JP3972109B2 - 液体の曳糸性評価方法 - Google Patents

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本発明は、液体からなる液体溜まりを一方向に伸長させることによって液体が途切れることなく糸状若しくは柱状に成形される性質、即ち曳糸性を評価する方法、評価装置、並びに曳糸性を利用した紡糸装置に関するものである。
溶融状態にあるプラスチックなどの高分子材料は曳糸性を示すため、繊維業界においては、高分子材料の曳糸性を利用して、繊維となるフィラメントを製造することが行なわれている。即ち、溶融状態の原材料(高分子材料)をノズルから吐出して糸状に成形しながら冷却し、これによって得られるフィラメントを巻き取りドラムによって巻き取ることにより、紡糸が行なわれている。
しかしながら、液体の曳糸性を利用した技術は様々な分野で応用されているにも拘わらず、液体の曳糸性を定量的に評価する手法については、未だ確立されていないのが現状である。
例えば図10及び図11は、液体の導電性を利用した従来の曳糸性評価装置(5)の構成を示している。
該曳糸性評価装置(5)は、曳糸性を測定すべき導電性の液体(3)を満たした液槽(52)に、真鍮製の円柱棒(51)を浸漬した後、該円柱棒(51)を液面から鉛直方向に引き上げることによって、液槽(52)の液面と円柱棒(51)の先端面との間に液柱(3a)を形成し、該液柱(3a)を鉛直方向に引き伸ばす過程で、該液柱(3a)が途中でくびれて破断に至るまでの液柱(3a)の伸び量(以下、「液柱の最大伸び量」と言う)を位置センサ(55)により測定し、その測定結果から液体(3)の曳糸性を評価するものである(特許文献1参照)。
該曳糸性評価装置(5)は、サーボモータ(54)の出力軸にボールねじ(53)を連結してなる往復駆動機構(64)を具え、該往復駆動機構(64)によって円柱棒(51)が昇降駆動される。サーボモータ(54)はモータコントローラ(58)に接続されており、該モータコントローラ(58)は、パーソナルコンピュータ(59)からの制御命令に従ってサーボモータ(54)の駆動を制御する。
円柱棒(51)の側方には、円柱棒(51)の高さ位置を検出する位置センサ(55)が設置されており、該位置センサ(55)の出力信号はレコーダ(57)によって記録される。
液槽(52)内には温度センサ(62)が設置され、該温度センサ(62)は温度コントローラ(56)に接続されている。温度コントローラ(56)には加熱/冷却装置(図示省略)が接続されており、温度センサ(62)の出力信号に基づいて温度コントローラ(56)が加熱/冷却装置を制御し、液槽(52)内の液体(3)の温度を所定の一定温度に保持する。
図11に示す如く、液槽(52)には、ポンプ(65)を含む液体循環路(66)が接続されており、液槽(52)から液体(3)を常に溢れさせることによって、液槽(52)の液面位が一定に保たれている。又、液体(3)中には電極(63)が浸漬されており、該電極(63)と円柱棒(51)とは、電源(60)及び電流計(61)を介在させた電流線路によって互いに接続されている。
液槽(52)内の液体(3)に円柱棒(51)を浸漬すると、電極(63)と円柱棒(51)とが液体(3)を介して互いに電気的に接続されることになり、これによって、液体(3)を介在させた電流ループが形成され、該電流ループを流れる電流の大きさが電流計(61)によって検出される。
円柱棒(51)を液槽(52)の液面から引き上げる過程で、液面と円柱棒(51)の先端面との間に形成された液柱(3a)が破断すると、前記電流ループが遮断されて、電流計(61)によって検出される電流値は零となる。
従って、この電流値が零になった時点を液柱(3a)の破断時点と判断して、該破断時点における位置センサ(55)の出力信号から液柱(3a)の最大伸び量を得ることが出来る。
特開2003−27326号公報
