写後修飾の効率を操作することによって、改善することがきることは、当業者によって認識されることができる。本発明の核酸分子の発現を増加させるのに有用な組換え技術として、これらに限定されないが、高コピー数プラスミドに作用結合した核酸分子、一つまたはそれ以上の宿主細胞染色体中への核酸分子の統合、プラスミドへのベクター安定性配列の付加、転写制御シグナルの置換または修飾(例えば、プロモーター、オペレーター、エンハンサー)、転写制御シグナルの置換または修飾(例えば、リボソーム結合部位、Shine−Dalgarno配列)、宿主細胞のコドン使用法に対応する本発明の核酸分子の修飾、転写を不安定にする配列の削除、および発酵の間に組換えタンパク質産生から組換え細胞増殖を一時的に分離する制御シグナルの使用が挙げられる。本発明の発現した組換えタンパク質の活性は、得られたタンパク質を断片化すること、修飾すること、または誘導体化することによって改善することができる。
本明細書で使用されるように、細胞中の核酸配列のコピー数を増幅することは、細胞のゲノム中の核酸配列のコピー数を増加させることによってか、または形質転換によって核酸配列の追加のコピーを細胞中に導入することによって、達成することができる。コピー数の増幅は、さらに多量の酵素を産生させて、基質の生成物への変換を向上させるような方法で行われる。例えば、本発明の核酸を含有する組換え分子は、細胞中に形質転換されて、酵素合成を向上させることができる。形質転換は、核酸配列が細胞中に挿入されるいずれの方法を使用しても、達成することができる。形質転換前に、組換え分子上の核酸配列は、より高い特異的活性を有する酵素をコードするように操作することができる。
本発明によれば、組換え細胞は、かかるタンパク質を製造するのに有効な条件下でかかる細胞を培養し、そしてタンパク質を回収することによって、本発明のMEKKタンパク質を製造するのに使用することができる。タンパク質を製造するのに有効な条件として、これらに限定されないが、タンパク質製造を可能にする適切な培地、バイオリアクター、温度、pHおよび酸素条件が挙げられる。適切または有効な培地とは、本発明の細胞を培養した場合、MEKKタンパク質を産生することができるいずれの培地をも言う。かかる培地は通常、同化性の炭水化物、窒素とリン源、並びに適切な塩、ミネラル、金属およびビタミンのような他の栄養素を含んでなる水性培地である。培地は、複合栄養素を含んでなることができるか、または規定の最小培地であることができる。
本発明の細胞は、これらに限定されないが、バッチ、フィード・バッチ、細胞リサイクル、および連続発酵槽を含む慣用の発酵バイオリアクター中で培養することができる。培養はまた、振盪フラスコ、試験管、ミクロタイター皿、およびペトリ皿中で行うことができる。培養は、組換え細胞に適切な温度、pHおよび酸素含量で行われる。かかる培養条件は当業者の専門的技術の範囲内にある。
製造に使用されたベクターおよび宿主系に依存して、得られたMEKKタンパク質は、組換え細胞内に残存するか、または発酵培地中に分泌される。句「タンパク質を回収すること」とは、単にタンパク質を含有する全発酵培地を収集することを指し、そして分離または精製の追加の工程を含める必要はない。本発明のMEKKタンパク質は、これらに限定されないが、アフィニティークロマトグラフィー法、イオン交換クロマトグラフィー法、濾過法、電気泳動法、疎水性相互反応クロマトグラフィー法、ゲルクロマトグラフィー法、逆相クロマトグラフィー法、等電点クロマトグラフィー法および示差可溶化法のような多種類の標準タンパク質精製技術を使用して精製することができる。
さらに、本発明のMEKKタンパク質は、動物から回収されたMEKKタンパク質を発現する細胞からMEKKタンパク質を単離することによって製造することができる。例えば、T細胞のような細胞型は、動物の胸腺から単離することができる。次いで、MEKKタンパク質が、単離されたT細胞から本明細書に記載の標準技術を使用して単離することができる。
本発明はまた、細胞の表面上の受容体から始まるシグナルを調節することができる化合物を同定する方法を包含し、かかるシグナル調節はいくつかの点でMEKKタンパク質に関係する。かかる方法は、(a)MEKKタンパク質を含有する細胞を推定される調節化合物と接触させること;(b)細胞を細胞の表面上の受容体に結合することができるリガンドと接触させること;(c)推定される調節化合物が細胞シグナルを調節することができる能力を、本発明のMEKK依存性経路の構成員の活性化を決定することによって評価すること;の諸工程を含んでなる。工程(c)を行う好適な方法は、MEKK依存性経路の構成員のリン酸化を測定することを含んでなる。かかる測定は、ホスホチロシン、ホスホセリンおよび/またはホスホスレオニンに特異的な抗体を有する免疫測定法を使用して行うことができる。工程(c)を行う他の好適な方法は、MEKKタンパク質がMEKタンパク質および/またはJEKタンパク質をリン酸化する能力を本明細書で記載の方法を使用して測定することを含んでなる。
他の態様では、細胞中のシグナル伝達を調節することができる化合物を同定する方法は、(a)推定される阻害化合物を、MEKKタンパク質と接触させて反応混合物を生成すること;(b)反応混合物をMEKタンパク質と接触させること;(c)推定される阻害化合物がMEKタンパク質のリン酸化を阻害する能力を、MEKKタンパク質によって評価すること;の諸工程を含んでなる。工程(c)から得られる結果を、推定される阻害化合物が、MEKタンパク質をリン酸化するRafタンパク質の能力を、阻害する能力と比較して、その化合物が、Rafタンパク質から独立性のMEKKタンパク質を含むシグナル伝達を選択的に調節することができるかどうかを決定することができる。上記の方法で使用されるMEKK、MEKおよびRafタンパク質は組換えタンパク質または天然で誘導されたタンパク質であることができる。
さらに、特定のシグナル伝達経路中の阻害作用の部位がRafとMEKKタンパク質の両方を含むかどうかを、上記の実験(即ち、MEKK依存性経路についての記載を参照)を行うことによって決定することができる。
本発明の他の態様は、細胞の表面上の受容体から始まるシグナルを調節することができる化合物を同定するキットを包含し、シグナルはいくつかの点でMEKKタンパク質と関係する。かかるキットは、(a)MEKKタンパク質を含有する少なくとも1種の細胞;(b)その細胞の表面上の受容体に結合することができるリガンド;および(c)推定される調節化合物がMEKKタンパク質のリン酸化を変える能力を評価する手段;を含んでなる。リン酸化を検出するかかる手段は、当業者に知られている方法および試薬を包含し、例えば、リン酸化は、チロシン、セリンおよびスレオニンのようなリン酸化アミノ酸残基に特異的な抗体を使用して検出することができる。かかるキットを使用して、特定の経路構成体のシグナル伝達経路中の位置、並びに調節部位またはその近辺の、かかる経路中に含まれる構成体の同一性を、かなり良好な特異性をもって決定することができる。
他の態様では、本発明のキットは、(a)MEKKタンパク質;(b)MEKタンパク質;および(c)推定される阻害化合物がMEKタンパク質のリン酸化を阻害する能力をMEKKタンパク質によって評価する手段;を包含する。本発明のキットはさらに、Rafタンパク質および推定される阻害化合物が、MEKタンパク質をリン酸化するRafタンパク質の能力を阻害する能力を検出する手段を含んでなることができる。
本発明の他の態様は、疾患に関与する細胞中のシグナル伝達経路を操作することによって、調節または治療をうける内科的疾病を有する動物の治療に関する。かかる内科的疾病には、異常な細胞増殖および分泌される細胞生成物の異常な産生に由来する疾患が含まれる。特に、かかる内科的疾病として、これらに限定されないが、自己免疫疾患、炎症反応、アレルギー反応およびパーキンソン病とアルツハイマー病のような神経疾患が挙げられる。本発明の方法を使用する治療を受ける好適な癌として、これらに限定されないが、小細胞癌、過発現EGF受容体をもつ非小細胞肺癌、過発現EGFまたはNeu受容体をもつ乳癌、樹立オ−トクリンループの過発現増殖因子受容体を有する腫瘍、および樹立パラクリンループの過発現増殖因子受容体を有する腫瘍が挙げられる。本発明によれば、用語、治療とは、内科的疾患の進行の調節または内科的疾患の完全な除去(例えば、治療)を言うことができる。内科的疾患の治療は、内科的疾患に関与する細胞が細胞外刺激(例えば、サイトカイニンの増殖因子)にもはや反応しないような方式で、細胞のシグナル伝達活性を調節すること、または内科的疾患に関与する細胞のアポト−シスによる死滅を含んでなることができる。
本発明の1つの態様は、本発明のMEKKタンパク質が、細胞増殖、細胞死および細胞機能(細胞生成物の分泌)のような細胞活性を調節することによって、細胞の恒常性を調節することができるという認識を含む。かかる調節は、多くの場合、Rafから独立しているが、しかし、上記のように(図2に示されるように)MEKKタンパク質によって調節することができる幾つかの経路は、Rafタンパク質による上流の調節を受けることができる。それ故、Rafタンパク質および/またはMEKKタンパク質の活性を刺激または阻害して、所望の結果を得ることは、本発明の範囲内にある。理論にとらわれないならば、Rasタンパク質(図2を参照)からの分岐点でのRafタンパク質およびMEKKタンパク質活性の調節は、「2−ヒット」機構によって制御することができと考えられる。例えば、第一「ヒット」は、例えば、細胞を、Rasタンパク質が活性化されるような方式で、細胞表面受容体に結合することができる増殖因子と接触させることを含む、Rasタンパク質を刺激してRas依存性経路を刺激するいずれの手段をも含んでなることができる。Rasタンパク質の活性化に続いて、MAPK活性と比較して、JNKの活性を増加させ、またはその逆でもある、第二「ヒット」を導出することができる。第二「ヒット」として、これらに限定されないが、JNKまたはMAPKを、MEKK、JEK、Rafおよび/またはMEKの活性を刺激または阻害することができる化合物によって、調節することが挙げられる。例えば、プロテインキナーゼCまたはホスホリパーゼCキナーゼのような化合物は、JNKが優先的にMAPK以上に活性化されるような方式で、拡散的Ras依存性経路をMEKK依存性経路の方に駆動するのに要する、第二「ヒット」を提供することができる。
