JP3963310B2 - 押鍵表示装置および電子鍵盤楽器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は押鍵表示装置および電子鍵盤楽器に関し、特に、種々の音域を有する曲を演奏する際の押鍵位置および押鍵タイミングを指示することができる押鍵表示装置および鍵盤楽器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子ピアノ等の鍵盤楽器において、各鍵に対応して配置した発光ダイオード(以下「LED」という)を点灯させ、押鍵すべき鍵と手の位置および指の情報を含む運指情報とからなる運指ガイド情報を指示する押鍵表示装置を設けたものがあった。この種の鍵盤楽器では、演奏情報に基づいて押鍵すべき鍵や運指情報等を表示できるので、演奏者は、前記押鍵表示装置の表示に従って手軽に演奏することができる。押鍵すべき鍵や運指情報等の表示データを含む演奏情報は、予め記憶装置に記憶されていることもあるし、MIDIシーケンサ等の外部装置から入力するようにしてあることもある。
【0003】
押鍵表示装置は、電子鍵盤楽器に内蔵されたものと、鍵盤に隣接させて後付けで配置するものとがある。本発明者は、鍵盤蓋の裏に吸着させて使用することができる押鍵表示装置を提案している(特開平11−282337号公報)。
【0004】
電子鍵盤楽器は、移動や持ち運びの利便性を高めるため、アコースティックピアノよりも鍵数を少なくして、例えば、61鍵や75鍵等にしていることが多い。しかし、このように鍵数が少ない電子鍵盤楽器では、88鍵のアコースティックピアノを基本にしている原曲に忠実な演奏をすることができない。
【0005】
そこで、アコースティックピアノと同様に88鍵を備えた電子鍵盤楽器も製造されている。このように、鍵数が多い電子鍵盤楽器では、押鍵表示装置も88鍵に対応するものが使用されるべきである。しかし、押鍵表示装置の鍵数を多くすると、押鍵表示装置のサイズ(特に幅)が大きくなるだけでなく、発光素子の数も増えてコスト増大や制御の複雑化によるCPUの負荷増大を招く。上記公報に記載された押鍵表示装置は、サイズを小さくして中音域をカバーするように構成されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記押鍵表示装置や音域が狭い電子鍵盤楽器では、少ない鍵数で演奏できない音域の演奏情報を修正して曲をアレンジしたり、設けられている鍵盤の音域を外れる音域の演奏データは無視して押鍵表示を省略したりして対応している。しかし、このような、押鍵表示装置では、88鍵のアコースティックピアノを基本とする原曲に忠実な演奏を支援することができない。
【0007】
本発明は、上記問題点を解消し、小さいサイズであって広い音域幅をカバーすることができる押鍵表示装置および押鍵表示装置を備えた電子鍵盤楽器を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決し、目的を達成するための本発明は、演奏情報に基づいて鍵盤楽器の押鍵位置を表示する押鍵表示装置において、鍵盤楽器の鍵盤の音域より少ない音域の押鍵位置を表示するための表示手段と、演奏情報に含まれる音高情報を1オクターブ単位で変化させる演奏情報変化手段と、前記変化させられた演奏情報に従って前記表示手段を駆動するための表示データを作成する表示データ作成手段と、前記演奏情報の音高情報を変化させる量を選択するスイッチ手段とを具備した点に第1の特徴がある。また、本発明は、第1の特徴に加え、演奏情報に基づいて発音する自動演奏手段をさらに備えた点に第2の特徴がある。
【0009】
また、本発明は、前記鍵盤楽器の鍵盤に対する前記表示手段の設置位置を検出して位置検出信号を出力するセンサ手段を備え、前記スイッチ手段が、前記位置検出信号に応じて音高情報の変化量を自動的に選択するように構成された点に第3の特徴がある。
【0010】
また、本発明は、前記鍵盤楽器に対する位置合わせのために1オクターブ間隔で設けられたポジションマークを備えた点に第4の特徴がある。
【0011】
第1〜第4の特徴によれば、鍵盤楽器が有する音域より狭い音域の押鍵表示を行う表示手段で鍵盤楽器の使用音域をすべてカバーできるように、押鍵表示のための演奏情報を1オクターブ単位で音高移動させることができる。この音高移動により、押鍵表示装置が本来有している表示音域外の演奏情報に基づく押鍵表示が可能になる。
【0012】
