JP3968416B2 - 多自由度下肢リハビリ支援装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高齢者等が事故や疾病で身体に機能障害を負った場合、病院でのリハビリの後、家庭または施設において、理学療法士の操作・監視のもとで訓練するための下肢リハビリ支援装置に関し、特に、ワイヤパラレル機構を応用した多自由度下肢関節訓練装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の下肢機能訓練装置としては、図11に示すように、ベース30に大腿部介添用ビーム31を回動自在に設け、該大腿部介添用ビーム31にピボットピン32を支点として脛部支持体33をピボット自在に装着し、下肢40をバンド34,34に載せた状態で、図示しないモータを駆動させて脛部支持体33をピボットピン32を支点として揺動運動させることにより、膝関節の屈曲・伸展運動をさせるものが知られている(たとえば、特公平6−20478号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来公知の下肢機能訓練装置にあっては、訓練装置がビーム等をリンク結合させた構成となっているため、柔軟性に乏しく、誤って患者の下肢を訓練装置に装着してしまったような場合には、患者の膝関節等を損傷するといった事態が生じるおそれがあった。
【0004】
本発明は、安全性、軽量化、取り扱いの簡便さ、使用時のユーザの心理的負担などに配慮して複数本の牽引索による牽引機構(通称、ワイヤパラレル機構ともいう。)を採用することにより、患者の症状に応じて6自由度方向の訓練を可能にするとともにアクチュエータの小型化、患者の拘束感の低減を可能にした多自由度下肢リハビリ支援装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の多自由度下肢リハビリ支援装置は、1本の下肢の複数部位を牽引する複数本の牽引索を巻取自在に設け、各牽引索を制御装置で制御することにより下肢関節を訓練可能としたものにおいて、各牽引索ごとに当該牽引索を巻取る巻取機構を移動自在に設けたことを特徴とする。また、本発明の多自由度下肢リハビリ支援装置は、牽引索をワイヤ、天然繊維または合成繊維からなるロープで構成したことを特徴とする。また、本発明の多自由度下肢リハビリ支援装置は、各牽引索ごとに巻取機構を設け、各巻取機構を曲線状のレールに沿って移動自在としたことを特徴とする。また、本発明の多自由度下肢リハビリ支援装置は、レールを、1対の長円形状外側レール、1対のJ字形状中間レールおよび1本の逆U字形状内側レールから構成するとともに、これらのレールを一定の方向に向けて設けたことを特徴とする。また、本発明の多自由度下肢リハビリ支援装置は、1本の下肢を載置するフレームをレールの方向と直交する方向に回動自在に設けたことを特徴とする。また、本発明の多自由度下肢リハビリ支援装置は、患者身体データおよび訓練動作パラメータから、患者の下肢における訓練目標位置、下肢上の牽引索取り付け位置、巻取機構の位置および牽引索の長さを制御装置において演算し制御するようにしたことを特徴とする。また、本発明の多自由度下肢リハビリ支援装置は、1本の下肢に加わる力を制御するために、牽引索に作用する張力を制御することを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の多自由度下肢リハビリ支援装置の実施の形態を図に基づき説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る全体構成を示した斜視図、図2は同要部の正面図、図3は同要部の平面図である。
この実施の形態1においては、訓練台1の上に、3種類5本のレールと5組の巻取機構が設けられている。
すなわち、長円形状をした1対の外側レール2、2、J字形状をした1対の中間レール3、3および逆U字形状をした1本の内側レール4が設置される。各レールを図示のように直線と円弧を組み合わせた曲線状に形成するのは、後述するように牽引索と訓練する患者の下肢とができるだけ直交するようにするため、および、装置の可動部が患者の身体に接近しないようにするためである。