本発明の1つの態様は、細胞中のRaf依存性経路の活性に比してMEKK依存性経路の活性を調節することを含んでなる細胞の恒常性を調節する方法を包含する。本明細書で使用されるように、用語「恒常性」とは、シグナル伝達経路のような細胞内システムを使用して、細胞が正常な状態を維持する傾向を言う。MEKK依存性経路の活性の調節には、MEKK依存性経路の構成員、Raf依存性経路の構成員、それらの組合せの活性を調節して、所定の経路中のリン酸化の所望の調節を達成するすることによって、Raf依存性経路の活性に比してMEKK依存性経路の活性を増加させることが含まれる。調節するMEKK依存性経路またはRaf依存性経路の好適な調節された構成員として、これらに限定されないが、MEKK、Raf、JEK、MEK、MAPK、JNK、TCF、ATF−2、JunおよびMyc、並びにそれらの組合せが挙げられる。
一つの態様では、MEKK依存性経路の構成員、Raf依存性経路の構成員、およびそれらの組合せの活性は、細胞中のかかる構成員の濃度を変えることによって調節される。一つの好適な調節スキームは、MEKK、Raf、JEK、MEK、MAPK、JNK、TCF、Jun、ATF−2、およびMyc、並びにそれらの組合せの濃度を変えることを含む。さらに好適な調節スキームは、MEKK、JEK、JNK、Jun、ATF−2、およびMyc、並びにそれらの組合せを含むタンパク質の濃度を増加させることを含む。他のさらに好適な調節スキームは、Raf、MEK、MAPK、および、TCF、並びにそれらの組合せを含むタンパク質の濃度を減少させることを含む。2つまたはそれ以上の上記の調節スキーム中のタンパク質濃度の調節を組合せて、細胞中の最適のアポト−シス効果を達成することができることも本発明の範囲内にある。
本発明の調節スキーム中でタンパク質の濃度を増加させる好適な方法として、これらに限定されないが、細胞内のかかるタンパク質をコードしている核酸配列のコピー数を増加させること、かかるタンパク質をコードしているかかる核酸配列が細胞内で転写される効率を改善すること、転写物がかかるタンパク質に翻訳される効率を改善すること、かかるタンパク質の転写後修飾の効率を改善すること、かかるタンパク質を産生することができる細胞をアンチ−センス核酸配列と接触させること、およびそれらの組合せが挙げられる。
本発明の好適な態様では、細胞の恒常性は、細胞のアポト−シスを調節することによって制御される。細胞のアポト−シスを調節する適切な方法は、MEKKタンパク質がRafから実質的に独立している経路を調節するMEKK依存性経路の活性を調節することである。細胞のアポト−シスを調節する特に好適な方法は、細胞を、未調節キナーゼ活性を有するMEKKタンパク質をコードしている核酸分子と接触させることによって、MEKKタンパク質の濃度を増加させることを含んでなる。細胞を接触させる好適な核酸分子として、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8および配列番号:10、によって表されるMEKKタンパク質をコードしている核酸分子、およびそれらの組合せが挙げられる。細胞を接触させるさらに好適な核酸分子として、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8および/または配列番号:10によって表されるMEKKタンパク質のキナーゼ触媒ドメイン(即ち、調節ドメインでない)のみをゆうする切断されたMEKKタンパク質をコードしている核酸分子が挙げられる。細胞を接触させるさらにもっと好適な核酸分子として、MEKK 1352-672、MEKK 2352-619、MEKK 3358-626、MEKK 4811-1195、MEKK 5863-1247を含む核酸分子、およびそれらの組合せが挙げられる。再び、本明細書に記載のMEKKタンパク質の適切な変形は、緊縮条件下で上記の配列のいずれかとハイブリッド形成することができる核酸分子によってコードされたタンパク質を含んでなる。
上記の方法が、細胞を、MEKK活性を阻害することができる化合物と接触させることによって、細胞中のMEKKタンパク質の活性を低下させる工程をさらに含んでなることは、本発明の範囲内にある。かかる化合物としては、MEKタンパク質によるMAPKのリン酸化が阻害されるような方式で、MEKKのキナーゼドメインに結合することができるペプチド;および/またはMAPKタンパク質のリン酸化が阻害されるような方式で、MAPKタンパク質の一部に結合することができるペプチドを挙げることができる。
他の態様では、MEKK依存性経路の構成員、Raf依存性経路の構成員、およびそれらの組合せの活性は、細胞中のかかる構成員の活性を直接に変えることによって調節することができる。MEKK依存性経路の構成員の活性を変える好適な方法としては、これらの限定されないが、細胞を、タンパク質が活性化されるような方式で、MEKK、JEK、JNK、Jun、ATF−2、およびMycを含むタンパク質、およびそれらの組合せと直接に相互作用することができる化合物と接触させること;および/または細胞を、タンパク質の活性が阻害されるような方式で、Raf、MEK、MAPK、TCFタンパク質を含むタンパク質、およびそれらの組合せと直接に相互作用することができる化合物と接触させることが挙げられる。MEKK依存性経路の構成員を調節することができる、細胞を接触させるのに好適な化合物として、ペプチドが、かかるタンパク質のキナーゼドメインの活性を調節する調節ドメインの能力を阻害する、MEKK、JEK、JNK、Jun、ATF−2、およびMycを含むタンパク質の調節ドメインに結合することができるペプチドが挙げられる。細胞を接触させるのに好適な他の化合物として、TNFα、チロシンキナーゼを調節する増殖因子、Gタンパク質結合受容体を調節するホルモンおよびFASリガンドが挙げられる。
Raf依存性経路の構成員を調節することができる、細胞を接触させるのに好適な化合物として、ペプチドが、タンパク質がリン酸化されるかまたは基質をリン酸化する能力を阻害する、Raf、MEK−1、MEK−2、MAPK、およびTCFからなる群から選ばれたタンパク質のキナーゼ触媒ドメインに結合することができるペプチドが挙げられる。
本発明の1つの態様は、MEKKタンパク質がMAPKを活性化することができるという認識に関する。MAPKは、哺乳類系中の種々の細胞経路に関与していることは知られている。MAPKは、細胞分裂誘発、DNA合成、細胞分裂および分化に関与していることは知られている。MAPKはまた、c−junおよびc−mycのような癌遺伝子の活性化に関与していると認められる。理論にとらわれないならば、本発明者は、MAPKはまた遺伝子源を有する種々の異常症に密接に関与していると考える、MAPKは核膜を横断することが知られていて、種々の遺伝子の発現を調節することの少なくとも部分的に原因であると考えられる。このように、MAPKは、癌、神経疾患、自己免疫疾患、アレルギー反応、創傷治癒および炎症反応の刺激と進行に顕著な役割を果たすと考えられる。本発明者は、MEKKをコードしている核酸配列を最初に同定することによって、MEKKの発現を調節し、そのようにしてMAPKの活性化を調節することが可能になることを認めた。
本発明はまた、被験者の身体の区域に、有効量の裸のプラスミドDNA化合物を注入することを含んでなる、細胞の恒常性を調節する方法を包含する。裸のプラスミドDNA化合物は、本発明のMEKKタンパク質をコードしていて、身体の区域中に位置する受容細胞中に取込まれそして発現することができる裸のプラスミドDNAベクターに操作可能に結合している核酸分子を含んでなる。本発明の好適な裸のプラスミドDNA化合物は、脱調節されたキナーゼ活性を有する切断されたMEKKタンパク質をコードしている核酸分子を含んでなる。本発明の好適な裸のプラスミドDNAベクターは当業界で知られているものを包含する。本発明の裸のプラスミドDNA化合物は、被験者に投与された場合、被験者内の細胞を形質転換し、細胞のアポト−シスを調節することができるMEKKタンパク質またはRNA核酸分子の少なくとも一部の産生を指示する。
本発明の裸のプラスミドDNA化合物は、癌、自己免疫疾患、炎症反応、アレルギー反応およびParkinson病とAlzheimer病のような神経障害を含む内科的疾病に罹っている被験者を治療することができる。例えば、裸のプラスミドDNA化合物は、抗腫瘍療法として、プラスミドが腫瘍細胞によって取込まれ、発現して、腫瘍細胞を死滅させるように、プラスミドの有効量を直接に腫瘍中に注射することによって、投与することができる。本明細書で使用されるように、被験者に投与する裸のプラスミドDNAの有効量は、裸のプラスミドDNAが治療することが意図されている内科的疾病を調節または治療するのに要する量を含んでなり、かかる投与の方法、投与の回数および投与の頻度は、不適当な実験に頼ることのない当業者によって決定されることができる。
本発明の治療方法で使用される治療用化合物は、適切な賦形剤をさらに含んでなる。本発明の治療方法で使用される治療用化合物は、治療される被験者が許容できる賦形剤中に製剤することができる。かかる賦形剤として、水、食塩水、リンゲル液、ブドウ糖液、ハンクス液、および他の生理学的に平衡された塩水溶液が挙げられる。固定(fixed)油、ごま油、オレイン酸エチルまたはトリグリセリドのような非水媒体を使用することができる。他の有用な賦形剤として、ナトリウムカルボキシメチルセルローズ、ソルビトール、またはデキストランのような粘度増強剤を含有する懸濁剤が挙げられる。賦形剤はまた、等張性および化学的安定性を向上する物質のような、少量の添加剤を含有することができる。緩衝液として、リン酸緩衝液、重炭酸緩衝液およびトリス緩衝液が挙げられ、一方保存剤の例として、チメロサール、m−またはo−クレゾール、ホルマリンおよびベンジルアルコールが挙げられる。標準製剤は注射用液剤または注射用懸濁剤もしくは液剤として適切な液体中に取込まれることができる固形剤であることができる。従って、非液状製剤では、賦形剤は、デキストロース、ヒト血清アルブミン、投与前に無菌水または食塩水に添加することができる保存剤等を含んでなることができる。
他の態様では、本発明の治療方法で使用される治療用化合物はまた、担体を含んでなることができる。担体は通常、治療される動物中で治療用化合物の半減期を増加させる化合物である。適切な担体として、これらに限定されないが、リポゾーム、ミセル、細胞、高分子制御放出製剤、生物分解性移植片、細菌、ウイルス、油、エステルおよびグルコールが挙げられる。好適な担体はリボソームとミセルを含む。
