JP3960892B2 - 作業機における作業装置の角度可変機構 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、操作桿先端部の作業装置の角度を可変とした作業機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、操作桿先端部に設けられた作業装置の角度を、操作桿に対して可変とした作業機が知られており、例えば特許文献1に示されている。図9は、同公報に開示された刈払機の斜視図を表しており、以下、これに基づいて従来技術を説明する。
【0003】
図9において、中空パイプ状の操作桿8の基端部には、エンジン2が付設されている。エンジン2の出力は、操作桿8及びフレキチューブ44の内部を通る図示しない伝動シャフトにより、ハウジング53に取り付けられたカッター13に伝えられる。操作桿8の先端部には操作桿8に対して摺動自在の摺動部材57が取り付けられ、操作桿8と摺動部材57との間には、スプリング30が介装されている。
摺動部材57とハウジング53との間には、摺動部材57に対しては固着され、ハウジング53に対してはピン54によって回転自在とされた支持部材58が固定されている。
【0004】
エンジン2とハンドル11との間にはワイヤー56の基端部が巻き取られたレバー55が設けられている。ワイヤー56の先端部は、摺動部材57に固定されており、レバー55を回転操作すると、ワイヤー56の長さが変化し、スプリング30の付勢力によって摺動部材57が操作桿8に対して前後に摺動する。
これにより、ピン54を中心としてハウジング53が回転し、カッター13の操作桿8に対する角度を可変とし、斜面等における作業を容易にしている。
【0005】
【特許文献1】
実公平5−36336号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来技術には、次に述べるような問題がある。
即ち、操作桿8に対して突出したレバー55を用いてカッター13の角度を変えているので、作業時に例えば作業者の手がレバー55に当たって、カッター13の角度が変わってしまうようなことがある。
また、ワイヤー56を操作桿8に沿わせているので、ワイヤー56が障害物に当たって切れたり、或いはワイヤー56に障害物が当たって、カッター13の角度が変わってしまうようなことがある。
本発明は、上記の問題に着目してなされたものであり、作業者の意図通りに作業装置の角度を変更可能な作業機を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】
上記の目的を達成するために、本発明は、
中空の操作桿と、
エンジンと、
エンジンの出力を操作桿先端部の作業装置に伝達する可撓性の伝動シャフトと、
作業装置に一端部を固定された、伝動シャフトを覆う可撓性のライナーと、
操作桿の外周部に被せられ、外周部にネジを有する筒状の内筒部材と、
内筒部材のネジと噛み合うネジを内周部に有して、内筒部材のネジの動作範囲を覆い、操作桿に対して回転自在でかつ前後方向に不動となるように内筒部材の外側に固定された筒状の外筒部材とを備え、
外筒部材を回転させることによる内筒部材の前後方向の動きを介してライナーを操作桿に対して前後に動かして作業装置の角度を変化させている。
これにより、レバーやワイヤーなど、操作桿から突出する機構を用いるのに比べ、障害物に当たるなどして、作業装置が意図しない角度になることが少ない。
【0008】
また本発明は、
内筒部材の前後方向の動きをライナーに伝える手段として、
ライナーの外周部に前後方向に不動となるように固定されたブッシュと、
操作桿に設けられた長穴と、
内筒部材に固定され、長穴を貫通してブッシュに到達する伝達ピンとを備えている。
これにより、例えば長穴の長さによって作業装置の角度範囲を調整でき、作業装置が曲がり過ぎてしまうようなことが少ない。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照しながら、本発明に係る実施形態を詳細に説明する。図1は、実施形態に係る刈払機の説明図を示しており、ここではエンジンと操作桿とが一体となった、一体式作業機を例にとって説明する。
