JP3965557B2 - マルチピースゴルフボール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マルチピースゴルフボールに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ツーピースソリッドゴルフボールとしては、ブタジエンゴム製のコアとアイオノマー樹脂製のカバーとからなるものが主流である。また、近年は、打撃時のソフトフィーリングおよびコントロール性を向上させるために、コアとカバーとの間に柔らかい材料からなる中間層を設けたり、カバーを柔らかい材料からなるものとしたマルチピースソリッドゴルフボールも用いられている。
【0003】
ここで、ゴルフボールにおいては、ソフトフィーリングおよびコントロール性と飛距離とを兼ね備えることが求められる。
【0004】
このようなゴルフボールとして、高い反発弾性を有するポリウレタン系樹脂を中間層材料またはカバー材料として用いたマルチピースソリッドゴルフボールが提案されている。例えば、特開平11-253580号公報は、中間層またはカバーが、所定硬度および所定反発弾性率を有する熱可塑性ポリウレタンエラストマーを基材として形成されたマルチピースソリッドゴルフボールを開示している。
【0005】
しかし、熱可塑性ポリウレタンエラストマーを基材とする層を有するゴルフボールは、熱可塑性ポリウレタンエラストマーの種類や隣接する層の材質によっては、熱可塑性ポリウレタンエラストマー基材層と隣接層との密着性が悪い場合がある。その結果、打撃時のエネルギーロスが大きくなり飛距離が低下したり、耐久性が悪い場合がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ソフトフィーリングと飛距離とを兼ね備えるとともに、各層間の密着性が良好なマルチピースゴルフボールを提供することを主目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明者は研究を重ね、以下の知見を見出した。▲1▼ マルチピースゴルフボールにおいて、カバー又は1若しくは複数の中間層のうちの所定の層が熱可塑性ポリウレタンエラストマーを基材とする層である場合には、この層に隣接する層を、基材としてのアイオノマー樹脂と末端に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とを含む層とすれば、これら両層間の密着性が著しく向上する。その結果、打撃時のエネルギーロスが低減して飛距離の低下が抑制され、また各層間の密着性不良によるボールの耐久性の低下が抑制される。また、カバーが基材としてのアイオノマー樹脂にポリイソシアネート化合物を配合した層である場合には、カバーと塗膜との密着性が良好になり、打撃により塗膜が剥がれ難くなる。
▲2▼ 熱可塑性ポリウレタンエラストマーとして特にシリコーン変性熱可塑性ポリウレタンエラストマーを用いる場合には、非変性の熱可塑性ポリウレタンエラストマーを用いる場合と同様のソフトフィーリング及び飛距離が得られるとともに、ゴルフボールの低温下での反発性能の低下が抑制され、その結果、低温環境下での飛距離の低下が抑制される。
▲3▼ シリコーン変性熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、非変性の熱可塑性ポリウレタンエラストマーに比べて隣接層との密着性が低いが、隣接層を、基材としてのアイオノマー樹脂と末端に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とを含む層にすることにより、問題となるような飛距離及び耐久性の低下等は生じない。
【0008】
本発明は、前記知見に基づき、さらに研究を重ねて完成されたものであり、以下の各項のマルチピースゴルフボールを提供する。
【0009】
項1. コア、カバーおよびコアとカバーとの間の1層の中間層を有し、カバーが基材として熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含み、中間層が基材としてのアイオノマー樹脂と末端に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とを含むマルチピースゴルフボール。
【0010】
項2. 中間層におけるポリイソシアネート化合物の配合量が、アイオノマー樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部である項1に記載のマルチピースゴルフボール。
【0011】
項3. 熱可塑性ポリウレタンエラストマーがシリコーン変性熱可塑性ポリウレタンエラストマーである項1又は2に記載のマルチピースゴルフボール。
【0012】
項4. コア、カバーおよびコアとカバーとの間の1層の中間層を有し、中間層が基材として熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含み、カバーが基材としてのアイオノマー樹脂と末端に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とを含むマルチピースゴルフボール。
【0013】
項5. カバーにおけるポリイソシアネート化合物の配合量が、アイオノマー樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部である項4に記載のマルチピースゴルフボール。
【0014】
項6. 熱可塑性ポリウレタンエラストマーがシリコーン変性熱可塑性ポリウレタンエラストマーである項4又は5に記載のマルチピースゴルフボール。
【0015】
項7. コア、カバーおよびコアとカバーとの間の2層以上の中間層を有し、中間層のうちのカバーに接する最も外側の層が基材として熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含み、カバーが基材としてのアイオノマー樹脂と末端に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とを含むマルチピースゴルフボール。
【0016】
項8. カバーにおけるポリイソシアネート化合物の配合量が、アイオノマー樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部である項7に記載のマルチピースゴルフボール。
【0017】
項9. 熱可塑性ポリウレタンエラストマーがシリコーン変性熱可塑性ポリウレタンエラストマーである項7又は8に記載のマルチピースゴルフボール。
【0018】
項10. 中間層のうちの、前記の熱可塑性ポリウレタンエラストマーを基材とする層と接するすぐ内側の層が、基材としてのアイオノマー樹脂と末端に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とを含む項7、8又は9に記載のマルチピースゴルフボール。
【0019】
項11. 中間層のうちの、前記の熱可塑性ポリウレタンエラストマーを基材とする層に接するすぐ内側の層におけるポリイソシアネート化合物の配合量が、アイオノマー樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部である項10に記載のマルチピースゴルフボール。
【0020】
項12. コア、カバーおよびコアとカバーとの間の2層以上の中間層を有し、カバーが基材として熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含み、中間層のうちのカバーに接する最も外側の層が基材としてのアイオノマー樹脂と末端に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とを含むマルチピースゴルフボール。