本発明の治療方法で使用される治療用化合物は、本明細書に記載の内科的疾病を有するいずれの被験者にも投与することができる。本発明の治療用化合物を有効な方法で投与する許容されるプロトコールは、1回の服用量、服用の回数、服用投与の頻度および投与の方法によって変えることができる。かかるプロトコールの決定は、不適当な実験に頼ることのない当業者によって行われることができる。有効な服用量とは、本明細書に記載の内科的疾病について被験者を治療することができる服用量を言う。有効な服用量は、例えば、使用された治療用化合物、治療される内科的疾病、および受容動物の大きさと種類に依存して変わることができる。被験者を治療する有効服用量は、内科的疾病に関与する細胞の活性(増殖を含めて)を調節することができる、経時的に投与される服用量を含む。例えば、本発明の裸のプラスミドDNA化合物の第一回の服用量は、腫瘍を有する被験者に投与された場合、腫瘍の大きさを7日間で約10%減少させる量を含んでなる。第二回の服用量は、第一回の服用と少なくとも同一の治療用化合物を含んでなる。
本発明の他の態様は、本明細書に記載の内科的疾病を有する被験者のための治療法を処方する方法を包含する。治療法を処方する好適な方法は、(a)内科的疾病に関与する細胞中のMEKKタンパク質活性を測定して、細胞が本発明の方法を使用する治療法に感受性があるかどうかを決定すること;および(b)細胞中のRaf依存性経路の活性に比してMEKK依存性経路の活性を調節して、細胞のアポト−シスを誘発することを含む治療法を処方すること;を含んでなる。MEKKタンパク質活性を測定する工程は、(1)被験者から細胞の試料を取出すこと;(2)細胞をTNFαで刺激すること;および(3)ホスホスレオニンおよび/またはホスホセリンに特異的である抗体を使用する免疫測定法を使用して、JEKタンパク質のリン酸化の状態を検出すること;を含んでなることができる。
本発明はまた、本発明のMEKKタンパク質に選択的に結合することができる抗体を包含する。かかる抗体は本明細書では抗MEKK抗体と呼称される。抗MEKK抗体の多クローン性集団はMEKK抗血清中に含有されることができる。MEKK抗血清とは、アフィニティー精製された多クローン性抗体、硫酸アンモニウムカット抗血清または全血清を言うことができる。本明細書で使用されるように、用語「に選択的に結合した」とは、かかる抗体がMEKKタンパク質に優先的に結合する能力を言う。結合は、免疫ブロット測定法、免疫沈降測定法、酵素免疫測定法(例えば、ELISA)、放射標識免疫測定法、免疫蛍光抗体測定法および免疫電子顕微鏡法、[例えば、Sambrook等、分子クローニング 実験手引き書(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)、Cold Spring Harbor Labs Press、1989年を参照]を含む、当業者に既知の多種類の方法を使用して測定することができる。
本発明の抗体は多クローン性または単クローン性抗体であることができ、そして当業界で標準の技術を使用して製造することができる。本発明の抗体は、抗体を得るために使用されたタンパク質のエピトープの少なくとも1つに選択的に結合することができる、一本鎖抗体を含む、抗体断片および遺伝子工学の抗体のような機能的均等物を包含する。好適には、抗体は、MEKK核酸分子によって少なくとも部分的にコードされるタンパク質に応答して、生成する。さらに好適には、抗体は、MEKKタンパク質の少なくとも一部に応答して生成し、さらに好適には、抗体は、MEKKタンパク質のアミノ末端またはカルボキシル末端に応答して生成する。好適には、本発明の抗体は、本発明のMEKKタンパク質に対して、約103-1〜約1012-1の単一部位結合親和力を有する。
本発明の抗体を製造する好適な法は、動物に、MEKKタンパク質の有効量を投与して抗体を産生させ、そして抗体を回収することを包含する。本発明の抗体は、本発明の範囲内にある多種類の潜在的な使用を有する。例えば、かかる抗体は、独特のMEKKタンパク質を同定し、そしてMEKKタンパク質を回収するのに使用することができる。
本発明の他の態様は、(a)細胞を推定される調節分子と接触させること;および(b)推定される調節化合物が細胞中のMEKK依存性経路の活性を調節する能力を、前記MEKK依存性経路の少なくとも1つの構成員の活性化を測定することによって、決定すること;によって同定された、細胞中のMEKK依存性経路の活性を調節することができる治療用化合物を含んでなる。MEKK依存性経路の構成員の活性化を測定する好適な方法は、c−Mycタンパク質の転写調節活性を測定すること、MEKK、JEK、JNK、Jun、ATF−2、Mycからなる群から選ばれたタンパク質のリン酸化を測定すること、およびそれらの組合せを包含する。
以下の実施例は、本発明の説明のために提供されるものであって、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
実施例
実施例1
本実施例はMEKK1タンパク質の構造的特性決定について記載する。
A. MEKK1ヌクレオチド配列
MEKK1タンパク質を以下の方法によってクローン化した。独自の変性イノシンオリゴデオキシヌクレオチドを、酵母Ste11とByr2遺伝子の間の配列同一性の領域に対応するように設計した。NIH 3T3細胞からのポリアデニル化RNAから誘導されたプライマーとcDNA鋳型を用いて、320塩基対(bp)のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅生成物を単離した。この320bp cDNAをプローブとして使用して、マウス脳cDNAライブラリーから、当業界の標準方法を使用して、3260bpのMEKK1cDNAを同定した。MEKK1ヌクレオチド配列は、二本鎖DNAのジデオキシヌクレオチド配列決定法によって、当業界の標準方法を使用して決定した。
表6を参照すると、開始コドンのためのKozak共通配列に基づいて、出発メチオンはヌクレオチド484に存在すると予想することができる。このメチオニンを出発点として、cDNAは、73kDの分子サイズに相当する、672個のアミノ酸のタンパク質をコードする。位置441に、Kozak規則に従わないが、687個のアミノ酸残基のタンパク質(74.6kD)を与える、他のインフレーム・メチオニンがある。また表6を参照すると、NH2末端の400個のアミノ酸の20%はセリンとスレオニンであり、チロシンは2個だけある。プロテインキナーゼCによるリン酸化の数個の潜在的部位は、NH2末端領域中にある。キナーゼ触媒ドメインはMEKK1のCOOH末端半分の中に位置する。
B. MEKK1転写のサザンブロット分析
同量(20μg)の全RNAを、臭化エチジウム染色によって示されるように、ゲル中に入れた。ブロットを、MEKKキナーゼドメインの一部をコードしている320−bpのcDNA断片またはMEKKのNH2末端領域の一部をコードしている858−bpの断片のいずれかで、当業界の標準方法を使用してプローブした。図3Aを参照すると、7.8kDのmRNAが、数種の細胞株とマウス組織中でMEKK cDNAの5′末端と3′末端から誘導されたプローブで同定された。MEKK mDNAは、マウスの心臓と脾臓中で高度に発現し、肝臓中では発現は低い量であった。
C. サザンブロット分析
マウスのゲノムDNA(10μg)を、当業界の標準方法を使用して、Bam HI、Hind IIIおよびEco RIのいずれかで消化し、ゲルに塗布した。ブロットを、MEKK遺伝子の320−bpの断片でプローブした。図3Bには、Bam HIとHind III消化物中に1つのバンドの出現を示し、それはMEKKが1つの遺伝子によってコードされていることを示す。Eco RI消化物中に2つのバンドが出現することは、プローブによってスパンされたイントロン配列内にEco RI部位が存在するらしいことを示す。
D. 抗MEKK抗体を使用するイムノブロット
3種の異なった抗原を使用して、3種の多クローン性抗血清を製造した。第一の多クローン性抗血清は、MEKKのCOOH末端から誘導された15個のアミノ酸のペプチドDRPPSRELLKHPVERを含む抗原を使用して製造した。NZWウサギをペプチドで免疫処置して、当業界の標準方法を使用して抗血清を回収した。この第一の多クローン性抗血清を本明細書ではDRPP抗血清と呼称する。
第二の多クローン性抗血清は、EcoR1とPstIで消化されたMEKK cDNAを含むDNAクローンを使用し、MEKKのアミノ末端をコードする1270bpの断片を生成させて、製造した。この断片をpRSETC中でクローン化して、MEKK1のアミノ酸残基1〜369を含む組換え分子pMEKK1-369を生成させた。pMEKK1-369組換え分子をE.コリ中で発現させて、組換え分子によってコードされたタンパク質を回収し、当業界の標準方法を使用して精製した。NZWウサギを精製組換えMEKK1-369分子で免疫処置し、当業界の標準方法を使用して回収した。この第二の多クローン性抗血清を本明細書ではMEKK1-369抗血清と呼称する。
第三の多クローン性抗血清は、Pst IとKpn 1で消化されたMEKK cDNAを含むDNAクローンを使用し、MEKKの触媒ドメインをコードする1670bpの断片を生成させて、製造した。この断片をpRSETC中でクローン化して、MEKK1のアミノ酸残基370−738を含む組換え分子pMEKK370-738(塩基対1592−3260によってコードされた)を生成させた。pMEKK1370-738組換え分子を、E.コリ中で発現させて、組換え分子によってコードされたタンパク質を回収し、当業界の標準方法を使用して精製した。NZWウサギを精製組換えMEKK370-738タンパク質で免疫処置し、当業界の標準方法を使用して回収した。この第三の多クローン性抗血清を本明細書ではMEKK1370-738抗血清と呼称する。
DRPP抗血清を使用して、数種の噛歯動物の細胞株から誘導された可溶性細胞タンパク質のウエスタンブロットをプローブした。可溶性細胞タンパク質(100μg)または組換えMEKK COOH末端融合タンパク質(30ng)を、10%トリスグリシンSDS−PAGEゲル中に入れ、タンパク質を当業界の標準方法を使用してナイロンフィルターに移した。ナイロンフィルターをアフィニティー精製DRPP抗血清でイムノブロットした(1:300希釈)。図3Cを参照すると、78kDの免疫活性タンパク質が、フェノクロモサイトーマ(PC12)、Rat 1aおよびNIH 3T3細胞からのタンパク質を含む試料中に同定された。顕著な50kDの免疫活性バンドも通常存在するが、強度が標本によって変わり、このことはバンドがタンパク質分解断片であることを示す。イムノブロット上の78kDと50kDの免疫活性バンドの両方の視覚化は、15個のアミノ酸ペプチド抗原のアフィニティー精製DRPP抗血清との予備インキュベーションによって抑制された。イムノブロットによって検出されたMEKKタンパク質は、MEKK cDNAの転写解読枠から推定された分子サイズと類似である。
