JP3967190B2 - 色素を含む光硬化性樹脂組成物、及びそれを利用した光デバイスの製造方法 - Google Patents

色素を含む光硬化性樹脂組成物、及びそれを利用した光デバイスの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光照射をすることにより硬化する性質を有する光硬化性樹脂組成物のうち、色素を含む光硬化性樹脂組成物、およびその光硬化性樹脂組成物を用いた光デバイスの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光リソグラフィーは、高分子光導波路、高分子光ファイバー、光表示材料などの種々の光デバイスを作製する方法として有用である。この光リソグラフィーを利用した光デバイスの作製には、原料素材として、光照射によって光化学反応を起こし硬化するという性質を有する光硬化性樹脂組成物が用いられる。上記光硬化性樹脂組成物の中でも、機能性分子として色素を混ぜた光硬化性樹脂組成物を用いて作製された光導波路や光ファイバーは、通信用スイッチ、変換器などに、大きな付加価値を与える。このように、色素を含む光硬化性樹脂組成物は、様々な有機・高分子材料の光学的価値を高めることができるため、多くの利用可能性を有している。
【0003】
ところで、光リソグラフィーには、1光子吸収反応を利用した1光子リソグラフィーと、多光子吸収反応を利用した多光子リソグラフィーとがある。1光子リソグラフィーは、1次元または2次元の素子の作製を目的としており、現在最も一般的に用いられているアルゴンイオンレーザーやHe-Cdレーザーを用いるレーザーリソグラフィー法は、この1光子リソグラフィーの一例である。
【0004】
また、多光子リソグラフィーは、その基本原理は上記レーザーリソグラフィーと同じであるが、非線形光学現象である多光子吸収反応を利用したものであるため、最も光密度が高い集光点のみで光化学反応が起こり光硬化性樹脂組成物を硬化させることができる。そのため、多光子リソグラフィーを利用すれば、3次元の素子の作製が可能であるとともに、高精度なリソグラフィーが可能となる。即ち、上記多光子リソグラフィーは、高精度な多次元素子の製造に適したリソグラフィーである。さらに、一般的な1光子吸収のレーザーリソグラフィーでは、1μmの精度が限界であるのに対して、上記多光子リソグラフィーでは、0.5μm以下の精度で樹脂を硬化することが可能である。そのため、昨今、各種光デバイスを作製する方法として、多光子リソグラフィーが注目されてきている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この光リソグラフィーに用いられる光硬化性樹脂組成物は、一般的に、光化学反応を起こす高分子樹脂(プレポリマー)、プレポリマーの希釈剤としての多官能性の低分子(モノマー)、及び光化学反応を開始させるための開始剤から構成されている。上記プレポリマーには、通常ポリエステル系紫外線硬化樹脂である、図9(a)に示すアクリル酸/1,6−ヘキサンジオール/アクリル酸、あるいは、図9(b)に示す無水フタル酸/プロピレンオキサイド/アクリル酸、図9(c)に示すトリメリット酸/ジエチレングリコル/アクリル酸などが用いられる。また、上記開始剤は、光励起によって水素の引き抜きを起こすことで光化学反応を開始させる。
【0006】
しかしながら、色素を含む光硬化性樹脂組成物を調製する場合、上記プレポリマー、希釈剤、および開始剤の混合物に対する色素の溶解度は低く、充分な色素濃度を有する光硬化性樹脂組成物を調製することができない。さらに、このような色素を含む光硬化性樹脂組成物に対して光リソグラフィーを行うと、光励起された開始剤から色素へのエネルギー移動や電子移動が発生し、開始剤の働きは阻害されてしまう。また、多光子リソグラフィーによる光化学反応では、1光子リソグラフィーに比べて開始剤の励起状態への遷移確率が低いため、より高効率に光化学反応を起こさなければ、光硬化性樹脂組成物を硬化させることができない。
【0007】
