JP2003236929A - プラスチック構造体の形成方法 - Google Patents

プラスチック構造体の形成方法

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JP2003236929A JP2002043055A JP2002043055A JP2003236929A JP 2003236929 A JP2003236929 A JP 2003236929A JP 2002043055 A JP2002043055 A JP 2002043055A JP 2002043055 A JP2002043055 A JP 2002043055A JP 2003236929 A JP2003236929 A JP 2003236929A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 環境性・省資源性が優れ、かつ被加工プラス
チック材料の表面や内部に誘起構造部を精密に形成でき
るプラスチック構造体の形成方法を提供する。 【解決手段】 プラスチック構造体の形成方法、室温を
超え且つ被加工プラスチック材料のガラス転移温度(T
g)未満の温度雰囲気中、被加工プラスチック材料にパ
ルス幅10-12秒以下の超短パルスのレーザーを照射す
ることにより、誘起構造部を有するプラスチック構造体
を形成することを特徴とする。室温を超えているととも
に、被加工プラスチック材料のTg未満且つ(Tg−3
0)℃以上の温度の温度雰囲気中、パルス幅10-12
以下の超短パルスのレーザーを照射することができる。
パルス幅10-12秒以下の超短パルスのレーザーを、被
加工プラスチック材料が設置されている加温系の外部か
ら照射してもよい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、誘起構造部を有す
るプラスチック構造体を形成する方法に関し、より詳細
には、被加工プラスチック材料の任意の部位に、隆起
物、孔または屈折率変調部が形成されたプラスチック構
造体の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、プラスチック構造体(部品)の高
機能化、高性能化の要求が高くなってきている。それら
の要求に対して、加工されるプラスチック材料(被加工
プラスチック材料)自身をポリマーアロイ化したり複合
化したりする材料面での技術対応と、要求機能に合わせ
て機能部位を付加する加工面での技術対応の二つの取り
組みが行われている。プラスチック部品の表面の高機能
化・高性能化は、表面の濡れ性、接着性、吸着性、制電
性、水分やガスに対するバリアー性、表面硬さ、光反射
性、光散乱性、光透過性などの制御の必要性から、材料
・加工両面から色々な技術的な取り組みがされてきてい
る。それらの中で、プラスチックの加工として表面に凹
凸を設けて、濡れ性や接着性や光学的特性を向上させた
り、孔を形成させて流路や微小なセルを作製する方法が
下記(1)〜(5)のようにいくつかある。 (1)被加工プラスチック材料の表面を機械的に摩擦し
たり、スパッタ・エッチングなどの物理的・化学的な処
理により表面の一部を除去して凹凸を形成する方法。 (2)塗工・電鋳などのウエット・プロセスや蒸着・ラ
ミネート・転写等のドライ・プロセスにより被加工プラ
スチック材料の表面に膜を付加して凹凸を形成する方
法。 (3)予め凹凸を形成した金型などを利用して、成形に
より凹凸を形成する方法。 (4)ドリルで孔を形成する方法。 (5)レーザーで孔を形成する方法。 前記(1)の方法は、除去されたプラスチックの屑や飛
散物による表面の汚染や後処理の問題があり、前記
(2)の方法は、付加方法特有の材料や加工プロセスの
追加による煩雑性の問題がある。また、(1)、(2)
とも最近の環境汚染やリサイクル対策に関して、有意な
方法とは言い難い。一方、前記(3)の方法は、除去や
付加を伴わない方法であり量産性にも優れた方法である
が、精緻な凹凸構造の制御性に乏しい問題がある。さら
に、前記(4)の方法は、ドリル刃の微細サイズに限界
があり、また、屑や飛散物による表面の汚染の問題があ
る。さらにまた、前記(5)の方法は、炭化したススが
発生したり、熱溶融して孔の入り口が大きくなる問題が
ある。
【0003】そのため、環境性・省資源性が良好であ
り、被加工プラスチック材料の表面や内部の任意の部位
に、加工形成できる方法が望まれている。また、大気圧
中で被加工プラスチック材料の内部に屈折率変調部を形
成する際には、空洞やクラック、溶融・再固化物が形成
される場合があった。
【0004】一方、レーザー光源に関する技術進歩は著
しく、特にパルスレーザーは、ナノ(10-9)秒からピ
コ(10-12)秒と超短パルス化が進み、更に最近で
は、チタン・サファイア結晶などをレーザー媒質とする
フェムト(10-15)秒パルスレーザーなどが開発され
てきている。ピコ秒やフェムト秒などの超短パルスレー
ザーシステムは、通常のレーザーの持つ、指向性、空間
的・時間的コヒーレンスなどの特徴に加えて、パルス幅
が極めて狭く、同じ平均出力でも単位時間・単位空間当
りの電場強度が極めて高いことから、物質中に照射して
高い電場強度を利用して誘起構造を形成させる試みが、
無機ガラス材料を主な対象物として行われてきている。
【0005】また、高分子材料であるアモルファス・プ
ラスチック等は、無機ガラス材料と比較して、ガラス転
移温度が低い。これは、無機ガラス材料が共有結合で三
次元的に結合してアモルファス構造が形成されているの
に対して、高分子材料は、一次元的に共有結合で繋がっ
た高分子鎖が三次元的に絡み合ってアモルファス構造が
形成されていることを反映した結果である。従って、無
