JP3962932B2 - 複合型プレートヒートパイプ - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はプレートヒートパイプの構造に関するものであり、特に作動液の顕熱による熱伝達(作動液の振動及び又は循環による熱伝達)を主たる熱輸送原理とする蛇行細管トンネルヒートパイプからなるプレートヒートパイプと、作動液の潜熱による熱伝達(作動液の蒸気移動時の蒸発及び凝縮による熱伝達)を主たる熱輸送原理とする非蛇行細管トンネルヒートパイプ群からなるヒートパイプとが一体化され、それらが相互に補完しあって作動する構造を基本構造とする複合型プレートヒートパイプに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近来の半導体素子の進歩、及びそれに伴う機器実装技術の進歩により、半導体素子が大容量化し、機器実装が高密度化しつつあるにもにも拘わらず、業界では機器筐体の小型化軽量化が強く要求され、また小型化された筐体内における半導体素子群の増加発熱量の熱対策及び、大容量化した半導体素子群に依る筐体内部における部分的温度上昇に対する対応等が解決すべき大きな問題点となっている。これらの問題点解決の手段として薄形軽量なプレートヒートパイプに依る熱輸送、温度拡散、温度均一化が注目され、広く活用され始めている。
【0003】
プレートヒートパイプには各種多品種の構造のものがあるが、その殆どが形状が余りに大きかったり、重量が過大であったり、温度上昇時の作動液の飽和蒸気圧に十分に耐えることが出来なかったり、各種の問題点があるので最近の高密度実装機器に実用に供され、または実用化が期待されているプレートヒートパイプは殆ど次の三品種に限定されている。
(1) それらの第一は本発明者が発明実用化した特許第1967738号(ループ型細管ヒートパイプ)の応用である長尺の蛇行細管トンネルヒートパイプを薄肉金属プレートの中に作り込んで構成された薄肉軽量のプレートヒートパイプである。
(2) それらの第二は通称マイクロヒートパイプとして販売されている複数の細管ヒートパイプを薄肉金属プレートの間に並列挟持せしめて構成されたプレートヒートパイプである。
(3) それらの第三としては実用化例は少ないが注目されつつあるプレートヒートパイプとして極細管トンネルヒートパイプ群を薄肉プレートの中に作り込んで形成されたマイクロヒートパイプがある。通常のマイクロヒートパイプの各トンネルはその断面形状が角型をなしており、その角部は鋭角溝状であり、この鋭角溝がウイックの役目をすることにより1mm以下の極細管であってもヒートパイプとして作動することが出来るようになっている。
【0004】
これら3種類のヒートパイプは夫々に利害得失があり用途によって使い分けられている。それらの夫々の特長は以下の通りである。
(1)のプレートヒートパイプの中に作り込まれてある蛇行細管トンネルヒートパイプは作動液の顕熱による熱輸送(作動液の振動及び又は循環による熱輸送)を主たる熱輸送原理とするもので、細管トンネル内作動液の表面張力に因って作動液は常にトンネル内を充満閉塞して移動する様になり、この作動液は受熱部で断続的に発生する作動液の核沸騰の圧力波により、トンネル内でその軸方向に振動するか循環するようになる。この振動及び循環が熱量を高温側から低温側に高効率で輸送する。この原理の詳細は特許第1967738号明細書に記載の通りである。このような作動原理が適用される細管トンネルの相当直径の範囲はヒートパイプ作動時の保持姿勢がボトムヒートモード(受熱部位置が低水位のモード)の場合でほぼ5mm以下、他のモードで4mm以下である。細管化の最小限界は製作可能範囲を限界としている。
【0005】
このヒートパイプはその作動原理が細管トンネル内における作動液の核沸騰により発生する高圧の圧力波に起因する作動液の軸方向振動及び、又は、循環によるものであるから、その性能の重力依存性が少ない点に特長がある。従って作動時の保持姿勢に因る性能の変化が少なくトップヒートモードでも作動することは大きな長所となる。
また蛇行細管トンネルヒートパイプはトンネルが原則として連続する単数のトンネルであることに因り、各直管部は圧力波が常に相互に補完しあって作動し、従ってターン回数が増加し、直管部本数が増加するにつれて相互補完の効果が増加し、ターン数増加の割合を越えて性能が大幅に向上する特長がある。
また作動液の軸方向振動及び、又は、循環による熱輸送であるから、作動液蒸気の相変化のみに依り熱輸送が行われる従来型ヒートパイプに比較してエンタルピーが大きいので、最大熱輸送能力が大きく、ターン数を増加させることの効果を加えれば数KWの如き大容量の熱輸送も容易な点は大きな特長である。更に二次加工性が良好で自在に曲げ加工して使用することが出来ることもこの型のプレートヒートパイプの特長のひとつである。
【0006】
(2)のプレートヒートパイプの中に挟持されてある細管ヒートパイプは通常のヒートパイプであるから、作動液の潜熱による熱輸送(作動液の蒸発及び凝縮による熱輸送)を主たる熱輸送原理としている。従って通常のヒートパイプとしての特長のすべてを備えている。即ち細管ヒートパイプとしては比較的高性能であり、また比較的小さな熱入力であっても感度よく作動し、受熱部温度と放熱部温度の温度差が比較的小さな場合でも良好な熱応答性で作動する。またヒートパイプの長さ間における温度均一化性能が極めて良好である。
【0007】
(3)のプレートヒートパイプの中に作り込まれる多数本並列のトンネルヒートパイプはすべてマイクロヒートパイプであり、相当直径0.5mm以下の従来型ヒートパイプである。従って構成されるプレートヒートパイプの大きさはプレートの厚さ1.2mm前後、面積10mm×20mm以下程度で極めて小型であり、熱輸送能力も10W以下と小能力ではあるが、その限られたプレート面積の範囲では熱拡散性能、温度均一化性能、熱応答性共に極めて良好な点が特長である。また面積が小さいので金属間熱伝導による熱拡散により保持姿勢による影響が殆ど無くなり姿勢依存性はない。このプレートヒトパイプは余りに小型なことに因りそれ自身の実用性は極めて乏しいが、その鋭角溝状角部が良好なウイックとしての効果を示す点は注目に値する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述の如き各種のプレートヒートパイプには夫々に優れた機能があるがまた夫々に各種の問題点があり、夫々に用途を棲み分けて使用されている。然しユーザが要求する機能は極めて広範囲であり夫々の問題点を解決することが強く望まれている。夫々の問題点は次のごとくである。
【0009】
