JP3976992B2 - し渣処理方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、し渣処理方法に関し、特に、下水処理場等の汚水処理施設に流入する汚水中に含まれ、除塵装置により分離除去された厨芥類等を主体とするし渣の減容化・衛生化を図るようにしたし渣処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
下水処理場等の汚水処理施設に設けられる前処理設備の除塵装置に、スクリーン目幅が5mm程度以下の除塵装置を用いた場合、流入する汚水より捕捉されるし渣の大半が厨芥類となることが判明している。
この除塵装置にて捕捉、除去された厨芥類を主体とするし渣は、定期的に人手により処分されるが、通常、これらのし渣は、処分されるまでの期間、除塵装置の近くに野積み状態で放置されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このため、野積み状態で放置されたし渣が、腐敗して悪臭を放ち、また、害虫の発生源となり、維持管理上、衛生的な面に加え、し渣の廃棄場所の確保が困難である等、し渣の処分方法自体が大きな問題になってきている。
【0004】
このため、除塵装置にて捕捉、除去された厨芥類を主体とするし渣の減容化を図るため、汚水処理施設に既存の生ごみ処理機を設置し、分離除去したし渣の減容化を行うことが試みられている。
【0005】
しかしながら、下水処理場等の汚水処理施設に流入し、除塵装置によって分離されたし渣には、通常の生ごみと異なり、毛髪、布切れ、ビニール片等の繊維状物質が相当量含まれているため、汚水処理施設に既存の生ごみ処理機を設置しても、生ごみ処理機の撹拌羽根に繊維状物質が絡み付いたり、繊維状物質を核としてし渣が団子状となり、発酵や乾燥の処理が十分進まず、し渣の減容化処理を効率的に行うことができないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記従来の下水処理場等の汚水処理施設におけるし渣の減容化処理に関する問題点に鑑み、下水処理場等の汚水処理施設に流入する汚水中に含まれ、除塵装置により分離除去された厨芥類等を主体とするし渣の減容化・衛生化を図るようにしたし渣処理方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のし渣処理方法は、汚水処理施設に流入する汚水から分離したし渣を、回転するドラム形のし渣処理槽内で、空気を導入して、発酵及び乾燥処理するし渣処理方法において、前記し渣処理槽の内壁に串歯状の撹拌ブレードを突設するとともに、し渣処理槽内に串歯状の撹拌ブレードの間を通過可能な大きさのセラミックボールを、し渣処理槽を回転したとき、前記撹拌ブレードの先端がセラミックボールの充填部分から常に突出した状態となる量を予め投入しておくようにするとともに、し渣の残渣を空気の風力によってし渣処理槽に隣接する残渣回収槽へ排出し、分離回収することを特徴とする。
【0008】
このし渣処理方法は、回転可能なドラム形のし渣処理槽の内壁に串歯状の撹拌ブレードを突設するとともに、し渣処理槽内に串歯状の撹拌ブレードの間を通過可能な大きさのセラミックボールを、し渣処理槽を回転したとき、前記撹拌ブレードの先端がセラミックボールの充填部分から常に突出した状態となる量を予め投入しておくようにするとともに、し渣の残渣を空気の風力によってし渣処理槽に隣接する残渣回収槽へ排出し、分離回収するようにしているため、串歯状の撹拌ブレードとこの串歯状の撹拌ブレードの間を通過可能な大きさのセラミックボールとの相乗作用により、撹拌ブレードに繊維状物質が絡み付いたり、繊維状物質を核としてし渣が団子状になることがなく、効率的にし渣の発酵及び乾燥処理を行い、し渣の残渣を分離回収することができる。
【0009】
この場合において、撹拌ブレードの先端部分を、し渣処理槽の回転方向に90度曲げて形成したり、撹拌ブレードを、し渣処理槽の回転方向に傾斜させて形成することができる。
【0010】
これにより、撹拌ブレードにし渣に含まれる繊維状物質が引っ掛かりやすくなり、繊維状物質がほぐされ、撹拌ブレードに繊維状物質が強固に絡み付いたり、繊維状物質を核としてし渣が団子状になることを有効に防止することができ、撹拌効果を高めることができる。
【0011】
