JP3979969B2 - エキスパンションジョイント - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、間隙をおいて相対する躯体に簡便に装着して間隙の閉塞を良好に行なわせるエキスパンションジョイントに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、隣り合う躯体の間隙が変動するとき、間隙のカバー材を傾動させて変動を吸収するエキスパンションジョイントにおいては、躯体の一方に傾斜面を有する第1カバープレートを固定し、他方の躯体に傾斜面を有する第2カバープレートをヒンジにより取り付けて、この第2カバープレートの裏側に三角突部を設け、間隙が狭まる躯体の変動が起こるとき、第2カバープレートを第1カバープレートへ乗り上げさせて変動を吸収するようにしている。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
【特許文献1】
特開平7−43290号公報(第2頁〜第3頁、図1、図2)
【0004】
しかしながら、第1カバープレートと第2カバープレートに傾斜面を設ける場合は、これら傾斜面を乗り上げを起こし易い角度に形成しなければならないので、カバープレートの加工が困難であって、しかも、両傾斜面が面接触するため、変動時の抵抗が大きくてカバープレートの損傷を生じ易く、更に、狭い間隙内へ各部材を取り付けるため作業性も悪いという問題点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記問題点を解消し、カバー材の裏側に傾斜面を設け、この傾斜面に躯体に固定の接触子を対応させてカバー材の傾動を起こさせるため、カバー材を通常構造として加工を容易にすることができ、しかも、傾斜面と接触子を接触させるから、変動時の抵抗が小さくて部材の損傷を生ずることがなく、更に、各部材を間隙の内部ではなく、躯体の表面へ取り付けるために作業性もよくなるエキスパンションジョイントを提供することをその課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明に係るエキスパンションジョイントは、間隙をおいて相対する躯体の間隙を覆うカバー材を、一方の躯体に設けた枢支部材へホルダを介して傾動可能に取りつけたエキスパンションジョイントにおいて、上記ホルダの隙間に対応する裏面側に接面部を設け、接面部の他方の躯体側には傾斜面を設け、この傾斜面に対応させて上記他方の躯体には、上記接面部に接触可能な接触子を取り付けるとともに、上記ホルダには、上記カバー材を躯体へ向かって弾圧させるようにバネ部材が係合されていることを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明に係るエキスパンションジョイントを図面について説明する。
【0008】
図1において符号1で示すエキスパンションジョイントは、間隙Sをおいて面一状に相対する躯体2と躯体3の間隙Sを覆うカバー材4を、一方の躯体2に設けた枢支部材5へホルダ6を介して傾動可能に取り付ける。そして、上記ホルダ6の間隙Sに対応する裏面側には接面部7を形成し、他方の躯体3側よりも一方の躯体2側の方が高くなる傾斜の傾斜面7aを設け、この傾斜面7aに対応させて他方の躯体3には、傾斜面7aと接触する接触子8を取付け、更に、ホルダ6には、カバー材4を躯体3側へ向かって弾圧させるようにバネ部材9が係合されている構成としてある。
【0009】
上記一方の躯体2と他方の躯体3とは、表面に壁材10を取り付ける。この壁材10は、所要幅で長尺に形成した公知のものであって、側縁に額縁材11を取り付ける、この額縁材11は、図2(a)(b)に一部分を示す通り、壁材10の側縁と平行する側片11aに、短い前片11bと長い後片11cとを直角に曲成した長尺のものであって、後片11cで躯体2及び躯体3へ取り付ける。そして、額縁材11の側片11aの後端側には、先端がカバー材4の背部端へ臨む目隠片11dを取り付けてある。
