JP3976681B2 - 同心共面マルチバンド電気音響変換器 - Google Patents
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Description
(関連出願の相互参照)
本特許出願は、参照により本明細書に援用する、2000年12月26日出願の米国仮特許出願第60/257,693号に関連し、かつその優先権を主張する。
(発明の技術分野)
本発明は、音再生用の電気音響変換器に関し、詳細には、多数の機能ユニットを有し、音声周波数スペクトルの種々の部分を再生するようにされている、同軸かつ共面構成で配置された複合スピーカ駆動ユニットに関する。
【0002】
(発明の背景)
音声周波数スペクトルのより広い部分を再生する、ほとんどのスピーカ・システムには、少なくとも2つの駆動ユニットが使用されている。一例は、低周波数帯域の音の再生に使用されるウーファおよび高周波数帯域で使用されるツイータである。個別の駆動ユニットのボイス・コイルは、クロスオーバ・フィルタ・ネットワークを介して、パワー・アンプに接続され、パワー・アンプは、再生される音を表す電気信号を提供する。クロスオーバ・フィルタの目的は、各駆動ユニットが再生するように設計されている音声周波数範囲に対応する電気信号を各駆動ユニットに提供することである。中間帯域におけるクロスオーバ周波数のあたりで、ウーファの出力が周波数の増加に伴って次第に小さくなり、ツイータの出力が周波数の減少に伴って次第に小さくなるように、フィルタの特性が調整される。たとえば、クロスオーバ・フィルタは、受動または能動、デジタルまたはアナログであってよい。良好な音の再生を達成するには、フィルタの特性と駆動ユニットの特性との慎重な整合を試みなければならない。
【0003】
スピーカ・システムは、3つ以上の駆動ユニットを組み込んでもよい。ツイータ、中域ウーファおよびウーファを有する3ウェイ・システムは、一般的なスピーカ構成である。マッチング・クロスオーバ・フィルタは、特有のクロスオーバ周波数と2つの中間帯域を有する駆動ユニットに電気信号を分割するであろう。以下の議論のための重要な所見は、2つ以上の駆動ユニットを有するスピーカ・システムは、2つ以上の駆動ユニットによってそこで音が生成される、少なくとも1つの可聴周波数帯域を有するであろうということである。
【0004】
駆動ユニットのそれぞれから放射される音は、そのユニットの見かけの音源すなわち音響中心から出ていると言うことができ、音響中心の位置は、特定の駆動ユニットの設計に依存し、通常、音響測定によって求めることができる。さらに、音響中心の絶対位置は、放出音の周波数で決まる。手短に上述した、一般的な2ウェイ・システムおよび3ウェイ・システムなどで、個別のスピーカ駆動ユニットが使用される時、音響中心は、互いに物理的に変位するであろう。駆動ユニットは、通常、音響中心が共通平面にあるように共通バッフル上に取り付けられるが、音響中心は、バッフルの平面で垂直方向にオフセットされる。スピーカ駆動ユニットの軸線にほぼ一直線に、かつ、両方の駆動ユニットの音響中心からほぼ等距離に位置するリスナーにとって、2つの駆動ユニットからの出力の所望のバランスを得ることができる。しかし、リスナーの位置が等距離位置から移動する場合、リスナーとスピーカ駆動ユニットの音響中心の間の距離は、異なるであろう。したがって、2つの駆動ユニットによって生成される中間周波数帯域の音は、時間差を持ってリスナーに受取られるであろう。受取られる音の間のこの時間差は、聞き取り位置で受取られる音の間に位相差を生ずる。2つの駆動ユニットからの音は、もはや、1つの中間帯域または複数の中間帯域で意図されているようには、足し算されず、結果として受取られる音は乱れるであろう。
【0005】