【0021】
項13. 中間層のうちのカバーに接する最も外側の層におけるポリイソシアネート化合物の配合量が、アイオノマー樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部である項12に記載のマルチピースゴルフボール。
【0022】
項14. 熱可塑性ポリウレタンエラストマーがシリコーン変性熱可塑性ポリウレタンエラストマーである項12又は13に記載のマルチピースゴルフボール。
【0023】
項15. コア、カバーおよびコアとカバーとの間の2層以上の中間層を有し、中間層のうちのカバーに接する最も外側の層が基材としてのアイオノマー樹脂と末端に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とを含み、中間層のうちの外側から2層目の層が基材として熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含むマルチピースゴルフボール。
【0024】
項16. 中間層のうちのカバーに接する最も外側の層におけるポリイソシアネート化合物の配合量が、アイオノマー樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部である項15に記載のマルチピースゴルフボール。
【0025】
項17. 熱可塑性ポリウレタンエラストマーがシリコーン変性熱可塑性ポリウレタンエラストマーである項15又は16に記載のマルチピースゴルフボール。
【0026】
項18. 中間層を3層以上有する場合に、中間層のうちの外側から3層目の層が、基材としてのアイオノマー樹脂と末端に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とを含む項15、16又は17に記載のマルチピースゴルフボール。
【0027】
項19. 中間層を3層以上有する場合に、中間層のうちの外側から3層目の層におけるポリイソシアネート化合物の配合量が、アイオノマー樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部である項18に記載のマルチピースゴルフボール。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
1)本発明の概略
本発明のマルチピースゴルフボールは、層構造の点で、コア、カバーおよびコアとカバーとの間の1層の中間層を有するマルチピースゴルフボールと、コア、カバーおよびコアとカバーとの間の2層以上の中間層を有するマルチピースゴルフボールとに分類される。本明細書において、「カバー」とは、ゴルフボールの最外層をいう。
【0029】
また、本発明のマルチピースゴルフボールは、各層を構成する材料の点で、以下の第1〜5のボールに分類される。
第1のボール:中間層が1層のスリーピースゴルフボールであり、カバーが基材として熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含み、中間層が基材としてのアイオノマー樹脂と末端に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とを含むもの
第2のボール:中間層が1層のスリーピースゴルフボールであり、カバーが基材としてのアイオノマー樹脂と末端に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とを含み、中間層が基材として熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含むもの
第3のボール:中間層が2層以上、すなわちフォーピース以上のゴルフボールであり、カバーが基材としてのアイオノマー樹脂とポリイソシアネート化合物とを含み、中間層のうちのカバーに接する最も外側の層が基材として熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含むもの
第4のボール:中間層が2層以上、すなわちフォーピース以上のゴルフボールであり、カバーが基材として熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含み、中間層のうちのカバーに接する最も外側の層が基材としてのアイオノマー樹脂とポリイソシアネート化合物とを含むもの
第5のボール:中間層が2層以上、すなわちフォーピース以上のゴルフボールであり、中間層のうちのカバーに接する最も外側の層が基材としてのアイオノマー樹脂とポリイソシアネート化合物とを含み、中間層のうちの外側から2層目の層が基材として熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含むもの
先ず、材料について説明し、次いで、それらの材料からなる本発明のマルチピースゴルフボールについて説明する。
2)熱可塑性ポリウレタンエラストマー
本発明における熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、ポリイソシアネート、高分子ポリオールおよび鎖延長剤を反応させることにより得られるものである。
2−1 ) ポリイソシアネート
ポリイソシアネートとしては、特に限定されず、熱可塑性ポリウレタンエラストマーの原料として公知のポリイソシアネートを広い範囲から選択して使用できる。
【0030】
このようなポリイソシアネートとして、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、水添加MDI、4,4’−ビフェニルジイソシアネートトリデンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、p−テトラメチルキシレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,8−オクタメチレンジイソシアネート、L−リジンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、4,4',4''−トリフェニルメタントリイソシアネート、2,4,4'−ビフェニルトリイソシアネート、2,4,4'−ジフェニルメタントリイソシアネートなどを例示できる。
【0031】
これらは単独でまたは2種以上混合して用いることができる。ポリイソシアネートの中では、MDI、水添加MDI、イソホロンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネートが好ましく、MDIが特に好ましい。
2−2)高分子ポリオール
高分子ポリオールとしては、熱可塑性ポリウレタンエラストマーの原料として公知の高分子ポリオールを広い範囲から選択して使用できる。このような高分子ポリオールとして、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオールまたはポリカーボネートジオール等を使用できる。
【0032】
ポリエーテルジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール(1,3−または1,4−ブチレングリコール)、テトラメチレンエーテルグリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ビスフェノールAなどの重合体または共重合体、またはこれらの低分子グリコールの1種又は2種以上にエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、スチレンオキシドなどの1種又は2種以上を付加することにより得られるものなどを例示できる。