また、各レールには、レールに沿って移動自在の移動物体5を装着する。該移動物体5は、レールに沿って設けられたタイミングベルトで駆動される他、自走式としても良い。なお、1対の長円形状外側レール2、2および1対のJ字形状中間レール3、3における移動物体5の移動は、左右独立に行えるようにしても、あるいは、同時・同方向に行えるようにしても良い。
各レールには、移動物体5がレールの一定範囲を超えて移動しないよう図示しないリミットスイッチが設けられている。
【0007】
さらにまた、各移動物体5に、モータ、牽引索巻取ドラム、滑車類などからなる巻取機構6を設ける。各巻取機構6の牽引索巻取ドラムには、牽引索7が巻き付けられており、モータにより牽引索7は独立に巻取・巻戻され、所定の繰り出し長さになるよう制御される。また、牽引索7には図示しない張力センサが設けられ、後述する制御装置11に牽引索7に作用する張力をリアルタイムで送信するようになっている。
この巻取機構6を移動物体5に設けて曲線状のレールに沿って可動式にしているのは、牽引索同士の干渉を防ぎ、張力の作用する方向を下肢に対してできるだけ垂直に保つためである。
牽引索7の先端は患者8のリハビリを行う下肢9に装着するベルト10に取り付けられ、このベルト10を牽引索7で牽引することにより下肢9に外力を伝達する。
なお、牽引索7は、柔軟性を有し、ある程度以上の強度を有するものであれば良く、たとえば、ワイヤ、天然繊維または合成繊維からなるロープで構成される。
【0008】
図1〜図3においては、患者はあおむけの状態であり、1対の長円形状外側レール2、2に装着された移動物体5の巻取機構6の牽引索7は下肢9の膝上を、1対のJ字形状中間レール3、3に装着された移動物体5の巻取機構6の牽引索7は下肢9の膝下を、また、1本の逆U字形状内側レール4に装着された移動物体5の巻取機構6の牽引索7は、足首部をそれぞれ牽引するようになっている。なお、患者は、うつぶせ状態でも訓練可能であり、また、ベルト10を介して牽引する位置は、訓練する関節位置に応じて適宜設定する。
安全のため、巻取機構6には、牽引索7が一定範囲を超えて巻き取られることがないよう図示しないリミットスイッチが設けられる。
【0009】
装置の制御を行う制御装置11は、パソコンと入出力ボード類で構成されており、該制御装置11には、氏名、体重、大腿長、下腿長等の患者身体データ12および股関節屈曲・伸展/膝関節屈曲・伸展、動作範囲、速度、繰り返し回数、体の向き等の訓練動作パラメータ13を予め入力するようになっている。また、制御装置11には、リハビリ動作実行中のコンピュータの任意キー押し下げによるプログラム上の停止機構が設けられている。
【0010】
患者8の手元には、患者が必要と感じたときに押し下げることで電流を遮断して装置を停止する非常スイッチ14が備えられる。また、各牽引索7に、患者の体重に対して一定割合以上の張力が加わった際にはプログラムを停止するようになっている。
【0011】
上記したリハビリ装置においては、患者8の下肢9のうち、股関節、膝関節、足関節を対象にしており、股関節は、屈曲・伸展、内転・外転(真横への振り出し)、内旋・外旋(脚のひねり)の3自由度、膝関節は、屈曲・伸展の1自由度、足関節は、底屈・背屈(かかとを中心にしたつま先の上下)、内反・外反(足首を軸にした足部のひねり)の2自由度、の全部で6自由度を対象にしている。ただし、足指の運動などは本装置の対象外である。
股関節の屈曲角は、膝伸展時で0゜〜90゜、膝屈曲時で0゜〜125゜であり、また、膝関節屈曲角は、0゜〜130゜を想定して設定されている。
【0012】
リハビリ動作実行に当たって、制御装置11は、患者の身体データ12および訓練動作パラメータ13から、一定時間ごとの患者8の下肢9における訓練する目標位置を演算するとともに、下肢9上の牽引索7の取り付け位置を同時に決定する。
次に、下肢9の長手方向に対して、牽引索7が常に一定角度(たとえば、直角)を保つという条件を与え、レール上の巻取機構6の位置および牽引索7の長さの目標値を演算させる。この目標値を、各移動物体5のモータおよび各巻取機構6のモータの目標出力に変換し、モータ電圧指令値15としてモータに送信することにより、位置制御を行うことができる。
