JP3967676B2 - コンデンサマイクロホンユニット - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンデンサマイクロホンユニットに関し、さらに詳しく言えば、複数枚の振動板を有する積層型のコンデンサマイクロホンユニットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コンデンサマイクロホンでは、通常、用いられる振動板(ダイアフラム)は1枚で、その1枚の振動板をダイアフラムリングに所定の張力をもって貼り付けた状態でスペーサを介して背極と所定の間隔をもって対向的に配置することにより、一種のコンデンサを形成している。
【0003】
このコンデンサには、直流電源もしくはエレクトレットによりバイアス電圧が加えられ、音圧による振動板の変位が電気信号として出力される。この電気信号は、信号源がコンデンサであることからインピーダンスがきわめて高いため、インピーダンス変換器としての電界効果トランジスタ(FET)でインピーダンスを低く変換して信号出力を取り出すようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、例えば携帯電話機などに用いられる小型のコンデンサマイクロホンでは、振動板の有効面積が小さいため有効静電容量も小さい。このため、口径の大きなコンデンサマイクロホンに比べて、感度が低下しS/N比も悪い。
【0005】
また、小型のコンデンサマイクロホンでは、DCバイアスを加えることが困難であるため、エレクトレットを用いてバイアス電圧を与えるようにしている。しかしながら、エレクトレットは熱に弱いため、回路基板に対して通常のリフローハンダ法によりコンデンサマイクロホンを実装しようとすると、その高い熱によりエレクトレットの電圧が低下してしまうという問題がある。
【0006】
そのため、エレクトレットコンデンサマイクロホンを回路基板に取り付けるには、エレクトレットや振動板に性能劣化が生じないように十分な温度管理をした状態でハンダ付けするようにしたり、あるいは専用のスプリング接点を有するアクセサリをあらかじめ回路基板にハンダ付けしたのち、そのスプリング接点にエレクトレットコンデンサマイクロホンを接続するようにしており、生産性が悪いばかりでなく、コスト的にも好ましくない。
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたもので、その目的は、小型でありながら有効静電容量が大きく、しかも通常のチップ部品と同様に例えばリフローハンダ法によって回路基板に実装し得るようにしたコンデンサマイクロホンユニットを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明によるコンデンサマイクロホンユニットは、それぞれが金属皮膜を有する複数枚の振動板を電気絶縁性のスペーサを介して積層してなる振動板積層部と、上記振動板積層部の対向する2つの側面に設けられた一対の電極端子部とを含み、上記各振動板のうち、偶数番目の振動板の金属皮膜の各々が上記一方の電極端子部に電気的に接続され、奇数番目の振動板の金属皮膜の各々が上記他方の電極端子部に電気的に接続されているとともに、上記スペーサがリング状の枠体からなり、その一部分に上記振動板間の空気層を外気に連通させる通気手段が設けられていることを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、積層された複数の振動板が電気的に並列に接続されるため、小型のものでも例えば100〜1000pF程度の静電容量が得られる。これにより、固有雑音の低減が図れるとともに、十分なS/N比を確保することができる。
【0010】
上記振動板積層部と上記電極端子部とを別々に形成することもできるが、生産性の観点から、上記偶数番目の振動板と上記一方の電極端子部とを、また、上記奇数番目の振動板と上記他方の電極端子部とをそれぞれ合成樹脂材により一体成形し、上記各振動板および上記各電極端子部の表面に上記金属皮膜を形成することが好ましい。
【0011】
また、上記スペーサをリング状の枠体とし、その一部分に上記振動板間の空気層を外気に連通させる溝もしくは孔からなる通気手段を設けたことにより、音波に対する振動応答性を良好とすることができる。
【0012】
上記したように、本発明によれば、例えば100〜1000pF程度の大きな静電容量が得られるため、インピーダンス変換器として用いられる電界効果トランジスタ(FET)を動作させる電源電圧にてバイアスをかけても十分な感度が得られる。したがって、エレクトレットを必要としないため、通常のチップ部品と同様に、例えばリフローハンダ法によって回路基板に実装することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は本発明によるコンデンサマイクロホンユニットの構成を模式的に示す断面図で、図2は振動板積層部に含まれる一方の振動板および電極端子部それにスペーサを模式的に示す斜視図である。
【0014】
このコンデンサマイクロホンユニット1は、振動板積層部10と、この振動板積層部10の対向する2つの側面に設けられた一対の電極端子部21,22とを備えており、この例において、振動板積層部10には10枚の振動板10a〜10jがそれぞれスペーサ30を介して積層されている。
【0015】
振動板10a〜10jは、対向する振動板間でコンデンサを形成し、到来する音波に対して敏感に振動するものであれば、表面に金属皮膜を有する合成樹脂板や金属板単体のいずれであってもよい。なお、振動板の「板」には、薄いシートもしくはフィルムが含まれる。また、金属板単体の場合でも、金属被覆を有する点で、請求項1に記載の金属被覆を有する振動板に含まれる。
【0016】
スペーサ30は電気絶縁材からなり、振動板の間に所定の空気層を形成するために用いられる。本発明において、スペーサ30は図2に示すように矩形体に形成される。このように、スペーサ30が矩形枠で、ある程度の剛性を備えている場合には、スペーサ30に振動板を貼り付けたものを積層して振動板積層部10としてもよい。
【0017】
