JP3976585B2 - プラスチック構造体の形成方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘起構造部を有するプラスチック構造体を形成する方法に関し、より詳細には、被加工プラスチック材料の任意の部位に、隆起物、孔または屈折率変調部が形成されたプラスチック構造体の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、プラスチック構造体(部品)の高機能化、高性能化の要求が高くなってきている。それらの要求に対して、加工されるプラスチック材料(被加工プラスチック材料)自身をポリマーアロイ化したり複合化したりする材料面での技術対応と、要求機能に合わせて機能部位を付加する加工面での技術対応の二つの取り組みが行われている。プラスチック部品の表面の高機能化・高性能化は、表面の濡れ性、接着性、吸着性、制電性、水分やガスに対するバリアー性、表面硬さ、光反射性、光散乱性、光透過性などの制御の必要性から、材料・加工両面から色々な技術的な取り組みがされてきている。それらの中で、プラスチックの加工として表面に凹凸を設けて、濡れ性や接着性や光学的特性を向上させたり、孔を形成させて流路や微小なセルを作製する方法が下記(1)〜(5)のようにいくつかある。
(1)被加工プラスチック材料の表面を機械的に摩擦したり、スパッタ・エッチングなどの物理的・化学的な処理により表面の一部を除去して凹凸を形成する方法。
(2)塗工・電鋳などのウエット・プロセスや蒸着・ラミネート・転写等のドライ・プロセスにより被加工プラスチック材料の表面に膜を付加して凹凸を形成する方法。
(3)予め凹凸を形成した金型などを利用して、成形により凹凸を形成する方法。
(4)ドリルで孔を形成する方法。
(5)レーザーで孔を形成する方法。
前記(1)の方法は、除去されたプラスチックの屑や飛散物による表面の汚染や後処理の問題があり、前記(2)の方法は、付加方法特有の材料や加工プロセスの追加による煩雑性の問題がある。また、(1)、(2)とも最近の環境汚染やリサイクル対策に関して、有意な方法とは言い難い。一方、前記(3)の方法は、除去や付加を伴わない方法であり量産性にも優れた方法であるが、精緻な凹凸構造の制御性に乏しい問題がある。さらに、前記(4)の方法は、ドリル刃の微細サイズに限界があり、また、屑や飛散物による表面の汚染の問題がある。さらにまた、前記(5)の方法は、炭化したススが発生したり、熱溶融して孔の入り口が大きくなる問題がある。
【0003】
そのため、環境性・省資源性が良好であり、被加工プラスチック材料の表面や内部の任意の部位に、加工形成できる方法が望まれている。また、大気圧中で被加工プラスチック材料の内部に屈折率変調部を形成する際には、空洞やクラック、溶融・再固化物が形成される場合があった。
【0004】
一方、レーザー光源に関する技術進歩は著しく、特にパルスレーザーは、ナノ(10-9)秒からピコ(10-12)秒と超短パルス化が進み、更に最近では、チタン・サファイア結晶などをレーザー媒質とするフェムト(10-15)秒パルスレーザーなどが開発されてきている。ピコ秒やフェムト秒などの超短パルスレーザーシステムは、通常のレーザーの持つ、指向性、空間的・時間的コヒーレンスなどの特徴に加えて、パルス幅が極めて狭く、同じ平均出力でも単位時間・単位空間当りの電場強度が極めて高いことから、物質中に照射して高い電場強度を利用して誘起構造を形成させる試みが、無機ガラス材料を主な対象物として行われてきている。
【0005】
また、高分子材料であるアモルファス・プラスチック等は、無機ガラス材料と比較して、ガラス転移温度が低い。これは、無機ガラス材料が共有結合で三次元的に結合してアモルファス構造が形成されているのに対して、高分子材料は、一次元的に共有結合で繋がった高分子鎖が三次元的に絡み合ってアモルファス構造が形成されていることを反映した結果である。従って、無機ガラス材料に対しては、大きな照射エネルギーで照射しないと、誘起構造が形成されないが、高分子材料では、高いエネルギーの照射は材料の劣化を引き起こす虞があるので、高いエネルギーの照射は回避する必要がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、高分子材料は、熱伝導性が低いという特徴を有している。従って、高分子材料は熱伝導性が低いので、蓄熱し易い傾向がある。すなわち、高分子材料は熱運動が無機ガラス材料に比べて容易に起こり、運動や反応に必要な熱量が少なくて済むので、無機ガラス材料に比べて、比較的低い照射エネルギーでも誘起構造が形成される可能性がある。しかし、高分子材料であるプラスチック構造体に関して、パルス幅が10-12秒以下である(例えば、パルス幅がフェムト秒のオーダーである)超短パルスレーザーの照射による誘起構造形成の検討は、現在まで、無機ガラス材料ほどには行われていなかった。
【0007】
