JP3978540B2 - 段階的駆動力伝達装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形金型に設置されることにより、エジェクタプレートの早戻し装置やエジェクタピンの二段突出し装置として機能する段階的駆動力伝達装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の段階的駆動力伝達装置としては、円筒状に形成され、先端部の周壁に内外方向に貫通する案内孔を有するた中空ロッド(スリーブ)と、この中空ロッドの上記案内孔に内外方向に移動自在に設けられ、上記中空ロッドの周壁の厚さより大径の球状カム(ボール)と、上記中空ロッドの外周面に嵌合する内周面を有するブッシュと、上記中空ロッドの内周面に嵌合する外周面を有するプッシュピン(プッシャピン)とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
上記ブッシュは、中空ロッドの先端側から嵌合されるようになっており、その内周面によって、球状カムを中空ロッドの内周面から内方に突出させるようになっている。一方、プッシュピンは、中空ロッド内に先端側から挿入されるようになっており、その外周面によって、球状カムを中空ロッドの外周面から外方に突出させるようになっている。
さらに、ブッシュには、中空ロッドに嵌合された際に当該中空ロッドの基端部と同一の側に位置する基端部、すなわち中空ロッドの先端側から嵌合を開始する一方の端部である基端部に、プッシュピンによって外方に突出された球状カムの突出部を収容する凹部が形成されている。
【0004】
上記のように構成された段階的駆動力伝達装置は、中空ロッド、ブッシュおよび球状カムが射出成形機における成形金型の可動型に設置され、プッシュピンが同成形金型の固定型に設置されることにより、エジェクタプレートの早戻し装置として機能するようになっている。
【0005】
すなわち、上記中空ロッドは、その基端部が可動型におけるエジェクタプレートに連結されることにより、当該エジェクタプレートによって軸方向に駆動されることになる。ブッシュは、可動型における固定型側に寄った位置に、基端部をエジェクタプレート側に向けた状態で固定されることにより、エジェクタプレートによって駆動される中空ロッドの先端部を受け入れることになる。プッシュピンは、基端部が固定型に固定されることにより、先端側の部分が当該固定型から可動型側に突出して、型閉じの際にブッシュを介して中空ロッド内に挿入されることになる。
【0006】
上記のように、エジェクタプレートの早戻し装置として機能すべく設置された段階的駆動力伝達装置においては、固定型と可動型とが所定量離れて対置する型開状態において、プッシュピンが中空ロッドおよびブッシュから完全に抜け出した状態になっている。この状態で、射出成形機のエジェクタロッドが前進し、これによりエジェクタプレートが突出方向に移動すると、中空ロッドの先端部がブッシュ内の先端側に移動することになる。
【0007】
すなわち、プッシュピンが上述のように中空ロッド内に存在していないので、球状カムが中空ロッドの内方に移動することが可能になり、中空ロッドはエジェクタプレートに駆動されてブッシュ内の先端側にスムーズに移動することができる。また、エジェクタプレートに連結されたエジェクタピンも、可動型から固定型側に突き出して、可動型の成形面に付着した成形品を当該成形面から分離することができる。
【0008】
次ぎに、射出成形機のエジェクタロッドを後退させると、通常は可動型に内蔵されたリターンスプリングによって、エジェクタプレートが突出前の戻し位置に自動的に戻ることになる。このため、中空ロッドは、その先端部がブッシュの基端側に移動し、球状カムを有する部分がブッシュの凹部に対応する位置に移動した状態となる。
【0009】
一方、可動型を固定型に向けて移動する型閉じを行うと、プッシュピンがブッシュを通して中空ロッド内に進入してくる。この場合、中空ロッドの球状カムを有する部分がブッシュの凹部に対応する位置まで移動していることから、プッシュピンは、球状カムを中空ロッドの外側に押し出して、当該中空ロッド内に容易に進入することができる。
【0010】
このように、エジェクタプレートがリターンスプリングによって即座に戻っている場合には、段階的駆動力伝達装置がエジェクタプレートの早戻し装置として機能することがない。
しかし、上記リターンスプリングに例えば折損やへたり等が生じた場合には、エジェクタプレートが戻らなくなったり、その戻りが遅くなったりすることがある。
【0011】
この場合には、中空ロッドの先端部がブッシュの内周面内に残った状態になり、球状カムが中空ロッドの内方に移動した状態になっているので、プッシュピンが球状カムに当接するとともに、この球状カムを介して中空ロッドをブッシュの基端側に押し出す力が作用し、エジェクタプレートが戻し位置まで移動することになる。このようにして、エジェクタプレートが戻し位置に達すると、今度は中空ロッドの球状カムを有する部分がブッシュの凹部に対応した位置となるので、球状カムが中空ロッドの外方に移動可能になる。このため、プッシュピンは、球状カムを介して中空ロッドに作用する力が解除されるとともに、中空ロッド内に進入することになる。
【0012】
したがって、型閉じの際にエジェクタピンが可動型から突出した状態のまま残ることがないので、当該エジェクタピン等の損傷を防止することができる。
【0013】
なお、エジェクタプレートに連結され、エジェクタピンと同一のストロークで可動型から突き出すリターンピンを設け、型閉じの際に固定型から作用する力を上記リターンピンに負わせることにより、エジェクタプレートを戻し位置に強制的に戻し、これによりエジェクタピンの損傷を防止すべく構成することも可能である。
ただし、この場合でも、エジェクタプレートが完全に戻る前に、例えばスライドコアが移動することによって、エジェクタピンが破損するおそれがある。
【0014】
しかし、上記段階的駆動力伝達装置を用いた場合には、上述したスライドコアがエジェクタピンに当たる前に、エジェクタプレートを元の位置に戻すべく、プッシュピンの長さ等を調整することにより、当該スライドコアによるエジェクタピンの破損を確実に防止することができる。
【0015】
【特許文献1】