図1において一体式作業機1は、中空パイプからなる操作桿8と、操作桿8の基端部に連結固定されたエンジン2と、操作桿8の先端部に取り付けられた作業装置12とを備えている。操作桿8のエンジン2近傍には、操作桿8を取り巻くようにして、第1グリップ3が付設されている。また、第1グリップ3の前方には、後述するように、操作桿8に対して回転自在の第2グリップ4が付設されている。
尚、以下の説明においては、操作桿8の長手方向を前後方向と呼び、作業装置12側を前方、エンジン2側を後方と呼ぶ。
【0010】
作業者は、操作桿8の第1、第2グリップ3,4を把持して、草刈り等の作業を行なう。操作桿8には、第1グリップ3の前方に隣接して、エンジン2の回転数を制御するスロットルレバー9と、エンジン2を停止させる停止スイッチ10とが付設されている。スロットルレバー9及び停止スイッチ10から出力された信号は、操作桿8の内部を通るスロットル信号線及び停止信号線(図示せず)によってエンジン2に伝えられる。
エンジン2の出力は、操作桿8内部を通る図示しない伝動シャフトによってその先端部の作業装置12に伝えられる。作業装置12には、例えばカッター13が固定されており、これを回転させることにより、草刈りなどの作業を行なっている。35は、カッター13の刈刃ガードである。
【0011】
図2、図3に、操作桿8の第2グリップ4近傍の断面図を示す。図2が平面断面図、図3が側面断面図である。
尚、以下の説明においては、図2における紙面の上下方向を左右方向と呼ぶ。左右の向きは、エンジン2から作業装置12を見た向きで表し、図2においては、紙面上方が右となる。また、図3における紙面と平行な面を鉛直面と呼び、その上下方向を上下方向と呼ぶ。上下の向きは、図3における紙面と一致し、紙面上方を上とする。
【0012】
操作桿8の内部には、エンジン2の図示しない出力軸に連結された、動力を伝達する伝動シャフト6が通っている。伝動シャフト6は、例えば撚り合わされたワイヤーなどからなっており、可撓性を有している。伝動シャフト6は、例えば樹脂等の可撓性のライナー7の内部に挿入されており、伝動シャフト6はライナー7に対して独立に回転するようになっている。
【0013】
操作桿8の第2グリップ4近傍には、左右一対の長穴25,25が設けられている。操作桿8には、長穴25,25を覆うように、外周部にネジ26を切った筒状の内筒部材22が嵌まっている。また、その外周側に、内筒部材22のネジ26に噛み合うネジ27を備えた筒状の外筒部材21が嵌まっている。
外筒部材21は、操作桿8に対して回転自在となっており、ネジ31で操作桿8にネジ止めされたストッパ28,28によって前後方向に摺動しないように固定されている。
【0014】
内筒部材22には、2個のネジ孔29,29が対向して設けられ、それぞれセットスクリュー等を用いた伝達ピン24,24が所定深さまで突出している。ライナー7の、前後方向において長穴25,25に相当する位置には、外周部に溝52を有して断面が凹形をしたブッシュ23が、ライナー7に対して少なくとも前後方向に不動であるように嵌め込まれている。ブッシュ23の外周部の溝52には、上記伝達ピン24,24が入り込んでいる。
【0015】
外筒部材21を操作桿8に対して回転させると、これに噛み合った内筒部材22が、ネジ26,27によって前後方向に摺動する。このとき内筒部材22は、伝達ピン24及び長穴25によって、操作桿8に対する回転方向の動きを封じられており、前後方向にのみ動くようになっている。
その結果、伝達ピン24の前後方向の動きによって、ブッシュ23が前後方向に動き、これに固定されたライナー7が操作桿8の内部で前後方向に動くことになる。
【0016】
図4、図5に、操作桿8の先端部近傍の断面図を示す。図4が平面断面図、図5が側面断面図である。
操作桿8の先端部には、中空の先端シャフト36の基端部がネジ32によって、固定されている。先端シャフト36の先端部上部33は、鉛直面内で弧を描いて開いている。先端シャフト36の先端部下部には、ピン34が左右方向に嵌合され、中空の折曲シャフト47の基端部下部を固定している。
【0017】
これにより、折曲シャフト47は操作桿8及び先端シャフト36に対して、ピン34を中心として、鉛直面内で回転自在となっている。折曲シャフト47の基端部の上部は、鉛直面内で、先端シャフト36の先端部上部と略同一半径の弧を描いており、その一部37はカバーとなって、先端シャフト36の先端部上部の弧よりもわずかに小さな半径となって、先端シャフト36の内側に入り込んでいる。