【0033】
ポリエステルジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール(1,3−または1,4−ブチレングリコール)、テトラメチレンエーテルグリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、p−キシリレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、あるいはこれらのアルキレンオキシド付加物等の1種又は2種以上と、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、シュウ酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸などの1種又は2種以上を反応させることにより得られるポリエステルジオール;プロピオラクトン、ブチロラクトン、カプロラクトンなどの環状エステルを開環重合させることにより得られるポリエステルジオール;前記グリコールと環状エステルとから得られるポリエステルジオール;あるいは前記グリコール、二塩基酸および環状エステルを反応させることにより得られるポリエステルジオールなどを例示できる。
【0034】
ポリカーボネートジオールは、下記の式
【0035】
【式1】
【0036】
で表される化合物において、式中のRがグリコール又は2価のフェノールに由来する化合物である。グリコール又は2価のフェノールとしてはトリメチレングリコール、デカメチレングリコール、p−キシリレングリコール、1,2−ポリブタジエンジオール、1,4−ポリブタジエンジオール、ポリクロロプレンジオール、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体ジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどを例示できる。
【0037】
これらの高分子ポリオールは単独でまたは2種以上混合して用いることができる。高分子ポリオールとしては、反発弾性が高くかつ温度低下に伴う反発弾性の低下が小さい点で、エーテル系ポリオールが好ましい。エーテル系ポリオールの中ではポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが好ましく、ポリテトラメチレンエーテルグリコールが特に好ましい。
【0038】
高分子ポリオールは、数平均分子量が、通常300〜5000程度、特に1000〜4000程度のものが好ましい。
2−3)鎖延長剤
鎖延長剤は、特に限定されず、熱可塑性ポリウレタンエラストマーの鎖延長剤として公知の低分子ジオールや低分子ジアミンなどを広い範囲から選択して使用できる。
【0039】
このような低分子ジオールとして、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4’−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、p−キシリレングリコール、あるいはこれらのアルキレンオキシド付加物等の脂肪族ジオール類;ハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ナフチレンジオール、あるいはこれらのアルキレンオキシド付加物等の芳香族ジオール類などを例示できる。これらは、単独でまたは2種以上混合して用いることができる。
【0040】
また、低分子ジアミンとしては、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン、エタンジアミン、ヒドラジンなどを例示できる。これらは単独でまたは2種以上混合して用いることができる。また、1種または2種以上の低分子ジオールと1種または2種以上の低分子ジアミンとを混合して用いることもできる。
【0041】
特に、エチレングリコール、ブタンジオール(1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール)、ヘキサンジオール(1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール)、ペンタンジオール(1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール)などが好ましい。さらに特に、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどが好ましい。
2−4)製造方法
熱可塑性ポリウレタンエラストマーの全体量に対するハードセグメント(鎖延長剤とポリイソシアネートとからなる)の含有量は、特に制限されず、広い範囲から選択することができるが、通常15〜65重量%程度、特に25〜50重量%程度とすることが好ましい。
【0042】
本発明において使用する熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、ポリイソシアネートに高分子ポリオール及び鎖延長剤を付加させる公知の合成方法で製造することができる。また、原料の全ポリオール(ジオールを含む)とポリイソシアネートとの比は、特に制限されず、広い範囲から選択できるが、NCO/OH当量比で、通常0.9〜1.1程度、特に0.95〜1.05程度が好ましい。
2−5)好適な熱可塑性ポリウレタンエラストマー
本発明において使用できる好適な熱可塑性ポリウレタンエラストマーとしては、MDIとポリテトラメチレンエーテルグリコールとエチレングリコールとを反応させて得られるもの、MDIとポリテトラメチレンエーテルグリコールと1,4−ブタンジオールとを反応させて得られるもの等が挙げられる。
【0043】
また、本発明の文脈に即した熱可塑性ポリウレタンエラストマーのうち、ショアA硬度90〜ショアD 硬度60程度の物性を有するものが好ましい。
3)シリコーン変性熱可塑性ポリウレタンエラストマー
本発明において使用するシリコーン変性熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、ポリイソシアネート、ポリシロキサン、高分子ポリオール及び鎖延長剤を反応させることにより得られるものである。
3−1)ポリイソシアネート・高分子ポリオール・鎖延長剤
ポリイソシアネート、高分子ポリオール及び鎖延長剤は、熱可塑性ポリウレタンエラストマーについて説明した通りである。
3−2)ポリシロキサン
ポリシロキサンは、特に制限されず、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、チオール基、イソシアネート基などの官能基を有するものを広い範囲から選んで使用できる。これらは単独でまたは2種以上混合して用いることができる。このような使用可能なポリシロキサンとして、例えば下記の構造式(2)〜(29)で表されるものが挙げられる。特に、下記の構造式(15)〜(21)で表されるアルコール変性ポリシロキサンが好ましい。
【0044】
【式2】
【0045】
【式3】
【0046】
【式4】
【0047】
【式5】
【0048】
【式6】
【0049】
【式7】
【0050】
【式8】
【0051】
【式9】
【0052】
【式10】
【0053】
【式11】
【0054】
【式12】
【0055】
【式13】