また、セラミックボールを、多孔質セラミックで以て構成することができる。
【0012】
これにより、し渣の空気との接触状態を良好に維持することができ、し渣の発酵及び乾燥処理を効率的に行うことができる。
【0013】
また、し渣処理槽内に温風を供給するように構成することができる。
【0014】
これにより、し渣の空気との接触状態を良好に維持することができるとともに、し渣の温度を適温に保持することができ、し渣の発酵及び乾燥処理を効率的に行うことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のし渣処理方法の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3に、本発明のし渣処理方法に用いるし渣処理装置の一実施例を示す。
【0016】
下水処理場等の汚水処理施設に設けられる前処理設備の除塵装置に、スクリーン目幅が5mm程度以下の除塵装置を用いた場合、流入する汚水より捕捉されるし渣の大半が厨芥類となるが、このし渣には、通常、相当量の毛髪、布切れ、ビニール片等の繊維状物質が含まれている。
【0017】
このし渣を分解処理するし渣処理槽1は、ドラム形に形成し、内部には撹拌効果を高めるための串歯状の撹拌ブレード5をし渣処理槽1の内壁に突設し、し渣処理槽1を回転させることにより、し渣処理槽1内に投入したし渣が、し渣処理槽1内に予め投入しておいたセラミックボールdと撹拌混合されるようにする。
【0018】
このし渣処理槽1は、ドラム形をしており、その下部を支持ローラ12,12により回転可能に支持するとともに、モータ等の駆動装置14により、駆動ローラ14Rを介して回転駆動されるように構成されている。
この支持ローラ12及び駆動ローラ14Rは、振動や騒音を防止できる素材、構造とすることが望ましい。
この場合、し渣aのし渣処理槽1への投入、排出をスムーズに行うため、し渣処理槽1を、排出側が低くなるようにやや傾斜して設置することも可能である。
【0019】
し渣処理槽1内には、串歯状の撹拌ブレード5の間を通過可能な大きさのセラミックボールdを、し渣処理槽1を回転したとき、撹拌ブレード5の先端がセラミックボールdの充填部分から常に突出した状態となる量、より具体的には、撹拌ブレード5の先端がセラミックボールdの充填部分から常に10mm程度以上突出した状態となる量、予め投入しておくようにする。
【0020】
そして、し渣処理槽1を回転することにより、し渣とセラミックボールdとを撹拌混合すると、し渣に含まれる繊維状物質の大半は、セラミックボールdと比べて比重が軽いため、セラミックボールd上を移動する。
【0021】
このとき、串歯状の撹拌ブレード5の串歯部51の先端がセラミックボールdの充填部分から常に突出した状態となっているため、撹拌ブレード5の串歯部51にし渣に含まれる繊維状物質eが引っ掛かり、し渣処理槽1の回転に伴って撹拌ブレード5とともに移動する。
【0022】
そして、し渣と共に撹拌混合されるセラミックボールdは、し渣処理槽1の回転に合わせて移動するが、ある程度の高さまで持ち上げられた段階で、撹拌ブレード5の串歯51間を通って、転がりながら落下していく。
このとき、撹拌ブレード5の串歯部51に引っ掛かっている繊維状物質eと接触し、摩擦が生じるため、繊維状物質eの一部がほぐされて、セラミックボールdと共に落下する。
また、落下せずに撹拌ブレード5の串歯部51に引っ掛かっている繊維状物質は、し渣処理槽1の回転と共に上昇し、最も高い位置の前後で、串歯部51から外れて落下し、セラミックボールd上に落ちる。
これらの相乗作用により、撹拌ブレード5の串歯部51に繊維状物質が強固に絡み付いたり、繊維状物質を核としてし渣が団子状になることを有効に防止することができ、撹拌効果を高めることができる。
【0023】
この場合において、図4及び図5に示す変形例のように、撹拌ブレード5の串歯部51の先端部分52を、し渣処理槽1の回転方向に90度曲げて形成したり、撹拌ブレード5の串歯部51を、し渣処理槽1の回転方向に傾斜させて形成することができる。
これにより、撹拌ブレード5の串歯部51にし渣に含まれる繊維状物質が引っ掛かりやすくなり、繊維状物質がほぐされ、撹拌ブレード5の串歯部51に繊維状物質が強固に絡み付いたり、繊維状物質を核としてし渣が団子状になることを有効に防止することができ、撹拌効果を一層高めることができる。
