本発明に係る被検査対象物上のパターンの検出並びにこのパターン上の欠陥検査についての実施例を図1ないし図38を参照して説明する。また本発明に係る被検査対象物の欠陥検査を半導体製造プロセスに適用した実施例について図39を用いて説明する。まず本実施例においては、対物レンズを介して被検査対象物の検出視野においてほぼ一様に照明を施す照明手段として、輪帯状の照明(輪帯状の拡散照明)を用いた場合について説明する。
〔第1の実施例〕
図1は、本発明に係わる輪帯状の照明を用いたパターン検査装置の一実施例を示すブロック図である。本発明に係わるパターン検査装置は、パターン検査をするLSIウエハ等の被検査対象物(被検査パターン)1と、該LSIウエハ等の被検査対象物1を載置するXYZθステージ2と、光源用のXeランプ3、集光用楕円鏡4及び多数の仮想の点光源から形成された輪帯状の二次光源を形成する輪帯状の照明(輪帯状の拡散照明)形成用の円板状マスク5(輪帯状の照明用二次光源)から構成される輪帯状の照明用二次光源と、コリメータレンズ6、光量調整フィルタ14及びコンデンサレンズ7から構成された照明光学系と、ハーフミラー8a、8b、対物レンズ9、収束レンズ11、対物レンズ9の瞳面10aと共役な瞳面10bに減衰フィルタ38を設けたズームレンズ13、及び2次元又は1次元のイメージセンサ12a、12bから構成されたパターン検出光学系と、該イメージセンサ12a、12bから検出される画像信号をディジタル画像信号に変換するA/D変換器15a、15b、A/D変換器15aから得られるディジタル画像信号を記憶して遅延させる遅延メモリ16、該遅延メモリ16に記憶された遅延ディジタル画像信号と上記A/D変換器15aから得られるディジタル画像信号とを比較する比較回路17、A/D変換器15aから得られるディジタル画像信号からパターンのエッジを検出するエッジ検出器21、対物レンズ9の瞳面10aの画像を検出するイメージセンサ12bからA/D変換器15bを介して得られる対物レンズ9の瞳面10aのディジタル画像信号に基づいて移動機構19による二次光源である輪帯状の照明形成用の円板状マスク5の制御、及び移動機構39による減衰フィルタ38の制御と、エッジ検出器21から検出されるエッジ信号に基づいて比較回路17における比較と、ドライバ45によるXYZθステージ2の制御とを行うCPU21から構成された欠陥検出のための画像処理及び制御系から構成される。なお、18は比較回路17から得られる欠陥判定出力である。そしてこの欠陥判定出力18はCPU20にも入力されて被検査対象物1上における欠陥発生位置(座標)を付加して少なくとも被検査対象物1の単位毎、所定の製造工程からサンプリングされた複数の被検査対象物1の単位毎に記憶手段(図示せず)に記憶される。この記憶手段に記憶された少なくとも被検査対象物1の単位毎、所定の製造工程からサンプリングされた被検査対象物1の工程単位毎の欠陥情報40がCPU20から出力される。この欠陥情報40には、欠陥判定出力18に基づいて得られる被検査対象物1上における欠陥発生位置(座標)が含まれると共に、CPU20において欠陥判定出力18に基づいて分類される図24に示す欠陥の種類(突起欠陥231、欠け欠陥236、オープン欠陥232、ショート欠陥234、変色欠陥233、汚染物235等)が含まれる。必ずしも、これらの欠陥の種類は、明確に分類されなくても良い。
図1において、ライトハウス24は、一次光源であるXeランプ3と、該Xeランプ3から出射した光を集める楕円鏡4と、多数の仮想の点光源から形成される二次光源としての輪帯状の照明を形成するための円板状マスク5とによって構成される。CPU20からの指令により円板状マスク(輪帯状の照明用二次光源)5をステップ状に回転させて種類の異なる輪帯状の照明(例えば図3に示す。内σがない場合は通常の照明に近くなる。)を切り換える移動機構19が備えられている。上記円形状マスク5は、多数の仮想の点光源から形成される輪帯状の二次光源であるから、この輪帯状の二次光源5からは輪帯状の拡散照明となる。
従って、円板状マスク(輪帯状の照明用二次光源)5から出射された輪帯状の照明は、コリメータレンズ6及びコリメータレンズ7により対物レンズ9の瞳10a上に図7、図9、図10に示すように入射照明光24として集光され、この集光された入射照明光は、対物レンズ9によって集光して、XYZステージ2(θステージは図示せず)上に載置されたLSIウエハ等の被検査対象物1上に照射する。なお、光量調整用フイルタ14は、被検査対象物1上に照射する光量を調整するものである。14aは、この光量調整用フィルタ14を駆動する駆動機構で、CPU20からの指令で制御される。上記LSIウエハ等の被検査対象物1上のパターンから0次反射回折光(正反射光)と、+、−側に1次、2次なる反射回折光とが生じる。このようにLSIウエハ等の被検査対象物1上のパターンから生じた0次反射回折光(正反射光)と、+、−側に1次、2次なる反射回折光との内、対物レンズ9の瞳10aに入射した反射回折光は、ハーフミラー8a及びハーフミラー8bで反射してズームレンズ13の瞳10b上に入射し、この反射回折光はズームレンズ13によってイメージセンサ12a上に集光されて結像される。イメージセンサ12aは、LSIウエハ等の被検査対象物1上のパターンから生じ、対物レンズ9の瞳10aに入射した反射回折光像を受光し、被検査対象物1上のパターンの反射回折光像の画像信号を出力することになる。対物レンズ9の瞳10aとズームレンズ13の瞳10bとは共役な関係にある。必要に応じて、このズームレンズ13の瞳10上に減衰フィルタ38を設けることによって対物レンズ9の瞳10aに入射した0次回折光を減衰させることができる。
一方、対物レンズ9の瞳10aに入射した反射回折光像は、収束レンズ11によってイメージセンサ12b上に結像されるようになっている。従って、イメージセンサ12bは、対物レンズ9の瞳10aに入射した反射回折光像を受光して対物レンズ9の瞳10aに入射した反射回折光像の画像信号を出力し、該画像信号から対物レンズ9の瞳10aに入射した反射回折光の状態を検出することができる。即ち、図13と図14とに示すように、LSIウエハ等の被検査対象物1上のパターンの周期性が異なると入射照明光24に対する1次回折光の発生状況が変わってきて対物レンズ9の瞳10aに入射する1次回折光も変動することになる。図13は、被検査対象物1上のパターンの密度(周期性)が高い場合を示し、図14は、被検査対象物1上のパターンの密度(周期性)が低い場合を示す。また後述する(数2)式の関係からも被検査対象物1上のパターンのピッチP(密度(周期性))または入射照明光24の波長λが変化すると入射照明光24の入射角ψに対する1次回折光の回折角度θも変化し、対物レンズ9の瞳10aに入射する1次回折光も変動することになる。
ところで、被検査対象物1において、例えばLSIウエハの場合、このLSIウエハの種類が変わると、パターンのピッチP(密度(周期性))も変わることになる。LSIのウエハにおいて、例えば256MDRAMや64MDRAMなどのように品種が変わるとパターンのピッチP(密度(周期性))も変化することになる。また品種が同一でも、工程が変わるとパターンの密度(周期性)も変わる場合があり、例えば配線工程における被検査対象物、拡散工程における被検査対象物などではパターンのピッチPが変わる。またLSIウエハにおける1つのチップ内においてメモリ部と周辺回路部においてパターンのピッチPが変化する。また被検査対象物1の断面構造に応じて入射照明光24の波長λを変えることが必要となる。例えば、被検査対象物1を形成する薄膜において膜厚変動が生じるため、この薄膜における光干渉によって被検査対象物からの反射光において変動が生じることになる。この反射光の変動を避けるために、薄膜における光干渉が生じにくい入射照明光24の波長λを選ぶために入射照明光24の波長λを変更することが必要となる。例えば、後の実施例に示すように、照明光学系において複数種類の波長の光を出射する光源を用いて波長選択フィルターによって入射照明光24の波長λを変更することができる。このように、被検査対象物1上のパターンのピッチP(密度(周期性))または入射照明光24の波長λが変化すると入射照明光24の入射角ψに対する1次回折光の回折角度θも変化し、対物レンズ9の瞳10aに入射する1次回折光も変動することになる。そこで、被検査対象物1の種類や断面構造に応じて該被検査対象物から発生する回折光の内、特に1次回折光を最適な状態で対物レンズ9の瞳10aに入射するように、輪帯状の照明用二次光源5のσ、即ち、被検査対象物1に照射する照明光の入射角ψを制御する必要がある。従って、CPU20は、イメージセンサ12bからA/D変換器15bを介して得られる対物レンズ9の瞳(フーリエ変換面)10a上のディジタルフーリエ変換画像信号に対してフーリエ変換画像解析を行い、このフーリエ変換画像解析結果に基づいてエッジ密度判定(被検査対象物1上のパターンの周期性密度判定)を行い、イメージセンサ12aから高密度の被検査対象物1上のパターンからの画像信号が忠実に得られるべく、対物レンズ9の瞳10aに入射した反射回折光像のディジタル画像信号が最適になるように、即ち、被検査対象物1上のパターンからの0次回折光と1次回折光とが対物レンズ9の瞳10aに十分入るように、移動機構19を駆動制御して最適な輪帯状の照明用二次光源5(例えば、図3及び図4に示す。図4には、内σが0の通常の光源も含まれている。)を選択する。
なお、照明は、いわゆる照明むらのないケーラー照明である。また、図示しないが、LSIウエハ等の被検査対象物1上のパターンからの反射回折光の像がイメージセンサ12aに明確に結ぶように焦点合わせがなされている。即ち、LSIウェーハ等の被検査対象物1上のパターン(表面)は、上述した検出光学系に対して自動焦点合わせされるものとする。そして、LSIウエハ等の被検査対象物1を載置したXステージを移動させながらイメージセンサ12aによりスキャン(走査)して撮像することによりイメージセンサ12aから被検査対象物1上のパターンの二次元の画像信号を得ることができる。この場合、Xステージの移動は、連続送り、ステップ送りでもよく、リピート送りでもよい。このようにしてイメージセンサ12aから得られる被検査対象物1上のパターンの二次元の画像信号を、A/D変換器15aによりA/D変換して二次元のディジタル画像信号を遅延メモリ16に記憶させて繰り返されるチップまたはセルの間遅延させ、この遅延された二次元のディジタル画像信号と、上記A/D変換器15aから出力された二次元のディジタル画像信号とを比較回路17によりチップ比較またはセル比較して、両ディジタル画像信号の不一致により欠陥18として検出する。