実公平1−4501号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記段階的駆動力伝達装置においては、球状カムが中空ロッドの案内孔から簡単に脱落してしまうという欠点がある。このため、成形金型へ組み込みが面倒であるという問題があった。
【0017】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、中空ロッドからのカムの脱落を防止して成形金型への組み込みを簡単に行うことのできる段階的駆動力伝達装置を提供することを課題としている。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の段階的駆動力伝達装置は、筒状に形成され、先端部の周壁に内外方向に貫通する案内孔を有する中空ロッドと、この中空ロッドの外周面に嵌合する内周面を有するブッシュと、上記中空ロッドの内周面に嵌合する外周面を有するプッシュピンと、上記中空ロッドの上記案内孔に上記内外方向に移動自在に設けられ、外縁が上記ブッシュの内周面によって内方に移動した際に内縁部が上記中空ロッドの内周面から内方に突出し、内縁が上記プッシュピンの外周面によって外方に移動した際に外縁部が上記中空ロッドの外周面から外方に突出するカムとを備えてなり、上記ブッシュには、上記中空ロッドに嵌合された際に当該中空ロッドの基端部と同一の側に位置する基端部の内周に、上記プッシュピンの外周面によって外方に突出した上記カムの外縁部を収容する凹部が設けられ、上記中空ロッドには、その先端から挿入され、上記カムに係止して、当該カムが上記内外方向に移動するのを許容するとともに上記案内孔から脱落するのを防止する係止部材が設けられ、上記カムは、上記外縁と内縁との各端を結ぶ側面が互いに平行に形成され、かつ上記中空ロッドの先端側を向く先端面および上記中空ロッドの基端側を向く基端面が平行に形成されることにより、上記側面および先端面に直交する断面が直角四角形状に形成されるとともに、当該カムを内外方向に案内する上記案内孔が直角四角形状に形成され、さらに、上記プッシュピンの先端部には、外周面から先端に向けて漸次縮径するテーパ状のガイド面が設けられ、上記カムの内縁部には、上記プッシュピンのガイド面と合致する角度のテーパ状のガイド面が形成され、かつ上記ブッシュの凹部には、その底部から内周面への立上部に漸次縮径して上記内周面に至るテーパ状のガイド面が形成され、上記カムの外縁部には、上記ブッシュのガイド面と合致する角度のテーパ状のガイド面が形成されていることを特徴としている。
【0019】
請求項2に記載の段階的駆動力伝達装置は、請求項1に記載の発明において、上記係止部材は、上記中空ロッドの先端から打ち込まれ、その打ち込まれる方向の先端部が上記案内孔内に突出する係止ピンによって構成され、上記カムには、上記中空ロッドの先端側を向く面に、上記係止ピンの先端部に係合し当該カムの上記内外方向への移動を可能にするとともに当該カムの上記案内孔からの脱落を防止する係止溝が設けられていることを特徴としている。
【0020】
請求項3に記載の段階的駆動力伝達装置は、請求項1に記載の発明において、上記係止部材は、上記中空ロッドの先端からねじ込まれ、そのねじ込まれる方向の先端部が上記案内孔内に突出する係止ビスによって構成され、上記カムには、上記中空ロッドの先端側を向く面に、上記係止ビスの先端部に係合し当該カムの上記内外方向への移動を可能にするとともに当該カムの上記案内孔からの脱落を防止する係止溝が設けられていることを特徴としている。
【0021】
請求項4に記載の段階的駆動力伝達装置は、請求項1に記載の発明において、上記中空ロッドには、その先端から上記案内孔に貫通し、上記カムの移動する内外方向に沿って長く形成された係止長孔が設けられ、上記係止部材は、上記係止長孔を通して上記カムに打ち込まれ、その打ち込まれる方向とは反対側の基端部が係止長孔内に突出し、上記カムの内外方向への移動を可能にするとともに当該カムの上記案内孔からの脱落を防止する係止ピンによって構成されていることを特徴としている。
【0022】
請求項5に記載の段階的駆動力伝達装置は、請求項1に記載の発明において、上記中空ロッドには、その先端から上記案内孔に至る貫通孔が設けられているとともに、上記案内孔における上記中空ロッドの基端側に位置する面から当該中空ロッドの基端側に向けて上記貫通孔と同軸状に形成されたアンカー孔が設けられ、上記係止部材は、上記貫通孔を通して上記アンカー孔に打ち込まれ、その打ち込まれる方向とは反対側の基端部が上記案内孔内に突出する係止ピンによって構成され、上記カムには、上記貫通孔を通して上記アンカー孔に打ち込まれる係止ピンの通過用の貫通孔が設けられ、かつ上記中空ロッドの基端側を向く面に、上記係止ピンの基端部に係合し当該カムの上記内外方向への移動を可能にするとともに当該カムの上記案内孔からの脱落を防止する係止溝が設けられていることを特徴としている。
【0026】
請求項1〜5に記載の発明においては、中空ロッドとブッシュとを、カムがブッシュの内周面に位置する状態に嵌合する。そして、中空ロッドの先端側から当該中空ロッド内にプッシュピンを挿入すると、カムの内縁部がブッシュによって中空ロッドの内方に突出されていることから、プッシュピンの駆動力がカムを介して中空ロッドに伝達され、中空ロッドがその基端側に向かって移動する。すなわち、中空ロッドがブッシュに対して相対的に移動すべく駆動される。そして、中空ロッドのカムを有する部分がブッシュの基端部の凹部に達すると、カムがプッシュピンによって凹部に突出されることから、プッシュピンから中空ロッドに作用する駆動力が解除され、プッシュピンが中空ロッド内に進入することになる。すなわち、プッシュピンが連続的に移動しているにもかかわらず、プッシュピンから中空ロッドに作用する駆動力は中空ロッドがブッシュに対して所定の位置に達した時点から完全に解除されることになる。
【0027】
したがって、中空ロッドを、その基端部を例えば成形金型における可動型のエジェクタプレートに固定することによって、その先端部を上記成形金型の固定型側に向け、ブッシュを、可動型における固定型に寄った位置に固定することによって、その基端部をエジェクタプレート側に向けるとともに、当該エジェクタプレートによって駆動される中空ロッドの先端部を受け入れ可能にし、プッシュピンを、その基端部を固定型に固定することによって、その先端側の部分を固定型から可動型側に突出させるとともに、型閉じの際にブッシュを介して中空ロッド内に挿入させるようにすることにより、エジェクタプレートの早戻し装置として機能させることができる。