機ガラス材料に対しては、大きな照射エネルギーで照射
しないと、誘起構造が形成されないが、高分子材料で
は、高いエネルギーの照射は材料の劣化を引き起こす虞
があるので、高いエネルギーの照射は回避する必要があ
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、高分子
材料は、熱伝導性が低いという特徴を有している。従っ
て、高分子材料は熱伝導性が低いので、蓄熱し易い傾向
がある。すなわち、高分子材料は熱運動が無機ガラス材
料に比べて容易に起こり、運動や反応に必要な熱量が少
なくて済むので、無機ガラス材料に比べて、比較的低い
照射エネルギーでも誘起構造が形成される可能性があ
る。しかし、高分子材料であるプラスチック構造体に関
して、パルス幅が10-12秒以下である(例えば、パル
ス幅がフェムト秒のオーダーである)超短パルスレーザ
ーの照射による誘起構造形成の検討は、現在まで、無機
ガラス材料ほどには行われていなかった。
【0007】従って、本発明の目的は、優れた環境性・
省資源性で、かつ被加工プラスチック材料の表面や内部
に誘起構造部を精密に形成させることができるプラスチ
ック構造体の形成方法を提供することにある。本発明の
他の目的は、誘起構造部が隆起物、孔や屈折率変調部で
あっても、容易に、しかも被加工プラスチック材料の表
面や内部における任意の部位に精密に制御して形成する
ことができるプラスチック構造体の形成方法を提供する
ことにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目
的を達成するため鋭意検討した結果、被加工プラスチッ
ク材料に、加温雰囲気中、パルス幅が10-12秒以下の
レーザーを照射すると、環境汚染やリサイクルなどの環
境問題の発生を抑制又は防止して、プラスチックの表面
や内部に誘起構造部を精密に制御して形成できることを
見出し、本発明を完成させた。
【0009】すなわち、本発明は、室温を超え且つ被加
工プラスチック材料のガラス転移温度(Tg)未満の温
度雰囲気中、被加工プラスチック材料にパルス幅10
-12秒以下の超短パルスのレーザーを照射することによ
り、誘起構造部を有するプラスチック構造体を形成する
ことを特徴とするプラスチック構造体の形成方法であ
る。
【0010】本発明では、超短パルスのレーザーの焦点
を被加工プラスチック材料の表面から5〜150μmの
深さの部位に結ぶことにより、表面に内部から隆起して
独立的に形成されている円錐状ないし釣り鐘状の隆起物
を有するプラスチック構造体を形成することができる。
また、超短パルスのレーザーの焦点を被加工プラスチッ
ク材料の一方の表面から内部を経由して他方の表面ま
で、または一方の表面から内部まで走査することによ
り、貫通孔又は内部に終端する孔を有するプラスチック
構造体を形成することができる。さらにまた、超短パル
スのレーザーの焦点を被加工プラスチック材料の内部に
結ぶことにより、内部に屈折率変調部を有するプラスチ
ック構造体を形成することができる。
【0011】また、本発明では、室温を超えているとと
もに、被加工プラスチック材料のTg未満且つ(Tg−
30)℃以上の温度の温度雰囲気中、パルス幅10-12
秒以下の超短パルスのレーザーを照射することが好まし
い。パルス幅10-12秒以下の超短パルスのレーザー
を、被加工プラスチック材料が設置されている加温系の
外部から照射してもよい。
【0012】被加工プラスチック材料としては、400
〜800nmの可視光波長領域において10%以上の透
過率を有するプラスチック材料を用いることができる。
レーザーの照射エネルギーは、500mW以下であって
もよい。
【0013】
【発明の実施の態様】以下に、本発明を必要に応じて図
面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一の部材につ
いては、同一の符号を付している場合がある。 (プラスチック構造体の形成方法)本発明では、室温を
超え且つ被加工プラスチック材料のガラス転移温度(T
g)未満の温度雰囲気中、被加工プラスチック材料にパ
ルス幅10-12秒以下の超短パルスのレーザー(「超短
パルスレーザー」と称する場合がある)を照射すること
により、誘起構造部を有するプラスチック構造体を形成
している。図1は、本発明のプラスチック構造体の形成
方法の一例を示す概略鳥瞰図である。図1において、1
はプラスチック構造体、11は被加工プラスチック材
料、1aは被加工プラスチック材料11(又はプラスチ
ック構造体1)の上面、2は誘起構造部、3は恒温容器
(加温容器)、3aは恒温容器3の透明窓、4はパルス
幅が10 -12秒以下である超短パルスレーザー(単に
「レーザー」と称する場合がある)、5はレンズ、Lは
レーザー4の照射方向である。図1では、既に、室温を
超え且つ被加工プラスチック材料のTg未満の温度に加
温されている恒温容器3内に設置された被加工プラスチ
ック材料11に、レーザー4を照射することにより、誘
起構造部2が形成されている。具体的には、レーザー4
を、恒温容器3内に設置した被加工プラスチック材料1
1に向けて、透明窓3aを通して照射方向Lの向き(す
なわちZ軸と平行な方向)で、照射している。なお、レ
ーザー4はレンズ5を用いることにより焦点を絞って合
わせることができる。また、被加工プラスチック材料1
1はシート状の形態を有しており、該被加工プラスチッ
ク材料11の上面はX−Y平面と平行な面となっている
(Z軸と垂直となっている)。なお、被加工プラスチッ
ク材料11としては、シート状の形態のプラスチック材
料を用いているが、如何なる形状のものであってもよ
い。
【0014】また、6はレーザー4の焦点の位置又はそ