上記比較回路17は公知の技術であり、詳細な説明は省略し、簡単に説明する。この比較回路17は、本来同一となるように形成された被検査対象物1上のパターンの各々について遅延メモリ16及びA/D変換器15aの各々から得られる二次元の濃淡画像信号(ディジタル画像信号)に対して微分処理を施し、この微分処理によって得られる各濃淡画像信号の極性を比較してこの極性の不一致の画素数が設定値以下となるように上記比較する二つの濃淡画像信号を位置合わせし、この位置合わせされた二つの濃淡画像信号の差画像信号を検出し、この差画像信号を所望の閾値で二値化して欠陥を検出するものようにしたものである。なお、この比較回路17における比較処理については、本発明者らの特開平3−209843号公報に詳細に記載されている。また、上記エッジ検出器21は、イメージセンサ12aによって検出され、A/D変換器15aを介して得られる二次元のディジタル画像信号に基づいて被検査対象物1上のパターンのエッジを検出するものである。CPU20は、エッジ検出器21で検出された被検査対象物1上のパターンのエッジ情報を取り込み、比較回路17にフィードバックすることによって、比較回路17において二つの濃淡画像信号(ディジタル画像信号)の位置合わせを実行し、更に遅延メモリ16から読みだすタイミングを制御することによってチップ比較またはセル比較を行うことができる。
また、前記比較回路17は、上記に説明した回路に限定されることなく、他のの構成の比較回路を用いて差し支えないことはいうまでもない。また、A/D変換器15aから得られる指定したステージ座標上の位置の二次元のディジタル画像信号を遅延メモリ16に記憶し、CPU20にてこれを読み取り、解析することもできる。特に検査対象として被検査対象物1における欠陥を含む場合は、欠陥の特徴を解析でき、従って最適な検査条件を見出すことができる。次に上記輪帯状の照明を形成するための円板状マスク(輪帯状の照明用二次光源)5について図2、3、4、5を参照して説明する。即ち、図2は、図1に示す実施例における円板状マスク(多数種類の輪帯状の照明用マスク要素を配列したもの)の略示説明図である。図3は、図2に示す円板状マスク(多数種類の輪帯状の照明用マスク要素を配列したもの)の具体的一実施例を示す図である。図4は、図2に示す円板状マスク(多数種類の輪帯状の照明用マスク要素を配列したもの)の他の具体的実施例を示す図である。図5は、図3及び図4に示す一つの輪帯状の照明用マスク要素について説明するための図である。図2に示すように、円板状マスク5は、例えば多数種類の輪帯状の照明用マスク要素5−1、5−2、・・5−nを形成し、この円板状マスク5を回転駆動させる移動機構19により切り換えるものである。図3は、図2に示される多数種類の輪帯状の照明用マスク要素5−1、5−2、・・5−nを5a−1、5a−2、・・5a−nによって詳細に示した図である。即ち、図3における5a−1は内σと外σとの間を透明にしたリング状のマスク要素を示し、5a−2は5a−1より内σも外σも大きくしたリング状のマスク要素を示し、5a−nはリング状の透明部の一部を遮蔽したリング状のマスク要素を示す。
図4は、図2に示される多数種類の輪帯状の照明用マスク要素5−1、5−2、・・5−nを5b−1、5b−2、5b−3、5b−4、5b−5、5b−6、5b−7、5b−8、5b−9、5b−10によって詳細に示した図である。5b−1は内σが0.6、外σが1.0の間を透明にしたリング状のマスク要素を示し、5b−2は内σが0.4、外σが1.0の間を透明にしたリング状のマスク要素を示し、5b−3は内σが0.2、外σが1.0の間を透明にしたリング状のマスク要素を示し、5b−4は内σが0.4、外σが0.8の間を透明にしたリング状のマスク要素を示し、5b−5は内σが0.2、外σが0.8の間を透明にしたリング状のマスク要素を示し、5b−6は内σが0.4、外σが0.6の間を透明にしたリング状のマスク要素を示し、5b−7は内σが0.2、外σが0.6の間を透明にしたリング状のマスク要素を示す。これら5b−1〜5b−7までは輪帯状の照明用二次光源を形成する。5b−8はσが0.89の円形透明部で形成されたマスク要素を示し、5b−9はσが0.77の円形透明部で形成されたマスク要素を示し、5b−10はσが0.65の円形透明部で形成されたマスク要素を示す。これら5b−8〜5b−10まではσが異なる通常の二次光源を形成する。なお、σが1.0は、対物レンズ9の開口(NA(Numerical Aperture))(瞳の径に相当)と等しいことを示す。図5は、図4に示すリング状のマスク要素の具体的寸法を示すための図である。即ちMは遮光する不透明なマスク面である。そしてマスクの厚さtを2.3mmとする。そして5b−1〜5b−7までの各リング状のマスク要素における外σの直径の寸法、内σの直径の寸法を次の(表1)に示す。
なお、上記各リング状のマスク要素において、内σの内側を不透明にしたが、不透明にすると光量が減少するので、内σの内側を半透明に形成して光量を著しく減少させることなく、高密度の被検査対象物1上のパターンに対応させることができる。また内σと外σとの間においては透明に近い状態であれば良い。また上記実施例の場合内σと外σとの間をリング状の透明部で形成したが、円形透明部をリング状に多数並べて形成しても良いことは明らかである。以上説明したように円板状のマスク5上に多数種類のマスク要素を形成することにより、多数種類の2次光源が形成できるので、様々な被検査対象物1に対して適切な入射照明光を得ることができる。その結果、様々な被検査対象物1から得られる0次回折光と1次回折光(+1次回折光あるいは−1次回折光のいずれか)を対物レンズ9の開口(瞳)10a内に取り込むことができ、様々な被検査対象物1に対して十分な分解能を有する二次元の画像信号をイメージセンサ12aから得ることができる。次に輪帯状の照明を用いることによって被検査対象物上の高密度パターンに対して十分な分解能でもって二次元の画像信号が得られる理由について説明する。即ち、通常の照明の場合、図12に示す入射照明光30の入射角ψがほぼ0に近い状態となる。そして被検査対象物1のピッチPが細かい場合(高密度パターンの場合)後述する(数2)式の関係から0次回折光(m=0)の回折角θは上記入射角ψと同じになって対物レンズ9の瞳10a内に入るが、+1次回折光、−1次回折光ともにピッチPが小さいため回折角θが大きくなって対物レンズ9の瞳10a内に入らないことになる。これにより被検査対象物上の高密度のパターンからは0次の回折光のみとなり、即ち直流成分の光のみとなり、回折光に基づく被検査対象物上のパターンからの画像が得られなくなる。
上記の事項を、いわゆるアッベの回折理論によりさらに詳しく説明できる。
すなわち、入射照明光30の光軸に対する入射角ψと結像される空間周波数との関係については、アッベの回折理論が適用される。被検査対象物上の格子状パターンからの1次回折光が結像系(対物レンズ9)の瞳10a内を通過できるか否かにより、被検査対象物上の格子状パターンが結像できるかどうか決まる。回折光31が結像系(対物レンズ9)の瞳面10aの一点に集光し、この集光点が瞳10aの内側にあれば、回折光は結像系(対物レンズ9)を通過し、0次回折光と結像面上で干渉し、格子状パターンの像を結像する。なお、この構成おいては、焦点深度も深くなるという利点がある。被検査対象物上の格子状パターンの構造が細かくなると(ピッチPが細かくなると)、光軸に対する1次回折光のなす角度θは大きくなっていき、角度θが結像系(対物レンズ9)のNA(Numerical Aperture:開口)より大きくなると、結像系(対物レンズ9)の瞳10aを通過できず、上記格子状パターンは結像されなくなる。ところで、単なる斜め照明では光軸と光源を結ぶ面内で分解能が向上するが、他の面内では分解能は向上しない。このため任意の方向での分解能を向上させるには、上記したような輪帯状の照明を行って、更に被検査対象物のパターンの向きに応じて1次回折光が結像系(対物レンズ9)のNA内に入らない入射照明光を入射しないようにすることが必要である。なお、0次回折光が結像系(対物レンズ9)の瞳10a内に入らない照明方法は、いわゆる暗視野照明にあたる。もちろん、このように暗視野照明によって結像系(対物レンズ9)の開口内に1次回折光しか存在しなければ、分解能が極めて低いものとなる。
図1において、CPU20は、対物レンズ9の瞳10aのモニタであるイメージセンサ12bにより検出される情報に基づき、被検査対象物1のパターンが変化しても、常に1次回折光及び0次回折光とが対物レンズ9の瞳10a内に入るように、移動機構19を駆動制御して円板状マスク5(輪帯状の照明用二次光源)から構成される輪帯状の照明用光源を切り替えて輪帯状の照明を制御する。具体的には、CPU20は、イメージセンサ12bにより検出されるフーリエ変換面(対物レンズ9の瞳10aの面)の画像を用いて、移動機構19を駆動制御して円板状マスク5を5a−1、5a−2、・・または5b−1、5b−2、・・等に切り換えることにより、被検査対象物1のパターンに応じて、1次回折光23が対物レンズ9の瞳10a内に入らない入射照明光を、遮光したりもしくは強度を低下させるべく、上記輪帯状の照明を制御する。ただし、被検査対象物1のパターンに周期性が見られない場合、即ち、様々な回折角を持った広がりを有する回折光(回折成分が連続している)の場合には、孤立パターン(周期性がみられないパターン)とみなせるので、入射照明光の過度な斜方入射はやめて、適度な輪帯状の照明用二次光源(円板状マスク5による図4に示すマスク要素5b−4、5b−5、5b−6、5b−7(外σが小さいもの))や通常の円形状の照明用光源(図4に示すマスク要素5b−8、5b−9、5b−10)の照明を選択する。
また、エッジ検出器21は、イメージセンサ12aで検出される被検査対象物1のパターンの画像信号を微分し、しきい値処理によって被検査対象物1のパターンのエッジ情報を検出するものである。従って、CPU20は、エッジ検出器21で検出される被検査対象物1のパターンのエッジ情報に基づいて例えば、パターンのエッジで囲まれる面積を算出することによって被検査対象物1のパターン幅を算出し、この被検査対象物1のパターン幅に基づいて被検査対象物1の密度(ピッチP)を算出し、この算出された被検査対象物1のパターンの密度(ピッチP)に応じて、移動機構19を駆動制御して円板状マスク5から構成される輪帯状の照明用光源を切り替えて輪帯状の照明を制御する。例えば、パターンの密度が高いときは入射照明光をより斜めから入射させる。即ち、具体的には、CPU20は、算出される被検査対象物1のパターン密度を、予め設定された設定値と比較し、パターンの密度に応じて輪帯状の照明を制御、すなわち密度が高いほど斜め入射成分を多くするように、輪帯状の照明用光源として、図4に示すマスク要素5b−1、5b−2、5b−3(外σが大きいもの)を選択する。もちろん、CPU20が行う輪帯状の照明の制御は、前もって定めた条件(入力手段32によって入力されたステージ2に搭載される被検査対象物1のパターンの種類の情報または被検査対象物1の製造工程を管理しているホストコンピュータからのステージ2に搭載される被検査対象物1の工程を含めた種類の情報)により行ってもよい。即ち、ステージ2に搭載される被検査対象物1の種類が、例えば4MbDRAMメモリ素子の場合には、パターンの密度がそれほど高くなく、パターンを低分解能で認識できるため、予め設定した条件の輪帯状の照明(円形状の照明に近い輪帯状の照明(円板状マスク5による図4に示すマスク要素5b−4、5b−5、5b−6、5b−7(外σが小さいもの)))または円形状の照明(図4に示すマスク要素5b−8、5b−9、5b−10)を用い、16MbDRAMメモリ素子の場合には、高密度のパターンを高分解能で検出する必要があるため、予め設定した条件の高分解能となる輪帯状の照明(図4に示すマスク要素5b−1、5b−2、5b−3(外σが大きいもの))を用いるように輪帯状の照明を制御する必要がある。なお、円形状の照明において、σが図4に示すマスク要素5b−10(σが0.65)より小さい0.5程度のマスク要素を用いれば、深さが深い溝または穴のパターンの画像をイメージセンサ12aが受光して深さが深い溝または穴のパターンの高コントラストの画像信号を得ることができる。