【0010】
カバー材4は、壁材10と同じ材料で躯体2と躯体3との間隙Sを閉塞するのに充分な幅で、図3に一部分を示す通りの長尺物に形成し、両側には額縁材13を嵌める。そして、この額縁材13は、カバー材側4の側縁と平行する側片13aの前側に短い前片13bを直角に曲成する構造とし、ホルダ6の端縁を係合させる一対の係止鉤14を対設してある。
【0011】
ホルダ6を一方の躯体2へ傾動可能に支持させる枢支部材5は、図4(a)に示す通り短寸に形成して、中央部に複数の取付孔15をあけ、これらの取付孔15にネジ16を通して図1に示す通り枢支部材5を額縁材11とともに躯体2へ締め付け固定する。そして、間隙S側の端部には、ホルダ6に設けた後記欠円溝を係合させる円軸17を支持片18に支持させて設ける。
【0012】
ホルダ6は、カバー材4に取り付けた額縁材13の後板12に設けられる係止鉤14へ両端縁が係合する幅で、長さは図4(b)に示す通りの短寸に形成する。そして、枢着端6aの後側には、枢支部材5の円軸17に嵌合する欠円溝19を設けてあり、裏面には他方の躯体3側よりも一方の躯体2側の方が高くなる傾斜で傾斜面7aと、この傾斜面7aに連なる接面部7とを形成し、これら傾斜面7a及び接面部7とホルダ6との間には、バネ部材9の自由端を係合させる空間21を形成してある。
【0013】
また、ホルダ6は、長尺のカバー材4の後側へ所定の間隔で所要数を取り付ける。ホルダ6には、額縁材13の端縁を小片の額縁押え22で押え、額縁押え22とホルダ6をビス23で額縁押え22側からホルダ6とともに試着する。そして、カバー材4と額縁材の端縁をビス止めする。
【0014】
接触子8は、傾斜面7aと接触する部材で、図4(c)に示すように支持板24の先端に支持させ、この支持板24に取付孔25をあけ、取付孔25には図1のようにネジ16を通して、壁材10の額縁材11と共に躯体3へ締め付け、常態では接触子8がホルダ6の自由端6b側の平らな部分へ当接している。しかし、間隙Sが狭まる躯体2と躯体3の変動時には、傾斜面7aへ当接するようにするものであって、接触子8は、図4(c)に示す通り軸26で支持板25へ回転自在に取り付けたローラ構造とすることが、円滑で確実な作動をさせるために最も好ましいが、断面は円形に限定されない。又、支持板24の先端に一体に形成してもよい。
【0015】
バネ部材9は、図4(d)に示す通りバネ鋼を複数回丸めて中央のコイル部9aを形成し、このコイル部9aの一方には外側より固定部9bを伸び出させ、コイル部9aの他方に内側より弾発部9cを伸び出させた構成として、上記固定部9bを連結片9dで連結し、2個のバネ部材9が対をなすようにしてある。
【0016】
上記バネ部材9は、図1に示す通り中間のコイル部9aをホルダ6の欠円溝19に近い裏面へ当接させ、固定部9bを連結する連結部9dにより枢支部材5に係止し、弾発部9cをホルダ6の空間21へ係合させて、その弾力でホルダ6が円軸17を中心に回動し、カバー材4の躯体3への押し付けを行わせるようにする。
【0017】
上記実施形態に示すエキスパンションジョイント1は、他方の躯体3へ外側から壁材10の額縁材11と共に、接触子8の支持板24を取り付け、一方の躯体2へ壁材10の額縁材11と共に、ホルダ6でカバー材4を取り付けられた枢支部材5を取り付ければ、カバー材4で躯体2、3の間隙Sを閉塞するエキスパンションジョイント1が簡単に迅速にセットされる。
【0018】
セットされたエキスパンションジョイント1は、躯体2と躯体3が常態を保っていれば、バネ部材9の付勢でホルダ6がその自由端6bの平らな部分を接触子8へ係合させている。従って、カバー材4は両側の壁材10の間へ両壁材10と面一をなすように収まって間隙Sを閉塞している。しかながら、地震や地盤沈下等が起って、躯体2と躯体3に間隙Sが狭まる変動を生じさせるときは、接触子8がホルダ6の裏面側に傾斜して設けられた接面部7に接触して転動するため、高い方へ向かって円滑軽快に移動して、ホルダ6に押し出し力を作用させる。このためホルダ6はバネ部材9に抗して円軸17を中心に外方へ傾動して、カバー材4の自由端を壁材10よりも外方へずれ出させ、躯体2と躯体3の間隙の図5及び図6に通りの縮小する変動を支障なく行わせる。
