JP3979611B2 - 応力測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、応力測定装置に関し、特に、半導体プロセスのデバイス検査に好適で、膜応力の測定を行う応力測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体プロセスのデバイス製作において、成膜で形成された薄膜に応力が発生する場合がある。この薄膜に発生する応力は、薄膜自体の特性に影響を与えるだけでなく、シリコン基板等の薄膜の周囲部分にも応力を発生させ、デバイス全体に影響が及ぶ場合がある。
【0003】
半導体デバイスにおいて、応力測定を必要とする構造としては、たとえばLOCOS構造やトレンチ構造のエッジ部分がある。このエッジ部分は応力集中が発生し易い構造であるため、応力に基づく影響が発生しやすい。微細化が進むにつれて、この応力は増大する傾向があり、今後更に問題となってくる。
【0004】
一般に、微小構造での応力を測定する方法として、X線回折測定や形状測定やラマン測定等が知られている。特に、半導体デバイスの微小部に発生する応力を測定するには、比較的空間分解能が高い顕微ラマンが使用されることが多い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、半導体デバイスの微細化に伴い、従来の方法では実際のデバイスの評価が困難になってきており、より空間分解能が高い応力測定装置が求められている。
そこで、本発明は微小構造の応力を、高い空間分解能で測定することができる応力測定装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
薄膜等の試料に光を照射して得られる反射光は、その波長域で試料の電子状態を反映する特徴的な分光パターンを備えている。本発明の出願人は、このパターン変化が、試料の照射点における応力に応じてシフトすることを確認した。本発明は、この応力によりシフトするパターン変化を検出することによって、試料の応力を測定するものである。
【0007】
本発明の応力測定装置の第1の態様は、試料に光を照射する照射手段と、反射光強度パターンから応力値を求める処理手段とを備える構成とする。図1は本発明の応力測定装置の第1の形態を説明するための概略図である。図1において、応力測定装置は、照射手段1から試料2の照射点Pに光を照射し、処理手段3は該照射点Pで反射した反射光を検出器4で検出し、演算装置5において検出した反射強度パターンに基づいて応力値を演算する。
【0008】
照射手段は、試料上の測定点に光を照射する手段であり、照射光は照射点において位置反射される。この反射光は、照射点における試料のバンド構造に応じた反射光強度パターンを備える。本出願人は、この反射光強度パターンは照射点で発生している応力に応じてシフトするとともに、波長シフト量と応力値との間には一定の関係があることを見い出し、この反射光強度パターンから波長シフト量を求め、波長シフトから応力値を求める。図4(a)は反射光強度パターンの波長シフトを説明するための概略図である。なお、図4(a)では反射光強度パターンを模式的に表している。波長に対する反射光強度パターンは、応力の有無に応じて例えば実線に示すパターンから破線に示すパターンに、波長がシフトする。この波長シフトのシフト量は、試料部位での応力値に対応する。
【0009】
処理手段は、測定点における反射光強度パターンを測定して、この反射光強度から波長シフト量を求め、上記関係を用いることによって波長シフト量から応力値あるいは応力対応値を求める。
【0010】
反射光強度パターンは反射光強度の波長変化であり、照射光側、又は反射光側の波長を変更し、この波長に対する反射光の強度を受光手段で検出することによって求めることができる。
【0011】
波長変更を行う第1の態様は照射光側で波長変更を行うものであり、モノクロメータで分光することによって波長変更を行い、分光された単色光を試料部位に照射する。このモノクロメータを制御することによって、照射する波長を変更することができる。
【0012】
