JP3965776B2 - 試験システム - Google Patents
試験システム Download PDFInfo
- Publication number
- JP3965776B2 JP3965776B2 JP13619498A JP13619498A JP3965776B2 JP 3965776 B2 JP3965776 B2 JP 3965776B2 JP 13619498 A JP13619498 A JP 13619498A JP 13619498 A JP13619498 A JP 13619498A JP 3965776 B2 JP3965776 B2 JP 3965776B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- vehicle
- clutch
- torque
- shift
- engine
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Lifetime
Links
Images
Landscapes
- Testing Of Engines (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、変速機やクラッチなどの車両関連装置も含めて車両を路上又はダイナモメータ上で走行運転した状態をシミュレーションすることにより、車両の完成前にエンジンベンチで走行状態を再現して排気ガスや燃費性能等をテストする試験システムに係り、特に試験に際して発進又は変速時に車両関連装置に生じる動的負荷も含めてテストする試験システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
新型車両の開発には、エンジンから試作車の路上走行試験まで各種の性能試験を必要とする。これら試験を室内で模擬的に行うには、エンジンの出力軸に動力負荷としてのダイナモメータを結合した試験や、エンジンからクラッチ・トルクコンバータ・変速機、ディファレンシャルギヤ、タイヤまでの動力伝達系の各関連装置を単独で又はその組み合わせでダイナモメータに結合した試験になる。
【0003】
この種の試験システムにおいて、試作車の完成に先立って、エンジンの開発段階で実走行状態のシミュレーションを行うことができれば、開発期間の短縮や開発費用の低減を図ることができる。
【0004】
例えば、走行状態のシミュレーションは、試作車の完成段階では運転パターンに従って設定する車速や路面勾配さらには慣性抵抗に応じて車両の走行抵抗を求め、これをダイナモメータが吸収する負荷としてローラを介して試作車のタイヤと結合した試験になる。
【0005】
これに対して、エンジンの完成段階でエンジンにダイナモメータを直結し、車両のタイヤに加わる走行抵抗を基に、車両の動力伝達系の変速比や効率からエンジンの出力軸に加わるトルク負荷をシミュレーションで求め、これをダイナモメータが吸収する負荷として設定することでエンジンの排気ガスや燃費性能等をテストできる。
【0006】
このシミュレーションによる試験は、定常状態での走行抵抗を模擬するものである。これに加えて、実走行時に発生するパワートレインねじり振動や、タイヤ車体サスペンション系のピッチング振動、エンジンマウンティング振動などもシミュレーションすることでダイナモメータが発生すべき負荷をより正確に求めようとする方法もある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
(第1の課題)
従来の試験システムは、運転パターンに従った定常走行状態でのシミュレーション試験であり、運転パターンに含まれる発進時及び変速時に発生する動力変化が考慮されておらず、これら動的負荷を考慮した高精度のシミュレーション試験にはならない。
【0008】
すなわち、マニュアルトランスミッション(M/T)車の発進時及び変速時は、実走行ではエンジンのスロットル開度が0%になって回転数が一時的に低下し、動力伝達系ではクラッチの切り入れと変速機の変速操作が行われてトルク変化を起こすが、これら動的負荷も含めたシミュレーションがなされていない。
【0009】
同様に、自動変速機を搭載するA/T車の発進時及び変速時にも実走行時のエンジン及びトルクコンバータ・自動変速機の挙動も含めたシミュレーションがなされていない。
【0010】
本発明の目的は、動力伝達系のシミュレーションによる試験に際して、車両の発進時及び変速時の挙動も含めた試験ができる試験システムを提供することにある。
【0011】
(第2の課題)