第2の特徴を有する発明では、押鍵表示のために演奏情報は音高変化させられる一方、自動演奏用には入力された演奏情報がそのまま使用される。
【0013】
第3の特徴によれば、演奏情報の音高情報変化量が、押鍵表示装置の設定位置に応じて自動的に決定される。第4の特徴によれば、ポジションマークに従って押鍵表示装置の位置を決めればよいので、操作が簡単である。
【0014】
さらに、本発明は、演奏情報に基づいて押鍵位置を表示する押鍵表示装置を有する電子鍵盤楽器において、演奏情報に含まれる音高情報を1オクターブ単位で変化させる音高情報変化手段と、前記変化させられた演奏情報に従って押鍵表示装置を駆動するための表示データを作成する表示データ作成手段と、押鍵データの音高情報を1オクターブ単位で変化させる押鍵データ変化手段と、前記演奏情報および押鍵データの音高情報を変化させる量を選択するスイッチ手段とを具備した点に第5の特徴がある。また、本発明は、第5の特徴に加え、演奏情報に基づいて発音する自動演奏手段をさらに備えた点に第6の特徴がある。
【0015】
第5および第6の特徴によれば、押鍵表示の範囲をシフトして種々の音域で押鍵表示が行えるとともに、数少ない鍵の鍵盤で種々の音域の演奏を行うことができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の押鍵表示装置および該押鍵表示装置を装着したピアノの要部外観を示す図である。同図において、押鍵表示装置1はピアノ2の鍵盤3に隣接させて、例えば鍵盤蓋4の裏面に吸盤で吸着させて配置することができる。ピアノ2は88鍵を有するものであるが、押鍵表示装置1は、ピアノ2の全音域つまり88鍵に対応した表示幅を有するものでなく、例えば、88鍵に対して52鍵分の押鍵表示をできるように、制限された幅を有する。
【0017】
押鍵表示装置1は押鍵位置を表示するための鍵盤型の面発光板5を有している。つまり、面発光板5は白鍵および黒鍵のいずれを押鍵するかを明確に指示できるよう、白鍵および黒鍵の配置に対応して区分されている(図2参照)。押鍵表示のための面発光板5は図示しないスロットにセットされる自習ソフト6から入力される演奏情報に従って点灯制御される。自習ソフト6は例えばROMカードである。図1では押鍵表示装置1が高音域および低音域を除く音域に対応する位置に設置されているが、この押鍵表示装置1は鍵配列方向に沿って高音域および低音域側へ1オクターブ単位で位置を変えて設置し、演奏曲の音域に対応させることができる。
【0018】
表示操作パネル7上には、演奏を開始するためのスイッチ8a、押鍵表示装置1の位置を変えたときに押鍵位置情報を1オクターブ単位で移動させるためのポジション選択スイッチ8b、練習する手に応じた演奏情報を選択する押鍵指示スイッチ8cおよび演奏や表示のテンポを調節するテンポキー8dが設けられる。また、演奏情報の出力状態つまり現在出力中の曲名、テンポ、小節数、押鍵に使用される手の左右の別等を表示するため、LCDスクリーンからなるディスプレイ9が設けられる。押鍵表示装置1は伴奏の発音をするためのスピーカ10を備える。
【0019】
次に、面発光板5およびそれに対応して配置されるLEDを説明する。図2は押鍵表示装置1の要部拡大図である。同図において、鍵盤型の面発光板5は白鍵表示板51と黒鍵表示板52とからなる。該表示板51,52はそれぞれ押鍵すべき白鍵および黒鍵を表示するためのものであり、押鍵に使用される指に対応して5色で発光させるのが好ましいが単色であってもよい。白鍵発光板51および黒鍵発光板52は半透光性の樹脂板を使用し、裏面にはLEDを配置する。白鍵発光板51および黒鍵発光板52とLEDとの間には、白鍵発光板51,黒鍵発光板52のそれぞれを全体的に発光させる効果を与えるため、光散乱板を介在させるのがよい。白鍵発光板51,黒鍵発光板52を発光させるために、それぞれに設けられるLEDは、5つの発光色に対応した5個の単色LEDのみであってもよいし、2色LED等、多色LEDを含んでいてもよい。多色LEDを用いて各LED素子に供給する電流を変化させることにより、5色の発光色は容易に得ることができる。
【0020】
