JP3970467B2 - 無線通信システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は無線通信システムに関し、特にTDMA−TDDが採用されたシステムの無線通信制御を行う無線通信システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
無線通信では、多数の利用者が同じ周波数帯を共用して相手と通信を行うため、それぞれの組の通信が混信しないように利用者毎に時間を区切って同一周波数を共用するTDMA(Time Division Multiple Access :時分割多重)が広く実用化されている。
【0003】
また、PHS(Personal Handyphone System) や自宅などに固定配置されて通信を行う加入者端末装置であるSU(Subscriber Unit)では、同一の搬送波で送信と受信とを時間的に交互に行うTDD(Time Division Duplexing :時分割双方向)伝送が行われている。このようなTDMA−TDDシステムにより、与えられた周波数帯域を効率よく利用している。
【0004】
図15はTDMA−TDDフレームのスロット配置を示す図である。1つの無線基地局からの周波数に対し、5msの1フレーム(384Kbps)に送信スロット及び受信スロットがそれぞれTX1〜TX4、RX1〜RX4と4chずつ多重されている。
【0005】
また、フレーム内には電波遅延差やクロックジッタ等によって生じる無線信号の衝突防止を図るために、16ビットのガードビットgが設けられている。TX及びRXのビット構成は、ガードビットgを含んで240ビットである。
【0006】
無線基地局から近距離にあるSU1は、無線基地局からの下りデータを送信スロットTX1のスロット時間で受信する。そして、受信後、一定時間(2.5msec)経過後に上りデータを出力する。無線基地局は、近距離にあるSU1からの上りデータを受信スロットRX1で受信することができる。
【0007】
一方、無線基地局からある程度離れた距離にあるSU2は、無線基地局からの下りデータを、伝播遅延時間td0だけ遅れて送信スロットTX2のスロット時間で受信する。
【0008】
したがって、SU2が上りデータを出力する場合は、無線基地局側から見て(2.5msec+td0)の時間だけ遅延して出力されることになるが、図に示すようにガードビットgの保護範囲内にあるため、無線基地局はSU2からの上りデータを受信スロットRX2で受信することが可能である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のような従来のTDMA−TDD技術では、無線基地局やSUの出力パワーを増加させたとしても、カバレッジ(サービスエリア)を広く拡大できないといった問題があった。
【0010】
図16は従来のTDMA−TDDの問題点を説明するための図である。無線基地局から遠距離にあるSU3は、無線基地局からの下りデータを、伝播遅延時間td1だけ遅れて送信スロットTX3のスロット時間で受信する。
【0011】
したがって、SU3が上りデータを出力する場合は、無線基地局側から見て(2.5msec+td1)の時間だけ遅延して出力されることになるが、この場合は図に示すようにガードビットgの保護範囲から外れてしまい、受信スロットRX3、RX4にまたがってしまう。このため、無線基地局では、受信スロットRX3、RX4では受信不可能となり、結局、使用できるタイムスロット数が減少してしまう。
【0012】
このように、無線基地局から遠距離にあるSU3では、無線基地局との通信を行うことができず、他のより近い距離にある無線基地局と送受信を行うことになる。
【0013】
したがって、複数のSUが設置されると、そのSUをカバーできるだけの無線基地局も設置されることになるが、できるだけ少ない無線基地局で広くSUをカバーしたほうが経済的である。
【0014】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、無線基地局のカバレッジを拡大させ、効率のよい無線通信を行う無線通信システムを提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明では上記課題を解決するために、図1に示すような、無線通信制御を行う無線通信システム1において、フレーム内のタイムスロットを連続して割り当てて、連続タイムスロットを生成する連続タイムスロット割り当て手段11と、連続タイムスロット期間で、端末装置200と通信を行って、無線基地局100と端末装置200間の電波の伝播情報を算出する伝播情報算出手