【0028】
一方、中空ロッドとブッシュとを、カムがブッシュの凹部に位置する状態となるように嵌合するとともに、プッシュピンを中空ロッドの基端側から挿入して、カムの部分を貫通した状態に設置しておく。この状態から、中空ロッドをその先端側に移動すべく駆動すると、プッシュピンによってカムの外縁部がブッシュの凹部に突出していることから、中空ロッドからカムを介してブッシュに駆動力が伝達され、ブッシュが中空ロッドとともに先端側に向かって移動することになる。そして、プッシュピンの先端からカムが外れる位置まで中空ロッドおよびブッシュが移動すると、当該カムが中空ロッドの内方に移動可能になることから、中空ロッドの駆動力がブッシュに伝達されなくなり、中空ロッドがブッシュ内に進入することになる。すなわち、中空ロッドが連続的に移動しているにもかかわらず、中空ロッドからブッシュに作用する駆動力は中空ロッドがプッシュピンに対して所定の位置に達した時点から完全に解除されることになる。
【0029】
したがって、中空ロッドを、その基端部を例えば成形金型における可動型の第1段エジェクタプレートに連結するとともに、その先端部を上記成形金型の固定型側に向け、ブッシュを、上記第1段エジェクタプレートより固定型側に位置する第2段エジェクタプレートに固定することによって、その基端部を第1段エジェクタプレート側に向け、かつ当該第1段エジェクタプレートによって駆動される中空ロッドの先端部を受け入れ可能にし、プッシュピンを、その基端部を固定型に固定するとともに、中空ロッドの基端側から当該中空ロッド内に挿入させることにより、エジェクタピンの二段突出し装置として機能させることができる。
【0030】
すなわち、第1段エジェクタプレートを突き出し方向に駆動することによって、当該第1段エジェクタプレートに作用する力が中空ロッド、カムおよびブッシュを介して第2段エジェクタプレートに伝達され、これにより第1段および第2段のエジェクタプレートがともに移動する第1段目の突き出しが行われる。そして、第1段および第2段のエジェクタプレートが所定量移動すると、プッシュピンの先端からカムが外れることにより、第1段エジェクタプレートを駆動する力が第2段エジェクタプレートに伝達されなくなり、これにより第1段エジェクタプレートのみが移動する第2段目の突き出しが行われる。したがって、第1段および第2段のエジェクタプレートのそれぞれにエジェクタピンを取り付けておくことにより、ストロークの異なる二段階の突き出しを行うことができる。
【0031】
また、上記段階的駆動力伝達装置においては、カムが中空ロッドの案内孔から脱落するのを係止部材によって防止することができるので、成形金型への組み込みが簡単になるという利点がある。しかも、係止部材が中空ロッドの先端側から挿入されるように構成されているので、中空ロッドとブッシュおよび中空ロッドとプッシュピンとの嵌合に支障を来すことがない。
【0032】
また、中空ロッドの先端部に案内孔を設けることにより、当該案内孔と中空ロッドの先端との間に周壁が残存する構造になるので、案内孔を設けることによって中空ロッドの先端部の強度が低下するのを極力避けることができる。すなわち、中空ロッドの先端から基端側に向けて凹状の溝を形成し、この溝の部分に案内孔を構成する場合に比べて、中空ロッド1の先端部の強度の向上を図ることができる。
【0033】
請求項2に記載の発明においては、案内孔内にカムを挿入した状態で、中空ロッドの先端から係止ピンを打ち込むことにより、当該係止ピンの先端部をカムの係止溝に係合させることができる。したがって、カムを案内孔からの脱落を防止すべく簡単に組み付けることができる。
【0034】
請求項3に記載の発明においては、案内孔内にカムを挿入した状態で、中空ロッドの先端から係止ビスをねじ込むことによって、当該係止ビスの先端部をカムの係止溝に係合させることができる。したがって、カムを案内孔からの脱落を防止すべく簡単に組み付けることができる。しかも、係止ビスを回すことにより、当該係止ビスの先端部とカムの係止溝との係合を解除することができるので、カムを簡単に交換することができるという利点がある。
【0035】
請求項4に記載の発明においては、係止ピンを係止長孔を介してカムに容易に打ち込むことができるとともに、その打ち込まれた係止ピンを係止長孔を介して容易に引き抜くこともできる。したがって、カムを中空ロッドに対して容易に着脱することができる。
【0036】
請求項5に記載の発明においては、中空ロッドおよびカムの各貫通孔を通過後の係止ピンがアンカー孔に打ち込まれるようになっているので、カムが係止ピンの抜け止めとしても作用することになる。したがって、係止ピンがアンカー孔から抜けるのを確実に防止することができる。
【0037】
また、請求項1〜5に記載の発明においては、プッシュピンの先端部およびカムの内縁部にガイド面が設けられているので、プッシュピンの先端部からカムの内縁部に作用する力によって、カムを中空ロッドの外方にスムーズに移動させることができる。
【0038】
さらに、請求項1〜5に記載の発明においては、ブッシュにおける凹部の立上部およびカムの外縁部にガイド面が設けられているので、凹部の立上部からカムの外縁部に作用する力によって、カムを中空ロッドの内方にスムーズに移動させることができる。
【0039】
なお、請求項1〜5に記載の発明において、中空ロッドの先端部に、内周面から先端に向けて漸次拡径する面取部を設ければ、嵌合公差等により、中空ロッドの軸心と、プッシュピンの軸心とが多少ずれるようなことがあっても、プッシュピンを中空ロッド内に確実に導き入れることができる。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図12を参照して説明する。
【0041】
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態を図1〜図8を参照して説明する。
この実施の形態で示す段階的駆動力伝達装置は、図1〜図8に示すように、中空ロッド1と、ブッシュ2と、プッシュピン3と、カム4と、係止ピン(係止部材)5を備えている。
【0042】