また、例えばメモリ素子のセル部ではパターンの密度が高いため、予め設定した条件の輪帯状の照明により高分解能で、セル部以外のラフな領域では検査感度を落さないように(入射照明光の照明強度を落さないように)、通常の円形状の照明を用いることも可能になる。このようにして、円形状の照明も含め、様々な輪帯状の照明を用いることにより、種々のパターン(回路パターン)に対して対物レンズ(結像光学系)9により高分解能で、且つ高感度で検出することができ、特に集積度が増加するのに伴って生じる高密度のパターンに対して対応することができる。また、焦点深度を犠牲にしないように、必要以上の対物レンズ(結像光学系)9のNA(Numerical Aperture:開口)を確保する必要もない。また、対物レンズ9の瞳10aの位置と共役な位置10bに光強度を部分的に制御する手段(減衰フィルタ38)を設け、この光強度を部分的に制御する手段(減衰フィルタ38)により、1次回折光が対物レンズ9の瞳10aに入らない場合、対物レンズ9の瞳10aに入って減衰フィルタ38に到達する0次回折光を遮光したり、もしくは強度を低下させる。また、+1次回折光と−1次回折光と0次回折光とが対物レンズ9の瞳10aに入る場合には、上記光強度を部分的に制御する手段(減衰フィルタ38)により、1次回折光と0次回折光との強度を一致させるように制御することもできる。即ち、CPU20は、対物レンズ9の瞳10aのモニタであるイメージセンサ12bにより検出される情報に基づき、被検査対象物1のパターンに応じて、イメージセンサ12aが0次回折光と1次回折光とをバランスさせて受光するように移動機構39を駆動制御して光強度を部分的に制御する手段(減衰フィルタ38)を切り替えて部分的に透過率(減衰率)を制御することができる。
次に、被検査対象物1として、図6に示すようなLSIウエハパターンにおける格子状のパターンを例にして、輪帯状の照明を用いて格子状のパターンを高解像度で検出することについて説明する。即ち、図6は、LSIウエハパターンの周辺回路部におけるラインとスペースとからなる格子状のパターンを示す略示図である。図6において、101はY軸方向に延びたパターンライン(ゲートも含む配線パターン)を示す。この格子状のパターンライン101はX軸方向にはピッチPで繰り返されるものである。またこのパターンライン101の間にはスペース(絶縁物等で形成される場合もある。)が形成されている。図7には、図6に示す格子状のパターンに対して照明する輪帯状の入射照明光24と、光軸33を通るXZ面において入射させる入射照明光24aによって図6に示す格子状のパターンから反射して得られる0次回折光22a及び+1次回折光25a、−1次回折光26aとを対物レンズ9の瞳10a上において概略示す略示説明図である。図8は、図7に示す入射照明光24aによって図6に示す格子状のパターンから反射して得られる0次回折光22a及び+1次回折光25a、−1次回折光26aとを光軸33を通るXZ面において概略示す略示説明図である。即ち、図7及び図8に示す如く、対物レンズ9の瞳10a上をモニタであるイメージセンサ12bにより検出した画像上では、瞳10a内において0次回折光22aと+1次回折光25aとが点状ではなく、面積を持ったものとして観測される。なお、34は、輪帯状の照明24による格子状のLSIウエハパターン上の照明範囲を示す。
図6に示す如く、格子状のLSIウエハパターンがY軸の方向に向いている場合では、図7及び図8に示すように0次回折光22aは後述する(数2)式の関係から入射照明光24aの入射角ψと0次回折光22aの出射角θとは同一となり入射照明光24aと対称な位置に生じ、+1次回折光25a、−1次回折光26aは後述する(数2)式の関係でもって左右の位置に生じる。格子状のLSIウエハパターンがY軸の方向に向いているため、+1次回折光25a、−1次回折光26aは、瞳内の左右の位置に生じるが、上下の位置には生じないか、生じたとしても弱い。しかし、図7及び図8からわかるように、輪帯状の照明24をすることによって、0次回折光22はもとより、必ず+1次の回折光25または−1次の回折光26を対物レンズ9の瞳10a内に入射させることができ、イメージセンサ12aによって格子状のLSIウエハパターンの画像信号を高解像度で検出することができる。
図9は、図6に示す格子状のパターンに対して照明する輪帯状の入射照明光24と、光軸33を通るYZ面において入射させる入射照明光24bによって図6に示す格子状のパターンから反射して得られる0次回折光22b及び+1次回折光25b、−1次回折光26bとを対物レンズ9の瞳10a上において概略示す略示説明図である。即ち、格子状のLSIウエハパターンがY軸の方向に向いているため、0次回折光22bは後述する(数2)式の関係から入射照明光24bの入射角ψと0次回折光22bの出射角θとは同一となり入射照明光24bと対称な位置に生じ、+1次回折光25b、−1次回折光26bは図9に示すように対物レンズ9の瞳10a内に入射する状態になる。しかし、格子状のLSIウエハパターンがY軸の方向に向いているため、+1次回折光25b、−1次回折光26bは対物レンズ9の瞳10a内に入射したとしても弱く、格子状のLSIウエハパターンの解像度に大きく寄与しないので、図3に示すマスク要素5a−nを用いてY軸方向の輪帯状の照明を除去しても良い。また、これらの1次回折光23bは0次回折光22bに比べて弱くなるが、図9に示すように、+1次の回折光25bと−1次の回折光26bの両方が対物レンズ9の瞳10a内に入射させた場合においては、0次回折光22bが対物レンズ9の瞳10aに入射してイメージセンサ12aで受光したとしても、格子状のLSIウエハパターンの解像度がそれ程低下することにはならない。
図10には、対物レンズ9の瞳10a(NA)に対して輪帯状の照明の外σ及び内σのそれぞれを図7ないし図9に示すものより大きくした場合における図6に示す格子状のパターンに対して照明する輪帯状の入射照明光24’と、光軸33を通るXZ面及びYZ面において入射させる入射照明光24’a、24’bによって図6に示す格子状のパターンから反射して得られる0次回折光22’a、22’b及び+1次回折光25’a、25’b、−1次回折光26’a、26’bとを対物レンズ9の瞳10a上において概略示す略示説明図である。図10に示す如く、対物レンズ9の瞳10a(NA)に対して輪帯状の照明の外σ及び内σのそれぞれを図7ないし図9に示すものより大きくした場合には、両方の+1次回折光25’b、及び−1次回折光26’bが瞳10a内に入射されないことになり、0次回折光22’bをイメージセンサ12aで受光すると格子状のパターンの解像度を落すことになる。従って、これらY軸方向に向いた0次回折光22’bを発生させないように、図3に示すマスク要素5a−nを用いてY軸方向の輪帯状の照明をなくすことによって実現することができる。また図3に示すマスク要素5a−nと同様な光強度を部分的に制御する手段(減衰フィルタ38)を対物レンズ9の瞳10aの位置と共役な位置10bに設置してY軸方向に向いた0次回折光22’bを遮光することによって、0次回折光22’bをイメージセンサ12aで受光しないようにすることができる。このように構成すれば、輪帯状の照明の外σ及び内σのそれぞれを、対物レンズ9の瞳10a(NA)に対して大きくして照明しても格子状のパターンをイメージセンサ12aによって高解像度で検出することができる。
ところで、図10に示す実施例においては、対物レンズ9の瞳10a(NA)に対して輪帯状の照明の外σ及び内σのそれぞれを図7ないし図9に示すものより大きくした場合について示したが、輪帯状の照明の外σ及び内σのそれぞれを図7ないし図9に示すものにして、対物レンズ9の瞳10a(NA)を小さくした場合も、対物レンズ9の瞳10a(NA)に入射する回折光の発生状態は、図10に示す実施例と同様になり、0次回折光22’bをイメージセンサ12aで受光しないようにすることが必要となる。また後述する(数2)式の関係から明らかなように格子状のパターンのピッチPが図7ないし図9に示す場合より細かくなった場合、また輪帯状の照明光の波長λが図7ないし図9に示す場合より長くなった場合には、対物レンズ9の瞳10a(NA)に入射する回折光の発生状態は、図10に示す実施例と同様になり、0次回折光22’bをイメージセンサ12aで受光しないようにすることが必要となる。次に、輪帯状の照明による格子状のパターンから得られる回折現象について説明する。まず、任意の輪帯状の照明のσ値と光軸33に対する入射角ψとの関係を図11及び図12を参照して説明する。即ち、図11は、被検査対象物1の格子状パターン面へ照明する入射照明光30における対物レンズ9の光軸33に対するσ値とその入射角ψとの関係を示す説明図、図12は、入射角ψと回折光31の出射角(回折角)θとの関係を示す説明図である。図11において、対物レンズ9の瞳10aに入射する輪帯状の照明のσ値と被検査対象物1に照射される入射角ψとでは、下式が成立する。
σ1:σ2=sinψ1:sinψ2
sinψ2=(σ2/σ1)×sinψ1
本検討においては、対物レンズ9として色収差が補正されたもので、倍率が40倍(x40)でNA=0.8のものを用いる。この対物レンズ9の場合、最大入射角は、σ=1.0のときには、NA=sinψmax=0.8を満足する。即ち、σ=1.0は、対物レンズ9のNA(開口)(射出瞳)を示している。
sinψ=(σ/1)×0.8=0.8σ
これより入射角ψは、次に示す(数1)式の関係から得られる。
ψ=sin−1(0.8σ) (数1)
つぎに、入射角ψと回折角θとの関係を説明する。
図12において、第m次回折光31の回折角θは、次に示す(数2)式の関係を有する。
P=mλ/(sinψ−sinθ)
sinθ=sinψ−mλ/P
θ=asin(sinψ−(mλ/P)) (数2)
なお、(数2)式において、λは照明光の波長(μm)、θは回折角(出射角)、Pはパターンピッチ(μm)、mは回折光の次数を示すものである。また(数2)式において、asinは、arcsinを表すものである。上記の(数1)式、(数2)式に基づき、波長λと被検査対象物のパターンピッチPとを変えたときの輪帯状の照明のσ値に対する理論値(入射角ψと回折角θ)が下記の(表2)、(表3)、(表4)、(表5)に示される。
上記(表2)は波長λが0.4μmで、パターンピッチPが0.61μmの場合を示し、上記(表3)は波長λが0.6μmで、パターンピッチPが0.61μmの場合を示し、上記(表4)は波長λが0.4μmで、パターンピッチPが0.7μmの場合を示し、上記(表5)は波長λが0.6μmで、パターンピッチPが0.7μmの場合を示し、入射角ψと回折角θとは上記(数1)式及び(数2)式に基づいて算出される。なお、LSIウエハパターンにおいて、パターンピッチP=0.61μmは256Mbが対応し、パターンピッチP=0.7μmは64Mbが対応する。また、表中にて−印は、計算不可能(理論的には−1次回折光が発生しないこと)を示している。また、1次回折光の回折角θが53.13度以上の場合には、NA=0.8の対物レンズ9の瞳10a内に入らないことになる。