段12と、から構成される伝播情報算出装置10と、連続タイムスロット期間で伝播情報にもとづいて、端末装置200から無線基地局100へ送信すべき信号の送信タイミングを算出する送信タイミング算出手段21と、送信タイミングにもとづいて、信号を送信する信号送信手段22と、から構成される送信タイミング算出装置20と、を有し、複数の送信タイムスロットと複数の受信タイムスロットとから構成される1フレームがnフレーム多重化されたスーパーフレームに対して、連続タイムスロット割り当て手段11は、隣接する2つの送信タイムスロットから連続タイムスロットを生成して送信連続タイムスロットとし、かつ隣接する2つの受信タイムスロットから連続タイムスロットを生成して受信連続タイムスロットとし、スーパーフレームの1フレーム毎に、1組の送信連続タイムスロットと受信連続タイムスロットとを生成して、1つのスーパーフレームでn局の無線基地局に対する連続タイムスロット割り当てを行う、ことを特徴とする無線通信システム1が提供される。
【0016】
ここで、連続タイムスロット割り当て手段11は、フレーム内のタイムスロットを連続して割り当てて、連続タイムスロットを生成する。伝播情報算出手段12は、連続タイムスロット期間で、端末装置200と通信を行って、無線基地局100と端末装置200間の電波の伝播情報を算出する。送信タイミング算出手段21は、連続タイムスロット期間で、伝播情報にもとづいて、端末装置200から無線基地局100へ送信すべき信号の送信タイミングを算出する。信号送信手段22は、送信タイミングにもとづいて、信号を送信する。また、複数の送信タイムスロットと複数の受信タイムスロットとから構成される 1フレームがnフレーム多重化されたスーパーフレームに対して、連続タイムスロット割り当て手段11は、隣接する2つの送信タイムスロットから連続タイムスロットを生成して送信連続タイムスロットとし、かつ隣接する2つの受信タイムスロットから連続タイムスロットを生成して受信連続タイムスロットとし、スーパーフレームの1フレーム毎に、1組の送信連続タイムスロットと受信連続タイムスロットとを生成して、1つのスーパーフレームでn局の無線基地局に対する連続タイムスロット割り当てを行う。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。図1は無線通信システムの原理図である。無線通信システム1は、伝播情報算出装置10と送信タイミング算出装置20から構成される。
【0018】
伝播情報算出装置10は、無線基地局100内に配置され、送信タイミング算出装置20は、電話機等と接続する端末装置200内に配置される。端末装置200と無線基地局100とは、それぞれのアンテナを介して無線通信を行う。
【0019】
なお、端末装置200は、固定した位置で通信を行う加入者端末装置であるものとして以降説明する。
伝播情報算出装置10に対し、連続タイムスロット割り当て手段11は、TDMA−TDDのフレーム内のタイムスロットを連続して割り当てて、連続タイムスロットを生成する。
【0020】
具体的には、1つの制御タイムスロットと、拡大させたガードビットと、を合わせた2タイムスロット分を連続タイムスロットとする。図2で後述する。
伝播情報算出手段12は、連続タイムスロット期間で、端末装置200と通信を行って、無線基地局100と端末装置200間の電波の伝播情報を算出する。
【0021】
具体的には、まず、端末装置200へテストデータを送信する。そして、端末装置200から折り返されたテストデータを受信するまでの時間を計測することで、無線基地局100と端末装置200間の電波の伝播時間または距離(=電波の伝播時間*光の速さ)を伝播情報として算出する。
【0022】
端末装置200に対し、送信タイミング算出手段21は、連続タイムスロット期間で、伝播情報にもとづいて、端末装置200から無線基地局100へ送信すべき信号の送信タイミングを算出する。
【0023】
すなわち、無線基地局100での該当する受信スロットのタイミングに間に合うように“早出し”タイミングを算出する。信号送信手段22は、算出した送信タイミングにもとづいて、信号を無線基地局100へ送信する。
【0024】
また、送信タイミング算出装置20は、算出した送信タイミングの情報をフラッシュメモリのような不揮発性のメモリ(図示せず)に記憶させる。これにより、無線基地局100との通信を開始する際に、再び送信タイミングの算出処理を行わなくてもすむ。
【0025】
次に連続タイムスロットと送信タイミングについて説明する。図2は連続タイムスロットと送信タイミングを説明するための図である。通常のフレームは、送信スロットTX1〜TX4及び受信スロットRX1〜RX4として、4chずつ多重されて1フレームが構成される。