従って、本発明の目的は、優れた環境性・省資源性で、かつ被加工プラスチック材料の表面や内部に誘起構造部を精密に形成させることができるプラスチック構造体の形成方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、誘起構造部が隆起物、孔や屈折率変調部であっても、容易に、しかも被加工プラスチック材料の表面や内部における任意の部位に精密に制御して形成することができるプラスチック構造体の形成方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意検討した結果、被加工プラスチック材料に、加温雰囲気中、パルス幅が10-12秒以下のレーザーを照射すると、環境汚染やリサイクルなどの環境問題の発生を抑制又は防止して、プラスチックの表面や内部に誘起構造部を精密に制御して形成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、400〜800nmの可視光波長領域において10%以上の透過率を有する、熱可塑性樹脂より構成されている被加工プラスチック材料に、25℃を超え且つ被加工プラスチック材料のガラス転移温度(Tg)未満の温度雰囲気中、照射エネルギーが500mW以下であり且つパルス幅10-12秒以下の超短パルスのレーザーを照射することにより、誘起構造部を有するプラスチック構造体を形成することを特徴とするプラスチック構造体の形成方法である。
【0010】
本発明では、超短パルスのレーザーの焦点を被加工プラスチック材料の表面から5〜150μmの深さの部位に結ぶことにより、表面に内部から隆起して独立的に形成されている円錐状ないし釣り鐘状の隆起物を有するプラスチック構造体を形成することができる。また、超短パルスのレーザーの焦点を被加工プラスチック材料の一方の表面から内部を経由して他方の表面まで、または一方の表面から内部まで走査することにより、貫通孔又は内部に終端する孔を有するプラスチック構造体を形成することができる。さらにまた、超短パルスのレーザーの焦点を被加工プラスチック材料の内部に結ぶことにより、内部に屈折率変調部を有するプラスチック構造体を形成することができる。
【0011】
また、本発明では、25℃を超えているとともに、被加工プラスチック材料のTg未満且つ(Tg−30)℃以上の温度雰囲気中、照射エネルギーが500mW以下であり且つパルス幅10-12秒以下の超短パルスのレーザーを照射することが好ましい。照射エネルギーが500mW以下であり且つパルス幅10-12秒以下の超短パルスのレーザーを、被加工プラスチック材料が設置されている加温系の外部から照射してもよい。
【0012】
ーザーの照射エネルギーは、5〜300mWであってもよい。
【0013】
【発明の実施の態様】
以下に、本発明を必要に応じて図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一の部材については、同一の符号を付している場合がある。
(プラスチック構造体の形成方法)
本発明では、室温を超え且つ被加工プラスチック材料のガラス転移温度(Tg)未満の温度雰囲気中、被加工プラスチック材料にパルス幅10-12秒以下の超短パルスのレーザー(「超短パルスレーザー」と称する場合がある)を照射することにより、誘起構造部を有するプラスチック構造体を形成している。図1は、本発明のプラスチック構造体の形成方法の一例を示す概略鳥瞰図である。図1において、1はプラスチック構造体、11は被加工プラスチック材料、1aは被加工プラスチック材料11(又はプラスチック構造体1)の上面、2は誘起構造部、3は恒温容器(加温容器)、3aは恒温容器3の透明窓、4はパルス幅が10-12秒以下である超短パルスレーザー(単に「レーザー」と称する場合がある)、5はレンズ、Lはレーザー4の照射方向である。図1では、既に、室温を超え且つ被加工プラスチック材料のTg未満の温度に加温されている恒温容器3内に設置された被加工プラスチック材料11に、レーザー4を照射することにより、誘起構造部2が形成されている。具体的には、レーザー4を、恒温容器3内に設置した被加工プラスチック材料11に向けて、透明窓3aを通して照射方向Lの向き(すなわちZ軸と平行な方向)で、照射している。なお、レーザー4はレンズ5を用いることにより焦点を絞って合わせることができる。また、被加工プラスチック材料11はシート状の形態を有しており、該被加工プラスチック材料11の上面はX−Y平面と平行な面となっている(Z軸と垂直となっている)。なお、被加工プラスチック材料11としては、シート状の形態のプラスチック材料を用いているが、如何なる形状のものであってもよい。
【0014】
また、6はレーザー4の焦点の位置又はその中心位置(「焦点」と称する場合がある)、7はレーザー4の焦点6の移動方向、8はレーザー4の焦点6をライン状に移動させる際のラインである。従って、ライン8は、焦点6の移動方向7と平行又は同一の方向に延びている。ライン8は、焦点6をライン状に移動させる際のラインであるので、焦点6がライン状に移動した軌跡に対応又は相当する。
【0015】
さらに、dは被加工プラスチック材料11(又はプラスチック構造体1)の表面1aからレーザー4の焦点6までの距離、Tは被加工プラスチック材料11(又はプラスチック構造体1)の厚さである。従って、距離dは、被加工プラスチック材料11の表面1aからの深さに相当する。すなわち、ライン8は、被加工プラスチック材料11の表面1aからの深さがdである位置となっている。該距離dとしては、特に制限されず、被加工プラスチック材料11の厚さTに応じて適宜選択することができ、通常、5〜150μm程度の範囲から選択される。すなわち、超短パルスのレーザー4を、被加工プラスチック材料11の表面1aから、例えば、5〜150μmの深さに焦点を合わせて照射することができる。距離dとしては、好ましくは10〜120μm、さらに好ましくは20〜100μm程度である。なお、距離dは、もちろん、被加工プラスチック材料11の厚さTよりも短く、通常、厚さTの半分以下であるが、半分を超えていてもよい。
