JP3968814B2 - N−ビニルホルムアミドの精製方法 - Google Patents

N−ビニルホルムアミドの精製方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はN−ビニルホルムアミドの蒸留精製方法に関する。詳しくは、N−ビニルホルムアミドの熱重合物による蒸留装置の閉塞を防止した高純度のN−ビニルホルムアミドの精製方法に関する。N−ビニルホルムアミドは、重合性に富んだ化合物であり、ポリビニルアミンをはじめとする水溶性ポリマーの原料、あるいは有機薬品の中間体として有用であることが知られており、より高純度のN−ビニルホルムアミドが求められている。
【0002】
【従来の技術】
N−ビニルホルムアミドの代表的な製造法としては、N−(α−アルコキシエチル)ホルムアミドからアルコールを脱離させる方法(米国特許第3,914,304号)、ホルミルアラニンニトリルからシアン化水素を脱離させる方法(特開昭61−134359)及びエチリデンビスホルムアミドを熱分解する方法(米国特許第4,490,557号、同4,578,515号)などが知られている。これらの方法は、いずれも、減圧下、100℃以上の高温で熱分解して、N−ビニルホルムアミドを得るものである。該熱分解反応液からは、軽沸分等をを蒸留除去して通常80重量%以上の純度の粗N−ビニルホルムアミドが回収できる。
この粗N−ビニルホルムアミドには、通常、前駆体の脱離分子であるアルコール類やホルムアミドが含まれる。また、熱分解時に副生する種々の酸性物質及び塩基性物質を含むことも多い。これらの不純物はその後の精製工程において収率を低下させたり、重合あるいは反応工程において、分子量を低下させるなどの悪影響を及ぼすことがあり、製品の品質を著しく損なう。
【0003】
粗N−ビニルホルムアミドを精製して高純度のN−ビニルホルムアミドを得るためには、粗N−ビニルホルムアミドを精留塔を用いて連続蒸留する方法が最も効果的であると考えられる。しかしながら、N−ビニルホルムアミドは、反応性が非常に高いため、蒸留の際に熱分解反応や熱重合反応などの好ましくない副反応を伴う危険性がある。特に、熱重合反応は多くの場合、不溶不融の高分子物質を生成し、蒸留装置の閉塞を引き起こす。その結果、蒸留回収率が極端に低下したり、蒸留の継続が困難となる。かかる問題は、工業的規模の連続蒸留の操作条件として蒸留の塔頂圧力が通常0.1〜3KPaの減圧下、即ち、塔頂温度として50〜100℃程度に対応する比較的穏和な条件下においても同様である。
【0004】
従来、N−ビニルホルムアミドを安定に蒸留する方法として、粗N−ビニルホルムアミドのpHを予め調整して蒸留する方法(特開昭62−195352、特開平6−122661)、粗N−ビニルホルムアミドに予め特定の安定剤を添加して蒸留する方法(特開昭61−289068、特開平8−48657等)などが提案されている。また、特開昭62ー190153号公報には、1〜70%のホルムアミドを含む粗N−ビニルホルムアミドを蒸留に供する方法が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のN−ビニルホルムアミドを安定に蒸留する方法の多くは実験室レベルの小規模の回分蒸留に基づく知見によるものであり、長期間の連続蒸留においては、熱重合の抑制に関して未だ十分なものではなく、ときとして不溶不融の重合物を生成することがあった。また、連続蒸留の実施例も知られてはいるが(特開昭62ー190153、特開平5−155829)、粗N−ビニルホルムアミド中に多量のホルムアミドを含有するものであったり、あるいは、連続蒸留で回収したN−ビニルホルムアミドの純度がなお十分でないという点に問題がある。
【0006】
特に、前記の特開昭62ー190153号公報の実施例を見ると、粗N−ビニルホルムアミド中には、通常、合成工程由来のホルムアミドが既に少量含まれているが、更に、多量のホルムアミドを添加し、ホルムアミドを約35%含む粗N−ビニルホルムアミドについて連続蒸留を実施している。かかる方法では、熱重合の抑制には効果があっても、過剰に用いたホルムアミドを回収精製する工程を別途持つ必要があり、工業的な実施には必ずしも有利とはいえない。