中空ロッド1は、図1に示すように、円筒状(筒状)に形成されており、その先端部の周壁11に内外方向に貫通する案内孔11aが形成されている。この案内孔11aは、周方向に180度離れた各位置に設けられている。また、先端面(先端)11bからは、各案内孔11a内の後述するカム4の係止溝4hに対応する位置に、案内孔11a内に達する貫通孔11cが形成されている。さらに、基端部には、その周壁11の外周部に軸止め輪12が固定されるようになっているとともに、その軸止め輪12のさらに基端側の外周部に軸止め輪12から基端面11dに至るまでの寸法に調整された環状のスペーサ13が嵌合されるようになっている。
【0043】
また、中空ロッド1の内面は、案内孔11aを有する先端側の部分が後述するプッシュピン3の外周面3aと摺動自在に嵌合する内周面11eになっており、この内周面11eより基端側の部分がプッシュピン3の外周面3aとの接触を避けるように拡径された逃げ面11fとなっている。さらに、中空ロッド1の先端部には、内周面11eから先端面11bに向けて漸次拡径するテーパ状の面取部11gが設けられている。そして、この面取部11gと内周面11eとは、円弧状の滑らかな面によって連続的に形成されている。なお、先端面11bと外周面11hとの角部は円弧状の面取りがなされている。
【0044】
ブッシュ2は、円筒状(筒状)に形成されたものであって、その内周面2aが中空ロッド1の外周面11hに摺動自在に嵌合されるように形成されている。また、ブッシュ2には、中空ロッド1に嵌合された状態において、当該中空ロッド1の基端側と同一の側に位置する基端部の内周に、後述するプッシュピン3の外周面3aによって外方に突出したカム4の外縁部4bを収容すべく拡径された凹部2bが設けられられている。この凹部2bは、ブッシュ2の基端面から先端側に向けて一定の径で形成された底部を有するとともに、その底部から内周面2aへの立上部が先端側に向かうにしたがって漸次縮径して内周面2aに至るテーパ状のガイド面2cになっている。また、ブッシュ2の基端部外周であって凹部2bに対応する位置には、外方に環状に突出するフランジ部2dが形成されている。
【0045】
プッシュピン3は、断面円形状の棒状に形成されたものであり、その外周面3aが中空ロッド1の内周面11eに摺動自在に嵌合するようになっている。また、プッシュピン3の先端部には、外周面3aから先端に向けて漸次縮径するテーパ状のガイド面3bが設けられており、基端部には、外方に環状に突出するフランジ部3cが設けられている。
【0046】
カム4は、図2および図3に示すように、中空ロッド1の各案内孔11aに内外方向に移動自在に設けられるようになっており、外縁4aの位置がブッシュ2の内周面2aによって規制されることにより全体が内方に移動した際に内縁部4dが中空ロッド1の内周面11eから内方に突出し(図2(b)の左側のカム4参照)、内縁4cの位置がプッシュピン3の外周面3aによって規制されることにより全体が外方に移動した際に外縁部4bが中空ロッド1の外周面11hから外方に突出する(図2(b)の右側のカム4参照)ように構成されている。
【0047】
上記各カム4は、外縁4aがブッシュ2の内周面2aとほぼ同一の曲率を有する円弧状の曲面によって形成され、内縁4cがプッシュピン3の外周面3aとほぼ同一の曲率を有する円弧状の曲面によって形成されている。また、カム4は、外縁4aと内縁4cとの周方向の各端を結ぶ側面4eが互いに平行に形成されており、中空ロッド1の先端側を向く先端面4fおよび中空ロッド1の基端側を向く基端面4gも平行に形成されている。すなわち、カム4は、例えば側面4eおよび先端面4fに直交する面で切断した場合の断面が直角四角形状に形成されている。したがって、カム4は、図4に示すように、中空ロッド1を側方から見た形状(すなわち、外縁4a側から見た形状)が直角四角形状に形成されているとともに、このカム4を内外方向に案内する案内孔11aも、その側面視した形状が直角四角形状に形成されている。
【0048】
また、カム4の先端面4fには、後述する係止ピン5の先端部が係合する係止溝4hが形成されている。この係止溝4hは、カム4の内外方向への移動を可能にすべく両側面4e間の中央部に沿って長く形成されているとともに、係止ピン5の先端部に係止して、中空ロッド1の内方または外方への脱落を防止すべく長さが設定されている。
【0049】
係止ピン5は、スプリングピンによって形成されたものであり、中空ロッド1の先端面11bから各貫通孔11cに圧入すべく打ち込まれ、その打ち込まれる方向の先端部が案内孔11a内に突出するとともに、カム4の係止溝4hに係合するようになっている。また、係止ピン5は、基端面が中空ロッド1の先端面11bに面一状となるよう打ち込まれることによって、先端部が係止溝4hと最適な状態に係合するようになっている。
【0050】
また、プッシュピン3の先端部およびカム4の内縁部4dの双方には、プッシュピン3の先端部とカム4の内縁部4dとの当接によって作用する力を、カム4を外方に移動させる力に変換するガイド面が設けられている。すなわち、プッシュピン3の先端部には、上述したテーパ状のガイド面3bが形成されており、カム4の内縁部4dには、中空ロッド1内に挿入されたプッシュピン3のガイド面3bと合致する角度のテーパ状のガイド面が形成されている。ただし、カム4の内縁部4dには、中空ロッド1の先端側から挿入されたプッシュピン3のガイド面3bに合致する角度のガイド面が先端面4f側に形成されているとともに、中空ロッド1の基端側から挿入されたプッシュピン3のガイド面3bに合致する角度のガイド面が基端面4g側にも形成されている。
【0051】
さらに、ブッシュ2の凹部2bにおける立上部およびカム4の外縁部4bの双方もは、凹部2bの立上部とカム4の外縁部4bとの当接によって作用する力を、カム4を内方に移動させる力に変換するガイド面が設けられている。すなわち、凹部2bの立上部は、上述したテーパ状のガイド面2cによって形成されており、カム4の外縁部4bには、その先端面4f側に、中空ロッド1の先端側から嵌合されたブッシュ2のガイド面2cと合致する角度のテーパ状のガイド面が形成されている。
【0052】
なお、上述したガイド面については、プッシュピン3の先端部およびカム4の内縁部4dの一方に設けるだけであってもよいが、カム4の移動を円滑にするために上述のように双方に設けることが好ましい。ブッシュ2の凹部2bにおける立上部およびカム4の外縁部4bについても同様である。
ただし、ガイド面をプッシュピン3の先端部およびカム4の内縁部4dの一方に設けるとしたら、中空ロッド1内への挿入が容易になることから、プッシュピン3の先端部に設けることが好ましい。また、ガイド面をブッシュ2の凹部2bにおける立上部およびカム4の外縁部4bの一方に設けるとしたら、中空ロッド1の外周面11hとの嵌合が容易になることから、凹部2bの立上部に設けることが好ましい。
