JP3961071B2 - 管押し込み用複推進機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非開削にて土中にケーブル布設用管、上下水道管、ガス管などを布設する小口径推進工法に用いられる管押し込み用複推進機に関する。特に、推進工法の1工程目に布設したパイロット管をガイドにして、2工程目にこのパイロット管の布設方向と反対方向からパイロット管より数倍外径の大きい推進管を土中に押し込む際の複推進機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図7(A)〜(D)は小口径推進工法による管布設の施工手順の内、1工程目の1例の説明図である。
先端装置E、パイロット管D及びパイロット管推進用の小型元押装置Cの組合せにおける施工手順で、図7(A)は既に土中に布設しつつあるパイロット管Dの先に先端装置Eが位置し、発進立坑A内に小型元押装置Cを設置してある状態を示している。
【0003】
上記先端装置Eに内蔵している油圧シリンダを伸び動作させて、外筒E1を土中に圧入することにより先堀りしてから、図7(B)に示すように、先端装置Eにて先堀りしたストロークだけ、小型元押装置Cに内蔵した油圧シリンダを伸び動作させることにより、パイロット管Dを土中に推進していく。なお、先端装置で先堀りしたストロークだけ、元押装置で推進していく工法を一般的には複推進工法と称している。
【0004】
図7(C)は再度、先端装置Eにて先堀りした状態を示しており、この工程では前述の図7(A)と(B)に示す状態を繰り返してパイロット管Dを土中に推進して布設していく。
【0005】
図7(D)はパイロット管Dが発進立坑Aから到達立坑Bに到達した状態を示しており、この状態になると2工程目の工法を進める準備として、到達立坑Bに到達した先端装置Eと発進立坑A内に設置していた小型元押装置Cはそれぞれ立坑内から撤去する。
【0006】
次に2工程目の工法に関して図8(A)〜(D)を用いて説明する。
図8(A)は到達立坑B内に推進管H用の大型元押装置Fを設置した後に、大型元押装置Fへ据え付けした推進管Hをテーパ管Gでパイロット管Dとを接続した状態を示している。
【0007】
図8(B)は大型元押装置Fに内蔵している油圧シリンダの所定量の伸び動作により、元押装置Fの押台車F1を介して推進管Hが押され、これによりテーパ管G並びにパイロット管Dが土中に押し込まれて、発進立坑A内へパイロット管Dが押し出された状態を示している。この後、発進立坑A内に押し出されたパイロット管Dは接続部分から外し撤去する。
【0008】
図8(C)は大型元押装置Fの押台車F1がさらに油圧シリンダの伸び動作により、推進管Hを土中へ押し込んだ状態を示している。図示の状態で、推進管Hの1本当りの長さ分だけ、推進管Hの押し込みが完了した。
【0009】
図8(D)は大型元押装置Fに内蔵している油圧シリンダの縮み動作により、押台車F1が推進管Hの1本分のスペースを確保するために、後方へ移動した状態を示しており、続いてこのスペースへ新たな推進管Hを装着してから、図8(B)〜(D)の動作を繰り返して、パイロット管Dを順次発進立坑A側へ押し出し、撤去しつつ、推進管Hを到達立坑Bから発進立坑Aまで到達させていく。
【0010】
なお、1工程目の工法との相違点は、先掘しないで単に元押装置の推力のみで管を押し込み推進していく点であり、この工法は一般的に単推進工法と称している。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従来の技術の小口径推進工法における1工程目の工法の場合での課題は特にないが、2工程目の工法に関しては次のような理由による課題があった。
即ち、2工程目の工法は上述のように、先堀しないで元押装置のみの推力で管を押し込み推進していく単推進工法であるため、外径の異なるパイロット管と推進管との径の差により生じる段差部での抵抗が非常に大きくなるという問題がある。例えば、パイロット管の外径1に対して推進管の外径を2とした場合、外径比では1:2であるが、断面積比では1:4となり、本工法のように管を土中に圧入していく工法では管径差が大きくなるほど段差部での抵抗が飛躍的に増大する。従って、土質による影響及び土の硬さにより、推進不可能な領域が多くなり、しかも推進可能距離も軟弱地盤を除いて短距離となる欠点があった。
【0012】