(1)の蛇行細管トンネルヒートパイプ内蔵のプレートヒートパイプは蛇行細管ヒートパイプ技術応用であるから、その優れた特長を有すると共に次のごとき問題点があった。トンネル内に液相及び気相が混在配置された作動液の振動及び循環による熱輸送であるから、起動時の初動に際して低温作動液を作動最適温度に上昇せしめ、これに振動及び循環を発生させる為の一定のエネルギーが必要であり、また管内の圧力損失が蒸気移動の場合より比較的大きい。従って従来型ヒートパイプの蒸気移動に依る熱輸送に比較して、熱応答性が低下する、数Wの如き低熱入力における作動の活性が低下する、また受熱部と放熱部の温度差が10℃以下の如く小さい場合は熱抵抗値が増大する、受放熱部間の距離が長くなるに従ってその間の温度降下が発生し、受放熱部間の温度差が大きくなる、等の問題点があった。
【0010】
(2)の従来型細管ヒートパイプ挟持型のプレートヒートパイプは、二次加工性が悪く曲げ加工して使用することが極めて困難である、また保持姿勢によって性能が大きく変化しトップヒートモードでは作動しないから適用機器によっては使用不可能となる、更に通常のヒートパイプの欠点であるドライアウト現象が発生するから大熱入力及び衝撃的急速熱入力の場合は使用不可能の場合がある、等の問題点があった。
【0011】
(3)のマイクロヒートパイプは極めて小型となるから、数10W程度の熱入力であっても限界熱流束を遥かに越えるので一般的な用途には使用不可能である。更に小型であることにより金属間熱伝導量が大きく、性能の保持姿勢依存性は大きく緩和されるが、それでも保持姿勢による性能変化が比較的大きく、特殊用途以外の実用は困難である。
【0012】
(1)の蛇行細管トンネルヒートパイプ内蔵のプレートヒートパイプも、(2)の従来型細管ヒートパイプ挟持型のプレートヒートパイプも、何れもそれらの熱輸送方向はそれらが内蔵するヒートパイプの長さ方向であるから、プレートヒートパイプとしての熱輸送方向にも異方性が発生し、内蔵するヒートパイプと直交する方向に向かう熱輸送性能は金属間熱伝導のみとなりヒートパイプとしての効率的熱輸送は不可能である。従って何れの種類のプレートヒートパイプも熱拡散能力は良好とは云えず、またプレート面上における温度均一化性能は良好ではなかった。
【0013】
上述の如く実用化されている従来のプレートヒートパイプは何れも長所短所夫々の特長があり、用途別に棲み分け使用する必要があった。ユーザからの要望としては何れの用途に対しても共用出来るプレートヒートパイプが求められている。また用途によっては二種のプレートヒートパイプの性能を兼ね備えた機能が要求され、適用範囲の広いプレートヒートパイプの開発が要望されている。本発明はそのような要望に応える為、熱拡散能力が極めて良好で、面上温度均一化性能も極めて良好で、従来型ヒートパイプの如く小温度差及び低熱入力でも良好に作動し、且つ蛇行細径ヒートパイプの如く大熱入力も可能な、更に姿勢依存性の少ないプレートヒートパイプを提供する。
【0014】
【課題を解決する為の手段】
上述の如き問題点を解決する為の手段として本発明者は特願平8−182588号に係る複合型プレートヒートパイプを提案し実用化している。本発明はその発明を補完するもので、問題点を解決する為の手段の基本的な考え方は全く同一であり、その構成の一部を簡素化し、性能を改善するものである。
【0015】
図〜図6によって本発明の課題を解決する為の手段により構成されたプレトヒートパイプの基本的構造及びその構成の手順について説明する。本発明の複合型プレートヒートパイプは第一の構成要素である蛇行細管トンネルヒートパイプと第二の構成要素である網目状交叉細管トンネル群からなる従来型プレートヒートパイプが共に単一のプレートの中に内蔵されてあることを特徴としており、両構成要素ヒートパイプの作動液及び作動液蒸気の流路は網目状に交叉し、且つ最大限に至るまで拡大された共通する薄肉隔壁により相互に隣接せしめられて相互間の熱量移動の熱抵抗値がゼロに近い程に一体化されてあることを特徴としている。
【0016】
このような構成であるから、第一の構成要素である蛇行細管トンネルヒートパイプと第二の構成要素である従来型の網目状交叉細管トンネル群からなるプレートヒートパイプとの間は熱抵抗値零に近い状態で相互に熱量を授受する様になっている。両構成要素のヒートパイプは前者は蛇行細管ヒートパイプとしての機能を有し、後者は通常のヒートパイプの機能を有するから、それらが上述の如く緊密に合体一体化された本発明のプレートヒートパイプはそれら両者が夫々の機能を相互に補完しあって両者の機能を兼ね備えた優れた機能を発揮する。
【0017】
図1は本発明の複合型プレートヒートパイプの基本的な構造及び第一実施例、第二実施例、及び第三実施例、第四実施例、第五実施例を説明する一部断面の平面図である。図2は図1のx−x断面図である。図3は図1のy−y断面図である。各図において、対向する平板金属プレート1−1、3−1の平面上に展延性に富む薄肉金属プレートにより形成された蛇行細管トンネルパターンエンボス1−2、3−2は、蛇行細管トンネル空間1−4、3−4を形成している。これらの空間の中には所定の作動液が封入されて蛇行細管トンネルヒートパイプ1、3が構成されてある。このトンネルヒートパイプ1、3の断面形状はおのずから角部が楔状突起空間1−5、3−5を形成する半円断面形状に形成される。この様に構成されたプレートヒートパイプを第一の構成要素のヒートパイプとする。
【0018】
第二の構成要素のプレートヒートパイプは、二枚の第一構成要素の積層接着の積層間隙に形成され作動液の蒸気移動時の蒸発及び凝縮により熱量を輸送するプレートヒートパイプであって、夫々の第一構成要素の蛇行細管トンネルパターンエンボス1−2、3−2が形成されてある側の面が相互に対向せしめられ、且つ双方の蛇行細管トンネルパターンエンボスの直管部群が相互に交叉して網目状になるよう配置されて、双方のエンボス直管部群が交叉接触する交点群において両第一構成要素は相互にろう接接合せしめられてある。更に両第一構成要素を形成する積層プレートの蛇行細管トンネルパターンエンボス1−2、3−2のパターン形成部分の外周に若干の間隙を残す両外周端縁は、スペーサ6−1の介在または絞り加工等の手段が施されて相互に接触し積層され且つ相互に気密に溶接か、ろう接されて7−1、7−2、8−1、8−2の如く一体化されてあり、このようにして接合一体化された二枚の第一構成要素の接合面には蛇行細管トンネルパターンエンボス1−2、3−2の突出間隙に形成される細溝群が相互に交差することにより、相互に連通する交叉細管トンネル群の網目状空間が形成されてあり、この網目状空間には所定の二相縮性作動液が封入されて、プレートヒートパイプ2として構成されてあり、この第二の構成要素の構成完結は同時に本発明の複合ヒートパイプの構成の完結となっている。
【0019】