これらの理論値による輪帯状の照明(σ値=0.4、0.6)24と格子状のパターン(図13がパターンピッチP=0.61μm、図14はパターンピッチP=0.7μm)から強められて得られる+1次回折光25、25”との関係を図13及び図14に示している。図13(a)は、σ値=0.4、0.6の輪帯状の照明(波長λは0.4μm〜0.6μmの範囲とする。)24によるパターンピッチP=0.61μmの格子状のパターン(LSIウエハパターンにおける256Mbに対応する。)から強められて得られる+1次回折光25を示し、図13(b)は、σ値=0.4、0.6の輪帯状の照明(波長λは0.4μm〜0.6μmの範囲とする。)24による入射角ψと、パターンピッチP=0.61μmの格子状のパターン(LSIウエハパターンにおける256Mbに対応する。)から得られる+1次回折光の回折角θの範囲を示す線図である。図13(b)に示す+1次回折光の回折範囲(回折角θの範囲)は、(表2)及び(表3)におけるσ値=0.4、0.6の輪帯状の照明に対応するものである。そして図13(b)に示す斜線が交叉している領域が、σ値=0.4、0.6の輪帯状の照明によってパターンピッチP=0.61μmの格子状のパターンから強められて得られる+1次回折光の領域(輪帯状の照明光の平均波長(波長λが0.5μm)の場合における+1次回折光の領域に対応する。)を示す。即ち、図13(a)に、パターンピッチP=0.61μmの格子状のパターンから強められて対物レンズ9の瞳10a上に入射する+1次回折光の輪帯状の領域25を示す。
図14(a)は、σ値=0.4、0.6の輪帯状の照明(波長λは0.4μm〜0.6μmの範囲とする。)24によるパターンピッチP=0.7μmの格子状のパターン(LSIウエハパターンにおける64Mbに対応する。)から強められて得られる+1次回折光25”を示し、図14(b)は、σ値=0.4、0.6の輪帯状の照明(波長λは0.4μm〜0.6μmの範囲とする。)24による入射角ψと、パターンピッチP=0.7μmの格子状のパターン(LSIウエハパターンにおける64Mbに対応する。)から得られる+1次回折光の回折角θの範囲を示す線図である。図14(b)に示す+1次回折光の回折範囲(回折角θの範囲)は、(表4)及び(表5)におけるσ値=0.4、0.6の輪帯状の照明に対応するものである。そして図14(b)に示す斜線が交叉している領域が、σ値=0.4、0.6の輪帯状の照明によってパターンピッチP=0.7μmの格子状のパターンから強められて得られる+1次回折光の領域(輪帯状の照明光の平均波長(波長λが0.5μm)の場合における+1次回折光の領域に対応する。)を示す。即ち、図14(a)に、パターンピッチP=0.7μmの格子状のパターンから強められて対物レンズ9の瞳10a上に入射する+1次回折光の輪帯状の領域25”を示す。
この図13と図14とを比較するに、パターンピッチPが細かくなれば、1次回折光の回折角θが大きくなることが示され、輪帯状の照明が必要となることが明らかである。このように、図13及び図14に示すσ値=0.4、0.6の輪帯状の照明は、図4に示す5b−6のマスク要素を用いることによって実現することができる。以上の説明は、上記(数1)式及び(数2)式に基づくものであるが、実際発明者が実験したところ、対物レンズ9の瞳10a上をモニタであるイメージセンサ12bにより検出した画像からほぼ同様な結果(図13に示す結果:パターンピッチP=0.61μmの格子状のパターン(LSIウエハパターンにおける256Mbに対応する。)、図14に示す結果:パターンピッチP=0.7μmの格子状のパターン(LSIウエハパターンにおける64Mbに対応する。))が得られた。
以上、図7乃至図14に示す実施例では、図6に示すようにLSIウエハパターンにおいてX軸方向に繰り返される格子状のパターンの場合について説明したが、実際にはLSIウエハパターンにおいて図15に示すようなY軸方向に繰り返されるパターンライン102からなる格子状のパターンも存在することになる。そこで、輪帯状の照明24によって図15に示すようなY軸方向に繰り返されるパターンライン102からなる格子状のパターンから得られる回折光22a、25a、26aが対物レンズ9の瞳10aに入射する状態は、図16に示すようになる。図6に示すパターンライン101からなる格子状のパターンと図15に示すパターンライン102からなる格子状のパターンとは90度回転させたものであるため、図16に示す状態は、図7に示す状態を90度回転させたものとなる。従って、図15に示すパターンライン102からなる格子状のパターンについての回折光の発生状態は、図8乃至図10に示す回折光の発生状態を90度回転させたものとなる。即ち、輪帯状の入射照明光24の内、光軸33を通るYZ面において入射させる入射照明光24aによって図15に示す格子状のパターンから反射して得られる0次回折光22a及び+1次回折光25a、−1次回折光26aは、対物レンズ9の瞳10a上に図16に示すように入射することになり、パターンライン102と直交する方向の入射照明光24aが解像度の向上に有効であることがわかる。しかし、図9について説明したのと同様に、輪帯状の入射照明光24の内、光軸33を通るXZ面において入射させる入射照明光によって図15に示す格子状のパターンから反射して得られる+1次回折光25b、−1次回折光26bが対物レンズ9の瞳10a内に入射したとしても、0次回折光22bに比べて弱く、解像度の向上に寄与しないので、図3に示すマスク要素5a−mを用いて輪帯状の入射照明光24の内、X軸方向(光軸33を通るXZ面)において入射させる入射照明光を除去することが好ましい。
何れにしても、CPU20は、輪帯状の照明によって格子状のパターンから発生して対物レンズ9の瞳10a内に入射する回折光の分布状態を、対物レンズ9の瞳10a(フーリエ変換面)上の画像(0次回折光25aの発生位置及びその明るさ、並びに+1次回折光25aの発生位置及びその明るさ)を受光するイメージセンサ12bから得られる画像信号に基づいて検出することができる。即ち、CPU20は、イメージセンサ12bから得られる画像信号に基づいて検出される対物レンズ9の瞳10a内に入射する回折光の分布状態(0次回折光25aの発生位置及びその明るさ、並びに+1次回折光25aの発生位置及びその明るさ)に基づいて、移動機構19を駆動制御してマスク要素を選択し、被検査対象物1の格子状のパターン(LSIウエハパターン)に適する輪帯状の照明を得ることができる。その結果、イメージセンサ12aから被検査対象物1の格子状のパターン(LSIウエハパターン)の高解像度の画像信号を得ることができる。
次に、対物レンズ9の瞳10aの位置と共役な位置10bに設けた光強度を部分的に制御する手段(減衰フィルタ38)の作用について説明する。即ち、図9及び図10に示すように、対物レンズ9の瞳10a内に入射し、イメージセンサ12aにより受光することの必要でない0次回折光22b,22’bなどを減衰フィルタ38で遮光することができる。この場合、減衰フィルタ38は空間フィルタの役目をすることになる。また図8及び図16に示すように対物レンズ9の瞳10a内に入射した0次回折光22aの強度を、図17及び図18に示すように対物レンズ9の瞳10aの位置と共役な位置10bに設けた減衰フィルタ38により制御することにより、イメージセンサ12aは対物レンズ9の瞳10a内に入射した0次回折光22aの強度と+1次回折光25aの強度とをバランスさせて受光することができ、その結果被検査対象物1の格子状のパターンの画像を高解像度で、且つ高コントラストで検出することができる。上記減衰フィルタ38の形状としては、図3に示すマスク要素5a−1・・と同様の形状をもつものである。ただし、図3に示す如く、リング状の形状をもつ必要は必ずしもなく、任意の位置の光強度を制御できるものであれば、どんな形状のものでもよい。しかし、減衰フィルタ38の形状としてリング状の形状を用いる場合には、0次回折光22aと+1次回折光25aとを同じリング状の領域に発生しないように、輪帯状の照明24を最適化する必要がある。
図17は、輪帯状の照明24aによって被検査対象物1の格子状のパターンから発生する0次回折光22a及び+1次回折光25a等が、対物レンズ9の瞳10a及びこの瞳10aと共役な位置の瞳10bに進む状態を示す図である。図18は対物レンズ9の瞳10aと共役な位置の瞳10b上に配置された減衰フィルタ38を示す図である。即ち、対物レンズ9の瞳10a内に入射した0次回折光22aと+1次回折光25aとの内、0次回折光22aが瞳10b上にて減衰フィルタ38により強度が制御されることがわかる。図19は減衰フィルタ38aを略示する図であり、(a)は減衰フィルタ38aの透過特性を示し、(b)はその形状を示す。図20は他の減衰フィルタ38bを略示する図であり、(a)は減衰フィルタ38bの透過特性を示し、(b)はその形状を示す。このように減衰フィルタ38の透過特性およびその形状を、輪帯状の照明24aによって被検査対象物1の格子状のパターンから発生する0次回折光22a及び+1次回折光25aに合わせて最適化すれば良い。
なお、輪帯状の照明が被検査対象物1の格子状のパターン(LSIウエハパターン)に応じて最適化可能な場合には、上記減衰フィルタ38を設置する必要はない。しかし、輪帯状の照明だけで、最適化するためには、被検査対象物1上の様々なパターンに対応できるように様々な種類の輪帯状の照明を用意して選択することが必要となる。そこで、輪帯状の照明の選択を最小限にする場合には、受光する側で減衰フィルタ38などを用いて回折光の強度を制御してイメージセンサ12aにより被検査対象物1の格子状のパターンの画像を高解像度で、且つ高コントラストで検出することが望ましい。この減衰フィルタ38についても、CPU20は、イメージセンサ12bから得られる画像信号に基づいて検出される対物レンズ9の瞳10a内に入射する回折光の分布状態(0次回折光25aの発生位置及びその明るさ、並びに+1次回折光25aの発生位置及びその明るさ)に基づいて、移動機構39を駆動制御して減衰フィルタ38を選択し、被検査対象物1の格子状のパターン(LSIウエハパターン)に適する0次回折光及び1次回折光の強度を得ることができる。その結果、イメージセンサ12aから被検査対象物1の格子状のパターン(LSIウエハパターン)の高解像度の画像信号を得ることができる。