また、1工程目のパイロット管布設の際に、先端装置にて方向制御を適宜行っているので、土中へ布設されたパイロット管が必ずしも直線状ではなく、曲線状に布設されていることがある。2工程目は、パイロット管をガイドにして元押し装置の推力で推進管を土中に押し込み推進していくため、ガイドの役目であるパイロット管が曲線状態に布設されていると、この曲率に追従できずに抵抗が増大するかパイロット管自体が推進管の押し込み推力に耐えられず折れ曲がる恐れがある。
【0013】
従って、本発明の主目的は、小口径推進工法の2工程目において、推進抵抗が大きく、パイロット管が曲がって布設されている場合でも推進管の布設ができる推進機を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は2工程目においても1工程目と同様に先堀り機能を有する推進機を用い、この推進機に首振り機能を持たせることで上記の目的を達成する。
すなわち、本発明管押し込み用複推進機は、予め布設されたパイロット管をガイドとして推進管を押し込むもので、圧力媒体で前方に押し出されるピストンロッドと圧力媒体の供給ホースを接続するためのカプラとを具えるシリンダと、このシリンダに外装され、ピストンロッドに連動するスライド筒と、スライド筒に外装される拡径管と、シリンダの後方に連結される前記推進管のアダプタと、スライド筒の前方に固定された球面軸と、前記パイロット管に接続され、球面軸に対して首振り自在に装着された球面軸受けとを具えることを特徴とする。
【0015】
ここで、ピストンロッドの先端とスライド筒とを球面で当接することが望ましい。これにより、ピストンロッドに曲げ方向の外力が直接作用することを回避する。
【0016】
また、球面軸受けは球面軸が挿通される軸孔を具え、この軸孔をテーパ状に形成することで球面軸受けの首振り角度を規制することができる。
【0017】
さらに、球面軸受けとスライド管との間に弾性体のダストシールを介在させることで球面軸受け内に土砂が侵入することを防止できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の管押し込み用複推進機の縦断面図で、内蔵する単動油圧シリンダを縮めた状態を示し、図2は同推進機の縦断面図で、単動油圧シリンダを伸ばした状態を示している。
【0019】
複推進機1は駆動源として単動油圧シリンダ2を内蔵し、このシリンダ2で押し出されるスライド筒3と、スライド筒3に外装される拡径管4およびスライド筒3の前方に設けられた首振り機構とを具えている。この推進機1は、前方(図1の左側)が首振り機構を介してパイロット管Dに接続され、後方(図1の右側)が推進管Hに接続されて、シリンダ2の押圧により先掘りしながら推進管Hを布設していく。
【0020】
駆動源となるシリンダ2は作動油(圧力媒体)により前方に押し出されるピストンロッド5を内蔵している。スライド筒3はこのシリンダ2に外嵌されており、ピストンロッド5が押し出されると連動してスライドする。ここではピストンロッド5の先端に球面ヘッド6を固定し、この球面ヘッド6をスライド筒2の前端面の内側に押し当てる構成とした。スライド筒2の前端面の内側は球面ヘッド6に対応する内球面に形成されている。
【0021】
このような構成としたのは、スライド筒2、拡径管4から作用するおそれのある曲げ方向外力を球面ヘッド6にて逃がし、ピストンロッド5へ曲げ方向の外力が作用することを回避するためである。シリンダ2のピストンロッド5の強度は、圧縮方向へ外力が作用した場合のみの強度に耐えられるように設計されており、曲げ方向の外力が作用すると強度が不足する場合がある。例えば、ピストンロッド5がスライド筒2の内側に直結している構造であれば、スライド筒2と拡径管4から作用する曲げ方向の外力がピストンロッド5へ直接作用し、シリンダ2が破損することが考えられる。
【0022】
ピストンロッド5の作動はシリンダ2の後端面の中心部に設けたカプラ7に油圧ホース8を接続し、このホース8からシリンダ内に作動油を供給することで行う。油圧ホース8は推進管Hの内部を通って地上にある油圧ポンプ(図示せず)へ接続される。
【0023】
この推進管Hとシリンダ2との接続には推進管用アダプタ9を用いる。このアダプタ9は一端がシリンダ2の後方に外嵌され、他方に推進管Hがはめ込まれるテーパ状の筒体である。シリンダ後方の外周には環状突起10が形成されており、この突起10に係合する袋ナット15をアダプタ9にねじ結合して、シリンダ2とアダプタ9とを連結する。
【0024】