前述の第一の構成要素構成製造工程の説明はその製造手段の一例の説明に過ぎない。他の製造手段としては第一の構成要素構成の為の積層プレートの薄肉側または柔軟性に富む側の平板金属プレート1−2に予めプレス成型により蛇行細管トンネルエンボス加工を施しておき、これと他の側の平板金属プレート1−1と積層しろう溶接して、図6の如く形成し第一の構成要素を構成することが出来る。この場合も平板金属プレート1−1には蛇行パターン非接合部1−3が形成され、蛇行細管トンネル空間1−4及び楔状突起空間1−5が形成される。
【0020】
以上の如くして本発明の第一構成要素が構成されるが、この場合の蛇行トンネル空間1−4の蛇行ピッチは可能な限り小さく形成することにより、または蛇行トンネル空間1−4の相当直径を5mm以下に抑制することにより、第一構成要素の蛇行細管トンネルヒートパイプの高性能が保証され、更に第二構成要素の網状プレートヒートパイプの網目が細かくなり熱量拡散性能が向上する。
【0021】
図4、図5、及び図6に於ては図面簡略化の為に図示は省略されてあるが二枚の第一構成要素の周辺端縁部は図2、図3に例示の如くスペーサ6−1を介しまたは絞り加工により相互に積層されて且つ7−1、7−2、8−1 8−2の如く相互に気密にろう溶接されてある。
【0022】
【作用】
上述のごとき本発明の複合型プレートヒートパイプは第一の構成要素が蛇行細管ヒートパイプ特有の各種性能を発揮し、その至らざる所を第二の構成要素の網目状交叉細管プレートヒートパイプがその特有の性能に依り補完して本発明の複合型プレートヒートパイプ独特の機能を発揮する。その独特の機能は次の如くであり総合的に従来のプレートヒートパイプでは不可能であった各種の性能を発揮する。
【0023】
(1) 本発明の複合型プレートヒートパイプは発熱源と放熱部の温度差が小さい場合でも、高性能且つ確実に熱量を輸送することが出来る。
ヒートパイプの作動には受熱部温度と放熱部温度の温度差が必須であり、ヒートパイプの規模によって差異はあるが、その規模に対応した作動の為の最低温度差が存在する。適用温度100℃以下、熱輸送量数百ワット規模のヒートパイプの場合で云えば、第一の構成要素の蛇行細径トンネルヒートパイプ1は作動液の軸方向振動及び循環による熱輸送であるから、効率的な熱輸送の為の適切な作動液の振動及び循環を発生する為の起動時に必要な最低温度差としては約15℃〜20℃が要求され、それ以下では性能の低下が免れられない。これは起動時には作動液の温度が作動開始に必要な最適温度より低いことにより発生する性能低下及び細管内の作動液の圧力損失に起因する性能低下である。
【0024】
然し第二の構成要素は通常のヒートパイプであり、高温部から低温部に移動する作動液蒸気の蒸発凝縮の潜熱により熱輸送がなされるヒートパイプであるから、蒸気移動時の圧力損失は液移動時の圧力損失に比較して桁違いに小さい。従って作動時に必要な温度差は1℃でも十分であり第二の構成要素ヒートパイプは極めて小さな温度差で作動を開始し作動を継続することが出来る。また通常のヒートパイプは封入作動液の封入量は細管ヒートパイプの封入量より遥かに少ない。従って蒸気発生開始までに必要な最適温度に到達するまでに必要な熱量は極めて少ない。特に本発明の第二の構成要素ヒートパイプは網目状交叉細管プレートヒートパイプ2であるから通常型ヒートパイプの中でも特に内部表面積が大きく感度が優れており極めて微小な温度差でも有効に作動を開始し作動を継続する。
【0025】
第一の構成要素には蛇行細管ヒートパイプ特有の他の問題点として蛇行ターン部における液移動の圧力損失増加が大きい点がある。この圧力損失は比較的大きく、作動条件によって差異はあるものの、実験によれば蛇行ターン部を加熱してその部分の圧力損失をキヤンセルすることにより、蛇行細管ヒートパイプの全熱抵抗値が1/2に低下した例もある程である。
【0026】
第二の構成要素の網目状交叉細管プレートヒートパイプ2が一旦作動を開始すると第一の構成要素の蛇行細管トンネルヒートパイプ1、3の作動液はこの作動により加熱され、活性化され、また液温上昇による動粘性係数が急激に低下し、これによる蛇行ターン部の圧力損失をも含めた蛇行細管トンネルヒートパイプ1、3の全圧力損失が低下し、これによりそれらの細管ヒートパイプは小温度差で活発に作動するようになる。即ち本発明の複合型プレートヒートパイプは第二の構成要素の作動が引き金になり小さな温度差でも活発に作動する高機能ヒートパイプとして、従来は得られなかった高性能を発揮する。
【0027】
(2)本発明の複合型プレートヒートパイプは数ワットの微小熱入力から数キロワットの大熱入力であってもその全領域に亙り敏感に作動する高感度のプレートヒートパイプとして適用することが出来る。
大容量の熱輸送の必要な蛇行細管トンネルプレートヒートパイプの場合は必然的に内蔵する蛇行細管トンネルヒートパイプの受熱部と放熱部の間の距離が長くなり、また蛇行ターン数が増加する。それらによる性能増加は大きいものの、その際の細管内圧力損失も大きなものとなる。
【0028】
また蛇行細管ヒートパイプは作動液の振動及び循環により熱輸送が行われるから、必要な熱輸送量に対応して蛇行細管コンテナ内に封入される最適液量は変化する。即ち大容量プレートヒートパイプに封入される最適作動液量は自ら増加する。このように増加した輸送距離、増加したターン数、等に対応して最適封入作動液量は大幅に増加せしめる必要がある。
【0029】
作動液に軸方向振動と循環力を与える為には、作動液の質量や管内力損失に対応し、これを作動せしめまたは起動せしめるに必要なエネルギーを与える為の最小限の熱量を必要とする。従って上述の如き増加した封入作動液量や増加した圧力損失のもとで細管ヒートパイプを良好に作動せしめる為には、それに対応する必要な最小限熱量も増加せしめざるを得ない。例えば、温度差40℃において1KWの熱量を輸送する蛇行細管トンネルヒートパイプを内蔵したプレートヒートパイプの場合の作動または起動の為の最小限熱入力は約50Wである如く比較的大きな熱入力を必要とする。
【0030】
これに比較して通常ヒートパイプの場合は受熱部から放熱部に移動する作動液蒸気の蒸発及び凝縮の潜熱による熱輸送であるから、作動液蒸気の移動の際の圧力損失は極めて小さいので熱入力が5Wの如く微少であってもヒートパイプは確実に作動する。
【0031】
従って本発明の複合型プレートヒートパイプの場合、1KWの大容量ヒートパイプとして構成されたものに対して、5Wの如く微小な熱量を入力した場合であっても、第二構成要素の網目状交叉細管プレートヒートパイプ2のみが先ず作動を開始し、これにより第一の構成要素の蛇行細管トンネルヒートパイプ1、3の作動液が温度上昇し、これが引き金となってプレートヒートパイプ全体が作動するようになる。即ち本発明の複合型プレートヒートパイプは微小熱入力から大熱入力に至る広い領域で敏感に作動させることが出来る。特に本発明の第二構成要素プレートヒートパイプは図1及び図2、図3に例示の如き網目状交叉細管プレートヒートパイプであるから通常のプレートヒートパイプより熱交換面積が大幅に拡大されてあり上述のごとき機能の相互補完作用は極めて顕著なものとなる。