しかしながら、上記従来の曳糸性評価装置(5)においては、電流が液体(3)中を流れると、液槽(52)中の円柱棒(51)及び電極(63)の近傍では、液体(3)の電気分解によって気泡が発生し、この気泡の発生は、液体(3)と円柱棒(51)との間の界面張力に影響を与え、この結果、液柱(3a)の最大伸び量、即ち曳糸性評価結果に影響を与える問題があった。更に、該曳糸性評価装置によって評価し得る液体(3)は、ある程度の導電性を有する液体に限定されるため、電気抵抗の大きな液体や非導電性の液体の評価を行なうことが出来ない問題があった。
又、従来の紡糸装置においては、溶融状態のポリマーをノズルから吐出することによってフィラメントを連続的に製造する過程で、ポリマーの温度とフィラメントの巻き取り速度を予め設定された値に維持することによって、所定の線径を有するフィラメントを得る制御方法が採られているに過ぎないため、例えば環境温度やポリマー自体の特性が変化した場合には、フィラメントの線径も変動することとなり、特に極細径のフィラメントの製造においてはフィラメントを破断させることなくその線径を正確に制御することが困難である問題があった。
そこで、本発明の目的は、液体の導電性の有無に拘わらず、曳糸性の評価指標となる液柱の最大伸び量を正確に測定することが出来る液体の曳糸性評価方法を提供することである。
本発明者は、上記目的を達成するべく鋭意研究を重ねた結果、曳糸性の評価にレーザビームを利用することに想到した。当初は、液柱が伸長されて破断に至るまでの過程で該液柱に対して直交する方向からレーザビームを照射し、該レーザビームが液柱の表面で反射され、或いは液柱の内部で散乱する光の強度の変化を測定することにより、液柱の破断時点を検知する方法を採用した。しかしながら、この曳糸性評価方法では、液柱の破断時点で光強度は低下するものの、その変化は十分に顕著なものでないため、正確に破断時点を検知することは出来なかった。
そこで本発明者は更に研究を進めた結果、液柱が伸長されて破断に至るまでの過程で該液柱に対してその中心軸に沿ってレーザビームを照射すれば、液柱の破断時点で周囲に散乱する光の強度が急峻な変化を示すことを発見し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明に係る液体の曳糸性評価方法においては、光透過性を有する液体(3)からなる液溜まり(3b)を鉛直方向に伸長させて液柱(3a)を形成する過程で、徐々に細径化する液柱(3a)の伸び量を連続的に計測すると共に、該液柱(3a)中へ液柱(3a)の中心軸に沿ってレーザビーム(10)を照射しつつ、該液柱(3a)から周囲へ散乱する光の強度を連続的に計測する。そして、該光強度の計測結果に基づいて液柱(3a)が破断した時点を検知し、該破断時点における前記液柱(3a)の伸び量(最大伸び量)によって前記液体(3)の曳糸性を評価する。
具体的には、前記光強度の計測値が最大となった時点或いはその近傍時点を液柱(3a)の破断時点として検知する。
上記本発明の液体の曳糸性評価方法において、液柱(3a)は、その伸長に伴って徐々にくびれて細径化し、最終的に破断に至る。この破断に至る液柱(3a)の細径化の初期段階においては、レーザビーム(10)の殆どの光は液柱(3a)の内部を直進し、僅かな光が周囲へ散乱するに過ぎないが、細径化の後半段階では、散乱光は急激に増加する。そして、液柱(3a)が破断に至ると、その時点でレーザビーム(10)は液柱(3a)の破断面から空気層へ出射することになって、散乱光の強度はピークを示し、その後、散乱光の強度は急激に低下する。この様に、液柱(3a)の細径化に伴って散乱光が増加し、液柱(3a)が破断した時点若しくはその近傍時点で散乱光の強度がピークを示す現象は、後述の如く実験的に確認されている。
従って、液柱(3a)から周囲へ散乱する光の強度が最大となる時点を検知すれば、その時点或いはその近傍時点を液柱(3a)の破断時点と判断することが出来、該破断時点から液柱(3a)の最大伸び量を正確に計測することが出来る。
具体的構成においては、鉛直方向に互いに対向する一対の液柱形成部材(11)(12)の対向面間に液体(3)を充填することによって、液溜まり(3b)を形成した後、少なくとも何れか一方の液柱形成部材を他方の液柱形成部材から鉛直方向に離間させることによって、液柱(3a)を形成する。
