JP3975342B2 - 水溶性金属加工油 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は水溶性金属加工油に関し、より詳しくは、塑性加工すなわち圧延油、鍛造油、プレス油、引き抜き油、切削油、研削油などの金属加工油に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の塑性加工すなわち圧延、鍛造、プレス、引き抜き、切削、研削などの金属加工において自動化や高速加工化が行われる中、鉱物油や動植物油をベースとした金属加工油は、引火性の問題、加工後の加工油の洗浄除去に石油系溶剤やアルカリ脱脂を用いなくてはならない等の観点から、水溶性金属加工油が注目をあびるようになった。
【0003】
水溶性加工油は、鉱物油や植物油、動物油、合成エステルなどを界面活性剤で乳化した油剤を水に希釈したものが使用されていた。これらの加工油は、油を活性剤によりエマルジョンとし、その粒径が大きく白濁して見えるものがエマルジョン型、粒径が小さく透明に見えるものがソリュブル型と呼ばれている。しかし、これらの油剤は乳化および可溶化させる為の界面活性剤を多く含有しているため、機械から混入してくる作動油や摺動油を乳化して加工液の劣化腐敗、スラッジの発生や機械汚れを生じていた。
【0004】
そこで混入してくる作動油や摺動油などのオイルの分離性が良いソリューション型の加工液が開発されてきている。しかしこれまでのソリューション型はオイル分離性は良いが、エマルション型やソリュブル型に比べ潤滑性が乏しく、加工性能が劣るという欠点を有している。また、油分が含まれないことから防錆能力に劣る等の欠点もある。
【0005】
潤滑性の向上には、焼付き防止のため極圧添加剤として塩素や硫黄を含有する化合物が効果があるとされている。かかる極圧添加剤として、通常、塩素化パラフィンや硫化油脂やポリサルファイドなどが使用されるが、いずれも水には溶けないために、水溶性の加工油剤には使用できない。塩素系のものは、ダイオキシンやオゾン層破壊などの環境汚染の問題から今後開発される加工油剤には使用し難い。
【0006】
そこで硫黄を有する水溶性の潤滑剤が多く開発されてきている。たとえば、特開平5−43886では、スルフィド結合含有カルボン酸の水溶性塩を極圧添加剤として使用する水溶性金属加工油が開示されているが、スルフィド結合含有カルボン酸のアルカリ金属塩だけでは、簡単なプレス成形、切削や伸線は可能であるが、重プレス、重切削や引き抜きなどの難加工には、耐荷重能に劣り、焼付きや融着により金型や工具の寿命が短くなる。
【0007】
また、特開平10−60468には、ベンゾチアゾール環を有する化合物とポリエーテルとを含有する水溶性金属加工油が記載されているが、2−メルカプトベンゾチアゾール等のベンゾチアゾール環を有する化合物だけでは、油性効果に劣り、摩擦係数が上がってしまうため、摩擦係数を一定に保つことにより加工する複雑な形状、構造を有するもの加工には不向きである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐荷重能や油性効果などの潤滑性、特に摩擦・摩耗の低減能に優れ、防錆能力を有し、耐腐敗性が良好である水溶性金属加工油を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、潤滑性能、特に摩擦・摩耗の低減性能に優れ、防錆能力を有し、耐腐敗性が良好である水溶性金属加工油について鋭意研究した。その結果、 (A)特定のスルフィド結合含有カルボン酸、(B)特定のベンゾチアゾール化合物及び(C)塩基性物質を用いることにより、相乗作用が発揮されて、潤滑性、特に摩擦係数及び摩耗の低減性能が、(A)成分単独と(C)塩基性物質とを含有する水溶性金属加工油、又は、(B)成分単独と(C)塩基性物質を含有する水溶性金属加工油に比べて著しく優れ、しかも防錆油、作動油や摺動油などとのオイル分離性が良好であることを見い出した。さらに、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の組み合わせが防錆能力及び耐腐敗性の点でも良好であることも見出した。
【0010】
本発明は、これらの知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次の水溶性金属加工油を提供するものである。
【0011】
項1 (A)一般式(1)
RSR1COOH (1)
[式中、Rは炭素数6〜20のアルキル基またはシクロヘキシル基を示し、R1は炭素数1〜3のアルキレン基を示す。]