の中心位置(「焦点」と称する場合がある)、7はレー
ザー4の焦点6の移動方向、8はレーザー4の焦点6を
ライン状に移動させる際のラインである。従って、ライ
ン8は、焦点6の移動方向7と平行又は同一の方向に延
びている。ライン8は、焦点6をライン状に移動させる
際のラインであるので、焦点6がライン状に移動した軌
跡に対応又は相当する。
【0015】さらに、dは被加工プラスチック材料11
(又はプラスチック構造体1)の表面1aからレーザー
4の焦点6までの距離、Tは被加工プラスチック材料1
1(又はプラスチック構造体1)の厚さである。従っ
て、距離dは、被加工プラスチック材料11の表面1a
からの深さに相当する。すなわち、ライン8は、被加工
プラスチック材料11の表面1aからの深さがdである
位置となっている。該距離dとしては、特に制限され
ず、被加工プラスチック材料11の厚さTに応じて適宜
選択することができ、通常、5〜150μm程度の範囲
から選択される。すなわち、超短パルスのレーザー4
を、被加工プラスチック材料11の表面1aから、例え
ば、5〜150μmの深さに焦点を合わせて照射するこ
とができる。距離dとしては、好ましくは10〜120
μm、さらに好ましくは20〜100μm程度である。
なお、距離dは、もちろん、被加工プラスチック材料1
1の厚さTよりも短く、通常、厚さTの半分以下である
が、半分を超えていてもよい。
【0016】なお、超短パルスのレーザーが同じ照射エ
ネルギーである場合、照射点又は焦点の深さが深くなる
ほど、照射エネルギーが三次元的に広がる範囲が広くな
る。すなわち、照射点又は焦点の深さが深くなるほど、
単位体積当たりの照射エネルギーの大きさが小さくな
る。
【0017】また、レーザー4は、その焦点6を移動方
向7の向き(すなわちY軸と平行な向き)に、ライン状
に移動させながら照射させている。従って、その結果と
して、焦点6をライン8上をライン状に移動方向7の向
きに移動させながら、レーザー4が照射されていること
になる。前記移動方向7は、照射方向Lに対して垂直な
方向であり、且つ被加工プラスチック材料11の表面1
aに対して平行な方向である。従って、ライン8は、焦
点6の移動方向7と平行であり、照射方向Lとは垂直と
なっている。さらに、ライン8は、被加工プラスチック
材料11の表面1aに対して平行な方向となっている。
なお、レーザー4の焦点6を移動方向7にライン状に移
動させる際の該焦点6の移動速度としては、特に制限さ
れず、被加工プラスチック材料11の材質やレーザー4
の照射エネルギーの大きさ等に応じて適宜選択すること
ができ、例えば、10〜1,000μm/秒(好ましく
は100〜800μm/秒)程度の範囲から選択しても
よい。なお、前記移動速度をコントロールすることによ
り、誘起構造部3の大きさ等をコントロールすることも
可能である。
【0018】また、レーザー4の焦点6の移動方向は、
特に制限されず、如何なる方向であってもよい。また、
レーザー4の焦点6は、連続的又は間欠的に移動させる
こともできる。もちろん、レーザー4の焦点6は、移動
させなくてもよい。
【0019】なお、恒温容器3は、加温手段又は加熱手
段(「加温手段」と称する場合がある)により加温又は
加熱(「加温」と称する場合がある)される。レーザー
4の照射による加工において、室温を超え且つ被加工プ
ラスチック材料のガラス転移温度(Tg)未満の温度雰
囲気(「加温雰囲気」と称する場合がある)中の温度と
しては、室温を超え且つ被加工プラスチック材料のTg
未満の温度であれば特に制限されないが、被加工プラス
チック材料のTgに応じて、室温を超えているととも
に、被加工プラスチック材料のTg未満且つ(Tg−3
0)℃以上の温度であることが好ましい。本発明では、
加温雰囲気中の温度としては、室温を超え且つ被加工プ
ラスチック材料の(Tg−5)〜(Tg−25)℃の温
度であることがさらに好ましく、特に、室温を超え且つ
被加工プラスチック材料の(Tg−10)〜(Tg−2
5)℃の温度であることが好適である。なお、室温と
は、通常、20〜25℃の範囲の温度(特に、25℃)
を意味する。恒温容器3としては、容器内を加温するこ
とができる加温手段を有するものであれば特に制限され
ない。
【0020】なお、被加工プラスチック材料が有してい
る室温より高い温度のTgを超えた温度雰囲気とする
と、誘起構造部が形成されても緩和してしまう。
【0021】また、図1では、レーザー4は、恒温容器
3の外部から恒温容器3内に設置されている被加工プラ
スチック材料11に照射しているが、レーザー4を含む
レーザーシステム系を、恒温容器3内に設置して、恒温
容器3内で、レーザー4を被加工プラスチック材料11
に照射することも可能である。なお、被加工プラスチッ
ク材料11が設置されている恒温容器3(加温系)の外
部からレーザー4を照射する場合、恒温容器3の表面の
うち少なくともいずれか1つの表面が、全面的に又は部
分的に光透過性を有していることが重要である。例え
ば、図1の恒温容器3は透明窓3aを有しており、該透
明窓3aを通して、レーザー4を恒温容器3内に設置さ
れている被加工プラスチック材料11に照射することが
できる。
【0022】本発明では、図1に示されるように、室温
を超え且つ被加工プラスチック材料のTg未満の温度雰
囲気下で、被加工プラスチック材料11にレーザー4を
照射することにより、レーザー4のライン8及びその周
辺部(近辺部)において、被加工プラスチック材料が誘
起されて、誘起構造部2が形成される。このレーザー4
の照射に際しては、その焦点6を連続的にライン8上を
移動方向7の方向に移動させているので、被加工プラス
チック材料11に誘起構造部3が形成される部位も焦点