そこで、本発明の課題は、N−ビニルホルムアミドの蒸留による精製、とくに精留塔を用いる連続蒸留において、塔内での重合を抑制しつつ、収率よく高純度のN−ビニルホルムアミドを収率よく安定に取得する工業的に有利な方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、精留塔を用いる粗N−ビニルホルムアミドの精製に際し、粗N−ビニルホルムアミド中に通常含まれている比較的高分子量と思われる微量成分が、蒸留の熱に熱重合をもたらす主要原因であることを見出し本発明に到達した。即ち、本発明は、ホルムアミド含量が1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%であり、且つアセトン不溶成分の含有量が400ppmよりも多い粗N−ビニルホルムアミドを、アセトン不溶成分の含有量が400ppm、好ましくは200ppm以下となるように前精製したのち、精留塔に連続的に供給して蒸留し、塔頂から精製されたN−ビニルホルムアミドを取得することを特徴とするN−ビニルホルムアミドの精製方法に存する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明で精製対象とする粗N−ビニルホルムアミドの製法は特に限定はないが、通常、前記に例示したような方法が例示される。しかしながら、N−ビニルホルムアミドの収率が高く、また、シアン化水素等の有害物質の副生がない点において、熱分解の方法としては、N−(α−アルコキシエチル)−ホルムアミドからアルコールを脱離させる方法が好ましい。
【0009】
N−ビニルホルムアミドを含む反応液は、N−ビニルホルムアミドの他に、副生するアルコールやホルムアミドを含有する混合物であるから、熱分解反応液より、減圧留去法によりメタノール、エタノールなどを低沸点のアルコールを効果的に除去することができる。従って、熱分解反応液をそのまま粗N−ビニルホルムアミドとして本発明の精製に供してもよいが、通常は軽沸点成分を予め除去することが望ましい。軽沸点成分を蒸発処理する方法としては、該混合物中の軽沸点成分を減圧留去する方法が採用できる。例えば、N−(α−アルコキシエチル)−ホルムアミドからアルコールを脱離させる熱分解法により得られたN−ビニルホルムアミドを含む反応液をかかる方法により、通常70重量%以上、好ましくは80〜95重量%の純度であって、かつ、ホルムアミド含量が1〜10重量%程度の粗N−ビニルホルムアミドを比較的容易に得ることができる。
【0010】
なお、本発明の精製対象となる粗N−ビニルホルムアミドとは、本発明による精製を行った後よりも純度の低いN−ビニルホルムアミドを意味するものであって、上記のような反応液より軽沸点成分あるいは高沸点成分をある程度除いたような液以外にも、一旦精製していても長期保存により劣化した純度が低下したN−ビニルホルムアミドなども含まれる。
【0011】
次に、本発明でいう粗N−ビニルホルムアミド中のアセトン不溶成分とは、室温(25℃)条件下で、軽沸成分等を除去した粗N−ビニルホルムアミドに対して5重量倍量のアセトンを加えたときに沈殿として生じる物質を言う。この物質は、IRスペクトル、NMRスペクトル及び液体クロマトグラフィー等の分析より、主としてN−ビニルホルムアミドの重合物からなる高沸点成分と同定される。該重合物は、粗N−ビニルホルムアミドの製造において、例えば、N−(α−アルコキシエチル)ホルムアミドのような前駆体の熱分解工程で副生するものである。また、N−ビニルホルムアミド自体の反応性が高いがゆえに、精製されたN−ビニルホルムアミドの移送、貯蔵中などにおいても自然に生成増加してくるものである。このようなアセトン不溶成分は、通常の状態では粗N−ビニルホルムアミド中に溶解している。
【0012】
本発明者らは、このようなアセトン不溶成分が原料中に含まれていると、該成分を核として重合が促進され、安定剤の存在下においてさえ、重合体の成長は避けられないことを見いだした。蒸留塔においては、充填物が液体によって均一に濡らされていないところで不溶物が析出しやすい。不溶物がいったん析出すると、それを核として重合物が成長し、やがて不溶不融の重合体が蓄積していくものと推定される。このような現象は、アセトン不溶成分が常に供給されている原料供給口において、とくに顕著である。従って、本発明においては、粗N−ビニルホルムアミド中のアセトン不溶成分は、連続蒸留精製に供する前に、前精製により400ppm以下に低減させておく。好ましくはアセトン不溶成分を200ppm以下、特に50ppm以下に低減させてから、連続蒸留精製に供する。
【0013】