第二のイムノブロット実験では、EGFで刺激されたまたは刺激されなかったPC12細胞を溶解し、上記のように、10%トリスグリシンSDS−PAGEゲル上で分別した。細胞溶解物中に含有されたMEKKタンパク質は、アフィニティー精製MEKK1-369抗血清(1:300)を使用するイムノブロットによって、当業界の標準方法を使用して、同定された。
図4を参照すると、MEKK1、およびMEKK活性、MEKKαとMEKKβを有する2種の高分子量タンパク質は、アフィニティー精製MEKK1-369抗血清を使用して、同定された。MEKK1は、アフィニティー精製MEKK1-369抗血清を使用して同定され、MEKKαとMEKKβは同定されなかった。
上記と同一の方法を使用して、PC12、Ratla、NIH3T3、およびSwiss細胞溶解物中に存在する、約98kDと82kDの2種のMEKK免疫活性種が、図5に示されるように、アフィニティー精製MEKK1-369抗血清によって認められた。本明細書に記載の98kDのMEKKタンパク質は元来、関連PCT出願(国際出願番号PCT/US94/04178)の95kDのMEKKタンパク質と同定されたことを注目すべきである。その後のトリスグリシンSDS−PAGEゲル分析によって、分子量の改変が決定された。これらのタンパク質の両方の視覚化は、アフィニティー精製MEKK1-369抗血清を、精製組換えMEKK1-369融合タンパク質抗原とインキュベートすることによって抑制された。一本鎖の98kDのMEKKタンパク質は、MEKK免疫沈降物中に存在するが、プレイムノ血清を使用する免疫沈降物中には存在しなかった。98kDのMEKKは、繊維芽細胞株に比してPC12細胞中で多く発現した。Raf−1またはRaf−Bを特異的に認識する抗体を用いるイムノブロットによって、これらの酵素のいずれもが、MEKK免疫沈降物の混入物として存在したものでないことが示された。MEKK免疫沈降物中の98kDのMEKKは、PC12細胞溶解物中のRaf−1またはRaf−Bとコミグレート(comigrate)せず、そしてMEKKとRaf抗体との間の交差反応性は観察されなかった。
実施例2
この実施例はMEKK2、MEKK3およびMEKK4タンパク質をコードしている核酸配列の単離について記載する。
PCRプライマーは、MEKK1のヌクレオチド配列に基づいて設計した。PC12とHL60細胞から単離されたRNAのリバーストランスクリプターゼ反応から単離されたDNAからの断片のPCR増幅は、標準技術を使用して行った。得られたPCR生成物を、pGEXクローニングベクター(Promega,Wisconsin)中で、標準方法を使用してクローン化し、標準技術を使用するDNA配列分析に供した。
実施例3
この実施例は、COS−1細胞中でMEKK1タンパク質を発現させて、MAPKを含むシグナリング系を調節する機能を規定することについて記載する。
100mm培養皿中のCOS細胞を、pCVMV5発現ベクター単独(1μg:対照)またはpCVMV5 MEKK構築物(1μg:MEKK)のいずれかで、トランスフェクトした。48時間後、細胞を、ウシ血清アルブミン(0.1%)を含有する無血清培地中に16〜18時間入れて、休止を誘導した。次いで、細胞を、ヒトEGF(30ng/ml)(+EGF)または緩衝液(対照)で10分間処理し、冷リン酸緩衝食塩水(PBS)で2回洗浄し、そして50mM β−グリセロホスフェート(pH7.2)、100mM バナジン酸ナトリウム、2mM MgCl2、1mM EGTA Triton X−100(0.5%)、ロイペプチン(2μg/ml)、アプロチニン(2μg/ml)、および1mMジチオスレイトール(600μl)を含有する細胞溶解緩衝液中で溶解させた。マイクロフュージ中で最高速度で10分間遠心分離した後、0.5〜1mgの可溶性タンパク質を含有するCOS細胞溶解物を、MONO Qカラム上のFPLCで処理して、溶出フラクションを、Heasley等,Mol.Bio.Cell,第3巻,第545頁,1992年に記載の方法にしたがって、MAPK活性について測定した。
図6Aを参照すると、MEKK1がCOS1細胞中で過発現した場合、MAPK活性は、MEKK 1cDNA挿入物を欠くプラスミドでトランスフェクトされた対照細胞中よりも4〜5倍大きかった。MAPKの活性化は、血清から遮断されたCOS細胞中、および添加された増殖因子の不在下で、起こる。MAPKの活性は、対照細胞のEGFによる刺激の後に、観察された活性と同様であった。MEKKを一時的に過発現するCOS細胞をEGFで刺激すると、MAPK活性が、MEKK発現単独の場合に観察された活性と比較して、少しだけ増加した。
MEKKタンパク質が、MAPK活性について試験した試料中に存在することを確認するために、トランスフェクトされたCOS1細胞の細胞溶解物からのタンパク質を、MEKK特異性抗血清とイムノブロットした。COS細胞からの可溶性タンパク質溶解物の同量(100μg)を、実施例1に記載の方法を使用するイムノブロットのためのゲル上に置いた。フィルターを、アフィニティー精製DRPP抗血清(1:300)とアフィニティー精製MEKK1-369抗血清(1:300)を使用してイムノブロットした。図6Bを参照すると、結果は、EGFで処理されたまたはEGF無しで処理されたMEKKをコードしているベクターでトランスフェクトされた細胞中でMEKKが発現することを示す。50kDのMEKK免疫活性断片のみが、対照COS細胞からの溶解物中に、DRPP抗血清を使用して検出された。COS細胞中でのMEKKの一過性の発現は、PC12、Rat 1a、またはNIH 3T3細胞中で観察されたものより少し大きい顕著な82kDのバンドを与えた。イムノブロット中に、15個のアミノ酸DRPPペプチド抗原を抗血清に添加すると、免疫反応性バンドのすべての検出が防止された。これらのバンドは対照COS細胞の抽出物中に検出されなかた。このことは、それらが発現MEKKタンパク質から誘導されたことを示している。
実施例4
この実施例は、COS細胞中でMEKK1を発現させて、MEKタンパク質を活性化するMEKKタンパク質の能力を試験することについて記載する。
組換えMAPKを使用して、MONO Sカラム上の高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)によって分画されたCOS細胞溶解物中のMEK活性を測定した。クセノプス・ラエビス(Xenopus laevis)からのp42 MAPKをコードしているcDNAを、pRSETB発現ベクター中でクローン化した。この構築物を、NH2末端にポリヒスチジンを含有するp42 MAPK融合タンパク質の、大腸菌(Escherichia coli)BL21(DE3)のLysS株中での発現のために使用した。発現プラスミドを含有する培養物を、600nMで0.7〜0.9の光学濃度まで、37℃で増殖させた。融合タンパク質合成を誘導するために、イソプロピル−β−チオガラクトピラノシド(0.5mM)を添加し、培養物を3時間インキュベートした。次いで、細胞を収集し、凍結、解凍、および音波処理によって溶解した。溶解物を、10,000gで4℃で15分間遠心分離した。次いで、上澄液をNi2+充填セファロース樹脂に通し、可溶性組換えMAPKをリン酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)中に溶出させた。精製組換えMAPKは80%以上の純度であった。精製組換えMAPKは、MEKのための基質として働き、EGF受容体の残基662〜681からなるペプチド(EGFR662-681)のリン酸化を触媒した。
一時的にMEKKでトランスフェクトされた、mockトランスフェクトされた(対照)、またはmockトランスフェクトされそしてEGF(30ng/ml)(+EGF)で処理された、COS細胞からの可溶性細胞溶解物を、Mono Sカラム上のFPLCによって分画し、内因性MEK活性を測定した。内因性MAPKはフラクション2〜4中に溶出し、一方MEKはフラクション9〜13中に含有された。内因性MEK活性を測定するために、細胞を冷PBSで2回洗浄し、50mM β−グルセロホスフェート、10mM 2−N−モルホリンエタン−スルホン酸(pH6.0)、100μMバナジン酸ナトリウム、2mM MgCl2、1mM EGTA、Triton X−100(0.5%)、ロイペプチン(5μg/ml)、アプロチニン(2μg/ml)、および1mMジチオスレイトールを含有する650μlの溶液中で溶解した。マイクロフュージ中で最高速度で10分間遠心分離した後、可溶性細胞溶解物(1〜2mgのタンパク質)を、溶出緩衝液(50mM β−グイセロホスフェート、10mM MES(pH6.0)、100μMバナジン酸ナトリウム、2mM MgCl2、1mM EGTA、および1mMジチオスレイトール)中で平衡化されたMono Sカラムに導入した。カラムを緩衝液(2ml)で洗浄し、結合したタンパク質を、溶出緩衝液中の線状勾配0−350mMのNaClの30mlで溶出させた。各フラクションの一部(30μl)を、40μlの最終容量中で、の緩衝液(25mM β−グルセロホスフェート、40mM N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N′−(2−エタノールスクホン酸)(pH7.2)、50mMバナジン酸ナトリウム、10mM MgCl2、100μM γ−32P−ATP(3000〜4000 cpm/pmol)、阻害剤、プロテイン−20(IP−20;TTYADFIASGRTGRRNAIHD;25μg/ml)、0.5mM EGTA、組換えMAPキナーゼ(7.5μg/ml)、および200μM EGFR662-681)と混合して、MEK活性について測定した。30℃で20分間インキュベートした後、γ−32P−ATPのEGFR662-681中への取込みを測定した。この測定では、添加された組換えMAPKを活性化する各カラムフラクションの能力を、MAPK基質、EGF受容体から誘導されたペプチド(EGFR)、中へのγ−32P−ATPの取込みによって測定した。