【0019】
また、地震や地盤沈下等により躯体2と躯体3の間隙Sが広がる変動が起こるときは、接触子8はホルダ6の自由端6b側の平らな部分を端部へ向かって移動し、カバー材4が図7に示す通り両側の壁材10、10と面一の状態を保ったままで間隙Sが広がる変動に対処する。
【0020】
また、上記実施形態では、躯体2と躯体3の常態の間隙Sが、図8(a)(b)(c)(d)に示す通り異なる場合、これらの間隙Sに応じた幅にカバー材4を形成すると共に、ホルダ6の裏面に各図に示す通り、傾斜面7aと、これに連なる接面部7とを形成すれば、図8(a)に示す狭いL1の間隙Sから、図8(b)に示すL4の広い間隙Sに至るまでのエキスパンションジョイント1を構成して、躯体2と躯体3の間隙Sの変動が起こるとき、カバー材4を傾動させてこれが間隙Sを閉塞した状態のままで間隙Sの変動を行わせる作用がすべてにおいて同様に行われる。
【0021】
更に、ホルダ6の裏面に設ける傾斜面7aは、図9(a)〜(d)に示す通り、初段の傾斜面7aと2段目の傾斜面7a’の2段構造に形成すると、躯体2と躯体3の間隙Sが狭まる変動を起こす際、先ず図9(b)のように1段目の傾斜面7aへ接触子8が作用して、ホルダ6を傾動させてカバー材4の自由端を躯体3の壁材10より前側へずれ出させ、次に図9(c)のように2段目の傾斜面7a’へ接触子8が作用して、ホルダ6を更に傾動させてカバー材4の開きを拡大し、遂には図9(d)に示す状態までカバー材4を開かせることができるもので、間隙Sが特に大きい場合、傾斜面7aを更に3段以上とすることもあるが、この場合についての図面及び説明は省略する。
【0022】
図10において符号1で示すエキスパンションジョイント1は、入隅ができるように並ぶ一方の躯体2と他方の躯体3との間隙Sに設置するものであり、この実施形態は、一方の躯体2が他方の躯体3が直交する状態にあるため、躯体2へ壁材10を取付ける額縁材11と、ホルダ6と、その枢支部材5との構造が上記実施形態とは相違している。しかし、その他の部材の構造は上記実施形態のものと同じである。
【0023】
構造が相違する額縁材11は、図11(a)に示す通り、壁材10の側縁と平行する側片11aに、短い前片11bと長い後片11cとを直角に曲成して壁材10の側部へ嵌め付け、後片11で躯体2へ取り付けるものであり、この額縁材11の側片11aの中間部分には、躯体2と平行するよう立上片11eを設けて、その先端にカバー材4の背部へ曲がり込む目隠片11dを連設する。
【0024】
枢支部材5は、躯体2への取付部5aの先端から間隙S側へ張出部5bを直角に曲成した構造であり、張出部5bの先端には斜め下方へ曲がる支持片18に支持させて円軸17を設ける。
【0025】
ホルダ6は、枢支部材5の円軸17が斜め下方に向くため、これに適合するように欠円溝19を斜め向きに設けるとともに、傾斜面7aに連なる接面部7の端部を欠円溝19の周壁に接続してある。
【0026】
この実施形態も、他方の躯体3へ外側から壁材10の額縁材11と共に、接触子8の支持板24を取り付け、一方の躯体2へ壁材10の額縁材11と共に、ホルダ6でカバー材4を取り付けられた枢支部材5を取り付ければ、カバー材4で躯体2、3の間隙Sを閉塞するエキスパンションジョイント1が簡単に迅速にセットされて、躯体2と躯体3の間隙Sが変動しない常態においては、カバー材4は図10に示す通り、他方の躯体3に取付けた壁材10と面一をなして間隙Sを閉塞しているが、躯体2と躯体3とが間隙Sが狭まる変動を生ずると、図12、図13に示す通り接触子8がホルダ6の傾斜面7aに係合してホルダ6の回動を起こさせるため、カバー材4の自由端6b側は躯体3に取付けた壁材10よりも前側へずれ出して、間隙Sを図12、図13に示す通りに縮小するように変動させる。反対に躯体2と躯体3が間隙Sの広がる変動を起こすときは、図14に示す通り接触子8がホルダ6の接面部7より離れて平面部を端部へ移動するため、カバー材4は静止して躯体3に取付けた壁材10と面一を保持した状態で間隙Sの拡大する変動に対処する。