で表されるスルフィド結合含有カルボン酸、
(B)一般式(2)
【0012】
【化2】
【0013】
[式中、Xは水素原子又は基−(CH2)nCOOH(nは1又は2を示す)を示す。]で表されるベンゾチアゾール化合物、及び
(C)上記一般式(1)で表されるスルフィド結合含有カルボン酸及び一般式(2)で表されるベンゾチアゾール化合物の合計モル数に対して過剰量の塩基性物質、及び
(D)水
を含有することを特徴とする水溶性金属加工油。
【0014】
項2 (A)一般式(1)で表されるスルフィド結合含有カルボン酸を水溶性金属加工油全量に対して0.2〜30重量%、
(B)一般式(2)で表されるベンゾチアゾール化合物を水溶性金属加工油全量に対して0.02〜5重量%、
(C)塩基性物質を、上記一般式(1)で表されるスルフィド結合含有カルボン酸及び一般式(2)で表されるベンゾチアゾール化合物の合計1モルに対して1.05当量以上に相当する量であって、且つ、水溶性金属加工油全量に対して0.02〜20重量%、及び
(D)水を20〜98重量%
含有する上記項1に記載の水溶性金属加工油。
【0015】
項3 (A)一般式(1)で表されるスルフィド結合含有カルボン酸を水溶性金属加工油全量に対して4〜20重量%、
(B)一般式(2)で表されるベンゾチアゾール化合物を水溶性金属加工油全量に対して1〜10重量%、
(C)塩基性物質を、上記一般式(1)で表されるスルフィド結合含有カルボン酸及び一般式(2)で表されるベンゾチアゾール化合物の合計1モルに対して1.05〜10当量に相当する量であって、且つ、水溶性金属加工油全量に対して5〜20重量%、及び
(D)水を50〜80重量%
含有する上記項1に記載の水溶性金属加工油。
【0016】
項4 プレス油である請求項1〜3のいずれかに記載の水溶性金属加工油。
【0017】
【発明の実施の形態】
スルフィド結合含有カルボン酸
本発明では、上記のように、上記一般式(1)で表されるスルフィド結合含有カルボン酸を使用する。上記一般式(1)において、Rで示される炭素数6〜20のアルキル基としては、例えば、ヘキシル、へプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシル等が例示される。なかでも、炭素数8〜16、特に8〜12のアルキル基が好ましい。
【0018】
また、R1で示されるアルキレン基としては、メチレン、エチレン、メチルエチレン、トリメチレン基等が例示され、特にエチレン基が好ましい。
【0019】
上記一般式(1)で示されるスルフィド結合含有カルボン酸は、C6−C20アルキルチオ−酢酸、C6−C20アルキルチオ−2−メチル−プロピオン酸、C6−C20アルキルチオ−プロピオン酸、C6−C20アルキルチオ−酪酸、シクロヘキシルチオ−酢酸、シクロヘキシルチオ−2−メチル−プロピオン酸、シクロヘキシルチオ−プロピオン酸、シクロヘキシルチオ−酪酸等の硫黄原子含有有機酸である。
【0020】
このような酸の中でも、特に、オクチルチオ−酢酸、ドデシルチオ−酢酸、オクチルチオ−酢酸、オクチルチオ−プロピオン酸、ラウリルチオ−プロピオン酸、オクタデシルチオ−プロピオン酸、シクロヘキシルチオ−プロピオン酸、オクチルチオ−2−メチルプロピオン酸、ラウリルチオ−2−メチルプロピオン酸などが好ましいものとして例示される。
【0021】
上記一般式(1)で示されるスルフィド結合含有カルボン酸は、極圧添加剤として公知の化合物であり、公知の方法に従いメルカプト基とカルボキシル基を1個ずつ含む化合物、すなわちチオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプト−2−プロピオン酸、メルカプト酪酸と、適当な分子量、構造を有するオレフィンまたはシクロへキセンとを、過酸化物触媒の存在下で付加することにより、容易に製造できる。
【0022】
ベンゾチアゾール化合物
本発明で(B)成分として使用する一般式(2)で表されるベンゾチアゾール化合物は、2−メルカプトベンゾチアゾール(X=H)、(2−ベンゾチアゾリルチオ)酢酸、3−(2−ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸である。これら化合物は、公知の化合物である。
【0023】
塩基性物質
本発明で(C)成分として使用する塩基性物質は、上記(A)成分及び(B)成分と水中で混合した場合に、水溶性塩を形成し、これら(A)成分及び(B)成分を水溶性にし得るアルカリ性物質である。