図7を参照すると、溶出した活性の第一のピークは内因性活性化MAPKを表し、それはEGFRペプチド基質を直接にリン酸化する。活性の第二のピークはCOS細胞中の内因性MEKを表す。
内因性MEKの活性は、Mono S FPLCの分画によって特性決定した。COS細胞溶解物をMono Qカラム上のFPLCによって分画し、発現MEKKを部分的に精製した。次いで、精製組換えMEK−1を、MEKKのための基質として、γ−32P−ATPの存在下で使用して、MEKKがMEK−1を直接にリン酸化するかどうかを決定した。
MEK−1をコードしているcDNAは、マウスB細胞のcDNA鋳型から、ポリメラーゼ連鎖反応およびMEK−1の5′コード領域と3′非翻訳領域の部分に対応するオリゴデオキシヌクレオチドプライマーを用いて、得た。触媒的不活性なMEK−1は、Lys343からMetの部位特異的突然変異誘発によって生成させた。野生型MEK−1と触媒的不活性なMEK−1タンパク質は、それらのNH2末端でポリヒスチジン配列を含有する組換え融合タンパク質として、pRSETA中で発現させた。
MEKKでトランスフェクトされたCOS細胞またはmockトランスフェクトされたCOS細胞(対照)からの溶解物は、上記のMono Qカラム上のFPLCの処理を行った。MEKKを含有するフラクションの一部(20μl)を、40μlの反応容量中に、50mM β−グルセロホスフェート(pH7.2)、100μMバナジン酸ナトリウム、2mM MgCl2、1mM EGTA、50μM ATP、IP−20(50μg/ml)、および10μl γ−32P−ATPを含有する緩衝液と混合し、組換え触媒的不活性なMEK−1(150ng)(キナーゼ−MEK−1)の存在下(+)または不在下(−)で、40分間インキュベートした。反応は、5×SDS試料緩衝液(10μl)を添加して停止させた。1×SDS緩衝液は2%SDS、5%グリセロール、62.5mM tris−HCl(pH6.8)、5% β−メルカプトエタノール、および0.001%ブロモフェノールブルーを含有する。試料を3分間煮沸し、SDS−PAGEとオートラジオグラフィー処理を行った。
図8Aを参照すると、自己リン酸化された組換え野生型MEK−1(WT MEK−1)は、リン酸化された触媒的不活性なMEK−1とコミグレートした。従って、MEKKはMEK−1をリン酸化することができる。しかし、対照細胞からの溶解物の対応フラクションはMEK−1をリン酸化することができなかった。
実施例5
この実施例は、実施例4のリン酸化測定法で使用されたMEKK−1の改変形態が、野生型MEK−1のようには、自己リン酸化しなかったことを示す研究について記載する。
触媒的不活性なMEK−1のMEKKによるリン酸化は時間依存性であった(図8B);MEKKもリン酸化された。Mono Qカラム上のFPLCからのフラクション22(20μl)を、組換え触媒的不活性なMEK−1(0.15μg)とまたは無しで、記載の時間の間インキュベートした。図8Bを参照すると、キナーゼMEK−1およびMEKKのリン酸化は、5分後に可視的になり、20分後に最高になった。MEKKリン酸化の時間依存的増加は、SDS−PAGE中のMEKKタンパク質の高い易動度と相互に関連していた。図8Cを参照すると、イムノブロットは、MEKKタンパク質が、MEKをリン酸化する活性のピーク(フラクション22)と(mono Qカラム上のFPLCの後に)共溶出することを示した。MEKKのゆっくりと移動する種も、イムノブロットによって検出された。従って、MEKKの発煙は、MEKを活性化して、MAPKを活性化するようである。
実施例6
この実施例は、過発現したMEKKによってMEKをリン酸化すると、MEK、組換え野生型MEK−1、および触媒的不活性であるMAPKの改変形態が活性化されることを記載する。
COS細胞溶解物をMono Q−FPLCによって分別して、MEKKを含有するフラクションを、それが触媒的不活性な組換えMAPKをγ−32P−ATPの存在下でリン酸化するように、添加された野生型MEK−1を活性化するそれらの能力について測定した。MEKKでトランスフェクトされたまたはmockトランスフェクトされたCOS細胞(対照)からの溶解物を、Mono Qカラム上のFPLCによって分画して、MEKKを含有するフラクションの一部(20μl)を緩衝液と混合した。各フラクションを、精製組換え野生型MEK−1(150ng)の存在下(+)または不在下(−)で、ならびに精製組換え触媒的不活性な(キナーゼ)MAPK(300ng)の存在下で、インキュベートした。図9Aを参照すると、MEKKでトランスフェクトされたCOS細胞の溶解物からのフラクション20−24はMEK−1を活性化した。従って、MEKKがMEK−1をリン酸化し、活性化して、MAPKがリン酸化された。
実施例7
この実施例は、MEKKが直接にMEKを活性化し、カラムフラクション中に含有された一つまたはそれ以上の他のキナーゼの活性化によってではないことを示す研究について記載する。
過発現されたMEKKを、COS細胞溶解物から、アフィニティー精製MEKK1-369抗血清によって免疫沈降させた。免疫沈降したMEKKを、15μlのPAN(10mMピペラジン−N,N′−ビス−2−エタンスルホン酸(Pipes)(pH7.0)、100mM NaCl、およびアプロチニン(20μg/ml))中に再懸濁させ、そして20μlの最終容量中で、20mM pipes(pH7.0)中の触媒的不活性なMEK−1(150ng)と25μCiのγ−32P−ATP、10mM MnCl2、およびアプロチニン(20μg/ml)と共に(+)、または無しで(−)、30℃で15分間インキュベートした。反応を、5×SDS緩衝液(5μl)の添加して停止させた。試料を3分間煮沸して、SDS−PAGEおよびオートラジオグラフィー処理を行った。
図9Bを参照すると、MEKKは触媒的不活性MEK−1をリン酸化し、それはSDS−PAGE上で野生型MEK−1とコミグレートした。免疫沈降物中に、過発現MEKKの数個のリン酸化されたバンドが検出された。これらのバンドは多分、MEKKの自己リン酸化に由来し、そしてMEKKでトランスフェクトされたCOS細胞からの溶解物のイムノブロットによって同定されたMEKKの形態に対応した。プレイムノ血清で得た免疫沈降物はMEKKを含有せず、またMEK−1をリン酸化しなかった。従って、MEKKはMEKを直接的にリン酸化するようである。
一緒にして考えると、実施例4〜実施例7からの結果は、MEKKはMEKをリン酸化し活性化して、それが順にMAPKをリン酸化し活性化することを示している。
実施例8
この実施例は、RafもMEKをリン酸化し活性化することができることを示す。
血清から遮断されたCOS細胞をEGFで刺激し、そしてRafを、Raf−1のCOOH末端に対する抗体で免疫沈降させた。COS細胞を、ベクター単独(対照)またはPCV/M5−MEKK構築物(MEKK)で一時的にトランスフェクトした。休止性の対照細胞を、ヒトEGF(30ng/ml)で、または無しで、10分間処理して、Rafを、細胞溶解物から、RafからのCOOH末端ペプチドに対する抗体で、免疫沈降させた。免疫沈降したRafを、触媒的不活性なMEK−1(150ng)と25μlのγ−32P−ATPとインキュベートした。免疫沈降したRafは、γ−32P−ATPの存在下で、MEK−1をリン酸化した(図10A)。MEKKを過発現するCOS細胞からのRafの免疫沈降物中では、RafによるMEK−1のリン酸化は少ししかまたは全く観察されなかった。MEKKを過発現するCOS細胞をEGFで処理すると、免疫沈降したRafによるMEK−1のリン酸化が同程度に起こった(図10B)。MEKKでトランスフェクトされそして血清から遮断された細胞を、EGFで処理し、そしてRafを免疫沈降させて、触媒的不活性なMEK−1とインキュベートした。Rafに対する抗体とのイムノブロットによって示されたように、同量のRafが各試料中に免疫沈降した。最も緩慢に移動するバンドは、RafまたはMEK−1に無関連である免疫沈降したリンタンパク質を表す。対照細胞およびMEKKでトランスフェクトされた細胞からの免疫沈降物中のRafの量は、その後のSDS−PAGEおよびRafに対する抗体とのイムノブロットによって示されるように、同様であった。従って、MEKKとRafは独立してMEKを活性化することができる。
実施例9
この実施例は、MEKKタンパク質を含有する細胞の増殖因子による刺激に応答して、PC12細胞から単離された98kDのMEKKタンパク質が活性化することについて記載する。
PC12細胞を、飢餓培地(DMEM、0.1%BSA)中で18〜20時間インキュウベートすることによって、血清から遮断し、そしてMEKKを、未処理の対照またはEGF(30ng/ml)もしくはNGF(100ng/ml)で5分間処理された細胞の同量を含有する溶解物から、MEKKのNH4末端部分に特異的な上記の抗MEKK抗体で免疫沈降させた。免疫沈降したMEKKを8μlのPAN(10mMピペラジン−N,N′−ビス−2−エタンスルホン酸(Pipes)(pH7.0)、100mM NaCl、およびアプロチニン(20μg/ml))中に再懸濁させ、触媒的不活性なMEK−1(150ng)と40μCiの(γ−32P)ATPと、万能キナーゼ緩衝液(20mMピペラジン−N,N′−ビス−2−エタンスルホン酸(Pipes)(pH7.0)、100mM MnCl2、およびアピロチニン(20μg/ml))中で、20μlの最終容量中で、30℃で25分間インキュベートした。2X SDS試料緩衝液(20μl)を添加して、反応を停止した。試料を3分間煮沸し、SDS−PAEとオートラジオグラフィー処理を行った。Raf−Bを、Raf−BのCOOH末端ペプチドに対する抗血清(Santa Cruz Biotechnology,Inc.)で、上記のように、同一の未処理および処理されたPC12細胞溶解物から免疫沈降させ、同様に測定した。Raf−1を、Raf−1のCOOH末端アミノ酸に対する抗血清(Santa CruzB Biotechnology,Inc.)で免疫沈降させた。血清飢餓にされたPC12細胞を表皮増殖因子(EGF)処理すると、MEKK活性が増加した。
図11を参照すると、結果は、MEKKの免疫沈降物によって精製MEK−1(キナーゼ不活性型)のリン酸化を、試験管内キナーゼ測定で、測定することによって得たものである。NGFは、未処理細胞からの対照免疫沈降物と比較して、MEKK活性のわずかな増加を刺激した。Raf−Bは高い基礎活性を示したが、NGFとEGFによるMEKK活性の刺激は、これらの試薬によるRaf−B活性化と同様であった。NGFとEGFによるc−Raf−1の活性化は、MEKKまたはRaf−Bのそれと比較して殆ど無視してよい程度であった。