【0032】
(3) 本発明の複合型プレートヒートパイプは極めて良好な等方性熱輸送機能を有し、従って極めて優れた熱拡散性能と極めて優れた面上温度均一化性能を発揮する。
本発明の構成は図1及び図2、図3に例示の如く、第一の構成要素の蛇行細管トンネルヒートパイプ1、3の直管部は相互に交叉せしめられてあるから、夫々の直管部群が長さ方向の優れた異方性熱輸送性能が相互に補完しあって優れた等方性熱輸送能力を発揮する。更に第二の構成要素の網目状交叉細管プレートヒートパイプは従来型ヒートパイプ作動液流路の連通交叉構造であるから更に優れた高感度の等方性熱輸送性能を有するから、此等が相互に補完しあって極めて優れた等方性熱輸送機能を発揮する。
【0033】
(4) 本発明の複合型プレートヒートパイプは第一の構成要素の蛇行細管トンネルヒートパイプ1、3と第二の構成要素の網目状交叉細管プレートヒートパイプ2の夫々に作動温度領域の異なった異種の作動液を封入し、両構成要素の相互補完により、幅広い作動温度領域を有し且つ通常のプレートヒートパイプでは作動困難な温度領域でも活発に作動せしめることの出来る特種なプレートヒートパイプをも構成することが可能になる。
【0034】
(5)本発明の複合型プレートヒートパイプにおける第一の構成要素の蛇行細管トンネルヒートパイプ1、3の細管トンネルの断面形状は半円形状または楕円形状であり、その断面形状の両端角部には自ら楔状突起空間1−5が形成されてある。この楔状突起空間は作動液の表面張力及び作動液とトンネル壁面間の濡れ性により作動液のメニスカスを形成し、良好なウイックの役目を発生する。従って第一の構成要素の蛇行細管トンネルヒートパイプ1、3は作動液の封入量が内容積の20%以下の場合通常の蛇行細管ヒートパイプでは作動不可能になるのに対し、楔状突起空間部のウイック作用により良好な通常ヒートパイプとして作動することが出来る。
【0035】
即ち本発明の複合型プレートヒートパイプにおける第一の構成要素の蛇行細管トンネルヒートパイプ1、3は通常の蛇行細管トンネルヒートパイプとして大きな熱量を輸送したり、衝撃的な急速加熱に対してもドライアウトを引き起こすことが無い、トップヒート姿勢でも良好に作動する等の特性とともに、鋭敏な感度と微小温度差でも入力で作動する特性を有する、所謂マイクロヒートパイプと同様な細管ヒートパイプ群としての機能をも発揮する。従って本発明の複合ヒートトパイプは適切に調整された封入液量により第二の構成要素の極めて鋭敏な感度の網目状交叉細管プレートヒートパイプと上述のごとき気相リッチな蛇行細管トンネルヒートパイプとの両特性を併せ持った極めて高感度のプレートヒートパイプとしての機能を与えることが出来る。
【0036】
【実施例】
[第一実施例] 本発明の第一実施例は第一の構成要素の蛇行細管トンネル空間の形成手段に関する。本実施例においては蛇行細管トンネル空間を形成するエンボス加工は加圧流体による拡管法により行われるものであることを特徴とする。
図4、図5及び図6は第一構成要素の形成手段の一例である拡管法の手順を示す説明図である。図4は第一構成要素成形の為の接合積層プレートの側面断面図、図5はその一部断面の平面図である。1−1、1−2は平板金属プレートでそれらは所定のパターンの非接合部1−3が残置された状態に相互に接合積層されてある。この接合は図1の如く片面エンボス形状に構成する場合は、1−2の金属プレートは1−1に比較して柔軟展延性に富む材料が使用されるか、または共に柔軟展延性に富む材料を使用し1−2を1−1に比較して薄肉のプレートが使用されるかの何れかの状態に積層される。図5において蛇行パターン非接合部1−3は図5の平面図に破線で示されてある如く蛇行パターンの非接合部として残置されてある。非接合部の形成には接合防止剤の塗布その他各種の接合防止手段が適用される。
【0037】
図6は図4、図5の蛇行パターン非接合部1−3を高圧流体の圧力により膨張拡管せしめた状態を示す。強靭な側の金属プレート1−1は平板状態を保持したまま、1−2は蛇行細管トンネルパターンエンボスに形成され、蛇行細管トンネル空間1−4が形成されてある。その断面形状は半円形であり、その両端にはおのずから楔状突起空間1−5が形成される。蛇行細管トンネル空間1−4には所定の二相凝縮性作動液が封入封止されることにより、図1における蛇行細管トンネルヒートパイプ1が構成される。蛇行細管トンネル空間1−4の相当直径が5mm前後以下に形成されることにより、蛇行細管トンネルヒートパイプ1は蛇行細管ヒートパイプとしての良好な性能が保証される。
両面エンボスに形成する場合は平板金属プレート、1−1、1−2の厚さ、展延性、柔軟性、等が同一の素材のものを適用して拡管を実施する。
【0038】
本実施例は、パターンの形成が接合防止剤の塗布のみでなされ、拡管は高圧流体の圧入のみでなされ機械加工の必要がないから、エンボス形成費用が安価となり複合型プレートヒートパイプのコスト低減になることが大きな利点である。高圧流体による拡管であるから、精細パターンの形成には高圧流体の圧力が極めて高くなり作業困難になる問題点がある。金属プレートの素材として熱伝導性の良好な純アルミを使用する場合、高圧流体の圧力は250kg/cm、肉厚0.5mm、トンネル内径の相当直径は3mm程度が精細化の限界となる。
【0039】
[第二実施例] 本発明の第二実施例も第一の構成要素の蛇行細管トンネル空間の形成手段に関する。本実施例においては蛇行細管トンネル空間を形成するエンボス加工は平板金属プレート、1−1、1−2の接合前に予めプレス成形によりエンボス加工が施され、この凹面側平面が他のプレート平面と接合されて半円形断面の蛇行トンネル空間1−4が形成されたものであるか、予め二枚のプレートにエンボスプレス加工が施され、それらの凹面側平面が相互に接合され楕円形断面の蛇行トンネル空間1−4が形成されたものであるか、の何れかであることを特徴としている。
【0040】
この実施例はプレス加工用の金型費用が嵩む点はあるが、高能率多量生産が可能であり、量産化により大幅なコスト低減が可能な利点がある。更に高圧流体による拡管と異なり、プレート素材として強靭な材料を適用することが出来るから、高温高圧に耐える強靭な複合プレートヒートパイプを構成することが可能になる。また拡管成形より大幅に精細なパターンの蛇行細管トンネル空間を形成出来るからより高性能な複合プレートヒートパイプを構成することが可能である。
【0041】
この実施例は特願平8−182588号にもそのまま適用することが可能であり、その各種応用例の複合プレートヒートパイプに適用される金属プレートの材料を強靭な金属に替えて実施し高温高圧に耐える複合プレートヒートパイプを構成したり、より精細なパターンの蛇行細管トンネル空間を形成し、より高性能な複合プレートヒートパイプを構成することが出来る。
【0042】