【0026】
まず、端末装置200が無線基地局100へ、後述の時刻通知要求を送信すると、連続タイムスロット割り当て手段11は、図のように連続タイムスロットを割り当てる。
【0027】
すなわち、送信スロットTX1と、送信スロットTX2までをガードビットとしたタイムスロットと、からなる上りの連続タイムスロットTaと、受信スロットRX1と、受信スロットRX2までをガードビットとしたタイムスロットと、からなる下りの連続タイムスロットRaとを生成する。
【0028】
無線基地局100から遠距離にある端末装置200では、無線基地局100からの下りデータを、伝播遅延時間td2だけ遅れて図の位置で受信する。
したがって、端末装置200が上りデータを出力する場合は、無線基地局100側から見て(2.5msec+td2)の時間だけ遅延して出力されることになるが(2.5msecという時間は、下りデータを検出してから上りデータを送信するまでの、あらかじめ定められた時間である)、図に示すように連続タイムスロットRaによって、ガードビットの保護範囲が拡大しているので、無線基地局100は端末装置200からの上りデータを連続タイムスロットRaで受信することが可能である(結局、ガードビットが拡大したRX1で受信するということ)。
【0029】
したがって、伝播情報算出手段12は、このような連続タイムスロットが割り当てられた期間内に、無線基地局100と端末装置200(この連続タイムスロットが割り当てられた期間であれば、他のタイムスロットにまたがることなく、互いに正常通信を行うことができる距離にある無線基地局100と端末装置200)間で下りデータ及び上りデータの通信を行って、伝播情報を生成する。
【0030】
そして、送信タイミング算出手段21は、算出された伝播情報にもとづいて、このような連続タイムスロットが割り当てられた期間内に、上りデータが受信スロットRX1に間に合うような送信タイミング(早出しタイミング)tを算出する。
【0031】
この送信タイミングtの決定後は、連続タイムスロットの割り当ては解除される。その後は、端末装置200が下りデータを伝播遅延時間td2だけ遅れた送信スロットTX1で受信しても、早出しタイミングである送信タイミングtで上りデータを早めに送信できるので、受信スロットRX1に間に合う。
【0032】
このように、無線通信システム1は、連続タイムスロットを生成し、連続タイムスロット期間で伝播情報を算出し、伝播情報にもとづいて送信タイミングtを算出して信号を送信する構成とした。
【0033】
これにより、無線基地局100から遠距離の位置にあり、無線基地局100のカバレッジ範囲外にあった端末装置200に対しても、カバレッジ範囲が拡大するので、無線基地局100から端末装置200へサービスを提供することが可能になる。
【0034】
また、カバレッジが拡大するために、無線基地局の数も全体として削減され、またタイムスロットが有効活用されるので、経済的で効率のよい無線通信を行うことが可能になる。
【0035】
次に無線通信システム1が適用されるWLL(Wireless Local Loop)について説明する。図3はWLLの概要を示す構成図である。WLLは、従来有線で施設されていた加入者側交換機と加入者宅の間を無線にて実現するシステムである。
【0036】
WLLシステムは、交換機61を含む公衆網60、基地局制御装置50、複数のカバレッジC1、C2から構成されている。
カバレッジC1は、無線基地局101と加入者端末装置201、202を含む。カバレッジC2は、無線基地局102と加入者端末装置203を含む。また、加入者端末201〜203には電話機が接続している。
【0037】
基地局制御装置50は、交換機61と無線基地局101、102と有線回線で接続し、無線基地局101、102の制御を行う。加入者端末装置201、202は無線基地局101と無線回線でそれぞれ接続し、電話機を無線基地局101に無線接続するための加入者無線制御を行う。
【0038】
同様に、加入者端末装置203は無線基地局102と無線回線で接続し、電話機を無線基地局102に無線接続するための加入者無線制御を行う。
このようなWLLシステムに対し、無線基地局101が加入者端末装置201、202だけでなく、遠距離にある加入者端末装置203もカバレッジC1に入れることができれば、無線基地局の数を減らすことができて経済的である。本発明では、このような無線基地局のカバレッジを拡大させ、効率のよい無線通信の実現を可能にする。
【0039】
なお、WLLシステムでは、特にPHSのデータ伝送方式を利用したPHS−WLLシステムが近年になって開発されており、加入者端末装置は、PHSと同様な網主導型の構成になっているのが一般的である。