また、面発光板5の長手方向に沿って図中上下両側に次白鍵指示灯11と、次黒鍵指示灯12とが配置されている。これらの指示灯は現在弾くべき鍵を表示するためのものではなく、次の押鍵タイミングを認識できるように、次に弾かれるべき鍵までの案内表示をするために設けられるものであり、2色LEDが用いられる。ここでは指示灯11,12がそれぞれ赤色と緑色とで点灯できるように、赤のLED素子と緑のLED素子とが一体に組み込まれた2光LEDを使用している。次白鍵指示灯11は次に弾かれるべき白鍵を案内するために点灯され、次黒鍵指示灯12は次に弾かれるべき黒鍵を案内するために点灯される。各指示灯11,12の個々のLEDはそれぞれ白鍵および黒鍵の中心位置に対応させて位置決めしたもの(例えばB,W)と、その間を補うように位置決めされたもの(例えばBa,Wa)とからなる。
【0021】
次に、押鍵表示装置1の制御装置を説明する。図3は制御装置のハード構成を示すブロック図である。CPU13は、ROM14に格納されている制御プログラムに基づき、押鍵表示装置全体の制御を行う。CPU13は、該CPU13に自習ソフト6を接続するためのポートを有している。ROM14は制御プログラムならびに楽音波形データおよびエンベロープ制御情報等を含んでいる。RAM15はワークエリアおよびバッファとして使用され、バッテリ等によりバックアップされていてもよい。パネル回路16は、前記スイッチ8a等の各種スイッチやディスプレイ9ならびにそれらのインターフェース回路からなる。
【0022】
自習ソフト6の演奏情報には音符情報(ノートデータ)つまり音の高さおよび音の長さのほかに、そのノートデータが左手で演奏されるものか、右手で演奏されるものかを示す情報ならびに使用する指を表す運指情報が含まれる。なお、左手用の演奏情報および右手用の演奏情報を、それぞれ別個のトラックに格納した自習ソフトを使用することができる。
【0023】
シフトレジスタ17は、前記ノートデータに基いてCPU13で生成された表示制御データを受信し、かつそれを保持して押鍵表示装置1の面発光板5の各LED素子を駆動する。シフトレジスタ17は前記各LED素子と対応する段数を有する。シフトレジスタ17の出力端子はスイッチング素子(後述する)のベースに接続され、各LED素子は該スイッチング素子を介して電源に接続される。前記スイッチング素子は、シフトレジスタ17に転送された表示制御データのビットが「0」の場合にはLEDが点灯され、「1」の場合にはLEDが消灯されるように制御される。LED素子の駆動回路は図5等に関してさらに後述する。
【0024】
表示データ送信回路18は信号送出用のシフトレジスタ(図示せず)を有し、表示データ送信回路18は、CPU13の制御により、前記各LED素子と対応する表示制御データの各ビットデータを直列信号として送出するとともに、該信号と同期してシフトレジスタ17のシフトパルスを送出する。したがって、前記LED素子のすべてについての表示制御ビットデータが1回で転送される。転送速度は、転送時の表示のちらつきが肉眼で認識されないように、数百キロビット/秒以上とする。シフトレジスタにセットされるデータをラッチするパラレルバッファをシフトレジスタ17の代わりに設ければ、低速での伝送も可能である。
【0025】
楽音発生回路19は、波形読み出し方式により所望の楽音信号を発生する回路であり、ROM14内に設定されている波形メモリに記憶されているデジタル楽音波形サンプル値としての波形データを参照して、発音すべき音高に比例したアドレス間隔で順次波形データを読み出し、補間演算を行って楽音波形信号を発生させる。楽音発生回路19は設定されたエンベロープパラメータに基づいたエンベロープ信号を楽音波形信号に乗算してエンベロープを付与するエンベロープ発生回路を有する。
【0026】
楽音発生回路19から出力される楽音信号はデジタル信号であり、D/A変換器20によってアナログ信号に変換される。アナログ信号に変換された楽音信号はアンプ21によって増幅された後、スピーカ10に供給されて発音される。
【0027】
図4は、CPU13の要部処理を示すフローチャートである。ステップS1ではRAM15や楽音発生回路19を初期化する。ステップS2では、パネル回路16上のスイッチ等の状態の変化に基づいて、予め設定されているスイッチイベント処理を行う。ステップS3では、自習ソフト6の演奏情報に基づき、自動演奏処理が実行される。自動演奏処理においては、タイマ割り込みによって更新される自動演奏用タイマつまりタイミングカウンタを、曲のテンポに比例して歩進させる。そして、この自動演奏用タイマ値が演奏情報中の各発音データのタイミング情報と一致したとき、つまり発音タイミングに達したときに、該発音データに従って発音する。
【0028】