一方、スライド筒3の前方に設けられた首振り機構は、球面軸16と球面軸受け17,18 との組み合わせにより構成した。スライド筒3の前端面にはテーパ状のキャップ19がねじ結合されている。このキャップ19は中心部にネジ孔を有し、そこに球面軸16がねじ込まれている。球面軸受け17,18 は前部受け具17と後部受け具19とから構成され、前部受け具17が球面軸16における球部の前半分を覆い、後部受け具18が球面軸16における球部の残部を覆うと共にこれに続く軸部に外嵌されて、前部受け具17と後部受け具18とはねじ結合されている。
【0025】
この首振り機構を図3,4に拡大して示す。後部受け具18の軸孔20は前方が内径の小さいテーパ状に形成され、球面軸16に対して球面軸受17,18 けを首振りできるように構成されている。すなわち、球面軸16の球部を中心としてあらゆる周方向に角度θの範囲で球面軸受け17,18 の向きを変えることができる。パイロット管Dが直線状に布設されている場合、図3に示すように、球面軸受け17,18 の軸はシリンダ2の軸方向に揃っている。これに対してパイロット管Dが曲線状に布設されている場合、図4に示すように、球面軸受け17,18 を角度θの範囲で傾けることで推進機1をパイロット管Dに追従させる。
【0026】
また、本例では後部受け具18とキャップ19との間にダストシール25を介在させた。ダストシール25は球面軸受け内に土砂が侵入することを防止して首振り動作を確実に行わせるためのもので、球面軸受け17,18 の首振り動作に追従できるようゴムなどの弾性体で構成する。
【0027】
上記の球面軸受け17,18 は管接続器26を介してパイロット管Dに接続される。管接続器Dは前部受け具17の先端に固定されており、推進抵抗を低減できるように前方がテーパー状に形成されている。
【0028】
なお、スライド筒3に外装されている拡径管4はピストンロッド5の押し出しによりスライド管3と共に押し出され、パイロット管Dと同等の径であった進行孔を推進管Hの径に対応した大きさに広げる。つまり、拡径管4の断面積分の先掘りをシリンダ2の押圧力により行うことができる。拡径管4は推進管Hの径に応じたサイズのものに交換して使用する。拡径管4の形状は推進抵抗を低減できるように端部をテーパー状にすることが望ましい。
【0029】
次に、図5及び図6に基づいて上記推進機を用いた工法と動作を説明する。この推進機を用いるのは、前述した小口径推進工法の1工程目によりパイロット管Dが布設された後の2工程目であり、1工程目における到達立坑Bから発進立坑Aに向かって本複推進機1を進めてゆく。
【0030】
図5(A)は到達立坑B内に大型元押装置Fを設置した後、大型元押装置Fの上に本複推進機1を装着して、パイロット管Dと本機1とを接続した状態を示している。このとき、本機1のピストンロッド5は図1に示すように縮んだ状態にあり、この状態は以下の図5(D)における工程まで維持されている。
【0031】
図5(B)は大型元押装置Fに内蔵している油圧シリンダが所定量だけ伸び動作して、押台車F1を介して本推進機1を土中へ押し込み、これに押されてパイロット管Dが発進立坑A側へ押し出された状態を示している。
【0032】
図5(C)は大型元押装置Fに内蔵している油圧シリンダが縮み動作することで押台車F1が推進管Hの1本分の長さに相当するスペースを確保した状態を示している。この際、発進立坑A側へ押し出されたパイロット管Dは接続部分から外して撤去する。
【0033】
図5(D)は大型元押装置Fの上に確保したスペースへ推進管Hを装着して、押台車F1を介して推進管Hを本機1へ嵌入した状態を示している。
【0034】
図6(A)は本機1に内蔵している単動油圧シリンダ2へ外部の油圧ポンプから油圧ホース8を通して作動油を供給し、その油圧でピストンロッド5を伸ばして本機1により先堀りした状態を示している。
【0035】
このとき、図2に示すように、ピストンロッド5が伸び動作することで球面ヘッド6を介してスライド筒3を押す。このため、スライド筒3に被った拡径管4も共に押されるので、土中においては拡径管4の断面積分の先堀りを単動油圧シリンダ2の押圧力により行うことができる。なお、先堀りにより発生する反力は大型元押装置Fにて受ける。
【0036】
このようにパイロット管Dと推進管Hとの径の差により生じる段差部の土を本機1により先掘りするので、その部分の必要推力を大型元押装置Fが負担する必要がなく、全体としての推力低減に寄与できる。
【0037】
図6(B)は本機1で先堀りしたストロークだけ大型元押装置Fにて推進管Hを押し込んだ状態を示している。このとき、推進管Hへ大型元押装置Fから推力が作用すると、拡径管4の断面積へ作用している土圧が反力となり、単動油圧シリンダ2内の作動油が油圧ホース8を通して外部の油圧ポンプのタンクへ押し戻されるので、ピストンロッド5は縮み動作する。従って、拡径管4およびそれと一体のスライド筒はこの位置を保ち、単動油圧シリンダ2並びに推進管アダプタ9が前方へ移動する。そして本機1は図1に示す状態と同じ状態に戻る。