【0040】
次に連続タイムスロット割り当て手段11について説明する。図4は連続タイムスロットの割り当てを示す図である。
TDMA−TDDでは、625μsのタイムスロットを送信スロットTX1〜TX4及び受信スロットRX1〜RX4として、4chずつ多重して5msの1フレームが構成される。そして、このフレームが20フレーム分構成されて、スーパーフレームSF(100ms)を生成する。
【0041】
ここで、スーパーフレームSFの1フレーム目に対し、BTE(Base Transceiver Equipment:無線基地局)1の連続タイムスロットとして、下りタイムスロットTX1とTX2、上りタイムスロットRX1とRX2を割り当てる。
【0042】
BTE2には、2フレーム目の下りタイムスロットTX2とTX3、上りタイムスロットRX2とRX3を連続タイムスロットとして割り当てる。
このようにして、連続タイムスロットを割り当てることにより、スーパーフレームSFに、最終的にBTE20まで連続タイムスロットを割り当てることができる。
【0043】
すなわち、BTE20には、20フレーム目の下りタイムスロットTX2とTX3、上りタイムスロットRX2とRX3が連続タイムスロットとして割り当てられる。
【0044】
また、1つのフレームに2つの無線基地局の連続タイムスロットを割り当てることもできる。図5は1つのフレームに2つの無線基地局の連続タイムスロットを割り当てた時のスーパーフレームSFを示す図である。
【0045】
BTE1は、1フレーム目の下りタイムスロットTX1とTX2、上りタイムスロットRX1とRX2に連続タイムスロットを割り当てる。BTE2は、1フレーム目の下りタイムスロットTX3とTX4、上りタイムスロットRX3とRX4に連続タイムスロットを割り当てる。
【0046】
このようにして、連続タイムスロットを割り当てることにより、スーパーフレームSFに、最終的にBTE40まで連続タイムスロットを割り当てることができる。
【0047】
すなわち、20フレーム目の下りタイムスロットTX1とTX2、上りタイムスロットRX1とRX2には、BTE39の連続タイムスロットが割り当てられ、20フレーム目の下りタイムスロットTX3とTX4、上りタイムスロットRX3とRX4には、BTE40の連続タイムスロットが割り当てられる。
【0048】
このように、1つのスーパーフレームSFのタイムスロットをすべて連続タイムスロットとして割り当てれば、最大40の無線基地局に割り当てることが可能になる。
【0049】
ただし、図4、図5のいずれの場合でも、送信スロットTX及び受信スロットRXの境界をまたいでの連続タイムスロット割り当ては行わない。
また、連続タイムスロットを割り当てて、送信タイミングtが算出された後は、連続タイムスロットの割り当ては解除される。その後は送信スロットTX及び受信スロットRXのそれぞれ1スロット分を制御タイムスロットとし、残りのタイムスロットをベアラタイムスロットして通信を行う、通常のTDMA−TDDに戻る。
【0050】
次に無線基地局100と端末装置200で通信を行って、送信タイミングtを算出するシーケンスについて説明する。図6は送信タイミングtを算出するシーケンスを示す図である。
〔S1〕端末装置200は、制御チャネルのSCCH(Signalling Control Channel:個別セル用チャネル)を用いて、時刻通知要求を無線基地局100へ送信する。ここで、SCCHとは、無線基地局100と端末装置200の間で呼接続に必要な情報を転送する場合に使用される制御チャネルである。
〔S2〕無線基地局100の連続タイムスロット割り当て手段11は、上りタイムスロット及び下りタイムスロットそれぞれに連続タイムスロットを割り当てる。
〔S3〕連続タイムスロット割り当て手段11は、テストデータを端末装置200へ送信する。そして、内部が持つタイマを起動させて、テストデータ送信時の時刻を記憶する。
〔S4〕端末装置200では、テストデータを受信して、無線基地局100へ折り返し送信する。
【0051】
なお、テストデータが端末装置200から折り返し送信されず、連続タイムスロット割り当て手段11内のタイマがタイムアウトした場合は、ステップS3、S4の動作を繰り返す。
〔S5〕無線基地局100の伝播情報算出手段12は、端末装置200から折り返し送信されたテストデータを受信し、受信時の時刻を計測する。そして、ステップS3で記憶した時刻と、受信時の時刻とから無線基地局100と端末装置200間の電波の伝播時間または距離を算出する。ここでは伝播時間を算出したとする。
