JP3963633B2 - 発泡シースケーブル - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発泡シースで被覆された発泡シースケーブルに関し、さらに詳しくは、耐外傷性に優れ、良好な表面光沢を有する発泡シースケーブルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ケーブルの柔軟性の向上、ケーブルの軽量化、シースの剥離性の向上等を目的として、シースとして例えば塩化ビニル樹脂等の発泡体が用いられている。図2にこの発泡シースケーブルの一例(平型ケーブル:VVF)を断面図で示すが、同図(a)に示すように2本の導体1を並列してその周囲を発泡シース2で一括被覆して構成されている。また、同図(b)は(a)において点線で囲まれた(イ)部を拡大して模式的に示す図であるが、発泡シース2の内部にはその全体にわたり、無数の略同一径の発泡セル3が均質に分散している。この発泡セル3の存在により、シースの軽量化が図られる。また、シース材と導体1との界面にも発泡セル3が存在することでシース材が導体1から剥離し易くなり、更にケーブル全体としての柔軟性も向上する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の発泡シースケーブルは発泡シース2の硬度が低く、擦れ等により容易に発泡セル3が露出する。その結果、表面に微小な凹凸が形成されて光を乱反射し、他の部分に比べて白く目立ち、あたかも大きな傷がついたように見えてしまう。また、未発泡のシースに比べて見た目の光沢が減少し、商品価値が下がるという問題がある。
【0004】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、耐外傷性に優れ、擦れ等による白化が抑えられて良好な表面光沢を有する発泡シースケーブルを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、導体を発泡シースで被覆してなる発泡シースケーブルにおいて、前記発泡シースにおいて、表皮部の発泡率が導体側の発泡率よりも小さくなるように、その厚さ方向に発泡率が変化しており、かつ、前記発泡シースの表面から始まり、0.1〜0.2mmのところで終わる領域における発泡率が1〜8%であることを特徴とする発泡シースケーブルを提供する。特に、前記発泡シースの表面から始まり、0.1〜0.2mmのところで終わる領域における発泡率が1〜2%であることが好ましい。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に関して詳細に説明する。
図1(a)は本発明の発泡シースケーブルの一例を図2に対応させて示した断面図であり、2本の導体1を並列してその周囲を発泡シース2で一括被覆して構成されている。
【0007】
本発明においては、図1(b)に拡大して示すように、発泡シース2の表皮部2aの発泡率を導体1側の部分(以下、「深層部2b」と呼ぶ)よりも小さくなるように形成してある。尚、ここでいう発泡率とは、発泡シース材料の発泡前の密度に対する発泡後の密度の減少率(%)を示すものである。即ち、発泡シース2において、深層部2bでは従来と同様に比較的大径の発泡セル3bが数多く存在しているのに対し、表皮部2aでは深層部2bの発泡セル3bに比べて小径の発泡セル3aが、深層部2bの発泡セル3bの密度に比べて粗に存在しており、更に表面の極く近傍では微細な発泡セルがまばらに存在するだけで、未発泡に近い状態となっている。
【0008】
従って、本発明の発泡シースケーブルでは、発泡シース2の表面は非発泡シースとほぼ同様であり、同等の耐外傷性及び光沢を有する。また、表皮部2aでは発泡セル2aが少なく、しかも発泡セル2aの径も小さいことから、表皮部2aに外傷が生じた場合でも発泡セル2aに起因する凹凸がほとんど形成されず、外傷が目立つこともない。このような効果は、後述される実施例にも示すように、発泡シース2の表面から始まり、0.1〜0.2mmのところで終わる表皮部2aにおける発泡率が8%以下、特に1〜2%である時に特に顕著に現れる。表皮部2aの厚みが0.1mm未満では上記した耐外傷性が不十分であり、一方0.2mmを超えても耐外傷性の改善は余り変わらず、むしろケーブルの強度低下につながる。尚,深層部2bの発泡率には特に制限は無く、従来の発泡シースと同等の発泡率で構わないが、一般に15%程度が上限である。
【0009】
また、本発明の発泡シースケーブルは、深層部2bでは従来の発泡シースと同様の発泡状態であるから、ケーブルの柔軟性の向上及び軽量化、シースの剥離性の向上等の目的は十分に達成することができる。
【0010】