本発明は、上述のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、光デバイスとして有用な濃度の色素を含み、光リソグラフィーに適した光硬化性樹脂組成物を提供することにある。さらに、本発明は色素を含む上記光硬化性樹脂組成物を使用して、光リソグラフィーによって光デバイスを製造する方法を提供するものでもある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願発明者等は、分岐状高分子物質であるデンドリマーが、物理的に色素を包括することに着目し、光硬化性樹脂組成物に含まれるプレポリマーとして上記デンドリマーを使用することによって、高濃度の色素を含む光硬化性樹脂組成物を調製することに成功し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の光硬化性樹脂組成物は、デンドリマーと、光化学反応を開始させるための開始剤と、色素とを含んでなることを特徴としている。
【0010】
上記の構成によれば、色素は上記デンドリマー中に包括されているので、光硬化性樹脂組成物への溶解性を高めることができ、その結果、高濃度に色素を含んだ光硬化性樹脂組成物を調製することができる。また、上記光硬化性樹脂組成物を光リソグラフィーなどの光照射によって硬化させる場合に、励起状態にある開始剤から色素へのエネルギー移動や電子移動を抑制することができる。従って、高効率に光化学反応を進行させ、樹脂を硬化させることができる。なお、本明細書において光硬化性樹脂組成物とは、光を照射することによって硬化し硬化樹脂となるような、プレポリマーおよび開始剤などを含む混合物のことを意味する。
【0011】
上記デンドリマーとしては、一般式(1)
【0012】
【化4】
Figure 0003967190
【0013】
【化5】
Figure 0003967190
【0014】
(式中、R、Rは独立して、水素、アルキル基、ベンジル基から成る群のうち、何れかを示すものである。)
で表されるエステル系デンドリマーであることが好ましい。
【0015】
さらに、上記RとRのうち、何れか一方が水素であり、他方がベンジル基であることが好ましい。
【0016】
また、上記色素は、蛍光色素であることが好ましく、上記蛍光色素の中でも特に、式(2)
【0017】
【化6】
Figure 0003967190
【0018】
で表される蛍光色素DCMであることがより好ましい。なお、蛍光色素とは、可視光線を選択的に吸収する色素のうち、自然放出により蛍光を発するものであり、その発光性を利用してレーザー発信に用いることができる。上記光硬化性樹脂組成物は、色素として蛍光色素を含むことによって、レーザー光源などの材料として有用性が高まる。
【0019】
本発明に係る光デバイスの製造方法は、光リソグラフィーによって上記光硬化性樹脂組成物を硬化させることを特徴としている。また、上記光リソグラフィーは多光子リソグラフィーであることが好ましい。
【0020】
これによれば、光デバイスに適当な濃度の色素を含ませることができるとともに、開始剤の働きが色素に阻害されることなく高精度の光リソグラフィーを実施でき、精密な光デバイスを得ることができる。従って、上記の製造方法によって得られる光デバイスに付加価値を与え、利用可能性を広げることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
光硬化性樹脂組成物は、光化学反応を起こす高分子樹脂(プレポリマー)と、上記光化学反応を開始させるための開始剤とを含み、紫外線などの光を照射することによって光化学反応を起こし、硬化するという性質を有する。上記光硬化性樹脂組成物は、光照射によって樹脂組成物中に含まれる各分子同士が架橋構造を形成し、硬化する。従って、上記光硬化性樹脂組成物は光架橋性高分子組成物と言うこともできる。
【0022】
本発明に係る光硬化性樹脂組成物は、上述のような光硬化性樹脂組成物のうち、プレポリマーとしてデンドリマーを使用し、さらに機能性分子として色素を含むものである。なお、上記光硬化性樹脂組成物にはさらに、デンドリマーの希釈剤として作用する多官能性の低分子(モノマー)などが含まれていてもよい。
【0023】
上記デンドリマーは、その一例を図1(a)に示すように、多くの分岐構造を有する高分子物質であり、球状のコンフォメーションをとっている。上記のような分岐構造を有することによって、デンドリマーは、その内部に色素を包括することができる。従って、後述の実施例においても示されるように、従来のプレポリマーと比較して、高濃度にDCMなどの色素を含む光硬化性樹脂組成物を調製することができる。
【0024】