従来の試験システムにおいて、シミュレーションのための各種のデータは、実走行における運転者のアクセル及び変速操作データと、このときのエンジンや車速の変化をデータとして収集することを必要とする。
【0012】
このデータ取得を試作車の完成前に可能とするには、各データを実験式や過去の現象から経験的に設定することが考えられるが、複雑で困難な設定になり、簡便な設定と試験ができない。
【0013】
本発明の目的は、試作車の完成前のシミュレーション試験のための各種データ取得を簡便にする試験システムを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、変速機などの動力伝達系の定常走行状態のシミュレーションに加えて、クラッチや変速機などの発進・変速時の動的負荷もシミュレーションした走行シミュレーション試験を可能にし、さらに動的負荷のシミュレーションには車両関連装置のトルク容量という概念を導入し、これにクラッチのすべり損失も含めた動的負荷を設定することにより、シミュレーションを簡便にかつ高い精度を得るものであり、以下の試験システムを特徴とする。
【0015】
エンジンにダイナモメータを直結し、車両の運転モードに従って前記エンジンをそのスロットル制御により回転数又はスロットル開度制御し、車両の走行抵抗を求め、動力伝達系の定常走行状態のシミュレーションによって前記走行抵抗に対する前記ダイナモメータが発生すべきトルク負荷を求め、車両の走行シミュレーション試験を行う試験システムにおいて、
車両の発進時又は変速時の前記動力伝達系の動的負荷をシミュレーションで求める手段のうち、手動変速機を搭載するM/T車のクラッチ操作量とクラッチのトルク容量からM/T車の前記動的負荷を求めるクラッチトルク容量設定部と、
車両の発進時又は変速時のクラッチ操作量に対するクラッチ伝達トルクの立ち上がりで発生するクラッチのすべり損失を求めるすべり損失設定部と、
前記定常走行状態のシミュレーションによって求めたトルク負荷に前記動的負荷及びすべり損失を加えて前記ダイナモメータのトルク負荷を制御する手段とを備えたことを特徴とする。
【0017】
また、車両の発進時又は変速時の前記動力伝達系の動的負荷をシミュレーションで求める手段のうち、自動変速機を搭載するA/T車のトルクコンバータ特性のトルク容量からトルクコンバータの前記動的負荷を求めるトルクコンバータ特性設定部と、自動変速機のクラッチ・ハンドブレーキ特性のトルク容量から自動変速機の前記動的負荷を求めるクラッチ・ハンドブレーキ特性設定部とを備えたことを特徴とする。
【0018】
また、車両の実走行での変速操作が設定され、前記車速又はスロットル開度の計測値から車両の発進又は変速タイミングを得て前記動的負荷を発生するための発進又は変速指令を発生する変速指令発生部と、
車両の発進又は変速時の前記クラッチ操作量及びスロットル開度がテーブルデータとして設定され、前記変速指令発生部が発進又は変速指令を発生したときにスロットル開度テーブルデータに従って前記エンジンのスロットル開度制御データを発生しかつ前記クラッチ操作量を前記クラッチトルク容量設定部及びすべり損失設定部に与える発進・変速制御テーブルとを備えたことを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施形態を示すエンジンベンチによる走行シミュレーションのための全体システム構成である。
【0020】
供試エンジン1は、その出力軸にダイナモメータ2が負荷として直結される。供試エンジン1のスロットル開度又は回転速度制御は、パワー部3とアクチェータ3Aからなるスロットルアクチェータによりスロットル開度のフィードバック制御でなされる。
【0021】
ダイナモメータ2が発生するトルクは、供試エンジン1を搭載する車両を実走行させたときのクラッチや変速機、ディファレンシャルギヤ等の動力伝達系及び慣性も含めたエンジン出力軸換算の走行抵抗がシミュレーションによって求められる。
【0022】
さらに、ダイナモメータ2が発生する負荷トルクとして、定常走行時の走行抵抗の他に発進・変速時の動的負荷がシミュレーションで求められる。
【0023】
これにより、試作車の完成を待つことなく、動的負荷も考慮したエンジン1の走行シミュレーション試験を可能にし、排気ガスや燃費試験ができる。
【0024】
本システムのダイナモメータ2は、誘導電動機で構成する場合を示し、負荷トルクの制御にはインバータ型制御装置4で制御される。ダイナモメータ2を直流機で構成する場合には、直流電動機制御装置でトルク制御される。
【0025】
