JP3979193B2 - 受波器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水中で超音波信号を検出する受波器に関し、特に小型軽量化と広周波数帯域における指向性を改善する受波器に関する。
【0002】
【従来の技術】
図6は、従来の受波器の縦断面図である。従来の受波器は、受波素子14、平面バッフル25、モールド材34、吸音材42、電子回路62を含んで構成されている。受波素子14が、平面バッフル25から距離Dr(受波素子距離)をおいて縦軸204上に配置されている。
【0003】
この種の受波器では、受波素子14の取付面が超音波信号の音波反射板となり、この音波反射板によって生じた反射波により前方(0度<θ<90度)から横方向(θ=90度)の感度が均一にならず指向性に大きな感度偏差が生じるため、反射波を低減することが重要な要素の一つとなっている。
【0004】
この目的のために、通常、受波素子14の取付面に吸音材42を備え、反射波を低減することにより前方から横方向の感度を均一にし、指向性の偏差を押さえるという手法が採用されている。
【0005】
しかしながら、この手法では、吸音材42の特性に頼ることとなる。代表的な吸音材の方式としては、楔による乱反射で減衰させる方法や、水に近いインピーダンスの材料に添加物や微小空隙を含みこれらが透過中の音波により機械振動し音波を熱に変換させる方法等がある。しかし、前者は使用する周波数の波長に適合した大きさが必要で非常に大きくなり、低周波数帯域で使用する場合に小型軽量化ができない。また後者は特定の周波数では良い吸音効果があるもののその他の周波数帯域ではほとんど効果がなくなるため、広周波数帯域の指向性改善に関し十分とは言えない。
【0006】
そこで、例えば水に近いインピーダンスの材料に添加物や微小空隙を含ませ、添加物や微小空隙が透過中の音波により機械振動し音波を熱に変換させる方法の吸音材では、数種の周波数に対応した吸音材を積層構造にして広周波数帯域化及び吸音率の向上をすることが可能である。
【0007】
この技術は、吸音材内部の添加物の共振特性を利用しているので、特に空隙などの低インピーダンスの添加物の場合は、吸音材の厚みを小さくできる。また、対応する吸音周波数を変えた吸音材のシートを積層構造にすればある程度の広周波数帯域化についても一応の効果を奏している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、水に近いインピーダンスの材料に添加物や微小空隙を含ませ、添加物や微小空隙が透過中の音波により機械振動し音波を熱に変換させる方法の吸音材は、更なる広周波数帯域化の点において新たに積層数増加による大型化という問題をもたらしている。これは、使用する周波数帯域に応じて適合する吸音材のシートを用意しそれらを全て積層するからである。
【0009】
しかも、受波器への適応を考えてみると、吸音材シートの種類増加のために、吸音材がかなり高価になり、受波器が高価になるという問題を発生する。
【0010】
本発明の主な目的の一つは、広周波数帯域で広範囲の超音波信号を受信できるようにした小型軽量な受波器を提供することにある。
【0011】
本発明の主な他の目的は、広周波数帯域で広範囲の超音波信号を受信できるようにした安価な受波器を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の受波器は、180度の半球面でなる音波反射板と受波素子とを備える受波器であって、前記受波素子の取付面を前記受波素子側に凸な前記半球面とし、前記受波素子が前記半球面の中央部分から所定の距離をおいて配置されることを特徴とする。
【0016】
本発明の受波器は、水中で超音波信号を検出する受波器であって、前記超音波信号を反射する半球面でなる音波反射板と受波素子とを備え、前記受波素子の取付面を前記受波素子側に凸な前記半球面とし、前記受波素子が前記半球面の中央部分から所定の距離をおいて配置され、前記受波素子の指向性が自由音場で無指向性であり、前記所定の距離をDr、前記半球面の直径をDbとするとき、Dr/Db<1.2を満足するように配置することを特徴とする。
【0017】
本発明の受波器は、前記受波素子の周囲に、複数の前記音波反射板が配置されることを特徴とする。
【0018】
本発明の受波器は、2個の前記音波反射板が、前記受波素子の周囲に対向して配置されることを特徴とする。