【0056】
【式14】
【0057】
【式15】
【0058】
【式16】
【0059】
【式17】
【0060】
【式18】
【0061】
【式19】
【0062】
【式20】
【0063】
【式21】
【0064】
【式22】
【0065】
【式23】
【0066】
【式24】
【0067】
【式25】
【0068】
【式26】
【0069】
【式27】
【0070】
【式28】
【0071】
【式29】
【0072】
また、ポリシロキサン1分子当たりのシリコン原子数は、特に限定されず、広い範囲から選択できるが、通常1〜650程度、特に2〜200程度、さらに特に20〜60程度が好ましい。
【0073】
また、ポリシロキサン1分子当たりの数平均分子量は、特に限定されず、広い範囲から選択できるが、通常100〜150000程度、特に200〜20000程度、さらに特に1000〜5000程度が好ましい。
【0074】
シリコーン変性熱可塑性ポリウレタンエラストマーの全体量に対するポリシロキサンの含有量は、特に限定されず、広い範囲から選択できるが、通常8〜40重量%程度、特に8〜12重量%程度が好ましい。この範囲内であれば、温度変化による反発弾性の低下を抑制できるとともに、コスト高になりすぎることがない。
3−3)製造方法
シリコーン変性熱可塑性ポリウレタンエラストマーの全体量に対するハードセグメント(鎖延長剤とポリイソシアネートとからなる。)の含有量は、特に限定されず、広い範囲から選択することができるが、通常30〜75重量%程度、特に15〜65重量%程度、さらに特に25〜50重量%程度とするのが好ましい。
【0075】
本発明において使用するシリコーン変性熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、ポリイソシアネートに、高分子ポリオール、ポリシロキサンおよび鎖伸長剤を重付加させる公知の合成方法で製造することができる。また、原料の全ポリオール(ジオールを含む)とポリイソシアネートとの比は、特に限定されず、広い範囲から選択できるが、NCO/OH当量比で、通常0.9〜1.1程度、特に0.95〜1.05程度が好ましい。
【0076】
また、本発明において使用するシリコーン変性熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、例えば、大日精化工業株式会社から、レザミンPSの商品名で種々のグレードのものを容易に入手できる。
3−4)好適なシリコーン変性熱可塑性ポリウレタンエラストマー
前記例示したポリイソシアネートとポリシロキサンと高分子ポリオールと鎖延長剤とを反応させて得られるシリコーン変性熱可塑性ポリウレタンエラストマーのうち、MDIとアルコール変性ポリシロキサンとポリテトラメチレングリコールとエチレングリコールとを反応させて得られるもの、MDIとアルコール変性ポリシロキサンとポリテトラメチレングリコールと1,4−ブタンジールとを反応させて得られるものが好ましい。
【0077】
本発明の文脈に即したシリコーン変性熱可塑性ポリウレタンエラストマーのうち、ショアA硬度90〜ショアD 硬度60程度の物性を有するものが好ましい。また、23℃における反発弾性率が55%以上であるものが好ましい。
4)アイオノマー樹脂
アイオノマー樹脂としては、エチレンとα,β‐不飽和カルボン酸との共重合体においてカルボキシル基の少なくとも一部が金属イオンで中和されたもの、またはエチレンとα,β‐不飽和カルボン酸とα,β‐不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体においてカルボキシル基の少なくとも一部が金属イオンで中和されたもの等が挙げられる。α,β‐不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられる。また、α,β‐不飽和カルボン酸エステルとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のメチル、エチル、プロピル、n‐ブチル、イソブチルエステル等が挙げられる。金属イオンとしては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、アルミニウム、錫、ジルコニウム、カドミウム等のイオンが挙げられる。特にナトリウム、亜鉛、マグネシウムイオンが反発性、耐久性等の点で好ましい。
【0078】
アイオノマー樹脂の具体例としては、ハイミラン1555、1557、1605、1702、1705、1706、1707、1855(三井デュポンポリケミカル社製)、サーリン8945、サーリン9945、サーリン6320、サーリン8320、サーリン9320(デュポン社製)、アイオテック(IOTEK)7010、8000(エクソン(Exxon)社製)等を例示することができる。
【0079】
これらのアイオノマー樹脂は単独でまたは2以上組み合わせて使用することができる。前記例示したアイオノマーの中では、ナトリウムイオンで中和されたエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、亜鉛イオンで中和されたエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、ナトリウムイオンで中和されたエチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル三元共重合体及び亜鉛イオンで中和されたエチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル三元共重合体等が好ましく、これらのうちナトリウムイオンで中和された重合体と亜鉛イオンで中和された重合体との混合物がより好ましい。
5)末端に2個以上のイソシアネート基を有する化合物
末端に2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、特に制限されず公知のポリイソシアネート化合物を使用できる。このような公知のポリイソシアネート化合物としては、例えば、シリコーン変性熱可塑性ポリウレタンエラストマーの構成材料として例示したものが挙げられる。また、これらのポリイソシアネート化合物と分子内にヒドロキシル基を2個以上有する化合物とを反応させてなお2個以上のイソシアネート基を有する付加生成物、又はこれらのポリイソシアネート化合物の重合体若しくは共重合体等も使用できる。
【0080】
これらのうち、MDI、1,5−ナフタレンジイソシアネート又は1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等が好ましく、MDI又は1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートがより好ましい。1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートは耐黄変性に優れる点で好ましい。
6)第1のマルチピースゴルフボール
6−1)構成
本発明の第1のマルチピースゴルフボールは、コア、カバー及びコアとカバーとの間の1層の中間層を有し、カバーが基材として熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含み、中間層が基材としてのアイオノマー樹脂と末端に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(以下、「ポリイソシアネート化合物」という。)とを含むものである。
6−2)コア