[第三実施例] 第三実施例は図1及び、図2、図3に例示の本発明の複合型プレートヒートパイプにおける第一の構成要素のプレートヒートパイプがプレート面にエンボス加工されて形成される蛇行細管トンネル空間1−4にはその全内容積の少なくとも20%以上の容積に相当する量の二相凝縮性作動液が封入されてあり、第二の構成要素プレートヒートパイプである網目状交叉細管プレートヒートパイプ2が内蔵する非蛇行トンネル群が交叉結合された空間にはその全内容積の多くても20%以下の容積に相当する量の二相凝縮性作動液が封入されてあることを特徴とする。
【0043】
第一の構成要素のプレートヒートパイプがプレート面にエンボス加工されて形成される蛇行細管トンネルヒートパイプ1は特許第1967738号(ループ型細管ヒートパイプ)の応用であるから、それと同じ内容積比の作動液量を封入することにより全く同じ特性を発揮する。即ちその特性を良好に発揮せしめる為には、蛇行細管ヒートパイプと同様に、そのトンネル径、蛇行ターン数、必要とする熱輸送量、等によって選択される割合は異なるが、その内容積の25%〜80%の容積を占める量の作動液を封入封止する必要がある。その熱輸送性能は封入作動液量が内容積の20%〜85%の範囲外になると急激に低下し、その範囲を大きく外れると蛇行細管ヒートパイプとしての機能を殆ど失うに至る。液量過少の場合は拡大された気相部の大きな圧縮性により作動液全体としての圧縮性が極めて大きくなり、受熱部の熱吸収により発生する核沸騰の圧力波エネルギーが吸収されて、作動液の振動及び循環が、細管内を伝播することが困難になることが主因である。また液量過大の場合は気相部の大きな縮小により、作動液全体としての圧縮性が極めて小さくなり、作動液全体としての内部圧力が急上昇し、受熱部内における核沸騰の発生が困難になることが主因である。
【0044】
第二の構成要素のプレートヒートパイプの非蛇行の細管トンネルヒートパイプ群2は従来型の細管ウィックレスヒートパイプである。従来型のウィックレスヒートパイプは内容積の8%〜50%の封入作動液量で作動することが出来るが良好な性能を発揮せしめる為の封入量は10%〜30%である。然し第二の構成要素の場合は非蛇行トンネル群は、第一の構成要素のエンボス間隙に自ら形成される空間により形成される交叉細管トンネル群であるから、交叉細管トンネルの夫々の相当直径は5mm以下の細径となり、この場合は封入作動液量が20%を越えると作動液の表面張力で交叉細管トンネル内が充満充填され、液相作動液の管内圧力損失の増加により作動液の移動が困難になり、同時に作動液蒸気の移動が不可能になり、編目状交叉細管プレートヒートパイプ2は作動液の蒸発凝縮の潜熱を利用する型のヒートパイプとしての機能を失うに至る。
【0045】
これらの理由から本実施例の複合型プレートヒートパイプは第一の構成要素には全内容積の20%以上、第二の構成要素には全内容積の20%以下の作動液が封入封止された場合、蛇行細管ヒートパイプとしての機能と通常の従来型ヒートパイプとしての機能を兼ね備えることが可能になり、これにより小温度差でも、低熱入力でも敏感に作動し、然も大熱輸送能力を有する優れたプレートヒートパイプとしての機能を発揮する。
【0046】
[第四実施例] 第四実施例は図1及び図2、図3に例示の本発明の複合型プレートヒートパイプにおける第一の構成要素プレートヒートパイプのプレート面にエンボス加工により形成される蛇行細管トンネルヒートパイプ1の蛇行細管トンネル空間にはその全内容積の多くとも20%以下の容積に相当する量の二相凝縮性作動液が封入されてあり、第二の構成要素プレートヒートパイプである編目状交叉細管プレートヒートパイプ2の非蛇行トンネル群が交叉結合された空間にもその全内容積の多くとも20%以下の容積に相当する量の二相凝縮性作動液が封入されてあることを特徴とする。
【0047】
蛇行細管ヒートパイプの熱量輸送は作動液の振動及び、又は循環により行われるからその為には細管の全内容積の20%以上の作動液が封入封止されてある必要がある。蛇行細管ヒートパイプとしての機能を発揮する為にはウイックの助けを必要としないから管の内壁は通常は平滑のままに使用される。然し本発明のプレートヒートパイプの第一の構成要素の蛇行細管トンネルヒートパイプ1においては、楕円又は半円形状のその断面形状には両端に楔状突起1−5が自ら形成されてあり、通常のヒートパイプのウイックの役目をしている。然し本発明の第一の構成要素の蛇行細管ヒートパイプの楔状突起1−5のウイック特性は封入作動液量が内容積の20%以上の場合の蛇行細管ヒートパイプとしての作動時には何らの効果がない。
【0048】
然し封入作動液量が20%以下であり、通常では蛇行細管ヒートパイプが作動不可能な程度に封入液量が少ない場合でも本発明の複合プレートヒートパイプは良好に作動することが出来る。この場合の作動は従来のヒートパイプの所謂マイクロヒートパイプと同様な作動をする。この場合の良好な作動は、楔状突起1−5が良好なウイックとして作用することによるものでり、作動液蒸気移動時の相変化による潜熱による熱輸送性能が可能になることによる。この場合封入作動液量が少ないことにより第一の構成要素の蛇行細管トンネルヒートパイプ1は蛇行細管ヒートパイプとしての機能の多くを喪失し、特に最大熱輸送能力が低下し、衝撃熱入力に対する耐性も低下する。然し通常の従来型ヒートパイプの特長である熱入力に対する感度は極めて良好になり、また微小熱入力でも良好に作動し、受放熱部間の小温度差でも確実に作動するようになる。この機能は第二の構成要素の編目状交叉細管プレートヒートパイプ2の更に優れた作動液の相変化による潜熱熱輸送機能と相互に補完し合って、更に優れた低熱入力における作動機能、更に優れた微小温度差による作動機能を発揮する。
【0049】
[第五実施例] 第五実施例は第一の構成要素の蛇行細管トンネル空間1−4、3−4及び第二の構成要素の編目状交叉細管プレートヒートパイプ2のトンネル空間の夫々には相互に最適作動温度領域が異なり、且つ成分の異なる、または種類の異なる二相凝縮性作動液が封入されてあることを特徴としている。トンネル空間は三空間あるが、この空間に対する封入作動液は三種類三成分であっても良く、二種類三成分であってもよく、または二種類二成分であっても良く、更に一種類二成分であっても良い。茲に云う成分の異なる作動液とはフロンHCFC−142bとフロンHFC134aとの相違の如き区別を云い、種類の異なる作動液とは純水作動液とフロン作動液との相違の如き区別を云う。
【0050】
二相凝縮性作動液は同一種類、異成分作動液の場合、一般には沸点の低い成分の作動液は臨界温度が低く、最適作動温度領域も低く、沸点の高い成分の作動液は臨界温度が高く、最適作動温度領域も高い。また種類の異なる作動液の場合は最適作動温度領域が大幅に異なる作動液の選択が可能になる。
【0051】