【0027】
また、この実施形態は、カバー材4とそのホルダ6に形成する傾斜面7aを、躯体2と躯体3の常態の間隙Sの寸法に合せて形成すれば、図8(a)に示すL1の狭い間隙Sから、図8(d)に示すL4の広い間隙Sに至るまでの広範囲の条件に適応して、間隙Sの変動に関係なく閉塞を維持する機能を確実に果すことができ、また、ホルダの傾斜面7aを複数段設ければ、カバー材4が傾動する範囲を拡大して、間隙Sが縮小に範囲を一層拡大できるなどの点においても上記実施形態と同様である。
【0028】
なお、本発明のエキスパンションジョイントは、上述の通り躯体2及び躯体3の壁面に生ずる間隙S用として適用しえるだけでなく、躯体2及び躯体3の天井面に生ずる間隙S用としても同様に適用して、同様の機能を発揮し得るものであること勿論である。
【0029】
【発明の効果】
一方の躯体へカバー材を傾動可能に取り付けるホルダの裏面に斜面を設け、この斜面に対応させて他方の躯体に斜面と接触する接触子を設けた構造によりカバー材の端部に傾斜を形成する必要がないので、加工を容易にすることができ、しかも、傾斜面へ接触子が接触するため、変動時の作動抵抗が小さくて部材の損傷を生ずることがなく、更に、部材の取り付けを間隙の内部へは行わず、躯体の表面へ行うので作業性がよくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】面一の壁材用のエキスパンションジョイントの常態を示す断面図。
【図2】(a)(b)は、同上の壁材に嵌める額縁材の一部分を示す斜視図。
【図3】カバー材の一部分を示す斜視図。
【図4】(a)(b)(c)(d)は、ホルダの枢支部材と、ホルダと、ホルダの接触子と、ホルダを付勢するバネ部材を示す斜視図。
【図5】同上エキスパンションジョイントの躯体の間隙が狭まった状態の断面図。
【図6】躯体の間隙が更に狭まった状態の断面図。
【図7】躯体の間隙が広がった状態の断面図。
【図8】(a)(b)(c)(d)は、本エキスパンションジョイントが広範囲の広狭間隙に適応できる状態の説明図。
【図9】(a)(b)(c)(d)はホルダの裏面に2段の斜面を形成した場合の間隙変動に対処する状態の説明図。
【図10】入隅を成す壁材用のエキスパンションジョイントの常態を示す断面図。
【図11】(a)(b)(c)は、同上の一部の変形により変わった壁材用の額縁材と、カバー材のホルダと、ホルダの枢支部材とを示す斜視図。
【図12】同上エキスパンションジョイントの躯体の間隙が狭まった状態の断面図。
【図13】躯体の間隙が更に狭まった状態の断面図。
【図14】躯体の間隙が広がった状態の断面図。
【符号の説明】
1 エキスパンションジョイント
S 間隙
2と3 躯体
4 カバー材
5 枢支部材
6 ホルダ
7 接面部
8 接触子
9 バネ部材

Claims (1)

  1. 間隙をおいて相対する躯体の間隙を覆うカバー材を、一方の躯体に設けた枢支部材へホルダを介して傾動可能に取りつけたエキスパンションジョイントにおいて、
    上記ホルダの隙間に対応する裏面側に接面部を設け、接面部の他方の躯体側には傾斜面を設け、
    この傾斜面に対応させて上記他方の躯体には、上記接面部に接触可能な接触子を取り付けるとともに、
    上記ホルダには、上記カバー材を躯体へ向かって弾圧させるようにバネ部材が係合されている
    ことを特徴とするエキスパンションジョイント。
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