従来の曳糸性評価方法では、曳糸性を評価すべき液体に棒状部材を浸漬した後、該棒状部材を液面から引き上げることによって、液面と棒状部材の端面との間に液柱を形成していたため、棒状部材を液面から引き上げる過程で、棒状部材の外周面に付着した液体が棒状部材の端面側に移動することによって、液柱の形成に寄与する液体の量が増加し、この結果、液柱の最大伸び量が変動する問題があった。
これに対して、本発明の曳糸性評価方法では、液柱(3a)は、一対の液柱形成部材(11)(12)の対向面間の液溜まり(3b)を鉛直方向に伸長させることによって形成されるので、液柱(3a)の形成に寄与する液体(3)の量が変動することはない。従って、液体(3)の曳糸性をより正確に評価することが出来る。
具体的構成において、前記レーザビーム(10)は、外径が一定の平行ビームでもよいが、液柱(3a)の破断位置に向かって外径が小さくなる円錐ビームを用いることが有効であり、これによって、レーザビーム(10)を液柱(3a)の破断位置に集中させて、液柱(3a)の破断位置における散乱光の強度を増大させることが出来る。
本発明の液体の曳糸性評価方法によれば、導電性の有無に拘わらず、液柱の最大伸び量を正確に測定することが出来、これによって液体の曳糸性を正確に評価することが出来る。
以下、本発明の実施形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
曳糸性評価装置(1)
図1に示す如く、本発明に係る液体の曳糸性評価装置(1)は、水平なステージ(2)上に鉛直に立設された固定円柱(12)と、該固定円柱(12)の上方に固定円柱(12)と同軸に配備された可動円柱(11)とを具え、固定円柱(12)の先端面と可動円柱(11)の先端面とは、鉛直方向に互いに対向している。
可動円柱(11)の基端部は、水平な昇降板(27)の裏面に固定されている。該昇降板(27)は、リニアガイド(19)によって昇降移動が案内されており、該昇降板(27)の一端は、ボールねじ(18)に螺合するナット部(26)に固定されている。
ボールねじ(18)の下端はサーボモータ(17)の出力軸に連結されており、該サーボモータ(17)によって可動円柱(11)が鉛直方向に往復駆動される。サーボモータ(17)はモータコントローラ(21)に接続され、該モータコントローラ(21)は、パーソナルコンピュータ(22)からの制御信号に従ってサーボモータ(17)の駆動を制御する。
可動円柱(11)の側方には、可動円柱(11)の鉛直方向の位置を検出するための位置センサ(20)が配備され、該位置センサ(20)の出力信号は、パーソナルコンピュータ(22)に取り込まれ、記録される。
昇降板(27)の上面には、レーザビーム照射装置(13)が配備されている。レーザビーム照射装置(13)から照射されたレーザビーム(10)は、可動円柱(11)の中心軸部に開設された直径1mmの貫通孔(25)内を通過し、更に該貫通孔(25)の下方に設置された円柱状のGRIN(Graded−Index)レンズ(28)を経て、固定円柱(12)に向けて照射されることになる。
ここで、光学特性の異なるGRINレンズ(28)を選択的に採用することにより、レーザビーム(10)のビーム形状を変更することが可能であり、例えば外径が一定の平行ビームとし、或いは液柱(3a)の破断位置に向かって外径が小さくなる円錐ビームとすることが出来る。
更に、可動円柱(11)の側方には遮光板(23)が配備され、該遮光板(23)には、液柱(3a)の破断位置に向けて開口する小孔(24)が形成され、該小孔(24)に向けて、フォトダイオード(14)が取り付けられている。フォトダイオード(14)の出力信号は、フォトアンプ(15)を経て増幅されると共に電圧値に変換され、該電圧値がレコーダ(16)によって記録されると共に、パーソナルコンピュータ(22)に取り込まれる。
本発明の曳糸性評価装置(1)を用いて液体の曳糸性を評価する際には、先ず、図1に示すパーソナルコンピュータ(22)に対し、可動円柱(11)の移動速度等の必要な設定を行なった後、図2(a)に示す如く、可動円柱(11)の先端面と固定円柱(12)の先端面との間に、曳糸性を評価すべき液体(3)を充填して液溜まり(3b)を形成する。ここで、可動円柱(11)の先端面と固定円柱(12)の先端面との間隔は、予め、液溜まり(3b)の形成が可能な距離に調整しておく。