さらに、上記光硬化性樹脂組成物を、光リソグラフィーによって光化学反応を起こして硬化させる場合に、色素によって上記開始剤の機能が阻害されることを防止することができる。即ち、上記光硬化性樹脂組成物において、色素はデンドリマー中に包括されており、開始剤との相互作用を弱くすることができる。このため、高効率に光リソグラフィーを行い、高精度の硬化パターンを形成することが可能となり、上記光硬化性樹脂組成物を用いて有用な光デバイスを作製することができる。なお、上記光硬化性樹脂組成物は、光の中でも特に紫外線によって硬化する性質を有するため、より具体的には紫外線硬化性樹脂組成物と言うこともできる。
【0025】
上記デンドリマーとして、具体的には例えば、図1(a)に示すエステル系デンドリマーあるいは、図4に示すようなポリアミドアミン系デンドリマー、図5に示すようなポリプロピレンイミン系デンドリマーなどを挙げることができる。しかしながら、上記ポリアミドアミン系およびポリプロピレン系デンドリマーは、使用する色素の種類によって色素の電子状態を変化させるため、使用できる色素が制限される。
【0026】
従って、上記デンドリマーとしては、エステル結合、エーテル結合、アミド結合などの中性の結合で構成されるエステル系デンドリマー、エーテル系デンドリマー、アミド系デンドリマーを用いることが好ましい。上記エステル系デンドリマーとしては、上述の図1(a)に示すものなどがある。上記エーテル系デンドリマーとして具体的には、例えば、図2に示すものを挙げることができ、本デンドリマーとして好適に使用することができると考えられる。上記アミド系デンドリマーとしては、例えば図3に示すものを挙げることができ、本デンドリマーとして好適に使用することができると考えられる。また、上記デンドリマーとして、ベンゼン環が含まれているものも可能である。しかし、上記光硬化性樹脂組成物を光素子として応用する場合には、ベンゼン環の吸収が紫外波長域に大きく現れるので、上記デンドリマーとしては、ベンゼン環を含まないものが好ましい。
【0027】
さらに、上記エステル系デンドリマーとして具体的には、例えば図1(a)に示す化学式で表されるようなエステル系デンドリマーを挙げることができる。図1(a)の化学式において、Rは末端にアクリロイル(acryloyl)基を有し、かつ水素結合性の高いものが好ましい。上記Rとして具体的には、例えば図1(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)に示す構造を挙げることができる。
【0028】
従って、言い換えれば上記エステル系デンドリマーは、一般式(1)
【0029】
【化7】
Figure 0003967190
【0030】
【化8】
Figure 0003967190
【0031】
(式中、R、Rは独立して、水素、アルキル基、ベンジル基から成る群のうち、何れかを示すものである。)
で表されるエステル系デンドリマーである。
【0032】
そして、上記の式中RおよびRは、図1(b)から(g)に順に示すように、何れか一方が水素であり、他方がグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニンの何れかのアミノ酸の側鎖であることが好ましい。
【0033】
さらに、上記の式中RおよびRは、図1(g)に示すように、何れか一方が水素であり、他方がベンジル基であることがより好ましい。この場合、光硬化性樹脂組成物に最大で1.0重量%の色素を含ませることができる。光硬化性樹脂組成物を光デバイスとして利用する場合、0.5重量%以上の色素濃度を有していれば、光デバイスとして有用である。従って、上記光硬化性樹脂組成物は、光デバイスとして好適に用いることができる。
【0034】
また、上記色素としては、有機系色素あるいは発光体としての金属クラスターや半導体微粒子など、種々の色素を使用することが可能である。特に色素レーザー用に開発されている有機系色素は、デンドリマーに包括することによって高濃度に導入することが可能であり、光デバイスとしての有用性が高まるため好適に用いられる。上記有機系色素として具体的には、例えば図6(a)から(l)に順に示すポリフェニル2、スチルベン1、スチルベン2、クマリン102、クマリン6、ローダミン110、ローダミン6G、スルフォローダミンB、DCM、ローダミン700、ピリジン2、スチリル9などを挙げることができる。上記色素を含むことによって、上記光硬化性樹脂組成物は、レーザー光の光源として有効に利用することが可能である。
【0035】