波長変更を行う第2の態様は反射光側で波長変更を行うものであり、分光されない光を試料部位に照射し、反射光をモノクロメータで分光することによって波長変更を行う。このモノクロメータを制御することによって、検出する反射光の波長を変更することができる。
また、他の態様として、照射光側及び反射光側に偏光手段を設ける構成とし、検出信号のS/N比を高めることができる。
【0013】
また、本発明の応力測定装置の第2の形態は、試料に光を照射する照射手段と、試料上の少なくとも照射部のエネルギー状態を変調する変調手段と、反射光強度パターンから応力値を求める処理手段とを備える構成とすることができる。第2の形態の構成は、前記第1の形態の構成に加えて、試料上の少なくとも照射部のエネルギー状態を変調する変調手段を備える構成である。図2に示す応力測定装置の第2の形態は、照射手段1から試料2の照射点Pに光を照射するとともに、変調手段6は該照射点Pのエネルギー状態を変調し、処理手段3は該照射点Pで反射した反射光を検出器4で検出し、演算装置5において検出した反射強度パターンに基づいて応力値を演算する。
【0014】
変調手段は、照射部に外部から刺激を加えることによって、試料部位を励起してエネルギー状態を変化させ、これによって反射強度パターンを変化させる。これによって検出される反射スペクトルは変調による微分信号となり、バックグラウンド信号の影響を除去することができる。図4(b)は反射スペクトルの波長シフトを説明するための概略図である。なお、図4(b)では反射スペクトルを模式的に表している。反射スペクトルは、応力の有無に応じて例えば実線に示すパターンから破線に示すパターンに、波長がシフトする。この波長シフトのシフト量は、試料部位での応力値に対応する。バンド構造の臨界点では、該構造を反映した微細構造を表す信号が検出される。反射スペクトルの検出は、変調された反射光を変調手段の変調周期と同期させて検出することによって行うことができる。
【0015】
変調手段の第1の態様は、電子線を断続的にオンオフすることにより変調し、この変調電子線を照射するものである。この変調した電子線を試料部位に照射することによって試料部位でのエネルギー状態が変化し、該部位で反射する反射光強度が変化する。
【0016】
変調手段の第2の態様は、イオンビームを断続的にオンオフすることにより変調し、この変調イオンビームを照射するものである。この変調したイオンビームを試料部位に照射することによって試料部位でのエネルギー状態が変化し、該部位で反射する光の反射光強度が変化する。
【0017】
変調手段の第3の態様は、電圧制御によって試料部位に印加する電界を変調するものである。試料部位に印加する電界を変調することによって試料部位でのエネルギー状態が変化し、該部位で反射する光の反射光強度が変化する。
【0018】
変調手段の第4の態様は、試料部位に熱を変調しながら付与するものである。試料部位に付与する熱を変調することによって試料部位でのエネルギー状態が変化し、該部位で反射する光の反射光強度が変化する。
【0019】
変調手段の第5の態様は、試料部位に音波を変調しながら付与するものである。試料部位に付与する音波を変調することによって試料部位でのエネルギー状態が変化し、該部位で反射する光の反射光強度が変化する。
【0020】
したがって、前記変調手段を設けることによって、S/N比の高い反射光強度パターンの検出信号を求めることができる。
さらに、本発明の応力測定装置の第3の形態の構成は、前記第1,2の形態において、照射手段は少なくとも2つの複数の異なる波長を含む照射光を照射し、処理手段は波長間での波長差と反射光強度差に基づいて応力値を求める構成とするものである。図3に示す応力測定装置の第3の形態は、照射手段1から試料2の照射点Pに複数の異なる波長の光を照射するとともに、変調手段6は該照射点Pのエネルギー状態を変調し、処理手段3は該照射点Pで反射した反射光を検出器4で検出し、演算装置5において検出した波長毎の反射強度に基づいて応力値を演算する。
【0021】
第3の形態の構成において、波長シフトと反射光強度変化と応力との関係をあらかじめ求めておき、異なる波長で求めた反射光強度の変化とその波長差と前記関係から応力の絶対値を求めることができる。図4(c)は波長毎の反射光強度及び波長シフトを説明するための概略図である。なお、図4(c)では反射スペクトルを模式的に表している。反射スペクトルは、応力の有無に応じて例えば実線に示すパターンから破線に示すパターンに波長がシフトする。