何れにしても、被検査対象物1上の様々なパターンに対応できるように輪帯状の照明だけで、最適化することは難しいので、上記の如く減衰フィルタ38を用いてイメージセンサ12aが受光する回折光の強度を制御し、また比較回路17またはCPU20が行う画像処理において閾値等を制御して検出感度を制御することが必要となる。このように比較回路17またはCPU20が行う画像処理における閾値等の制御は、イメージセンサ12bが検出する対物レンズ9の瞳10bの画像またはイメージセンサ12aが検出する被検査対象物1上のパターンの画像に基づいて行うようにすれば良い。CPU20は、例えば、イメージセンサ12bが検出するフーリエ変換面の画像(対物レンズ9の瞳10bの画像)における回折光の局所性分布(広がりを含めた発生位置およびその強度)に応じて、例えばメモリセルなどのように繰返し性の高いパターンを有する領域であると判断して、比較回路17またはCPU20が行う画像処理において閾値等を制御して検出感度を高めるようにすれば良い。逆に繰返し性の低いパターンを有する領域と判断される場合には、比較回路17またはCPU20が行う画像処理において閾値等を制御して検出感度を低くすれば良い。
特に比較回路17またはCPU20が行う画像処理により、被検査対象物1上のパターンにおける欠陥を検査する場合にも、例えば、イメージセンサ12bが検出するフーリエ変換面の画像(対物レンズ9の瞳10bの画像)における回折光の局所性分布(広がりを含めた発生位置およびその強度)に応じて、閾値等を制御して検出感度を高めるようにすれば、輪帯状の照明により例えばメモリセルなどのように繰返し性の高いパターンを有する領域における欠陥を容易に検出することができる。次に、多数の仮想の点光源から形成される円板状マスク(輪帯状の照明用二次光源)5から出射される輪帯状の照明のリング形状を変える他の実施例を図21及び図22を用いて説明する。即ち、図21及び図22は、各々輪帯状の照明を制御する他の実施例を略示する図である。図21においては、Xeランプ3と楕円鏡4と輪帯照明を形成するための円板状マスク5とにより構成されたランプハウス24を、コリメータレンズ6に対して光軸方向に移動させることにより、リング形状を変え、輪帯状の照明を制御するものである。図22においては、コリメータレンズ6を、Xeランプ3と楕円鏡4と輪帯照明を形成するための円板状マスク5とにより構成されたランプハウス24に対して光軸方向に移動させることにより、リング形状を変え、輪帯状の照明を制御するものである。
なお、図1、図21、図22に示す多数の仮想の点光源から形成される輪帯状の照明用二次光源5を形成するランプハウス24の実施例においては、Xeランプ3を縦方向に配置した場合を示すが、このようにXeランプ3を縦方向に配置した場合には光軸方向の光束が少なくなるので、Xeランプ3を横方向に配置して光軸方向の光束が多くなるように構成することもできる。また、ランプハウス24内の光源としては、Xeランプのみならず、Hgランプ、ハロゲンランプなども用いても差し支えない。また、多数の仮想の点光源から形成される円板状マスク(輪帯状の照明用二次光源)5を被検査対象物1のパターンに応じて選択した場合、輪帯状の照明用二次光源5から出射される輪帯状の照明の光量が大幅に変動することが生じるので、図1に示すイメージセンサ12aが受光する光量が大幅に変化しないように、CPU20はイメージセンサ12aからA/D変換器41を介して得られる画像信号41に基づいてNDフィルタ等の光量調整フィルタ14を制御することによって光量制御を行う。
〔第2の実施例〕
次ぎに、本発明に係る輪帯状の照明を用いた被検査対象物1のパターン検査等に用いられる顕微鏡システム(顕微鏡観察システム)について図23を用いて説明する。本実施例は、本発明に係る顕微鏡システム(顕微鏡観察システム)をLSIウエハパターン等の被検査対象物1のパターン検査に適用した場合である。図23は、本発明の第2の実施例に係る顕微鏡システム(顕微鏡観察システム)を略示した説明図である。図23において、図中、図1と同一符号は同等部分であるので再度の説明は省略する。図23に示す多数の仮想の点光源から形成される輪帯状の照明を用いた顕微鏡システムは、図1に示されるパターン検査装置と共通部分の説明を省略し、特徴部分のみを説明する。即ち、図23において、図1のイメージセンサ12a、12bには、TVカメラ12a’、12b’を使用し、その出力画像をモニタ27a,27bにより、作業者が目視観察できるようになっている。なお、12a’、12b’は画像を検出できるものであれば良く、TVカメラでなく、イメージセンサで構成しても良い。すなわち、TVカメラ12a’はパターン画像を、TVカメラ12b’は対物レンズ9の瞳10a上の画像を検出し、各々の画像をモニタ27a,27bに表示する。また、試料台2をドライバ45によりX,Y,Z,θ(回転)軸方向に駆動制御して移動できるように、コントローラ46が接続されている。このコントローラ46は、TVカメラ12b’で検出されてモニタ27b上に表示される対物レンズ9の瞳10a内に入射した0次を含む1次回折光の局所性分布の画像に基づいて、移動機構19、ランプハウス24、コリメータレンズ6を駆動制御して被検査対象物1のパターンに適切な輪帯状の照明または通常の円形状の照明を選択する。移動機構19による円板状マスク5を駆動制御する場合には、円板状マスク5に形成されたマスク要素を選択すれば良い。またランプハウス24、コリメータレンズ6を駆動制御する場合には、図21、図22に示すように、相対的に矢印方向に駆動制御すれば良い。
またコントローラ46は、TVカメラ12b’で検出されてモニタ27b上に表示される対物レンズ9の瞳10a内に入射した0次を含む1次回折光の局所性分布の画像に基づいて、移動機構39を駆動制御して被検査対象物1のパターンに適切な減衰フィルタ38を選択する。なお、輪帯状の照明用二次光源5により被検査対象物1のパターンに適切なまたは通常の円形状の照明が選択できれば、必ずしも減衰フィルタ38を設置する必要はない。またコントローラ46は、TVカメラ12a’で検出されてモニタ27a上に表示される被検査対象物1のパターンの画像に基づいて、制御機構14bを駆動制御して被検査対象物1のパターンから得られる光量が適切になるように、光量制御フィルタ14を制御する。このように輪帯状の照明を用いた顕微鏡観察システムによれば、LSIウエハパターンのように64MbDRAM,256MbDRAMのメモリ素子のように、格子状のパターンのピッチP(例えば0.7μm、0.61μm)が、照明光の波長λ(例えば400〜600nm)に近くなって高密度になったとしても、この高密度のパターンを、TVカメラ12a’で検出されてモニタ27a上に表示される被検査対象物1のパターンの画像により高解像度で、かつ高コントラストで観察することができる。なお、円形状の照明において、σが0.5程度のマスク要素を用いて照明すれば、深さが深い溝または穴の画像をTVカメラ12a’によって受光してモニタ27aに高コントラストで表示することができる。
〔第3の実施例〕
次に、上記第1及び第2の実施例における変形例について説明する。
即ち、上記第1及び第2の実施例においては、輪帯状の照明及び円形状の照明に基づいて説明したが、上記輪帯状の照明には、いわゆる変形照明(斜め照明)(この変形照明は、少なくとも0次回折光および1次もしくは2次の回折光が対物レンズ9の瞳10a内に入射される照明条件をさすものである。)も含むものである。暗視野照明は、通常0次回折光が対物レンズ9の瞳10a内に入射されないので、変形照明(斜め照明)には、含まれない。また、上記第1及び第2の実施例においては、減衰フィルタ38として、図19及び図20に示すように光の透過率を減衰させるものであるが、位相シフト法と呼ばれる方法、すなわち位相膜を用いて0次回折光22aの位相をシフトさせてイメージセンサ12aが受光する+1次回折光25aに比べて0次回折光22aの光量を減衰させても良い。即ち、対物レンズ9の瞳10aの位置と共役な位置10bに光強度を部分的に制御する手段(減衰フィルタ)38を設けたが、この位置10bに位相板を置いてもよい。例えば、0次回折光22aの位相を+1次回折光25aの位相に対してπ/2だけ進めてイメージセンサ12bで受光する0次回折光22aを弱めることができる。また、この位相板に吸収特性を具備させて、イメージセンサ12bで受光する0次回折光22aを弱めることもできる。
また、上記第1及び第2の実施例においては、0次回折光と±1次回折光という枠組みで論じたが、0次回折光(非回折光)と回折光(±1次回折光または±2次回折光など)という枠組みにも適用できることはいうまでもない。即ち、パターンのピッチPが細かくなった(パターンが高密度になった)としても、パターンから得られる0次回折光と+2次回折光または−2次回折光とが対物レンズ9の瞳10a内に入射するように輪帯状の照明を施すようにしても良い。通常は前記(数2)式の関係で示されるように、1次回折角の方が2次回折角より小さいことになる。しかし、パターンのピッチPや輪帯状の照明の波長λにより2次回折角が1次回折角より小さくなる場合がありえる。また、上記第1及び第2の実施例においては、ライトハウス24内の光源として、例えばXeランプ3の実施例(寸法について明記していない。)を示したが、大きな光源(即ち、インコヒーレント光を照射する光源)でもよいし、点光源(即ち、コヒーレント光を照射する光源)でもよい。また、光源を選ぶことによって、1次光源のみ(マスク要素なし)で、適切なσ値を得ることもできる。また、上記第1及び第2の実施例においては、輪帯状の照明の波長λとして、通常の400〜600nmの波長で説明したが、上記各実施例において、照明波長について記述していないが、輪帯状の照明の波長λとして、所謂i線(約365nm)などの波長でも良いし、勿論エキシマレーザ光(紫外光)のような短波長でも良い。輪帯状の照明光として、エキシマレーザ光(紫外光)のような短波長の光を用いれば、解像度がより一層向上することはいうまでもない。
また、上記第1及び第2の実施例における輪帯状の照明の制御は、被検査対象物のパターンの種類毎(例えばLSIウエハパターンの場合には、プロセス工程毎またはLSIウエハの品種毎)に行っても差し支えない。勿論、1つのLSIウエハ内で、輪帯状の照明をダイナミックに制御しても差し支えない。また被検査対象物1のパターンの欠陥検査の場合には、感度の制御を上記輪帯状の照明の制御と同様に被検査対象物のパターンの種類毎に行っても良く、また1つのLSIウエハ内でダイナミックに行っても良い。
また、上記第1及び第2の実施例におけるランプハウス24内の一次光源(Xeランプ3)を含めた輪帯状の照明用二次光源の調整は、被検査対象物1として鏡面ウエハを用いて対物レンズ9の瞳10a上におけるリング状の照度分布(イメージセンサ12bで検出される対物レンズ9の瞳10a上におけるリング状の0次回折光22の分布)が一様になるように行えば良い。即ち、被検査対象物1として鏡面ウエハを用いてイメージセンサ12bで検出される対物レンズ9の瞳10a上におけるリング状の0次回折光22の分布が一様になるように、輪帯状の照明用二次光源を形成する例えばXeランプ3の位置や楕円鏡4の位置を調整することによって行えば良い。また、上記第1及び第2の実施例においては、イメージセンサ12b、12b’で検出される対物レンズ9の瞳10a上の回折光(0次回折光及び+1次回折光)の局所性分布(広がりを含めた位置及び明るさ)に基づく画像情報(モニタ情報)が、CPU20またはコントローラ46により各部の条件制御に使用されていることを説明した。即ち、この各部の条件制御として、輪帯状の照明の制御(例えば図3、図4に示した内σ、外σの値や入射範囲の制御)及び光量調整フィルタ14による光量の制御などの照明条件の制御、減衰フィルタ38による検出光量の制御、並びに比較器17等における検出感度の制御がある。またCPU20またはコントローラ46は、イメージセンサ12b、12b’で検出される対物レンズ9の瞳10a上の回折光の局所性分布に基づく画像情報から、例えばメモリ素子などでは繰返し部の領域か、それ以外の領域かを識別することができ、その結果、識別された繰返し部の領域か、それ以外の領域かに応じて適切な円形状の照明を含めて輪帯状の照明の制御を行うことができる。