なお、前記演奏情報を、発音に使用するものと押鍵表示のみに使用するものとに分離し、自動演奏処理ではそのうちの発音に使用される演奏情報のみを処理する。例えば、自動演奏処理で発音される音は押鍵操作で発音される音(ここではピアノ音)と異なる音色(ギター音等)で発音させる。
【0029】
ステップS4においては、押鍵表示処理が行われる。この押鍵表示処理においては、前記演奏情報に基づき、押鍵位置および次の押鍵位置と押鍵タイミングを面表示板5等で表示するための処理を行う。
【0030】
続いて、前記押鍵表示処理(ステップS4)を詳細に説明する。まず、押鍵表示のための前記各LED素子の接続例を説明する。図5は前記次白鍵指示灯11の要部であり、2つ分の指示灯つまりLEDを示す。LED30はLED素子30a,30bを有し、LED31はLED素子31a,31bを有する。ここでは、LED素子30a,31aが赤発色、LED素子30b,31bが緑発色のものとする。LED素子30aのアノードはトランジスタ32を介して5V電源に接続され、同カソードは抵抗33を介して接地されている。トランジスタ32のベースはシフトレジスタ17の出力端子に接続されている。LED素子30b,31a,31bも同様にトランジスタ34,36,38ならびに抵抗35,37,39にそれぞれ接続され、トランジスタ34,36,38のベースはシフトレジスタ17の各段の出力端子に接続される。
【0031】
動作時には、LED素子30a,30b,31a,31bは、対応するシフトレジスタ17内のデータが「0」ならば点灯し、「1」ならば消灯する。図5の例ではLED素子30a,31bが点灯し、LED素子30b,31aが消灯する。したがって、LED30は赤、LED31は緑でそれぞれ発色される。なお、LED30,31は2色LEDであるので、赤および緑の混合色としての橙色で発色させることができるのはもちろんであり、赤および緑の2色に限定されない。
【0032】
前記白鍵表示板51や黒鍵表示板52に設けられた表示灯、および次黒鍵指示灯12のLED素子も、上記LED30,31等と同様に駆動素子としてのトランジスタを通じてシフトレジスタ17に接続することができる。
【0033】
次に、押鍵表示の一例を説明する。図6は面表示板5と次白鍵指示灯11、次黒鍵指示灯12の点灯例を示す図である。ここでは、先に弾く鍵がEであり、次に弾く鍵がG# である場合を想定する。まず、同図(a)に示すように鍵Eに対応する白鍵表示板51E を赤で点灯させ、かつ次白鍵指示灯11の、白鍵表示板51E に対応している11E を赤に点灯させる。ここで、白鍵表示板51E の赤は親指を表すものとする。一方、次に弾く鍵G# に対応している次黒鍵指示灯12G#を中心として低音側および高音側にそれぞれ3つ離れて配置されている次黒鍵指示灯12LAと12HAとを緑で点灯させる。
【0034】
前記次黒鍵指示灯12LAと12HAとを点灯させたあと、鍵Eから鍵G# を弾くまでの時間つまり鍵Eの音符長さに対応する時間Tを前記次黒鍵指示灯12G#と次黒鍵指示灯12LAまたは12HAとの間隔Lで除算したときの商に相当する時間t(=T/L)が経過する毎に次黒鍵指示灯12の点灯位置を変化させる。
【0035】
すなわち、最初の時間tが経過した場合は図6(b)に示すように次黒鍵指示灯12LBおよび12HBが緑で点灯する。さらに次の時間tが経過した場合は図6(c)に示すように次黒鍵指示灯12LCおよび12HCが緑で点灯する。さらにその次の時間tが経過した場合は、図6(d)に示すように次黒鍵指示灯12G#が赤で点灯し、同時に白鍵表示板51E および11E は消灯するとともに黒鍵表示板52G#が橙で点灯する。ここで、黒鍵表示板52G#の橙は小指を表すものとする。
【0036】
黒鍵表示板52G#が点灯すると、その次に弾くべき鍵を案内するための次白鍵指示灯11または次黒鍵指示灯12が、上述の鍵G# を案内するように点灯される。図6(d)では、次に弾くべき鍵がCである場合の次白鍵指示灯11の点灯例を示している。つまり、次に弾く鍵Cに対応している次白鍵指示灯11C を中心として低音側および高音側にそれぞれ3つ離れて配置されている次白鍵指示灯11LAと11HAとを緑で点灯させる。
【0037】
このように、本実施形態では、今弾くべき鍵が表示されたならば、次白鍵指示灯11または次黒鍵指示灯12によって、次に弾くべき鍵まで表示が移動していって一点に絞り込まれるような表示が行われる。これにより、次の鍵を弾くまでの時間を視覚によって認識できるので押鍵タイミングをとりやすくなる。