本発明の発泡シースケーブルを作製するには、従来から知られている合成樹脂に発泡剤を配合した発泡シース材料を適宜選択して用いることができる。合成樹脂の例としては、塩化ビニル樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンーα−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体などのオレフィン系樹脂等が好ましく挙げられる。一方、発泡剤としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム等の無機発泡剤や、アゾ化合物、スルホヒドラジド化合物、ニトロソ化合物、アジド化合物等の有機発泡剤を好適に用いることができる。発泡剤の配合量は、必要に応じて適宜設定することができるが、発泡シース材料の総重量の0.02〜5.0重量%が好ましく、さらに好ましくは0.02〜0.5重量%である。発泡剤の合成樹脂への配合は、合成樹脂に発泡剤を直接練り込むこともできるし、予め発泡剤を含むマスターバッチを調製し、該マスターバッチと合成樹脂とを混練することもできる。また、必要に応じて、適当な発泡促進剤を併用することもできる。
【0011】
そして、上記の発泡シース材料を常法に従って導線1に押し出すと同時に含有する発泡剤を発泡させる。次いで、押し出し直後のケーブルを水浴に浸漬するが、この時の水温により発泡シース2の表皮部2aにおける発泡率を制御することができる。即ち、水温が高いほど、発泡シースの発泡率が大きくなる傾向にあり、本発明においては水温を17℃以下とすることにより、上記した発泡シース2の表面から0.1〜0.2mmまでの表皮部2aの発泡率を8%以下に抑えることができる。
【0012】
また、発泡シースの発泡率を厚さ方向に変化させるには、上記した所定量の発泡剤を配合した発泡シース材料を用い、所定温度で水冷する1層押出成形方法のほか、発泡剤を少なく配合した第1の発泡シース材料と、発泡剤を多く配合した第2の発泡シース材料とを用い、第2の発泡シース材料を導体側とし、第1の発泡シース材料を外側にして2層押出成形する方法を採用してもよい。この場合は、第1の発泡シース材料の発泡剤の量を調整することにより、特に水温を規定する必要はなくなる。
【0013】
【実施例】
以下、実施例、比較例および参考例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0014】
(実施例1〜5、比較例1、参考例1)
塩化ビニル樹脂100重量部に、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(ADCA)を0.05重量部添加して十分混練して発泡シース材料を調製した。次いで、2本の銅線を並列させた上にこの発泡シース材料を押出して被覆し、被覆直後のケーブルを下記表1に示す水温の水浴中に浸漬して発泡シースケーブルを作製した。また、参考例1として、発泡剤を含まない塩化ビニルで被覆したケーブルを作製した。
【0015】
放冷後、各発泡シースケーブルを切断し、発泡シースの表面から0.2mmまでの厚さの表皮部の発泡率、及びその他の部分(深層部)の発泡率をそれぞれ求めた。結果を表1に示した。
【0016】
また、測色色差計を用い、各発泡シースケーブルの製造直後の光沢度及び研磨紙「♯100」を用い、0.5Nの荷重をかけながら200mm/secのスピードで外傷を与えた後の白色度をそれぞれ測定した。参考例1の光沢度及び白色度をそれぞれ100とし、それに対する指数として表1に示した。
【0017】
【表1】
Figure 0003963633
【0018】
表1から明らかなように、本発明に従い、水温17℃以下の水浴に浸漬して表皮部の発泡率を制御した実施例の各発泡シースケーブルは、発泡率が均一な比較例1の発泡シースケーブルと比べて白色度指数及び光沢度指数共に優れている。特に、表皮部の発泡率が2%以下である実施例4及び実施例5では、未発泡のシース(参考例)と遜色の無い結果が得られている。
【0019】
また、各実施例から、水温が低くなるほど表皮部の発泡率が低下しており、水温により表皮部の発泡率を制御できることが確認された。例えば、特に好ましい結果が得られている表皮部の発泡率を2%以下とするには、水温を9℃以下とすればよい。
【0020】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、発泡シースケーブルの従来からの目的である柔軟性の向上、軽量化、シースの除去の容易さの向上等を十分に達成できることは勿論のこと、耐外傷性に優れ、良好な表面光沢を有する発泡シースケーブルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の発泡シースケーブルの断面を模式的に示す図である。
【図2】従来の発泡シースケーブルの断面を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1 導体
2 発泡シース
2a 発泡シースの表皮部
2b 発泡シースの深層部
3 発泡セル
3a 発泡セル(小)
3b 発泡セル(大)

Claims (2)

  1. 導体を発泡シースで被覆してなる発泡シースケーブルにおいて、前記発泡シースにおいて、表皮部の発泡率が導体側の発泡率よりも小さくなるように、その厚さ方向に発泡率が変化しており、かつ、前記発泡シースの表面から始まり、0.1〜0.2mmのところで終わる領域における発泡率が1〜8%であることを特徴とする発泡シースケーブル。
  2. 前記発泡シースの表面から始まり、0.1〜0.2mmのところで終わる領域における発泡率が1〜2%であることを特徴とする請求項1記載の発泡シースケーブル。
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