特定の関心エリアは、たとえば、公会堂およびコンサート・ホールにおける公の場での発表(Public Announcement)(PA)である。近代の建物は、部屋自体が、ほぼ音響的に弱音効果を持つように建てられている場合が多い。適切なPAシステムは、通常、原理上、各リスナーがスピーカに対する固定しない視線(free line of sight)を有するように配置された、いくつかのhigh−Qスピーカ(一般にhigh−Qホーン)を備える。このことは、完全に排除するわけではないが、位相差によって生ずる問題を制限するであろう。別の手法は、適度の音響レベルで動作し、リスナーの近くに分散した、非常に多くの小さなスピーカを有することである。音響的に複雑で、弱音効果のない、教会、劇場およびコンサート・ホールなどの、多くの場合古い建物において音を増幅することはより大きな問題である。これらの残響ホールは、壁および天井での音波の多重反射によって、人間の声または楽器の音を増幅するように建てられている場合が多い。異なる駆動ユニットの間に位相差がある状態で、従来のスピーカがこうした環境で使用される場合、各反射が位相差を倍増するであろう。多重反射の後、音がリスナーに届くと、音は非常に歪んでいるであろう。音響的にほぼ弱音効果のある環境を得るために、ホールを消音することは、多くの場合好ましい解決策ではない。その理由は、たとえば、教会の音響的特徴がこうした建物の音の体験の不可欠な部分として認識されているからである。
【0006】
駆動ユニットの音響中心の変位から発生する望ましくない作用を克服するために、いくつかの試みが行なわれてきた。低周波数および高周波数スピーカ駆動ユニットを組み合わせて、1つの複合同軸構成にすることが知られている。複合同軸スピーカ駆動ユニットは、ボイス・コイルによって駆動される、ボイス・コイルを通って延びる中心ポールを有する磁気構造と相互作用する、ほぼ円錐形の低周波数ダイアフラムから成る。高周波数ダイアフラムは構造の後方に位置し、このダイアフラムからの音出力は、低周波数ダイアフラムと相互作用する磁気構造の中心ポールを通って同軸に延びるホーン構造によってスピーカ駆動ユニットの前面に送られる。したがって、低周波数音および高周波数音は共に複合スピーカ駆動ユニットからほぼ前方に送られる。スピーカ構成のこの同軸形態において、低周波数および高周波数について、見かけの音源の垂直または水平オフセットは存在しない。しかし、低周波数ダイアフラムはスピーカユニットの前方に位置するが、高周波数ダイアフラムはスピーカユニットの後方に位置し、それによって、駆動ユニットの軸線方向に音響中心の相対的な変位が生じ、高周波数および低周波数ダイアフラムからの音の、リスナーのところでの望ましくない到達時間差を引き起こす。より最近の試みは、たとえば、米国特許第4,492,826号および第4,552,242号で教示されており、これらの特許では、少なくとも1つの小さなスピーカが大きなスピーカの上に同軸に取り付けられている。両特許は、駆動ユニットの軸線方向に音響中心の相対的な変位を有するという上述した構成の欠点を、無視できない程度に共有している。
【0007】
低周波数ユニットと高周波数ユニットを有し、その音響中心が3つの次元すべてにおいて一致する状態の複合スピーカ駆動ユニットは、米国特許第5,548,657号に記載され、市販されている。従来タイプであるが、小型ツイータは、ウーファの中心ポール・ピースに設けられた凹所に設けられてきた。ツイータの小型化のために、その効率には、限界ができるであろう(許容される効率のレベルを達成するには、たとえば、強磁性流体を用いた、複雑で費用のかかる冷却方法が必要とされるであろう)。上述の構成より優れてはいるが、この複合スピーカは、多重反射環境での使用にあまり適切でなくさせる位相差を示す。さらに、米国特許第5,548,657号の教示は、2つの駆動ユニットを有する複合スピーカに限定され、3つ以上の駆動ユニットが必要とされる場合には、適用できない。
【0008】
したがって、多重反射環境において正確な音を再生するのに必要とされ、なお高いパワー効率を有する、全周波数範囲で放出音波に対するコヒーレントな波面を提供する電気音響変換器を提供することが、当技術分野で必要とされている。高いパワー効率には、通常、ボイス・コイルおよび永久磁石の効率のよい冷却が期待される。
【0009】
(発明の概要)
本発明の一目的は、点のような見かけの音源を有する、すなわち、3つの次元全てにおいて一致する個別の駆動ユニットの音響中心を有する、全周波数範囲用の複合駆動ユニットを提供することによって従来技術の欠点を克服し、個別の音響信号を組み合わせてコヒーレント波面にし、それによって、高い精度と高い効率と共に電気信号を変換することである。
【0010】