振動板積層部10は、例えば積層コンデンサの電極部と同様な構造であることから、10枚の振動板10a〜10jのうち、奇数番目の振動板10a,10c,10e,10gおよび10iは一方の電極端子部21に接続され、これに対して、偶数番目の振動板10b,10d,10f,10hおよび10jは他方の電極端子部22に接続される。
【0018】
電極端子部21,22は、各振動板の金属部分(振動板が表面に金属皮膜を有する合成樹脂板の場合にはその金属皮膜,金属板からなる場合にはその端部)に接触するように、振動板積層部10の側面に形成もしくは配設された金属材から構成されてもよいが、組立作業性の観点からすれば、次のように構成されることが好ましい。
【0019】
すなわち、図2に示すように、偶数番目の振動板10b,10d,10f,10h,10jと電極端子部22とを合成樹脂により一体成形したのち、その各表面に、例えばスパッタ法,蒸着法,めっき法などにより金属皮膜(図示省略)を形成する。奇数番目の振動板10a,10c,10e,10g,10iと電極端子部21も同様にして形成する。
【0020】
また、図2に示すように、スペーサ30矩形体からなるため、本発明では、スペーサ30に各振動板間の空気層を大気と連通するための溝31を形成する。溝31に代えて孔としてもよい。
【0021】
そして、偶数番目の振動板10b,10d,10f,10h,10jと、奇数番目の振動板10a,10c,10e,10g,10iとを、それらの間にスペーサ30を介在させて交互に噛み合わせる。
【0022】
これによれば、各振動板の間にそれぞれコンデンサが形成され、しかも電気的に並列接続となるため、大きさにもよるが、100〜1000pF程度の大きな静電容量が得られる。例えば、外径寸法がH;1.3mm,W;4.7mm,D;3.2mmの小型のものでも、静電容量が約200pFのコンデンサマイクロホンユニットが得られる。
【0023】
図3(a),(b)に振動板積層部10の動作状態を示す。これらの図は、振動板積層部10の上方に音源がある場合を想定したもので、図3(a)が正の音圧が加えられたときの動作状態図で、図3(b)が負の音圧が加えられたときの動作状態図である。
【0024】
再び図1を参照して、電極端子部21,22間には、インピーダンス変換器としてのFET(電界効果トランジスタ)40が接続され、FET40のソースS−ドレインD間から音声信号が取り出される。
【0025】
FET40には、電池などの外部電源Eから所定の抵抗Rを介して駆動電圧(例えばDC5V)が印加されるが、このコンデンサマイクロホン1は、上記したように静電容量が大きいため、そのバイアス電圧をFET40の電源電圧に求めたとしても十分な感度を得ることができる。
【0026】
したがって、エレクトレットを採用する必要がないため、通常のチップ部品と同様に、例えばリフローハンダ法によって回路基板に実装することができる。そればかりでなく、静電容量が大きいことから、固有雑音を小さくすることができ、十分なS/N比を確保することもできる。
【0027】
上記実施形態では、10枚の振動板を積層しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、振動板の積層枚数は任意に選択できる。偶数枚に限らず、奇数枚であってもよい。また、本発明は、無指向性に限らず、指向性を有するコンデンサマイクロホンユニットにも適用可能である。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、それぞれが金属皮膜を有する複数枚の振動板を電気絶縁性のスペーサを介して積層してなる振動板積層部と、上記振動板積層部の対向する2つの側面に設けられた一対の電極端子部とを含み、上記各振動板のうち、偶数番目の振動板の金属皮膜の各々を上記一方の電極端子部に電気的に接続し、奇数番目の振動板の金属皮膜の各々を上記他方の電極端子部に電気的に接続するとともに、上記スペーサをリング状の枠体とし、その一部分に上記振動板間の空気層を外気に連通させる通気手段を設けたことにより、小型でありながら有効静電容量が大きく、しかもエレクトレットを採用する必要がないことから、通常のチップ部品と同様に例えばリフローハンダ法によって回路基板に実装することができ、さらには音波に対する振動応答性が良好であるコンデンサマイクロホンユニットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるコンデンサマイクロホンユニットの構成を模式的に示す断面図。
【図2】上記コンデンサマイクロホンユニットの振動板積層部に含まれる一方の振動板および電極端子部と、スペーサを模式的に示す斜視図。
【図3】上記コンデンサマイクロホンユニットの振動板積層部の動作状態を示す模式的な断面図。
【符号の説明】
1 コンデンサマイクロホンユニット
10 振動板積層部
10a〜10j 振動板
21,22 電極端子部
30 スペーサ
31 溝(通気手段)
40 FET(インピーダンス変換器)
E FETの電源

Claims (3)

  1. それぞれが金属皮膜を有する複数枚の振動板を電気絶縁性のスペーサを介して積層してなる振動板積層部と、上記振動板積層部の対向する2つの側面に設けられた一対の電極端子部とを含み、上記各振動板のうち、偶数番目の振動板の金属皮膜の各々が上記一方の電極端子部に電気的に接続され、奇数番目の振動板の金属皮膜の各々が上記他方の電極端子部に電気的に接続されているとともに、上記スペーサがリング状の枠体からなり、その一部分に上記振動板間の空気層を外気に連通させる通気手段が設けられていることを特徴とするコンデンサマイクロホンユニット。
  2. 上記偶数番目の振動板と上記一方の電極端子部とが、また、上記奇数番目の振動板と上記他方の電極端子部とがそれぞれ合成樹脂材により一体成形されており、上記各振動板および上記各電極端子部の表面に上記金属皮膜が形成されている請求項1に記載のコンデンサマイクロホンユニット。
  3. 上記各電極端子部にインピーダンス変換器としての電界効果トランジスタが接続され、上記電界効果トランジスタの電源により、上記各振動板に対してバイアス電圧が加えられる請求項1またはに記載のコンデンサマイクロホンユニット。
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