【0022】
この反射スペクトルにおいて、異なる波長λ1,λ2の光で測定した反射光の強度を、波長シフト前の波長λ1,λ2による値をR11,R12とし、波長シフト後の波長λ1,λ2による値をR21,R22とすると、波長シフトΔλは、概略
Δλ=(λ1−λ2)・(R11−R21)/(R22−R21)
によって求めることができる。この波長シフトΔλと応力値との関係をあらかじめ求めておくことによって、応力値を求めることができる。
【0023】
また、第3の形態は、1つの試料部位において波長λ1,λ2の2つの波長での測定で求めることができる。したがって、試料部位に照射する波長の個数を減少させることができ、短時間で応力測定を行うことができる。
【0024】
この第3の形態の構成では、複数の波長から特定の波長の同定を行う。波長を同定する第1の態様は、照射光側で波長同定を行うものであり、照射側に複数の波長を照射する複数光源を備え、該光源を切り替えることによって波長同定を行う。
【0025】
波長を同定する第2の態様は、反射光側で波長同定を行うものであり、試料部位に入射する複数光から得られる反射光を、フィルターあるいは回折格子で分離して波長同定を行う。
【0026】
波長を同定する第3の態様は、照射光側及び反射光側で波長同定を行うものであり、試料部位に入射光を時分割で入射し、反射光を前記時分割に同期することによって波長同定を行う。
【0027】
また、波長を同定する第4の態様は、照射光側及び反射光側で波長同定を行うものであり、複数の入射光を同一試料部位に異なる入射角度で照射し、該反射光を異なる反射角度で検出することによって波長同定を行う。
さらに、本発明の応力測定装置の第1,2,3の各形態において、照射光と反射光と電子線を同一軸上とする構成とすることができる。
【0028】
本発明によれば、照射光のスポット径を小さくしたり、変調手段による変調領域を絞ることによって、微小部分の応力測定が可能となる。
また、本発明の測定装置は、薄膜等の試料における分光パターンの変化が応力によって生ずるものとし、この応力の測定を行うものであるが、試料の分光パターンは応力に限らず結晶欠陥を含む結晶特性によっても変化する。したがって、本発明の測定装置は、結晶特性等の試料の分光パターンを変化させる試料の内部状態の測定に適用することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の応力測定装置の第1,2,3の実施の形態を図を参照しながら詳細に説明する。図5〜図10は本発明の第1,2の形態を説明するための図であり、図11〜図16は本発明の第3の形態を説明するための図である。
【0030】
はじめに、本発明の第1,2の形態について説明する。なお、第1の形態は第2の形態から変調手段を除いた構成であり、反射光強度パターンを反射光強度で測定するか、反射光強度の微分値で測定するかの点で相違するが、ほぼ同様に構成とすることができるため、ここでは、第2の形態を用いて説明する。
【0031】
図5は本発明の第1の構成例を説明するための概略ブロック図であり、第1,2の形態に対応し、照射光側のモノクロメータで分光することによって波長変更を行う構成例である。図5において、照射光側は、複数の波長を有する光源11の光をモノクロメータ12によって単色光とし、光ファイバーやレンズ系の光学系13を介して、ステージ7上に配置した試料2の照射点Pに照射する。照射点Pで反射した反射光はフォトダイオードやフォトマルチプライヤ等の光検出器41で検出される。また、照射点Pあるいはその近傍には、電子線源61から電子線が照射される。ブランキングユニット62は、信号発生器63からブランキング信号を受けて、試料の照射点Pに対して電子線を間欠的に照射し、照射点Pの電子状態を変調する。
【0032】
光検出器41は、変調を行わない場合には反射光の強度のみを検出する。また、変調を行う場合には、反射光の強度、及び変調による反射光の強度変化の微分値を検出する。
【0033】