別の目的は、希土類ベースの永久磁石および非常に軟質な磁気材料などの現代の高性能磁気材料によって与えられる利点を十分に利用する複合駆動ユニットを提供することである。特に、ボイス・コイルと永久磁石の効率のよい冷却を可能にする設計を利用することが目的である。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明による複合スピーカ駆動ユニットは、スピーカの中心軸線に対して同軸に配置されている第1駆動ユニットと第2駆動ユニットを備え、各駆動ユニットは、ボイス・コイル組立品を励起するための、ポール・ギャップを有する磁気回路を一緒に形成する永久磁石手段とポール・ピース手段を備え、各ポール・ギャップは前記スピーカの中心軸線に対して半径方向に向いた磁界を提供する複合スピーカ駆動ユニットにおいて、前記永久磁石手段の少なくとも1つは、前記スピーカの前記中心軸線に対して半径方向に延びる磁化の向きを有すること、および、前記両駆動ユニットの両音響中心は、ほぼ一致すること、および前記第1駆動ユニットと第2駆動ユニットが前記中心軸線の方向に互いに対して独立して可動であることを特徴とする。
【0012】
更に、前記駆動ユニットの前記磁気回路の少なくとも1つは、前記磁気回路および前記磁気回路内のボイス・コイルを冷却する空気ダクト手段を備えている。
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
本発明は、次に、図面を参照して詳細に説明される。
【0020】
(発明の詳細な説明)
本発明の第1の実施形態を、図1a〜図1eを参照して説明する。図1a〜図1cには、それぞれ、低周波数用および高周波数用の2つの個別の駆動ユニットを備える複合駆動ユニットから成る磁気回路が示されている。中空円筒として実質的に形成されている第1外側ポール・ピース100は、第1円筒中心チャンバを提供し、その内面の一部がほぼ円筒形状の第1永久磁石105の外面と金属接触している。中空円筒として実質的に形成されている第1内部ポール・ピース110は、その外面の一部が永久磁石105の内面と金属接触した状態にあり、第1ポール・ピース100と共にポール・ギャップ115を構成している。第1外側ポール・ピース100、第1永久磁石105、および第1内側ポール・ピース110は、低周波数駆動ユニット用の磁気回路120を提供する。第1内側ポール・ピースの内部で、かつそれに同軸に、かつそれとほぼ共面で、中空円筒として実質的に形成されている第2外側ポール・ピース125が位置付けられている。第2外側ポール・ピースは、その内面の一部が第2円筒形状永久磁石130の外面と金属接触した状態にある。第2永久磁石130の内面の一部と金属接触しているのは、円筒として形成され、穴を中心に有する第2内側ポール・ピース135であり、その穴は複合駆動ユニットの中心ボア140である。第2外側ポール・ピース125と共に、第2内側ポール・ピース135は、第2ポール・ギャップ145を形成する。第2外側ポール・ピース125、第2内側ポール・ピース135、および第2永久磁石130は、高周波数駆動ユニット用の磁気回路150を提供する。本発明のこの実施形態において、磁束は、低周波磁気回路120と高周波磁気回路150の間で妨げられる。2つの磁気回路は、ポール・ギャップと反対側の、磁気構造体(図1a〜図1cには示さず)の底面に配置される非磁性支持構造体155に固定される。非磁性支持構造体によって、2つの磁性支持構造体は磁気的に分離される。
【0021】
図に示すように、内側ポール・ピースおよび/または外側ポール・ピースは、適切なサイズのポール・ギャップを形成するために環状突出部を有してもよい。図1cで見られるように、永久磁石105、130は、半径方向に向く磁界を有する。すなわち、磁石のポールの一方は、駆動ユニットの中心軸線の方に向けられ、他方の磁気ポールは、半径方向の外に向けられている。したがって、外側ポール・ピース100、125は、永久磁石105、130の一方のポールにつながり、内側ポール・ピース110、135は、他方のポールにつながる。磁束は、それぞれ、ポール・ギャップ115および145に集中した磁界を提供するようにポール・ピースによって導かれる。永久磁石は、ネオジウム・鉄・ボロンまたはサマリウム・コバルトなどの希土類ベースの化合物などの、非常に大きいエネルギー含有量を有する磁気材料であるのが好ましい。高性能永久磁石、たとえば、Vacuumschmelze GmbH&Co.からのVacodym(登録商標)510HRが市販されている。ポール・ギャップに必要となる大きな静磁界を提供するように磁束を伝えるには、ポール部は、非常に容易に磁化される、いわゆる軟磁気材料である材料から生産されなければならない。さらに、静磁気特性およびヒステリシスループの形状の両方を最適にするためには、非晶質で、かつナノ結晶性の、焼結または積層材料の適切な選択を行なわねばならない。非常に軟質な磁気材料、たとえば、Vacuumschmelze GmbH&Co.からのVacofer(登録商標)S1またはVacoflux(登録商標)が今日市販されている。磁気構造体の本発明の設計によって、直径の小さな効率のよい駆動ユニットを得ることが可能となり、したがって、従来技術の複合駆動ユニットに関連する問題が克服される。