さらに上記希釈剤としては、アクリレート基などの重合性基を1個、2個ないし3個有し、低粘度、良溶解性、低揮発性のものを使用することが好ましい。また、重合性基を複数有する多官能性の希釈剤は、架橋性が大きく反応後に硬化物の構造の一部となるため、特に好ましい。上記希釈剤として、具体的には、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェート、テトラヒドロフルフリールアクリレート、ジシクロペンテニルオキシアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,3−ビス(3‘−アクリルオキシエトキシ−2’ヒドロキシプロピル)−5,5−ジメチルヒダントイン、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどを挙げることができる。
【0036】
また、上記開始剤は300〜450nmの紫外線領域の波長を吸収し、重合反応を開始させるものである。上記開始剤としては、紫外線を効率よく吸収してラジカル反応を開始しやすく、また、上記プレポリマーおよび上記希釈剤への溶解性が高く、腐食性および変色性が低いものが好ましい。上記開始材として、具体的には、4,4−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、ビアセチル、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、テトラメチルチウラムスルフィド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイドなどを挙げることができる。
【0037】
本実施の形態に係る光硬化性樹脂組成物は、上述のデンドリマー、希釈剤、開始剤および色素を種々の混合比で混合することによって得ることができる。なお、上記デンドリマーは、0.1重量%以上65重量%以下の割合で含まれることが好ましい。上記開始剤は、0.5重量%以上2重量%以下の割合で含まれることが好ましい。上記の構成によれば、上記光硬化性樹脂組成物内に色素を0.5重量%以上含ませることが可能であり、光デバイスとして有効に利用することができる。
【0038】
また、上記光硬化性樹脂組成物は、光リソグラフィーによって特定の部分を硬化させることで、高分子光導波路、高分子光ファイバー、光表示材料、光結晶などの光デバイスに有効に利用することができる。即ち、本発明に係る光デバイスの製造方法は、上記光硬化性樹脂組成物を光リソグラフィーによって硬化させることを特徴とするものである。ここで、光リソグラフィーとは、具体的には、微小な径のレーザーを光硬化性樹脂組成物などの感光性材料に走査することによって、上記感光性材料にパターンを形成する技術を言う。即ち、光硬化性樹脂組成物はレーザーが照射されると、照射された部位において、内部に含まれる開始剤が励起状態に移行して光化学反応を起こし、その部位が特異的に硬化される。従って、光硬化性樹脂組成物に対してレーザーを照射する位置を適宜調節することによって、所望のパターンの硬化樹脂を形成することができる。
【0039】
上記光硬化性樹脂組成物内では、多くの分岐を有するデンドリマーの構造によって色素が物理的に包括されているため、開始剤の励起が色素によって阻害されることを防ぐことができる。そのため、高効率に光化学反応を起こすことができる。そして、後述の実施例においても示されるように、プレポリマーとしてデンドリマーを使用して光リソグラフィーを行った場合、光デバイスとして有用な0.5重量%以上の色素を含む光硬化性樹脂を作製することができる。一方、後述の比較例においても示されるように、プレポリマーとして従来使用されている高分子樹脂を使用した場合、光デバイスとして有用な濃度の色素を含む光硬化性樹脂組成物を調製することができない。
【0040】
また、上記の光デバイスの製造方法は、光リソグラフィーの中でも特に、多光子リソグラフィーを用いて行うことが好ましい。
【0041】
上記多光子リソグラフィーは、多光子吸収反応を用いて行うものであり、平面的なパターンの作成を目的とした1光子リソグラフィーに対して、3次元的なパターンを作成して多次元素子を得ることができるという利点がある。また、多光子リソグラフィーは、1光子リソグラフィーと比較して、高精度のパターンを形成することも可能である。そのため、多光子リソグラフィーは、より精密で高集積化された多次元素子である光デバイスの作製方法として有用である。