光検出器41の検出信号は、プリアンプ51で信号増幅した後、デジタルマルチメータ52で反射光強度Rを求め、ロックインアンプ53で反射光の強度変化の微分値ΔRを求める。なお、ロックインアンプ53は、信号発生器63から信号を受けて、電子線のブランキングとの同期をとる。演算器54は、反射光強度Rと微分値ΔRを入力して反射光スペクトルを求め、波長シフト及び応力を演算する。なお、反射光スペクトルの測定における波長変更では、モノクロメータ12を制御することによって試料2への照射光の波長を変更する。
【0034】
また、照射光のスポット径を小さくしたり、電子線による変調領域を絞ることによって、微小部分の応力測定が可能となる。
また、変調手段として、電子線を用いる場合には、試料2を真空装置8によって真空状態としている。
【0035】
次に、第1,2の形態において、波長シフトを求める2つの処理について、図6,7を用いて説明する。
図6は波長シフトを求める第1の処理を説明するための概略図である。この第1の方法は、試料上において、測定点毎に、分光等によって照射光の波長を変更しながら反射光の強度を測定して反射光スペクトルを求め、求めた反射光スペクトルを比較して波長シフトを求めるものである。たとえば、図6(a)中の点Aと点Bの応力状態が異なる場合、各点で求めた反射光スペクトル間には、図6(b)中の実線及び破線で示すような波長シフトΔλが生じる。この波長シフトΔλは、両測定点での応力の差に対応することになる。したがって、試料2を走査しながら、各点の反射光スペクトルを求めることによって、試料2の応力状態を求めることができる。なお、ここで求めた応力値は、相対的な値となる。
【0036】
図7は波長シフトを求める第2の処理を説明するための概略図である。第2の方法は、特定の波長の光によって測定点での反射光強度を求め、求めた反射光強度と基準の反射光強度との差から波長シフトを推定するものである。
【0037】
たとえば、図7(a)中の点Cにおいて波長λ0の光での反射光強度R0を求め、図7(b)に示すように、基準値Rとの差ΔRを求める。なお、基準値Rは任意の点での反射光強度とすることができる。この反射光強度の差は波長シフト量と一定の関係にあり、反射光強度の差から波長シフト量を推定することができる。例えば、図7(c)において、波長シフトがΔλ1である場合には反射光強度の差はΔR1となり、また、波長シフトがΔλ2である場合には反射光強度の差はΔR2となる。したがって、反射光強度の差ΔRを求めることによって、波長シフト量Δλを推定することができる。なお、ここで求めた応力値は、相対的な値となる。
【0038】
以下、図8〜図10を用いて本発明の第1,2の形態に対応する第2〜4の構成例について説明する。
図8は本発明の第2の構成例を説明するための概略ブロック図であり、反射光側のモノクロメータで分光することによって波長変更を行う構成例である。図8において、照射光側は、複数の波長を有する光源11の光を光ファイバーやレンズ系の光学系13を介して、ステージ7上に配置した試料2の照射点Pに照射する。また、検出側では、照射点Pで反射した反射光をモノクロメータ42で分光し、分光波長に応じて配置されたフォトダイオードやフォトマルチプライヤ等の光検出器41で検出する。モノクロメータ42で分光することによって、第1の構成例と同様に、反射光スペクトルの測定における波長変更を行う。
なお、変調手段や処理手段の構成及び処理動作は、第1の構成と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0039】
図9は本発明の第3の構成例を説明するための概略ブロック図であり、照射光側及び反射光側に偏光板14,44を配置することによって特定の反射光を用いる構成例である。図9において、照射光側は、複数の波長を有する光源11の光を光ファイバーやレンズ系の光学系13を介し、さらに偏光板14を通して偏光した照射光を、ステージ7上に配置した試料2の照射点Pに照射する。また、検出側では、照射点Pで反射した反射光を偏光板44を通して特定の偏光された反射光を抽出し、フォトダイオードやフォトマルチプライヤ等の光検出器41で検出する。なお、変調手段や処理手段の構成及び処理動作は、第1の構成と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0040】