計測制御装置5は、プロセスコントローラ7を計測制御中枢部とし、キーボード6やCRT8になるマンマシンインタフェースと制御ユニット9で構成される。この計測制御装置5は、走行シミュレーション試験のための計測制御プログラム及び運転モードデータなどの各種データがプロセスコントローラ7にロードされ、マンマシンインタフェースによりオペレータからの設定がなされる。
【0026】
また、計測制御装置5は、制御ユニット9によりエンジン及びダイナモメータの制御に必要なエンジン回転数やスロットル開度、ダイナモメータ速度、トルクなどの各種計測データを取り込み、制御する。
【0027】
図2は、図1に示すシステム構成における計測制御装置5が持つ制御機能ブロック図である。
【0028】
運転モード設定部21は、エンジン1とダイナモメータ2を直結した走行シミュレーション試験のための運転モードが設定される。この運転モードは、排気ガス試験における10−15モード等に設定され、時刻t毎の速度Vのデータ列になって加速と定速及び減速のパターンとして設定される。また、M/T車の試験には車速に応じた変速指令も設定される場合もある。
【0029】
路面勾配設定部22は、走行シミュレーション試験のための路面勾配が設定される。この路面勾配は、走行距離L毎の路面勾配θのデータ列になってパターン設定される。
【0030】
車両諸元設定部23は、変速機の変速数、変速比や、ディファレンシャルギヤの減速比、タイヤ径など車両に搭載しようとする関連装置の設計データが設定される。
【0031】
車速演算部24は、エンジン1の計測データとして得る回転速度ωEと車両諸元設定部23に設定する変速比や減速比等から車速Vを求める。
【0032】
例えば、図3の(a)に示すM/T車の車両構成では、エンジンE/GからクラッチC/L、変速機M/T、ディファレンシャルギヤD/Fを経てタイヤTIREまでの動力伝達機構になり、エンジンE/Gの回転速度ωEに対して変速機T/Mの変速比imやディファレンシャルギヤD/Fの減速比iDでタイヤTIREの回転数が決まり、これにタイヤ径Rtと係数を乗じて求めたタイヤ周速度が車速Vになる。
【0033】
また、図3の(b)に示すA/T車の場合には、(a)のクラッチC/Lに代えたトルクコンバータT/Cと、手動変速機M/Tに代えた自動変速機A/Tを持つ機構になるが、M/T車と同様の演算で車速Vが求められる。
【0034】
走行抵抗演算部25は、車速Vと路面勾配θと車重W等の車両諸元から走行抵抗TCを求める。この走行抵抗は、タイヤ周面が路面から受ける力Fとして求められ、下記式の演算により求められる。なお、式中のA,B,Cは、車両の形状で決まる定数であり、右辺第1項は路面勾配抵抗分、第2項は転がり抵抗や風損からなる走行抵抗分、第3項は慣性抵抗分になる。
【0035】
【数1】
【0036】
エンジン出力トルク演算部26は、走行抵抗演算部25で求めた走行抵抗Fを基に、車両の動力伝達機構(例えば図3の機構)における変速比や動力伝達効率を演算係数としてエンジンの出力軸にかかるトルク負荷TEとして求める。この演算は、動力伝達機構のシミュレーションで求める。
【0037】
例えば、図3のM/T車の場合、タイヤ軸のトルクTFと回転速度ωFは、動力伝達効率を100%とすると下記式による演算で求められる。なお、以下の演算は、A/T車の場合も同様になる。
【0038】
【数2】
【0039】
また、変速機M/Tの入力軸のトルクTCと回転速度ωCは、下記式による演算で求められる。これらは、クラッチC/Lが完全に結合した状態ではエンジン出力軸のトルクTE及びωEに一致する。なお、iDはディファレンシャルギヤD/Fの減速比、imは変速機M/Tの変速比である。
【0040】
【数3】
【0041】
上記のエンジン出力トルク演算部26は、走行抵抗Fからエンジンの出力軸にかかるトルク負荷TE及び速度ωEを求めるものであり、これは車両の定常走行状態でのシミュレーション試験になる。
【0042】
これに対して、エンジン出力トルク演算部26A及び26Bは、実走行時に発生するパワートレインねじり振動や、タイヤ車体サスペンション系のピッチング振動、エンジンマウンティング振動なども含めたシミュレーション演算を行い、走行抵抗Fからエンジンの出力軸にかかるトルク負荷TE及び速度ωEを求める。例えば、演算部26Aは、パワートレインねじり振動とクラッチC/Lの結合挙動を含めたシミュレーション演算を行う。
【0043】
ここで、ダイナモメータトルク演算部27は、エンジン出力トルク演算値からダイナモメータ自身の慣性分を差し引いてダイナモメータの制御値TDを求める。これをダイナモメータの制御指令部28に与えることでダイナモメータ2の吸収トルクを制御できる。
【0044】