コアは、マルチピースソリッドゴルフボールのコア材料として公知のゴム組成物からなるものを用いることができる。
【0081】
基材ゴムとしては、天然ゴムおよび合成ゴムの双方を用いることができる。中でも、シス−1,4−結合を40%以上、特に80%以上含むハイシスポリブタジエンゴムが好ましい。必要であれば、ハイシスポリブタジエンゴムには、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などを配合してもよい。
【0082】
ゴム組成物には、このほか、架橋剤、共架橋剤、充填剤、酸化防止剤、しゃく解剤などが含まれていてよい。
【0083】
架橋剤としては、ゴムの架橋剤として公知の化合物を使用できる。このような架橋剤として、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイドのような有機過酸化物などを例示できる。特に、ジクミルパーオキサイドが好ましい。架橋剤の配合量は、特に限定されず、広い範囲から適宜選択できるが、基材ゴム100重量部に対して、通常0.5〜3重量部程度、特に0.7〜2.2重量部程度が好ましい。この範囲内であれば、得られるゴルフボールについて、十分な反発性能ひいては十分な飛距離が得られるとともに、十分なソフトフィーリングが得られる。
【0084】
共架橋剤としては、特に限定されず、ゴムの共架橋剤として公知の化合物を広い範囲から選択して使用できる。このような架橋剤として、不飽和カルボン酸の金属塩、特にアクリル酸またはメタクリル酸のような炭素数3〜8程度の1価または2価の不飽和カルボン酸の金属塩を例示できる。高い反発性能を得る上で、アクリル酸の亜鉛塩が好ましい。
【0085】
共架橋剤の配合量は、特に限定されず、広い範囲から適宜選択できるが、基材ゴム100重量部に対して、通常20〜50重量部程度、特に25〜45重量部程度が好ましい。この範囲内であれば、得られるゴルフボールについて、十分な反発性能ひいては十分な飛距離が得られるとともに、十分なソフトフィーリングが得られる。
【0086】
充填剤としては、この分野で用いられているものを広い範囲から使用でき、例えば酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タングステン粉末、モリブデン粉末および有機質充填剤などが挙げられる。充填剤の配合量は、特に限定されず、広い範囲から適宜選択できるが、基材ゴム100重量部に対して、通常10〜30重量部程度、特に15〜25重量部程度が好ましい。この範囲内であれば、得られるゴルフボールの重量が適正なものとなる。
【0087】
コアは、前記コア用ゴム組成物を用いて、圧縮成型などの公知の方法で成型することができる。
【0088】
コアの直径は、通常30〜40mm程度、特に33〜40mm程度が好ましい。なお、コアの直径は、コアが突起やリブなどを有する場合にも、突起やリブを除外した球体部分の直径を指す。コアの硬度は、JIS-C硬度で、通常60〜80程度、特に65〜75程度が好ましい。また、コアは、通常単層構造に形成されるが、必要に応じて、2層以上の多層構造とすることもできる。
6−3)中間層
6-3-1) 成分及び配合比率
中間層は、基材としてのアイオノマー樹脂に加えてポリイソシアネート化合物を含む。ポリイソシアネート化合物の配合量は、アイオノマー樹脂100重量部に対して通常0.1〜5重量部程度、特に0.5〜2重量部程度とすればよい。最も好ましい配合比率は、アイオノマー樹脂100重量部に対してポリイソシアネート化合物2重量部である。ポリイソシアネート化合物が余りに多くなるとこの層が硬くなって打撃時のフィーリングを損ない、かつ当該ポリイソシアネートが反応して成型が困難になる。また、ポリイソシアネート化合物が少なすぎると接着性向上効果が十分に得られない。本発明の範囲内であれば、このような問題が生じない。
【0089】
さらに中間層には、全体重量に対して50重量%以下の範囲内で、ゴルフボールの中間層材料として従来使用されている各種の熱可塑性エラストマー等が含まれていてもよい。公知の熱可塑性エラストマーとしては、ウレタン系、アミド系、ポリエステル系、スチレン系、オレフィン系等のエラストマーが挙げられる。熱可塑性エラストマーの具体例としては、ポリアミド系熱可塑性エラストマーのペバックス2533(東レ社製)、ポリエステル系熱可塑性エラストマーのハイトレル3548、ハイトレル4047(東レ・デュポン社製)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーのエラストランET880(武田バーディシェウレタン工業社製)、パンデックスT‐8180、T‐7298、T‐7895、T‐7890(大日本インキ化学工業社製)等が挙げられる。また、中間層には、この他、充填剤、顔料、酸化防止剤等の添加剤が含まれていてもよい。
6-3-2) 形成方法
中間層の形成にあたっては、先ずポリイソシアネート化合物バッチを作製する。ポリイソシアネート化合物バッチとは、ポリイソシアネート化合物を、このポリイソシアネート化合物とは反応せず、吸水性が殆どなく、さらにアイオノマー樹脂と相溶性が良好な熱可塑性樹脂でバッチ化したものである。
【0090】
ポリイソシアネート化合物をバッチ化するのに用いることができる熱可塑性樹脂としては、例えばポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂、エステルゴム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、二フッ化樹脂、四フッ化樹脂等が挙げられる。
【0091】
この熱可塑性樹脂100重量部に対して10〜40重量部程度の割合でポリイソシアネート化合物を配合し、温度130〜250℃程度のミキシングローラ又はバンバリローラで十分に混練し、冷却し、粉砕することによりポリイソシアネート化合物バッチが得られる。ポリイソシアネート化合物を熱可塑性樹脂でバッチ化してからアイオノマー樹脂に配合することにより、互いの融点及び溶融粘度の違いに起因する滑り現象が生じ難く、成型機内でポリイソシアネート化合物とアイオノマー樹脂との混練が十分に行われる。
【0092】
さらに、アイオノマー樹脂、ポリイソシアネート化合物バッチ及びその他の添加剤等を混合し、例えば射出成型等の公知の方法で中間層を形成することができる。
【0093】
中間層の厚さは、通常0.5〜3mm程度、特に1〜2mm程度が好ましい。また、中間層の硬度は、通常JIS−C硬度70〜90程度、特に75〜85程度が好ましい。
6−4)カバー
カバーは、基材として熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含む。カバーに含まれる熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、特にシリコーン変性熱可塑性ポリウレタンエラストマーであることが好ましい。
【0094】
また、カバーは、全体重量に対して50重量%以下の範囲内で、非変性の熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、アイオノマー樹脂、熱可塑性スチレン系エラストマー、熱可塑性オレフィン系エラストマー及びアイオノマー樹脂などを含んでいてよい。また、カバーには、ゴルフボールのカバーに通常添加される充填剤、二酸化チタンのような着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0095】
カバーの厚さは、特に限定されないが、通常0.5〜2mm程度、特に0.8〜2mm程度が好ましい。カバーの硬度は、特に限定されないが、通常ショアD硬度50〜75程度、特に55〜65程度が好ましい。