【0024】
撹拌ブレード5のし渣処理槽1の内壁への取り付けは、特に限定されるものではないが、図2に示すように、し渣処理槽1の内壁に直接取り付けるほか、図4及び図5に示すようにし渣処理槽1の内壁に突出するように取り付けた取付座50にボルト等により固定することもできる。
【0025】
一方、し渣に含まれる厨芥類等の有機物を分解するためには、好気性微生物の活性を保つため、し渣処理槽1内の加温することが好ましい。
これにより、し渣処理槽1内の温度は、好気性微生物による生物分解を行うために好適な温度である30〜40℃程度に保つことができる。
この場合、送風機2から送られる空気をヒータ等の温度調節器3により加温し、この加温した空気bを、し渣処理槽1の軸方向の開口部11から導入し、対向して設けた他の開口部13から排出するようにことにより、し渣処理槽1内全体を間接的に加温する方法が簡便である。
【0026】
なお、好気性微生物が高温菌の場合は、処理槽内を50〜60℃に保持するようにする。
【0027】
また、有機物の分解を意図せず、乾燥だけを行う場合には、さらに高い温度の温風を導入することも可能である。
【0028】
そして、し渣処理槽1の開口部13から隣接する残渣回収槽4へ排出される空気には、生物分解、すなわち、発酵等により生じた炭酸ガスや水蒸気が含まれるが、熱の回収や脱臭風量の削減の観点から、全量をそのまま排出せず、一部をミストセパレータや脱臭装置に導入して、水蒸気、臭気物質等を除去した後、大気に放出するとともに、残りは再度送気用空気として循環させることが望ましい。
【0029】
このようにして、撹拌ブレード5の串歯部51に繊維状物質が強固に絡み付いたり、繊維状物質を核としてし渣が団子状になることにより、撹拌ブレード5が破損したり、過負荷で停止することを有効に防止することができ、効率的にし渣の発酵及び乾燥処理を行うことができる。
【0030】
ところで、し渣処理槽1内に予め投入しておくセラミックボールdは、多孔質セラミックで以て構成し、さらに、セラミックボールdに好気性微生物を固定化しておくことが望ましい。
これにより、し渣の空気との接触状態を良好に維持することができ、し渣の発酵及び乾燥処理を効率的に行うことができるものとなる。
なお、セラミックボールは、乾燥処理のみを行う場合でも、かなりの減容化の作用があるため、微生物を固定していないセラミックボールを用いることも可能である。
【0031】
次に、図1〜図2に示すし渣処理装置の動作について説明する。
下水処理場等の汚水処理施設に流入する汚水から、除塵装置によって掻き揚げられたし渣aを、し渣処理槽1の軸方向の開口部11を経て、し渣処理槽1内に連続的にあるいは間欠的に投入する。
し渣処理槽1は、通常、0.1〜1rpm程度の低速で回転しながら、送風機2から送られる空気をヒータ等の温度調節器3により加温し、この加温した空気bを、し渣処理槽1の軸方向の開口部11を経て、し渣処理槽1内に導入することにより、し渣処理槽1内の温度を、好気性微生物による生物分解を行うために好適な温度である30〜40℃程度に保つようにする。
【0032】
し渣処理槽1においては、し渣処理槽1の内壁に串歯状の撹拌ブレード5を突設するとともに、し渣処理槽1内に串歯状の撹拌ブレード5の間を通過可能な大きさのセラミックボールdを、し渣処理槽1を回転したとき、撹拌ブレード5の先端がセラミックボールdの充填部分から常に突出した状態となる量投入するようにしているため、串歯状の撹拌ブレード5とこの串歯状の撹拌ブレード5の間を通過可能な大きさのセラミックボールdとの相乗作用により、撹拌ブレード5に繊維状物質eが強固に絡み付いたり、繊維状物質eを核としてし渣が団子状になることがなく、効率的にし渣の発酵及び乾燥処理を行うようにする。
【0033】
そして、し渣処理槽1においては、生物分解、すなわち、発酵等がなされることにより減容化、衛生化されたし渣の残渣は、空気bの風力によって押し出されるようにして、し渣処理槽1の開口部13から隣接する残渣回収槽4へ排出される。
【0034】
この場合、空気と共に押し出される残渣は、未分解の繊維状物質と発酵により分解した厨芥等の残渣からなり、比重が軽いため、これを分離回収するためには、風速を急激に低下させるか、残渣回収槽4内に抵抗板やフィルターを設ける等の工夫を要する。
【0035】