従って、エンジン出力トルク演算部26(又は26A,26B)で求めたトルク負荷TE及び速度ωEをダイナモメータトルク演算部27に直接に与えることで走行シミュレーション制御ができる。
【0045】
しかし、この場合には図3の(a)又は(b)に示したような動力伝達機構での発進・変速時の動的負荷も含めたシミュレーション制御がなされていない。
【0046】
本実施形態では、発進・変速時の動的負荷も含めたシミュレーション制御による試験システムを提供するものである。これを以下に詳細に説明する。
【0047】
図2において、変速指令発生部29は、実車におけるドライバーの運転操作内容をテーブルデータとして設定するものである。このテーブルデータが設定された変速指令発生部29は、走行シミュレーション試験における現在車速とエンジン1のスロットル開度θの変化をテーブルデータと比較することにより、発進又は変速タイミングを判定し、これを発進・変速指令として発生する。なお、発進・変速データは、運転モード設定部21で設定される場合もある。
【0048】
図4は、変速指令発生部29のテーブルデータを例示し、同図の(a)に示すM/T車の場合は、車速Vが設定車速V1,V2,V3を越えたときに1速から2速、2速から3速、3速から4速へのシフトアップ指令を発生し、V4,V5,V6以下になったときに4速から3速、3速から2速、2速から1速へのシフトダウン指令を発生する。同図の(b)に示すA/T車の場合は、速度Vの他にスロットル開度θを含めた2変数でテーブル設定し、この設定領域を越えたときにシフトアップとシフトダウンの変速指令を発生する。
【0049】
図2に戻って、変速判定部30は、変速指令発生部29から変速指令が発生されたか否かを判定する。この判定から、変速時を除く通常時には運転モード発生部21からの車速指令をスロットル制御指令部31に与え、スロットル制御指令部31が運転モード発生部21からの速度指令に従ってエンジン1の速度制御を行う。
【0050】
発進・変速制御テーブル32は、走行シミュレーション試験での発進又は変速時のクラッチ操作量及びスロットル開度θをテーブルデータとして設定するもので、M/T車のデータ例を図5に示す。
【0051】
例えば、図5の発進時には時刻t1でクラッチ操作を開始し、時刻t2からクラッチ円板に摩擦力が発生し始めて半クラッチ状態にし、エンジンとの同期回転に近づいた時刻t3からクラッチの完全結合操作に入る。これに並行して、スロットル開度θは、0から開度を高め、クラッチとエンジンとの同期回転に近づいた時から開度をさらに高めて加速する。
【0052】
図2に戻って、変速判定部30が発進又は変速と判定したとき、発進・変速制御テーブル32から読み出したスロットル開度θをスロットル制御指令部31への制御指令にし、エンジン1をスロットル開度制御(AθR)する。
【0053】
これに並行して、発進・変速制御テーブル32から読み出したクラッチ操作量データは、クラッチトルク容量設定部33に与えられる。
【0054】
このクラッチトルク容量設定部33は、発進時又は変速時にクラッチ円板のすべりで発生するトルク損失を求めるために導入する概念であり、クラッチ操作量に対するクラッチ円板とフロントプレート及びプレッシャプレートの間のトルク伝達の挙動から求める。
【0055】
図6は、発進時のクラッチトルク容量とこれに関連するものを示す。同図の(a)にはクラッチトルク容量τをエンジントルクTEとの関係で示し、(b)には発進時のエンジン回転数ωE及びクラッチ回転数ωCの変化を示し、(c)には発進時のエンジン及びダイナモメータへの制御指令を示す。
【0056】
同図の(a)に示すクラッチトルク容量τは、クラッチ操作量が半クラッチ状態でのエンジン最大トルクTEMAXに対するクラッチトルクTCの比率(TC/TEMAX)としてあらかじめ設定される。この設定は、クラッチ操作開始でクラッチ円板に摩擦力が発生し始める時刻t0から増加していき、クラッチが回転を始める時刻t1を経て時刻t2でエンジンとクラッチが完全に結合する。
【0057】
これに並行して、エンジン回転数ωEは、スロットル開度制御によりアイドリング回転数ωE0から加速され、クラッチが回転を始める時刻t1からは減速され、クラッチが完全に結合した時刻t2から再び加速される。
【0058】
図6の期間(t1−t0)では、エンジントルクTEはクラッチでの熱損失及びエンジン回転数ωEの加速力に使用され、クラッチ回転数ωC=0で車両の駆動力は0になる。その関係式は、エンジンの慣性IEから以下のようになる。
【0059】
【数4】
【0060】