図10は本発明の第4の構成例を説明するための概略ブロック図であり、照射光,反射光,及び電子線を同一軸上とする構成例である。図10において、照射光側は、複数の波長を有する光源11の光をモノクロメータ12によって単色光とし、光ファイバーやレンズ系の光学系13及び光学系15を介して、ステージ7上に配置した試料2の照射点Pに対して電子線と同軸上で照射を行う。また、検出側では、照射点Pで反射した電子線と同軸上の反射光を、光学系45を介してフォトダイオードやフォトマルチプライヤ等の光検出器41で検出する。
【0041】
光学系15,45を配置することによって、照射光,反射光,及び電子線を同一軸上とする構成とすることができ、この構成とすることによって、光の照射点,光の反射点,及び電子線の照射点を試料上の測定点に集中させ、微小領域の測定を行うことができる。
【0042】
なお、変調手段や処理手段の構成及び処理動作は、第1の構成と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
次に、本発明の第3の形態について説明する。第3の形態は第1,2の形態において、照射手段から少なくとも2つの複数の異なる波長を含む照射光を照射し、処理手段において、前記波長間での波長差と反射光強度差に基づいて応力値を求めるものである。
【0043】
図11は本発明の第5の構成例を説明するための概略ブロック図であり、第3の形態に対応し、照射光側から波長λ1と波長λ2の波長が異なる照射光を切り換えて照射し、各波長の照射光による反射光強度を測定する構成例である。図11において、照射光側は、波長λ1と波長λ2の光源15、16と、該各波長光を切り換えて照射する切り換え器17を備え、光ファイバーやレンズ系の光学系13を介して、ステージ7上に配置した試料2の照射点Pに照射する。照射点Pで反射した反射光はフォトダイオードやフォトマルチプライヤ等の光検出器41で検出される。
【0044】
変調手段による変調、及び検出信号の処理の流れは、前記した構成例とほぼ同様であり、照射手段1から試料の照射点に複数の異なる波長の光を照射するとともに、変調手段6によって該照射点のエネルギー状態を変調させ、処理手段は照射点で反射した反射光を検出器4検出し、演算装置5おいて検出した波長毎の反射強度に基づいて応力値を演算する。
【0045】
以下、第3の形態において、波長シフトを求める処理について図12,13を用いて説明し、共通する部分については説明を省略する。なお、図12は波長シフトを求める処理を説明するための概略図であり、図13はその拡大図である。
【0046】
第3の形態の構成において、波長シフトと反射光強度変化と応力との関係をあらかじめ求めておく。
図12は応力がない場合の反射スペクトル(図中の実線)と応力がある場合の反射スペクトル(図中の破線)を模式的に示している。反射スペクトルは、応力の有無に応じて実線に示すパターンから破線に示すパターンに波長がシフトする。
【0047】
この反射スペクトルにおいて、異なる波長λ1,λ2の光による反射光の強度は、波長シフト前の波長λ1,λ2ではR11,R12となり、波長シフト後の波長λ1,λ2ではR21,R22となる。ここで、応力がない場合を波長シフト前として、このときの波長λ1,λ2での反射光強度R11,R12をあらかじめ求めておくことができる。
【0048】
図13の拡大図において、図中の実線で示す応力がない場合の反射スペクトルについて波長λ1,λ2での反射光強度は、図中の丸印で示すように、R11,R12である。この反射スペクトルに対して波長がΔλだけシフトすると、図中の破線で示す反射スペクトルとなり、波長λ1,λ2での反射光強度は、図中の三角印で示すように、R21,R22である。
【0049】
波長λ1とλ2の波長差に対して反射光強度の差は(R22−R21)であり、また、波長シフトΔλに対する反射光強度の差は(R11−R21)である関係にある。したがって、波長シフトΔλは、
Δλ=(λ1−λ2)・(R11−R21)/(R22−R21) …(1)によって求めることができる。ここで、R11の値をあらかじめ求めておき、また波長シフトΔλと応力値との関係をあらかじめ求めておくことによって、応力値を求めることができる。