また、残渣を分離した空気は、残渣回収槽4の上部から排出されるが、排出する空気cには水蒸気、臭気物質等が残留するため、ミストセパレータや脱臭装置に導入して、水蒸気、臭気物質等を除去した後、大気に放出するのが好ましい。
なお、排出する空気cは、熱の回収や脱臭風量の削減の観点から、全量をそのまま排出せず、再度送気用空気として循環させるようにすることが望ましい。
【0036】
【発明の効果】
本発明のし渣処理方法によれば、回転可能なドラム形のし渣処理槽の内壁に串歯状の撹拌ブレードを突設するとともに、し渣処理槽内に串歯状の撹拌ブレードの間を通過可能な大きさのセラミックボールを、し渣処理槽を回転したとき、前記撹拌ブレードの先端がセラミックボールの充填部分から常に突出した状態となる量を予め投入しておくようにするとともに、し渣の残渣を空気の風力によってし渣処理槽に隣接する残渣回収槽へ排出し、分離回収するようにしているため、串歯状の撹拌ブレードとこの串歯状の撹拌ブレードの間を通過可能な大きさのセラミックボールとの相乗作用により、撹拌ブレードに繊維状物質が絡み付いたり、繊維状物質を核としてし渣が団子状になることがなく、効率的にし渣の発酵及び乾燥処理を行い、し渣の残渣を分離回収することができる。
これにより、し渣に含まれる有機物を、水、炭酸ガス、アンモニア等に分解し、水分を蒸発することができ、し渣の大幅な減容化を行い、衛生的で取り扱いが容易な残渣として排出し、分離回収することができる。
【0037】
また、撹拌ブレードの先端部分を、し渣処理槽の回転方向に90度曲げて形成したり、撹拌ブレードを、し渣処理槽の回転方向に傾斜させて形成することにより、撹拌ブレードにし渣に含まれる繊維状物質が引っ掛かりやすくなり、繊維状物質がほぐされ、撹拌ブレードに繊維状物質が強固に絡み付いたり、繊維状物質を核としてし渣が団子状になることを有効に防止することができ、撹拌効果を高めることができる。
【0038】
また、セラミックボールを、多孔質セラミックで以て構成することにより、し渣の空気との接触状態を良好に維持することができ、し渣の発酵及び乾燥処理を効率的に行うことができる。
【0039】
また、し渣処理槽内に温風を供給するように構成することにより、し渣の空気との接触状態を良好に維持することができるとともに、し渣の温度を適温に保持することができ、し渣の発酵及び乾燥処理を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のし渣処理方法に用いるし渣処理装置の一実施例を示す全体構成図である。
【図2】 し渣処理槽の一部破断した側面図である。
【図3】 撹拌ブレードの正面図である。
【図4】 撹拌ブレードの変形例を示す側面図である。
【図5】 撹拌ブレードの変形例を示す側面図である。
【符号の説明】
1 し渣処理槽
11 開口部
12 支持ローラ
13 開口部
14 駆動装置
2 送風機
3 温度調節器
4 残渣回収槽
5 撹拌ブレード
50 取付座
51 串歯部
52 先端部分
a し渣
b 空気
c 空気
d セラミックボール
e 繊維状物質
Claims (5)
- 汚水処理施設に流入する汚水から分離したし渣を、回転するドラム形のし渣処理槽内で、空気を導入して、発酵及び乾燥処理するし渣処理方法において、前記し渣処理槽の内壁に串歯状の撹拌ブレードを突設するとともに、し渣処理槽内に串歯状の撹拌ブレードの間を通過可能な大きさのセラミックボールを、し渣処理槽を回転したとき、前記撹拌ブレードの先端がセラミックボールの充填部分から常に突出した状態となる量を予め投入しておくようにするとともに、し渣の残渣を空気の風力によってし渣処理槽に隣接する残渣回収槽へ排出し、分離回収することを特徴とするし渣処理方法。
- 撹拌ブレードの先端部分を、し渣処理槽の回転方向に90度曲げて形成したことを特徴とする請求項1記載のし渣処理方法。
- 撹拌ブレードを、し渣処理槽の回転方向に傾斜させて形成したことを特徴とする請求項1又は2記載のし渣処理方法。
- セラミックボールを、多孔質セラミックで以て構成したことを特徴とする請求項1、2又は3記載のし渣処理方法。
- し渣処理槽内に温風を供給するように構成したことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のし渣処理方法。
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