【0016】
なお、超短パルスのレーザーが同じ照射エネルギーである場合、照射点又は焦点の深さが深くなるほど、照射エネルギーが三次元的に広がる範囲が広くなる。すなわち、照射点又は焦点の深さが深くなるほど、単位体積当たりの照射エネルギーの大きさが小さくなる。
【0017】
また、レーザー4は、その焦点6を移動方向7の向き(すなわちY軸と平行な向き)に、ライン状に移動させながら照射させている。従って、その結果として、焦点6をライン8上をライン状に移動方向7の向きに移動させながら、レーザー4が照射されていることになる。前記移動方向7は、照射方向Lに対して垂直な方向であり、且つ被加工プラスチック材料11の表面1aに対して平行な方向である。従って、ライン8は、焦点6の移動方向7と平行であり、照射方向Lとは垂直となっている。さらに、ライン8は、被加工プラスチック材料11の表面1aに対して平行な方向となっている。なお、レーザー4の焦点6を移動方向7にライン状に移動させる際の該焦点6の移動速度としては、特に制限されず、被加工プラスチック材料11の材質やレーザー4の照射エネルギーの大きさ等に応じて適宜選択することができ、例えば、10〜1,000μm/秒(好ましくは100〜800μm/秒)程度の範囲から選択してもよい。なお、前記移動速度をコントロールすることにより、誘起構造部3の大きさ等をコントロールすることも可能である。
【0018】
また、レーザー4の焦点6の移動方向は、特に制限されず、如何なる方向であってもよい。また、レーザー4の焦点6は、連続的又は間欠的に移動させることもできる。もちろん、レーザー4の焦点6は、移動させなくてもよい。
【0019】
なお、恒温容器3は、加温手段又は加熱手段(「加温手段」と称する場合がある)により加温又は加熱(「加温」と称する場合がある)される。レーザー4の照射による加工において、室温を超え且つ被加工プラスチック材料のガラス転移温度(Tg)未満の温度雰囲気(「加温雰囲気」と称する場合がある)中の温度としては、室温を超え且つ被加工プラスチック材料のTg未満の温度であれば特に制限されないが、被加工プラスチック材料のTgに応じて、室温を超えているとともに、被加工プラスチック材料のTg未満且つ(Tg−30)℃以上の温度であることが好ましい。本発明では、加温雰囲気中の温度としては、室温を超え且つ被加工プラスチック材料の(Tg−5)〜(Tg−25)℃の温度であることがさらに好ましく、特に、室温を超え且つ被加工プラスチック材料の(Tg−10)〜(Tg−25)℃の温度であることが好適である。なお、室温とは、2℃を意味する。恒温容器3としては、容器内を加温することができる加温手段を有するものであれば特に制限されない。
【0020】
なお、被加工プラスチック材料が有している室温より高い温度のTgを超えた温度雰囲気とすると、誘起構造部が形成されても緩和してしまう。
【0021】
また、図1では、レーザー4は、恒温容器3の外部から恒温容器3内に設置されている被加工プラスチック材料11に照射しているが、レーザー4を含むレーザーシステム系を、恒温容器3内に設置して、恒温容器3内で、レーザー4を被加工プラスチック材料11に照射することも可能である。なお、被加工プラスチック材料11が設置されている恒温容器3(加温系)の外部からレーザー4を照射する場合、恒温容器3の表面のうち少なくともいずれか1つの表面が、全面的に又は部分的に光透過性を有していることが重要である。例えば、図1の恒温容器3は透明窓3aを有しており、該透明窓3aを通して、レーザー4を恒温容器3内に設置されている被加工プラスチック材料11に照射することができる。
【0022】
本発明では、図1に示されるように、室温を超え且つ被加工プラスチック材料のTg未満の温度雰囲気下で、被加工プラスチック材料11にレーザー4を照射することにより、レーザー4のライン8及びその周辺部(近辺部)において、被加工プラスチック材料が誘起されて、誘起構造部2が形成される。このレーザー4の照射に際しては、その焦点6を連続的にライン8上を移動方向7の方向に移動させているので、被加工プラスチック材料11に誘起構造部3が形成される部位も焦点6の移動に応じて連続的に移動して、移動方向7に延びて誘起構造部が形成された部位からなる誘起構造部3が形成されている。このように、室温を超え且つ被加工プラスチック材料のTg未満の温度雰囲気中(例えば、室温を超えているとともに、被加工プラスチック材料のTg未満且つ(Tg−30)℃以上の温度の温度雰囲気中)、被加工プラスチック材料11の表面乃至内部に焦点を結んでレーザー4を照射するという簡単な方法により、容易に且つ優れた作業性で、誘起構造部を有するプラスチック構造体を形成することができる。しかも、誘起構造部は、被加工プラスチック材料の表面や内部における任意の部位に精密に制御して形成することができる。すなわち、ボイドや亀裂などのクラックの発生が低減されている。これは、予め、被加工プラスチック材料が、室温を超え且つ被加工プラスチック材料のTg未満の温度に加温されていることにより、被加工プラスチック材料が溶融状態に至るためのレーザー4の照射エネルギーの閾値が低下し、また、溶融状態から冷却される冷却過程の時間が長くなるので、室温付近の温度雰囲気中で照射を行った場合と異なった挙動を発揮して、精密に制御された誘起構造部が形成されるものと考えられる。特に、優れた環境性・省資源性で、誘起構造部を有するプラスチック構造体を形成することができ、環境汚染やリサイクルなどの環境問題の発生を抑制又は防止することができる。