EGFによるMEKK刺激の経時変化は、0、1、3、5、10、または20分間EGF(30ng/ml)で処理されたPC12細胞の溶解物からのMEKKまたはRaf−Bタンパク質を免疫沈降させ、そのタンパク質を、上記のように、触媒的不活性なMEK−1(150ng)と(γ−32P)ATPとインキュベートすることによって行った。データは、典型的実験からの、放射性ゲルのホスホルイメージャー分析によって定量された、各時点での応答の相対的大きさを表す。EGF処理の経時変化は、MEKK活性化が5分後に最高水準に達し、少なくとも30分間持続することを示した(図12)。Raf−Bは同様の経時変化を示した;ピークの活性はEGF処理後3−5分以内に生じ、20分までの間持続した。
EGF刺激されたMEKK活性をRaf−Bのそれからさらに分離するために、MEKK免疫沈降の前に、Raf−Bを細胞溶解物から免疫清掃した。Raf−Bを、EGF(30ng/ml)で5分間処理されたまたは処理されなかった血清飢餓PC12細胞の溶解物から予備清掃した。Raf−Bを、Raf−Bに対する抗血清を使用して、または対照として免疫前IgG抗血清を使用して、2回予備清掃した。次いで、予備清掃された上澄液を、MEKKまたはRaf−B抗血清で免疫沈降させ、詳細に上記したように、触媒的不活性なMEK−1と(γ−32P)ATPとインキュベートした。EGF刺激された、および刺激されなかったPC12細胞溶解物を、IgGまたはRaf−B抗血清で予備清掃し、次いでMEKK抗血清またはRaf−B抗体で免疫沈降処理を行った。図13に示された結果は、試験管内キナーゼ測定中に、Raf−Bのホスホルイメージャー分析によって測定して、Raf−B活性が60%低下したことを示した。EGF刺激されたMEKK活性はRaf−B除去によって影響されなかったが、これはRaf−BがMEKK免疫沈降物の成分ではないことを示唆する。Raf−B活性の少なくとも40%は、Raf−B抗体による予備清掃に対して抵抗性である。COS細胞中で過発現した組換え野生型MEKKは、セリンとスレオニン残基上で容易に自己リン酸化し、MEKKのアミノ末端は非常にセリンとスレオニンに富む。PC12細胞の免疫沈降物中に含有されたMEKKを、精製組換えMEKKアミノ末端融合タンパク質の選択的リン酸化について、試験管内キナーゼ測定法で試験した。
血清飢餓のPC12細胞を、EGF(30ng/ml)で5分間処理し、同一の細胞溶解物からの同量のタンパク質を、MEKK、Raf−B、または対照として免疫前抗血清で免疫沈降させた。免疫沈降物を、精製組換えMEKK NH2末端融合タンパク質(400ng)および(γ−32P)ATPと、上記のようにインキュベートした。図14に示された結果は、EGF刺激されたおよびEGF刺激されなかったPC12細胞の溶解物から免疫沈降したMEKKは不活性な50kDのMEKKNH2融合タンパク質を強くリン酸化し、一方Raf−B、またはEGF刺激されたまたはEGF刺激されなかったPC12細胞からの免疫前免疫沈降物は、基質としてMEKK NH2融合タンパク質を使用しなかったことを示している。従って、MEKK免疫沈降物中に含有されたEGF刺激されたMEKK活性は、混入Rafキナーゼによるものではない。
実施例10
この実施例は、PC12細胞溶解物のFPLC Mono Qイオン交換カラムフラクション中のMEKK活性について記載する。
細胞溶解物は、EGF刺激されたPC12細胞から製造した。1mlのカラムフラクション(1−525mM NaCl勾配)の一部(900μl)をトリクロロ酢酸による沈殿によって濃縮し、上記のようにゲル上に置いた。ゲルをブロットし、次いでMEKK特異性抗体でイムノブロットした。図15Aに示された結果は、98kDのMEKKの免疫反応性がフラクション10−12に溶出したことを示している。Raf−B免疫反応性のピークはフラクション14中に溶出し、一方Raf−1はカラムからの溶出液中に検出されなかった。未刺激の対照細胞またはEGF処理された細胞のPC12溶解物からの各フラクションの一部(30μl)を、基質として精製組換えMEK−1(150ng)を含有する緩衝液中で、上記のように測定した。図15Bに示された結果は、EGF刺激されたPC12細胞からのフラクション10−12中に溶出したMEKK活性のピークはMEKをリン酸化し、一方未刺激の細胞からのフラクション中にはMEKリン酸化があまり起らなかったことを示している。
実施例11
この実施例は、MEK−1とMEKK NH2末端融合タンパク質のリン酸化は98kDのPC12細胞MEKKの活性によるものであることを示す研究について記載する。
EGF刺激されたおよび未刺激の細胞から製造された細胞溶解物を、Mono−Qカラム上のFPLCによって分画して、内因性MEKKを部分的に精製した。未刺激対照PC12細胞またはEGF(30ng/ml)で5分間処理された細胞からの溶解物を、0−525mM NaClの線状勾配を使用するMono Qカラム上のFPLCによって分画した。各偶数番号のフラクションの一部(30μl)を、40μlの最終容量中に基質として精製組換えMEK−1(150ng)を含有する緩衝液(20mMピペラジン−N,N′−ビス−2−エタンスルホン酸(Pipes)(pH7.0)、10mM MnCl2、アプロチニン(20μg/ml)、50mM β−スルセロホスフェート(pH7.2)、1mM EGTA、IP−20(50μg/ml)、50mM NaF、および30μCi(γ−32P)ATP)と混合し、30℃で25分間インキュベートした。反応を、2×SDS試料緩衝液(40μl)を添加して停止させ、煮沸して、SDS−PAGEオートラジオグラフィー処理を行った。MEKK活性のピークはフラクション10−12に溶出した。EGF処理されたPC12細胞の溶解物からの各偶数番号のフラクションの一部(30μl)を、MEK−1の代わりに基質として精製組換えMEKK NH2末端融合タンパク質(400ng)を含有すること以外は上記の通りの緩衝液と混合した。次いで、精製組換えキナーゼ不活性なMEK−1またはMEKK NH2末端融合タンパク質を、(γ−32P)ATP)の存在下で、基質として使用し、98kDのMEKKがいずれかの基質を直接にリン酸化するかどうかを決定した。EGFで処理されたPC12細胞からの溶解物のフラクション10−14がMEK−1をリン酸化し、一方未処理の対照のフラクション中ではMEK−1リン酸化は僅かしか起らなかった。活性のピークが少し幅広であったが(フラクション8−16)、MEKK NH2末端融合タンパク質も、MEK−1と同一のフラクション中でリン酸化された。
図16を参照すると、カラムフラクションのイムノブロットから、98kDのMEKKタンパク質が、外因的に添加されたキナーゼ不活性なMEK−1または50kDのMEKK NH2末端融合タンパク質をリン酸化した活性のピークと共に共溶出したことを示した。偶数番号のカラムフラクションの一部(900μl)をトリクロロ酢酸による沈殿によって濃縮し、MEKK抗体でイムノブロットした。免疫反応性のピークはフラクション10−12に溶出した。
実施例12
この実施例は、98kDのMEKKによるMEKの活性化について記載する。
98kDのMEKKを、未処理(−)またはEGF処理(+)PC12細胞溶解物からの、実施例1に記載のMEKK1-369抗血清を使用して免疫沈降させた。免疫沈降物を、精製組換え野生型MEK(150ng)の存在下で(+)または不在下で(−)、および精製組換え触媒不活性なMAPK(300ng)および(γ−32P)ATP)の存在下でインキュウベートした。図17Aに示された結果は、EGF刺激された細胞から免疫沈降されたMEKKが、MEKをリン酸化し活性化して、MAPKをリン酸化したことを示している。添加された組換えMEKの不在下では、MAPKのリン酸化は起らなかった。イムノブロットからは、EGF刺激されたPC12細胞からのMEKK免疫沈降物中には、混入MAPK(図17B)または混入MEK(図17C)は全く無いことが示された。従って、MEKのリン酸化と活性化は、免疫沈降物中に測定されたMEKK活性のEGF刺激によるものである。
実施例13
この実施例は、98kDのPC12細胞MEKKとRafが、増殖因子媒介シグナリングのための機能的Rasタンパク質を必要とするかどうかについて記載する。
優性の負のHa−ras(Asn−17)(N17Ras)をPC12細胞中で発現させ、そしてEGF刺激されたMEKKまたはRaf−B活性化を、免疫沈降物中で、基質としてキナーゼ不活性なMEK−1を使用して測定した。デキサメタソン誘発N17Rasを安定して発現するPC12細胞を、1μMデキサメタソンを持つまたは持たない0.1%BSAを含有する培地中で、18−20時間、血清飢餓にさせ、次いで未処理またはEGF(30ng/ml)で5分間処理した。細胞溶解物からの可溶性タンパク質の同量を、MEKK抗血清またはRaf−B抗血清で免疫沈降して、上記のように、精製組換え触媒的不活性MEK−1および(γ−32P)ATPとインキュウベートした。N17Rasの発現が、N17Ras遺伝子で安定的にトランスフェクトされたPC12クローン中で、飢餓培地にデキサメタソンを添加することによって、誘発された。N17Rasの発現は、キナーゼ不活性なMEKをリン酸化するその能力によって測定して、EGFによるMEKKの活性化を抑制した。Raf−BのEGF媒介活性化はまた、N17Ras発現するPC12細胞中で、非誘発のN17Rasトランスフェクタントに比較して、大きく低下した。野生型PC12細胞へのデキサメタソンの添加は、EGFによって誘導されたMEKK活性化またはRaf−B活性化の大きさに効果を有しなかった。N17Ras遺伝子で安定的にトランスフェクトされたPC12細胞クローンは、野生型PC12細胞よりも、MEKK活性のEGF媒介活性化に対する応答性が低い。これらの結果から、機能性Rasが、PC12細胞中のRaf−BとMEKKの増殖因子刺激された活性化に必要であることが示され、このことはRasが、RafとMEKK系統群からの多重プロテインキナーゼエフェクターの活性化によって、細胞増殖と分化に対するその効果を媒介することを示唆する。従って、EGFは、5分間以内に活性のピークを刺激し、それは処理後少なくとも30分間持続し、Raf−B活性化の経時変化と同様であった。神経増殖因子(NGF)とホルボールエステルTPAも、EGFより低い程度であるが、MEKKを活性化した。免疫沈降物またはカラムフラクション中のMEKK活性は、EGF刺激されたc−Raf−1とRaf−B活性から分離され得る。ホスコリン前処理は、EGF、NGF、およびTPAによるMEKKおよびRaf−B活性化を廃止した(図18)。EGFに対応するMEKKおよびRaf−B活性化は、優性の負のN17Rasの安定な発現によって抑制された。これらの知見は、増殖因子によるRas依存性MEKK調節の第一の証明を表し、そしてRasが、RafとMEKK系統群の構成員との間を交互に結合することができる、複合細胞内キナーゼネットワークの出現を示唆する。