【0022】
図1dにおいて、磁気構造体は、電気音響変換器を形成するのに必要な他の部材と組み合わされて、断面が示されている。低周波数ボイス・コイル160は、サスペンション162によって低周波数ポール・ギャップ115内に保持され、可撓性鋳造物167を介して低周波数ダイアフラム165の一端に接続される。低周波数ダイアフラム165の他端は、サスペンション170および可撓性鋳造物172を介して環状支持ユニット175に接続される。ボイス・コイル160は、電気リード線177に接続され、リード線は、図示しないクロスオーバ・フィルタに接続するようにされた電気端子180で終端する。図1dに示すように、上述した低周波数駆動ユニット部材は、主シャーシユニット182と相互作用するように配置されている取り外し可能な組立品181に収納される。ボイス・コイル160は、フランジ183およびフランジ内に収容されるOリングによって、所定の精度でポール・ギャップ115の中央に置かれ、構造体は、取り付けフランジ185およびOリングを用いて所定位置に保持される。容易に取り外し可能なボイス・コイルおよびダイアフラム組立品を有することができるのは、磁気構造体の新規設計によるが、本発明は、固定のボイス・コイルおよびダイアフラム構造体を用いて等しく良好に利用されることができる。
【0023】
図示される高周波数駆動ユニットはツイータタイプである。高周波数ボイス・コイル188は、サスペンション189によって、環状支持ユニット190と接続した状態で浮上保持される。ボイス・コイルは、ドーム形状高周波数ダイアフラム191に接続される。電気信号は、電気リード線194を介して高周波数ボイス・コイルに提供され、リード線は、中心ボアを通過し、低周波数電気端子180と同様に、端子195で終端するのが好ましい。高周波数ボイス・コイルおよびダイアフラム組立品192は、低周波数キャリア(carrier)組立品181と同様に、そうでなければならないわけではないが、磁気構造体から取り外し可能にされることができる。フランジ195およびOリングは、高周波数ボイス・コイルをポール・ギャップ145内にしっかりと、かつ正確に位置決めする。低周波数ボイス・コイルおよびダイアフラム組立品181は、低周波数磁気回路120と共に低周波数駆動ユニットを構成し、高周波数ボイス・コイルおよびダイアフラム組立品192は、高周波数磁気回路150と共に高周波数駆動ユニットを構成する。図1d〜図1eに示すように、低周波数駆動ユニットの全部品はすべて、高周波数駆動ユニットの部品と分離されている。個別の駆動ユニット、またはそれらの部品は、別々に取り外し、また取り付けることができる。このモジュラー構成によって、修理作業または交換の場合に、全ての個別の駆動ユニット、または、たとえば、駆動ユニットのいずれか一方のボイス・コイルおよびダイアフラム構造体を取り外すことが可能になる。
【0024】
駆動ユニットの効率は、ポール・ギャップの磁界の強さによって大きく左右される。上述した本発明の好ましい実施形態による磁気構造体は、希土類ベースの永久磁石および磁気的に軟らかい合金によって提供される磁気特性を十分に利用する。原理上、構造体は、フェライト永久磁石および鋳鉄などの従来の磁気材料を用いて実現できるであろうが、ポール・ギャップ内の磁界は弱く、したがって、複合駆動ユニットの効率は非常に低いであろう。したがって、現代の高性能磁気材料は、本発明の実現を効果的にするための前提条件である。同時に、本発明の磁気構造体の設計は、高性能磁気材料を十分に利用するのに必要な条件を生み出す。これは、ボイス・コイルを効率よく冷却する手段を提供することによって達成される。ボイス・コイルは、電流がコイルに提供されると熱を生ずる。熱の発生は、非常に重大で、コイル自体および駆動ユニットの他の部材の両方に影響を確実に与える。ネオジウム・鉄・ボロンなどの現代の高性能永久磁石は、高温に特に敏感である。すでにかなり適度の温度、通常、約60℃で、永久磁石は、保持力を失い始め、通常、80℃を超えると、性能は非可逆的に損傷を受ける。