次に、期間(t2−t1)では、エンジントルクTEがクラッチトルク容量τよりも小さくなり、エンジントルクTEはクラッチでのすべり損失を無視すれば車両の駆動力に消費され、車速が加速される。そして時刻t2でエンジン回転数ωEとクラッチ回転数ωCが一致する。このときの関係式はTE=TCとなる。
【0061】
以上のことから、クラッチトルク容量設定部33にクラッチトルク容量τを設定することにより、M/T車の発進・変速時の動的負荷が求められる。この動的負荷は図6の(a)における斜線部分に相当し、これを発進・変速時にはダイナモメータトルク演算部27でのトルク演算をエンジン出力トルク演算部26(又は26A,26B)からの走行抵抗演算値に含ませることにより、発進・変速時を含めたM/T車の走行シミュレーション試験ができる。
【0062】
発進・変速時の判定は、M/T車の発進・変速判定部34により変速指令発生部29から発進・変速指令が与えられているか否かで行われる。また、発進・変速時のダイナモメータトルク演算部27での制御トルクTDは、ダイナモメータの慣性補償を無視すれば、図6の期間(t1−t0)ではTD=TC/L、期間(t2−t1)ではTD=TC=TEとなる。
【0063】
次に、A/T車の走行シミュレーション試験における負荷設定を説明する。A/T車の走行シミュレーション試験に際しては、トルクコンバータ特性設定部35によりトルクコンバータでのトルク損失になるトルク容量を求め、自動変速機のクラッチ・ハンドブレーキ特性設定部36及び発進・変速判定部37により発進・変速時の動的負荷を求め、これらを発進・変速時にはダイナモメータトルク演算部27でのトルク演算をエンジン出力トルク演算部26(又は26A,26B)からの走行抵抗演算値に含ませることにより、発進・変速時を含めたA/T車の走行シミュレーション試験を行う。
【0064】
発進・変速判定部37は、変速指令発生部29による判定によって発進・変速時のみクラッチ・ハンドブレーキ特性を含めたダイナモメータトルク演算を指令する。
【0065】
A/T車は、図7にモデルで示すように、エンジンE/GからトルクコンバータT/C及び自動変速機A/Tを経て駆動系に結合される。
【0066】
トルクコンバータT/Cは、図8に示す特性になる。インペラ(入力軸)とタービン(出力軸)の速度比eが0からクラッチポイントに達するまでのトルクコンバータレンジでは、トルク比tが値2から1まで低下すると共に、トルク伝達効率ηが上昇及び飽和してくる。また、クラッチポイントを越えた流体継手レンジに入るとトルク比tが値1になると共に、効率ηも100%に向けて上昇する。
【0067】
そこで、トルクコンバータ特性設定部35は、トルクコンバータ特性から求める動的負荷として、図8に示すように、発進・変速時のトルク容量τを設定する。このトルク容量τは、エンジン速度ωEとエンジントルクTEからTE/ωE 2として求める。
【0068】
次に、自動変速機は、図7におけるクラッチとハンドブレーキのオン/オフ操作により変速動作を得る。例えば、1速から2速へのシフトアップ時にはハンドブレーキをオンからオフにすると共に、クラッチをオフからオンにする。
【0069】
このことから、クラッチ・ハンドブレーキ特性設定部36における発進・変速時の自動変速機の動的負荷として、図9に示すハンドブレーキトルク容量及びクラッチトルク容量を設定し、同図の斜線部分が動的負荷になる。
【0070】
以上のように、A/T車の走行シミュレーション試験には、発進・変速時にトルクコンバータ及び自動変速機で発生する動的負荷も含めてダイナモメータのトルク負荷を制御することができる。
【0071】
以上までの発進・変速時の動的負荷の算定は、M/T車ではクラッチトルク容量設定部33によってクラッチの伝達トルクのみを係数設定し、A/T車ではクラッチハンドブレーキ特性設定部36におけるクラッチトルク容量によってクラッチの伝達トルクのみを係数設定している。
【0072】
これら係数設定により求めるクラッチでの動的負荷は、発進・変速時のシミュレーション結果の方が実車走行により計測したトルク伝達態様に比べて立ち上がり易い傾向になる。これは、クラッチ結合完了時の係数を重視して値を決めるためであるが、実際には発進・変速開始の初期にクラッチがすべってトルク伝達は殆ど発生していないことに因ると考えられる。このクラッチのすべりによる動力損失は、図10に示すようになり、クラッチ結合係数の設定に対して実際のクラッチ伝達トルクが上昇するまでにはクラッチのすべりが介在し、斜線部分で示す期間に動力損失が発生する。
【0073】