【0053】
上記のように構成された段階的駆動力伝達装置においては、図5に示すように、中空ロッド1とブッシュ2とを、カム4がブッシュ2の内周面2aに位置する状態に嵌合する。そして、中空ロッド1の先端面11b側から当該中空ロッド1内にプッシュピン3を挿入すると、カム4の内縁部4dがブッシュ2によって中空ロッド1の内周面11eより内方に突出されていることから、図6に示すように、プッシュピン3の駆動力がカム4を介して中空ロッド1に伝達され、中空ロッド1がその基端側に向かって移動する。すなわち、中空ロッド1がブッシュ2に対して相対的に移動すべく駆動される。そして、図7および図8に示すように、中空ロッド1のカム4を有する部分がブッシュ2の基端部の凹部2bに達すると、カム4がプッシュピン3によって凹部2bに突出されることから、プッシュピン3から中空ロッド1に作用する駆動力が解除され、プッシュピン3のみが中空ロッド1内に進入することになる。すなわち、プッシュピン3が連続的に移動しているにもかかわらず、プッシュピン3から中空ロッド1に作用する駆動力は中空ロッド1がブッシュ2に対して所定の位置に達した時点から完全に解除されることになる。
【0054】
したがって、図5〜図8に示すように、中空ロッド1を、その基端部を例えば射出成形機の成形金型における可動型AのエジェクタプレートA1に固定することによって、その先端部を上記成形金型の固定型B側に向け、ブッシュ2を、可動型Aにおける固定型Bに最も寄った位置の可動側型板A2に固定することによって、その基端部をエジェクタプレートA1側に向けるとともに、当該エジェクタプレートA1によって駆動される中空ロッド1の先端部を受け入れ可能にし、プッシュピン3を、その基端部を固定型Bの固定側型板B1および固定側取付板B2によって固定することにより、その先端側の部分を固定型Bから可動型A側に突出させるとともに、型閉じの際にブッシュ2を介して中空ロッド1内に挿入させるようにすることにより、エジェクタプレートの早戻し装置として機能させることができる。
【0055】
なお、図5〜図8において、A3は可動型Aに設けられた受板であり、A4は同可動型Aに設けられた可動側取付板である。
【0056】
そして、エジェクタプレートの早戻し装置として組み込まれた段階的駆動力伝達装置においては、図5に示すように、固定型Bと可動型Aとが所定量離れて向かい合う型開状態になると、プッシュピン3が中空ロッド1およびブッシュ2から完全に抜け出した状態になる。この状態で、射出成形機のエジェクタロッド(図示せず)が前進し、これによりエジェクタプレートA1が突出方向に移動すると、中空ロッド1の先端部がブッシュ2内の先端側に移動することになる。
【0057】
すなわち、プッシュピン3が上述のように中空ロッド1内に存在していないので、カム4がブッシュ2の凹部2bから中空ロッド1の内方に移動することが可能になり、中空ロッド1はエジェクタプレートA1に駆動されてブッシュ2内の先端側にスムーズに移動することになる。また、エジェクタプレートA1に連結されたエジェクタピン(図示せず)も、可動型Aから固定型B側に突き出して、可動型Aの成形面(図示せず)に付着した成形品(図示せず)を当該成形面から分離することができる。
【0058】
次ぎに、射出成形機のエジェクタロッドを後退させると、通常は可動型Aに内蔵されたリターンスプリング(図示せず)によって、エジェクタプレートA1が突出前の戻し位置に自動的に戻ることになる。このため、中空ロッド1は、その先端部がブッシュ2の基端側に移動し、カム4を有する部分がブッシュ2の凹部2bに対応する位置に移動した状態となる。
【0059】
一方、可動型Aを固定型Bに向けて移動する型閉じを行うと、プッシュピン3がブッシュ2を通して中空ロッド1内に進入してくる。この場合、中空ロッド1のカム4を有する部分がリターンスプリングによってブッシュ2の凹部2bに対応する位置まで移動している(図6〜図8とは異なる)ことから、プッシュピン3は、カム4を中空ロッド1の外側に押し出して、当該中空ロッド1内に容易に進入することができる。
【0060】
このように、エジェクタプレートA1がリターンスプリングによって即座に戻っている場合には、段階的駆動力伝達装置がエジェクタプレートA1の早戻し装置として機能することがない。
【0061】
しかし、上記リターンスプリングに例えば折損やへたり等が生じ、エジェクタプレートA1が戻らなくなったり、その戻りが遅くなったりした場合には、図5および図6に示すように、型閉じの工程において、カム4がブッシュ2の内周面2aに残留した状態になることがある。
【0062】
この場合には、プッシュピン3の先端部がカム4に当接するとともに、このカム4を介して中空ロッド1をブッシュ2の基端側に押し戻す力が作用し、図7に示すように、エジェクタプレートA1が戻し位置まで移動することになる。このようにして、エジェクタプレートA1が戻し位置まで戻ると、今度は中空ロッド1のカム4を有する部分がブッシュ2の凹部2bに対応した位置となるので、カム4が中空ロッド1の外方に移動可能になる。このため、プッシュピン3は、図8に示すように、カム4を介して中空ロッド1に作用する力が解除されるとともに、中空ロッド1内に進入することになる。
【0063】
したがって、成形金型に異常な力を作用させることなく、エジェクタプレートA1を戻し位置に確実に戻すことができ、リターンスプリング等に不具合を生じた場合でも、エジェクタピン等の損傷を防止することができる。
【0064】
一方、上記段階的駆動力伝達装置は、前述したように、成形金型に組み込むことによってエジェクタピンの二段突出し装置として機能させることもできる。
【0065】
また、上記段階的駆動力伝達装置においては、カム4が中空ロッド1の案内孔11aから脱落するのを防止する係止ピン5を備えているので、成形金型への組み込みが簡単になるという利点がある。しかも、係止ピン5が中空ロッド1の先端面11b側から挿入されるように構成されているので、中空ロッド1とブッシュ2および中空ロッド1とプッシュピン3との嵌合に支障を来すことがない。
【0066】