【0023】
本発明では、超短パルスレーザーは、単数で用いてもよく、複数で用いてもよい。すなわち、超短パルスレーザーを照射する際には、1光束で照射する方法や、多光束干渉で照射する方法を採用することができる。ここで、多光束干渉で照射する方法とは、複数のレーザーを多方向から照射して、その交点又はその近傍に誘起構造部を形成するような光の干渉を利用して照射する方法を意味しており、一光束で照射する方法とは、前記のような光の干渉を利用せずに、単一のレーザー(単光源)で照射する方法を意味している。例えば、2光束干渉でレーザーを照射する方法としては、2台のレーザーを用いて照射する方法や、ビームスプリッター(例えば、ハーフミラー、プリズム、グレーティングなど)を用いて1台のレーザーによる光を分光して照射する方法などを採用することができる。
【0024】
本発明において、誘起構造部の形状としては、特に制限されず、例えば、円柱状、楕円柱状、円錐状、釣り鐘状、棚状、球状、直方体状、立方体状などの形状を含む種々の形状が挙げられる。なお、誘起構造部の形状が、球状、直方体状や立方体状の場合は、通常、超短パルスレーザーの照射点に直接的に各誘起構造部が独立して形成された形態となっており、一方、円柱状、楕円柱状、円錐状、釣り鐘状や棚状の場合は、通常、超短パルスレーザーの照射点が移動した方向に誘起された部位が連続的に形成されている形態となっている。
【0025】
本発明では、例えば、図1で示されるように、誘起構造部は、超短パルスレーザーの焦点の位置を起点にし、照射方向側に構造の変化等により形成された誘起構造部位が、焦点位置の移動方向(長手方向)に向かって連続して形成されているような状態又は形態として作製することができる。具体的には、焦点位置を照射方向に垂直な方向にライン状(直線的)に移動させた場合、長手方向に対する垂直断面形状が、焦点位置を起点として(すなわち、上端として)、照射方向に延びた又は拡がるような略楕円形状又は略長方形状となり、該長手方向に対する垂直断面形状が焦点の移動方向(長手方向)に連続して形成されたような誘起構造部を形成することができる。
【0026】
また、本発明では、レーザーの焦点位置は、二次元的や三次元的にも移動させることができるので、二次元的や三次元的な構造を有する誘起構造部を形成することもできる。
【0027】
本発明では、誘起構造部としては、例えば、構造の変化による構造変化部であってもよく、また孔(空洞部)が形成されることによる孔であってもよく、さらにまた被加工プラスチック材料の表面にプラスチック内部から隆起して独立的に形成されている円錐状ないし釣り鐘状の隆起物であってもよい。特に、室温を超え且つ被加工プラスチック材料のTg未満の温度下でレーザーの照射を行って加工しているので、精密に制御された誘起構造部を形成することができる。具体的には、例えば、誘起構造部が構造変化部である場合、空洞やクラック、溶融・再固化物が生じる場合が減少する。また、誘起構造部が孔である場合、孔の大きさが精密に制御された孔が形成できる。さらにまた、誘起構造部が隆起物である場合は、隆起のエネルギーの閾値が低くなったためか、小さなエネルギーで大きな構造の隆起物を形成できる。なお、構造変化部や孔は、二次元的のみならず、三次元的にも任意に形成することができる。
【0028】
前記誘起構造部が構造変化部である場合、超短パルスのレーザーの焦点を被加工プラスチック材料の内部(例えば、被加工プラスチック材料11の上面1aから10μm以上且つ下面から50μm以上の距離を有する位置等)に結び、必要に応じてその焦点を移動させながら照射することにより、内部に構造変化部を有するプラスチック構造体を形成することができる。構造変化部における構造の変化としては、相分離(例えば、結晶化などによる相転移など)による構造の変化が主として挙げられるが、その他に、熱溶融・冷却による構造の変化、架橋反応や硬化反応による構造の変化、分解反応による構造の変化などの物理的及び/又は化学的な構造の変化が挙げられる。なお、構造の変化としては、前記例示の構造の変化は、複数組み合わされていてもよく、例えば、相分離による構造の変化とともに、他の形態による構造の変化が併用されていてもよい。また、構造の変化の程度は、均一であってもよく、不均一であってもよい。従って、誘起構造部は、変化した程度が均一的であるように構造が変化して形成されているような構成であってもよく、また、誘起構造が形成されていない誘起構造未形成部側の端部から内部又は焦点位置若しくはその中心に向かって、変化した程度が徐々に連続的に増加するように構造が変化して形成されているような構成であってもよい。従って、誘起構造部と、誘起構造未形成部との界面(又は境界)は、明瞭又は不明瞭となっていてもよい。このような構造変化部としては、構造の変化により屈折率が変調された屈折率変調部が好適である。
【0029】