6の移動に応じて連続的に移動して、移動方向7に延び
て誘起構造部が形成された部位からなる誘起構造部3が
形成されている。このように、室温を超え且つ被加工プ
ラスチック材料のTg未満の温度雰囲気中(例えば、室
温を超えているとともに、被加工プラスチック材料のT
g未満且つ(Tg−30)℃以上の温度の温度雰囲気
中)、被加工プラスチック材料11の表面乃至内部に焦
点を結んでレーザー4を照射するという簡単な方法によ
り、容易に且つ優れた作業性で、誘起構造部を有するプ
ラスチック構造体を形成することができる。しかも、誘
起構造部は、被加工プラスチック材料の表面や内部にお
ける任意の部位に精密に制御して形成することができ
る。すなわち、ボイドや亀裂などのクラックの発生が低
減されている。これは、予め、被加工プラスチック材料
が、室温を超え且つ被加工プラスチック材料のTg未満
の温度に加温されていることにより、被加工プラスチッ
ク材料が溶融状態に至るためのレーザー4の照射エネル
ギーの閾値が低下し、また、溶融状態から冷却される冷
却過程の時間が長くなるので、室温付近の温度雰囲気中
で照射を行った場合と異なった挙動を発揮して、精密に
制御された誘起構造部が形成されるものと考えられる。
特に、優れた環境性・省資源性で、誘起構造部を有する
プラスチック構造体を形成することができ、環境汚染や
リサイクルなどの環境問題の発生を抑制又は防止するこ
とができる。
【0023】本発明では、超短パルスレーザーは、単数
で用いてもよく、複数で用いてもよい。すなわち、超短
パルスレーザーを照射する際には、1光束で照射する方
法や、多光束干渉で照射する方法を採用することができ
る。ここで、多光束干渉で照射する方法とは、複数のレ
ーザーを多方向から照射して、その交点又はその近傍に
誘起構造部を形成するような光の干渉を利用して照射す
る方法を意味しており、一光束で照射する方法とは、前
記のような光の干渉を利用せずに、単一のレーザー(単
光源)で照射する方法を意味している。例えば、2光束
干渉でレーザーを照射する方法としては、2台のレーザ
ーを用いて照射する方法や、ビームスプリッター(例え
ば、ハーフミラー、プリズム、グレーティングなど)を
用いて1台のレーザーによる光を分光して照射する方法
などを採用することができる。
【0024】本発明において、誘起構造部の形状として
は、特に制限されず、例えば、円柱状、楕円柱状、円錐
状、釣り鐘状、棚状、球状、直方体状、立方体状などの
形状を含む種々の形状が挙げられる。なお、誘起構造部
の形状が、球状、直方体状や立方体状の場合は、通常、
超短パルスレーザーの照射点に直接的に各誘起構造部が
独立して形成された形態となっており、一方、円柱状、
楕円柱状、円錐状、釣り鐘状や棚状の場合は、通常、超
短パルスレーザーの照射点が移動した方向に誘起された
部位が連続的に形成されている形態となっている。
【0025】本発明では、例えば、図1で示されるよう
に、誘起構造部は、超短パルスレーザーの焦点の位置を
起点にし、照射方向側に構造の変化等により形成された
誘起構造部位が、焦点位置の移動方向(長手方向)に向
かって連続して形成されているような状態又は形態とし
て作製することができる。具体的には、焦点位置を照射
方向に垂直な方向にライン状(直線的)に移動させた場
合、長手方向に対する垂直断面形状が、焦点位置を起点
として(すなわち、上端として)、照射方向に延びた又
は拡がるような略楕円形状又は略長方形状となり、該長
手方向に対する垂直断面形状が焦点の移動方向(長手方
向)に連続して形成されたような誘起構造部を形成する
ことができる。
【0026】また、本発明では、レーザーの焦点位置
は、二次元的や三次元的にも移動させることができるの
で、二次元的や三次元的な構造を有する誘起構造部を形
成することもできる。
【0027】本発明では、誘起構造部としては、例え
ば、構造の変化による構造変化部であってもよく、また
孔(空洞部)が形成されることによる孔であってもよ
く、さらにまた被加工プラスチック材料の表面にプラス
チック内部から隆起して独立的に形成されている円錐状
ないし釣り鐘状の隆起物であってもよい。特に、室温を
超え且つ被加工プラスチック材料のTg未満の温度下で
レーザーの照射を行って加工しているので、精密に制御
された誘起構造部を形成することができる。具体的に
は、例えば、誘起構造部が構造変化部である場合、空洞
やクラック、溶融・再固化物が生じる場合が減少する。
また、誘起構造部が孔である場合、孔の大きさが精密に
制御された孔が形成できる。さらにまた、誘起構造部が
隆起物である場合は、隆起のエネルギーの閾値が低くな
ったためか、小さなエネルギーで大きな構造の隆起物を
形成できる。なお、構造変化部や孔は、二次元的のみな
らず、三次元的にも任意に形成することができる。
【0028】前記誘起構造部が構造変化部である場合、
超短パルスのレーザーの焦点を被加工プラスチック材料
の内部(例えば、被加工プラスチック材料11の上面1
aから10μm以上且つ下面から50μm以上の距離を
有する位置等)に結び、必要に応じてその焦点を移動さ
せながら照射することにより、内部に構造変化部を有す
るプラスチック構造体を形成することができる。構造変
化部における構造の変化としては、相分離(例えば、結
晶化などによる相転移など)による構造の変化が主とし
て挙げられるが、その他に、熱溶融・冷却による構造の
変化、架橋反応や硬化反応による構造の変化、分解反応
による構造の変化などの物理的及び/又は化学的な構造
の変化が挙げられる。なお、構造の変化としては、前記
例示の構造の変化は、複数組み合わされていてもよく、
例えば、相分離による構造の変化とともに、他の形態に