【0025】
図2aおよび図2bに示す本発明の実施形態において、ポール・ピースは空気ダクト200、210を備えている。空気ダクト200、210は、永久磁石105、130に隣接して位置付けされた、それぞれポール・ピース110および125にあけられた例示的な穴である。空気ダクトは、外側ポール・ピース100、125、永久磁石105、130および内側ポール・ピース110、135によってポール・ギャップの下に形成される空洞220、230から、磁気構造体の後側につながっている。磁気構造体の後側の空気ダクト200、210の開口は、非磁性支持構造体155に備わっている開口と一致している。図において矢印で示されているように、空気ダクトによって、空気が、支持構造体の開口を通り、空気ダクト200、210および空洞220、230を介して、ボイス・コイル160、188のまわりを流れることが可能になる。低周波数駆動ユニットにおいて、空気は、環状支持部材175の開口を通って外に出される、すなわち、放出される。ツイータタイプの高周波数駆動ユニットにおいて、冷却空気は、中心ボア140を通って導かれることができる。必要であれば、ファンを設けることによって、強制換気を利用することができる。当業者は、空気ダクトならびにボイス・コイル160、188のまわりの強制換気手段が、いくつかの方法で実現されることを理解するであろう。空気ダクトのサイズおよび数は、必要とされる冷却効果を考慮して設計されるべきである。ポール・ピースの磁束を実質的に妨害しないようにする注意もまた払われなければならない。それによって、ポール・ギャップの磁界の強さに負の影響を及ぼす可能性がある。
【0026】
永久磁石は、連続し、円筒形状をしている必要はない。図3aに示す、本発明の好ましい実施形態において、複数の永久磁石バーを使用して、ポール・ギャップに重要な磁界を提供するようにする。第1内側ポール・ピース110は、その外面で、アーチ形断面を有する第1セットの複数の永久磁石バー300に接続される。永久磁石バー300は、スピーカの中心軸線に対して半径方向に延びる磁化の向きを有する。第1セットの磁石バー300は、半径方向の反対側で、第1外側ポール・ピース100に接続される。第1内側ポール・ピース110、第1セットの磁石バー300および第1外側ポール・ピース100は、低周波数磁気回路120を形成し、低周波数ダイアフラム組立品181の磁気コイルを収容する第1ポール・ギャップ115を提供する。同様に、第2内側ポール・ピース135は、その外面で、アーチ形断面を有し、半径方向に延びる磁化の向きを有する第2セットの複数の永久磁石バー310に接続される。第2セットの磁石バー310は、半径方向の反対側で、第2外側ポール・ピース125に接続される。第2内側ポール・ピース125、第2セットの磁石バー310および第2外側ポール・ピースは、高周波数磁気回路150を形成し、高周波数ダイアフラム組立品192の磁気コイルを収容する第2ポール・ギャップ145を提供する。高周波数磁気回路150は、第1内側ポール・ピース110の円筒中心チャンバに嵌合するように配置される。本発明のこの実施形態において、磁気コイルを冷却する空気ダクト320、330は、永久磁石バーの間に設けられている。さらに、この実施形態は、ポール・ギャップに対称な磁界を提供し、対称な磁界が、さらに音の再生を改善する。
【0027】
図3bに示す別の実施形態において、矩形断面を有する永久磁石バー340が磁気構造体において使用される。したがって、ポール・ピース350、360、370、380は、後ろ側で、多角形幾何学形状を有する。ポール・ギャップ(前側)は、以前と同様に円形である。個別の平面磁石の間で形成される開口320、330はまた、この別の実施形態において、冷却用空気ダクトとして利用することができる。当業者には理解されるように、永久磁石バーの、したがって、ポール・ピースの多くの種類の幾何学的形状を利用することができる。しかし、磁気回路の設計では、ポール・ギャップにおいて、一様で、かつ十分に大きな磁界を達成するように注意が払われなければならない。
【0028】