誘起構造部が孔である場合、例えば、被加工プラスチック材料の外気(例えば、加温系内における空気など)と接触する面(表面)から焦点を合わせて、内部に向かって移動させながら照射することにより、孔を有するプラスチック構造体を形成する方法を採用することができる。このように表面から焦点を合わせると、焦点が合わせられた部位が気化して除去されて、孔が形成されると推察される。具体的には、超短パルスのレーザーの焦点を被加工プラスチック材料の一方の表面から内部を経由して他方の表面まで走査することにより、貫通孔を有するプラスチック構造体を形成することができる。また、超短パルスのレーザーの焦点を被加工プラスチック材料の一方の表面から内部まで走査することにより、内部に終端する孔を有するプラスチック構造体を形成することができる。
【0030】
誘起構造部が被加工プラスチック材料の内部から隆起して独立的に形成されている円錐状ないし釣り鐘状の隆起物である場合、その形成方法としては、被加工プラスチック材料の表面に前記隆起物を被加工プラスチック材料の内部から隆起させる形成方法であれば特に限定されないが、被加工プラスチック材料の表面から、例えば、5〜150μm(好ましくは10〜120μm、さらに好ましくは20〜100μm)程度の深さの部位にレーザーの焦点を結び、必要に応じてその焦点を移動させながら照射することにより、表面に内部から隆起して独立的に形成されている円錐状ないし釣り鐘状の隆起物を有するプラスチック構造体を形成する方法が好適である。
【0031】
本発明では、1つのプラスチック構造体において形成されている誘起構造部の数は、特に制限されず、単数であってもよく、複数であってもよい。内部に複数の誘起構造部が形成されているプラスチック構造体では、適度な間隔を隔てて誘起構造部を積層したような積層構造とすることも可能である。1つのプラスチック構造体が内部に複数の誘起構造部を有している場合、誘起構造部間の間隔は、任意に選択することができる。前記誘起構造部間の間隔は、5μm以上であることが好ましい。プラスチック構造体内部の誘起構造部間の間隔が5μm未満であると、誘起構造部の作製時に誘起構造部同士が融合して、独立した複数の誘起構造部とすることができない場合がある。
【0032】
本発明では、誘起構造部の大きさ、形状、構造の変化の程度などは、加温時の温度の他、レーザーの照射時間、レーザーの焦点位置の移動方向やその速度、被加工プラスチック材料の材質の種類、レーザーのパルス幅の大きさや照射エネルギーの大きさ、レーザーの焦点を調整するためのレンズの開口数や倍率などにより適宜調整することができる。
【0033】
このように、超短パルスレーザーを、その焦点をレンズを利用して絞って合わせて、被加工プラスチック材料の任意の部位(又は箇所)に照射し、必要に応じて前記レーザーの焦点位置(又は照射位置)を移動させることにより、誘起構造部を任意の部位(特に内部の部位)に設けることができる。前記レーザーの焦点位置の移動は、レーザー及びレンズと、被加工プラスチック材料との相対位置を動かせることにより、例えば、レーザー及びレンズ、及び/又は被加工プラスチック材料を移動させることにより、行うことができる。具体的には、例えば、2次元又は3次元の方向に精密に動かすことができるステージ(XYZステージ)上に被加工プラスチック材料(照射サンプル)又は該被加工プラスチック材料が設置されている恒温容器を設置し、超短パルスレーザー発生装置及びレンズを前記被加工プラスチック材料に対して焦点が合うよう(任意の部位でよい)に固定し、前記ステージを動かせて焦点位置を移動させることにより、被加工プラスチック材料の任意の部位に、目的とする形状の誘起構造部を作製することができる。なお、前記ステージの移動速度、移動方向や移動時間などをコントロールすることにより、レーザーの照射を2又は3次元的な連続性を持って任意に行うことができる。
【0034】
なお、具体的には、例えば、被加工プラスチック材料に超短パルスレーザーが照射されると、被加工プラスチック材料におけるレーザーが照射された照射部と、該照射部の近辺部とは、プラズマ発生など化学的・物理的作用を受けながら、局部的に高温状態となり、その後、照射の終了や、照射部の移動(例えば、二次元的な移動や三次元的な移動)に伴い、照射されていた照射部及びその近辺部は、通常は、常温に戻される。この照射により、任意の部位に誘起構造が形成された誘起構造部が形成される。
【0035】
本発明では、例えば、プラスチック構造体がその内部に誘起構造部として屈折率変調部などの構造変化部を有している場合、該構造変化部の大きさとしては、直径又は1辺の長さが1mm以下(好ましくは500μm以下)であってもよい。また、プラスチック構造体が誘起構造部として孔を有している場合、該孔の径(又は幅)としては、例えば、0.1〜1000μm、好ましくは0.1〜100μm、さらに好ましくは0.5〜30μm程度の範囲から選択することができる。このように、誘起構造部としての構造変化部や孔の大きさが極めて小さくても、レーザーとして超短パルスレーザーを用いて加温雰囲気中で照射することにより、精密に誘起構造部を制御して作製することができる。また、プラスチック構造体がその表面に誘起構造部として隆起物を有している場合、隆起物の円錐や釣り鐘の底面の直径は0.3〜30μm(好ましくは1〜20μm)程度であり、高さは0.1〜10μm(好ましくは0.5〜8μm)程度であってもよい。なお、隆起物の間隔(底面の円の中心間距離)は、底面の直径と同じかそれ以上(例えば、直径〜直径の10倍程度、好ましくは、直径〜直径の5倍程度)であることが好ましい。