本実施形態では、これら動力損失を含めた高い精度のシミュレーションを可能にするため、すべり損失設定部38を設ける。このすべり損失設定部38は、発進・変速判定部34がM/T車の発進・変速を判定したとき、又は変速判定部37がA/T車の変速を判定したときに設定動作を開始し、発進・変速制御テーブル32からのクラッチ操作量(結合係数)に対するクラッチのすべりによる損失をテーブルデータとして持つか又は演算により求め、このすべり損失はM/T車とA/T車別に求め、これをダイナモメータトルク演算部27からの制御値TDと共に制御指令部28に与える。
【0074】
これにより、発進・変速時のクラッチのすべり損失も含めたシミュレーションを行うことができ、発進・変速時のトルクの立ち上がり態様を実走行時のそれに合わせた再現性の良いシミュレーションを行うことができる。
【0075】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば、変速機などの動力伝達系の定常走行状態のシミュレーションに加えて、クラッチや変速機などの発進・変速時の動的負荷もシミュレーションした高精度の走行シミュレーション試験ができる。
【0076】
また、動的負荷のシミュレーションには車両関連装置のトルク容量という概念を導入するため、変速指令発生部へのドライバーの運転操作の設定と、発進・変速制御テーブルへのデータ設定によって走行シミュレーション試験ができ、従来の各種データ取得と設定に比べて簡便な設定で済む。
【0077】
特に、動的負荷をトルク容量から求めるのに、すべり損失も含めて求めるため、発進・変速時の動的負荷を実車走行に精度良く一致させたシミュレーション試験ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す全体システム構成図。
【図2】実施形態における制御機能ブロック図。
【図3】車両の動力伝達機構。
【図4】変速指令発生部29の変速指令テーブル。
【図5】発進・変速制御テーブルのM/T車発進・変速制御テーブル。
【図6】クラッチ容量の説明図。
【図7】A/T車のモデル。
【図8】A/T車のトルクコンバータ特性。
【図9】自動変速機のトルク容量。
【図10】クラッチ結合係数とすべり損失の関係。
【符号の説明】
1…エンジン
2…ダイナモメータ
5…計測制御装置
6…プロセスコントローラ
9…制御ユニット
21…運転モード発生部
24…車速演算部
25…走行抵抗演算部
26、26A、26B…エンジン出力トルク演算部
27…ダイナモメータトルク演算部
29…変速指令発生部
32…発進・変速制御テーブル
33…クラッチトルク容量設定部
35…トルクコンバータ特性設定部
36…クラッチ・ハンドブレーキ特性設定部
38…すべり損失設定部
Claims (3)
- エンジンにダイナモメータを直結し、車両の運転モードに従って前記エンジンをそのスロットル制御により回転数又はスロットル開度制御し、車両の走行抵抗を求め、動力伝達系の定常走行状態のシミュレーションによって前記走行抵抗に対する前記ダイナモメータが発生すべきトルク負荷を求め、車両の走行シミュレーション試験を行う試験システムにおいて、
車両の発進時又は変速時の前記動力伝達系の動的負荷をシミュレーションで求める手段のうち、手動変速機を搭載するM/T車のクラッチ操作量とクラッチのトルク容量からM/T車の前記動的負荷を求めるクラッチトルク容量設定部と、
車両の発進時又は変速時のクラッチ操作量に対するクラッチ伝達トルクの立ち上がりで発生するクラッチのすべり損失を求めるすべり損失設定部と、
前記定常走行状態のシミュレーションによって求めたトルク負荷に前記動的負荷及びすべり損失を加えて前記ダイナモメータのトルク負荷を制御する手段とを備えたことを特徴とする試験システム。 - 車両の発進時又は変速時の前記動力伝達系の動的負荷をシミュレーションで求める手段のうち、自動変速機を搭載するA/T車のトルクコンバータ特性のトルク容量からトルクコンバータの前記動的負荷を求めるトルクコンバータ特性設定部と、自動変速機のクラッチ・ハンドブレーキ特性のトルク容量から自動変速機の前記動的負荷を求めるクラッチ・ハンドブレーキ特性設定部とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の試験システム。
- 車両の実走行での変速操作が設定され、前記車速又はスロットル開度の計測値から車両の発進又は変速タイミングを得て前記動的負荷を発生するための発進又は変速指令を発生する変速指令発生部と、