ところが、粗N−ビニルホルムアミド中のホルムアミド含量が高い原料を用いた場合には状況が異なる。ホルムアミドはアセトン不溶成分についても溶解力が高いために不溶物が析出し難く、容易に塔底へ運び去られるため、このような問題は顕在化しにくかった。アセトン不溶成分の影響は、粗N−ビニルホルムアミド中のホルムアミド含量が10%以下の場合、特に顕著である。粗N−ビニルホルムアミドは、通常、原料であるホルムアミドを含んでいるが、原料原単位の面からはホルムアミド含量を極力低くすることが望ましく、好ましくは5%以下に制御する。このような粗N−ビニルホルムアミドにおいて、アセトン不溶成分が含まれている場合には、精留塔内で熱重合が極めて起こりやすい。
【0014】
N−ビニルホルムアミド中のアセトン不溶成分を取り除く手段、すなわち前精製としては特に限定されるものではないが、以下のような方法が例示できる。例えば、アセトン不溶成分は一般に高分子量であって蒸気圧を持たないことから、蒸発によってN−ビニルホルムアミドとは容易に分離することが可能である。この場合、蒸発に用いる装置は、予め含まれている、あるいは単位操作中に生成する重合物に対して、閉塞などの不具合を生じない型式の装置を用いるべきであり、薄膜蒸発器が特に好ましい。
【0015】
薄膜蒸発器は、混合液よりN−ビニルホルムアミドのような熱安定性の高くない対象物を蒸発分離させるのに適当である。その構造は市販の装置と同様なものであって特別の構造を有する必要はなく、回転型薄膜式、プレート型流下薄膜式、チューブ型流下薄膜式、ワイパー型薄膜式、遠心型薄膜式等の形式のものが例示されるが、好ましくは回転型薄膜式、ワイパー型薄膜式、遠心型薄膜式等のような機械的に薄膜を形成させる形式のものである。薄膜蒸発の操作条件としては、通常0.1〜3KPa、好ましくは0.3〜2KPaの減圧下、蒸気温度として、通常70〜150℃、好ましくは80〜130℃、液の平均滞留時間が通常30秒〜10分、好ましくは1〜5分が示される。かかる条件下で薄膜蒸発することにより、N−ビニルホルムアミドを含む液の通常80%以上、好ましくは85%以上を蒸発分として回収する。一方、残りの未蒸発分、即ち、残りの高沸点成分は薄膜蒸発器に循環させることなく、系外に除去する。
【0016】
また、アセトン不溶成分はアセトンの他にもメタノールなどに不溶であるから、このような貧溶媒を加えて沈殿分離し、その後、溶媒を留去してアセトン不溶成分を含まない粗N−ビニルホルムアミドを得てもよい。
なお、N−ビニルホルムアミドは熱変化に非常に敏感である性質上、一端アセトン不溶分を除去できたとしても、薄膜蒸発器で回収される粗N−ビニルホルムアミドを含む蒸気成分が冷却凝縮する際や、粗N−ビニルホルムアミドを精留塔で直ちに供給して精製するのではなく、一時的に保存するような場合も含めてアセトン不溶分が再生しやすいので格別の注意が必要である。
【0017】
一般的な有機物を薄膜蒸発させる場合、蒸発分を冷却して一旦凝縮液として回収することが多いが、N−ビニルホルムアミドの場合は、凝縮の際の気液接触の時間が長くなるとアセトン不溶分が再生しやすいので注意が必要である。また、この凝縮液を精留塔に供給する場合、一般的有機物を精留する場合においては、精留塔塔内の熱負荷をできるだけ軽減するために予め予備加熱して精留塔に供給する方法が通常望ましいが、N−ビニルホルムアミドではあまり加温し過ぎるとアセトン不溶成分の再生が顕著となるのであまり好ましくなく、加温しても通常50℃以下、好ましくは40℃以下に留めるべきである。
【0018】
また、アセトン不溶成分の再生を回避して精留塔に供給するため、粗N−ビニルホルムアミドを薄膜蒸発器に供給し、未蒸発分を除去し、一方、N−ビニルホルムアミドを含む蒸発分を凝縮させることなく精留塔に供給する方法が好ましい。この際、蒸発分の通常90%以上は凝縮させることなく供給し、好ましくは実質的に全量を蒸気で精留塔に供給する。このためには、薄膜蒸発器から精留塔に至るラインの保温状態を維持する必要がある。
【0019】
本発明では、以上のようなアセトン不溶成分を除いた粗N−ビニルホルムアミドの精製を、精留塔を用いた連続蒸留によって実施し、その結果として通常97重量%以上、特に98重量%以上の高純度N−ビニルホルムアミドを得る。塔の構造は一般的な蒸留塔の場合と同様であり、充填式、棚段式等が例示される。精留塔の粗N−ビニルホルムアミド液の供給口は、塔の中段であって、塔の下から通常1/5〜4/5の位置に設置される。蒸留の操作条件には特に制限はないが、工業的に実施しやすい条件として、塔の理論段数は通常3〜30、好ましくは5〜20であり、精留塔の塔頂圧力が通常0.1〜3KPa、好ましくは0.3〜2KPaであり、対応する塔頂温度が通常50〜100℃、好ましくは70〜95℃であり、塔底温度が通常80〜120℃、好ましくは85〜100℃である。また、塔頂より留出させるNービニルホルムアミドは、精留塔に供給される粗N−ビニルホルムアミド中のN−ビニルホルムアミド成分は好ましくは90重量%以下とする。90重量%を越えるようにするには塔内温度を高くする必要があるのでN−ビニルホルムアミドの分解が進むので好ましくない。なお、本発明において、塔頂とは広義の意味であって、塔頂そのものとその近傍も含まれる。即ち、塔頂より微量の軽沸点不純物を除去し、塔頂近傍より目的とするN−ビニルホルムアミドに富む成分を留出させる方法も可能である。