〔S6〕伝播時間を伝播情報として、端末装置200へ送信する。
〔S7〕送信タイミング算出手段21は、伝播時間にもとづいて、端末装置200から無線基地局100へ送信すべき信号の送信タイミングtを算出する。
【0052】
すなわち、無線基地局100での該当する受信スロットのタイミングに間に合うように早出しのタイミングを算出する。
〔S8〕端末装置200は、求めた送信タイミングtにしたがって、SCCHを用いてリンクチャネル確立要求を無線基地局100へ送信する。
〔S9〕無線基地局100は、リンクチャネル確立要求を正常受信した場合には、SCCHによるリンクチャネル割り当てを端末装置200へ返送する。
〔S10〕その後、無線基地局100と端末装置200間で位置登録、発信、着信が行われる。ただし、端末装置200から無線基地局100へ上りデータを送信する場合は、すべてステップS7で算出した送信タイミングtにしたがって、信号送信手段22により送信される。
【0053】
次に無線通信方法について説明する。図7は無線通信方法の処理手順を示すフローチャートである。
〔S20〕フレーム内のタイムスロットを連続して割り当てて、連続タイムスロットを生成する。
〔S21〕連続タイムスロット期間で、端末装置と通信を行って、無線基地局と端末装置間の電波の伝播情報を算出する。
【0054】
伝播情報の算出として、端末装置へテストデータを送信して端末装置から折り返されたテストデータを受信するまでの時間を計測し、無線基地局と端末装置間の電波の伝播時間または距離を算出する。
〔S22〕連続タイムスロット期間で、伝播情報にもとづいて、端末装置から無線基地局へ送信すべき信号の送信タイミングを算出する。
〔S23〕送信タイミングにもとづいて、信号を送信する。
【0055】
以上説明したように、無線通信システム1及び無線通信方法は、連続タイムスロットを生成し、連続タイムスロット期間で端末装置200と通信を行って無線基地局100と端末装置200間の電波の伝播情報を算出し、伝播情報にもとづいて、送信タイミングtを算出して信号を送信する構成とした。
【0056】
これにより、無線基地局100のカバレッジを拡大させ、効率のよい無線通信を行うことが可能になる。
また、無線基地局100と端末装置200で通信を行って、自動的に送信タイミングtを決定するため、無線基地局100や端末装置200に対して、特別な工事等を行わなくてすむので、作業効率及び保守管理の向上を図ることが可能になる。
【0057】
次に無線通信システム1の変形例について説明する。図8は無線通信システム1の変形例を示す原理図である。
変形例である無線通信システム2は、基地局位置情報取得装置30と送信タイミング算出装置40から構成される。
【0058】
基地局位置情報取得装置30は、無線基地局100内に配置され、送信タイミング算出装置40は、電話機等と接続する端末装置200内に配置される。端末装置200と無線基地局100とは、それぞれのアンテナを介して無線通信を行う。また、端末装置200は加入者端末装置に該当する。
【0059】
基地局位置情報取得装置30に対し、基地局位置情報取得手段31は、無線基地局100の位置情報である基地局位置情報を取得する。
例えば、衛星による位置測位システムであるGPS(Global Positioning System)等を利用して、基地局位置情報を取得する。基地局位置情報通知手段32は、基地局位置情報を端末装置200へ通知する。
【0060】
送信タイミング算出装置40に対し、端末位置情報取得手段41は、端末装置200の位置情報である端末位置情報を取得する。
例えば、衛星による位置測位システムであるGPS等を利用して、端末位置情報を取得する。
【0061】
伝播情報算出手段42は、基地局位置情報と端末位置情報とから、無線基地局100と端末装置200間の電波の伝播情報を算出する。すなわち、無線基地局100と端末装置200間の電波の伝播時間または距離(=電波の伝播時間*光の速さ)を伝播情報として算出する。
【0062】
送信タイミング算出手段43は、伝播情報にもとづいて、端末装置200から無線基地局100へ送信すべき信号の送信タイミングを算出する。この送信タイミングは上述した早出しのタイミングと同じものである。信号送信手段44は、この送信タイミングにもとづいて、信号を無線基地局100へ送信する。
【0063】
また、送信タイミング算出装置40は、算出した送信タイミングの情報をフラッシュメモリのような不揮発性のメモリ(図示せず)に記憶させる。
次に無線基地局100と端末装置200で通信を行って、送信タイミングを算出するシーケンスについて説明する。図9は送信タイミングを算出するシーケンスを示す図である。