車両の発進又は変速時の前記クラッチ操作量及びスロットル開度がテーブルデータとして設定され、前記変速指令発生部が発進又は変速指令を発生したときにスロットル開度テーブルデータに従って前記エンジンのスロットル開度制御データを発生しかつ前記クラッチ操作量を前記クラッチトルク容量設定部及びすべり損失設定部に与える発進・変速制御テーブルとを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の試験システム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP13619498A JP3965776B2 (ja) | 1998-05-19 | 1998-05-19 | 試験システム |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP13619498A JP3965776B2 (ja) | 1998-05-19 | 1998-05-19 | 試験システム |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH11326138A JPH11326138A (ja) | 1999-11-26 |
JP3965776B2 true JP3965776B2 (ja) | 2007-08-29 |
Family
ID=15169549
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP13619498A Expired - Lifetime JP3965776B2 (ja) | 1998-05-19 | 1998-05-19 | 試験システム |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3965776B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN105445041A (zh) * | 2015-12-31 | 2016-03-30 | 中国人民解放军装甲兵工程学院 | 一种轻型无人车参数测试平台 |
Families Citing this family (8)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4728495B2 (ja) * | 2000-03-14 | 2011-07-20 | 本田技研工業株式会社 | 変速制御装置の開発支援装置 |
JP4728526B2 (ja) * | 2000-08-11 | 2011-07-20 | 本田技研工業株式会社 | 車両用自動変速機の制御装置の開発支援装置 |
JP4728525B2 (ja) * | 2000-08-11 | 2011-07-20 | 本田技研工業株式会社 | 車両用自動変速機の制御装置の開発支援装置 |
JP4581470B2 (ja) * | 2004-04-26 | 2010-11-17 | シンフォニアテクノロジー株式会社 | インバータ試験装置 |
JP2006170944A (ja) * | 2004-12-20 | 2006-06-29 | Nippon Soken Inc | 駆動モータを搭載した車両の走行状態模擬装置および走行模擬試験システム |
CN112697458B (zh) * | 2020-12-16 | 2023-11-10 | 西安顺通机电应用技术研究所 | 一种摩托车离合器性能试验台模拟自动爬坡装置及方法 |
CN113188813A (zh) * | 2021-05-12 | 2021-07-30 | 中国第一汽车股份有限公司 | 一种锁止总成的测试装置 |
CN114018614B (zh) * | 2021-11-05 | 2024-04-12 | 江苏汇智高端工程机械创新中心有限公司 | 一种平地机载荷谱的获取方法和系统 |
-
1998
- 1998-05-19 JP JP13619498A patent/JP3965776B2/ja not_active Expired - Lifetime
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN105445041A (zh) * | 2015-12-31 | 2016-03-30 | 中国人民解放军装甲兵工程学院 | 一种轻型无人车参数测试平台 |
CN105445041B (zh) * | 2015-12-31 | 2018-05-22 | 中国人民解放军装甲兵工程学院 | 一种轻型无人车参数测试平台 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH11326138A (ja) | 1999-11-26 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US7908066B2 (en) | Powertrain of a motor vehicle and method for controlling said powertrain | |