【0020】
更に、本発明の精製系においては、精留塔あるいは薄膜蒸発器に粗N−ビニルホルムアミドを供給する際に、N−ビニルホルムアミドの熱重合防止に関して有効な安定剤を使用してもよい。有効な安定剤としては、たとえば、キノン類、キノン類のアルカリ変性物、フェノール系化合物、芳香族アミン系化合物、チオ尿素系化合物などであり、その添加量は通常50〜10000ppm、好ましくは100〜5000ppmである。
【0021】
安定剤として特に好ましいのはキノン類のアルカリ変性物であり、キノン類の化合物としては、p−ベンゾキノン、o−ベンゾキノンなどのベンゾキノン類や、ナフトキノン類、アントラキノン類が例示されるが、これらのキノン類のアルカリ変性物を調製する場合には、N−ビニルホルムアミドとの蒸留分離が容易なメタノール、エタノール、水、トルエン、ベンゼン等の溶媒、あるいは、N−ビニルホルムアミドに、キノン類を通常5〜150g/lとなるように溶解し、これに苛性ソーダ、苛性カリ、炭酸ソーダ、重炭酸ソーダ等のアルカリを添加して、室温ないし加温下に撹拌すればよい。アルカリの添加量は10-4〜10-2モル/l程度で十分である。キノン類は一般には重合禁止剤として作用するが、更にこのキノン類のアルカリ変性物は不揮発性であるので、連続蒸留を通じて精製N−ビニルアミドホルムアミドと容易に分離することができる。
【0022】
【実施例】
以下に実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において「%」は「重量%」、「ppm」は「重量ppm」を示す。
また、実施例において、N−ビニルホルムアミド中のアセトン不溶成分の分析方法は以下の通りである。
(アセトン不溶成分の分析方法)
室温(25℃)条件下、試料のN−ビニルホルムアミド50gにアセトン250gを添加混合し、析出物を0.5μのテフロン製フィルターで濾取した。これを60℃で恒量になるまで減圧乾燥し、該量を測定して高分子量成分の含有量(単位:ppm)を(不溶物の乾燥重量/50)×106で表示した。
【0023】
実施例1
N−(α−メトキシエチル)ホルムアミドの熱分解反応液からメタノールの大部分を減圧蒸留により留去し、粗N−ビニルホルムアミド(N−ビニルホルムアミド92%、ホルムアミド4%、その他有機物4%)を得た。この粗N−ビニルホルムアミド中にはアセトン不溶成分が1000ppm含まれていた。これを薄膜蒸発器を用いて0.4KPaの減圧下、70℃の蒸気温度で蒸発させ、導入管の外側をヒーターで100℃に加熱保温し、該蒸気を全く凝縮させることなく、蒸気のまま精留塔に供給して以下に示す条件で連続蒸留を50時間行った。蒸留後、塔内に不溶性の重合物はまったく生成していなかった。
【0024】
(精留塔での蒸留条件)
精留塔での蒸留(精溜)は、長さ1m、直径5cmの塔に規則充填体(住友スルーザーラボパッキン)を充填した装置を用いた。この塔の中段に、熱安定剤としてパラベンゾキノンのアルカリ変性物を1000ppm含む粗N−ビニルホルムアミドを連続的に供給しながら蒸留した。蒸留中は、塔頂から熱安定剤としてパラベンゾキノンのアルカリ変性物の0.5%含む粗N−ビニルホルムアミドを、塔の中段から供給する粗N−ビニルホルムアミドに対して1000ppmの割合で連続的に供給し、精留塔に供給したN−ビニルホルムアミドの50%を塔頂から留出する条件として、塔頂より純度99.5%のN−ビニルホルムアミドを連続的に回収した。
【0025】
実施例2
実施例1のアセトン不溶成分1000ppmの粗N−ビニルホルムアミドを薄膜蒸発器を用いて0.4KPaの減圧下、70℃の蒸気温度で蒸発させ、該蒸気を凝縮させアセトン不溶成分が50ppmの粗N−ビニルホルムアミドを得た。これを原料として精留塔を用い、実施例1と同様の条件で連続蒸留を50時間行った。蒸留後、塔内に不溶性の重合物はまったく生成していなかった。
実施例3
実施例1のアセトン不溶成分1000ppmの粗N−ビニルホルムアミドを5重量倍量のアセトンを加え、析出したアセトン不溶成分を0.5μのテフロン製フィルターを用いて濾過することによって除去した。その後、減圧下、室温でアセトンを留去し、アセトン不溶成分を含まない粗N−ビニルホルムアミドを得た。これを原料として精留塔を用い、実施例1と同様の条件で連続蒸留を50時間行った。蒸留後、塔内に不溶性の重合物はまったく生成していなかった。