〔S30〕無線基地局100の基地局位置情報取得手段31は、GPSより自己の位置情報である基地局位置情報を取得する。
〔S31〕端末装置200の端末位置情報取得手段41は、GPSより自己の位置情報である端末位置情報を取得する。
〔S32〕無線基地局100の基地局位置情報通知手段32は、制御チャネルのBCCH(Broadcast Control Channel :報知チャネル)を用いて、基地局位置情報を端末装置200へ送信する(実際には複数の端末装置に対して報知する)。
【0064】
ここで、BCCHとは、無線基地局100から端末装置200に制御信号を報知するための制御チャネルである。
〔S33〕端末装置200の伝播情報算出手段42は、基地局位置情報と端末位置情報から伝播情報を算出する。
〔S34〕送信タイミング算出手段43は、伝播情報にもとづいて、端末装置200から無線基地局100へ送信すべき信号の送信タイミングを算出する。
【0065】
すなわち、無線基地局100での該当する受信スロットのタイミングに間に合うように早出しのタイミングを算出する。
〔S35〕端末装置200は、求めた送信タイミングにしたがって、SCCHを用いてリンクチャネル確立要求を無線基地局100へ送信する。
〔S36〕無線基地局100は、リンクチャネル確立要求を正常受信した場合には、SCCHによるリンクチャネル割り当てを端末装置200へ返送する。
〔S37〕その後、無線基地局100と端末装置200間で位置登録、発信、着信が行われる。ただし、端末装置200から無線基地局100へ上りデータを送信する場合は、すべてステップS34で算出した送信タイミングにしたがって、信号送信手段44により送信される。
【0066】
次に基地局位置情報通知手段32が基地局位置情報を通知する際に用いる制御チャネルであるBCCHのフォーマット構成について説明する。図10はBCCHのフォーマット構成を示す図である。
【0067】
BCCHは124ビットのビット構成を持つ。チャネル種別であるCIが4ビット、自局の呼び出し符号である発識別符号が42ビット、情報部であるIが62ビット、CRCが16ビットである。
【0068】
情報部Iは、8ビットのオクテット1〜オクテット7と、6ビットのオクテット8で構成される。オクテット1の“予約”は、自営用または公衆用のいずれかを示すビットである。“メッセージ種別”は7ビット目から始まって(0 0 0 1 0 0 1) である時に、BCCHのメッセージであることを示す。
【0069】
オクテット2の“LCCHインターバル値”は、下りLCCH(論理制御チャネル)用のスロットの間欠周期を示す。なお、LCCHとは、BCCH、PCH、SCCH、USCCHを含み、リンクチャネル確立フェーズで用いられる機能チャネルの総称である。
【0070】
オクテット3の“着信群分けファクタ”は、PCH(一斉呼び出しチャネル)情報の群分け数に対応する値を示す。オクテット3の“一斉呼び出しエリア番号”は、公衆用ではCS−ID(無線基地局のID)の一斉呼び出しエリア番号のビット長を示す。
【0071】
そして、オクテット4〜オクテット7に、基地局位置情報が記載される。図では4オクテット分の領域が、基地局位置情報の記載領域として確保されている。
次に無線通信方法について説明する。図11は無線通信方法の処理手順を示すフローチャートである。
〔S40〕無線基地局の位置情報である基地局位置情報を取得する。
〔S41〕基地局位置情報を通知する。
〔S42〕端末装置の位置情報である端末位置情報を取得する。
〔S43〕基地局位置情報と端末位置情報とから、無線基地局と端末装置間の電波の伝播情報を算出する。
〔S44〕伝播情報にもとづいて、端末装置から無線基地局へ送信すべき信号の送信タイミングを算出する。
〔S45〕送信タイミングにもとづいて、信号を送信する。
【0072】
以上説明したように、無線通信システム2及び無線通信方法は、無線基地局100と端末装置200のそれぞれの位置情報から、無線基地局100と端末装置200間の電波の伝播情報を算出し、伝播情報にもとづいて、送信タイミングtを算出して信号を送信する構成とした。
【0073】
これにより、無線基地局100のカバレッジを拡大させ、効率のよい無線通信を行うことが可能になる。
次に上記で説明した無線通信システム1、2または無線通信方法で求めた送信タイミングの決定後に行われる位置登録、発信及び着信のシーケンスについて説明する。図12は位置登録シーケンスを示す図である。
【0074】
無線基地局から端末装置への着信接続を行う場合、端末装置は、あらかじめ自己が所在する位置を無線基地局へ登録するための位置登録を行う。
〔S50〕制御タイムスロットを用いたSCCHによる、リンクチャネル確立要求及びリンクチャネル割り当てを行う。