〔第4の実施例〕
次ぎに、輪帯状の照明を用いて光学的に解像度を向上させてLSIウエハパターンとしてメモリセル部における欠陥を検査する実施例について、図24〜図27を用いて説明する。即ち、図24は、LSIウエハパターンのメモリセル部における欠陥を示す図である。図25は、このLSIウエハパターンとA/D変換器15aから得られる検出画素との関係を示す図である。図26は、輪帯状の照明によって高密度パターンから高解像度でイメージセンサ12aによって受光して得られる画像信号波形を示す図である。図27には、図26に示す画像信号に対してA/D変換器15aで行うサンプリングについて説明するための図である。LSIウエハパターンのメモリセル部においては、図24に示す如く、パターン上に種々の欠陥(即ち突起231、オープン232、変色233、短絡234、欠け235、汚染物236等)が存在し、これらの欠陥231〜236を高信頼度で検出するためには、まずイメージセンサ12aにより前記パターンを画像信号として高解像度に検出できなければならない。ところで、輪帯状の照明を用いることにより、図26(a)に示すパターンに対してイメージセンサ12aからは、図26(b)に示す高解像度の画像信号が得られる。図26(a)は、図24に示すパターンの一部を拡大して示しており、図26(b)は、パターンA−A’において、横軸にその位置、縦軸にイメージセンサ12aから得られる画像信号(パターン検出信号)における明るさの波形を示すものである。図26においては、輪帯状の照明を用いてイメージセンサ12aから、ターンのエッジ情報が現われた高解像度の画像信号を得た場合を示す。ところで、輪帯状の照明を施した場合、突起欠陥231、欠け欠陥236および汚染物235等からは、様々な回折角をもった広がりをもった(だらだらっとした)+1次回折光が得られて、パターンとは異なる画像信号がイメージセンサ12aから得ることができる。また輪帯状の照明を施した場合、オープン欠陥232やショート欠陥234については、X軸方向の+1次回折光成分が発生しないため、パターンとは異なる画像信号がイメージセンサ12aから得ることができる。また輪帯状の照明を施した場合、変色欠陥233からは、変色欠陥のない領域に比べて、例えば0次回折光の発生状態が変わり、変色欠陥233を示す画像信号をイメージセンサ12aから得ることができる。
図25には、図24に示すLSIウエハパターンに対してA/D変換器15aにおいてサンプリングする検出画素が大きい場合を示す。図25に示すように、A/D変換器15aにおいてサンプリングする検出画素241が大きい場合には、一つの検出画素241内にパターンのエッジが二つ存在することになり、パターンのエッジ情報が失われることになる。このようにパターンのエッジ情報が失われるのを防止するには、A/D変換器15aにおいてサンプリングする検出画素241の寸法を小さくすればよい。検出画素241の寸法を小にすると、A/D変換器15aから得られるサンプリングされたディジタル画像信号情報が増大し、比較回路17等で行う欠陥検出画像処理量が増大し、欠陥検出に時間を要することになる。従って、図27に示す如く、A/D変換器15aにおいて、パターンA−A’に対して、パターン明るさの極小値、極大値が保存されるような検出画素寸法(サイズ)でサンプリングして濃淡(明るさ)を示すディジタル画像信号に変換すれば良い。即ち、CPU20は、最初A/D変換器15aに対してサンプリングする画素サイズを小さくしてA/D変換器15aから得られるディジタル画像信号41(図27(a)に示す。)からパターン明るさの極小値(パターンのエッジ情報を示す。)、極大値の間隔を算出し、これらが割り切れるような検出画素寸法を設定する。A/D変換器15aは、CPU20において設定された検出画素寸法42に基づいてサンプリングすることにより、パターンのエッジの情報を失うことなく比較的大きな検出画素寸法でサンプリングされた濃淡(明るさ)を示すディジタル画像信号(図27(b)に示す。)を得ることができる。これにより、比較回路17等において行う欠陥検出画像処理の情報を低減して高速で、しかも高信頼度で欠陥検査を行うことができる。
図27(a)を参照して説明すると、CPU20は、最初A/D変換器15aに対してサンプリングする画素サイズを小さくしてA/D変換器15aから得られるディジタル画像信号41からx1=x2=x3=x4であるx1、x2、x3、x4間の検出画素寸法をx1/2と選び、極小値と極大値との間隔が大きいx5、x6部は、検出画素寸法を3x1/2、2x1になるように設定する。このように設定された検出画素寸法に相当する信号42がA/D変換器15aに提供される。
図27(b)は、A/D変換器15aにおいて、図27(a)に示すA−A’部の画像信号の波形に対してCPU20から提供された信号42に基づいてサンプリングされたディジタル画像信号の波形を示す。図27(b)から明らかなように、A/D変換器15aにおいて、イメージセンサ12aから出力される画像信号からパターンのエッジを示す最小値及び最大値が保存されたディジタル画像信号が得られる。これにより、比較回路17等において、遅延メモリ16においてセル間隔、またはチップ間隔遅延させたディジタル画像信号とA/D変換器15aから直接得られるディジタル画像信号とをセル比較またはチップ比較することによって高解像度で得られるパターンのエッジを示す画像信号を消去して欠陥を高速度で、且つ高信頼度で検査することができる。パターンのエッジを示す画像信号はセルの間隔またはチップの間隔で繰り返されるので、上記比較回路17等においてセル比較またはチップ比較する際一致して検出され、パターンのエッジを示す画像信号を消去することができる。その結果、上記比較回路17等におけるセル比較またはチップ比較において、欠陥を示す信号18を不一致として検出することができる。
なお、CPU20が極小値と極大値との間もサンプリングすべく、検出画素寸法として、x=x1/4あるいはx1/8に設定することができる。これにより、A/D変換器15aは、上記設定された検出画素寸法(x=x1/4あるいはx1/8)でサンプリングして濃淡(明るさ)を示すディジタル画像信号を得ることができる。この場合、サンプリング間隔が狭くなっているので、イメージセンサ12aから得られる高解像度の画像信号を忠実にディジタル画像信号に変換することができる。
また、CPU20は、最初A/D変換器15aに対してサンプリングする画素サイズを小さくしてA/D変換器15aから得られるディジタル画像信号41に基づいて、図1に示す如く、ズームレンズ制御信号43によりズームレンズ13を制御することにより、イメージセンサ12aで受光する画像の倍率を変化させることができる。その結果、A/D変換器15aにおいて、検出画素寸法を決める信号42を一定にしておいても、サンプリングされる検出画素寸法を、ズームレンズ13による倍率に応じて変化させることができる。従って、ズームレンズ13による倍率を変えたい場合には、CPU20からの指令で制御することができる。更に、輪帯状の照明によって格子状のパターンから発生して対物レンズ9の瞳10a内に入射した0次回折光22aと+1次回折光25aとをイメージセンサ12aによって受光して得られる高解像度の画像信号についてのA/D変換器15aにおけるサンプリングについて、図28、図29、図30を参照して説明する。図28〜図30の(a)における格子状のパターン(ライン アンド スペースのウエハパターン)は、0.42μm幅のラインと0.42μm幅のスペースとからなるピッチP=0.84μmの繰り返しパターンである。
図28(b)に示すサンプリングされた濃淡(明るさ)を示すディジタル画像信号波形は、検出画素寸法を0.0175μmにした場合を示し、格子状のパターンのエッジ情報が鮮明に検出されていることがわかる。即ち、イメージセンサ12aで受光して得られる高分解能の画像信号がA/D変換器15aによって忠実に濃淡(明るさ)を示すディジタル画像信号に変換されたことを示す。図29(b)に示すサンプリングされた濃淡(明るさ)を示すディジタル画像信号波形は、検出画素寸法を0.14μmにした場合を示し、格子状のパターンのエッジ情報(極小値、極大値等の極値の情報)が保存された状態で検出されていることがわかる。図30(b)に示すサンプリングされた濃淡(明るさ)を示すディジタル画像信号波形は、検出画素寸法を0.28μmにした場合を示し、格子状のパターンのエッジ情報(極小値、極大値等の極値の情報)が一部失われて検出されることがわかる。従って、0.42μm幅のラインと0.42μm幅のスペースとからなるピッチP=0.84μmの繰り返しパターン(格子状のパターン)に対しては、A/D変換器15aにおいて、CPU20から信号42によって設定される検出画素寸法を約0.3μm以下にしてサンプリングして濃淡(明るさ)を示すディジタル画像信号に変換する必要がある。これにより、A/D変換器15aから得られる濃淡(明るさ)を示すディジタル画像信号には、格子状のパターンのエッジ情報(極小値、極大値等の極値の情報)が保存された状態で検出されることになり、欠陥と弁別して検出することが可能となり、比較回路17等においてセル比較またはチップ比較によって欠陥(即ち突起231、オープン232、変色233、短絡234、欠け235、汚染物236等)を検出することができる。即ち、A/D変換器15aにおいて、パターンの極小値、極大値が保存されるようなサンプリングを実施すると、大きな検出画素寸法でも、パターン情報は損なわれず、比較回路17等において高速で、且つ高精度な欠陥検査等が行なうことができる。上記図28〜図30に示す実施例では、1次元の格子状のパターンを例にしてサンプリングされた濃淡(明るさ)を示すディジタル画像信号波形について説明したが、2次元の格子状のパターンに対しても成り立つことはいうまでもない。
〔第5の実施例〕
前記実施例においては、被検査対象物1に形成されたパターン上の欠陥を検査する実施例と、被検査対象物1に形成されたパターンを観察する顕微鏡観察システムの実施例とについて説明したが、本発明は、被検査対象物1に形成されたパターン上に存在する異物検査および被検査対象物1に形成されたパターンの寸法測定に適用することができる。即ち、前記第4の実施例で説明したように、A/D変換器15aから被検査対象物1に形成されたパターンに忠実な濃淡(明るさ)を示すディジタル画像信号を得ることによって、例えばCPU20は上記パターンの寸法を高精度に測定することができる。また、前記第4の実施例で説明したように、欠陥検査と同様に、被検査対象物1に形成されたパターン(LSIウエハパターン)上に存在する異物も検出することができる。即ち、異物からは、突起欠陥231や欠け欠陥236等と同様に、様々な回折角をもった広がりを有する1次以上の回折光が対物レンズ9の瞳10a内に入射することになる。一方パターンからは、0次回折光及び+1次回折光が対物レンズ9の瞳10a内に入射することになり、イメージセンサ12aからは異なった画像信号が検出され、比較回路17等によりセル比較またはチップ比較することによって異物を検出することができる。勿論、鏡面ウエハ上の異物も同様に検出することができる。