【0026】
比較例1
実施例1でのアセトン不溶成分1000ppmの粗N−ビニルホルムアミドを精留塔を用い、実施例1と同様の条件で連続蒸留を行った。蒸留開始20時間後に既に不溶性の重合物の生成を認めた。
比較例2
実施例1でのアセトン不溶成分1000ppmの粗N−ビニルホルムアミドをを薄膜蒸発器を用いて0.4KPaの減圧下、70℃の蒸気温度で蒸発させ、該蒸気を凝縮させアセトン不溶成分が50ppmの粗N−ビニルホルムアミドを得た。該凝縮液を供給管の外部を100℃で加熱することにより加温しながら精留塔に供給した。精留塔入口での液中のアセトン不溶成分は760ppmであった。そして、実施例1と同様の条件で連続蒸留を50時間行った。蒸留開始40時間後に不溶性の重合物の生成を認めた。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、粗N−ビニルホルムアミドの蒸留による精製、特に精留塔を用いる連続蒸留法において、塔内での重合を抑制しつつ、収率よく高純度のN−ビニルホルムアミドを安定に取得することができる。

Claims (10)

  1. ホルムアミド含量が1〜10重量%であり、且つアセトン不溶成分の含有量が400ppmよりも多い粗N−ビニルホルムアミドを、アセトン不溶成分の含有量が400ppm以下となるように前精製したのち、精留塔に連続的に供給して蒸留し、塔頂から精製されたN−ビニルホルムアミドを取得することを特徴とするN−ビニルホルムアミドの精製方法。
  2. ホルムアミド含量が1〜5重量%であり、且つアセトン不溶成分の含有量が400ppmよりも多い粗N−ビニルホルムアミドを、アセトン不溶成分の含有量が400ppm以下となるように前精製したのち、精留塔に連続的に供給して蒸留し、塔頂から精製されたN−ビニルホルムアミドを取得することを特徴とするN−ビニルホルムアミドの精製方法。
  3. アセトン不溶成分の含有量が200ppm以下となるように前精製することを特徴とする請求項1又は2記載のN−ビニルホルムアミドの精製方法。
  4. 前精製を、粗N−ビニルホルムアミドを薄膜蒸発器に供給してN−ビニルホルムアミドを蒸発させ、未蒸発分から分離することにより行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のN−ビニルホルムアミドの精製方法。
  5. 前精製を、粗N−ビニルホルムアミドを薄膜蒸発器に供給してN−ビニルホルムアミドを蒸発させて未蒸発分から分離することにより行い、且つ薄膜蒸発器で生成したN−ビニルホルムアミドを含む蒸気を、凝縮させることなく精留塔に供給することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のN−ビニルホルムアミドの精製方法。
  6. 前精製を、粗N−ビニルホルムアミドから貧溶媒を用いた沈殿分離法によって、粗N−ビニルホルムアミド中のアセトン不溶分を除去することにより行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のN−ビニルホルムアミドの精製方法。
  7. 粗N−ビニルホルムアミドの純度が80重量%以上であることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載のN−ビニルホルムアミドの精製方法。
  8. 精製されたN−ビニルホルムアミドの純度が97重量%以上となるように精留塔での蒸留を行うことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のN−ビニルホルムアミドの精製方法。
  9. 精留塔から取得される精製されたN−ビニルホルムアミド中のN−ビニルホルムアミドが、精留塔に供給されたN−ビニルホルムアミドの90%以下となるように精留塔での蒸留を行うことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のN−ビニルホルムアミドの精製方法。
  10. 精留塔の塔頂圧力を0.1〜3kPaで蒸留を行うことを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載のN−ビニルホルムアミドの精製方法。
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