そして、図1に示すレーザビーム照射装置(13)から液溜まり(3b)に向けてレーザビーム(10)を照射すると共に、パーソナルコンピュータ(22)に記憶された曳糸性評価プログラムを起動する。これに応じて、パーソナルコンピュータ(22)は、モータコントローラ(21)に対して、サーボモータ(17)を駆動するための制御信号を送信すると共に、位置センサ(20)からの出力信号とフォトアンプ(15)からの電圧値の取り込みを開始する。
パーソナルコンピュータ(22)からの制御信号に従って、モータコントローラ(21)はサーボモータ(17)を駆動し、これによって、可動円柱(11)は固定円柱(12)から離間する方向に一定速度で移動する。これに伴って、図2(a)に示す液溜まり(3b)は、図2(b)〜図2(e)に示す如く鉛直方向に伸長されて液柱(3a)が形成され、該液柱(3a)は徐々に細径化してくびれ、最終的に図2(f)に示す如く破断することになる。
液柱(3a)が破断に至るまでの過程で、図1に示すフォトダイオード(14)によって検出される光の強度、即ちフォトダイオード(14)の出力電圧値は、例えば図3に示す後述の実験例の如く大きく変化する。即ち、破断に至る液柱(3a)の細径化の初期段階においては、電圧値は略一定であるが、細径化の後半段階においては、電圧値が急激に増大してピークを示し、その後、電圧値は急激に低下することになる。
一方、図4(a)〜(f)は、図3に示す(a)〜(f)の各時点における液柱(3a)の状態を撮影した一連の写真であり、
(a)は評価開始時点、(b)〜(f)はそれぞれ評価開始から0.44秒経過した時点、0.67秒経過した時点、1.11秒経過した時点、1.33秒経過した時点、及び1.55秒経過した時点(評価終了時点)の写真である。これらの写真で白く光っている領域が、液柱における散乱光の発生部である。
図4の如く、時点(a)から時点(d)までの細径化の初期段階においては、液柱は徐々に細径化しているが、そのくびれは比較的小さく、その後の時点(e)で液柱は大きくくびれて細径化され、その直後の時点(f)で破断に至っている。又、時点(b)から時点(e)の細径化の過程において、液柱のくびれた部分から散乱光が発生していることが分かる。
図3の電圧値の変化と図4(a)〜(f)の写真との対比から、図3の電圧値のピークは図4の如く破断直前の時点(e)と破断直後の時点(f)の間で発生していることが明らかであり、この事実から次の現象が実証されたことになる。即ち、液柱が細径化されて破断に至る過程で、液柱から発せられる散乱光の強度は、破断時点に近づくにつれて急激に増大し、破断時点或いはその近傍時点でピークに達するのである。
この様に散乱光の強度が変化する理由は、次の様に推察される。
レーザビーム(10)が進行する媒体は液柱(3a)の細径化に伴って変化し、図2(a)〜(c)に示す如く液柱の最小径部の外径がレーザビーム(10)の外径よりも大きい場合には、レーザビーム(10)の全ての光が液体中を進行するが、図2(d)及び(e)に示す如く液柱(3a)の最小径部の外径がレーザビーム(10)の外径よりも小さくなると、レーザビーム(10)の光の一部が液柱(3a)のくびれた部分の表面から空気層へ出射し、更に図2(f)に示す如く液柱(3a)が完全に破断した状態では、レーザビーム(10)の全ての光が液柱(3a)の破断面から空気層へ出射することになる。この様に、液柱(3a)の細径化及び破断に伴ってレーザビーム(10)が進行する媒体が瞬間的に変化することにより、液柱(3a)から周囲へ向けて散乱する光の強度が急激に増大してピークを示すものと考えられる。
そこで、パーソナルコンピュータ(22)は、フォトダイオード(14)で検出された光の強度を表わす電圧値が最大となった時点を、液柱(3a)の破断時点として検知すると共に、位置センサ(20)からの出力信号に基づいて測定開始時点から液柱(3a)の破断時点までの可動円柱(11)の移動距離を算出し、該移動距離を液柱(3a)の最大伸び量として、図示省略する表示装置に表示する。