よる構造の変化が併用されていてもよい。また、構造の
変化の程度は、均一であってもよく、不均一であっても
よい。従って、誘起構造部は、変化した程度が均一的で
あるように構造が変化して形成されているような構成で
あってもよく、また、誘起構造が形成されていない誘起
構造未形成部側の端部から内部又は焦点位置若しくはそ
の中心に向かって、変化した程度が徐々に連続的に増加
するように構造が変化して形成されているような構成で
あってもよい。従って、誘起構造部と、誘起構造未形成
部との界面(又は境界)は、明瞭又は不明瞭となってい
てもよい。このような構造変化部としては、構造の変化
により屈折率が変調された屈折率変調部が好適である。
【0029】誘起構造部が孔である場合、例えば、被加
工プラスチック材料の外気(例えば、加温系内における
空気など)と接触する面(表面)から焦点を合わせて、
内部に向かって移動させながら照射することにより、孔
を有するプラスチック構造体を形成する方法を採用する
ことができる。このように表面から焦点を合わせると、
焦点が合わせられた部位が気化して除去されて、孔が形
成されると推察される。具体的には、超短パルスのレー
ザーの焦点を被加工プラスチック材料の一方の表面から
内部を経由して他方の表面まで走査することにより、貫
通孔を有するプラスチック構造体を形成することができ
る。また、超短パルスのレーザーの焦点を被加工プラス
チック材料の一方の表面から内部まで走査することによ
り、内部に終端する孔を有するプラスチック構造体を形
成することができる。
【0030】誘起構造部が被加工プラスチック材料の内
部から隆起して独立的に形成されている円錐状ないし釣
り鐘状の隆起物である場合、その形成方法としては、被
加工プラスチック材料の表面に前記隆起物を被加工プラ
スチック材料の内部から隆起させる形成方法であれば特
に限定されないが、被加工プラスチック材料の表面か
ら、例えば、5〜150μm(好ましくは10〜120
μm、さらに好ましくは20〜100μm)程度の深さ
の部位にレーザーの焦点を結び、必要に応じてその焦点
を移動させながら照射することにより、表面に内部から
隆起して独立的に形成されている円錐状ないし釣り鐘状
の隆起物を有するプラスチック構造体を形成する方法が
好適である。
【0031】本発明では、1つのプラスチック構造体に
おいて形成されている誘起構造部の数は、特に制限され
ず、単数であってもよく、複数であってもよい。内部に
複数の誘起構造部が形成されているプラスチック構造体
では、適度な間隔を隔てて誘起構造部を積層したような
積層構造とすることも可能である。1つのプラスチック
構造体が内部に複数の誘起構造部を有している場合、誘
起構造部間の間隔は、任意に選択することができる。前
記誘起構造部間の間隔は、5μm以上であることが好ま
しい。プラスチック構造体内部の誘起構造部間の間隔が
5μm未満であると、誘起構造部の作製時に誘起構造部
同士が融合して、独立した複数の誘起構造部とすること
ができない場合がある。
【0032】本発明では、誘起構造部の大きさ、形状、
構造の変化の程度などは、加温時の温度の他、レーザー
の照射時間、レーザーの焦点位置の移動方向やその速
度、被加工プラスチック材料の材質の種類、レーザーの
パルス幅の大きさや照射エネルギーの大きさ、レーザー
の焦点を調整するためのレンズの開口数や倍率などによ
り適宜調整することができる。
【0033】このように、超短パルスレーザーを、その
焦点をレンズを利用して絞って合わせて、被加工プラス
チック材料の任意の部位(又は箇所)に照射し、必要に
応じて前記レーザーの焦点位置(又は照射位置)を移動
させることにより、誘起構造部を任意の部位(特に内部
の部位)に設けることができる。前記レーザーの焦点位
置の移動は、レーザー及びレンズと、被加工プラスチッ
ク材料との相対位置を動かせることにより、例えば、レ
ーザー及びレンズ、及び/又は被加工プラスチック材料
を移動させることにより、行うことができる。具体的に
は、例えば、2次元又は3次元の方向に精密に動かすこ
とができるステージ(XYZステージ)上に被加工プラ
スチック材料(照射サンプル)又は該被加工プラスチッ
ク材料が設置されている恒温容器を設置し、超短パルス
レーザー発生装置及びレンズを前記被加工プラスチック
材料に対して焦点が合うよう(任意の部位でよい)に固
定し、前記ステージを動かせて焦点位置を移動させるこ
とにより、被加工プラスチック材料の任意の部位に、目
的とする形状の誘起構造部を作製することができる。な
お、前記ステージの移動速度、移動方向や移動時間など
をコントロールすることにより、レーザーの照射を2又
は3次元的な連続性を持って任意に行うことができる。
【0034】なお、具体的には、例えば、被加工プラス
チック材料に超短パルスレーザーが照射されると、被加
工プラスチック材料におけるレーザーが照射された照射
部と、該照射部の近辺部とは、プラズマ発生など化学的
・物理的作用を受けながら、局部的に高温状態となり、
その後、照射の終了や、照射部の移動(例えば、二次元
的な移動や三次元的な移動)に伴い、照射されていた照
射部及びその近辺部は、通常は、常温に戻される。この
照射により、任意の部位に誘起構造が形成された誘起構
造部が形成される。
【0035】本発明では、例えば、プラスチック構造体
がその内部に誘起構造部として屈折率変調部などの構造
変化部を有している場合、該構造変化部の大きさとして
は、直径又は1辺の長さが1mm以下(好ましくは50
0μm以下)であってもよい。また、プラスチック構造
体が誘起構造部として孔を有している場合、該孔の径
(又は幅)としては、例えば、0.1〜1000μm、
好ましくは0.1〜100μm、さらに好ましくは0.