さらに、案内孔11a内にカム4を挿入した状態で、中空ロッド1の先端面11bから係止ピン5を打ち込むことにより、当該係止ピン5の先端部をカム4の係止溝4hに係合させることができるので、カム4を案内孔11aからの脱落を防止した状態に簡単に組み付けることができる。
【0067】
また、中空ロッド1の先端部に案内孔11aを設けることにより、当該案内孔11aと先端面11bとの間に周壁11が残存する構造になっているので、案内孔11aを設けたことによる中空ロッド1の先端部の強度の低下を極力抑えることができる。すなわち、中空ロッド1の先端面11bから基端面11d側(基端側)に向けて凹状の溝を形成し、この溝の部分に案内孔を構成する場合に比べて、中空ロッド1の先端部の強度の向上を図ることができる。
【0068】
さらに、プッシュピン3の先端部およびカム4の内縁部4dの双方にガイド面が設けられているので、プッシュピン3の先端部からカム4の内縁部4dに作用する力によって、カム4を中空ロッド1の外方にスムーズに移動させることができる。同様にして、ブッシュ2における凹部2bの立上部およびカム4の外縁部4bの双方にガイド面が設けられているので、凹部2bの立上部からカム4の外縁部4bに作用する力によって、カム4を中空ロッド1の内方にスムーズに移動させることができる。
【0069】
また、中空ロッド1の先端部に、内周面11eから先端面11bに向けて漸次拡径する面取部11gが設けられているので、嵌合公差等により、可動型A側の中空ロッド1の軸心と、固定型B側のプッシュピン3の軸心とが多少ずれるようなことがあっても、プッシュピン3を中空ロッド1内に確実に導き入れることができる。
【0070】
(第2の実施の形態)
次ぎに、本発明の第2の実施の形態を図9を参照して説明する。ただし、第1の実施の形態で示した構成要素と共通する要素には同一の符号を付し、その説明を簡略化する。
【0071】
この実施の形態で示す段階的駆動力伝達装置が第1の実施の形態のものと異なる主な点は、係止ピン5に代えて係止ビス51を設けている点である。
【0072】
すなわち、中空ロッド1には、図9に示すように、先端面11bから各案内孔11aに向けて座繰凹部11iおよびねじ孔11jが順次、同軸状に形成されている。座繰凹部11iは、後述する係止ビス51の頭部51aの全体を収容可能な深さに形成されている。ねじ孔11jは、各案内孔11a内に挿入されたカム4の係止溝4hに対応する位置に設けられ、案内孔11a内に貫通すべく形成されている。
【0073】
係止ビス51は、頭部51aおよび雄ねじ部51bを備えた六角穴付きボルトによって形成されたものであり、案内孔11a内に突出する先端部51cがカム4の係止溝4hに係合するように形成されている。すなわち、先端部51cは、雄ねじ部51bの谷径以下に縮径された円柱体によって形成されている。
【0074】
上記のように構成された段階的駆動力伝達装置においては、係止ビス51を中空ロッド1の先端面11bからねじ孔11j内にねじ込んで締め付けることにより、そのねじ込む方向の先端部51cが案内孔11a内に突出するとともに、カム4の係止溝4hに係合することになる。これより、カム4は、案内孔11a内を内外方向に移動自在になるとともに、案内孔11aからの脱落が防止された状態になる。
【0075】
また、係止ビス51を回すだけで、カム4を簡単に組み付けることができるとともに、当該カム4を必要なときに簡単に交換することができる。
【0076】
(第3の実施の形態)
次ぎに、本発明の第3の実施の形態を図10を参照して説明する。ただし、第1の実施の形態で示した構成要素と共通する要素には同一の符号を付し、その説明を簡略化する。
【0077】
この実施の形態で示す段階的駆動力伝達装置が第1の実施の形態のものと異なる主な点は、貫通孔11cに代えて係止長孔11kを設け、係止溝4hを設けることなくカム4に係止ピン5を打ち込むように構成している点である。
【0078】
すなわち、上記中空ロッド1には、図10に示すように、その先端面11bから案内孔11aに貫通し、当該案内孔11aに挿入されたカム4の移動する内外方向に沿って長く形成された係止長孔11kが設けられている。
【0079】
カム4には、係止溝4hに代えて、係止ピン5を圧入により固定するための係止孔4iが設けられている。係止孔4iは、カム4の先端面4fから基端面4gに向けて形成されている。
【0080】
係止ピン5は、係止長孔11kを通してカム4の係止孔4iに打ち込まれ、その打ち込まれる方向とは反対側の基端部が係止長孔11k内に突出し、カム4の内外方向への移動を可能にするとともに当該カム4の案内孔11aからの脱落を防止するようになっている。なお、係止ピン5は、上述の通りスプリングピンによって構成されている。
【0081】
上記のように構成された段階的駆動力伝達装置においては、係止ピン5を係止長孔11kを介してカム4の係止孔4iに簡単に打ち込むことができるとともに、打ち込んだ後の係止ピン5を係止長孔11kを介して容易に引き抜くこともできる。したがって、カム4を中空ロッド1に対して容易に着脱することができる。
【0082】
(第4の実施の形態)
次ぎに、本発明の第4の実施の形態を図11を参照して説明する。ただし、第1の実施の形態で示した構成要素と共通する要素には同一の符号を付し、その説明を簡略化する。
【0083】
この実施の形態で示す段階的駆動力伝達装置が第1の実施の形態のものと異なる主な点は、係止ピン5を案内孔11aの内方に設ける構成になっている点である。
【0084】
すなわち、中空ロッド1には、図11に示すように、その先端面11bから案内孔11aに至る貫通孔11cが設けられているとともに、案内孔11aにおける中空ロッド1の基端側に位置する底面(面)11mから当該中空ロッド1の基端側に向けて貫通孔11cと同軸状に形成されたアンカー孔11nが設けられている。
【0085】
係止ピン5は、貫通孔11cを通し、かつ後述のカム4の貫通孔4jを通してアンカー孔11nに打ち込まれ、その打ち込まれる方向とは反対側の基端部が案内孔11a内に突出するようになっている。なお、係止ピン5は、上述の通りスプリングピンによって構成されている。
【0086】
上記カム4には、中空ロッド1の貫通孔11cを通してアンカー孔11nに打ち込まれる係止ピン5を通過させるための貫通孔4jが設けられている。また、カム4には、先端面4fに上述した係止溝4hが設けられておらず、基端面4gに係止溝4kが設けられている。係止溝4kは、上記係止溝4hと同様に機能するものであり、係止ピン5の基端部に係合してカム4の案内孔11a内における内外方向への移動を可能にするとともに、当該カム4の案内孔11aからの脱落を防止すべく内外方向に長く形成されている。