【0036】
[被加工プラスチック材料]
被加工プラスチック材料は、有機系高分子や無機系高分子などの各種ポリマー成分により構成されている。ポリマー成分は単独で又は2種以上組み合わせられていてもよい。前記有機系高分子としては、熱可塑性樹脂を用いることができる。特に本発明では、被加工プラスチック材料としては、室温を超えている温度のガラス転移温度(Tg)を有していることが重要である。なお、被加工プラスチック材料は複数のTgを有していてもよく、この場合、複数のTgのうち少なくとも1つのTgが室温を超えている温度であればよい。すなわち、被加工プラスチック材料が複数のTgを有している場合、室温を超えている温度のTgのうちいずれか1つのTgを基準にして、レーザー照射時の温度を選択することができる。
【0037】
被加工プラスチック材料が有している室温(例えば、20〜25℃程度)を超えている温度のTgとしては、例えば、25℃を超え且つ300℃以下(好ましくは30℃〜250℃、さらに好ましくは50℃〜230℃)程度の範囲から選択することができる。特に本発明では、被加工プラスチック材料が有している室温を超えている温度のTgとしては、50℃〜100℃程度の温度であることが望ましい。
【0038】
本発明では、被加工プラスチック材料としては、有機系高分子(特に、熱可塑性樹脂)から構成されていることが好ましい。被加工プラスチック材料が2つ以上のガラス転移温度(ガラス転移点)を有する熱可塑性樹脂材料であると、超短パルスレーザーの照射により相分離が生じて、誘起構造部などの誘起構造部を形成することができる。2つ以上のガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂材料には、熱的な運動性が異なったお互いに相溶性のない2つ以上の成分を含んで構成された材料系が含まれる。このような材料系としては、2つ以上の異種材料のブレンド物(例えば、2種以上のホモポリマー及び/又はランダム共重合体のブレンド物、2種以上のブロック共重合体のブレンド物など)、2つ以上の異種成分から構成されたブロック共重合体などが挙げられる。
【0039】
なお、超短パルスレーザーによるレーザー加工を円滑に行うためには、被加工プラスチック材料としては、400nm〜800nmの可視光波長領域において、10%以上(好ましくは50%以上、さらに好ましくは85%以上)の光透過性を有するものが望ましい。上記波長領域で著しい光吸収や散乱を起こす着色したプラスチックや散乱粒子を多量に含むプラスチックは望ましくない。被加工プラスチック材料は単層又は多層のいずれの状態であってもよい。
【0040】
より具体的には、被加工プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系樹脂;ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのメタクリレート系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)などのスチレン系樹脂;ポリアミド;ポリカーボネート(PC);ポリアセタール;ポリフェニレンエーテルなどのポリアリーレンエーテル;ポリフェニレンスルフィド;ポリアリレート;ポリスルホン(ポリサルホン);ポリエーテルスルホン(PES)(ポリエーテルサルホン);ポリエーテルエーテルケトンやポリエーテルケトンケトンなどのポリエーテルケトン類;ポリイミド;ポリエーテルイミド(PEI);ポリアミドイミド;ポリエステルイミド;ポリアクリル酸エステル類;ポリアリール;ポリノルボルネン;エポキシ系樹脂などが挙げられる。
【0041】
本発明では、被加工プラスチック材料には、例えば、室温以下の温度のTgを有する樹脂の他、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やフッ化ビニリデン系樹脂、ヘキサフルオロプロピレン系樹脂、ヘキサフルオロアセトン系樹脂等のフッ素系樹脂や、ポリシラン等のケイ素−ケイ素結合を有する主鎖から構成されているポリシラン系ポリマーなどが配合されていても良い。なお、前記ポリシラン系ポリマーとしては、例えば、ポリ(ジメチルシラン)、ポリ(メチルエチルシラン)等のポリ(アルキルアルキルシラン);ポリ(メチルシクロヘキシルシラン)等のポリ(アルキルシクロアルキルシラン);ポリ(メチルフェニルシラン)等のポリ(アルキルアリールシラン);ポリ(ジフェニルシラン)等のポリ(アリールアリールシラン);ポリフェニルシリン、ポリメチルシリン等のケイ素原子の3次元構造を有する(ケイ素原子が3次元的に結合された構造を有する)ケイ素原子含有ポリマーなどのホモポリマーや、ポリ(ジメチルシラン−メチルシクロヘキシルシラン)、ポリ(ジメチルシラン−メチルフェニルシラン)などのコポリマーなどが挙げられる。
【0042】
なお、本発明では、被加工プラスチック材料は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。また、無機化合物や金属化合物などの他の材料を分散状態で含んだ複合体や他の材料を層状の状態で含んだ積層体であってもよい。さらにまた、必要に応じて架橋剤、滑剤、静電防止剤、可塑剤、分散剤、安定剤、界面活性剤、無機あるいは有機の充填剤など含有していてもよい。