これにより、折曲シャフト47の内部に草や砂などが入るのを防止している。
【0018】
折曲シャフト47の先端部には、ギアケース39がボルト38によって固定されている。ギアケース39の内部には、互いに噛み合った一対の傘歯車40,41が、それぞれ図示しないベアリングによって支持されて組み込まれている。入力側傘歯車40のシャフトは、前記伝動シャフト6の先端部に、固定部42をカシメて固着されている。
出力側傘歯車41のシャフトには、カッター13等を固定するホルダ43が、脱着自在に固定されている。入力側傘歯車40が、伝動シャフト6によって回転すると、出力側傘歯車41が回転し、カッター13を回転させて、草刈りなどの作業を行なう。尚、図4では、カッター13及び刈刃ガード35の図示を省略している。
【0019】
ライナー7の先端部には、表面に傷などがつかないようにコーティングされた、強靱で可撓性を有するフレキチューブ44の基端部が、カシメ部材45によって連結されている。
また、フレキチューブ44の先端部の外周には、スリーブ46の基端部がカシメによって固着されている。スリーブ46の先端部は、折曲シャフト47に固定されている。これにより、ライナー7、フレキチューブ44、及び折曲シャフト47は一体となっている。
【0020】
上述したように、第2グリップ4の外筒部材21を回転させると、内筒部材22が前後方向に動き、伝達ピン24からブッシュ23を介して、ライナー7が前後方向に動く。
一例として、外筒部材21を回転させてライナー7が前方に動いた場合について、説明する。この動きによって前方に押された折曲シャフト47は、ピン34を中心として、操作桿8に対してお辞儀をする向き(矢印A参照)へと鉛直面内で回転する。この回転角度の範囲は、操作桿8に設けられた長穴25の長さによって制限される。或いは、折曲シャフト47の基端部の上部及びカバー37が、先端シャフト36の先端部上部33と当接することによっても制限される。
これにより、カッター13の角度が操作桿8に対して変化し、例えば傾斜のある面の草刈りを、容易に行なうことができる。ライナー7が後方に動いた場合については、折曲シャフト47が逆向きに回転し、カッター13の角度も逆向きに動くことになる。
【0021】
図6に、ライナー7とブッシュ23の構成例を示す。図6において、ライナー7の外周部には、全長にわたって突出部49が設けられている。突出部49は、ブッシュ23の幅と略同一長さだけ、一部が切り欠かれている(50参照)。また、ブッシュ23には、ライナー7の断面と略同一形状の開口部51が設けられている。尚、48は伝動シャフト6の通る中空部である。
【0022】
図7に、ブッシュ23をライナー7に組み立てた例を示す。
組み立て時には、ライナー7の一端部から切り欠き部50までブッシュ23を通し、切り欠き50部でブッシュ23をわずかだけ回転させることにより、ライナー7に対して前後方向に不動に固定することができる。尚、ライナー7の突出部49は、必ずしも全長にわたって設ける必要はなく、例えばブッシュ23を固定する位置の前後にのみ、それぞれ短い長さで設けるようにしてもよい。
或いは、ライナー7を突起のないチューブ状とし、ブッシュ23を固定する位置の前後に溝を設けて、ブッシュ23をスナップリングで固定してもよい。さらには、ブッシュ23を接着剤でライナー7に固定してもよく、ブッシュ23を二つ割りにして、ネジでライナー7を締めつけるように固定してもよい。
【0023】
次に、第2実施形態について、説明する。
第2実施形態においては、図2〜図3の構造は同様であり、操作桿8先端部近傍の構造が異なっている。
図8に、第2実施形態に係る操作桿8の先端部近傍の側面断面図を示す。図8において、操作桿8の先端部近傍には、支持部材58の基端部が操作桿8に対して斜めに固着されている。支持部材58の先端部は、カッター13を取り付けるハウジング53に左右方向のピン54によって固定され、鉛直面内で回転自在となっている。
操作桿8の先端部は開放されており、第1実施形態と同様に可撓性で表面にコーティングを施されたフレキチューブ44が露出している。フレキチューブ44内には、伝動シャフト6が挿入されている。伝動シャフト6は、ハウジング53の内部で、カッター13の取付軸59に固定されている。
【0024】