本発明の別の実施形態は、個別の駆動ユニットの磁気構造体が互いに独立しているということを利用する。駆動ユニットの音響中心は、必ずしもボイス・コイルと同じ面にある必要はなく、また、慎重な測定なしでは求めることが難しい可能性がある。本発明による設計は、個別の駆動ユニットを互いに対して同軸に調整する可能性を与える。この方法で、個別の駆動ユニット間の位相差を最小にすることが行なわれる。調整は、複合駆動ユニットの設計段階で行なうことができ、また、音響中心の相対位置を後で調整する調整手段を有する支持構造体を提供することも可能である。当業者には理解されるように、調整手段は、いくつかの方法で設けることができる。例示的な実施形態が図4に示されており、図4では、支持構造体155は、個別の駆動ユニットを互いに対して同軸に調整することを可能にする、複数の調整手段405が備わっている。調整手段405は、支持構造体と相互作用する外側中空ネジ410および駆動ユニットをしっかりと固定する内側ねじ415を備える。
【0029】
本発明による複合スピーカは、これまでは、通常の2ウェイスピーカ組立品に対応して、2つの個別の駆動ユニットを用いて例示されてきた。本発明によって提供される固有の特徴は、3つ以上の個別の駆動ユニットを組み合わせて、共面で、かつ同軸の複合駆動ユニットにすることができることである。3つの個別の駆動ユニットを備える、本発明の実施形態が図5に示される。中間周波数範囲駆動ユニット505は、高周波数(ツイータ)駆動ユニット510と低周波数駆動ユニット515の間に設けられる。中間周波数範囲駆動ユニットは、上述した低周波数駆動ユニットと同様に設計される。2つの駆動ユニットを有する複合組立品と同様に、3つの駆動ユニットを有する複合組立品もまた、個別の駆動ユニットの相対的な軸線方向位置を調整することによって、3つの駆動ユニットの音響中心を一致するようにすることができる。このことは図5bに示されている。
【0030】
製造段階で、または後の段階で調整手段によってのいずれかで、駆動ユニットの相対的な軸線方向位置を慎重に調整することができることを本発明が与えることで、高精度の電気音響変換が確保される。一般的に使用される、変換精度を測定する方法は、音響信号を複数回反射させ、得られる多重反射信号を元の信号と比較することにより行なう。従来のスピーカ組立品からの信号は、1回目の反射後にすでに非常に歪んでいるであろう(音声伝達度、RASTIが0.9から0.4になる)。本発明による複合駆動ユニットについての対応する測定によって示されることは、3回から4回の反射の後、信号がかろうじて影響を受けるだけである(約0.7のRASTI値に対応する)。
【0031】
【0032】
【0033】
述べられた実施形態について、本発明は、点のような音源、すなわち、単一点に全て一致する個別の駆動ユニットの音響中心を提供し、したがって、たとえば、家庭用ステレオ機器における音の再生を改善する可能性を提供し、音響的に複雑な挙動を有する公共の建物での使用を特に好適にする。通常のPA配置(PA−arrangement)において、話者が残響ホールの観客席に話しかける。話者の音声は増幅手段と接続したマイクロフォンによって強められ、増幅手段は、ケーブルを通して、スピーカ・ハウジングに収納された、本発明の複合駆動ユニット、フィルタ回路、ケーブル・コネクタなどを備える複合スピーカ組立品に接続される。ホール特有の音を保持するために、ならびに音の方向感(sense of direction)を保持するために、スピーカ組立品は、通常、話者の近くに配置される。本発明の複合駆動ユニットの優れた効率のために、増幅手段は、非常に適度のパワーを出力することができ、かなりの音量を出すのに1つまたは2つ、3つのスピーカ組立品しか必要としない。しかし、所望の音量を得る必要のある場合、多数のスピーカ組立品を使用することができる。
【0034】
本発明によって与えられる、広い周波数範囲にわたるコヒーレントな波面によって、大きな配列に組み合わされた多数の複合駆動ユニットを、従来のスピーカを用いたこうした配置に関連する欠点を生じないで使用することが可能になる。複合駆動ユニットのコヒーレンスはまた、たとえば、マルチ素子アンテナについての電磁波のビーム形成と同様な方法でビーム形状を制御するために、組み合わせ音場の分散を電子制御するという使用法を可能にする。同様に、点のような音源およびコヒーレントな音波は、反射器を用いて音を増幅し、指向させる新たな可能性を提供する。
【0035】