この様にして、液体(3)の導電性に拘わらず、液柱(3a)の最大伸び量を正確に測定することが出来、その結果によって液体(3)の曳糸性を正確に評価することが出来る。
尚、レーザビーム(10)として円錐ビームを採用すれば、レーザビーム(10)を液柱(3a)の破断位置に集中させて、該破断位置における散乱光の強度を増大させることが出来、これによって破断時点をより正確に検知することが出来る。
以下、上記本発明の曳糸性評価装置(1)を用いて液体の曳糸性を評価した実験例1について具体的に説明する。
実験例1
実験例1においては、グリセリンにPAA(ポリアクリルアミド)を溶解させて試料液体を精製した。そして、図2(a)に示す如く、可動円柱(11)の先端面と固定円柱(12)の先端面との間に、該試料液体からなる液溜まり(3b)を形成した後、可動円柱(11)を一定の速度で上昇させることにより、液溜まり(3b)を伸長させて液柱(3a)を形成し、破断に至るまでの液柱(3a)の最大伸び量を測定した。
試料液体のPAA濃度は7ppmとし、可動円柱(11)の上昇速度を4mm/s、6mm/s及び8mm/sの3種類に設定して、各上昇速度におけるフォトダイオード(14)の出力電圧値の時間変化を記録した。
図3は、可動円柱(11)の上昇速度が4mm/sの場合の結果を示しており、液柱(3a)の破断時点は評価開始から1.34秒経過後、破断に至るまでの液柱(3a)の最大伸び量は5.36mmとなった。
又、図5は、可動円柱(11)の上昇速度が6mm/sの場合の結果を示しており、液柱(3a)の破断時点は評価開始から1.12秒経過後、破断に至るまでの液柱(3a)の最大伸び量は6.72mmとなった。
更に図6は、可動円柱(11)の上昇速度が8mm/sの場合の結果を示しており、液柱(3a)の破断時点は評価開始から1.10秒経過後、破断に至るまでの液柱(3a)の最大伸び量は8.8mmとなった
図3、図5及び図6の結果から、可動円柱(11)の上昇速度が高くなると、計測開始から破断に至るまでの時間は短くなるが、散乱光の強度のピーク値は、可動円柱(11)の上昇速度に拘わらず大きく変化しないことが分かる。
次に、上記本発明の曳糸性評価装置(1)と図10に示す従来の曳糸性評価装置(5)とを用いて、液体の曳糸性を比較した実験例2及び3について説明する。
実験例2
実験例2においては、各評価装置による液柱(3a)の伸長速度(以下、曳糸速度という)を3mm/sから9mm/sまで1mm/s毎に変化させて、下記4種類の液体試料A〜Dについての各曳糸速度における液柱(3a)の最大伸び量を測定した。
Figure 0003972109
本発明の曳糸性評価装置と従来の曳糸性評価装置のそれぞれについて、曳糸速度と液柱(3a)の最大伸び量の関係をグラフ化して図7及び図12に示す。
図12に示す従来の曳糸性評価装置についての結果から、何れの試料液体の場合も、曳糸速度の増大に伴って液柱(3a)の最大伸び量は大きくなり、曳糸速度と液柱(3a)の最大伸び量の関係は、比例関係にあることが分かる。又、PAA濃度が高くなる程、液柱(3a)の最大伸び量は増大する傾向があることが確認出来る。
一方、図7に示す本発明の曳糸性評価装置についての結果からも、従来の曳糸性評価装置と同じ結論を導き出すことが出来、このことからも、本発明の曳糸性評価装置の有効性が裏付けられる。
実験例3
各評価装置による曳糸速度を3mm/sから9mm/sまで1mm/s毎に変化させ、更に、本発明の曳糸性評価装置(1)では、図2(a)に示す初期状態で可動円柱(11)の先端面と固定円柱(12)の先端面との間に形成した液溜まり(3b)の高さ(以下、初期高さという)を3mmと4mmに変えて、各初期高さにおける液柱(3a)の伸び量を測定した。一方、従来の曳糸性評価装置(5)では、図11に示す液槽(52)中の試料液体(3)に浸漬された円柱棒(51)の浸漬長さHsを10mmと20mmに変えて、各浸漬長さにおける液柱(3a)の最大伸び量を測定した。
尚、液体試料は、何れの評価装置においても上記表1中の液体試料Cを用いた。