【0043】
(レーザー)
超短パルスレーザーとしては、パルス幅が10-12秒以下であれば特に制限されず、パルス幅が10-15秒のオーダーのパルスレーザーを好適に用いることができる。パルス幅が10-15秒のオーダーであるパルスレーザーには、パルス幅が1×10-15秒〜1×10-12秒であるパルスレーザーが含まれる。より具体的には、超短パルスレーザーとしては、パルス幅が10×10-15秒〜500×10-15秒(好ましくは50×10-15秒〜300×10-15秒)程度であるパルスレーザーが好適である。
【0044】
パルス幅が10-12秒以下である超短パルスレーザーは、例えば、チタン・サファイア結晶を媒質とするレーザーや色素レーザーを再生・増幅して得ることができる。
【0045】
超短パルスレーザーにおいて、その波長としては、例えば、可視光の波長領域(例えば、400〜800nm)であることが好ましい。また、超短パルスレーザーにおいて、その繰り返しとしては、例えば、1Hz〜80MHzの範囲から選択することができ、通常、10Hz〜500kHz程度である。
【0046】
なお、超短パルスレーザーの平均出力又は照射エネルギーとしては、特に制限されず、目的とする誘起構造部の大きさ等に応じて適宜選択することができ、例えば、500mW以下(例えば、1〜500mW)、好ましくは5〜300mW、さらに好ましくは10〜100mW程度の範囲から選択することができる。前述のように、被加工プラスチック材料は、無機ガラス材料に比べて熱伝導性やガラス転移温度が低く、無機ガラス材料と同じような励起構造を形成するのに必要な超短パルスレーザーの照射エネルギーとしては、無機ガラス材料に必要な照射エネルギーの1/10〜1/100程度に低くすることができる。
【0047】
また、超短パルスレーザーの照射スポット径としては、特に制限されず、目的とする誘起構造部の大きさやその誘起構造の種類又は該誘起された構造の程度、レンズの大きさや開口数又は倍率などに応じて適宜選択することができ、例えば、0.1〜10μm程度の範囲から選択することができる。
【0048】
なお、被加工プラスチック材料に対して内部における単位体積当たりに照射されるエネルギーは、超短パルスレーザーの照射エネルギー、超短パルスレーザーの焦点の移動速度、焦点の深さ(照射の位置)、焦点の絞り(対物レンズの開口数)などを調整することによりコントロールすることができ、その結果として形成される誘起構造部の形状などをコントロールすることができる。
【0049】
なお、レンズは、レーザーの光線の焦点を絞って合わせるために用いている。従って、レーザーの焦点を絞って合わせる必要が無い場合は、レンズを用いる必要はない。レンズの開口数(NA)は、特に制限されず、対物レンズの倍率に応じて変更することができ、通常は、倍率としては10〜50倍、開口数としては0.3〜0.8程度の範囲から選択される。
【0050】
[誘起構造部を有するプラスチック構造体]
本発明におけるプラスチック構造体は、その表面又は内部に誘起構造部を有している。プラスチック構造体は、拡散板や散乱素子などの光機能部材;精密な空間や流路などの形成用スペーサー機能を利用したマイクロマシーンやセンサー;電気的探針;バイオ機器;マイクロリアクターチップ;埋め込み型人工臓器などの高機能なレーザー加工品の他、回折格子(透過型回折格子など)、光導波路などとして好適に利用することができる。
【0051】
本発明では、プラスチック構造体は、そのままプラスチック部材として用いてもよく、他の部材と組み合わせて用いてもよい。プラスチック構造体には、任意の加工や処理を施すことができ、例えば、延伸や収縮などの加工処理や、さらに必要に応じて後処理を行うこともできる。
【0052】
【発明の効果】
本発明の誘起構造部を有するプラスチック構造体の形成方法によれば、優れた環境性・省資源性で、かつ被加工プラスチック材料の表面や内部に誘起構造部を精密に形成させることができる。さらに、誘起構造部が隆起物、孔や屈折率変調部であっても、容易に、しかも被加工プラスチック材料の表面や内部における任意の部位に精密に制御して形成することができる
【0053】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート(PET)シート(厚さ3.0mm、ガラス転移温度75℃)を60℃の恒温容器内に設置した。該PETの上面から深さが約5μmである内部の位置を焦点にして、チタン・サファイア・フェムト秒パルスレーザー装置及び対物レンズ(倍率:10倍)を使用して、超短パルスレーザー(照射波長:800nm、パルス幅:150×10-15秒、繰り返し:200kHz)を、照射エネルギー(平均出力):7mW、照射スポット径:約3μmの条件で、PETシートを照射方向に垂直な方向に移動速度:約25μm/秒で移動させながら、恒温容器の外部から恒温容器の上面の透明窓を通して照射したところ、PETシートの内部における超短パルスレーザーの焦点を合わせ始めた位置から焦点を合わせ終えた位置にかけての上面側の表面に、円錐状の隆起物(隆起物の底面の直径7.2μm、隆起物の高さ3.7μm)が形成された。
【0054】
(比較例1)
加温せずに室温(25℃)で照射を行うこと以外は実施例1と同じ条件で照射したところ、PETシートの表面には隆起物が形成されず、PETシートの内部に空洞部が形成された。
【0055】