さらに、牽引索7に設けた張力センサからの張力は、リアルタイムで制御装置11に入力されており、上記の位置制御と組み合わせて牽引索7に作用する張力も制御することにより、患者の下肢に加わる力を制御することができる。この張力制御によれば、牽引索7の張力が許容値の上限に達した場合は、巻取機構6の位置および牽引索7の長さが目標値に達していなくとも、その時点で巻取機構6の移動および巻取の動作を保留するというものである。たとえば、目標動作を膝関節角度15度から90度の範囲で往復運動としたときに、60度以上の屈曲を行おうとすると、張力がそのときの許容値より大きくなっため、そこで動作を保留する。復路で目標軌道が60度から小さくなる方向に進行したときに、再び伸展動作、または、動作を保留した段階で直ちに反転し伸展動作に入る。
【0013】
今、膝関節の屈曲・伸展動作訓練を行う場合、たとえば、図2に示すようにあおむけの患者8の下肢9の膝上、膝下および足首上部に牽引索先端と連結したベルト10を装着しておき、1対の長円形状外側レール2、2に装着した移動物体5および巻取機構6を制御して大腿部を適度な角度まで持ち上げた状態で静止させておき、1対のJ字状中間レール3、3に装着された移動物体5の巻取機構6および1本の逆U字状内側レール4に装着された移動物体5の巻取機構6を制御してこれらに連結した牽引索7、7を交互に所定回数伸縮させれば良い。また、患者8がうつぶせの姿勢の場合は、足首部の牽引索のみ伸縮せることにより膝関節の屈曲・伸展動作訓練を行うこともできる。
【0014】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2に係る全体構成を示した斜視図である。
この実施の形態2は、上記した実施の形態1の構成に、患者の股関節の内旋・外旋および内転・外転の訓練に適した装置を加えた構成となっている。
すなわち、訓練台1上に、患者の下肢を載置できるフレーム16を設ける。該フレーム16は、側面形状が四辺形をし、下肢を載置できる奥行きを持った形状をしており、下辺に設けられた水平方向の軸17を中心にしてレールの方向と直交する方向に回動できるようになっている。フレーム16には、患者の下肢の大腿および下腿がベルト18、18で固定される。患者の股関節の内旋・外旋および内転・外転の運動を行わせるには、たとえば、長円形状外側レール2、2および逆U字形状内側レール4に装着された巻取機構6を利用するか、あるいは、専用の巻取機構を新設して、これらに巻付けられた牽引索をフレーム16あるいは患者下肢に取り付けたベルト18に装着し、巻取機構を制御することにより行う。その際、巻取機構は、レールに沿って移動されることなく、一定位置に固定され、巻取り、巻戻しのみ行う。また、フレーム16は、患者の下肢に接する部分の1辺の長さおよび2辺の交角を調節可能としておくことにより、患者の身体に合わせて設定を変更できる。
【0015】
【実施例】
図5は、牽引索としてワイヤロープを用いた本件発明の多自由度下肢リハビリ支援装置に係る実験装置の概略を示したもので、本件発明の実験装置には逆U字形状内側レール4のみ使用し、患者8として人体ダミーおよび男性被験者(30代健常者)によりうつぶせの姿勢で実験を行った。巻取機構位置d、ワイヤ長lは膝関節角度θの関数、d=f(θ)、l=g(θ)で表される。足首から約10cm体幹側をワイヤにより吊り下げ、膝関節角度20゜〜50゜の範囲で3往復を目標動作とした。関節角度はゴニオメータにより計測した。
また、本件発明の実験装置による実験と並行して、図8に示した従来装置を用いて同じ目標動作の実験を行った。なお、従来装置による実験では、被験者の姿勢はあおむけであった。
【0016】
図8は、人体ダミーによる実験結果を、また、図9は、男性健常者による実験結果を示したものである。図の横軸は時間(ただし、2つの装置の速度の決定方法が異なるため、動作開始時点を0、3往復終了時点を1として正規化している。)、縦軸は膝関節角度(2つの装置の角度計の装着状態によって絶対値が大きく異なるため、2通り使用している。)を示している。図中、真っ直ぐな線は理論値、理論値に近い方のぎざぎざ線が従来装置による動作結果、下にずれてぎざぎざの多い線が本件発明の実験装置による動作結果である。人体ダミーによる実験では、本件発明の実験装置においては目標変位量の80%程度の変位量であり、また、屈曲・伸展を繰り返すにつれて、折り返し点の角度が小さくなっていく現象が生じている。男性健常者による本件発明の実験装置における実験では、目標の50%程度の変位量しか得られなかった。これは、厚手の衣服を着ている影響が大きく出ていると考えられる。
【0017】