このような構成において、第1実施形態と同様に外筒部材21を回転させると、ライナー7が前後方向に動く。例えば、ライナー7が前方に動いて、操作桿8の前方に露出する長さが増えると、ハウジング53は押されて、ピン54を中心としてお辞儀をする向き(矢印B参照)に鉛直面内で回転する。
これにより、カッター13の刃の角度が操作桿8に対して変化し、例えば傾斜のある面の草刈りを、容易に行なうことができる。
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、第2グリップ4の外筒部材21を回転させることにより、作業装置12の角度を変化させることができる。これにより、操作桿8の外部にレバー55やワイヤー56が突出せず、作業者の意図に反して作業装置12の角度が変化することが少ない。
また、操作桿8がコンパクトで軽量になり、作業機の取り回しが容易となる。さらには、ワイヤー56等を用いる必要がなく、簡単な部品構成で目的の実現が可能である。
【0026】
尚、以上の説明においては、操作桿の基端部にエンジンを連結固定した、一体式作業機について説明を行なったが、これに限られるものではない。例えば、エンジンと操作桿との間を可撓性のライナー及び伝動シャフトで接続し、エンジンを背中にしょって作業を行なうような背負式作業機や、その他の形式の作業機についても、応用は可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係る一体式作業機の構成図。
【図2】第1実施形態に係る操作桿の第2グリップ近傍の平面断面図。
【図3】第1実施形態に係る操作桿の第2グリップ近傍の側面断面図。
【図4】第1実施形態に係る操作桿の先端部近傍の平面断面図。
【図5】第1実施形態に係る操作桿の先端部近傍の側面断面図。
【図6】第1実施形態に係るブッシュの構成例を示す斜視図。
【図7】第1実施形態に係るブッシュの構成例を示す斜視図。
【図8】第2実施形態に係る操作桿の先端部近傍の側面断面図。
【図9】従来技術に係る一体式作業機の構成図。
【符号の説明】
1:一体式作業機、2:エンジン、3:第1グリップ、4:第2グリップ、6:伝動シャフト、7:ライナー、8:操作桿、9:スロットルレバー、10:停止スイッチ、11:ハンドル、12:作業装置、13:カッター、14:ターミナル、21:外筒部材、22:内筒部材、23:ブッシュ、24:伝達ピン、25:長穴、26:ネジ、27:ネジ、28:ストッパ、29:ネジ孔、30:スプリング、31:ネジ、32:ネジ、33:先端シャフトの先端部上部、34:ピン、35:刈刃ガード、36:先端シャフト、37:カバー、38:ボルト、39:ギアケース、40:入力側傘歯車、41:出力側傘歯車、42:固定部、43:ホルダ、44:フレキチューブ、45:カシメ部材、46:スリーブ、47:折曲シャフト、48:中空部、49:突起部、50:切り欠き、51:開口部、52:溝、53:ハウジング、54:ピン、55:レバー、56:ワイヤー、57:摺動部材、58:支持部材、59:取付軸。
Claims (2)
- 中空の操作桿(8)と、
エンジン(2)と、
エンジン(2)の出力を操作桿(8)先端部の作業装置(12)に伝達する可撓性の伝動シャフト(6)と、
作業装置(12)に一端部を固定された、伝動シャフト(6)を覆う可撓性のライナー(7)と、
操作桿(8)の外周部に被せられ、外周部にネジ(26)を有する筒状の内筒部材(22)と、
内筒部材(22)のネジ(26)と噛み合うネジ(27)を内周部に有して、内筒部材(22)のネジ(26)の動作範囲を覆い、操作桿(8)に対して回転自在でかつ前後方向に不動となるように内筒部材(22)の外側に固定された筒状の外筒部材(21)とを備え、
外筒部材(21)を回転させることによる内筒部材(22)の前後方向の動きを介してライナー(7)を操作桿(8)に対して前後に動かして作業装置(12)の角度を変化させることを特徴とする、作業機における作業装置の角度可変機構。 - 前記内筒部材(22)の前後方向の動きをライナー(7)に伝える手段として、
ライナー(7)の外周部に前後方向に不動となるように固定されたブッシュ(23)と、
操作桿(8)に設けられた長穴(25)と、
内筒部材(22)に固定され、長穴(25)を貫通してブッシュ(23)に到達する伝達ピン(24)とを備えたことを特徴とする、請求項1に記載の作業機における作業装置の角度可変機構。
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