【0096】
カバーは、例えば射出成型等の公知の方法で形成することができる。なお、カバー表面には、通常ディンプルが形成される。
7)第2のマルチピースゴルフボール
7−1)構成
本発明の第2のマルチピースゴルフボールは、コア、カバー及びコアとカバーとの間の1層の中間層を有し、中間層が基材として熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含み、カバーが基材としてのアイオノマー樹脂と末端に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とを含むものである。
7−2)コア
コアは、第1のマルチピースゴルフボールについて説明した通りである。
7−3)中間層
中間層の材料及び成型方法は、第1のマルチピースゴルフボールのカバーについて説明した通りである。
【0097】
中間層の厚さは全体として、通常0.5〜3mm程度、特に1〜2mm程度が好ましい。中間層の硬度は、通常JIS−C硬度45〜65程度、特に50〜60程度が好ましい。
7−4)カバー
カバーの材料及び成型方法は、第1のマルチピースゴルフボールの中間層について説明した通りである。
【0098】
カバーの厚さは、特に限定されないが、通常0.5〜2mm程度、特に0.8〜2mm程度が好ましい。カバーの硬度は、特に限定されないが、通常ショアD硬度50〜75程度、特に65〜75程度が好ましい。
8)第3のマルチピースゴルフボール
8−1)構成
本発明の第3のマルチピースゴルフボールは、コア、カバー及びコアとカバーとの間の2層の中間層を有し、中間層のうちのカバーに接する最も外側の層が基材として熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含み、カバーが基材としてのアイオノマー樹脂と末端に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とを含むものである。
8−2)コア
コアは、本発明の第1のマルチピースゴルフボールについて説明した通りである。
8−3)中間層
中間層は2〜4層程度とすればよく、好ましくは2層である。中間層のうちの最も外側の層の材料及び成型方法は、第1のマルチピースゴルフボールのカバーについて説明した通りである。中間層のうちの最外層の厚さは、通常0.5〜3mm程度、特に0.8〜1.5mm程度であることが好ましい。また、硬度は、通常JIS−C硬度45〜65程度、特に50〜60程度が好ましい。
【0099】
中間層のうちカバーと接しないより内側の層の材料は特に制限されず、マルチピースゴルフボールの中間層材料として従来公知のゴム、熱可塑性エラストマー、アイオノマー樹脂等を基材とする層とすることができる。
【0100】
中間層の合計厚さは、通常2〜5mm程度、特に2.4〜3mm程度となるようにすることが好ましい。
8−4)カバー
カバー材料及び成型方法は、第1のマルチピースゴルフボールの中間層について説明した通りである。
【0101】
カバーの厚さは特に限定されないが、通常0.5〜2mm程度、特に0.8〜2mm程度が好ましい。カバーの硬度は、特に限定されないが、通常ショアD硬度50〜75程度、特に65〜75程度が好ましい。
9)第4のマルチピースゴルフボール
9−1)構成
本発明の第4のマルチピースゴルフボールは、コア、カバー及びコアとカバーとの間の2層の中間層を有し、カバーが基材として熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含み、中間層のうちのカバーに接する最も外側の層が基材としてのアイオノマー樹脂と末端に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とを含むものである。
9−2)コア
コアは、本発明の第1のマルチピースゴルフボールについて説明した通りである。
9−3)中間層
中間層は2〜4層程度とすればよく、好ましくは2層である。中間層のうちの最も外側の層の材料及び成型方法は、第1のマルチピースゴルフボールの中間層について説明した通りである。中間層のうちの最外層の厚さは、通常0.5〜3mm程度、特に0.8〜1.5mm程度であることが好ましい。また、硬度は、通常JIS−C硬度70〜90程度、特に75〜85程度が好ましい。
【0102】
中間層のうちカバーと接しないより内側の層の材料は特に制限されず、マルチピースゴルフボールの中間層材料として従来公知のゴム、熱可塑性エラストマー、アイオノマー樹脂等を基材として使用できる。
【0103】
中間層の合計厚さは、通常2〜5mm程度、特に2.4〜3mm程度となるようにすることが好ましい。
9−4)カバー
カバー材料、成型方法、厚さ及び硬度は、第1のマルチピースゴルフボールのカバーについて説明した通りである。
10)第5のマルチピースゴルフボール
10−1)構成
本発明の第5のマルチピースゴルフボールは、コア、カバー及びコアとカバーとの間の2層の中間層を有し、中間層のうちのカバーに接する最も外側の層が基材としてのアイオノマー樹脂と末端に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とを含み、中間層のうちの最外層に接するすぐ内側の層(中間層のうち外側から2層目の層)が熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含むものである。
10−2)コア
コアは、本発明の第1のマルチピースゴルフボールについて説明した通りである。
10−3)中間層
中間層は2〜4層程度とすればよく、好ましくは2層である。中間層のうちの最も外側の層の材料及び成型方法は、第1のマルチピースゴルフボールの中間層について説明した通りである。中間層のうちの最外層の厚さは、通常0.5〜3mm程度、特に0.8〜1.5mm程度であることが好ましい。硬度は、通常JIS−C硬度70〜90程度、特に75〜85程度が好ましい。
【0104】
中間層のうちの外側から2層目の層の材料及び成型方法は、第1のマルチピースゴルフボールのカバーについて説明した通りである。その厚さは、通常0.5〜3mm程度、特に1〜2mm程度となるようにすることが好ましい。また、硬度は、通常JIS−C硬度45〜65程度、特に50〜65程度が好ましい。
【0105】
中間層を3層以上有する場合には、中間層のうちの外側から3層目の層も、基材としてのアイオノマー樹脂とポリイソシアネート化合物とを含む層とすることが好ましい。ポリイソシアネート化合物の配合比率は中間層のうちの最外層と同じ範囲内で定めればよい。
11−4)カバー
カバーは、マルチピースゴルフボールのカバー材料として公知の材料からなるものとすることができる。カバー基材としては、アイオノマー樹脂、バラタゴム、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性エラストマー等を例示できる。また、カバーには、必要に応じて、基材の他に充填剤、酸化防止剤、二酸化チタンのような着色剤などの添加剤が含まれていてよい。
【0106】
カバーの厚さ及び成型方法は、本発明の第1のマルチピースゴルフボールについて説明した通りである。カバーは、例えば射出成型等の公知の方法により成型することができる。
【0107】
【発明の効果】
本発明によると、ソフトフィーリングと飛距離とを兼ね備えるとともに、各層間の密着性が良好なマルチピースゴルフボールを提供することができる。
【0108】