5〜30μm程度の範囲から選択することができる。こ
のように、誘起構造部としての構造変化部や孔の大きさ
が極めて小さくても、レーザーとして超短パルスレーザ
ーを用いて加温雰囲気中で照射することにより、精密に
誘起構造部を制御して作製することができる。また、プ
ラスチック構造体がその表面に誘起構造部として隆起物
を有している場合、隆起物の円錐や釣り鐘の底面の直径
は0.3〜30μm(好ましくは1〜20μm)程度で
あり、高さは0.1〜10μm(好ましくは0.5〜8
μm)程度であってもよい。なお、隆起物の間隔(底面
の円の中心間距離)は、底面の直径と同じかそれ以上
(例えば、直径〜直径の10倍程度、好ましくは、直径
〜直径の5倍程度)であることが好ましい。
【0036】[被加工プラスチック材料]被加工プラス
チック材料は、有機系高分子や無機系高分子などの各種
ポリマー成分により構成されている。ポリマー成分は単
独で又は2種以上組み合わせられていてもよい。前記有
機系高分子としては、特に制限されず、熱可塑性樹脂、
熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂など種々の有機系の樹
脂を用いることができる。特に本発明では、被加工プラ
スチック材料としては、室温を超えている温度のガラス
転移温度(Tg)を有していることが重要である。な
お、被加工プラスチック材料は複数のTgを有していて
もよく、この場合、複数のTgのうち少なくとも1つの
Tgが室温を超えている温度であればよい。すなわち、
被加工プラスチック材料が複数のTgを有している場
合、室温を超えている温度のTgのうちいずれか1つの
Tgを基準にして、レーザー照射時の温度を選択するこ
とができる。
【0037】被加工プラスチック材料が有している室温
(例えば、20〜25℃程度)を超えている温度のTg
としては、例えば、25℃を超え且つ300℃以下(好
ましくは30℃〜250℃、さらに好ましくは50℃〜
230℃)程度の範囲から選択することができる。特に
本発明では、被加工プラスチック材料が有している室温
を超えている温度のTgとしては、50℃〜100℃程
度の温度であることが望ましい。
【0038】本発明では、被加工プラスチック材料とし
ては、有機系高分子(特に、熱可塑性樹脂)から構成さ
れていることが好ましい。被加工プラスチック材料が2
つ以上のガラス転移温度(ガラス転移点)を有する熱可
塑性樹脂材料であると、超短パルスレーザーの照射によ
り相分離が生じて、誘起構造部などの誘起構造部を形成
することができる。2つ以上のガラス転移温度を有する
熱可塑性樹脂材料には、熱的な運動性が異なったお互い
に相溶性のない2つ以上の成分を含んで構成された材料
系が含まれる。このような材料系としては、2つ以上の
異種材料のブレンド物(例えば、2種以上のホモポリマ
ー及び/又はランダム共重合体のブレンド物、2種以上
のブロック共重合体のブレンド物など)、2つ以上の異
種成分から構成されたブロック共重合体などが挙げられ
る。
【0039】なお、超短パルスレーザーによるレーザー
加工を円滑に行うためには、被加工プラスチック材料と
しては、400nm〜800nmの可視光波長領域にお
いて、10%以上(好ましくは50%以上、さらに好ま
しくは85%以上)の光透過性を有するものが望まし
い。上記波長領域で著しい光吸収や散乱を起こす着色し
たプラスチックや散乱粒子を多量に含むプラスチックは
望ましくない。被加工プラスチック材料は単層又は多層
のいずれの状態であってもよい。
【0040】より具体的には、被加工プラスチック材料
としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PE
T)などのポリエステル系樹脂;ポリメチルメタクリレ
ート(PMMA)などのメタクリレート系樹脂;ポリス
チレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹
脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合
体(ABS樹脂)などのスチレン系樹脂;ポリアミド;
ポリカーボネート(PC);ポリアセタール;ポリフェ
ニレンエーテルなどのポリアリーレンエーテル;ポリフ
ェニレンスルフィド;ポリアリレート;ポリスルホン
(ポリサルホン);ポリエーテルスルホン(PES)
(ポリエーテルサルホン);ポリエーテルエーテルケト
ンやポリエーテルケトンケトンなどのポリエーテルケト
ン類;ポリイミド;ポリエーテルイミド(PEI);ポ
リアミドイミド;ポリエステルイミド;ポリアクリル酸
エステル類;ポリアリール;ポリノルボルネン;エポキ
シ系樹脂などが挙げられる。
【0041】本発明では、被加工プラスチック材料に
は、例えば、室温以下の温度のTgを有する樹脂の他、
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やフッ化ビニ
リデン系樹脂、ヘキサフルオロプロピレン系樹脂、ヘキ
サフルオロアセトン系樹脂等のフッ素系樹脂や、ポリシ
ラン等のケイ素−ケイ素結合を有する主鎖から構成され
ているポリシラン系ポリマーなどが配合されていても良
い。なお、前記ポリシラン系ポリマーとしては、例え
ば、ポリ(ジメチルシラン)、ポリ(メチルエチルシラ
ン)等のポリ(アルキルアルキルシラン);ポリ(メチ
ルシクロヘキシルシラン)等のポリ(アルキルシクロア
ルキルシラン);ポリ(メチルフェニルシラン)等のポ
リ(アルキルアリールシラン);ポリ(ジフェニルシラ
ン)等のポリ(アリールアリールシラン);ポリフェニ
ルシリン、ポリメチルシリン等のケイ素原子の3次元構
造を有する(ケイ素原子が3次元的に結合された構造を
有する)ケイ素原子含有ポリマーなどのホモポリマー
や、ポリ(ジメチルシラン−メチルシクロヘキシルシラ
ン)、ポリ(ジメチルシラン−メチルフェニルシラン)
などのコポリマーなどが挙げられる。
【0042】なお、本発明では、被加工プラスチック材
料は単独で又は2種以上組み合わせて使用することがで
きる。また、無機化合物や金属化合物などの他の材料を