図8及び図13はそれぞれ、本発明の曳糸性評価装置(1)と従来の曳糸性評価装置(5)についての曳糸速度と液柱(3a)の最大伸び量との関係を表わすグラフである。
図13に示す如く、従来の曳糸性評価装置では、浸漬長さが増大すると、破断に至るまでの液柱(3a)の最大伸び量が増大していることが分かる。これは次の理由による。
浸漬長さが増大すると、円柱棒(51)の外周面に付着する試料液体(3)の量が多くなり、この結果、図11に示す円柱棒(51)を試料液体(3)から引き上げる過程で円柱棒(51)の外周面から先端面に移動する試料液体(3)の量が多くなって、液柱(3a)の形成に寄与する試料液体(3)の体積が増大するため、液柱(3a)の最大伸び量が増大するのである。
ここで、円柱棒(51)を試料液体(3)の液面から引き上げる過程で円柱棒(51)の外周面から先端面側に移動する試料液体(3)の量は、浸漬長さの他、粘度や表面張力等の試料液体(3)の物性によって変動するので、従来の曳糸性評価装置では、物性の大きく異なる液体の曳糸性を正確に評価し、比較することは困難である。
これに対し、本発明の曳糸性評価装置(1)では、初期高さを3mmから4mmに変化させることにより、液溜まり(3b)の体積は約1.33倍となっているが、図8に示す如く、液柱(3a)の最大伸び量には大きな変化がないことが分かる。従って、本発明の曳糸性評価装置(1)は、従来の曳糸性評価装置(5)に比べて、試料液体の体積変動による液柱(3a)の最大伸び量の変動が少ないことが分かる。
又、初期高さを一定とすることにより、液柱(3a)の形成に寄与する試料液体(3)の体積を一定とすることが出来るので、物性の大きく異なる液体の曳糸性を高い精度で評価し、比較することが出来る。
紡糸装置(4)
次に、上述の本発明に係る曳糸性評価装置を応用した紡糸装置(4)の構成について説明する。
図9に示す如く、紡糸装置(4)は、曳糸性を有する溶融ポリマー(33)を貯留するポリマー槽(43)と、溶融ポリマー(33)を吐出するノズル(41)と、該ノズル(41)とポリマー槽(43)を繋ぐ配管(46)とを具えている。
溶融ポリマー(33)は、ノズル(41)から吐出されることにより、細長い液体フィラメント(33a)となる。該液体フィラメント(33a)は、下流側に配備された巻き取りドラム(42)に至る過程で冷却されて固化し、フィラメントとして巻き取りドラム(42)により巻き取られる。
ノズル(41)の上方には、レーザビーム照射装置(13)が配備され、該レーザビーム照射装置(13)から出射されたレーザビーム(10)は、ノズル(41)の吐出孔を経て、液体フィラメント(33a)の中心軸に沿って液体フィラメント(33a)中を進行する。
尚、レーザビーム照射装置(13)は、外径が一定の平行ビームを出射するものに限らず、液体フィラメント(33a)の最小径部に向かって外径が小さくなる円錐ビームを出射するものを採用することが出来る。
ポリマー槽(43)内には、温度センサ(44)と加熱/冷却装置(45)が配備され、温度センサ(44)及び加熱/冷却装置(45)は、制御装置(40)に接続されている。制御装置(40)は、温度センサ(44)の出力信号に基づいて加熱/冷却装置(45)を制御して、ポリマー槽(43)内の溶融ポリマー(33)の温度を所定の一定に保持するものである。
又、溶融ポリマー(33)がノズル(41)から吐出されて形成されることとなる液体フィラメント(33a)の側方には、その長手方向に沿って複数のフォトダイオード(14)(14)(14)が配列されており、これらのフォトダイオード(14)(14)(14)は制御装置(40)に接続されている。これらのフォトダイオード(14)(14)(14)によって、液体フィラメント(33a)から周囲へ散乱する光の強度を、液体フィラメント(33a)の長手方向の複数位置で連続的に計測することが出来る。
ここで、各フォトダイオード(14)の出力電圧値は、上述した本発明の曳糸性評価装置(1)における液柱(3a)の細径化に伴うフォトダイオード(14)の出力電圧値の変動と同様に、液体フィラメント(33a)の細径化に伴って上昇することになる。