詳述すれば、本発明のマルチピースゴルフボールは、カバー又は中間層が熱可塑性ポリウレタンエラストマーを基材として含むことから、ソフトフィーリング及び飛距離が得られる。また、熱可塑性ポリウレタンエラストマーを基材とする層に隣接する層が、基材としてのアイオノマー樹脂にポリイソシアネート化合物を配合した層であることから、熱可塑性ポリウレタンエラストマーを基材とする層とイソシアネート化合物を含有する層との密着性が極めて良好である。これにより、各層間の密着性不良による打撃時のエネルギーロスひいては飛距離の低下が抑制されるとともに、各層間の密着性不良によるボールの耐久性の低下が抑制される。また、特にカバーが基材としてのアイオノマー樹脂にポリイソシアネート化合物を配合した層である場合には、カバーと塗膜との密着性が良好になり、打撃により塗膜が剥がれ難くなる。
【0109】
また、熱可塑性ポリウレタンエラストマーが特にシリコーン変性熱可塑性ポリウレタンエラストマーである場合には、ゴルフボールの低温下での反発性能の低下が抑制され、その結果、低温環境下でのゴルフボールの飛距離の低下が抑制される。また、温度変化に対して安定であることから、コントロールが容易なボールとなる。さらに、シリコーン変性熱可塑性ポリウレタンエラストマーをカバー又は中間層材料として含む場合には、常温下でも長い飛距離が得られる。
【0110】
シリコーン変性熱可塑性ポリウレタンエラストマーを基材とする層は、隣接する層との密着性が低い場合があるが、隣接する層がアイオノマー樹脂とポリイソシアネート化合物とを含むため、実用上問題となるような密着性不良の問題は生じない。
【0111】
【実施例】
以下、本発明を、実施例および試験例を示して詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0112】
実施例1
以下のようにして、コア、1層の中間層及びカバーからなるスリーピースゴルフボールを作製した。
【0113】
先ず、ブタジエンゴム(BR-11、JSR社製)100重量部、アクリル酸亜鉛25重量部、ジクミルパーオキサイド1.0重量部、酸化亜鉛25重量部、及び、老化防止剤0.5重量部を配合したゴム組成物を用いて、圧縮成型により直径36.7mmのコアを形成した。次いで、シリコーン変性熱可塑性ポリウレタンエラストマーのレザミンPS22490(大日精化工業社製)を用いて、射出成型により厚さ1.5mmの中間層を形成した。次いで、ハイミラン1605及びハイミラン1705(重量比1:1)(いずれも三井・デュポンポリケミカル社製)からなるアイオノマー樹脂100重量部に対して、ポリイソシアネート化合物バッチ(クロスネートEM-30(大日精化工業社製、イソシアネート基濃度5〜10%)を配合した。これにより、ポリイソシアネート化合物の配合比率は、アイオノマー樹脂100重量部に対して約1重量部となった。この組成物を用いて射出成型により厚さ1.5mmのカバーを形成した。
【0114】
このようにしてスリーピースゴルフボールが得られた。得られたボールの中間層の硬度はJIS−C硬度81であり、カバー硬度はショアD硬度58であった。
実施例2
実施例1において、中間層材料とカバー材料とを入れ替えた。すなわち、中間層をアイオノマー樹脂組成物からなる層とし、カバーをシリコーン変性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物からなる層とした。アイオノマー樹脂組成物及びシリコーン変性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物において使用した材料の種類及び配合比率は、実施例1と同様である。また、その他の条件も実施例1と同様である。
【0115】
このようにしてスリーピースゴルフボールが得られた。得られたボールの中間層の硬度はJIS−C硬度56であり、カバー硬度はショアD硬度71であった。
比較例1
実施例1において、中間層にイソシアネート化合物を添加しなかった。その他の条件は実施例1と同様にしてスリーピースゴルフボールを得た。得られたボールの中間層の硬度はJIS−C硬度80であり、カバー硬度はショアD硬度58であった。
比較例2
実施例2において、カバーにイソシアネート化合物を添加しなかった。その他の条件は実施例2と同様にしてスリーピースゴルフボールを得た。得られたボールの中間層の硬度はJIS−C硬度56であり、カバー硬度はショアD硬度69であった。
実施例3
直径34.5mmのコア、2層の中間層(厚さ1.3mmの内側中間層、厚さ1.3mmの外側中間層)及び厚さ1.5mmのカバーからなる4ピースゴルフボールを作製した。内側中間層及び外側中間層をシリコーン変性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物からなる層とし、カバーをアイオノマー樹脂組成物からなる層とした。アイオノマー樹脂組成物及びシリコーン変性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物において使用した材料の種類及び配合比率は、実施例1と同様である。
【0116】
得られたボールの、内側中間層硬度はJIS−C硬度69であり、外側中間層硬度はJIS−C硬度56であり、カバー硬度はショアD硬度71であった。
実施例4
直径34.5mmのコア、2層の中間層(厚さ1.3mmの内側中間層、厚さ1.3mmの外側中間層)及び厚さ1.5mmのカバーからなる4ピースゴルフボールを作製した。内側中間層をシリコーン変性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物からなる層とし、外側中間層をアイオノマー樹脂組成物からなる層とし、カバーをシリコーン変性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物からなる層とした。アイオノマー樹脂組成物及びシリコーン変性熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物において使用した材料の種類及び配合比率は、実施例1と同様である。
【0117】
得られたボールの、内側中間層硬度はJIS−C硬度73であり、外側中間層硬度はJIS−C硬度81であり、カバー硬度はショアD硬度58であった。
比較例3
実施例3において、カバーにイソシアネート化合物を添加しなかった。その他の条件は実施例3と同様にしてスリーピースゴルフボールを得た。得られたボールの内側中間層の硬度はJIS−C硬度69であり、外側中間層の硬度はJIS−C硬度56であり、カバー硬度はショアD硬度69であった。
比較例4
実施例4において、外側中間層にイソシアネート化合物を添加しなかった。その他の条件は実施例4と同様にしてスリーピースゴルフボールを得た。得られたボールの内側中間層の硬度はJIS−C硬度73であり、外側中間層の硬度はJIS−C硬度80であり、カバー硬度はショアD硬度58であった。
【0118】
実施例1〜4及び比較例1〜4の各ボールの層構造及び硬度を以下の表1にまとめて示す。
【0119】
【表1】
【0120】
<飛距離>
実施例1〜4及び比較例1〜4により得られた各ボールを、スウイングロボット(ミヤマエ社製)を用いて、1番ウッド(ヘッドスピード44m/秒)及び5番アイアン(ヘッドスピード33m/秒)で打撃し、キャリー(着弾点までの距離)を測定した。各例につき5回打撃を行い、平均値を求めた。
<バックスピン>