98kDのPC12細胞MEKKの増殖因子媒介活性化がPKAによって抑制されるかどうかを決定するために、ホルスコリンを使用して、細胞内cAMPを上昇させ、PKAを活性化した。血清飢餓されたPC12細胞を、ホルスコリン(50μM)で3分間前処理するかまたはホルコリン無しで前処理して、プロテインキナーゼAを活性化し、次いでEGF(30ng/ml)、NGF(100ng/ml)、またはTPA(200pM)で5分間処理して、MEKKを、細胞溶解物からの可溶性タンパク質の同量から免疫沈降させ、上記のように、精製組換え触媒的不活性なMEK−1および(γ−32P)ATPとインキュウベートした。同一細胞溶解物から、Raf−B活性を、その調節がMEKKのそれと異なるかどうかを試験するために、測定した。Raf−Bを、上記の同一の細胞溶解物から免疫沈降させ、上記のように、MEK−1をリン酸化するその能力について測定した。ホルスコリン前処理は、キナーゼ不活性なMEK−1をリン酸化するそれらの能力によって測定して、EGF、NGF、およびTPAによるMEKKとRaf−Bの活性化を廃止した(図18)。ホルスカリン処理単独では、いずれのキナーゼにも顕著な効果を有しなかった。これらの結果は、Raf−1とRaf−Bの外に、PKA活性化が、98kDのPC12細胞MEKKの増殖因子刺激を抑制することを示し、このことは、Rasの間または下流およびこれらの3つのキナーゼの各々の上流または水準に在るPKA作用のための共通の調節制御点の存在を示唆する。
実施例14
この実施例は、類似のMEK活性または相違するMEK活性が、Giタンパク質結合された受容体によるMAPKの活性化に関与するかどうかを、トロンビン刺激されたRat 1a細胞からの細胞溶解物中のMEKK活性を測定することによって、決定することについて記載する。
トロンビン刺激された細胞は、EGF刺激された細胞中に検出された主要MEKピークと共に共分画されたMEK活性を示した。トロンビン攻撃誘発された(challengede)細胞からのMEK活性の大きさは一搬的に、EGF刺激の場合に観察されたものより2〜3倍低く、それは、本発明者がトロンビン攻撃誘発された細胞中に観察したより小さいMAPK応答と関連している。
gip2、v−src、v−ras、またはv−rafを発現するRat 1aとNIH 3T3細胞中のMEKの微分調節によって、本発明者は、MEK−1の推定される調節体であるプロテインキナーゼを研究するようになった。最近、Raf−1がMEKをリン酸化し活性化することができることが示された。Raf活性化は以下の方法で測定した。細胞を血清飢餓にして、上記のように、適切な増殖因子の存在または不在下で攻撃誘発させた。血清飢餓のRat 1a細胞を緩衝液単独でまたはEGFで攻撃誘発させ、Rafを、RafのC末端を認識する抗体を使用して免疫沈降させた。細胞を、氷冷RIPA緩衝液(50mMトリス、pH7.2、150mM NaCl、0.1%SDS、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、1.0%Triton X100、10mM ピロリン酸ナトリウム、25mMグルセロリン酸ナトリウム、2mMバナジン酸ナトリウム、2.1μg/mlアプロチニン)中で擦過することによって溶解し、10分間マイクロフュージして、核を除去した。上澄液をタンパク質含量について正常化し、プロテインAセファロースで4℃で2−3時間予備清澄化した後、Raf−1のC末端に対するウサギ抗血清とプロテインAセファロースで免疫沈降させた。ビーズを氷冷RIPAで2回、PAN(10mMPipes、pH7.0、100mM NaCl、21μg/mlアプロチニン)で2回洗浄した。免疫沈降物の一部をSDS試料緩衝液で希釈し、イムノブロット分析に使用した。残部をキナーゼ緩衝液(20mM Pipes pH7.0、10mM MnCl2、150ngキナーゼ不活性な、MEK−1、30μCi γ−32P−ATPおよび20μg/mlアプロチニン)中に、50μlの最終容量中、30℃で30分間再懸濁させた。野生型組換えMEK−1をマーカーとして平行して自己リン酸化させた。反応を12.5μlのSDS試料緩衝液の添加によって停止させ、5分間煮沸し、SDS−PAGEとオートラジオグラフィー処理を行った。
免疫沈降したRafは、γ−32P−ATPの存在下で、MEK−1をリン酸化することができた。この測定で使用された組換えMEK−1は、野生型MEK−1で観察されるように、それが自己リン酸化しなかったことを確認する程キナーゼ不活性であった。対照細胞からの免疫沈降物中には、RafによるMEK−1のリン酸化は少しかまたは全く観察されなかった。EGFの攻撃誘発は明らかに、MEK−1のRaf触媒されたリン酸化を刺激した;反対に、Rat 1a細胞のトロンビン攻撃誘発は、内因性MEKが明らかに活性化された場合でも、測定できる程にはRafを活性化しなかった。EGFは、組換えMEK−1のRafリン酸化を、基礎の約2.6倍に刺激した。Gip2またはv−src発現するRat 1a細胞からのRaf免疫沈降物中には、RafによるMEKのリン酸化が少ししか観察さなかった。EGF刺激は、これらの細胞株中でMEK−1のRaf触媒されたリン酸化を、夫々1.8倍と1.4倍に活性化することができた。Gip2とv−src発現する細胞中のEFG応答のブランティングは、MAPKの構成性活性化に対するEFG受容体の脱感受性の結果のようである。免疫沈降物中のRaf量は、その後のSDS−PAGEおよびRaf抗体を使用するイムノブロットによって、同様であることが示された。MEKのトロンビン刺激が基礎の2〜3倍であるから、Rafがこの増殖因子によるMEK活性化に顕著に貢献した場合、MEKリン酸化の少なくとも1.5倍の刺激が期待される。活性化のこの水準は、EGF刺激されたGip2とv−src発現する細胞株中に検出可能であった。従って、Rafのトロンビン活性化を検出できなかたことは、多分測定法の感度によるものである。MAPKのトロンビン刺激は3分で最高になる。トロンビンで1分または5分間Rat 1a細胞を刺激しても、Raf活性は増加しなかった。
NIH3T3細胞では、Rat 1a細胞中のように、EGFはRafを約2.7倍に活性化し、他方トロンビンは活性化しない。V−Raf発現するNIH3T3細胞はMEK−1リン酸化の増加を示さなかった。この結果は、MEKがv−Raf発現するNIH2T3細胞中で明らかに活性化されたから、意外であった。c−Raf−1の外に、p90とp75gag−raf融合タンパク質の両方は、v−Raf NIH3T3細胞から、抗血清によって免疫沈降した。p75gag−rafはプロテインキナーゼ活性を示すことが示されたが、NH2末端gag融合タンパク質は、試験管内測定系中で、組換えMEK−1のRafリン酸化を立体化学的に妨害することが可能である。v−Rafキナーゼ活性を測定する研究がさらに行われることが必要である。結果は、MEKの活性化が専らRafの活性化によっては説明できないことを示している。トロンビン刺激された、Giタンパク質結合経路中およびgip2とv−srcトランスフェクトされた細胞中のMEK活性化に貢献する、MEKのための追加の調節キナーゼが存在しなければならない。
実施例15
この実施例は、全長のMEKKタンパク質および負の制御タンパク質と比較して、MEKKタンパク質のpppss−truncおよびNcol−truncがMAP活性を活性化する能力を示す。
図19に示された結果は、切断されたMEKK分子が全長のMEKKより活性であったことを示している。事実、切断されたMEKK分子は、全長のMEKKタンパク質より少なくとも約1.5倍活性であった。従って、MEKKの調節ドメインが除去されると、触媒ドメインの活性が脱調節され、酵素活性が改善する。
実施例16
この実施例は、Rafに比較して、MEKによるJNKの優先的活性化について記載する。
ヒーラー細胞を、切断されたMEKK370-738で、誘発性乳房腫瘍ウイルスプロモーターの制御下で、エピトープ標識されたJNK1と一緒に、一時的にトランスフェクトした(Derijard等,Cell、第76巻、第1028頁,1994年に詳細に記載)。他のヒーラー細胞も、切断されたBXB−Rafで、誘発性乳房腫瘍ウイルスプロモーターの制御下で、エピトープ標識されたJNK1と一緒に、一時的にトランスフェクトした(Derijard等、上掲)。次の日、MEKK370-738発現およびBXB−Raf発現が、デキサメトソン(10μM)の投与によって、17時間誘発された。次いで、細胞抽出物を製造し、免疫複合キナーゼ測定法を使用してJNK活性について測定した(Derijard等,上掲、に詳細に記載)。図20に示された結果は、MEKKは、未不刺激の細胞(基礎)の約30倍〜約50倍にJNK活性を刺激し、Raf刺激された細胞の約15倍〜約25倍にJNK活性を刺激したことを示している。
実施例17
この実施例は、MEKK発現に応答する、c−Mycトランスアクチベーションドメインのリン酸化がMYC−GAL4転写活性を活性化することを記載する。
2つの別々の発現プラスミドを以下のように構築した。発現プラスミドpLNCXを、GAL4(1−147)に連結されたc−myc(1−103)を含むcDNAクローンに連結して(Seth等,J.Biol−Chem.,第266巻,第23521−23524頁,1993年)、組換え分子pMYC−GAL4を生成させた。発現プラスミドUASG−TKルシフェラーゼ(Sadowski等,Nature,第335巻,第563−564頁,1988年)を、pMYC−GAL4またはpLU−GALで、Swiss 3T3細胞中に、当業界の標準方法を使用してトランスフェクトし、組換え細胞(本明細書ではLU/GAL細胞と呼称する)を生成させた。組換え対照細胞も、GAL4(1−147)単独を含有するpGAL4−対照プラスミド中で、c−myc(1−103)の不在下で、トランスフェクトすることによって製造した。