【0019】
本発明の受波器は、前記受波素子と前記音波反射板との間に、吸音材が存在することを特徴とする。
【0020】
本発明の受波器は、前記音波反射板の内部が、中空であることを特徴とする。
【0021】
本発明の受波器は、前記音波反射板の直径が、超音波の波長の長さ以上であることを特徴とする。
【0022】
本発明の受波器は、前記受波素子が、前記中央部分から半径方向に配置されることを特徴とする。
【0023】
本発明の受波器は、前記受波素子が、前記音波反射板にモールド材で固定されることを特徴とする。
【0024】
本発明の受波器は、前記モールド材が、水と等価な音響インピーダンスを有する材料又はウレタンであることを特徴とする。
【0025】
本発明の受波器は、前記受波素子の指向性が、無指向性であることを特徴とする。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明による半球面バッフル21を有する受波器(図1)は、水中で超音波信号を検出する受波器において、受波素子11の取付面となる平面状の平面バッフル25からの反射波の影響をなくすため、受波素子14と平面バッフル25との間に吸音材42を設けるという従来の構成(図6)に対し、吸音材42をなくし、自由音場で無指向性の受波素子11に直径が約1波長以上の半球面バッフル21を音波を反射する音波反射板として設けたものである。
【0027】
本発明の上記および他の目的、特徴および利点を明確にすべく、図6に示す従来の受波器の縦断面図などの図面を参照しながら、本発明の実施形態を以下に詳述する。
【0028】
《第1の実施形態》図1は、本発明の第1の実施形態の受波器の縦断面図である。本発明の第1の実施形態の受波器は、受波素子11、180度の半球面に連接する円筒を含み音波を反射する音波反射板となる半球面バッフル21、モールド材31、電子回路61を含んで構成される。
【0029】
球殻の圧電セラミックなどで形成される自由音場で無指向性の受波素子11は、金属製半球殻で形成した中空の半球面バッフル21の中心点101の真正面(θ=0度)の方向(半径方向)に音響インピーダンスが水と等価なウレタンなどのモールド材31でモールドし固定する。受波素子11の信号リード線は、モールド材31内を通過し、金属製半球殻を貫通して半球面バッフル21を兼ねる水密容器内に配置するプリアンプなどの電子回路61に接続する。中心点101、受波素子11は、縦軸201上に配列される構造である。
【0030】
そして、半球面バッフル21の直径Db(バッフル直径)を1波長以上とし、受波素子11と半球面バッフル21との距離をDr(受波素子距離)としたとき、Dr/Db<1.2としている。
【0031】
半球面バッフル21は、受波素子11を取り付ける側を前方(0度<θ<90度)としたとき、半球面バッフル21のない前方から横方向(θ=90度)にかけて水中を伝搬してくる超音波信号の直接波51に関しては、半球面バッフル21で反射する反射波52が前方から横方向にかけて概ね均等に再放射する。従って、半球面バッフル21前方の受波素子11で直接波51と加算された受波信号は前方から横方向にかけて概ね一定の感度となる。
【0032】
一方、半球面バッフル21のある後方(90度<θ<180度)からの超音波信号は半球面バッフル21の直径が1波長以上あるため回折による音波の透過波は横方向から後方にかけて徐々に小さくなり、真後ろ(θ=180度)ではバッフルの陰になるため透過波は極小となる。従って、半球面バッフル前方の受波素子11で直接波51と加算された受波信号は横方向から後方にかけて徐々に低下し、真後ろでは極小の感度になる。このため半球面バッフル21の直径より短い波長の周波数範囲でカージオイド(Cardioid:ハート形曲線)指向性が得られる。
【0033】
また、図6を参照すると、従来の構成で吸音材42を無しとした場合、受波素子14と平面バッフル25との距離をDr(受波素子距離)、平面バッフル25の直径をDb(バッフル直径)としたときDr/Db≧1.2とすると受波素子14と平面バッフル25との距離Drが大きくなるため反射波の影響が小さくなり、半球面バッフル21を使用した効果との差が小さくなると共に受波器が大型化するので、図1に示す受波素子11と半球面バッフル21との距離Drは、Dr/Db<1.2としている。
【0034】