本発明の複合プレートヒートパイプは各プレートヒートパイプに封入される二相凝縮性作動液の種類または成分を適切に選択することにより、その目標とする作動温度領域を意のままに決定出来る点を特徴としており、これにより最適適用温度範囲を大幅に拡大し、これにより複合プレートヒートパイプの実用応用範囲を従来の各種プレートヒートパイプと比較して大幅に拡大せしめたり、また目標とする最適作動温度領域付近における熱輸送性能または熱拡散性能を特に高性能ならしめたりすることが可能になる。最適適用温度範囲の大幅な拡大は、要求される適用温度が異なる毎に夫々に各種のプレートヒートパイプを製作する如き煩雑さを避けることが可能になると共に、量産化によるコスト低減の効果がある。
【0052】
本実施例の実用例につき一例を述べれば二枚の第一の構成要素の蛇行細管トンネルヒートパイプには純水作動液にエチルアルコール25%を添加し凍結温度を低下せしめたた純水の混合作動液(凍結温度−20℃)を封入し、第二の構成要素の編目状交叉細管プレートヒートパイプの作動液としてはフロンHCFC−142bを封入した。この複合型プレートヒートパイプは受熱部の温度制御範囲−5℃から+180℃に至る広範囲な領域で良好に作動する従来のヒートパイプでは実現が全く不可能であったような高機能が得られた。但しこの場合の冷却風温度範囲は−35℃から+120℃であった。
【0053】
この場合の混合作動液封入時の第一の構成要素プレートヒートパイプは受熱部温度+80℃においてフロンHCFC−142b封入の場合と上述混合作動液とはほぼ同等の熱輸送能力を発揮する。これより受熱部温度が上昇するにつれて混合作動液の熱輸送能力の方が大きくなり、+180℃においては混合作動液の熱輸送能力はHCFC−142bのほぼ二倍に至るまで向上する。混合作動液の熱輸送能力は受熱部温度が+80℃より低下するにつれて低下し、+30℃前後に低下するとHCFC−142bのほぼ二分の一に至るまで低下する。更に受熱部温度が低下し0℃以下になると混合作動液の作動は極めて不活発になり作動不可能になる。これに対してHCFC−142bの熱輸送性能は劣化することなく活発に作動する。
このような各種作動液間の熱輸送能力の性能の差異は各作動液の沸点の差異により発生するもので、純水の沸点は+100℃、エチルアルコールの沸点は+78.5℃、HCFC−142bの沸点は−9.7℃であり、作動液の熱輸送能力は夫々の沸点以上で高性能を発揮し、沸点以下では温度が低下するにつれて性能が低下することによる。
【0054】
本実施例においては第一の構成要素のプレートヒートパイプと第二の構成要素のプレートヒートパイプが夫々に種類の異なる作動液の封入により、異なる温度領域において作動特性が相互に補完しあって、何れの温度条件においても何れか条件の良好な側の作動液が良好な作動特性を示し、またそれが引き金になって他の側の作動液も活性化され最高の特性を発揮させることが出来ることになる。
【0055】
[第六実施例]ヒートパイプの金属素材と封入作動液の間には適合性の良否の問題がある。適合性が悪い場合は金属素材と作動液の間で化学反応が発生し、作動液が変質して性能が激しく低下したり、ヒートパイプコンテナが腐食により破損したりする場合がある。本発明の複合プレートヒートパイプにおいては第一の構成要素、第二の構成要素夫々に異種の作動液を使用する場合が多い。従って複合プレートヒートパイプ全体を同一素材で構成する場合は、その素材に適合する作動液以外を使用することが不可能になり、複合プレートヒートパイプとしての適用範囲はその作動液の適用範囲に限定される。第六実施例及び第七実施例はその対策としての実施例であって、各構成要素の少なくも作動液に接触する面は、適用される作動液に対して適合性の良好な素材である様に構成される。
【0056】
図7は[第六実施例]の断面説明図であって、第一の構成要素のプレートヒートパイプを形成する為の二枚の金属プレートからなる積層プレートに於ける、蛇行トンネルパターンエンボスとして形成される側のプレートはそれ自身も二種類の金属素材a、bからなる薄形金属プレートa、bからなる積層プレートであり、この積層プレートa、bと、その片側の薄形金属プレートaと同一の素材からなる他の金属プレートa、とが接合積層された積層プレートにより第一の構成要素部が形成されてある。この第一構成要素の二枚が、夫々の積層プレートa−bにより形成された蛇行細管トンネルパターンエンボスの頂部群が相互に対向せしめられ且つ相互に直交するように配置されて、図1及び図2、図3に例示のごとくエンボス頂部が突き合わせられて接合され、蛇行細管トンネルパターンエンボスのピッチ間隙に形成されてある細溝群の直交結合により形成される網目状交叉細管トンネルを第二の構成要素部として本実施例は実施される。
【0057】
蛇行パターンエンボスのパターン外周に若干の間隙を残す第一の構成要素の外周端縁相互間が気密に接合される点は図1に例示の如くである。第一の構成要素部の蛇行細管トンネル空間a、と第二の構成要素部の網目状交叉細管プレートヒートパイプ2の空間部bの夫々の空間の壁面を形成する金属素材a、bと夫々に適合性の良好な作動液が、選択的に封入封止されてある。上記金属素材a、bはトンネル空間a、bの夫々に封入封止される対象とする所定の作動液に対して適合性の良好な金属素材の中から選択的に決定された金属素材であるか、或は所定の作動液は対象とする金属素材a、bに対して適合性の良好な種類の作動液の中から選択的に決定された作動液であるかの何れかであることを特徴としている。
【0058】
本実施例の実用例として積層プレートa−bの金属素材aを純アルミ、金属素材bを純銅として本実施例を実施した。積層プレートa−bの電食防止の為両素材の接合はニッケルの薄膜メッキを介在せしめた。これにより蛇行細管トンネル空間aには純アルミと適合性の良好な作動液フロンHCFC−142bを封入し、編目状交叉細管プレートヒートパイプ2の空間部bには純水作動液を封入して構成することが可能になった。純水作動液は80℃以上の高温度で極めて高性能な作動液としての特性があり、フロンHCFC−142bは80℃以下の低温度で極めて良好な作動液としての特性がありこれらの作動液を相互に保管せしめれば高性能な複合プレートヒートパイプが得られるが、純水作動液は純アルミとの適合性が悪いので全純アルミの複合プレートヒートパイプには適用することが出来なかった。本実施例の編目状交叉細管プレートヒートパイプ2の空間部bは全内壁面が純銅で構成されるので純水作動液との適合性が極めて良好であり、180℃の高温度でも数十年の長期連続使用に耐えることが出来る。本実用例の複合プレートヒートパイプは受熱部温度5℃の低温から180℃(ヒートパイプ内平均温度140℃)の高温領域の間の全ての領域で良好な性能を発揮することが可能になった。
【0059】