【0050】
この形態では、1つの試料部位において波長λ1,λ2の2つの波長での測定で求めることができるため、試料部位に照射する波長の個数を減少させることができ、短時間で応力測定を行うことができる。
【0051】
以下、図14〜図16を用いて本発明の第3の形態に対応する第6〜8の構成例について説明する。
図14は本発明の第6の構成例を説明するための概略ブロック図であり、照射側から複数の波長の照射光を照射し、反射光側のフィルタや回折格子で特定波長のみを分離する構成例である。図14において、照射光側は、複数の波長(波長λ1,λ2)を有する光源11の光を光ファイバーやレンズ系の光学系13を介して、ステージ7上に配置した試料2の照射点Pに照射する。また、検出側では、照射点Pで反射した反射光をフィルタや回折格子46で波長分離し、フォトダイオードやフォトマルチプライヤ等の光検出器41で検出し、前記式(1)等の関係式に基づいて波長シフト、及び応力を求める。
なお、変調手段や処理手段の構成及び処理動作は、第5の構成と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0052】
図15は本発明の第7の構成例を説明するための概略ブロック図であり、照射側から複数の波長の照射光を時分割器18で時分割して照射し、反射光側において、検出信号を前記時分割に対応して処理する構成例である。図15において、照射光側は、複数の波長を有する光源11の光を時分割で波長を切り換えながら光ファイバーやレンズ系の光学系13を介して、ステージ7上に配置した試料2の照射点Pに照射する。また、検出側では、照射点Pで反射した反射光をフォトダイオードやフォトマルチプライヤ等の光検出器41で検出し、時分割の時間に基づいて、反射光強度と照射光の波長との対応を求め、前記式(1)等の関係式に基づいて波長シフト、及び応力を求める。
なお、変調手段や処理手段の構成及び処理動作は、第5の構成と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0053】
図16は本発明の第8の構成例を説明するための概略ブロック図であり、複数の入射光を同一試料部位に異なる入射角度で照射し、該反射光を異なる反射角度で検出することによって波長の同定を行う構成例である。図16において、照射光側は、複数の波長を有する光源11の光を、たとえば異なる位置に配置した光ファイバーやレンズ系の光学系13a,13bを介して、ステージ7上に配置した試料2の照射点Pに照射する。また、検出側では、照射点Pで反射した反射光を、光学系13の各入射角度に対応する角度位置に配置したフォトダイオードやフォトマルチプライヤ等の光検出器41a,42bで検出し、入射角及び反射角の関係から、反射光強度と照射光の波長との対応を求め、前記式(1)等の関係式に基づいて波長シフト、及び応力を求める。
なお、変調手段や処理手段の構成及び処理動作は、第5の構成と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0054】
前記構成例では、変調手段として電子線を用いた例を示しているが、その他にイオンビーム、電界、光、熱、音波等の試料部位の電子エネルギー状態を変化させる物理的刺激を用いることができる。図17〜図19は変調手段の他の構成例を説明するための図である。
【0055】
図17は変調手段として電界を用いる構成例である。試料2に電界を印加する構成として、電極64を試料部位に接近させて配置し、電源65によって電極64に電圧を印加して、電極64とステージ7との間に電界を形成する。これによって、試料部位に電界を印加する。
【0056】
図18は変調手段として光あるいは熱を用いる構成例である。試料2に光あるいは熱を与える構成としてレーザー光源66を用い、このレーザー光による光の刺激あるいはレーザー光による熱の刺激を与える。
図19は変調手段として音波を用いる構成例である。試料2に音波を与える構成として超音波振動子67及びその駆動源68を用い、超音波振動子67による振動を試料部位に伝えて音波の刺激を与える。なお、音波を試料部位に伝達するために、試料表面に液体を付着させ、該液体に超音波振動子67を接触させる構成とすることができる。