【0024】
上記水溶性塩は、上記一般式(1)で表されるスルフィド結合含有カルボン酸の水溶性塩及び一般式(2)で表されるベンゾチアゾール化合物の水溶性塩であって、室温での水への溶解度が少なくとも0.01%、好ましくは少なくとも0.1%である塩を意味する。
【0025】
塩基性物質(C)としては、水中で前記成分(A)及び成分(B)と上記水溶性塩を形成し得るものであれば特に限定されることなく広い範囲のものが使用できるが、特に、有機窒素含有化合物、アンモニア、アルカリ金属含有物質等を好ましいものとして例示できる。
【0026】
有機窒素含有化合物としては、モノ(C2−C4アルキル)アミン、ジ(C2−C3アルキル)アミン、モノシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどのモノアミン類;エチレンジアミン、テトラメチレンジアミンやN-エチルエチレンジアミンなどの1〜4個のC1−C4アルキル基で置換されていてもよいジアミン類(特にC2−C6アルキレンジアミン);、アルカノールアミン類、例えば、モノ(C2−C3アルカノール)アミン、ジ(C2−C3アルカノール)アミン、トリ(C2−C3アルカノール)アミン、(C2−C3アルキル)ジ(C2−C3アルカノール)アミン、(シクロヘキシル)モノ(C2−C3アルカノール)アミン、(シクロヘキシル)ジ(C2−C3アルカノール)アミン等;テトラアルカノールジアミン類、例えば、N,N,N',N'−テトラキス(C2−C3ヒドロキシアルキル)エチレンジアミン等がある。
【0027】
これらのうちでも、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、メチルジエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、シクロヘキシルジエタノールアミン、N,N,N',N'−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンなどを用いるのが特に有利である。
【0028】
また、アルカリ金属含有物質としては、Na、Kなどのアルカリ金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩等が挙げられる。
【0029】
水溶性金属加工油
本発明の水溶性金属加工油は、水をベースとし、(A)一般式(1)で表されるスルフィド結合含有カルボン酸、(B)一般式(2)で表されるベンゾチアゾール化合物及び(C)上記塩基性物質の3者を必須成分として使用することにより、防錆効果、防腐効果に優れるのみならず、耐荷重能が相乗的に著しく向上するという予想外の効果を奏するものである。
【0030】
上記(A)成分である一般式(1)で示されるスルフィド結合含有カルボン酸の使用量は、広い範囲から適宜選択できるが、一般には、本発明の水溶性金属加工油に対して、0.2〜30重量%、好ましくは0.5〜25重量%、更に好ましくは1〜20重量%となるように使用するのが有利である。
【0031】
上記(B)成分である一般式(2)で表されるベンゾチアゾール化合物の使用量も、広い範囲から適宜選択できるが、一般には、本発明の水溶性金属加工油に対して、0.02〜5重量%、好ましくは0.05〜2重量%、更に好ましくは0.1〜1重量%となるように使用するのが有利である。
【0032】
上記(C)成分である塩基性物質の使用量は、上記(A)成分及び(B)成分の合計モル数に対して過剰量、特に、上記(A)成分及び(B)成分である酸を水中で中和して水溶性塩とするに足りる量以上で使用すると共に、本発明の水溶性金属加工油に対して、0.02〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、更に好ましくは0.5〜5重量%の範囲となるように使用するのが有利である。
【0033】
上記(A)成分及び(B)成分である酸を水中で中和して水溶性塩とするに足りる(C)成分の量は、上記(A)成分及び(B)成分の種類等によっても異なるが、一般には、本発明の(A)成分及び(B)成分の合計モル数に対して過剰量、特に本発明の(A)成分及び(B)成分の合計1モルに対して、1.05当量以上、好ましくは1.05〜10当量、より好ましくは1.05〜5当量使用すればよい。
【0034】
本発明の水溶性金属加工油において、(D)成分である水の量は、広い範囲から適宜選択できるが、一般には、本発明の水溶性金属加工油組成物に対して、20〜98重量%、好ましくは30〜95重量%、更に好ましくは50〜90重量%となるように使用するのが有利である。