[第七実施例] 第七実施例の基本構成について図8により説明する。図8では図7に於ける薄形金属プレートa−bのbは図8に例示の如く金属素材bの薄膜層(厚メッキ層を含む)bに替えられてあることを特徴としている。従って積層プレートa−bにより形成される蛇行細管トンネルパターンエンボスのエンボス外表面は上述の金属素材bの薄膜層(厚メッキ層を含む)bで形成されてあり、夫々の第一の構成要素のプレートヒートパイプを形成する為の二枚の金属プレートからなる夫々の積層プレートに於ける、プレートのまま残置される側のプレートは金属素材aで形成されてある金属プレートaであり、従って蛇行細管トンネルパターンエンボスのエンボス内壁面はすべて金属素材aで形成されてあり、このようにして形成された第一の構成要素の二枚を組み合わせて構成される第二の構成要素の編目状交差細管プレートヒートパイプ2の空間部bの内壁面は全て金属素材bの薄膜層(厚メッキ層を含む)bで構成されることになる。
【0060】
本実施例における薄膜層(厚メッキ層を含む)bの作用効果は第六実施例における薄型金属プレートb同等である。従ってその符号も同じbを使用している。薄膜層bを厚膜メッキにして実施する場合はメッキ層は極めて展延性に乏しく、エンボス加工の際の拡管により、クラックまたはピンホールが発生する恐れがある。従ってメッキ加工はエンボスによる蛇行細管の拡管完了の後に実施することが望ましい。
【0061】
この構成の実用例としては平板金属プレートa、薄形金属プレートaは純アルミニウムプレートとし、メッキ薄膜層bは純銅メッキ薄膜層とし、蛇行細管トンネル空間aにはフロンHCFC−142bを封入して第一の構成要素ヒートパイプを構成し、第二の構成要素のヒートパイプの網目状交差細管プレートヒートパイプ2の空間部bには純水作動液を封入して全体として第五実施例の複合型プレートヒートパイプを構成した。このような構成の第五実施例の複合型プレートヒートパイプは第四実施例と同様に+5℃から+180℃に至る広い温度領域の全領域で極めて良好に作動するとともに20年に亙る長期信頼性をも保証することが可能なものとなった。
【0062】
【発明の効果】
エンボス加工により突起形成された蛇行細管トンネルヒートパイプを備えたプレートヒートパイプを第一の構成要素とし、この第一の構成要素のプレートヒートパイプ二枚を突起側を対向せしめ、かつ蛇行細管が交叉するようにエンボス頂部をつき合わせて接合することにより、第二の構成要素として、エンボス蛇行細管のピッチ間隙の細溝により網目状交叉細管プレートヒートパイプが得られた。このような本発明の複合プレートヒートパイプは両構成要素がその優れた性能が相互に補完し合って、広範囲な作動温度領域を有し、その全領域のすべての温度において、極めて感度鋭敏に作動するもので、従来のプレートヒートパイプでは得られなかった独特の優れた機能を有するものとなった。その主たる効果は次の如くであった。
【0063】
数ワットの微小熱入力から数キロワットの大熱入力であってもその全熱量領域に亙り小温度差でも敏感に作動する高感度且つ大容量のプレートヒートパイプとして適用することが可能になった。また第一の構成要素プレートヒートパイプと第二の構成要素プレートヒートパイプの夫々に作動温度領域の異なった異種の作動液を封入することにより、幅広い作動温度領域を与えたり、低温度に最適作動領域を有するにも拘らず大きな熱輸送の可能な特種のプレートヒートパイプを構成することも可能になった。封入作動液量の調整により、作動液の軸方向振動に依る大容量の顕熱利用型プレートヒートパイプとしても、移動する作動液の相変化による高感度の潜熱利用型プレートヒートパイプとしても、選択的に何れの型のヒートパイプとしても適用することが可能になった。
【0064】
本発明の複合プレートヒートパイプの最も大きな効果はその卓越した熱拡散能力と優れた温度均一化性能である。これは効果的なコールドプレートとして適用出来るだけでなく、その量産性、軽量、低価格等の特徴は機器筐体の放熱性に優れた壁体構造として応用も可能となり、壁体内面に対する発熱素子の直接実装が可能になり、機器筐体の小型化及び実装技術の革新の可能性が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の複合型プレートヒートパイプの基本的な構造の説明図である。
【図2】図1のx−x断面図
【図3】図1のy−y断面図
【図4】第一の構成要素の製造工程の一例の断面図
【図5】第一の構成要素の製造工程の一例の一部断面平面図
【図6】第一の構成要素の製造工程の一例の完成断面図
【図7】本発明複合型プレートヒートパイプの第六実施例の一部拡大断面図である。
【図8】本発明複合型プレートヒートパイプの第七実施例の一部拡大断面図である。
【符号の説明】
1 蛇行細管トンネルヒートパイプ
1−1 平板金属プレート
1−2 平板金属プレートまたは蛇行細管トンネルパターンエンボス
1−3 蛇行パターン非接合部
1−4 蛇行細管トンネル空間
1−5 楔状突起空間
2 網目状交叉細管プレートヒートパイプ
2−1 平板金属プレート
2−2 平板金属プレート
2−4 非蛇行細管トンネル空間
2−5 楔状突起空間
3 蛇行細管トンネルヒートパイプ
3−1 平板金属プレート
3−2 平板金属プレートまたは蛇行細管トンネルパターンエンボス
3−4 蛇行細管トンネル空間
3−5 楔状突起空間
4 連結細管トンネル
5 連結細管トンネル
6−1 スペーサ
7−1 溶接部
7−2 溶接部
8−1 溶接部
8−2 溶接部
蛇行細管トンネル空間
網状交叉細管空間部
薄形金属プレートまたは蛇行細管トンネルパターンエンボス
薄形金属プレート(薄膜層)または蛇行細管トンネルパターンエンボス

Claims (10)

  1. 基本的には作動液の顕熱による熱輸送(作動液の振動及び又は循環による熱輸送)を主たる熱輸送原理とする蛇行細管トンネルからなるプレートヒートパイプを第一の構成要素とし、基本的には作動液の潜熱による熱輸送(作動液の蒸気移動時の蒸発及び凝縮による熱輸送)を主たる熱輸送原理とする非蛇行の細管トンネルからなるヒートパイプを第二の構成要素とする、両構成要素が複合一体化されてなることを基本構成とする複合型プレートヒートパイプであって、第一の構成要素のプレートヒートパイプは、少なくとも二枚の金属プレートが積層接合され、プレートの片側または両側に所定のパターン及び所定の断面形状のエンボス加工に依る蛇行細管トンネル空間が形成されたものてあり、第二の構成要素のヒートパイプは、二前記第一構成要素の蛇行細管トンネルプレートヒートパイプのエンボス面が相互に対向せしめられ、かつ双方の蛇行細管トンネルパターンを形成するエンボスの直管部群が相互に積層交叉して網目状になるよう突合わせ配置され、双方のエンボス直管部群が交叉接触する交点群において両第一構成要素は相互に接合せしめられてあり、更に両第一構成要素を形成する積層プレートの蛇行細管トンネルを形成するエンボスの蛇行細管トンネルのパターン形成部分の外周端縁相互に気密に一体化して、前記二組の第一構成要素の間隙に形成される相互に連通する網目状空間が形成され、この空間に所定の二相凝縮性作動液が封入した構成であり、前記第一及び第二の構成要素からなるヒートパイプが上述の如く一体化され、全体として相互に補完しあって作動する薄形プレートヒートパイプとして構成されてあることを特徴とする複合型プレートヒートパイプ。