【0057】
なお、前記した本発明の各形態例及び構成例では、薄膜等の試料に生じる分光パターンの変化の測定によって応力測定を行っているが、応力に限らず、試料の分光パターンを変化させるものであれば同様に適用可能であり、結晶欠陥を含む結晶特性などの、試料の内部状態の測定に適用することもできる。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の応力測定装置によれば、微小構造の応力を、高い空間分解能で測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の応力測定装置の第1の形態を説明するための概略図である。
【図2】本発明の応力測定装置の第2の形態を説明するための概略図である。
【図3】本発明の応力測定装置の第3の形態を説明するための概略図である。
【図4】反射スペクトルの波長シフトを説明するための概略図である。
【図5】本発明の第1の構成例を説明するための概略ブロック図である。
【図6】本発明の波長シフトを求める第1の処理を説明するための概略図である。
【図7】本発明の波長シフトを求める第2の処理を説明するための概略図である。
【図8】本発明の第2の構成例を説明するための概略ブロック図である。
【図9】本発明の第3の構成例を説明するための概略ブロック図である。
【図10】本発明の第4の構成例を説明するための概略ブロック図である。
【図11】本発明の第5の構成例を説明するための概略ブロック図である。
【図12】本発明の波長シフトを求める処理を説明するための概略図である。
【図13】本発明の波長シフトを求める処理を説明するための概略拡大図である。
【図14】本発明の第6の構成例を説明するための概略ブロック図である。
【図15】本発明の第7の構成例を説明するための概略ブロック図である。
【図16】本発明の第8の構成例を説明するための概略ブロック図である。
【図17】本発明の電界による変調手段を説明するための概略ブロック図である。
【図18】本発明の光,熱による変調手段を説明するための概略ブロック図である。
【図19】本発明の音波による変調手段を説明するための概略ブロック図である。
【符号の説明】
1…照射手段、2…試料、3…処理手段、4…検出器、5…演算装置、6…変調手段、7…ステージ、8…真空装置、11,15,16…光源、12,42…モノクロメータ、13,15,45…光学系、14,44…偏光板、17…切り換え器、18…時分割器、41…光検出器、46…フィルタ、51…プリアンプ、52…デジタルマルチメータ、53…ロックインアンプ、54…演算器、61…電子線源、62…ビームブランキングユニット、63…信号発生器、64…電極、65…電源、66…レーザー源、67…超音波振動子、68…駆動源。
Claims (2)
- 試料に光を照射する照射手段と、
試料上において、少なくとも前記照射手段により光照射される照射点を励起してエネルギー状態を変調させ、当該照射点のおける反射光の反射光強度パターンをS/N比の高い反射光強度パターンに変化させる変調手段と、
前記照射点で反射された反射光を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出信号を用いて、反射光の反射光強度パターンから応力変化に伴う波長シフト量Δλを求め、当該波長シフト量Δλから試料に印加される応力値を求める処理手段とを備える、応力測定装置。 - 前記照射手段は少なくとも2つの異なる波長λ1とλ2を含む照射光を照射し、
前記処理手段は波長λ1と波長λ2間の波長差(λ1−λ2)と、波長差による反射光強度の差R(λ1,λ2)と、波長シフト量Δλに対する反射光強度の差R(Δλ)から、
(λ1−λ2)・R(Δλ)/R(λ1,λ2)
の演算によって波長シフト量Δλを求め、
予め求めておいた波長シフト量Δλと応力値の関係と前記求めた波長シフト量Δλとから応力値を求める、請求項1に記載の応力測定装置。
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