また、後述する実施例において説明するように、パターンの情報をセル比較またはチップ比較で消去するのではなく、空間フィルタ309を用いることによって消去することができる。また、イメージセンサ12bが検出する対物レンズ9の瞳10a上の画像信号に基づいて、異物を検出することができる。即ち、鏡面ウエハ上の異物については、イメージセンサ12bが検出する対物レンズ9の瞳10a上の画像信号から直接検出することができる。被検査対象物1に形成されたパターン(LSIウエハパターン)上に存在する異物ついても、対物レンズ9の瞳10a内に入射する回折光の局所性分布が異物とパターンとでは異なることにより、イメージセンサ12bが検出する対物レンズ9の瞳10a上の画像信号からパターン情報を消去することによって検出することができる。即ち、遅延メモリ16と同様に、イメージセンサ12bが検出する異物が存在しない正常なパターンから得られる瞳10a上の基準の画像信号を記憶しておくことにより、比較回路等においてこの記憶された瞳10a上の基準の画像信号と実際イメージセンサ12bが検出する被検査のパターンから得られる瞳10a上の画像信号とを比較することによってパターン情報を消去して異物を検出することができる。また正常なパターンから得られる瞳10a上の回折光の局所性分布情報もしくはこれを反転した局所性分布情報(空間フィルタ(図31及び図33において309で示す。))で、被検査のパターンから得られる瞳10a上の回折光の局所性分布情報をマスキング(遮光)することによって、パターン情報を消去して異物を検出することができる。
〔第6の実施例〕
次に、図31及び図32を参照して、本発明に係るパターン検査装置における光学系の具体的構成について説明する。図31及び図32は、図1に示す実施例のパターン検査装置における光学系の具体的な構成図であり、図31はその平面図、図32はその正面図である。
図31及び図32に示すパターン検査装置における光学系の構成は、図1に示すパターン検査装置における光学系の構成と基本的には同一あり、図中、図1と同一符号は、同等部分であるので、再度の詳細な説明を省略する。本実施例の特徴的な部分について説明する。
本実施例においては、画像観察用テレビカメラとして、輪帯状の照明(明視野照明)用TV1及び暗視野照明用TV2、対物レンズ9の瞳10aを観察する瞳観察用テレビカメラとして、暗視野照明用TV4が追加されている。従って、輪帯状の照明(明視野照明)用TVカメラTV1及び暗視野照明用TVカメラTV2は、画像観察のために用いられる。なお、対物レンズ9の瞳10aを観察する瞳観察用テレビカメラとしての輪帯状の照明(明視野照明)用TV3は、イメージセンサ12bと同じものを示す。即ち、輪帯状の照明(明視野照明)用TV3(12b)で撮像する瞳10a上の画像(輪帯状の照明によって被検査対象物1上のパターンから得られる回折光の局所性分布)に基づいて、CPU20は輪帯状の照明用フィルタ(円板状マスク:開口絞り)5または0次回折光光量制御用瞳フィルタ(減衰フィルタ)38または比較回路17等における欠陥検出感度またはA/D変換器15aにおけるサンプリングによる検出画素寸法またはズームレンズ13による倍率等を選択制御する。また暗視野照明用TV4で撮像する瞳10a上の画像(後述する暗視野照明によって被検査対象物1上のパターンから得られる散乱光の分布)に基づいて、CPU20は空間フィルタ309または比較回路等における異物の検出感度またはリニアイメージセンサ308から得られる画像信号をA/D変換するA/D変換器におけるサンプリングによる検出画素寸法等を選択制御する。これにより被検査対象物1上のパターンに対して最適化をはかることができる。なお、ダイクロイックミラー325は、600nm以下の波長の輪帯状の照明によって被検査対象物1から得られる回折光による瞳10aの画像の光を透過させ、後述する780〜800nmの波長の暗視野照明によって被検査対象物1から得られる散乱光による瞳10aの画像の光を反射させるものである。326はミラーである。
また、ランプハウス24′内には、図1に示す1次光源3、4として、Hg−XeランプL1とXeランプL2との2種類で構成し、これら2種類の1次光源を切換えミラー317で切り換えられるように構成している。Hg−XeランプL1は、輝線スペクトルをもち、短波長幅での高輝度照明が可能であり、XeランプL2は、白色光照明が可能である。即ち、輪帯状の照明用フィルタ(輪帯状の照明用二次光源:円板状マスク:開口絞り)5により円形状の照明も含めて輪帯状の照明をする場合、Hg−XeランプL1を用いた短波長幅での高輝度照明とXeランプL2を用いた白色光照明とを切り換えて照明することができる。なお、318は、Hg−XeランプL1またはXeランプL2から出射される光の強度を均一化するインテグレータである。341は上記1次光源L1,L2における照度の変動をモニタする照度モニタである。この照度モニタ341でモニタされた1次光源L1,L2における照度の変動に応じて光量制御フィルタ14を制御したり、A/D変換器15における変換レベルを補正する。316は輪帯状の照明光の波長を例えば600nm以下に選択する波長選択フィルタである。319は円形状の照明も含め、輪帯状の照明以外の光を遮光する視野絞りである。301はミラーである。
また第2の対物レンズ303の先に設けられたダイクロイックミラー320は、600nm以下の波長の輪帯状の照明によって被検査対象物1から得られる回折光の光を透過させ、後述する780〜800nmの波長の暗視野照明によって被検査対象物1から得られる散乱光を反射させるものである。321はハーフミラーである。325及び326はレンズである。そして780〜800nmの波長の暗視野照明によって被検査対象物1上のパターンから生じる散乱光による空間像を空間フィルタ309の位置に形成されるようになっている。322、324及び327はミラーである。323はハーフミラーである。
更に、異物を高感度で検出できるように、半導体レーザ光源L3により出射されたレーザ光を集光して被検査対象物(LSIウエハ)1に対して斜め方向から照射する暗視野照明光学系(304、305、306、307)が備えられている。304は、半導体レーザー光源L3により出射されたレーザ光のビーム径を拡大するビームエキスパンダー(ビーム拡大光学系)である。305、306は各々レーザ光を反射させるミラーである。307は、ビーム径が拡大されたレーザ光を集光して被検査対象物1に対して斜め方向から照射する集光レンズである。この暗視野照明光学系(304、305、306、307)による暗視野照明により被検査対象物1上から発生する0次回折光(正反射光)は対物レンズ9の瞳10aに入らず、被検査対象物1上に存在する異物から発生する散乱光(1次以上の回折光)のみが対物レンズ9の瞳10aに入射して、イメージセンサ308で受光して信号を出力することによって異物を検出することができる。309は空間フィルタで、上記暗視野照明によって被検査対象物1上のパターンのエッジから生じて対物レンズ9の瞳10a内に入射する散乱光(1次以上の回折光)を遮光して消去するものである。なお、前記半導体レーザ光源L3から出射するレーザ光の波長は、ランプハウス24′による輪帯状の照明(明視野照明)の波長と異なる任意の波長、例えば780〜800nmである。
更に、被検査対象物1上のパターンをイメージセンサ12aにより画像信号として高精度に検出するため、自動焦点制御光学系が設置されている。この自動焦点制御光学系は、光源310と、600〜700nmの波長にするフィルタ311と、自動フォーカス(A/F)用パターン315と、該A/F用パターン315を被検査対象物1上に投影する投影レンズ314と、ハーフミラー312、313と、合焦点面の前後に配置されたセンサS1と、センサS2とで構成される。センサS1とセンサS2とで投影レンズ314により被検査対象物1上に投影されたA/F用パターン315のコントラスト信号を検出してセンサS1から得られるコントラスト信号とセンサS2から得られるコントラスト信号が一致するように被検査対象物1を矢印で示すように上下に微動制御させることによって、被検査対象物1の表面(パターン面)を対物レンズ(結像光学系)9に対して焦点合わせされることになる。なお、検出光学系の光路中に設けられたダイクロイックミラー302は、波長が600〜700nmの自動焦点合わせ用の光を反射させ、波長が600nm以下の輪帯状の照明(明視野照明)用の光及び波長が750nm以上の暗視野照明用の光を透過させるものである。
図33及び図34は、図31及び図32に示すパターン検査装置における光学系の構成を更に具体的に示したものである。図33はその平面図、図34はその正面図である。即ち、対物レンズ9として無限遠補正系のものを用いるため、長焦点距離(例えばf=200mm)の第2の対物レンズ(チューブレンズともいう)303が必要である。輪帯状の照明(明視野照明)用リニアイメージセンサ12a及び暗視野照明用リニアイメージセンサ308は、TDI(Time Delay &Integration)時間遅延積分型イメージセンサで構成する。更に本実施例の特徴的な部分について説明する。即ち、本実施例においては、対物レンズ9と第2の対物レンズ303との間に、偏光ビームスプリッタ(PBS(Polarization Beam Splitter))8a’とλ/4板(1/4波長板)51とを設置することにある。対物レンズ9と第2の対物レンズ303との間は平行光であるため、上記光学素子8a’、51を挿入しても収差等の劣化が少ない。このPBS8a’とλ/4板51との機能は図35及び図36に示す通りである。即ち、円形状の照明光または輪帯状の照明光330は、PBS8a’によりP偏光331はそのまま透過し、S偏光332は反射してλ/4板51に達する。このλ/4板51に達したS偏光332は、位相が90度相当分遅れた成分が生じ(異常光線と常光線の屈折率が等しくなく、異常光線の方が光路長が長い。このため異常光線と常光線に位相差π/2が生じ、これらの振幅が等しいため)円偏光または楕円偏光334に変換されて対物レンズ9を介して被検査対象物1であるウエハに照射される。対物レンズ9の瞳10aに入射した回折光(反射光)は、再びλ/4板51に達し、円偏光または楕円偏光はP偏光333になる。このP偏光333はPBS8a’を透過するので、そのまま第2の対物レンズ303を通して検出器であるイメージセンサ12aに達する。即ち、図36には、PBS8a’によって直線偏光に変換された入射光線(S偏光)332が1/4波長板51に対して角度ω(入射光線の直線偏光面と波長板51の主断面とがなす角度)が正確に45°(+あるいは−)である場合、直線偏光の入射光線332を円偏光334(あるいはその逆に)変換できることを示す。角度ωが45°以外の場合は、直線偏光から楕円偏光334に(あるいはその逆に)変換される。