図6は、被験者の姿勢をあおむけとして膝関節の屈曲・伸展を行った場合のシミュレーションを、図7は、被験者の姿勢をよこむきとして股関節の内転・外転を行った場合のシミュレーションを示したものである。
これらのシミュレーション結果によれば、患者の姿勢を変えても、巻取機構位置dおよびワイヤ長lを決定する関数を変えることにより、うつぶせの姿勢による実験と同様の制御で訓練が可能であることが分かる。
【0018】
図10は、被験者による実験の主観的評価を示したもので、従来装置を使用した場合には、剛性感、動く感覚、圧迫感、拘束感、苦痛が多く感じられるのに対し、本件発明の実験装置を使用した場合には、剛性感、圧迫感、拘束感、苦痛が少なく、被験者のリハビリに対する姿勢の自由度が高いことが分かる。
【0019】
【発明の効果】
上記したように、本発明は、複数本の牽引索を利用する形態とすることにより、患者の拘束感、圧迫感、苦痛の低減を図ることができ、使用時のユーザの心理的負担を軽減できるとともに、患者の症状に応じて6自由度方向の訓練を可能にでき、安全性、取り扱いの簡便さの向上、さらにまた、アクチュエータの小型化を図ることができるという多大な効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係る全体構成を示した斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る要部の正面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る要部の平面図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る全体構成を示した斜視図である。
【図5】本件発明に係る実験装置の概略を示したものである。
【図6】被験者の姿勢をあおむけとした場合のシュミレーション結果を示した図である。
【図7】被験者の姿勢をよこむきとした場合のシュミレーション結果を示した図である。
【図8】人体ダミーによる実験結果を示した図である。
【図9】男性健常者による実験結果を示した図である
【図10】被験者による実験の主観的評価を示した図である。
【図11】従来の下肢機能訓練装置の要部説明図である。
【符号の説明】
1 訓練台
2 楕円形外側レール
3 J字状中間レール
4 逆U字状内側レール
5 移動物体
6 巻取機構
7 牽引索
8 患者
9 下肢
10 ベルト
11 制御装置
12 患者の身体データ
13 訓練動作パラメータ
14 非常スイッチ
15 モータ電圧指令値
16 フレーム
17 軸
18 ベルト
Claims (7)
- 1本の下肢の複数部位を牽引する複数本の牽引索を巻取自在に設け、各牽引索を制御装置で制御することにより下肢関節を訓練可能とした多自由度下肢リハビリ支援装置において、各牽引索ごとに当該牽引索を巻取る巻取機構を移動自在に設けたことを特徴とする多自由度下肢リハビリ支援装置。
- 牽引索をワイヤ、天然繊維または合成繊維からなるロープで構成したことを特徴とする請求項1記載の多自由度下肢リハビリ支援装置。
- 各牽引索ごとに巻取機構を設け、各巻取機構を曲線状のレールに沿って移動自在としたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の多自由度下肢リハビリ支援装置。
- レールを、1対の長円形状外側レール、1対のJ字形状中間レールおよび1本の逆U字形状内側レールから構成するとともにこれらの各レールを一定の方向に向けて設けたことを特徴とする請求項3記載の多自由度下肢リハビリ支援装置。
- 1本の下肢を載置するフレームをレールの方向と直交する方向に回動自在に設けたことを特徴とする請求項3または請求項4記載の多自由度下肢リハビリ支援装置。
- 患者身体データおよび訓練動作パラメータから、患者の下肢における訓練目標位置、下肢上の牽引索取り付け位置、巻取機構の位置および牽引索の長さを制御装置において演算し制御するようにしたことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の多自由度下肢リハビリ支援装置。
- 1本の下肢に加わる力を制御するために、牽引索に作用する張力を制御することを特徴とする請求項6記載の多自由度下肢リハビリ支援装置。
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