【0042】
従って、上記光デバイスの製造に多光子リソグラフィーを用いれば、高濃度の色素を含み、かつ高精度な光デバイスを作製することが可能である。なお、多光子リソグラフィーは、上述のように開始剤の励起状態への遷移確率が低いため、より高効率な光化学反応を起こす必要があるが、本発明に係る光硬化性樹脂組成物を使用することで、光デバイスとして有効に利用できる濃度の色素を含んだものについても硬化させることができることが、以下の実施例においても示されている。
【0043】
本発明に係る光デバイスの製造方法によって得られた光デバイスは、上述のように、高分子光導波路、高分子光ファイバー、光表示材料、光結晶などとして有効に利用できる可能性がある。上記光デバイスの具体的な利用例としては、例えば色素の非線形光学現象を用いた変調器としての利用、あるいは、色素の発光を用いたレーザー光源としての利用が挙げられる。このように、上記光デバイスは、高付加価値を備えた光デバイスとして種々の用途に利用できる可能性を備えたものであると言える。
【0044】
【実施例】
以下、実施例および比較例により、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
【0045】
〔実施例〕
1.光硬化性樹脂組成物の調製
本実施例においては、公知文献:Michael A. Carnahan and Mark W. Grinstaff,Macromolecules, 34,7648-7655頁(2001)に記載の合成方法に基づき、図1(a)の化学式(この場合、RはOH基)で示される構造から、図1(a)の化学式で示される構造(この場合、Rは、図1(g)に示すアミノ酸基としてフェニルアラニンを有するアクリルアミド)を有するエステル系デンドリマーを合成した。より詳しくは、図1(a)の化学式(RはOH基)で示される物質を、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−フェニルアラニンと縮合し、ギ酸で処理した後、アクリル酸−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルと反応させることによって、図1(a)中の化学式で示されるエステル系デンドリマーのうち、Rとして図1(g)に示す構造を有するエステル系デンドリマーを合成した。
【0046】
また、本実施例においては、色素として図6(i)に示す蛍光色素DCMを、希釈剤としてトリメチルプロパントリアクリレート又は1,6−ヘキサンジオールジアクリレートを、開始剤として4,4−ビスジメチルアミノベンゾフェノンを使用した。
【0047】
まず、上記デンドリマーとDCMが混合された。上記デンドリマーは、球形構造のコンフォメーションを有しているため、内部にDCMを包括することができる。このように内部に種々の割合でDCMを包括したデンドリマーを0.1重量%以上65重量%以下の濃度で希釈剤と混合し、開始剤を0.5重量%の割合で加えて混合し、光硬化性樹脂組成物が調製された。
【0048】
その結果、最大で1.0重量%のDCMを上記光硬化性樹脂組成物中に溶解させ、均一な混合物とすることができた。なお、本実施例に使用した図1(a)に示すデンドリマーの機能材料としての利用方法は、未だ産業的に実用化されている例はなく、本研究によって初めて実用的な利用方法が見出された。
【0049】
2.色素を含む光硬化性樹脂組成物を用いた光リソグラフィー
上述の方法によって調製された色素DCMを含む光硬化性樹脂組成物について、公知文献:Brian H. Cumpston et al, Nature, vol.,Nature,vol.398,51-54頁(1999)に記載の方法に基づいて、2光子リソグラフィーが実施された。この2光子リソグラフィーには、図7に示す光学装置が使用された。
【0050】