実施例1〜4及び比較例1〜4により得られた各ボールを、スウイングロボット(ミヤマエ社製)を用いて、1番ウッド(ヘッドスピード44m/秒)及び5番アイアン(ヘッドスピード33m/秒)で打撃した。打撃直後のボールの挙動を高速度カメラで写真撮影し、画像処理計測によりバックスピン量を求めた。各例につき5回打撃を行い、平均値を求めた。
<耐久性>
実施例1〜4及び比較例1〜4により得られた各10個のゴルフボールを、前記スウィングロボットに取り付けたウッド1番クラブを用いて、ヘッドスピード45m/秒で順に打撃し、衝突板に衝突させ、3個割れるまでの衝突回数を測定した。結果を以下の表2に、3個割れるまでの衝突回数を相対値で示した。この値が大きいほど耐久性がよいことを示す。
<耐擦り傷性試験>
実施例1〜4及び比較例1〜4により得られた各ボールを、スウイングロボット(ミヤマエ社製)を用いて、ピッチングウェッジ(ヘッドスピード37m/秒)で打撃し、打撃後のボールについて、目視によりカバー表面の擦り傷を評価した。各例につき5個のボールを打撃し、以下の評価基準で点数化し、平均値を求めた。
1点:ボール表面に全く損傷がない。
2点:小さな切り傷やフェース痕が少しある。
3点:表面が毛羽立ち、ささくれが目立つ。
4点:亀裂やディンプルの削れがある。
【0121】
各例のボールの層構成及び前記試験結果を以下の表2にまとめて示す。
【0122】
【表2】
【0123】
表2から、本発明の実施例1〜4のボールでは、アイオノマー層にポリイソシアネート化合物を配合していない対応する比較例1〜4に比べて、飛距離及び耐久性に優れていることが分かる。また、バックスピン速度及び耐擦り傷性は対応比較例1〜4と同等又はそれ以上であった。
Claims (19)
- コア、カバーおよびコアとカバーとの間の1層の中間層を有し、カバーが基材として熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含み、中間層が基材としてのアイオノマー樹脂と末端に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とを含むことを特徴とするマルチピースゴルフボール。
- 中間層におけるポリイソシアネート化合物の配合量が、アイオノマー樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部である請求項1に記載のマルチピースゴルフボール。
- 熱可塑性ポリウレタンエラストマーがシリコーン変性熱可塑性ポリウレタンエラストマーである請求項1又は2に記載のマルチピースゴルフボール。
- コア、カバーおよびコアとカバーとの間の1層の中間層を有し、中間層が基材として熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含み、カバーが基材としてのアイオノマー樹脂と末端に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とを含むことを特徴とするマルチピースゴルフボール。
- カバーにおけるポリイソシアネート化合物の配合量が、アイオノマー樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部である請求項4に記載のマルチピースゴルフボール。
- 熱可塑性ポリウレタンエラストマーがシリコーン変性熱可塑性ポリウレタンエラストマーである請求項4又は5に記載のマルチピースゴルフボール。
- コア、カバーおよびコアとカバーとの間の2層以上の中間層を有し、中間層のうちのカバーに接する最も外側の層が基材として熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含み、カバーが基材としてのアイオノマー樹脂と末端に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とを含むことを特徴とするマルチピースゴルフボール。
- カバーにおけるポリイソシアネート化合物の配合量が、アイオノマー樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部である請求項7に記載のマルチピースゴルフボール。
- 熱可塑性ポリウレタンエラストマーがシリコーン変性熱可塑性ポリウレタンエラストマーである請求項7又は8に記載のマルチピースゴルフボール。
- 中間層のうちの、前記の熱可塑性ポリウレタンエラストマーを基材とする層と接するすぐ内側の層が、基材としてのアイオノマー樹脂と末端に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とを含む請求項7、8又は9に記載のマルチピースゴルフボール。
- 中間層のうちの、前記の熱可塑性ポリウレタンエラストマーを基材とする層に接するすぐ内側の層におけるポリイソシアネート化合物の配合量が、アイオノマー樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部である請求項10に記載のマルチピースゴルフボール。
- コア、カバーおよびコアとカバーとの間の2層以上の中間層を有し、カバーが基材として熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含み、中間層のうちのカバーに接する最も外側の層が基材としてのアイオノマー樹脂と末端に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とを含むことを特徴とするマルチピースゴルフボール。
- 中間層のうちのカバーに接する最も外側の層におけるポリイソシアネート化合物の配合量が、アイオノマー樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部である請求項12に記載のマルチピースゴルフボール。
- 熱可塑性ポリウレタンエラストマーがシリコーン変性熱可塑性ポリウレタンエラストマーである請求項12又は13に記載のマルチピースゴルフボール。
- コア、カバーおよびコアとカバーとの間の2層以上の中間層を有し、中間層のうちのカバーに接する最も外側の層が基材としてのアイオノマー樹脂と末端に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とを含み、中間層のうちの外側から2層目の層が基材として熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含むことを特徴とするマルチピースゴルフボール。
- 中間層のうちのカバーに接する最も外側の層におけるポリイソシアネート化合物の配合量が、アイオノマー樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部である請求項15に記載のマルチピースゴルフボール。
- 熱可塑性ポリウレタンエラストマーがシリコーン変性熱可塑性ポリウレタンエラストマーである請求項15又は16に記載のマルチピースゴルフボール。
- 中間層を3層以上有する場合に、中間層のうちの外側から3層目の層が、基材としてのアイオノマー樹脂と末端に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とを含む請求項15、16又は17に記載のマルチピースゴルフボール。
- 中間層を3層以上有する場合に、中間層のうちの外側から3層目の層におけるポリイソシアネート化合物の配合量が、アイオノマー樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部である請求項18に記載のマルチピースゴルフボール。
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