【0087】
上記のように構成された段階的駆動力伝達装置においては、中空ロッド1およびカム4の各貫通孔11c、4jを通過後の係止ピン5がアンカー孔11nに打ち込まれるようになっているので、カム4が係止ピン5の抜け止めとしても作用することになる。したがって、係止ピン5がアンカー孔11nから抜けるのを確実に防止することができる。
【0088】
(第5の実施の形態)
次ぎに、本発明の第5の実施の形態を図12を参照して説明する。ただし、第1の実施の形態で示した構成要素と共通する要素には同一の符号を付し、その説明を簡略化する。
【0089】
この実施の形態で示す段階的駆動力伝達装置が第1の実施の形態のものと異なる主な点は、スプリングピンによって構成された係止ピン5に代えて中実のピン52を設けている点である。
【0090】
すなわち、中空ロッド1には、先端面11bから各案内孔11a内に向け、大径孔11pおよび小径孔11qが順次、同軸状に形成されている。なお、小径孔11qは、案内孔11aに貫通した状態になっている。
【0091】
ピン52は、断面円形状の大径部52aおよび小径部52bによって同軸状に一体に形成されたものであり、これらの大径部52aおよび小径部52bがそれぞれ大径孔11pおよび小径孔11qに圧入されるようになっている。なお、小径部52bは、小径孔11qに単に挿入するように構成してもよい。
大径部52aは、その軸方向の長さが大径孔11pの深さとほぼ一致しており、大径孔11p内に打ち込まれることによって、その端面が中空ロッド1の先端面11bと面一状になるようになっている。
小径部52bは、大径部52aが大径孔11pに完全に打ち込まれた状態において、その先端部が案内孔11a内に突出して、カム4の係止溝4hに係合するように、軸方向の長さおよび径が設定されている。
【0092】
上記のように構成された段階的駆動力伝達装置においては、ピン52がスプリングピンのような中空のものでなく、中実のもので形成されているので、カム4の係止溝4hに係合すべき部分は小径部52bで形成し、中空ロッド1に圧入により固定すべき部分は大径部52aによって形成することができる。すなわち、ピン52における圧入によって固定すべき部分を係止溝4hに係合する部分に比べて大径に形成することができるので、当該ピン52を中空ロッド1により強固に固定することができる。
【0093】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1〜5に記載の発明によれば、カムが中空ロッドの案内孔から脱落するのを係止部材によって防止することができるので、成形金型への組み込みが簡単になるという利点がある。しかも、係止部材が中空ロッドの先端側から挿入されるように構成されているので、中空ロッドとブッシュおよび中空ロッドとプッシュピンとの嵌合に支障を来すことがない。
【0094】
また、中空ロッドの先端部に案内孔を設けることにより、当該案内孔と中空ロッドの先端との間に周壁が残存する形状になるので、案内孔を設けることによって中空ロッドの先端部の強度が低下するのを極力防止することができる。すなわち、中空ロッドの先端から基端側に向けて凹状の溝を形成し、この溝の部分に案内孔を構成する場合に比べて、中空ロッド1の先端部の強度の向上を図ることができる。
【0095】
請求項2に記載の発明によれば、案内孔内にカムを挿入した状態で、中空ロッドの先端から係止ピンを打ち込むことにより、当該係止ピンの先端部をカムの係止溝に係合させることができる。したがって、カムを案内孔からの脱落を防止すべく簡単に組み付けることができる。
【0096】
請求項3に記載の発明によれば、案内孔内にカムを挿入した状態で、中空ロッドの先端から係止ビスをねじ込むことによって、当該係止ビスの先端部をカムの係止溝に係合させることができる。したがって、カムを案内孔からの脱落を防止すべく簡単に組み付けることができる。しかも、係止ビスを回すことにより、当該係止ビスの先端部とカムの係止溝との係合を解除することができるので、カムを簡単に交換することができるという利点がある。
【0097】
請求項4に記載の発明によれば、係止ピンを係止長孔を介してカムに容易に打ち込むことができるとともに、その打ち込まれた係止ピンを係止長孔を介して容易に引き抜くこともできる。したがって、カムを中空ロッドに対して容易に着脱することができる。
【0098】
請求項5に記載の発明によれば、中空ロッドおよびカムの各貫通孔を通過後の係止ピンがアンカー孔に打ち込まれるようになっているので、カムが係止ピンの抜け止めとしても作用することになる。したがって、係止ピンがアンカー孔から抜けるのを確実に防止することができる。
【0099】
また、請求項1〜5に記載の発明によれば、プッシュピンの先端部およびカムの内縁部にガイド面が設けられているので、プッシュピンの先端部からカムの内縁部に作用する力によって、カムを中空ロッドの外方にスムーズに移動させることができる。
【0100】
さらに、請求項1〜5に記載の発明によれば、ブッシュにおける凹部の立上部およびカムの外縁部にガイド面が設けられているので、凹部の立上部からカムの外縁部に作用する力によって、カムを中空ロッドの内方にスムーズに移動させることができる。
【0101】
なお、請求項1〜5に記載の発明において、中空ロッドの先端部に、内周面から先端に向けて漸次拡径する面取部を設ければ、嵌合公差等により、中空ロッドの軸心と、プッシュピンの軸心とが多少ずれるようなことがあっても、プッシュピンを中空ロッド内に確実に導き入れることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施の形態として示した段階的駆動力伝達装置の断面図である。
【図2】同段階的駆動力伝達装置の要部を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線に沿う断面図である。
【図3】同段階的駆動力伝達装置のカムを示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線に沿う断面図である。
【図4】同段階的駆動力伝達装置の中空ロッドの先端部を示す側面図である。
【図5】同段階的駆動力伝達装置を成形金型に組み込んだ状態を示す図であって、型開状態を示す断面図である。