また、バッフルの形状を半球面とした結果として、任意の周波数に対し前方から横方向にかけての反射波52が概ね均等に再放射するので広周波数帯域でカージオイド指向性が得られる。
【0035】
このことを実施例の実測値図2、3および図7、8を用いて説明する。これら図2、3、7、8はそれぞれ真正面(θ=0度)から横方向(θ=90度)の範囲の感度偏差、すなわち指向性のなめらかさを示している。図2、3が本発明の第1の実施形態(図1)による特性値、図7、8が従来の受波器(図6)で吸音材42がないときの特性値であり、図2、7は周波数特性、図3、8は受波素子とバッフル間距離特性である。周波数特性は、波長λをバッフル直径Dbで規準化した規準化周波数に対し受波素子とバッフル間との受波素子距離Drをバッフル直径Dbで規準化した規準化距離を変数として表したグラフであり、距離特性は、規準化距離に対し規準化周波数を変数として表したグラフである。
【0036】
本発明による第1の実施形態の周波数特性(図2)は、規準化距離が0.14すなわち受波素子とバッフルがほぼ接触する距離の場合を除き、規準化周波数1すなわちバッフル直径Dbが1波長以上となる周波数帯域で感度偏差が約8dB以下に押さえられている。一方、従来の受波器(図6)の周波数特性(図7)の場合は、規準化距離が1.17すなわち受波素子14と平面バッフル25間の受波素子距離Drが大きく離れた場合を除き、規準化周波数1以上となる周波数帯域で感度偏差が約8dB以上になる。
【0037】
また、本発明による第1の実施形態(図1)の距離特性(図3)は、従来の受波器(図6)の距離特性(図8)と比較すると、規準化距離が0.14すなわち受波素子とバッフルがほぼ接触する距離の場合を含め規準化距離1.2以内で感度偏差が10dB以上改善されている。図3のデータは、基準化距離0.1〜0.6の範囲であるが、右下がりで減少する傾向が得られており、さらに受波素子距離Drがより大きくなる基準化距離0.6〜1.2の範囲では反射波の影響はさらに小さくなるのは明らかで、基準化距離1.2ではさらに感度偏差が小さくなる。従って、本発明の半球面バッフル21を有する受波器はバッフル直径Dbが1波長以上となる周波数範囲で指向性が格段に改善されていることが分かる。
【0038】
しかも、第1の実施形態では、広周波数範囲での指向性改善に関して、吸音材無しで、かつ受波素子11と半球面バッフル21間の受波素子距離Drを極めて小さくできるので、小型軽量かつ低価格化が可能という効果が得られる。
【0039】
《第2の実施形態》図4は、本発明の第2の実施形態の受波器の縦断面図である。第2の実施形態の受波器は、受波素子12、半球面バッフル22、23、モールド材32を含んで構成される。これまでに説明した、第1の実施形態との相違点は、半球面バッフル22の中心点102からθ=0度方向の位置に半球面バッフル23を追加しており、中心点102と中心点103とが受波素子12を挟んで対向している配置である。中心点102、受波素子12、中心点103が、縦軸202上に並んでいる。つまり、2個の音波反射板(半球面バッフル22、23)が、受波素子12の周囲に対向して配置されている。
【0040】
このように2個の半球面バッフル22、23を採用することによって、電子回路等が実装される装置本体以外の特定の方向(つまり、半球面バッフル23がある方向)について感度を押さえることができるという効果を奏する。
【0041】
第2の実施形態では、半球面バッフルを2個以上使用しているが2個に限定することなく2個以上の半球面バッフルを、受波素子12の周囲に配置することも可能である。
【0042】
また、第2の実施形態では、受波素子アレイなど特別な受波素子構成や指向性合成などの信号処理を必要とせずに特定の方向について感度を押さえることができるので、本発明の目的が達成されることは勿論、海面残響などの不要なノイズを低減できるという相乗的(格別)な効果を奏する。
【0043】
《第3の実施形態》図5は、本発明の第3の実施形態の受波器の縦断面図である。第3の実施形態の受波器は、受波素子13、半球面バッフル24、モールド材33、吸音材41を含んで構成される。これまでに説明した、第1の実施形態との相違点は、モールド材33と半球面バッフル24との間に、吸音材41を追加していることであり、中心点104と受波素子13が縦軸203上に並んでいる。このように、吸音材41を追加する構成を採用することによって、感度偏差を更に改善しているのが特徴である。本実施例では吸音材41の性能が低くても、既に半球面バッフル24の効果で感度偏差が小さくなっているので有効となる。