分散状態で含んだ複合体や他の材料を層状の状態で含ん
だ積層体であってもよい。さらにまた、必要に応じて架
橋剤、滑剤、静電防止剤、可塑剤、分散剤、安定剤、界
面活性剤、無機あるいは有機の充填剤など含有していて
もよい。
【0043】(レーザー)超短パルスレーザーとして
は、パルス幅が10-12秒以下であれば特に制限され
ず、パルス幅が10-15秒のオーダーのパルスレーザー
を好適に用いることができる。パルス幅が10-15秒の
オーダーであるパルスレーザーには、パルス幅が1×1
-15秒〜1×10-12秒であるパルスレーザーが含まれ
る。より具体的には、超短パルスレーザーとしては、パ
ルス幅が10×10-15秒〜500×10-15秒(好まし
くは50×10-15秒〜300×10-15秒)程度である
パルスレーザーが好適である。
【0044】パルス幅が10-12秒以下である超短パル
スレーザーは、例えば、チタン・サファイア結晶を媒質
とするレーザーや色素レーザーを再生・増幅して得るこ
とができる。
【0045】超短パルスレーザーにおいて、その波長と
しては、例えば、可視光の波長領域(例えば、400〜
800nm)であることが好ましい。また、超短パルス
レーザーにおいて、その繰り返しとしては、例えば、1
Hz〜80MHzの範囲から選択することができ、通
常、10Hz〜500kHz程度である。
【0046】なお、超短パルスレーザーの平均出力又は
照射エネルギーとしては、特に制限されず、目的とする
誘起構造部の大きさ等に応じて適宜選択することがで
き、例えば、500mW以下(例えば、1〜500m
W)、好ましくは5〜300mW、さらに好ましくは1
0〜100mW程度の範囲から選択することができる。
前述のように、被加工プラスチック材料は、無機ガラス
材料に比べて熱伝導性やガラス転移温度が低く、無機ガ
ラス材料と同じような励起構造を形成するのに必要な超
短パルスレーザーの照射エネルギーとしては、無機ガラ
ス材料に必要な照射エネルギーの1/10〜1/100
程度に低くすることができる。
【0047】また、超短パルスレーザーの照射スポット
径としては、特に制限されず、目的とする誘起構造部の
大きさやその誘起構造の種類又は該誘起された構造の程
度、レンズの大きさや開口数又は倍率などに応じて適宜
選択することができ、例えば、0.1〜10μm程度の
範囲から選択することができる。
【0048】なお、被加工プラスチック材料に対して内
部における単位体積当たりに照射されるエネルギーは、
超短パルスレーザーの照射エネルギー、超短パルスレー
ザーの焦点の移動速度、焦点の深さ(照射の位置)、焦
点の絞り(対物レンズの開口数)などを調整することに
よりコントロールすることができ、その結果として形成
される誘起構造部の形状などをコントロールすることが
できる。
【0049】なお、レンズは、レーザーの光線の焦点を
絞って合わせるために用いている。従って、レーザーの
焦点を絞って合わせる必要が無い場合は、レンズを用い
る必要はない。レンズの開口数(NA)は、特に制限さ
れず、対物レンズの倍率に応じて変更することができ、
通常は、倍率としては10〜50倍、開口数としては
0.3〜0.8程度の範囲から選択される。
【0050】[誘起構造部を有するプラスチック構造
体]本発明におけるプラスチック構造体は、その表面又
は内部に誘起構造部を有している。プラスチック構造体
は、拡散板や散乱素子などの光機能部材;精密な空間や
流路などの形成用スペーサー機能を利用したマイクロマ
シーンやセンサー;電気的探針;バイオ機器;マイクロ
リアクターチップ;埋め込み型人工臓器などの高機能な
レーザー加工品の他、回折格子(透過型回折格子な
ど)、光導波路などとして好適に利用することができ
る。
【0051】本発明では、プラスチック構造体は、その
ままプラスチック部材として用いてもよく、他の部材と
組み合わせて用いてもよい。プラスチック構造体には、
任意の加工や処理を施すことができ、例えば、延伸や収
縮などの加工処理や、さらに必要に応じて後処理を行う
こともできる。
【0052】
【発明の効果】本発明の誘起構造部を有するプラスチッ
ク構造体の形成方法によれば、優れた環境性・省資源性
で、かつ被加工プラスチック材料の表面や内部に誘起構
造部を精密に形成させることができる。さらに、誘起構
造部が隆起物、孔や屈折率変調部であっても、容易に、
しかも被加工プラスチック材料の表面や内部における任
意の部位に精密に制御して形成することができる
【0053】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に
説明するが、本発明はこれらの実施例により限定される
ものではない。 (実施例1)ポリエチレンテレフタレート(PET)シ
ート(厚さ3.0mm、ガラス転移温度75℃)を60
℃の恒温容器内に設置した。該PETの上面から深さが
約5μmである内部の位置を焦点にして、チタン・サフ
ァイア・フェムト秒パルスレーザー装置及び対物レンズ
(倍率:10倍)を使用して、超短パルスレーザー(照
射波長:800nm、パルス幅:150×10-15秒、
繰り返し:200kHz)を、照射エネルギー(平均出
力):7mW、照射スポット径:約3μmの条件で、P
ETシートを照射方向に垂直な方向に移動速度:約25
μm/秒で移動させながら、恒温容器の外部から恒温容
器の上面の透明窓を通して照射したところ、PETシー
トの内部における超短パルスレーザーの焦点を合わせ始
めた位置から焦点を合わせ終えた位置にかけての上面側
の表面に、円錐状の隆起物(隆起物の底面の直径7.2
μm、隆起物の高さ3.7μm)が形成された。
【0054】(比較例1)加温せずに室温(25℃)で
照射を行うこと以外は実施例1と同じ条件で照射したと
ころ、PETシートの表面には隆起物が形成されず、P
ETシートの内部に空洞部が形成された。
【0055】(実施例2)PETシート(厚さ0.1m
m、ガラス転移温度75℃)を50℃の恒温容器内に設
置した。該PETシートの下面より下側の外部に焦点を
合わせて、チタン・サファイア・フェムト秒パルスレー
ザー装置及び対物レンズ(倍率:20倍)を使用して、