上記光学装置は、図7に示すように、図示しない光源より近赤外フェムト秒レーザー(波長780nm、周波数80MHz、パルス幅<100フェムト秒)を矢印A方向にミラー1に向けて照射する。2光子リソグラフィーにおいては、2光子吸収過程で780nmの波長を有する光子を同時に2個吸収するため、半波長である390nmの紫外線領域の波長の吸収を励起できる。ミラー1に照射されたレーザーは、レンズ2を通過した後、ピンホール3内を通過する。続いて、上記レーザーはレンズ4を通過し、ビームスプリッター5によって分光される。分光された一部のレーザーは対物レンズ6(倍率80〜100倍、開口数NA=0.9)へ向けて照射される。対物レンズ6は、図中矢印B方向に上下移動することによって、レーザーの集光点を調節する。集光点が調節されたレーザーは、色素DCMを含む光硬化性樹脂組成物8が塗布されたスライドガラス7へ照射される。スライドガラス7は図中の矢印x・y・z方向にそれぞれ移動することが可能であるため、光硬化性樹脂組成物8に対して、3次元的な照射を行い、硬化反応を進めることができる。なお、ビームスプリッター5を介したスライドガラス7の反対側には、レンズ9およびCCDカメラ10が配置されており、光硬化性樹脂組成物8に対する硬化反応の様子を観察しながら、対物レンズ6およびスライドガラス7を移動させることができる。
【0051】
上述の構成の光学装置によれば、上記光硬化性樹脂組成物8に対して0.5μm以下の精度で2光子リソグラフィーを実施することができる。そして、本実施例においては、最大で1.0重量%のDCMを含んだ光硬化性樹脂組成物8に対して、良好な2光子リソグラフィーを行うことができた。
【0052】
上記光学装置を用いて、光硬化性樹脂組成物8に形成したパターンを図8に模式的に示す。図8(b)、(d)、(e)、(g)、(h)には、上記2光子リソグラフィーで光硬化性樹脂組成物8にレーザーを照射し、硬化された樹脂のパターンを光学顕微鏡によって捉えた光学顕微鏡像を模式的に示す。また、図8(a)、(c)、(f)は、上記光硬化性樹脂組成物8に形成された上記パターンを立体的に示した模式図である。
【0053】
図8(a)に示すように、上記光硬化性樹脂組成物8は、ある平面において、矢印Dに示す部分のようなドット状、あるいは矢印Eに示す部分のようなストライプ状のパターンを形成することができた。なお、図8(a)は、図8(b)中の矢印Dに示す部分を立体的に示す模式図であり、上記平面を基準として各ドットが柱状に一定の間隔で垂直に並んでいる様子を示す。図8(c)は、図8(b)中の矢印Eに示す部分を立体的に示す模式図であり、上記平面上に各ストライプが一定の間隔で並んでいる様子を示す。また、図8(d)および(e)は、それぞれ図8(b)中の矢印DおよびEに示す部分を拡大したものである。上記ドット状のパターンにおいては、図8(d)に示すように、各ドットの間隔が2.0μm、各ドット間の隙間が1.16μmになるような最密充填パターンを形成することができた。また、上記ストライプ状のパターンにおいては、図8(e)に示すように、50μmの幅の樹脂上に50本のストライプを形成することができた。即ち、図8(e)においては、各ストライプの間隔が1μmで線幅が0.51μm以下になるように配されている。
【0054】
そして、図8(g)には、上記光硬化性樹脂組成物8において、第1層(1st layer)から第4層(4th layer)まで、層状かつ格子状に順次硬化させた場合のパターンを示す。なお、図8(f)は、図8(g)に示す光学顕微鏡像を立体的に示した模式図である。さらに、図8(h)は、図8(g)中にFで示す部分を拡大して示したものである。この層状のパターンの形成においては、図8(h)に示すように、第2層(2nd layer)と第4層(4thlayer)との間隔、及び第1層(1st layer)と第3層(3rdlayer)との間隔を5μmに形成することが可能であった。
【0055】
以上のように、本実施例においては、2光子リソグラフィーによって光硬化性樹脂組成物8に高精度なパターンを形成することができた。
【0056】
〔比較例〕
比較例として、実施例に用いたデンドリマーの代わりにポリエステルアクリレート系紫外線硬化樹脂(東亞合成社製、M−8030又はM−8060又はM−7100)を使用して、実施例と同様の方法で光硬化性樹脂組成物の調製を試みた。
【0057】
しかしながら、上記ポリエステルアクリレート系紫外線硬化樹脂にDCMを包括させることはできないため、本比較例においては、光硬化性樹脂組成物に対してDCMを0.25重量%以上溶解させることはできなかった。
【0058】