【0038】
図7は押鍵表示に使用されるRAM15上の記憶データの要部を示す模式図である。同図において、記憶領域Pには各LED素子に対応する表示制御データの各ビットデータが格納される。図7における番号は各LED素子に対応する領域を示すものであり、領域はLED素子の数nに対応して、「0」から「n−1」まで設定されている。点灯させたいLED素子に対応する領域にはビットデータ「0」を、消灯させたいLED素子に対応する領域にはビットデータ「1」が格納される。
【0039】
一方、記憶領域Qには押鍵すべき鍵を示す演奏情報が格納され、記憶領域Rには、その次に押鍵すべき鍵を示す演奏情報が格納される。演奏情報には音高データと、該音高データで示される鍵と対応する白鍵表示板51および黒鍵表示板52を点灯するLEDの色を示すデータつまり指情報も含まれる。前記領域RおよびQのデータは、前記自動演奏処理において演奏情報が1つ処理される毎に更新される。
【0040】
次に、LED表示制御データの設定処理をフローチャートを参照して説明する。図8のステップS10では、演奏情報の音符長さに相当する時間を示す時間パラメータTが「0」か否かを判断する。前記メインフローチャートの初期化において該パラメータTは「0」にリセットされているのでステップS10の最初の判断は肯定となる。ステップS11では、演奏情報のうち、押鍵表示のための演奏情報を1つ読み出す。ステップS12では、領域Rに格納されている演奏情報つまり次押鍵情報を、現押鍵情報の格納領域Qに転送し、新たに読み出した演奏情報を次押鍵情報の格納領域Rに書き込む。
【0041】
ステップS13では、最初の処理か否かを判断する。最初の処理ならば、ステップS11に戻り、さらに演奏情報を1つ読み出す。その結果、続くステップS12の実行により、領域Rおよび領域Qにデータが揃う。2回目以降の処理では、ステップS13は否定となり、ステップS14に進む。ステップS14では領域Q内の演奏情報に含まれる音高データと指情報つまりどの指で弾くかの情報とに基づいて、点灯する面発光板5と発光色を決定し、該当するLED素子に対応する領域Pに「0」をセットする。
【0042】
ステップS15では、領域Q内の演奏情報の音高データに対応する位置にある次白鍵指示灯11または次黒鍵指示灯12を特定し、該当する予定色(図6に従えば赤)と対応するLED素子に関する領域Pのビットを「0」にセットする。
【0043】
ステップS16では、領域R内の演奏情報の音符長さに相当する時間を時間パラメータTとしてセットする。この時間Tは設定されているテンポと音符長さとの関数である。ステップS17では時間t(=T/L)を算出する。Lは予め定めた整数であり、例えば「L=3」とする。ステップS18では、時間tおよび時間Tで、例えばダウンカウンタをリセットする。このダウンカウンタは予定のクロックに従ってカウンタ値がデクリメントされる。
【0044】
ステップS19では、領域R内の演奏情報の音高データに従ってその音高の鍵(次に押鍵すべき鍵)から低音側および高音側にそれぞれ予定間隔(図6に従えば3つ分)離れた位置に設けられている次白鍵指示灯11および黒鍵指示灯12を特定し、該当する予定色(図6に従えば緑)のLED素子と対応する領域Pのビットをそれぞれ「0」にセットする。
【0045】
ステップS20では時間tが経過したかどうかを前記ダウンカウンタの値に基づいて判断し、肯定ならばステップS21に進む。ステップS21では、次押鍵指示のため領域Pに格納されたデータを更新する。すなわち、指示灯11や12の点灯位置を次押鍵位置(領域R内のデータが示す位置)に近付けるように、次白鍵指示灯11および黒鍵指示灯12のうち、領域Pに格納されていたものを示すナンバをそれぞれ1つずつ変更する。具体的には、次押鍵位置より低音側の点灯位置は高音側に移動させ、次押鍵位置より高音側の点灯位置は低音側に移動させる。
【0046】
こうして、音符長さに対応した時間Tが経過するまで、つまりステップS10が肯定となるまでは、次の押鍵タイミングを示す次白鍵指示灯11および黒鍵指示灯12の点灯位置が時間t経過毎に変更される。時間Tが経過したならば、ステップS11〜S19により、新たな演奏情報に基づく処理が実行される。
【0047】
こうして、LED表示制御データは次々に読み込まれる演奏情報で更新され、このLED表示制御データは予定の割り込みタイミングで領域Pから前記シフトレジスタ17に転送される。なお、シフトレジスタ17への転送タイミングは、前記領域Pの更新タイミングよりも極めて短く設定してあることはもちろんである。