【0038】
図6(C)は本機1によりさらに先堀りした状態を示している。ここでも前述したピストンロッドの伸び動作により先掘りが行われる。
【0039】
図6(D)は本機1により先堀りしたストロークだけ大型元押装置Fにて推進管Hを押し込んだ状態を示している。このような本機1による先掘りと押し台車による推進管の押し込みとの繰り返しにより、押台車F1を後退させたときに新たな推進管Hを装着できるスペースを確保する。そして、新たな推進管Hを継ぎ足して同様の複推進工法にて押し込んでいくと共に、発進立坑Aに押し出されたパイロット管Dの撤去を行い、順次推進管Hを到達立坑Bから発進立坑Aまで到達させていく。
【0040】
上記の工程で本機1が先掘りを行う際(ピストンロッド5を伸長する際)、パイロット管Dの布設に曲がりがあってもパイロット管Dに接続された球面軸受け17,18 は球面軸16に対して角度を変えることができるため、推進機1をこの曲がりに追従して進行させることができる(図4参照)。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の管押し込み用複推進機を用いることにより、小口径推進工法の分野において、推進工法の2工程目を従来の単推進工法から複推進工法へ変換することができる。これにより、外径の異なるパイロット管と推進管との径の差により生じる段差部での抵抗が著しく低減され、作業効率の著しい向上がはかれるとともに、推進可能距離も長くできる。
【0042】
また、この推進機はパイロット管との接続部分が首振り自在に構成されているため、パイロット管が曲がって布設されている場合でも追従することができ、推進抵抗を低減できると共に、パイロット管の折損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の管押し込み用複推進機のピストンロッドを縮めた状態を示す縦断面図である。
【図2】本発明の管押し込み用複推進機のピストンロッドを伸ばした状態を示す縦断面図である。
【図3】本発明推進機における首振り機構の直線状態を示す縦断面図である。
【図4】本発明推進機における首振り機構の屈曲状態を示す縦断面図である。
【図5】本発明の管押し込み複推進機を用いた小口径推進工法による管布設の施工手順の内、2工程目の前半の説明図である。
【図6】本発明の管押し込み複推進機を用いた小口径推進工法による管布設の施工手順の内、2工程目の後半の説明図である。
【図7】従来の小口径推進工法による管布設の施工手順の内、1工程目の説明図である。
【図8】従来の小口径推進工法による管布設の施工手順の内、2工程目の説明図である。
【符号の説明】
1 複推進機 2 単動油圧シリンダ 3 スライド筒 4 拡径管
5 ピストンロッド 6 球面ヘッド 7 カプラ 8 油圧ホース
9 推進管用アダプタ 10 環状突起 15 袋ナット 16 球面軸
17 前部受け具(球面軸受け) 18 後部受け具(球面軸受け)
19 キャップ 20 軸孔 25 ダストシール 26 管接続器 A 発進立坑
B 到達立坑 C 小型元押装置 D パイロット管 E 先端装置
F 大型元押装置 G テーパ管 H 推進管
Claims (4)
- 予め布設されたパイロット管をガイドとして推進管を押し込む管押し込み用複推進機であって、
圧力媒体で前方に押し出されるピストンロッドと圧力媒体の供給ホースを接続するためのカプラとを具えるシリンダと、
このシリンダに外装され、ピストンロッドに連動するスライド筒と、
スライド筒に外装される拡径管と、
シリンダの後方に連結される前記推進管用のアダプタと、
スライド筒の前方に固定された球面軸と、
前記パイロット管に接続され、球面軸に対して首振り自在に装着された球面軸受けと
を具えることを特徴とする管押し込み用複推進機。 - ピストンロッドの先端とスライド筒とが球面で当接されていることを特徴とする請求項1記載の管押し込み用複推進機。
- 球面軸受けは球面軸が挿通される軸孔を具え、この軸孔は球面軸受けの首振り角度を規制するテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の管押し込み用複推進機。
- 球面軸受けとスライド管との間に弾性体のダストシールを具えることを特徴とする請求項1記載の管押し込み用複推進機。
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