【0044】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施形態は適宜変更され得ることは明らかである。例えば、各実施形態における音波を反射する音波反射板となる半球面バッフル21、22、23、24で説明した半球面は、曲面の一部である部分曲面、楕円面の一部である部分楕円面、球面の一部である部分球面に置き換えることが可能である。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、自由音場で無指向性の受波素子に直径が約1波長以上の半球面バッフルを音波反射板として設けたもので、受波素子と半球面バッフルとの距離をDr、半球面バッフルの直径をDbとしたときDr/Db<1.2とするという基本構成に基づき装置本体の電子回路や電源、動力源などから発生する自己ノイズを遮断するという従来の受波器のバッフルの効果を保ちながら、広周波数帯域で広範囲の超音波信号を受信できるようになると共に、吸音材や、指向性合成のための受波素子アレイ及び信号処理回路などが不要となるので小型軽量かつ低価格化を実現するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態の受波器の縦断面図である。
【図2】本発明の受波器の周波数特性である。
【図3】本発明の受波器の距離特性である。
【図4】本発明の第2の実施形態の受波器の縦断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態の受波器の縦断面図である。
【図6】従来の受波器の縦断面図である。
【図7】従来の受波器の周波数特性である。
【図8】従来の受波器の距離特性である。
【符号の説明】
11、12、13、14 受波素子
21、22、23、24 半球面バッフル
25 平面バッフル
31、32、33、34 モールド材
41、42 吸音材
51 直接波
52 反射波
61、62 電子回路
101、102、103、104 中心点
201、202、203、204 縦軸
Claims (11)
- 180度の半球面でなる音波反射板と受波素子とを備える受波器であって、
前記受波素子の取付面を前記受波素子側に凸な前記半球面とし、前記受波素子が前記半球面の中央部分から所定の距離をおいて配置されることを特徴とする受波器。 - 水中で超音波信号を検出する受波器であって、
前記超音波信号を反射する半球面でなる音波反射板と受波素子とを備え、
前記受波素子の取付面を前記受波素子側に凸な前記半球面とし、
前記受波素子が前記半球面の中央部分から所定の距離をおいて配置され、前記受波素子の指向性が自由音場で無指向性であり、
前記所定の距離をDr、前記半球面の直径をDbとするとき、Dr/Db<1.2を満足するように配置することを特徴とする受波器。 - 前記受波素子の周囲に、複数の前記音波反射板が配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の受波器。
- 2個の前記音波反射板が、
前記受波素子の周囲に対向して配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の受波器。 - 前記受波素子と前記音波反射板との間に、吸音材が存在することを特徴とする請求項1または2に記載の受波器。
- 前記音波反射板の内部が、
中空であることを特徴とする請求項1または2に記載の受波器。 - 前記音波反射板の直径が、
超音波の波長の長さ以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の受波器。 - 前記受波素子が、前記中央部分から半径方向に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の受波器。
- 前記受波素子が、前記音波反射板にモールド材で固定されることを特徴とする請求項1または2に記載の受波器。
- 前記モールド材が、水と等価な音響インピーダンスを有する材料又はウレタンであることを特徴とする請求項9に記載の受波器。
- 前記受波素子の指向性が、無指向性であることを特徴とする請求項1に記載の受波器。
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