JP3974306B2 - 内蓋付きタンク - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高粘性の印刷インキ、塗料等の粘稠物や、感光性材料等の空気と遮断する必要がある液状物などを貯蔵、輸送、供給するのに好適な内蓋付きタンクに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
印刷インキ、塗料等の高粘性物質の輸送時のタンクには、ドラム缶やタンクローリーなどが用いられ、需要家ではこれを固定タンクに受け入れて使用する。これらのドラム缶、タンクローリー、固定タンクなどには、その高粘性のため印刷インキ等がタンク内に残るので、これを排出したり洗浄したりする必要があり、また洗浄に有機溶剤を用いると洗浄廃棄物の処理など新たな問題が生ずる。
【0003】
このような問題を解決するものとして、特開平7−149400号公報には、有底のタンク内の軸心部に上下方向のガイド棒を設けるとともに、このガイド棒により案内されてタンク内を上下に摺動する落し蓋を設け、この落し蓋を内容物上に配置し、内容物の排出に応じて、落し蓋の最外周に取り付けられたO−リングでタンク内面に付着する内容物を掻き落しながら降下させるタンクが提案されている。しかしながら、このようなタンクにあっては、ガイド棒が軸心部に設けられているので、ガイド棒を受ける落し蓋の嵌合部構造が複雑になり、またガイド棒が洗浄作業をしにくくするという問題があった。
【0004】
このガイド棒を不要としたものとして、特許第2916679号公報には、有底の竪型円筒状の本体タンクと、本体タンクの上端開口部に被着された天蓋と、本体タンク内に配された落し蓋式の内蓋と、前記本体タンクの底部に連接された排出管とを備えた容器であって、前記内蓋は、本体タンク内径より僅かに径小の内蓋主体の外周部に、上下に間隔をおいて本体タンク内面に当接するよう設けられた傾き規制手段を備えるとともに、内蓋主体の外周部における下部側の傾き規制手段の下に、本体タンク内面に対し弾力的に摺接することにより本体タンク内面との間のシール作用と付着物の掻き落し作用とを行なう下側シール部材を備えており、非傾き姿勢を維持したまま内容物の排出に応じて本体タンク内面を摺動して降下するように設けられてなる内蓋付きタンクが提案されている。
【0005】
この内蓋付きタンクにあっては、本体タンクの内面と内蓋主体の外周面との間にクリアランスを設け、内蓋の傾き角度が1.6°以内となるように、上下の傾き規制手段の間隔を設定する。すなわち、内蓋がある程度傾くことを許容し、それ以上の傾きを規制しようとするものである。したがって、傾き規制手段の構成が複雑なうえ高い精度が要求され、製作費用が高くつくという問題があった。
【0006】
また、従来の内蓋付きタンクでは、特に粘性が高い物質を貯蔵する場合、タンク底部から供給された粘性物質が均一に分散せず、最初に流れ出した側に集まってタンク内に空間を生じ、内蓋を設けた効果が著しく低下することがあった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、上記の内蓋付きタンクの問題点を解決し、製作費用が低廉でメンテナンスも容易な内蓋付きタンクを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、内蓋を水平に保ち全く傾かない構造とする設計思想にたって検討したところ、内蓋本体の外周部に等間隔で複数個の垂直部材を設け、その垂直部材の厚みをタンク内面と内蓋本体とのクリアランス以上としても、この内蓋をタンク内に挿入することができ、内容物の供給排出に応じてタンク内面を摺動しながら昇降させることができることを見いだし、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は、水平を維持したまま内容物の供給排出に応じてタンク内面を摺動して昇降する内蓋を有する内蓋付きタンクにおいて、前記内蓋は、短円筒状とされた内蓋本体の外周部にほぼ等間隔をおいて設けられた少なくとも3個の垂直部材を有し、前記垂直部材は、その幅が内蓋本体の外周の4/1000〜10/1000であり、その幅の合計が内蓋本体の外周に対し3〜10%を占め、その厚みタンク内面と内蓋本体とのクリアランスと同じかクリアランスの超過分がタンク本体の内径の1/2000以下であり、垂直部材をタンク内面にすき間なく摺接させるように設けられていることを特徴とする内蓋付きタンクである。
【0010】
上記内蓋付きタンクにおいて、内蓋本体の外周部に設ける垂直部材は、8個、10個又は12個であることがよい。
【0013】