(実施例2)
PETシート(厚さ0.1mm、ガラス転移温度75℃)を50℃の恒温容器内に設置した。該PETシートの下面より下側の外部に焦点を合わせて、チタン・サファイア・フェムト秒パルスレーザー装置及び対物レンズ(倍率:20倍)を使用して、超短パルスレーザー(照射波長:800nm、パルス幅:150×10-15秒、繰り返し:200kHz)を、照射エネルギー(平均出力):75mW、照射スポット径:約3μmの条件で、恒温容器の外部から恒温容器の上面の透明窓を通して照射し始め、さらに、照射方向に対して平行に対物レンズ側に移動速度100μm/秒の条件でPETシートを移動させて、焦点の位置をPETシートの下面の外部から上面の外部まで対物レンズ側に上昇させたところ、PETシートの下面における超短パルスレーザーの焦点を合わせ始めた位置から、PETシートの上面における超短パルスレーザーの焦点を合わせ終えた位置にかけて、貫通孔(孔の径約3μm)が形成された。
【0056】
(実施例3)
PETシート(厚さ0.5mm、ガラス転移温度75℃)を60℃の恒温容器内に設置した。該PETシートの上面から深さが約30μmである内部の位置を焦点にして、チタン・サファイア・フェムト秒パルスレーザー装置及び対物レンズ(倍率:10倍)を使用して、超短パルスレーザー(照射波長:800nm、パルス幅:150×10-15秒、繰り返し:200kHz)を、照射エネルギー(平均出力):27mW、照射スポット径:約3μmの条件で、PETシートを照射方向に垂直な方向に移動速度:約25μm/秒で移動させながら、恒温容器の外部から恒温容器の上面の透明窓を通して照射したところ、PETシートの内部における超短パルスレーザーの焦点を合わせ始めた位置から、焦点を合わせ終えた位置にかけての内部に、屈折率が変調された屈折率変調部が形成された。なお、該屈折率変調部には、ボイドや亀裂等のクラックなどは形成されていなかった。
【0057】
(比較例2)
加温せずに室温(25℃)で照射を行うこと以外は実施例3と同じ条件で照射したところ、約0.3〜0.6μmの大きさ(サイズ)の微小なボイドが屈折率変調部に形成していた。
【0058】
なお、パルスレーザーを照射した各サンプルの評価では、光干渉顕微鏡(菱化システム社製)および反射型電子顕微鏡(SEM)(日立製作所社製)により、表面並びに断面の形態及び形状の観察を行った。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプラスチック構造体の形成方法の一例を示す概略鳥瞰図である。
【符号の説明】
1 プラスチック構造体
11 被加工プラスチック材料
1a 被加工プラスチック材料11(又はプラスチック構造体1)の上面
2 誘起構造部
3 恒温容器
3a 恒温容器3の透明窓
4 パルス幅が10-12秒以下である超短パルスレーザー
5 レンズ
L レーザー4の照射方向
6 レーザー4の焦点の位置又はその中心位置
7 レーザー4の焦点6の移動方向
8 レーザー4の焦点6をライン状に移動させる際のライン
d 被加工プラスチック材料11(又はプラスチック構造体1)の表面1aからレーザー4の焦点6までの距離
T 被加工プラスチック材料11(又はプラスチック構造体1)の厚さ

Claims (7)

  1. 400〜800nmの可視光波長領域において10%以上の透過率を有する、熱可塑性樹脂より構成されている被加工プラスチック材料に、25℃を超え且つ被加工プラスチック材料のガラス転移温度(Tg)未満の温度雰囲気中、照射エネルギーが500mW以下であり且つパルス幅10-12秒以下の超短パルスのレーザーを照射することにより、誘起構造部を有するプラスチック構造体を形成することを特徴とするプラスチック構造体の形成方法。
  2. 超短パルスのレーザーの焦点を被加工プラスチック材料の表面から5〜150μmの深さの部位に結ぶことにより、表面に内部から隆起して独立的に形成されている円錐状ないし釣り鐘状の隆起物を有するプラスチック構造体を形成する請求項1記載のプラスチック構造体の形成方法。
  3. 超短パルスのレーザーの焦点を被加工プラスチック材料の一方の表面から内部を経由して他方の表面まで、または一方の表面から内部まで走査することにより、貫通孔又は内部に終端する孔を有するプラスチック構造体を形成する請求項1記載のプラスチック構造体の形成方法。
  4. 超短パルスのレーザーの焦点を被加工プラスチック材料の内部に結ぶことにより、内部に屈折率変調部を有するプラスチック構造体を形成する請求項1記載のプラスチック構造体の形成方法。
  5. 25℃を超えているとともに、被加工プラスチック材料のTg未満且つ(Tg−30)℃以上の温度の雰囲気中、照射エネルギーが500mW以下であり且つパルス幅10-12秒以下の超短パルスのレーザーを照射する請求項1〜4の何れかの項に記載のプラスチック構造体の形成方法。
  6. 照射エネルギーが500mW以下であり且つパルス幅10-12秒以下の超短パルスのレーザーを、被加工プラスチック材料が設置されている加温系の外部から照射する請求項1〜5の何れかの項に記載のプラスチック構造体の形成方法。
  7. レーザーの照射エネルギーが、5〜300mWである請求項1〜6の何れかの項に記載のプラスチック構造体の形成方法。
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