【0048】
次に、押鍵表示装置1を鍵盤の幅方向つまり音高方向に移動させて使用する場合を説明する。図9は鍵盤3と押鍵表示装置1との位置関係を示す図である。同図において、押鍵表示装置1は52鍵分の指示を表示する面発光板5を有しており、1オクターブずつ異なる4つのポジション(設置位置)をとることができる。すなわち、最も低音側(A-1〜C4)に設定される第1ポジションと、第1ポジションから1オクターブ高音側(A0〜C5)の第2ポジションと、第2ポジションから1オクターブ高音側(A1〜C6)の第3ポジションと、第3ポジションから1オクターブ高音側(A2〜C7)の第4ポジションとである。
【0049】
上記各ポジションのうち、例えば、第3ポジションを標準ポジションとした場合、第1ポジションでは演奏情報のうち押鍵表示に使用する音高情報を押鍵表示処理で2オクターブ上げる。同様に、それぞれ第2ポジションでは1オクターブ上げ、第4ポジションでは1オクターブ下げる。こうして、1オクターブ単位で上下移動させた演奏情報により、押鍵表示処理を行う。
【0050】
図10は、押鍵表示装置1のポジションを入力するポジション選択スイッチ8bの例を示す図である。この例では、ロータリスイッチで構成され、切換位置に応じてポジション位置が表示されている。このポジション選択スイッチ8bでポジションが選択されると、選択されたポジションに合わせて押鍵表示のための演奏情報の音高が上下される。
【0051】
なお、ロータリスイッチに代えてプッシュスイッチを使用してもよい。つまり、ダウン(下げ方向)とアップ(上げ方向)を指示するプッシュスイッチをそれぞれ設け、ポジションを変更する。選択されたポジションはディスプレイ9に表示できるようにするのがよい。ポジション選択スイッチ8bは押鍵表示装置1の位置を変化させる操作に付随して行う。
【0052】
押鍵表示装置1を第1ポジションに置いて左手の運指を練習するときを例にして押鍵表示装置1の動作を説明する。まず、押鍵表示装置1を鍵盤3の左端に設置するとともに、ポジション選択スイッチ8bで第1ポジションを選択する。次に押鍵指示スイッチ8cで左手を指定する。その後、演奏開始スイッチ8aをオンにすると自動演奏および押鍵表示が行われる。
【0053】
自動演奏処理では、押鍵指示スイッチ8cの指定に従って左手の演奏情報を読み込んで自動演奏してもよいし、両手の演奏情報に従って自動演奏しても良い。押鍵表示は左手の演奏情報に従って行われ、特に演奏情報は選択されたポジションに応じて2オクターブ分高音側に移動されて押鍵表示に使用される。
【0054】
図11は演奏情報の変化処理を示すフローチャートであり、図8に示したLED表示制御データの設定処理に先だって実行される。図11のステップS40ではポジション選択スイッチ8bの状態を読み込み、選択されたポジションを記憶する。ステップS41では練習ソフトの演奏情報を読み込む。このとき、押鍵指示スイッチ8cの指定に従い、左手の演奏情報が記憶されたトラックが選択されて左手の演奏情報が読み込まれる。
【0055】
ステップS42では、選択されたポジションが判断される。第1ポジションならばステップS43に進んで演奏情報を2オクターブ上げる。第2ポジションならばステップS44に進んで演奏情報を1オクターブ上げる。第3ポジションならばそのままの演奏情報を維持する。第4ポジションならばステップS45に進んで演奏情報を1オクターブ下げる。ステップS46では、処理された演奏情報を押鍵指示用の演奏情報として記憶する。こうして音高を変更された演奏情報は図8のステップS1で読み出されてLED表示制御データの設定処理に使用される。
【0056】
押鍵表示装置1は、第3ポジションつまり標準ポジションに置かれて使用されたときに適切に押鍵表示するように設定されている。したがって、他のポジションの演奏情報をそのまま使用して押鍵表示すると表示できない部分が生じるが、上述のように押鍵表示に使用する演奏情報の音高を変更することにより、適切に押鍵表示することができる。
【0057】