〔S51〕無線基地局と端末装置は、同期バースト信号により、同期確立を行う。
〔S52〕端末装置は、無線基地局へ位置登録要求を行う。
〔S53〕無線基地局は、端末装置へ位置登録受け付けを返送する。
〔S54〕無線基地局は、端末装置へ無線チャネルの切断を指示する。
〔S55〕端末装置は、無線チャネルの切断完了を通知する。
【0075】
なお、ステップS51以降からベアラタイムスロットが用いられる。また、端末装置から無線基地局への送信(点線矢印)はすべて、早出しタイミングである送信タイミングにもとづいて行われる。
【0076】
図13は発信シーケンスを示す図である。発信とは、端末装置からの要求によって、音声やデータ等の伝送を行うために使用されるサービスチャネル(SCH)を確立するための呼接続フェーズである。
〔S60〕制御タイムスロットを用いたSCCHによる、リンクチャネル確立要求及びリンクチャネル割り当てを行う。
〔S61〕無線基地局と端末装置は、同期バースト信号により、同期確立を行う。
〔S62〕端末装置は、無線基地局へ呼設定を行う。
〔S63〕無線基地局は、端末装置へ呼設定受け付けを返送する。
〔S64〕無線基地局は、端末装置へ呼び出しを行う。
〔S65〕無線基地局は、端末装置へRBT(リングバックトーン)を送信する。
〔S66〕無線基地局は、端末装置へ応答を行う。
〔S67〕端末装置は、無線基地局を介して通話を行う。
【0077】
なお、ステップS61以降からベアラタイムスロットが用いられる。また、端末装置から無線基地局への送信(点線矢印)はすべて、早出しタイミングである送信タイミングにもとづいて行われる。
【0078】
図14は着信シーケンスを示す図である。着信とは、ネットワーク側からの要求によって、音声やデータ等の伝送を行うために使用するSCHを確立するための呼接続フェーズである。
〔S70a〕無線基地局は端末装置へ着呼メッセージ(PCH)を送信して呼の着信を示す。
〔S70〕制御タイムスロットを用いたSCCHによる、リンクチャネル確立要求及びリンクチャネル割り当てを行う。
〔S71〕無線基地局と端末装置は、同期バースト信号により、同期確立を行う。
〔S72〕端末装置は、無線基地局へ着呼応答を行う。
〔S73〕無線基地局は、端末装置へ呼設定を行う。
〔S74〕端末装置は、無線基地局へ呼設定受け付けを返送する。
〔S75〕端末装置は、無線基地局へ呼び出しを行う。
〔S76〕端末装置は、無線基地局へ応答を行う。
〔S77〕無線基地局は、端末装置へ応答確認を返送する。
〔S78〕端末装置は、無線基地局を介して通話を行う。
【0079】
なお、ステップS71以降からベアラタイムスロットが用いられる。また、端末装置から無線基地局への送信(点線矢印)はすべて、早出しタイミングである送信タイミングにもとづいて行われる。
【0080】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の無線通信システムは、スーパーフレーム中の送信タイムスロットと受信タイムスロットに対して、連続タイムスロットを割り当て、連続タイムスロット期間で端末装置と通信を行って無線基地局と端末装置間の電波の伝播情報を算出し、伝播情報にもとづいて、送信タイミングを算出して信号を送信する構成とした。これにより、1つのスーパーフレームに対して効率よく連続タイムスロットを割り当てることにより、無線基地局のカバレッジを拡大させ、効率のよい無線通信を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 無線通信システムの原理図である。
【図2】 連続タイムスロットと送信タイミングを説明するための図である。
【図3】 WLLの概要を示す構成図である。
【図4】 連続タイムスロットの割り当てを示す図である。
【図5】 1つのフレームに2つの無線基地局の連続タイムスロットを割り当てた時のスーパーフレームを示す図である。
【図6】 送信タイミングを算出するシーケンスを示す図である。
【図7】 無線通信方法の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】 無線通信システムの変形例を示す原理図である。
【図9】 送信タイミングを算出するシーケンスを示す図である。
【図10】 BCCHのフォーマット構成を示す図である。
【図11】 無線通信方法の処理手順を示すフローチャートである。
【図12】 位置登録シーケンスを示す図である。
【図13】 発信シーケンスを示す図である。
【図14】 着信シーケンスを示す図である。
【図15】 TDMA−TDDフレームのスロット配置を示す図である。