【0035】
以上の(A)〜(D)成分の上記組成範囲を、以下「基本組成範囲」という。
【0036】
特に、本発明では、
(A)一般式(1)で表されるスルフィド結合含有カルボン酸を水溶性金属加工油全量に対して4〜20重量%、
(B)一般式(2)で表されるベンゾチアゾール化合物を水溶性金属加工油全量に対して1〜10重量%、
(C)塩基性物質を、本発明の(A)成分及び(B)成分の合計1モルに対して1.05〜10当量に相当する量であって、且つ、水溶性金属加工油全量に対して5〜20重量%及び
(D)水を50〜80重量%
含有する水溶性金属加工油を原液として使用するのが好ましい。
【0037】
かかる原液は、そのまま使用してもよく、あるいは、上記(A)〜(D)成分が各々上記基本組成内の配合割合となるように水で1.2〜50重量倍、好ましくは5〜30重量倍、より好ましくは10〜20重量倍の範囲で希釈し、使用目的に合わせた適当な組成で使用してもよい。
【0038】
本発明の水溶性金属加工油においては、必要に応じて、さらに加工性能を向上させる為に一般的な水溶性金属加工油に使用される他の各種添加剤と共に用いることも可能である。そのような添加剤として代表的なものは、水溶性金属加工油剤の潤滑効果を高めるための油性剤、腐食あるいは発錆を防止するための防錆剤、細菌の増殖あるいは腐食を防止するための殺菌剤、消泡剤などがある。
【0039】
このような水溶性金属加工油剤の潤滑効果を高めるための油性剤としては、オレイン酸、リシノール酸、ステアリン酸、リシノール酸重縮合物などの脂肪酸のアミン塩、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコールなどがある。このような油性剤は、使用する場合、目的とする水溶性金属加工油中に0.02〜30重量%程度、特に1〜10重量%程度の割合で添加するのが好ましい。
【0040】
上記腐食あるいは発錆を防止するための防錆剤としては、ターシャリーブチル安息香酸、カプリル酸、カプロン酸、カプリン酸、2−エチルヘキシル酸、イソノナン酸、オレイン酸、リシノレイン酸などの一塩基性有機酸、あるいはアジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ドデカン二酸などの二塩基性有機酸の水溶性アミン塩などがある。かかる防錆剤は、使用する場合、目的とする水溶性金属加工油中に1.0〜5重量%程度、特に0.02〜1重量%程度の割合で添加するのが好ましい。
【0041】
また、殺菌剤としては、トリアジン、1,2−ペンゾイソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンなどがある。殺菌剤は、使用する場合、目的とする水溶性金属加工油中に0.5〜1重量%程度、特に 0.01〜0.1重量%程度の割合で添加するのが好ましい。
【0042】
更に、消泡剤としては、シリコン系消泡剤等が挙げられる。消泡剤は、使用する場合、目的とする水溶性金属加工油中に0.01〜5重量%程度、特に0.01
〜1.0重量%程度の割合で添加されるのが好ましい。
【0043】
本発明の水溶性金属加工油は、前記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び必要に応じて使用される前記添加剤を、前記所定の配合量となるように、水と混合することにより製造される。前記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び必要に応じて使用される前記添加剤の添加順序は特に制限されず、どのような添加順序でもよい。
【0044】
本発明の金属加工油が使用できる金属としては、広い範囲の金属が挙げられるが、特に、鋼、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、亜鉛、ステンレス鋼等の加工において使用するのが好ましい。
【0045】
本発明の水溶性金属加工油は、塑性加工すなわち圧延油、鍛造油、プレス油、引き抜き油、切削油、研削油などの金属加工油として有用であり、特に、プレス油等の用途に好適に使用できる。
【0046】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を掲げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお実施例中の「%」は「重量%」を表すものとする。
【0047】
実施例1〜4及び比較例1〜5