図12は本実施形態の押鍵表示装置の要部機能を示すブロック図である。演奏情報記憶部23には演奏情報が格納される。演奏情報は上述のように練習ソフト6から読み込まれるものであってもよいし、MIDI情報としてパソコン等の外部機器から入力されるものであってもよい。演奏情報記憶部23の演奏情報は押鍵表示のため、演奏情報変化部24を介してLED表示データ作成部25に読み出される。演奏情報変化部24はポジション選択スイッチ8bから入力されるポジション指示に従って演奏情報のうち音高情報を1オクターブ単位で変化させる。押鍵表示装置1での、ポジションに応じた音高情報の変化量はすでに述べた通りである。LED表示データ作成部25は、音高情報が変化された演奏情報に従ってLED表示データを作成し、LED駆動部26に入力する。LED駆動部26はLED表示データに従って面発光板5の裏面等に配置されたLEDに駆動信号を供給する。なお、自動演奏部27には、音高情報を変化させないでそのまま演奏情報が供給される。
【0058】
上記実施例では練習する音域に応じてポジション選択スイッチ8bを操作するようにしたが、押鍵表示装置1の設置位置をセンサで検出し、その検出結果に応じて自動的に演奏情報の音高変化を行うようにしてもよい。例えば、押鍵表示装置1の裏面に光センサを設ける。一方、ピアノ側の上面の予定位置に光反射シールを貼り付ける。そして、この光反射シールからの反射光の有無を前記光センサで検出し、位置を判別する。
【0059】
図13は押鍵表示装置1に設ける光センサと光反射シールとの位置関係、ならびに光センサの出力と押鍵表示装置1のポジションとの対応を示す図である。図13において、光センサ60,61はピアノ上面に光を照射してその反射光を検出する。そして検出レベルに応じ、反射光レベルがしきい値以上であれば「1」、しきい値以下であれば「0」の信号を出力する。
【0060】
第1ポジションには光反射シールは設けられていないので反射光は低レベルであり、光センサ60,61の出力は「0,0」である。第2ポジションでは、光センサ61に対応するピアノ上面に光反射シール62が設けられているので、光センサ60,61の出力は「0,1」である。第3ポジションでは、光センサ60に対応するピアノ上面に光反射シール63が設けられているので、光センサ60,61の出力は「1,0」である。さらに、第4ポジションでは、光センサ60,61の双方に対応するピアノ上面に光反射シール64,65が設けられているので、光センサ60,61の出力は「1,0」である。このように、光センサ60,61の出力は押鍵表示装置1のポジションに応じて異なるので、この出力値に基づいてポジションを判別することができる。
【0061】
押鍵表示装置1を第1〜第4ポジションに設置する操作を容易にするため、押鍵表示装置1に目印を付けるのが好ましい。図9において、押鍵表示装置1の面発光板5に、1オクターブ間隔で目印としてのポジションマーク66、67,68,69を設ける。ポジションマーク66〜69は第1ポジション〜第4ポジションに応じて4カ所に設けられる。このポジションマーク66を例えばピアノの中央前面に設けられるピアノの鍵盤蓋の鍵穴に合わせると各ポジションに押鍵表示装置1が設定されるように決めておく。こうすることにより、ポジションマーク66が鍵穴に合うように見当をつけて押鍵表示装置をピアノ上に置けば、容易にポジションを決めることができる。
上記実施形態では、88鍵のピアノに52鍵の押鍵表示装置1を付設する場合を示した。しかし本発明はこれに限らず変形可能である。例えば、押鍵表示装置が一体に組み込まれた電子鍵盤楽器として本発明を実現できる。この場合、電子鍵盤楽器の鍵盤は88鍵より少ない鍵盤、例えば52鍵の鍵盤とし、この52鍵の鍵盤に関して押鍵表示を行う面発光板を備える。演奏に際しては、練習曲の音域に応じて演奏情報の音高情報を1オクターブ単位で変化させる。この点は、上述の分離された押鍵表示装置を使用する実施形態と同じである。変形例では、演奏情報に基づいて発音させる自動演奏機能とともに演奏者の押鍵に応じて所望の音色(例えばピアノ音色)で発音する機能を備えるものとする。
【0062】
つまり、鍵盤と鍵盤の押鍵と離鍵、および押鍵ベロシティ等を検出するセンサと、該センサの検出信号つまり押鍵データに基づいて楽音を発生する発音手段とを備える。押鍵データに基づいて楽音を発生する手段は、演奏情報に基づいて楽音を発生する図3の楽音発生回路19等を共用することができる。
【0063】
このような電子鍵盤楽器で低音側および高音側の練習をする場合は、押鍵データを押鍵指示のときと同様に1オクターブ単位で音高情報を上下させる。換言すれば、鍵盤の音域を1オクターブ単位でずらす処理を行う。演奏者の鍵盤操作以外で形成される演奏情報つまり自動演奏情報は音高を変化させないで自動演奏の発音に用いるのは、上述の分離された押鍵表示装置を使用する実施形態と同じである。