制御装置(40)には、各フォトダイオード(14)の出力電圧値と液体フィラメント(33a)の固化時の線径との関係が予め登録されており、制御装置(40)は、各フォトダイオード(14)の出力電圧値が目標値となる様にフィードバック制御を実行し、溶融ポリマー(33)の温度や巻き取りドラム(42)によりフィラメント巻取り速度を調整する。この結果、雰囲気温度やポリマー(33)自体の特性の変化に拘わらず、巻き取りドラム(42)に巻き取られるフィラメントの線径を正確に制御することが出来る。
尚、レーザビーム(10)として、液体フィラメント(33a)の最小径部に向かって外径が小さくなる円錐ビームを採用すれば、該レーザビーム(10)を液体フィラメント(33a)の最小径部に集中させることが出来、これによって、最小径部からの散乱光の強度を増大させることが出来るので、液体フィラメント(33a)の最小径部の線径をより正確に制御し、ひいては巻き取りドラム(42)に巻き取られるフィラメントの線径をより正確に制御することが出来る。
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
本発明に係る液体の曳糸性評価装置の構成図である。 該曳糸性評価装置によって細線化される液柱とレーザビームとの関係を説明する一連の側面図である。 曳糸速度4mm/sにおける散乱光の強度の時間変化を示すグラフである。 図3の各時点における液柱を撮影した一連の写真である。 曳糸速度6mm/sにおける散乱光の強度の時間変化を示すグラフである。 曳糸速度8mm/sにおける散乱光の強度の時間変化を示すグラフである。 本発明の曳糸性評価装置により測定した、PAA濃度の異なる複数の液体の曳糸速度と液柱の最大伸び量の関係を示すグラフである。 本発明の曳糸性評価装置により初期高さを変化させて測定した、液体の曳糸速度と液柱の最大伸び量の関係を示すグラフである。 紡糸装置の構成図である。 従来の曳糸性評価装置の構成図である。 従来の曳糸性評価装置の要部を拡大して示す図である。 従来の曳糸性評価装置により測定した、PAA濃度の異なる複数の液体の曳糸速度と液柱の最大伸び量の関係を示すグラフである。 従来の曳糸性評価装置により浸漬長さを変化させて測定した、液体の曳糸速度と液柱の最大伸び量の関係を示すグラフである。
符号の説明
(1) 曳糸性評価装置
(10) レーザビーム
(11) 可動円柱
(12) 固定円柱
(13) レーザビーム照射装置
(14) フォトダイオード
(20) 位置センサ
(22) パーソナルコンピュータ
(25) 貫通孔
(3) 液体
(3a) 液柱
(3b) 液溜まり
(33) 溶融ポリマー
(33a) 液体フィラメント
(4) 紡糸装置
(40) 制御装置
(41) ノズル
(42) 巻き取りドラム

Claims (3)

  1. 鉛直方向に互いに対向する一対の液柱形成部材(11)(12)の対向面間に光透過性を有する液体(3)を充填することによって、該液体(3)からなる液溜まり(3b)を形成した後、少なくとも何れか一方の液柱形成部材を他方の液柱形成部材から鉛直方向に離間させることによって、前記液溜まり(3b)を鉛直方向に伸長させて液柱(3a)を形成する過程で、徐々に細径化する液柱(3a)の伸び量を連続的に計測すると共に、該液柱(3a)中へ液柱(3a)の中心軸に沿ってレーザビーム(10)を照射しつつ、該液柱(3a)のくびれ部分から周囲へ散乱する光の強度を連続的に計測し、該光強度の計測結果に基づいて液柱(3a)が破断した時点を検知し、該破断時点における前記液柱(3a)の伸び量によって前記液体(3)の曳糸性を評価することを特徴とする液体の曳糸性評価方法。
  2. 前記光強度の計測値が最大となった時点或いはその近傍時点を液柱(3a)の破断時点として検知する請求項1に記載の曳糸性評価方法。
  3. 前記レーザビーム(10)は、外径が一定の平行ビーム、若しくは前記液柱(3a)の破断位置に向かって外径が小さくなる円錐ビームである請求項1又は請求項2に記載の曳糸性評価方法。
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