本発明による複合駆動ユニットについて、磁気構造、ボイス・コイルおよびダイアフラムが駆動ユニット中心軸線に垂直な平面上でほぼ円形である状態で述べられてきた。当業者は、スピーカにおいて共通な任意の形状を理解するであろう。たとえば、本発明によれば、楕円形を本設計で利用することができる。図3を参照して述べた、磁石バーを利用する設計は、本明細書に記載される全ての実施形態において利用できることが有利であることにも留意すべきである。
【0036】
述べられた本発明から、本発明を多くの方法で変えることができることが明らかになるであろう。こうした変形形態は、本発明の精神および範囲からの逸脱とは考えられるべきではなく、また、当業者には明らかであろう、こうした全ての変更形態が、添付請求項の範囲内に包含されることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【図1a】 本発明による複合駆動ユニットの実施形態の磁気回路の断面略図である。
【図1b】 図1aの磁気回路の平面図である。
【図1c】 図1aの磁気回路の底面図である。
【図1d】 図1aの磁気回路を備える複合駆動ユニットの略図である。
【図1e】 図1aの磁気回路を備える複合駆動ユニットの略図である。
【図2a】 本発明の一実施形態による冷却用空気ダクトの略図である。
【図2b】 本発明の一実施形態による冷却用空気ダクトの略図である。
【図3a】 本発明の別の実施形態による磁気回路の底面略図である
【図3b】 本発明の別の実施形態による磁気回路の底面略図である
【図4】 本発明の実施形態による、個別の駆動ユニットの音響中心を調整する手段の略図である。
【図5a】 本発明の実施形態による、3つの個別の駆動ユニットを備える複合駆動ユニットの略図である。
【図5b】 本発明の実施形態による、3つの個別の駆動ユニットを備える複合駆動ユニットの略図である。
Claims (10)
- 複合スピーカ駆動ユニットであって、前記スピーカの中心軸線に対して同軸に配置されている第1駆動ユニットと第2駆動ユニットを備え、各駆動ユニットは、ボイス・コイル組立品を励起するための、ポール・ギャップを有する磁気回路を一緒に形成する永久磁石手段とポール・ピース手段を備え、各ポール・ギャップは前記スピーカの中心軸線に対して半径方向に向いた磁界を提供する複合スピーカ駆動ユニットにおいて、
前記永久磁石手段の少なくとも1つは、前記スピーカの前記中心軸線に対して半径方向に延びる磁化の向きを有すること、および、前記両駆動ユニットの両音響中心は、ほぼ一致すること、および前記第1駆動ユニットと第2駆動ユニットが前記中心軸線の方向に互いに対して独立して可動であることを特徴とする複合スピーカ駆動ユニット。 - 前記駆動ユニットの少なくとも1つを残りの駆動ユニットに対して前記中心軸線に沿って調整する手段を特徴とする請求項1に記載の複合スピーカ駆動ユニット。
- 前記駆動ユニットの前記磁気回路の少なくとも1つは、前記磁気回路および前記磁気回路内のボイス・コイルを冷却する空気ダクト手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の複合スピーカ駆動ユニット。
- 前記軸線方向に垂直な平面で見ると、前記ポール・ギャップおよび前記ポール・ギャップを構成するポール・ピースは、ほぼ円形または楕円形であり、前記平面において、前記永久磁石手段は、複数の永久磁石バーで構成されたほぼ円形または楕円形断面を有する中空円筒または中空体であることを特徴とする請求項1に記載の複合スピーカ駆動ユニット。
- 前記バーはほぼ矩形断面を有する請求項4に記載の複合スピーカ駆動ユニット。
- 前記バーはほぼアーチ形断面を有する請求項4に記載の複合スピーカ駆動ユニット。
- 前記バーは、前記バーの間に前記空気ダクトを設けるように配置されている請求項4に記載の複合スピーカ駆動ユニット。
- 前記空気ダクト手段は、ポール・ギャップと、前記対応する磁気回路内の前記ポール・ギャップの下のチャンバと、前記磁気回路に設けた換気ダクトを備える請求項3に記載の複合スピーカ駆動ユニット。
- 2つの部分的に重なる音声周波数領域で音を再生する、2つの個別の駆動ユニットを備える請求項1に記載の複合スピーカ駆動ユニット。
- 3つ音声周波数領域で音を再生する、3つの個別の駆動ユニットを備え、前記隣接する音声周波数領域は部分的に重なる請求項1に記載の複合スピーカ駆動ユニット。
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