超短パルスレーザー(照射波長:800nm、パルス
幅:150×10-15秒、繰り返し:200kHz)
を、照射エネルギー(平均出力):75mW、照射スポ
ット径:約3μmの条件で、恒温容器の外部から恒温容
器の上面の透明窓を通して照射し始め、さらに、照射方
向に対して平行に対物レンズ側に移動速度100μm/
秒の条件でPETシートを移動させて、焦点の位置をP
ETシートの下面の外部から上面の外部まで対物レンズ
側に上昇させたところ、PETシートの下面における超
短パルスレーザーの焦点を合わせ始めた位置から、PE
Tシートの上面における超短パルスレーザーの焦点を合
わせ終えた位置にかけて、貫通孔(孔の径約3μm)が
形成された。
【0056】(実施例3)PETシート(厚さ0.5m
m、ガラス転移温度75℃)を60℃の恒温容器内に設
置した。該PETシートの上面から深さが約30μmで
ある内部の位置を焦点にして、チタン・サファイア・フ
ェムト秒パルスレーザー装置及び対物レンズ(倍率:1
0倍)を使用して、超短パルスレーザー(照射波長:8
00nm、パルス幅:150×10-15秒、繰り返し:
200kHz)を、照射エネルギー(平均出力):27
mW、照射スポット径:約3μmの条件で、PETシー
トを照射方向に垂直な方向に移動速度:約25μm/秒
で移動させながら、恒温容器の外部から恒温容器の上面
の透明窓を通して照射したところ、PETシートの内部
における超短パルスレーザーの焦点を合わせ始めた位置
から、焦点を合わせ終えた位置にかけての内部に、屈折
率が変調された屈折率変調部が形成された。なお、該屈
折率変調部には、ボイドや亀裂等のクラックなどは形成
されていなかった。
【0057】(比較例2)加温せずに室温(25℃)で
照射を行うこと以外は実施例3と同じ条件で照射したと
ころ、約0.3〜0.6μmの大きさ(サイズ)の微小
なボイドが屈折率変調部に形成していた。
【0058】なお、パルスレーザーを照射した各サンプ
ルの評価では、光干渉顕微鏡(菱化システム社製)およ
び反射型電子顕微鏡(SEM)(日立製作所社製)によ
り、表面並びに断面の形態及び形状の観察を行った。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプラスチック構造体の形成方法の一例
を示す概略鳥瞰図である。
【符号の説明】
1 プラスチック構造体 11 被加工プラスチック材料 1a 被加工プラスチック材料11(又はプラスチック
構造体1)の上面 2 誘起構造部 3 恒温容器 3a 恒温容器3の透明窓 4 パルス幅が10-12秒以下である超短パルスレー
ザー 5 レンズ L レーザー4の照射方向 6 レーザー4の焦点の位置又はその中心位置 7 レーザー4の焦点6の移動方向 8 レーザー4の焦点6をライン状に移動させる際の
ライン d 被加工プラスチック材料11(又はプラスチック
構造体1)の表面1aからレーザー4の焦点6までの距
離 T 被加工プラスチック材料11(又はプラスチック
構造体1)の厚さ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 堀池 美華 大阪府茨木市下穂積一丁目1番2号 日東 電工株式会社内 (72)発明者 平尾 一之 京都府京都市左京区田中下柳町8−94 Fターム(参考) 4E068 CA11 CJ00 DB10 4F209 AA24 AC03 AF01 AF16 AG01 AG05 AH73 PA15 PB02 PC05 PN11 PQ20

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 室温を超え且つ被加工プラスチック材料
    のガラス転移温度(Tg)未満の温度雰囲気中、被加工
    プラスチック材料にパルス幅10-12秒以下の超短パル
    スのレーザーを照射することにより、誘起構造部を有す
    るプラスチック構造体を形成することを特徴とするプラ
    スチック構造体の形成方法。
  2. 【請求項2】 超短パルスのレーザーの焦点を被加工プ
    ラスチック材料の表面から5〜150μmの深さの部位
    に結ぶことにより、表面に内部から隆起して独立的に形
    成されている円錐状ないし釣り鐘状の隆起物を有するプ
    ラスチック構造体を形成する請求項1記載のプラスチッ
    ク構造体の形成方法。
  3. 【請求項3】 超短パルスのレーザーの焦点を被加工プ
    ラスチック材料の一方の表面から内部を経由して他方の
    表面まで、または一方の表面から内部まで走査すること
    により、貫通孔又は内部に終端する孔を有するプラスチ
    ック構造体を形成する請求項1記載のプラスチック構造
    体の形成方法。
  4. 【請求項4】 超短パルスのレーザーの焦点を被加工プ
    ラスチック材料の内部に結ぶことにより、内部に屈折率
    変調部を有するプラスチック構造体を形成する請求項1
    記載のプラスチック構造体の形成方法。
  5. 【請求項5】 室温を超えているとともに、被加工プラ
    スチック材料のTg未満且つ(Tg−30)℃以上の温
    度の温度雰囲気中、パルス幅10-12秒以下の超短パル
    スのレーザーを照射する請求項1〜4の何れかの項に記
    載のプラスチック構造体の形成方法。
  6. 【請求項6】 パルス幅10-12秒以下の超短パルスの
    レーザーを、被加工プラスチック材料が設置されている
    加温系の外部から照射する請求項1〜5の何れかの項に
    記載のプラスチック構造体の形成方法。
  7. 【請求項7】 被加工プラスチック材料が、400〜8
    00nmの可視光波長領域において10%以上の透過率
    を有するプラスチック材料である請求項1〜6の何れか
    の項に記載のプラスチック構造体の形成方法。
  8. 【請求項8】 レーザーの照射エネルギーが、500m
    W以下である請求項1〜7の何れかの項に記載のプラス
    チック構造体の形成方法。
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