表1に記載の各成分を表1に記載の量で使用し、均一に混合して本発明の水溶性金属加工油(実施例1〜4)及び比較のための水溶性金属加工油(比較例1〜5)を調製した。混合の順序は任意である。混合の間は液温を60〜70℃に保った。
【0048】
表1における成分の略号は次の意味を有する。
(A)成分
LTPA:ラウリルチオ−プロピオン酸
OTPA:オクチルチオ−プロピオン酸
(B)成分
2−MBT:2−メルカプトベンゾチアゾール
(C)成分
MEA:モノエタノールアミン
TEA:トリエタノールアミン
MIPA:モノイソプロパノールアミン
CHDA:シクロヘキシルジエタノールアミン
THPE:N,N,N',N'−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、商品名「アデカポリエーテルEDP-300」、旭電化(株)製)。
【0049】
また、表1中の「ポリマー界面活性剤」は、平均分子量約1000のポリエチレングリコールに、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイド4:6のブロック共重合体を付加して得られた平均分子量約2500のノニオン性ポリマー界面活性剤である。
【0050】
尚、各比較例の組成物は、次のような組成物である。
比較例1の組成物は、市販のエマルジョン系金属加工油と同等の配合を有する。
比較例2の組成物は、脂肪酸を主体とするエマルジョン系の配合を有する。
比較例3の組成物は、特開平10-60468の一般的記載に従って作成された配合を使用した組成物である。
【0051】
比較例4の組成物は、特開平5−43886号に記載のように一般式(1)で表されるスルフィド結合含有カルボン酸を使用しているが、本発明の(B)成分である2‐メルカプトベンゾチアゾールを使用していない配合である。
【0052】
比較例5の組成物も、特開平5−43886号に記載のように一般式(1)で表されるスルフィド結合含有カルボン酸及びポリエーテルや一般の添加剤などを含有するが、本発明の(B)成分である2‐メルカプトベンゾチアゾールを使用していない配合である。
【0053】
【表1】
【0054】
試験例1 摩擦摩耗試験
実施例1〜4及び比較例1〜5で得た組成物(原液)を、水道水で20重量倍に希釈して試験液を調製した。
【0055】
摩擦摩耗試験機を用いて、摩擦摩耗試験を行った。摩擦摩耗試験機としては、摩擦摩耗試験機(神鋼造機(株)製、商品名「トライボット」)を使用した。この装置は、SHELL式高速四球試験機と同等の規格に則ったものであり、曽田式四球試験法も行うことができる試験機である。この装置の原理は、ピラミッド状に組み合わせた四つの試験球(1/2ベアリングボール)のうち、底辺の3球は固定し、該3球上で回転球を回転させながら、下から荷重をかけていき、固定球と回転球の接点の摩擦係数から、耐荷重能(初期焼付荷重、融着荷重)及び油性特性(平均摩擦係数)を測定するものである。
【0056】
測定条件は、次の通りである。回転速度は220rpmで一定とし、荷重は314Nから9809Nに至るまで連続的に60分をかけて増加させ、摩擦係数が0.2を超えた時点で初期焼付荷重とした。また、摩擦係数が0.5を超えた時点で機械を非常停止させるように設定し、非常停止した時点の荷重を融着荷重と設定した。
【0057】
結果を表2に示す。初期焼付荷重、融着荷重の値が大きいほど、耐荷重能に優れている。平均摩擦係数が小さいほど油性効果に優れている。
【0058】
【表2】
【0059】
初期焼付は金属間の摩擦緩和膜が部分的に切れ、かじりが起こる時に生じる。すなわち、初期焼付荷重が高い程、かじりの起こる荷重が高いことを示す。また、かじりは型の寿命を短くするので長期使用においては初期焼付荷重が高いほど寿命が長い。融着荷重は、摩擦緩和膜が完全に切れてしまい金属同士の融着が起こる。この時点では型に加工する金属が融着してしまい型を成形しなおさないと次の成形が不可能になることがある。
【0060】
本発明、すなわち実施例1〜4の金属加工油は、比較例1、3、4、5の金属加工油に比べ、初期焼付荷重が大きいので型の寿命が長くなることわかる。また比較例2の金属加工油を使用する場合は、初期焼付き荷重と共に融着が起こることから、他のものに比べ型の修正を頻繁に行う必要が出てくる。
【0061】