LU/Gal細胞を、pMEKK370-738、pMEKK(全長のMEKK1-738をコードしている)、BXB−Raf、pMyc−Gal4、pCREB−Gal4(Gal41-147に融合されたCREB1-261をコードしている;Hoeffler等,Mol.Endocrinol.,第3巻,第868−880頁,1989年)、pGal4またはCREB融合タンパク質(GAL4と呼称)のいずれかでトランスフェクトした。
トランスフェクトされた細胞を一夜インキュベートし、次いで当業界の標準方法を使用して溶解した。各細胞溶解物のルシフェラーゼ活性をルミノメーターで測定した。図21に示された結果は、MEKKが、c−Mycトランスアクチベーションドメインのリン酸化を、c−Mycドメインが活性化されそしてトランスフェクトされたルシフェラーゼ遺伝子の転写を誘発するような方式で、選択的に刺激することができることを示している。さらに、結果は、MEKKがCREB活性化を刺激しないことを示している。また、活性化されたRafはMyc活性化を刺激することができない。MEKKによるc−Mycタンパク質の活性化機構の略図を図23に示す。
実施例18
この実施例は、MEKK3タンパク質によってP38MAPKタンパク質をリン酸化することおよびMEKK1タンパク質ではリン酸化しないことについて記載する。
COS細胞を、MEKK1もしくはMEKK3タンパク質をコードしているcDNAクローンに連結された発現プラスミドpCVM5、またはMEKK cDNA挿入物を欠いている対照pCVM5プラスミドで、トランスフェクトした。トランスフェクトの48時間後、COS細胞は溶解し、溶解物をMono Q FPLCカラム上で実施例4に記載の条件を使用して分画した。フラクションを、MAPキナーゼ様酵素のチロシンリン酸化について、実施例4に記載のキナーゼ測定法を使用して、分析した。図23を参照すると、MEKK3の発現は、P38 MAPKおよびp42とp44型のMAPKのチロシンリン酸化を誘発する。しかし、MEKKはp38 MAPKの弱いリン酸化を誘発するのみであるが、p42とp44 MAPKのリン酸化を誘発する。
実施例19
この実施例はMEKK誘発性アポト−シスについて記載する。
アポト−シスの研究のために、細胞を以下のように製造した。Swiss 3T3細胞とREF52細胞を、注入された細胞の検出のために、β−ガラクトシダーゼ(β−Gal)をコードしている発現プラスミドでトランスフェクトした。次いで、β−Galトランスフェクトされた細胞の1セットに、MEKK370-738タンパク質をコードしている発現ベクターを微量注入した。次いで、β−Galトランスフェクトされた細胞の他のセットに、切断されたBXB−Rafタンパク質をコードしている発現ベクターを微量注入した。
A. ビューベリシン誘発性アポト−シス
トランスフェクトされたSwiss 3T3細胞とREF52細胞の第一群を、50μMビューベリシンで、37℃で6時間処理した。ビューベリシンは哺乳類細胞中でアポト−シスを誘発することが知られている化合物である。細胞の第二群を、ビューベリシンを欠く対照緩衝液で処理した。次いで、処理された細胞をパラホルムアルデヒド中に固定し、当業界の標準プロトコールを使用してサポニンで浸透性化した。次いで浸透性化された細胞を、細胞を、細胞質収縮を検出するためには、フルオレセイン標識された抗チューブリン抗体(1:500;GIBCO,Gaithersburg,MDから入手)と、またはDNAを染色して核凝結を検出するするためには、10μMヨウ化プロピジウム(Sigma,St.Louis,Moから入手)とインキュベートすることによって標識した。次いで、標識された細胞を、Nikon Diaphot蛍光顕微鏡を使用して、微分蛍光画像化法によって観察した。図24は、Swiss 3T3細胞とREF52細胞の2つの視野を示し、第一の視野は対照緩衝液で処理された細胞を表し、第二の視野はビューベリジンで処理された細胞を表す。ビューベリジンで処理された細胞は、アポト−シスに特徴的である細胞収縮(抗チューブリン抗体によって監視された)と核凝結(ヨウ化プロピジウムによって監視された)を示した。
B. MEKK誘発性アポト−シス
β−ガラクトシダーゼ発現プラスミド、およびMEKKコードプラスミドもしくはBXB−Rafコードプラスミドを微量注入されたSwiss 3T3細胞とREF52細胞を、上記のA節に記載の方法を使用して、処理し、観察した。抗β−Gal抗体(1:500;GIBCO,Gaithersburg,MDから入手)を使用して、注入された細胞を検出した。図25を参照すると、REF52細胞の顕微鏡分析は、MEKKタンパク質を発現する細胞は細胞質収縮と核凝結を受け、アポト−シス的細胞死したことを示した。反対に、BXB−Rafタンパク質を発現する細胞は正常な形態を示し、アポト−シスを受けなかった。同様に、図26を参照すると、Swiss 3T3細胞の顕微鏡分析は、MEKKタンパク質を発現する細胞は細胞質収縮と核凝結を受け、アポト−シス的細胞死することを示した。反対に、BXB−Rafタンパク質を発現する細胞は正常な形態を示し、アポト−シスを受けなかった。
図27は、実質的な細胞質収縮と核凝結を受けた、MEKKタンパク質を発現するRFE52細胞の3つの代表的な視野を、MEKKを発現しない対照細胞と比較して示す。同様に、図28は、実質的な細胞質収縮と核凝結を受けた、MEKKタンパク質を発現するSwiss 3T3細胞の3つの代表的な視野を、MEKKを発現しない対照細胞と比較して示す。このように、MEKKタンパク質はアポト−シス的プログラム細胞死を誘発することができ、Rafタンパク質はできない。
実施例20
この実施例は、MEKKとRafタンパク質こよるMAPK活性の調節について記載する。
COS細胞を、実施例3に記載の方法を使用して製造した。さらに、COS細胞を、pCVMV5 Raf構築物(1μg:Raf)でトランスフェクトした。FPLC Mono Qイオン交換カラムフラクションを実施例3に記載の通り製造し、MAPK活性についてHeasley等,上掲に記載の方法に従って測定した。
図29を参照すると、COS1細胞中でMEKKとRafが過発現すると、MAPK活性が基礎水準以上の同様な水準まで刺激された。
本発明の上記の記載は、説明と記載の目的のために提供されたものである。さらに、本記載は本発明を、本明細書中で開示された形態に限定することを意図していない。従って、変化と改変は上記の教示と同一であり、関連技術の熟練と知識は本発明の範囲内にある。さらに、上記の明細書に記載の好適な態様は、本発明を実施する最良の方法を説明し、そして他の当業者が本発明を、種々の態様でまた本発明の特定の応用または使用に要する種々の改変を用いて、利用できることを意図している。添付の請求の範囲は、従来技術によって許される程度に、代理態様を包含すると解釈されることが意図されている。

Claims (11)

  1. 下記(a)および(b)から選ばれる単離されたタンパク質:
    (a)アミノ酸配列が表5に表されたアミノ酸配列であるタンパク質;および
    (b)(a)に記載のアミノ酸配列中の1もしくは数個のアミノ酸の欠失、置換、転置、もしくは付加によって(a)のタンパク質から誘導され、かつ、哺乳類のMEKタンパク質をリン酸化するタンパク質。
  2. 下記(a)および(b)から選ばれる単離されたタンパク質:
    (a)アミノ酸配列が表4に表されたアミノ酸配列であるタンパク質;および
    (b)(a)に記載のアミノ酸配列中の1もしくは数個のアミノ酸の欠失、置換、転置、もしくは付加によって(a)のタンパク質から誘導され、かつ、哺乳類のMEKタンパク質をリン酸化するタンパク質。
  3. MEKまたはMAPKタンパク質を活性化できる請求項1又は2記載のタンパク質。
  4. 下記(a)、(b)および(c)から選ばれる単離されたDNA分子:
    (a)ヌクレオチド配列が表4に表されているDNA分子;
    (b)アミノ酸配列が表4に表されたアミノ酸配列であるタンパク質をコードするDNA分子;および
    (c)(b)に記載のアミノ酸配列中の1若しくは数個のアミノ酸の欠失、置換、転置、もしくは付加によって(b)のDNA分子によりコードされたタンパク質から誘導され、かつ、哺乳類のMEKタンパク質をリン酸化するタンパク質をコードするDNA分子。
  5. 下記(a)、(b)および(c)から選ばれる単離されたDNA分子:
    (a)ヌクレオチド配列が表5に表されているDNA分子;
    (b)アミノ酸配列が表5に表されたアミノ酸配列であるタンパク質をコードするDNA分子;および
    (c)(b)に記載のアミノ酸配列中の1もしくは数個のアミノ酸の欠失、置換、転置もしくは付加によって(b)のDNA分子によりコードされたタンパク質に由来し、かつ、哺乳類のMEKタンパク質をリン酸化するタンパク質をコードするDNA分子。
  6. 請求項4または5記載のDNA分子を含有するベクター。
  7. 請求項4または5記載のDNA分子を含む宿主細胞。
  8. 請求項1または2記載のタンパク質に特異的に結合する抗体。
  9. (a)請求項1〜3のいずれかに記載のMEKKタンパク質を推定の調節化合物と接触させて反応混合物を形成する工程、
    (b)該反応混合物を該MEKKタンパク質についての基質と接触させる工程、および
    (c)該MEKKタンパク質の活性の調節に対する該推定調節化合物の能力を評価する工程
    を含んでなる細胞におけるシグナル伝達を調節できる化合物の同定方法。
  10. (a)請求項4または5に記載の配列を有するDNAによりコードされたMEKKタンパク質含有する細胞を推定の調節化合物と接触させる工程、
    (b)該細胞を細胞の表面上のレセプターに結合できるリガンドと接触させる工程、および
    (c)該MEKKタンパク質の活性を測定することにより細胞の表面上のレセプターから発せられるシグナルを調節することに対する該推定調節化合物の能力を評価する工程
    を含んでなる細胞の表面上のレセプターから発せられるシグナルを調節できる化合物の同定方法。
  11. 請求項1または2記載のタンパク質をコードする核酸分子を細胞に導入し、こうしてアポトーシスを細胞に誘導することを含んでなるin vitroでの細胞のアポトーシスの誘導方法。
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