  2. 第一の構成要素のプレートヒートパイプは、前記所定の断面形状はその両端角部に楔状突起空間を有する半円形状または楕円形状であり、片側のプレートが他の側のプレートに比較して、より展延性に富む金属材料からなるか、またはより薄肉に形成されてあるかする、2枚の展延性に富む金属の薄肉プレートが相互に接合されて積層プレートが形成され、その積層プレートの接合は接合面にターン部と並列部からなる蛇行パターンの長尺細幅の非接合部が残置される接合であり、この非接合部は所定の手段により拡管成形され、これにより積層接合面にはターン部と並列部からなる蛇行細管トンネル空間が形成されてあり、このトンネル空間はおのずからその両端角部に楔状突起空間を有する楕円または半円の断面形状に形成されてあり、この積層プレートの外表面の片面または両面の何れかの面には、蛇行細管トンネル空間の断面形状及び蛇行パターンに対応して、おのずから発生する蛇行細管トンネルパターンエンボスが形成されてあり、この蛇行細管トンネル空間には所定の二相凝縮性作動液が封入されて、蛇行細管トンネルヒートパイプとして構成されてあるプレートヒートパイプであることを特徴とする請求項1に記載の複合型プレートヒートパイプ。
  3. 第一の構成要素のプレートヒートパイプは、展延性に富む金属からなる積層プレートの片側または両側の薄肉プレートには、予めプレス成形に依り、所定のパターン及び所定の断面形状のエンボス加工がなされてあり、その凹面側が他の側のプレートと接合されるかまたは相互接合されて、蛇行細管トンネル空間が形成されてあり、この所定のパターンは成形目標とする蛇行細管トンネルヒートパイプの蛇行形状に一致するパターンであり、所定の断面形状はその両端角部に楔状突起空間を有する半円形状または楕円形状であり、この蛇行細管トンネル空間に所定の二相凝縮性作動液が封入されて、蛇行細管トンネルヒートパイプとして構成されてあるプレートヒートパイプであることを特徴とする請求項1に記載の複合型プレートヒートパイプ。
  4. 第一の構成要素のプレートヒートパイプの蛇行細管トンネル空間にはその全内容積の少なくとも20%以上の容積に相当する量の二相凝縮性作動液が封入されてあり、第二の構成要素プレートヒートパイプの網目状交叉細管トンネル群の空間にはその全内容積の多くても20%以下の容積に相当する量の二相凝縮性作動液が封入されてあることを特徴とする請求項1に記載の複合型プレートヒートパイプ。
  5. 第一の構成要素のプレートヒートパイプの蛇行細管トンネル空間にはその全内容積の多くとも20%以下の容積に相当する量の二相凝縮性作動液が封入されてあり、第二の構成要素プレートヒートパイプの網目状交叉細管トンネル群が連結された空間にもその全内容積の多くとも20%以下の容積に相当する量の二相凝縮性作動液が封入されてあることを特徴とする請求項1に記載の複合型プレートヒートパイプ。
  6. 第一及び第二の構成要素のプレートヒートパイプのトンネル空間の夫々には相互に最適作動温度領域が異なり、且つ成分または種類の異なる二相凝縮性作動液が封入されてあることを特徴とする請求項1に記載の複合型プレートヒートパイプ。
  7. 夫々の第一の構成要素のプレートヒートパイプを形成する為の二枚の金属プレートからなる積層プレートに於ける、蛇行細管トンネルパターンエンボスとして形成される側のプレートはそれ自身も二種類の所定の金属素材a、bからなる薄形金属プレートa1、b1の積層プレートであり、この積層プレートa1、b1と、その片側の薄形金属プレートa1と同一金属素材aからなる他の金属プレートa2、とが接合積層された積層プレートにより第一の構成要素が形成されてあり、第二の構成要素のプレートヒートパイプの網目状トンネル空間の内壁面は全て金属素材bからなる積層プレートの片側の薄形金属プレートb1で形成されてあり、第一の構成要素部と第二の構成要素部との夫々に形成されてあるトンネル空間a0、b0には夫々の金属素材a、bと夫々に適合性の良好な夫々の所定の作動液が封入封止されてあり、上記金属素材a、bはトンネル空間a0、b0の夫々に封入封止される対象とする所定の作動液に対して適合性の良好な金属素材の中から選択的に決定された金属素材であるか、或は所定の作動液は対象とする金属素材a、bに対して適合性の良好な種類の作動液の中から選択的に決定された作動液であるかの何れかであることを特徴とする請求項1に記載の複合型プレートヒートパイプ。
  8. 夫々の第一の構成要素のプレートヒートパイプを形成する為の二枚の金属プレートからなる夫々の積層プレートに於ける、蛇行細管トンネルパターンエンボスとして形成される側のプレートはそれ自身も二種類の所定の金属素材a、bからなる薄形金属プレートa1、b1の積層プレートであり、この積層プレートa1−b1におけるb1は金属素材bの薄膜層(厚メッキ層を含む)であり、積層プレートa1−b1により形成される蛇行細管トンネルパターンエンボスのエンボス外表面は上述の金属素材bの薄膜層(厚メッキ層を含む)で形成されてあり、夫々の第一の構成要素のプレートヒートパイプを形成する為の二枚の金属プレートからなる夫々の積層プレートに於ける、プレートのまま残置される側のプレートは金属素材aで形成されてある金属プレートa1であり、従って蛇行細管トンネルパターンエンボスのエンボス内壁面はすべて金属素材aで形成されてあり、このようにして形成された第一の構成要素の二枚を組み合わせて構成されてあることを特徴とする請求項5に記載の複合型プレートヒートパイプ。
  9. 基本的には作動液の顕熱による熱輸送(作動液の振動及び又は循環による熱輸送)を主たる熱輸送原理とする蛇行細管トンネルヒートパイプからなるプレートヒートパイプを第一の構成要素とし、基本的には作動液の潜熱による熱輸送(作動液の蒸気移動時の蒸発及び凝縮による熱輸送)を主たる熱輸送原理とする非蛇行の細管トンネルヒートパイプからなるヒートパイプを第二の構成要素とする、両構成要素が複合一体化されてなることを基本構成とする複合型プレートヒートパイプであって、二組の第一の構成要素の蛇行細管トンネルヒートパイプの細管トンネルが積層交叉されており、該積層された二組の蛇行細管トンネルヒートパイプ間に第二の構成要素となる網目状の非蛇行の細管トンネルヒートパイプを構成したことを特徴とする複合型プレートヒートパイプ。
  10. 前記第一又は第二構成要素を二組以上組合わせたことを特徴とする請求項9に記載の複合型プレートヒートパイプ。
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