【図16】 従来のTDMA−TDDの問題点を説明するための図である。
【符号の説明】
1 無線通信システム
10 伝播情報算出装置
11 連続タイムスロット割り当て手段
12 伝播情報算出手段
20 送信タイミング算出装置
21 送信タイミング算出手段
22 信号送信手段
100 無線基地局
200 端末装置
Claims (7)
- 無線通信制御を行う無線通信システムにおいて、
フレーム内のタイムスロットを連続して割り当てて、連続タイムスロットを生成する連続タイムスロット割り当て手段と、前記連続タイムスロット期間で、端末装置と通信を行って、無線基地局と前記端末装置間の電波の伝播情報を算出する伝播情報算出手段と、から構成される伝播情報算出装置と、
前記連続タイムスロット期間で、前記伝播情報にもとづいて、前記端末装置から前記無線基地局へ送信すべき信号の送信タイミングを算出する送信タイミング算出手段と、前記送信タイミングにもとづいて、前記信号を送信する信号送信手段と、から構成される送信タイミング算出装置と、
を有し、
複数の送信タイムスロットと複数の受信タイムスロットとから構成される1フレームがnフレーム多重化されたスーパーフレームに対して、
前記連続タイムスロット割り当て手段は、
隣接する2つの前記送信タイムスロットから前記連続タイムスロットを生成して送信連続タイムスロットとし、かつ隣接する2つの前記受信タイムスロットから前記連続タイムスロットを生成して受信連続タイムスロットとし、
前記スーパーフレームの1フレーム毎に、1組の前記送信連続タイムスロットと前記受信連続タイムスロットとを生成して、1つの前記スーパーフレームでn局の無線基地局に対する連続タイムスロット割り当てを行う、
ことを特徴とする無線通信システム。 - 前記伝播情報算出手段は、前記伝播情報の算出として、前記端末装置へテストデータを送信して前記端末装置から折り返された前記テストデータを受信するまでの時間を計測し、前記無線基地局と前記端末装置間の前記電波の伝播時間または距離を算出することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
- 前記送信タイミング算出装置は、算出した前記送信タイミングの情報を不揮発性のメモリに記憶させることを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
- 前記連続タイムスロット割り当て手段は、前記送信タイミングが算出された後は、前記連続タイムスロットの割り当てを解除することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
- 無線通信制御を行う無線通信システムにおいて、
フレーム内のタイムスロットを連続して割り当てて、連続タイムスロットを生成する連続タイムスロット割り当て手段と、前記連続タイムスロット期間で、端末装置と通信を行って、無線基地局と前記端末装置間の電波の伝播情報を算出する伝播情報算出手段と、から構成される伝播情報算出装置と、
前記連続タイムスロット期間で、前記伝播情報にもとづいて、前記端末装置から前記無線基地局へ送信すべき信号の送信タイミングを算出する送信タイミング算出手段と、前記送信タイミングにもとづいて、前記信号を送信する信号送信手段と、から構成される送信タイミング算出装置と、
を有し、
2m(m=1、2、3、・・・)個の送信タイムスロットと2m個の受信タイムスロットとから構成される1フレームがn(n=1、2、3、・・・)フレーム多重化されたスーパーフレームに対して、
前記連続タイムスロット割り当て手段は、
隣接する2つの前記送信タイムスロットから前記連続タイムスロットを生成して送信連続タイムスロットとし、かつ隣接する2つの前記受信タイムスロットから前記連続タイムスロットを生成して受信連続タイムスロットとし、
前記スーパーフレームの1フレーム中に、m組の前記送信連続タイムスロットと前記受信連続タイムスロットとを生成して、1つの前記スーパーフレームでm×n局の無線基地局に対する連続タイムスロット割り当てを行う、
ことを特徴とする無線通信システム。 - 前記伝播情報算出手段は、前記伝播情報の算出として、前記端末装置へテストデータを送信して前記端末装置から折り返された前記テストデータを受信するまでの時間を計測し、前記無線基地局と前記端末装置間の前記電波の伝播時間または距離を算出することを特徴とする請求項5記載の無線通信システム。
- 前記送信タイミング算出装置は、算出した前記送信タイミングの情報を不揮発性のメモリに記憶させることを特徴とする請求項5記載の無線通信システム。
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