さらに、本発明は、水平を維持したまま内容物の供給排出に応じてタンク内面を摺動して昇降する内蓋を有する内蓋付きタンクにおいて、前記内蓋は、タンク内径よりわずかに径小で短円筒状とされた内蓋本体の外周部に等間隔で設けられた8個、10個又は12個のプラスチック製垂直部材を有し、前記垂直部材は、その幅が内蓋本体の外周の4/1000〜10/1000であり、その幅の合計が内蓋本体の外周に対し3〜10%を占め、その厚みタンク内面と内蓋本体とのクリアランスと同じかクリアランスの超過分がタンク本体の内径の1/2000以下であり、垂直部材をタンク内面にすき間なく摺接させるように設けられており、かつ内蓋本体の外周部における垂直部材の少なくとも下側にリング状シール部材を有することを特徴とする内蓋付きタンクである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づき説明する。図1は、本発明に係る内蓋付きタンクの一例を示す縦断側面図であり、図2は、内蓋3を拡大して示す斜視図、図3は、内蓋3の正面図である。
【0015】
図1において、内蓋付きタンクは、竪型円筒状のタンク本体1、タンク本体1の上端開口部に取り付けられた天蓋2、タンク本体1内面を昇降する内蓋3及びタンク本体1の底部に備えられたバルブ付排出口4からなる。この内蓋3は、タンク本体1の軸心に対し常に水平を維持し、内容物の供給排出に応じてタンク内面を摺動して昇降するとともに、タンク本体1内面の付着物を掻き取る機能を有する。
【0016】
図2及び図3において、内蓋3は、短円筒状に形成された内蓋本体5と、その外周部に設けられた8個の垂直部材6a〜6hと、垂直部材6a等の下側に設けられたリング状シール部材7とより形成されている。
【0017】
短円筒状の内蓋本体5は、タンク本体1の内径よりやや狭い外径を有し、その外径の1/10〜1/3程度、好ましくは1/8〜1/4程度の高さを有することがよい。内蓋本体5を短円筒状としたのは、その外周部に垂直部材6a等をタンク1の内壁に対し平行に設けるためであり、また後記するように、内蓋本体5内部を中空とし、これに液体を注入することにより内蓋の総重量を変えられるようするためでもある。
【0018】
内蓋本体5の外周部には、8個の垂直部材6a〜6hを等間隔で設けている。この垂直部材6a〜6hは、垂直方向すなわち内蓋本体1の高さ方向に、かつそれぞれが等間隔で配置されている。図3に示す実施の態様では、8個の垂直部材を等間隔に設ける例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、少なくとも3個の垂直部材をほぼ等間隔で設ければよい。垂直部材が2個であったり、3個以上でも偏って配置すると、内蓋が垂直部材のない側に傾いて降下に支障をきたす。通常、6〜12個の垂直部材をほぼ等間隔に設けるが、好ましくは8〜12の偶数個の垂直部材を等間隔に設けることがよい。
【0019】
垂直部材6a等の厚み、すなわち内蓋本体5の外周面からタンク内面と接触する垂直部材の表面までの高さは、内蓋本体5とタンク本体1とのクリアランスと同じか、それよりごくわずか大きいものとする。垂直部材の厚みがクリアランスより若干大きくても、超過分がタンク本体1の内径の1/2000程度であれば内蓋3をタンク本体1に無理なく挿入できる。逆に、垂直部材の厚みがクリアランスより小さいと、内蓋3がタンク内で傾くので、傾きを規制する必要が生じる。垂直部材6a等の幅は、垂直部材の個数によって異なるが、内蓋本体5の外周の4/1000〜10/1000程度であることがよい。いずれにしても、内蓋本体5の外周に対し3〜10%程度、好ましくは4〜8%程度を垂直部材が占めるようにすることがよい。
【0020】
垂直部材に用いる材料としては、プラスチック製、金属製、セラミック製などが挙げられるが、好ましくは弾力性、滑り性、耐磨耗性に優れたプラスチック、例えば超高分子ポリエチレンなどを用いることがよい。これらの材料は、単独で用いてもよいし、表面をプラスチック製とした金属製垂直部材などを用いてもよい。必要に応じて、垂直部材と内蓋本体外周との間に薄板を挟んで厚みを調整してもよい。垂直部材の取付け方法も特に限定されるものではなく、例えばビス、溶接、溶着等の任意の手段により、内蓋本体5の外周部へ垂直方向に固着すればよい。
【0021】
上記のように、内蓋本体の外周に垂直部材6a等を備えた内蓋3をタンク本体1内に挿入すると、垂直部材6a等の接触面がタンク内面にすき間なく摺接するので、内蓋3は少しも傾くことなく、常に水平を維持することができる。この内蓋3は、内容物の供給排出に応じてタンク内を摺動しながら昇降する。
【0022】
そして、内蓋本体5の外周部における垂直部材6a等の下側には、タンク内面に弾力的に摺接するリング状シール部材7を設ける。リング状シール部材7は、弾性を有するゴムやエラストマー製とし、その外縁部がタンク本体1の内径よりやや広い外径を有するように形成する。このリング状シール部材7は、タンク内面をシールするとともに、内蓋3の降下する際にタンク内面に付着した内容物を掻き落とすことができる。
【0023】
リング状シール部材7は、垂直部材6a等の下側に設けるだけでもよいが、図4に示すように、内蓋本体5の外周部における垂直部材6a等の上側にもリング状シール部材7’を設けてもよい。このように、垂直部材6a等の上と下にリング状シール部材7及び7’を設けると、タンク内面のシールと付着物の掻き落としをより確実にできる。
【0024】