また、プレス加工、伸線、鍛造などの塑性加工では摩擦係数のコントロールができないと加工精度に狂いが生じてしまう。摩擦係数が低いものは機械の圧力コントロールで調整できるが高いものは低くできない特徴がある。すなわち、実施例1〜4の金属加工油のように平均して低い摩擦係数を有することが塑性加工には最適とされる。この観点から、本発明の実施例1〜4の金属加工油は、比較例の金属加工油に比し、優れている。
【0062】
試験例2 腐敗試験
実施例1〜4及び比較例1〜5で得た組成物を水道水で40重量倍に希釈して試験液を得た。試験液に、鋳鉄切屑200g、市販摺動油300ml及びエマルジョン腐敗液(菌数=1×107個/mlの腐敗したエマルジョン型水溶性金属加工油) 1mlを添加した。次いで、30℃雰囲気内で循環ポンプを用いて試験液を循環させ、菌の増殖傾向及びpHの推移にて防腐性を比較した。結果を表3に示す。表3において、菌数は試験液1ml当たりの菌数を示している。
【0063】
尚、菌数が1×107個/ml以上となった時点で、菌の飽和状態と判断し、試験を打ち切った。
【0064】
【表3】
【0065】
試験例3 防錆試験
実施例1〜4及び比較例1〜5で得た組成物を水道水で20重量倍に希釈して試験液を得た。試験片として、鋳鉄FC-20の板表面をサンドペーパーで研磨し、アセトンで洗浄したものを使用した。試験液をビーカーに入れ、各試験片を全長に亘って、試験液に浸漬する。次いで、試験片を、該ビーカー内の試験液の液面から出た部分(一旦浸漬部分)と試験液に浸漬された部分(浸漬部分)ができるように、ビーカー内に設置した。該ビーカーを密閉し、常温にて30日間保存した。次いで、試験片の発錆面積が1%以下の場合を合格ライン、5%を超す発錆では使用不可能と判断し、何日間発錆がないかを観察した。発錆試験結果を表4に示す。
【0066】
【表4】
【0067】
試験例4 混入油の分離性
実施例1〜4及び比較例1〜5で得た組成物を水道水で20重量倍に希釈して試験液を得た。
【0068】
メスシリンダーに試験液50ccを入れ、これにBマシン油10ccを加え、30回ほど上下に攪拌し、30分間静置後の状態を確認した。
【0069】
油分離性は、次の基準で評価した:
◎: 完全に2相に分離
○: 2相に分離するが油層がエマルジョン化
△: 2相に分離するが油層も水層もエマルジョン化
×: 乳化
結果を表5に示す。
【0070】
【表5】
【0071】
上記試験例1〜4の試験結果から次のことが明らかである:
比較例1(市販のエマルジョン型)に比べて、本発明は加工性能(高荷重における摩耗低減)が高く、特に腐敗が低減され、防錆力及び混入油の分離性も向上されていることが判る。
【0072】
比較例2(脂肪酸を中心としたエマルジョン型)に比べて、本発明は加工性能(高荷重における摩耗低減)も高く、特に腐敗が低減され、防錆力及び混入油の分離性も向上されていることが判る。
【0073】
比較例3(特開平10−60468の例)と比較すると、本発明は摩擦係数が低減されており、精密加工が容易になることが判る。
【0074】
比較例4及び5(特開平5−43886の例)と比較すると、本発明は初期焼付きの荷重が大幅に向上し、摩耗が減少されるので型寿命が伸ばされることが判る。
【0075】
【発明の効果】
本発明の水溶性金属加工油は、潤滑性が著しく優れ、かつ、混入してくる潤滑油の分離性(防錆油、作動油や摺動油等のオイルの分離性)が良好であり、耐腐敗性を有しているため経済的であり水溶性の圧延油、鍛造油、プレス油、引き抜き油、切削油、研削油として極めて好適である。
Claims (2)
- (A)一般式(1)
RSR1COOH (1)
[式中、Rは炭素数8〜20のアルキル基またはシクロヘキシル基を示し、R1は炭素数1〜3のアルキレン基を示す。]
で表されるスルフィド結合含有カルボン酸、
(B)一般式(2)
で表されるベンゾチアゾール化合物、及び
(C)塩基性物質、及び
(D)水
を含有する水溶性金属加工油であって、
(A)一般式(1)で表されるスルフィド結合含有カルボン酸を水溶性金属加工油全量に対して0.2〜30重量%、
(B)一般式(2)で表されるベンゾチアゾール化合物を水溶性金属加工油全量に対して0.02〜5重量%、
(C)塩基性物質を、上記一般式(1)で表されるスルフィド結合含有カルボン酸及び一般式(2)で表されるベンゾチアゾール化合物の合計1モルに対して1.05当量以上に相当する量であって、且つ、水溶性金属加工油全量に対して0.02〜20重量%、及び
(D)水を20〜98重量%
含有することを特徴とする水溶性金属加工油。 - プレス油である請求項1に記載の水溶性金属加工油。
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