次に図37及び図38に、本実施例による効果を示したものである。被検査対象物1は、256MDRAMのライン&スペースのパタ−ン(ピッチPが0.61μmの高密度の格子状パターン)である。図37は上記パターンの回転方向に対するイメージセンサ12aによって受光されるパターンからの明るさ(検出強度)を示したものである。図中の円偏光・輪帯状の照明(楕円偏光・輪帯状の照明も含む)が図31〜図34に示す実施例によるものである。図中の直線偏光照明はλ/4板51がない照明に相当する。また、図中のハーフミラーはPBS8a’の代わりに通常のハーフミラーを用いた照明(λ/4板51を用いた照明)を示す。図37に示す関係から、被検査対象物1上の高密度のパターンが、例えば図24に示すようにメモリセルのパターンのように様々な回転方向をもったとしても、円偏光・輪帯状の照明(楕円偏光・輪帯状の照明も含む)を施せば、イメージセンサ12aからパターンの方向性にあまり影響されることなく高い明るさ(検出強度)を有する画像信号を得ることができる。また輪帯状の照明を施すことによって、直線偏光照明(S偏光照明)でも、ハーフミラー照明(λ/4板51を用いた照明)でも、通常の円形状の照明のみに比べて、被検査対象物1上に形成されたパターンが周辺回路部などのように特定の方向性をもったものに対して、高い明るさ(検出強度)を有する画像信号を得ることができる。またハーフミラー照明(λ/4板51を用いた照明)の方が直線偏光照明(S偏光照明)より優れていることがわかる。以上説明したように、イメージセンサ12aから高い明るさ(検出強度)を有する画像信号を得ることができることは、高密度のパターンに対して効率の高い照明が実現できたことを示すものである。
また図38には、上記パターンの回転方向に対するイメージセンサ12aによって受光されるパターンからのコントラスト(解像度を示す極小値と極大値の比)を示したものである。図中の円偏光・輪帯状の照明(楕円偏光・輪帯状の照明も含む)が図31〜図34に示す実施例によるものである。図中の円偏光は円偏光照明のみであり、直線偏光照明はλ/4板51がないS偏光照明に相当する。なお、円偏光・輪帯状の照明の場合、パターンの角度に対してコントラストが一定値になっていないのは、実験時に完全な円偏光にはなっておらず、楕円偏光になっているためである。楕円率を小さく、真円にするには、光学素子(λ/4板51)に直線偏光入射光をいれるようにし(入射面に平行或いは垂直に電気ベクトル振動方向をそろえる)、被検査対象物1に照射する前で位相板を用いて円偏光にすれば良い。
図38に示す関係から、被検査対象物1上の高密度のパターンが、例えば図24に示すようにメモリセルのパターンのように様々な回転方向をもったとしても、円偏光・輪帯状の照明(楕円偏光・輪帯状の照明も含む)を施せば、イメージセンサ12aから高密度のパターンの方向性にあまり影響されることなく、高いコントラスト(高解像度)を有する画像信号を得ることができる。即ち、円偏光照明と輪帯状の照明とを併用することによって、高密度のパタ−ンの向きに依存せず、常時イメージセンサ12aから高いコントラストを有する画像信号が得られることになり、その結果高密度のパターン上の微細な欠陥等を検出することができる。また通常の円形状の照明に円偏光照明を組み合わせるだけ(円偏光照明のみ)でも、通常の円形状の照明に比べて、イメージセンサ12aから高密度のパターンの方向性にあまり影響されることなく高いコントラスト(高解像度)を有する画像信号を得ることができる。しかし、円偏光照明と輪帯状の照明とを併用することによって、円偏光照明のみに比べて高いコントラスト(高解像度)を有する画像信号を得ることができる。
また輪帯状の照明を施すことによって、直線偏光照明(S偏光照明)でも、被検査対象物1上に形成された高密度のパターンが周辺回路部などのように特定の方向性をもったものに対しては、高いコントラスト(高解像度)を有する画像信号を得ることができる。しかし、通常の超LSI(VLSI,ULSI)等では縦横の高密度のパタ−ンが存在するので、常時この高密度のパタ−ンの向きに合わせて直線偏光を照射することは困難となる。特定された配線パタ−ンのように、特定された方向性を有する場合には、直線偏光照明における偏光状態を上記配線パターンの方向に合うように制御して上記直線偏光照明を上記特定された配線パターンのみに限定して照明することにより、イメージセンサ12aから高コントラストを有する画像信号を検出することができる。
上記実施例では、PBS8a’を用いて説明したが、誘電多層膜をコーティングしたハーフミラーで構成しても同様の効果が得られる。また、PBS8a’の代わりに偏光板を用いて直線偏光を得ても良いが、この場合は偏光板を通過する光が減衰して明るさ(検出強度)は低下するが、コントラストはPBS8a’と同様に向上することになる。
〔第7の実施例〕
本実施例は、図31〜図34に示す実施例において、視野絞り319または輪帯状の照明用フィルタ(開口絞り)5の位置(対物レンズ9の瞳10aと共役な位置)に拡散板を挿入したものである。拡散板は、光を拡散させるものである。この拡散板は、砂番800等で指定されたものである。このようにすると、被検査対象物1への輪帯状の照明光のみまたは偏光照明と輪帯状の照明との併用による照明光の拡散性が増し、金属配線パタ−ン等の表面に微小な凹凸の変化があったとしても、明るい一様な反射光が得られ、対物レンズ9等を通してイメージセンサ12aや明視野観察用TVカメラTV1 により金属配線パタ−ン等の表面を均一な明るさを有する画像として検出または観察できる。この拡散照明は、輪帯照明及び偏光照明と矛盾することなく、同一光学系で同時に実施することができる。拡散の程度は、被検査対象物1上のパタ−ンに応じて選択するものである。
また図31〜図34に示す実施例においては、イメージセンサ12aはTDI(Time Delay & Integration)時間遅延積分型イメージセンサで構成されているので、被検査対象物1としてパタ−ンの反射率が低く、明るさ(検出強度)が十分でない場合には、上記イメージセンサの蓄積時間を増加させるように制御すれば良い。このように被検査対象物1のパターンに応じて上記イメージセンサの蓄積時間を適切に定めれば良い。また被検査対象物1のパターンに対する照明条件に応じて上記イメージセンサの蓄積時間を定めれば良い。
〔第8の実施例〕
次に図1に示す装置の比較回路18から出力される欠陥判定出力18及びCPU20から出力される欠陥情報40を入力して、例えば半導体の製造プロセスにおける欠陥発生原因を解析し、この解析された欠陥発生原因を取り除くことによって良品の半導体チップを高歩留まりで生産することについて図39を用いて説明する。即ち、380は、半導体の製造ラインを示す。381は半導体ウエハ1aの搬送経路を示す。382は半導体製造工程の内、絶縁膜を形成するCVD成膜工程を実行するCVD装置を示す。383は、半導体製造工程の内、配線膜を形成するスパッタリング工程を実行するスパッタリング装置を示す。384は半導体製造工程の内、レジスト塗布、露光、現像等を行う露光工程を実行する露工装置を示す。385は半導体製造工程の内、パターニングをするエッチング工程を実行するエッチング装置を示す。このように半導体ウエハは様々な製造工程を経て製造される。
ところで、390は、図1に示す装置の比較回路18から出力される欠陥判定出力18及びCPU20から出力される欠陥情報40を入力して、上記半導体を製造する各プロセス装置382、383、384、385からなる製造ライン380における欠陥発生原因または欠陥発生要因を解析する解析用コンピュータである。この解析用コンピュータ390は、図1に示す装置の比較回路18から出力される欠陥判定出力18及びCPU20から出力される欠陥情報40を入力するインターフェース391、解析等の処理を実行するCPU392、解析等のプログラムを格納したメモリ393、制御回路394、395、396、397、欠陥発生原因等の解析結果を出力する印刷装置等の出力装置398、各種データを表示する表示装置399、図1に示す装置から得られない例えば各プロセス装置382、383、384、385に関するデータ及び製造ライン380に流す半導体ウエハ1aに関するデータ等を入力する入力装置(キーボード、ディスク等から構成された。)401、半導体ウエハ1a上に発生した欠陥と各プロセス装置382、383、384、385からなる製造ライン380において欠陥を発生させた欠陥発生原因又は欠陥発生要因との因果関係の履歴データまたはデータベースを記憶した外部記憶装置402、CPU392によって解析された欠陥発生原因または欠陥発生要因に関する情報410を各プロセス装置382、383、384、385へ提供するインターフェース403、及びこれらを接続するバスライン400で構成されている。従って、解析用コンピュータ390におけるCPU392は、入力された欠陥判定出力18及び欠陥情報40と、外部記憶装置402に記憶された半導体ウエハ1a上に発生した欠陥と各プロセス装置382、383、384、385からなる製造ライン380において欠陥を発生させた欠陥発生原因または欠陥発生要因との因果関係の履歴データまたはデータベースとに基づいて、各プロセス装置382、383、384、385からなる製造ライン380における欠陥を発生させた欠陥発生原因または欠陥発生要因を解析し、この解析された欠陥発生原因または欠陥発生要因に関する情報410を各プロセス装置382、383、384、385へ提供する。この欠陥発生原因または欠陥発生要因に関する情報410が提供された各プロセス装置382、383、384、385は、洗浄も含めて各種プロセス条件を制御して欠陥発生原因または欠陥発生要因を取り除くことによって良品の半導体ウエハ1aを次工程へ送り出すことができ、その結果半導体を高歩留まりで製造することができる。なお、図1に示す装置で欠陥検査を行う半導体ウエハ1aは、上記製造ライン380において、欠陥を発生しやすい個所の前後工程から、半導体ウエハ1a単位、またはロット単位でサンプリングされる。
また解析用コンピュータ390におけるCPU392は、イメージセンサ308から検出された異物信号に基づいてCPU20から得られて入力された異物情報と、外部記憶装置402に記憶された半導体ウエハ1a上に発生した異物と各プロセス装置382、383、384、385からなる製造ライン380において異物を発生させた異物発生原因または異物発生要因との因果関係の履歴データまたはデータベースとに基づいて、各プロセス装置382、383、384、385からなる製造ライン380における異物を発生させた異物発生原因または異物発生要因を解析し、この解析された異物発生原因または異物発生要因に関する情報410を各プロセス装置382、383、384、385へ提供する。この異物発生原因または異物発生要因に関する情報410が提供された各プロセス装置382、383、384、385は、洗浄も含めて各種プロセス条件を制御して異物発生原因または異物発生要因を取り除くことによって欠陥のない良品の半導体ウエハ1aを次工程へ送り出すことができ、その結果半導体を高歩留まりで製造することができる。