【0064】
なお、上記実施形態では、演奏情報からLED表示データを作成するために演奏情報のうち左手用の演奏情報を使用した。しかし、例えば、主旋律と伴奏とを区別して記述した演奏情報においては、主旋律および伴奏のうち、いずれか一方を使用してLED表示データを作成することができる。
【0065】
また、押鍵表示装置1は、次の押鍵位置の方向を案内表示する指示灯を有するものでなくてもよい。少なくとも演奏情報に基づいて押鍵位置が示されるものであればよい。また、面発光板5は必ずしも鍵盤と同じ形状である必要はなく、鍵盤の各鍵に対応した位置に配置されて押鍵位置を示す灯火手段又は発光手段であればよい。
【0066】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、請求項1〜請求項4の発明によれば、小型の押鍵表示装置で本来の表示範囲からシフトされた音域の押鍵指示を行うことができるので、中間音域だけなく、低音域や高音域の練習に効果を発揮することができる。
【0067】
また、請求項5および請求項6の発明によれば、本来の表示範囲からシフトされた音域の押鍵指示を行うことができるほか、鍵盤に対応する音高をシフトして本来有している音域を外れた低音域および高音域での演奏を行うことができる。したがって、鍵数の少ない鍵盤を有する小型の電子鍵盤楽器で、広範囲の音域の演奏を練習することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る押鍵表示装置を含むピアノの外観図である。
【図2】 押鍵表示装置の要部拡大図である。
【図3】 押鍵表示装置のハード構成を示すブロック図である。
【図4】 CPU1のメイン処理を示すフローチャートである。
【図5】 発光色を選択することができる発光手段の回路図である。
【図6】 押鍵表示装置の表示の一例を示す図である。
【図7】 RAM内の制御データフォーマットを示す説明図である。
【図8】 押鍵表示処理を示すフローチャートである。
【図9】 鍵盤に隣接して配置される押鍵表示装置を示す平面図である。
【図10】 ポジション選択スイッチの一例を示す図である。
【図11】 演奏情報変化の処理を示すフローチャートである。
【図12】 演奏情報変化処理の機能を示すブロック図である。
【図13】 押鍵表示装置の位置検出手段の説明図である。
【符号の説明】
1…押鍵表示装置、 2…ピアノ、 3…鍵盤、 5…面発光板、 6…自習ソフト、 8b…ポジション選択スイッチ、 9…ディスプレイ、 10…スピーカ、 18…表示データ送信回路、 23…演奏情報記憶部、 24…演奏情報変化部、 25…LED表示データ作成部、 51…白鍵発光板、 52…黒鍵発光板、 60,61…光センサ、 62〜65…光反射シール、 66〜69…ポジションマーク
Claims (4)
- 演奏情報に基づいて鍵盤楽器の押鍵位置を表示する押鍵表示装置において、
押鍵位置を表示するための表示手段であって、表示可能な音域幅が前記鍵盤楽器の鍵盤の音域幅より狭い表示手段と、
演奏情報に含まれる音高情報を1オクターブ単位で変化させる演奏情報変化手段と、
前記演奏情報変化手段で変化させられた演奏情報に従って前記表示手段を駆動するための表示データを作成する表示データ作成手段と、
前記演奏情報変化手段が変化させる1オクターブ単位の音高情報のオクターブ量を選択するスイッチ手段とを具備したことを特徴とする押鍵表示装置。 - 演奏情報に基づいて発音する自動演奏手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の押鍵表示装置。
- 前記鍵盤楽器の鍵盤に対する前記表示手段の設置位置を検出して位置検出信号を出力するセンサ手段を備え、
前記スイッチ手段が、前記位置検出信号に応じて前記演奏情報変化手段が変化させる1オクターブ単位の音高情報のオクターブ量を自動的に選択するように構成されたことを特徴とする請求項1記載の押鍵表示装置。 - 前記鍵盤楽器に対する前記表示手段の位置合わせのために前記鍵盤楽器の1オクターブ分の鍵盤幅間隔に対応する間隔で表示手段上にポジションマークを設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の押鍵表示装置。
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