また、短円筒状の内蓋本体5を中空とし、この中空部に水、油等の液体を注入して内蓋3の総重量を変えられるようにすることが好ましい。内蓋本体5の上部に設けた液体注入口8から中空部に液体を注入すると、内蓋3の総重量が増加し、タンク内の液面にかかる圧力が上がって排出時の降下速度が速くなる。特に、新設タンクにおいては、垂直部材6a等やリング状シール部材7等がタンク内面に強く摺接し、内容物の排出が困難な場合もあるが、液体を注入して内蓋の総重量を増やすことよって内容物の排出が容易となる。特に高粘性物質を取り扱う場合に効果的である。この液体の注入量は、特に制限はなく、内蓋3の降下速度等により適宜決めればよい。
【0025】
特に高粘性の物質を内蓋付きタンクに供給すると、タンク底部から供給された高粘性物質は、タンク内に均一に分散しないで最初に流れ出した側に集まり、タンク内に空間を生じたまま貯留することがある。これを防止するには、図5に示すように、内蓋本体5の外底部の略中央部に、供給物の分散用仕切板9を設けることが好ましい。分散用仕切板9の形状は、4方向以上に均等に配置されたものであれば特に制限はなく、その側面形状が三角形、四角形、半円形など任意の形状のものでよい。タンク底部から噴出した高粘性物質は、分散用仕切板9に衝突して均一に分散され、偏流することなくタンク内に貯留する。なお、この分散用仕切板は、本発明の垂直部材を有する内蓋付きタンク以外にも、ガイド棒方式の内蓋付きタンクや、内蓋本体の上下に間隔をおいて設けた傾き規制手段を有する内蓋付きタンクにも適用することができる。
【0026】
本発明の内蓋付きタンクには、タンク本体1の脚部の四方向にフォークリフト作業用のフォークポケットを備えることが好ましい。さらに必要に応じて、内蓋付きタンクには、次のような機能などを採用することができる。例えば、タンク本体1の外周壁に内容物の液面を表示する液面計を設置したり、タンク本体1内に深さ方向に目盛りを記して内容物の残量をマンホールから目視できるようにしたり、融点の高い製品の払出しのため、タンク本体1の外周壁にスチーム加温用のコイルを設置したり、排出口4に加温用のコイルを設置したりすることができる。しかし、これらの機能などによって、本発明はなんら限定されるものではない。
【0027】
本発明の内蓋付きタンクは、高粘性の印刷インキ、塗料、糊剤、食品ペースト等の粘稠物や、感光性材料等の空気と遮断する必要がある液状物などを貯蔵、輸送、供給するのに好適に使用することができる。
【0028】
【発明の効果】
以上説明した本発明の内蓋付きタンクは、従来の内蓋付きタンクに比べて構造が簡単であり、製作やメンテナンスが容易である。また、内蓋に中空部を設け、これに液体を注入して内蓋の総重量を変えることができるようにした内蓋付きタンクは、高粘性物質でも容易に排出できる。さらに、内蓋外底部の略中央部に供給物の分散用仕切板を設けた内蓋付きタンクは、供給された粘稠物をタンク内に均一に分散させ、タンク内に空間を残すことがなく貯留することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の内蓋付きタンクの一例を示す縦断側面図である。
【図2】図2は、内蓋を拡大して示す斜視図である。
【図3】図3は、内蓋の正面図である。
【図4】図4は、垂直部材の上側にもリング状シール部材を設けた内蓋の正面図である。
【図5】図5は、供給物の分散用仕切板を設けた内蓋の正面図である。
【符号の説明】
1 タンク本体
3 内蓋
5 内蓋本体
6a〜6h 垂直部材
7,7’ リング状シール部材
8 液体注入口
9 分散用仕切板

Claims (3)

  1. 水平を維持したまま内容物の供給排出に応じてタンク内面を摺動して昇降する内蓋を有する内蓋付きタンクにおいて、前記内蓋は、短円筒状とされた内蓋本体の外周部にほぼ等間隔をおいて設けられた少なくとも3個の垂直部材を有し、前記垂直部材は、その幅が内蓋本体の外周の4/1000〜10/1000であり、その幅の合計が内蓋本体の外周に対し3〜10%を占め、その厚みタンク内面と内蓋本体とのクリアランスと同じかクリアランスの超過分がタンク本体の内径の1/2000以下であり、垂直部材をタンク内面にすき間なく摺接させるように設けられていることを特徴とする内蓋付きタンク。
  2. 垂直部材が、8個、10個又は12個である請求項1記載の内蓋付きタンク。
  3. 水平を維持したまま内容物の供給排出に応じてタンク内面を摺動して昇降する内蓋を有する内蓋付きタンクにおいて、前記内蓋は、タンク内径よりわずかに径小で短円筒状とされた内蓋本体の外周部に等間隔で設けられた8個、10個又は12個のプラスチック製垂直部材を有し、前記垂直部材は、その幅が内蓋本体の外周の4/1000〜10/1000であり、その幅の合計が内蓋本体の外周に対し3〜10%を占め、その厚みがタンク内面と内蓋本体とのクリアランスと同じかクリアランスの超過分がタンク本体の内径の1/2000以下であり、垂直部材をタンク内面にすき間なく摺接させるように設けられており、かつ内蓋本体の外周部における垂直部材の少なくとも下側にリング状シール部材を有することを特徴とする内蓋付きタンク。
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