CN108414244B (zh) | 一种电动汽车动力总成实车模拟试验台架及其试验方法 | |
US7356400B2 (en) | Clutch control apparatus and method | |
CN101612936B (zh) | 混合动力电动车辆中变速器的输出扭矩调节控制 | |
JP5223603B2 (ja) | ハイブリッド車両の制御装置 | |
JP5401560B2 (ja) | 自動化車両マスタークラッチの解放を制御する方法及び装置 | |
CN102305715A (zh) | 一种用于汽车动力系统测试的动态负载模拟装置及方法 | |
US9360395B2 (en) | Method and device for dynamometer testing of a motor vehicle | |
JP3671565B2 (ja) | 試験システム | |
CN106895981A (zh) | 一种汽车传动系试验台架加速惯量电模拟控制方法 | |
JP7199133B2 (ja) | 音信号生成装置、音信号生成方法及び音信号生成用プログラム | |
JP3965776B2 (ja) | 試験システム | |
US9879769B2 (en) | Torque converter clutch slip control | |
JPH08219953A (ja) | 車両エンジンの実働負荷評価試験装置 | |
CN107914699A (zh) | 混合动力电动车辆的控制方法 | |
CN102126498B (zh) | 控制车辆动力传动系统中车轮跳动的方法 | |
CN108386535A (zh) | 一种双离合起步协调优化控制方法 | |
Cikanek et al. | Parallel hybrid electric vehicle dynamic model and powertrain control | |
CN111547033A (zh) | 变矩器离合器打滑的模型预测控制 | |
CN105980188B (zh) | 车辆用控制装置 | |
Cikanek et al. | Control system and dynamic model validation for a parallel hybrid electric vehicle | |
JP2002022618A (ja) | トルクシミュレータ | |
JP3595462B2 (ja) | エンジン試験装置 | |
Li et al. | Modelling and measurement of transient torque converter characteristics | |
US7689339B2 (en) | Vehicle driving force control apparatus and driving force control method |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20040823 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20060417 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20060808 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20061003 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20070508 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20070521 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110608 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110608 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120608 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130608 Year of fee payment: 6 |
|
EXPY | Cancellation because of completion of term |