さらに、種々のDCM濃度の上記光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例と同様の方法にて2光子リソグラフィーを行ったところ、DCM濃度が0.06重量%以下でなければ、光反応は進行せず、樹脂を硬化させることはできなかった。これは、光照射時に励起された開始剤がDCMの間でエネルギー移動を起こし、光化学反応に移行しないためと考えられる。なお、色素を含む光デバイスに付加価値を与えるためには、最低0.5重量%以上の色素濃度が必要とされるため、本比較例において得られた光硬化性樹脂組成物からは有用な光デバイスを得ることができないことがわかる。
【0059】
【発明の効果】
以上のように、本発明の光硬化性樹脂組成物は、機能性分子として色素を含み、かつ、プレポリマーとして分岐状高分子物質であるデンドリマーを用いたものである。
【0060】
上記光硬化性樹脂組成物は、上記デンドリマーの内部に物理的に色素を包括することができるため、従来のプレポリマーを用いた場合に比べ、高濃度に色素を含有することができる。それゆえ、上記光硬化性樹脂組成物は、光デバイスなどとして有効に利用できるという効果を奏する。
【0061】
本発明の光デバイスの製造方法は、上記光硬化性樹脂組成物を光リソグラフィーによって硬化させるという方法である。
【0062】
上記光硬化性樹脂組成物は、色素がデンドリマーによって包括された構造をとっているため、光リソグラフィーにおいて光化学反応を開始させる開始剤の働きが阻害されることなく、樹脂を確実に硬化させることが可能である。従って、上記の光デバイスの製造方法によれば、色素を含む光デバイスとして、種々の工業製品に使用することができる。即ち、有効な濃度の色素を含むことで、上記光デバイスひいては上記光デバイスを備えた工業製品などに高付加価値を付与することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る光硬化性樹脂組成物に含まれるデンドリマーの一例を示す化学式である。なお、(a)は、上記デンドリマーの全体の構造を示し、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)は、(a)に示すRの好ましい構造の例を示す化学式である。
【図2】 本発明に係る光硬化性樹脂組成物に含まれるエーテル系デンドリマーの一例を示す化学式である。
【図3】 本発明に係る光硬化性樹脂組成物に含まれるアミド系デンドリマーの一例を示す化学式である。
【図4】 本発明に係る光硬化性樹脂組成物に含まれるデンドリマーの他の例を示す化学式である。
【図5】 本発明に係る光硬化性樹脂組成物に含まれるデンドリマーの他の例を示す化学式である。
【図6】 (a)ないし(l)は、本発明に係る光硬化性樹脂組成物に含まれる色素の例を示す化学式である。
【図7】 本実施例における2光子リソグラフィーに用いられた光学装置を示す模式図である。
【図8】 本実施例において、光硬化性樹脂組成物に形成したパターンを示す模式図である。なお、(a)、(c)、(f)は、上記パターンを立体的に示す模式図であり、(b)、(d)、(e)、(g)、(h)は、上記パターンの光学顕微鏡像の模式図である。
【図9】 (a)、(b)、(c)は、従来の光硬化性樹脂組成物に含まれるプレポリマーの構造を示す化学式である。

Claims (5)

  1. デンドリマーと、光化学反応を開始させるための開始剤と、色素とを含んでなる光硬化性樹脂組成物であって、
    前記デンドリマーは、一般式(1)
    Figure 0003967190
    Figure 0003967190
    式中、R 、R は独立して、水素、アルキル基、ベンジル基から成る群のうち、何れかを示すものである。)
    で表されるエステル系デンドリマーであることを特徴とする光硬化性樹脂組成物
  2. 前記 とR のうち、何れか一方が水素であり、他方がベンジル基であることを特徴とする請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物
  3. 前記色素は、式(2)
    Figure 0003967190
    で表される蛍光色素DCMであることを特徴とする請求項1または2に記載の光硬化性樹脂組成物
  4. 請求項1ないし3の何れか1項に記載の光硬化性樹脂組成物を、光リソグラフィーによって硬化させることを特徴とする光デバイスの製造方法
  5. 前記光リソグラフィーは、多光子リソグラフィーであることを特徴とする請求項4に記載の光デバイスの製造方法。
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