【図6】同段階的駆動力伝達装置を成形金型に組み込んだ状態を示す図であって、型閉じの途中を示す断面図である。
【図7】同段階的駆動力伝達装置を成形金型に組み込んだ状態を示す図であって、さらに型閉じが進行した状態を示す断面図である。
【図8】同段階的駆動力伝達装置を成形金型に組み込んだ状態を示す図であって、型閉状態を示す断面図である。
【図9】この発明の第2の実施の形態として示した段階的駆動力伝達装置の要部を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線に沿う断面図である。
【図10】この発明の第3の実施の形態として示した段階的駆動力伝達装置の要部を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線に沿う断面図である。
【図11】この発明の第4の実施の形態として示した段階的駆動力伝達装置の要部を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線に沿う断面図である。
【図12】この発明の第5の実施の形態として示した段階的駆動力伝達装置の要部を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線に沿う断面図である。
【符号の説明】
1 中空ロッド
2 ブッシュ
2a 内周面
2b 凹部
2c、3b ガイド面
3 プッシュピン
3a 外周面
4 カム
4a 外縁
4b 外縁部
4c 内縁
4d 内縁部
4f 先端面
4g 基端面
4h、4k 係止溝
4i 係止孔
4j 貫通孔
5 係止ピン(係止部材)
11 周壁
11a 案内孔
11b 先端面(先端)
11c 貫通孔
11e 内周面
11g 面取部
11h 外周面
11k 係止長孔
11m 底面
11n アンカー孔
51 係止ビス

Claims (5)

  1. 筒状に形成され、先端部の周壁に内外方向に貫通する案内孔を有する中空ロッドと、
    この中空ロッドの外周面に嵌合する内周面を有するブッシュと、
    上記中空ロッドの内周面に嵌合する外周面を有するプッシュピンと、
    上記中空ロッドの上記案内孔に上記内外方向に移動自在に設けられ、外縁が上記ブッシュの内周面によって内方に移動した際に内縁部が上記中空ロッドの内周面から内方に突出し、内縁が上記プッシュピンの外周面によって外方に移動した際に外縁部が上記中空ロッドの外周面から外方に突出するカムとを備えてなり、
    上記ブッシュには、上記中空ロッドに嵌合された際に当該中空ロッドの基端部と同一の側に位置する基端部の内周に、上記プッシュピンの外周面によって外方に突出した上記カムの外縁部を収容する凹部が設けられ、
    上記中空ロッドには、その先端から挿入され、上記カムに係止して、当該カムが上記内外方向に移動するのを許容するとともに上記案内孔から脱落するのを防止する係止部材が設けられ
    上記カムは、上記外縁と内縁との各端を結ぶ側面が互いに平行に形成され、かつ上記中空ロッドの先端側を向く先端面および上記中空ロッドの基端側を向く基端面が平行に形成されることにより、上記側面および先端面に直交する断面が直角四角形状に形成されるとともに、当該カムを内外方向に案内する上記案内孔が直角四角形状に形成され、
    さらに、上記プッシュピンの先端部には、外周面から先端に向けて漸次縮径するテーパ状のガイド面が設けられ、上記カムの内縁部には、上記プッシュピンのガイド面と合致する角度のテーパ状のガイド面が形成され、かつ上記ブッシュの凹部には、その底部から内周面への立上部に漸次縮径して上記内周面に至るテーパ状のガイド面が形成され、上記カムの外縁部には、上記ブッシュのガイド面と合致する角度のテーパ状のガイド面が形成されていることを特徴とする段階的駆動力伝達装置。
  2. 上記係止部材は、上記中空ロッドの先端から打ち込まれ、その打ち込まれる方向の先端部が上記案内孔内に突出する係止ピンによって構成され、
    上記カムには、上記中空ロッドの先端側を向く面に、上記係止ピンの先端部に係合し当該カムの上記内外方向への移動を可能にするとともに当該カムの上記案内孔からの脱落を防止する係止溝が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の段階的駆動力伝達装置。
  3. 上記係止部材は、上記中空ロッドの先端からねじ込まれ、そのねじ込まれる方向の先端部が上記案内孔内に突出する係止ビスによって構成され、
    上記カムには、上記中空ロッドの先端側を向く面に、上記係止ビスの先端部に係合し当該カムの上記内外方向への移動を可能にするとともに当該カムの上記案内孔からの脱落を防止する係止溝が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の段階的駆動力伝達装置。
  4. 上記中空ロッドには、その先端から上記案内孔に貫通し、上記カムの移動する内外方向に沿って長く形成された係止長孔が設けられ、
    上記係止部材は、上記係止長孔を通して上記カムに打ち込まれ、その打ち込まれる方向とは反対側の基端部が係止長孔内に突出し、上記カムの内外方向への移動を可能にするとともに当該カムの上記案内孔からの脱落を防止する係止ピンによって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の段階的駆動力伝達装置。
  5. 上記中空ロッドには、その先端から上記案内孔に至る貫通孔が設けられているとともに、上記案内孔における上記中空ロッドの基端側に位置する面から当該中空ロッドの基端側に向けて上記貫通孔と同軸状に形成されたアンカー孔が設けられ、
    上記係止部材は、上記貫通孔を通して上記アンカー孔に打ち込まれ、その打ち込まれる方向とは反対側の基端部が上記案内孔内に突出する係止ピンによって構成され、
    上記カムには、上記貫通孔を通して上記アンカー孔に打ち込まれる係止ピンの通過用の貫通孔が設けられ、かつ上記中空ロッドの基端側を向く面に、上記係止ピンの基端部に係合し当該カムの上記内外方向への移動を可能にするとともに当該カムの上記案内孔からの脱落を防止する係止溝が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の段階的駆動力伝達装置。
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